JP3828464B2 - スピンドルモータ及びこれを備えたディスク駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オイルを作動流体とする動圧軸受を使用するスピンドルモータ及びこれを備えたディスク駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハードディスク等の記録ディスクを駆動するディスク駆動装置において使用されるスピンドルモータの軸受として、シャフトとスリーブとを相対回転自在に支持するために、両者の間に介在させたオイル等の潤滑流体の流体圧力を利用する動圧軸受が種々提案されている。
【0003】
このような動圧軸受を使用するスピンドルモータの一例を図1に示す。この従来の動圧軸受を使用するスピンドルモータは、ロータaと一体をなすシャフトbの外周面と、このシャフトbが回転自在に挿通されるスリーブcの内周面との間に、一対のラジアル軸受部d,dが軸線方向に離間して構成され、またシャフトaの一方の端部外周面から半径方向外方に突出するディスク状スラストプレートeの上面とスリーブcに形成された段部の平坦面との間並びにスラストプレートeの下面とスリーブcの一方の開口を閉塞するスラストブッシュfとの間に、一対のスラスト軸受部g,gが構成されている。
【0004】
シャフトb並びにスラストプレートeとスリーブc並びにスラストブッシュdとの間には、一連の微小間隙が形成され、これら微小間隙中には、潤滑流体としてオイルが途切れることなく連続して保持されており、シャフトbの外周面とスリーブcの内周面との間に形成される間隙の上端部開口(スリーブcの他方の開口)に設けられたテーパシール部h内でのみ空気に露出している(このようなオイル保持構造を、以下「フルフィル構造」と記す)。
【0005】
また、ラジアル軸受部d,d及びスラスト軸受部g,gには、一対のスパイラルグルーブを連結してなるヘリングボーングルーブd1,d1及びg1,g1が形成されており、ロータaの回転に応じて、スパイラルグルーブの連結部が位置する軸受部の中央部で最大動圧を発生させ、ロータaに作用する荷重を支持している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
フルフィル構造の動圧軸受では、ロータaが回転を始めると、オイルは動圧発生溝d1,d1及びg1,g1によるポンピングで、各ラジアル軸受部d,d及びスラスト軸受部g,gの中心部側に引き込まれ、軸受の中心部で流体動圧が極大となる反面、軸受の端部側では、オイルの内圧が低下する。すなわち、シャフトbの外周面とスリーブcの内周面との間の領域のうち、一対のラジアル軸受部d,d間に保持されるオイル及びスラストプレートeの周囲の領域のうち、スラスト軸受部g,g間に位置するスラストプレートの外周部付近に保持されるオイルは、動圧発生溝d1,d1及びg1,g1のポンピングに応じてオイルの内圧が低下し、やがて大気圧以下まで低下して負圧となる。
【0007】
オイル内に負圧が生じると、例えばオイルの充填作業時等にオイル内に溶け込んだ空気が気泡化して現れ、やがて温度上昇等によって気泡が体積膨張し、オイルを軸受外部へと漏出させるといったスピンドルモータの耐久性や信頼性に影響する問題、あるいは動圧発生溝が気泡と接触することによる振動の発生やNRRO(非繰り返し性振れ成分)の悪化といったスピンドルモータの回転精度に影響する問題が発生する。
【0008】
加えて、加工誤差等に起因してスリーブの内周面とシャフトの外周面との間に形成される微小間隙の半径方向の隙間寸法が軸線方向下端部側が上端部側よりも広く形成された場合等、ラジアル軸受部d,dで動圧発生溝d1,d1のポンピングにアンバランスが生じた場合には、スリーブの内周面とシャフトの外周面との間に保持されたオイルは軸線方向上端部の圧力が軸線方向下端部よりも高圧となることから、軸線方向上端部側から下端部側に圧力が伝播され、スラストプレートの下面とスラストブッシュとの間に保持されるオイルの内圧が必要以上に高まり、ロータが所定量以上浮上する過浮上が発生する。
【0009】
ロータに過浮上が発生すると、スラストプレートとスリーブとの接触による摩耗が発生し、軸受の耐久性並びに信頼性を損なう原因となる。加えて、ハードディスク駆動用のスピンドルモータの場合、ハードディスクの高容量化にともない、ハードディスクの記録面と磁気ヘッドとが極めて近接配置されていることから、ハードディスクと磁気ヘッドとの接触による破壊が発生する懸念がある。
【0010】
本発明は、小型化並びに薄型化が可能で、負圧に起因する気泡及びロータの過浮上の発生を防止すると共に、軸受部の接触及び摺動の発生を抑制することができるスピンドルモータ及びこれを備えたディスク駆動装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、シャフトと、該シャフトが挿通される軸受穴を有する円筒状スリーブと、該スリーブを保持する内周面と該シャフトの端面と軸線方向に対向する閉塞端面とを有する一方開口の円筒状ハウジングと、該シャフトとともに回転するロータとを備えてなるスピンドルモータであって、前記ロータは、前記シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する円周状平坦面を有し、前記ハウジングの開口側端部には、前記シャフトが挿通される中央開口を有すると共に、前記ロータの平坦面と軸線方向に対向する平坦面を有する周状のフランジ部が内径側に設けられており、前記ロータの平坦面とこれに軸線方向に対向する前記フランジ部の平坦面との間及び、前記シャフトの外周面と前記軸受穴の内周面との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記フランジ部の平坦面と前記ロータの平坦面との間には、前記ロータの回転時に前記オイルに対して半径方向内方側に作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたスラスト軸受部が形成され、前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間には、前記ロータの回転時に前記オイルに対して軸線方向両側から作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたラジアル軸受部が形成されており、前記スリーブの外周面と前記ハウジングの内周面との間には、前記スリーブの上端面と下端面とに開口する軸線方向連通路が形成され、
前記スリーブの上端が前記フランジ部に当接されると共に、前記スリーブの上端面と前記フランジ部の下方側の面との間には、前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間に形成される軸受隙間の軸線方向上端部と前記軸線方向連通路の上端部とに連通する半径方向連通路が形成され、前記スリーブの下端面と前記ハウジングの閉塞端面との間には、前記軸受隙間の軸線方向下端部と前記軸線方向連通路の下端部とに連通する連通路が形成され、これら連通路により当該軸受隙間内の圧力の均衡がはかられている。
【0012】
この構成は、フルフィル構造の動圧軸受を用いたスピンドルモータにおいて、負圧並びに過浮上の発生を防止することを可能とするものである。
【0013】
すなわち、連通路によって軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間に形成される軸受隙間の軸線方向両端部を連通し、オイルを流通可能にすることで、ラジアル軸受部に設けられる動圧発生溝の寸法公差や軸受穴内周面あるいはシャフト外周面の加工誤差等に起因して、軸受部材の内周面とシャフトの外周面との間に保持されるオイルの軸線方向上下端部に圧力差が生じた場合も、連通路を通じて圧力差が補償され、オイル内の負圧やロータの過浮上の発生が防止される。
【0014】
また、オイル内の圧力補償を、スラスト軸受部によって圧力的に密封された領域内で行うことで、モータの減速時等に発生するオイルの圧力低下を緩やかなものとし、軸受部の接触や摺動を抑制することが可能となり、信頼性及び耐久性を高く維持することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、シャフトと、該シャフトが挿通される軸受穴を有する円筒状スリーブと、該スリーブを保持する内周面と該シャフトの端面と軸線方向に対向する閉塞端面とを有する一方開口の円筒状ハウジングと、該シャフトとともに回転するロータとを備えてなるスピンドルモータであって、前記ロータは、前記シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する円周状平坦面を有し、前記ハウジングの開口側端部には、前記シャフトが挿通される中央開口を有すると共に、前記ロータの平坦面と軸線方向に対向する平坦面を有する周状のフランジ部が内径側に設けられており、前記ロータの平坦面とこれに軸線方向に対向する前記フランジ部の平坦面との間及び、前記シャフトの外周面と前記軸受穴の内周面との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、前記フランジ部の平坦面と前記ロータの平坦面との間には、前記ロータの回転時に前記オイルに対して半径方 向内方側に作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたスラスト軸受部が形成され、前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間には、前記ロータの回転時に前記オイルに対して軸線方向両側から作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたラジアル軸受部が形成されており、前記スリーブの外周面と前記ハウジングの内周面との間には、前記スリーブの上端面と下端面とに開口する軸線方向連通路が形成され、前記スリーブの下端が前記ハウジングの閉塞端面に当接されると共に、前記スリーブの下端面と前記ハウジングの閉塞端面との間には、前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間に形成される軸受隙間の軸線方向下端部と前記軸線方向連通路の下端部とに連通する半径方向連通路が形成され、前記スリーブの上端面と前記フランジ部の下方側の面との間には、前記軸受隙間の軸線方向上端部と前記軸線方向連通路の上端部とに連通する連通路が形成され、これら連通路により当該軸受隙間内の圧力の均衡がはかられている。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のスピンドルモータにおいて、前記スラスト軸受部には、前記動圧発生溝としてポンプイン形状のスパイラル溝が設けられており、また前記ラジアル軸受部は、前記シャフトの外周面と前記軸受穴の内周面との間に軸線方向に離間して一対構成されていると共に、該一対のラジアル軸受部のうち少なくともいずれか一方のラジアル軸受部には、前記動圧発生溝として前記オイルを前記ハウジングの開口端側から閉塞端側へと押圧する軸線方向にアンバランスな形状のヘリングボーン溝が設けられている。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、前記軸線方向連通路は、前記スリーブの外周面に形成された軸線方向溝と前記ハウジングの内周面とによって構成される。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、前記ロータには前記平坦面から垂下し且つ前記軸受ハウジングの外周面と間隙を介して半径方向に対向する円筒壁が設けられ、また前記ハウジングの外周面には、前記ロータの平坦面から離れるにしたがって外径が縮径するようテーパ面が設けられ、前記オイルは該テーパ面と該円筒壁の内周面との間でメニスカスを形成して保持されている。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、前記ロータは、前記スラスト軸受部で誘起される前記ロータに対する浮上力作用方向とは軸線方向反対側に向かって軸線方向に作用する磁気力によって付勢されている。
【0020】
請求項7に記載の発明は、情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク駆動装置において、ケーシングと、該ケーシングの内部に固定され該記録媒体を回転させるスピンドルモータと、該記録媒体の所要の位置に情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有すると共に、前記スピンドルモータとして、請求項1乃至6のいずれかに記載したスピンドルモータを備えている。
【0021】
尚、請求項1及び2以外の請求項に記載する発明は、本発明の実施形態に即した構成に関するものであり、重複した記載を避けるために、各請求項に係る発明の構成による作用効果並びにその原理に関しては、下記発明の実施の形態及び発明の効果において詳述する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るスピンドルモータ及びこれを備えたディスク駆動装置の斯く実施形態について図2乃至図5を参照して説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。尚、本実施形態の説明では便宜上各図面の上下方向を「上下方向」とするが、スピンドルモータの実際の取付状態における方向を限定するものではない。
【0023】
(1)スピンドルモータの構成
まず、図2を参照して、本発明の実施形態に係るスピンドルモータは、ロータハブ2aと、このロータハブ2aの回転中心に同軸状に設けられたシャフト2bとから構成されるロータ2と、ブラケット4に設けられた円形ボス部4aに固着された円筒状のハウジング6とこのハウジング6内に接着等の手段によって固着された中空円筒状のスリーブ8とを有する。ロータハブ2aの外周部には、ハードディスク等の記録ディスク(図5においてディスク板52として図示する)が載置されるフランジ状のディスク載置部2cが設けられ、このディスク載置部2cの下面側には、ヨーク10が装着される。このヨーク10の内周面にはロータマグネット12が接着等の手段によって取付けられている。また、円形ボス部4aの外周面にはこのロータマグネット12と半径方向に対向してステータ14が固着される。
【0024】
次に図3及び図4を参照して、図2のスピンドルモータの軸受部分の詳細構造について説明する。
【0025】
図3及び図4に詳細に図示されるように、ハウジング6は、軸線方向両端が開口されており、その下端部側開口には、ブラケット4に接着等の手段で取付けられる円板状のシールブッシュ6aによって閉塞されている。また、ハウジング6の上端部側開口は、スリーブ8の上端部を覆うように半径方向内方側に曲折されており、周状のフランジ部6bが設けられている。シャフト2bは、このフランジ部6bに設けられた中央開口内を挿通されている。これらハウジング6及びシールブッシュ6aは、薄板状の金属材をプレス加工することで形成されている。
【0026】
スリーブ8には、中心部に軸線方向に貫通する貫通孔が設けられており、シャフト2bは、この貫通孔に挿通されている。シャフト2bの外周面は、スリーブ8の内周面と間隙を介して半径方向に対向し、またシャフト2bの端面は、ハウジング6のシールブッシュ6aの内面と間隙を介して軸線方向に対向している。スリーブ8は、その上端面がフランジ部6bの下方側の面に対して当接し、またその下端面が、ハウジング6のシールブッシュ6aの内面と隙間を介して軸線方向に対向するよう取付けられている。更に、フランジ部6bの上方側の面は、ロータハブ2aの円周状の下方側面(平坦面)と間隙を介して軸線方向に対向している。
【0027】
このように、スリーブ8の上端面をフランジ部6bの下方側の面に当接させることで、スリーブ8をハウジング6に対して固着する際の軸線方向の位置決めが容易になる。
【0028】
これらフランジ部6bの上方側の面とロータハブ2aの下方側の面との間に形成される間隙と、フランジ部6b及びスリーブ8の内周面とシャフト2bの外周面との間に形成される間隙と、シールブッシュ6aの内面とシャフト2bの端面との間に形成される隙間及びこれに隣接するスリーブ8の下端面とシールブッシュ6aの内面との間に形成される隙間(これらの各隙間並びに後述する連通路9内に形成される隙間を合わせて、以下「軸受隙間」と記載する)とは全て連続している。これら連続する各隙間には、オイルが途切れることなく連続して保持されており、フルフィル構造の軸受を構成している。
【0029】
更に、スリーブ8の外周面には、その上方側の端面から下方側の端面に至る軸線方向溝8aが設けられており、また、スリーブ8の上端面には、軸線方向溝8aの上端部からスリーブ8の内周面に至る半径方向溝8bが設けられている。このような構成のスリーブ8がハウジング6に取付けられることで、軸線方向溝8aとハウジング6の内周面並びに半径方向溝8bとフランジ部6bの下方側の面とによって、連通路9が形成される。この連通路9内にもオイルが保持されており、スリーブ8の内周面とシャフト2bの外周面との間に形成される間隙に保持されるオイルは、連通路9を介して連通する。尚、連通路9を通じてのオイルの圧力補償に関しては後に詳述する。
【0030】
また、ハウジング6の外周面の上端部には、半径方向外方に突設され且つ外周面がその上端面から離間するにつれて縮径するよう傾斜面状に形成された環状の傾斜状外周部6cが設けられている。また、ロータハブ2aには、下方側面の半径方向外端部にブラケット4側に垂下する周壁部2dが設けられている。この周壁部2dの内周面と傾斜状外周部6cの外周面とは、非接触状態で半径方向に対向している。
【0031】
この周壁部2dの内周面と傾斜状外周部6cの外周面との間に規定される間隙の半径方向の間隙寸法は、ハウジング6の外周面が上記のとおり傾斜面状に形成されることで、ブラケット4側(周壁部2dの先端部方向)に向かってテーパ状に漸増する。すなわち、この周壁部2dの内周面と傾斜状該主部部6cの外周面とが協働してテーパシール部16を構成している。上述した各間隙内に保持されるオイルは、このテーパシール部16のみにおいて、オイルの表面張力と外気圧とがバランスされ、オイルと空気との界面がメニスカス状に形成される。
【0032】
テーパシール部16は、オイルリザーバとして機能し、テーパシール部16内に保持されるオイル量に応じて界面の形成位置が適宜移動可能である。従って、テーパシール部16内に保持されるオイルが、オイル保持量の減少にともない後に説明する軸受部に供給されると共に、熱膨張等によって体積が増大した分のオイルは、このテーパシール部16内に収容される。
【0033】
このように、ハウジング6の傾斜状外周部6cの外周面とロータハブ2aの周壁部2dの内周面間にテーパ状間隙を形成し、表面張力を利用したテーパシール部16を構成することで、テーパシール部16がより大径となると共に、テーパシール部16の軸線方向寸法も比較的に大とすることができる。従って、テーパシール部16内の容積が増大し、フルフィル構造の動圧軸受に多量に保持されるオイルの熱膨張に対しても十分に追随可能となる。
【0034】
(2)軸受部の構成
図3に図示されるように、スリーブ8の内周面には、その上端側に、ロータ2の回転時にオイルに流体動圧を誘起するために、回転方向に対して相反する方向に傾斜する一対のスパイラル溝を連結して構成される略「く」の字状のヘリングボーングルーブ20aが形成されており、シャフト2bの外周面との間で上部ラジアル軸受部20が構成される。
【0035】
上部ラジアル軸受部20のヘリングボーングルーブ20aは、上方側に位置するスパイラル溝部が下方側に位置するスパイラル溝部よりも軸線方向寸法が大に形成されており、ロータ2の回転に応じて、軸受部の中心から下方側に偏倚した部位で動圧の極大点が発生すると同時に、オイルを下方側に押し込む圧力が生じるよう形成されている。この押し込み圧によって、上部ラジアル軸受部20よりも下方側に位置する間隙内に保持されるオイルの内圧が大気圧以上に保たれる。
【0036】
また、スリーブ8の内周面には、その下端側に、ロータ2の回転時にオイルに流体動圧を誘起するために、回転方向に対して相反する方向に傾斜する一対のスパイラル溝を連結して構成される略「く」の字状のヘリングボーングルーブ22aが形成されており、シャフト2bの外周面との間で下部ラジアル軸受部22が構成される。
【0037】
下部ラジアル軸受部22に形成されるヘリングボーングルーブ22aは、各スパイラルグルーブが実質的に同等のポンピング力を発生するよう、軸線方向の寸法、回転方向に対する傾斜角あるいは溝幅や深さといった溝諸元が同一となるよう設定される、つまり、各スパイラルグルーブが連結部に対して線対称になるよう設定されている。従って、下部ラジアル軸受部22では、軸受部の軸線方向中央部において最大動圧が現れる。
【0038】
更に、フランジ部の上方側の面には、ロータ2の回転時にオイルに対して半径方向内方(シャフト2b側)に向かう圧力を誘起するポンプインのスパイラルグルーブ24aが形成されており、ロータハブ2aの下方側面との間でスラスト軸受部24が構成される。
【0039】
尚、シャフト2bの自由端部側端面とシールブッシュ6aの内面とは、後に詳述するとおり、スラスト軸受部24のスパイラルグルーブ24aによって高められたオイルの内圧を利用する、静圧軸受部として機能する。
【0040】
(3)軸支持方法
次に、上記のとおり構成された各軸受部による軸支持方法について詳述する。
【0041】
上部及び下部ラジアル軸受20,22では、ロータ2の回転にともない、ヘリングボーングルーブ20a,22aによるポンピング力が高まり、流体動圧が生じる。上部及び下部ラジアル軸受部20,22における圧力分布は、ヘリングボーングルーブ20a,22aの両端側から急激に高まり、各スパイラルグルーブの連結部付近において極大となる。この上部及び下部ラジアル軸受部20,22で発生する流体動圧を用いて、ロータ2がスリーブ8及びシャフト2bの軸線方向上下部から支持され、ロータ2の調芯作用及び倒れに対する復元作用を担っている。
【0042】
スラスト軸受部24では、ロータ2の回転にともない、ポンプインのスパイラルグルーブ24aによって、オイルに半径方向内方に向かう圧力が誘起される。この半径方向内方に向かう圧力によって、オイルの内圧が高められ、ロータ2の浮上方向に作用する流体動圧が発生すると共に、スラスト軸受部24よりも軸受隙間の奥側(シールブッシュ6a側)に保持されるオイル全体の圧力が正圧に保たれることとなる。尚、スラスト軸受部24で誘起される流体動圧は、上部及び下部ラジアル軸受部20,22のように急激に高まることはなく、最大でも大気圧を幾分上回る程度である。このスラスト軸受部24で発生する半径方向内方に向かう圧力によって、スラスト軸受部24よりも軸受隙間の奥側に保持されているオイルは、圧力的に実質上密封された状態となる。
【0043】
また、上部ラジアル軸受部20に形成されるヘリングボーングルーブ20aを軸線方向に非対称な形状とし、オイルに対して下方側へと押圧する動圧を発生することで、その軸受部の中心部から幾分下部ラジアル軸受部22側に偏倚した部位で極大となる動圧を発生し、シャフト2bを軸線方向上方から支持すると共に、上部ラジアル軸受部20と下部ラジアル軸受部22との間の領域の圧力が大気圧以上の正圧に保たれ、負圧の発生が防止される。
【0044】
尚、上記のとおり、スラスト軸受部24で発生する圧力は、大気圧を幾分上回る程度であり、これのみでロータ2を十分に浮上させるのは困難である。しかしながら、上述のとおりシャフト2bの端面とシールブッシュの内面との間に保持されたオイルの内圧も、連通孔9を通じてスラスト軸受部24で誘起される流体動圧によって高められたオイルの内圧と同等の圧力となるよう伝播されるので、静圧軸受部として機能する。これらスラスト軸受部24と静圧軸受部との協働によって、ロータ2を十分に浮上させることが可能となる。
【0045】
また、ブラケット4のロータマグネット12との対向位置に強磁性材からなる環状のスラストヨーク26を配置し、ロータマグネット12とスラストヨーク26との間で軸線方向の磁気吸引力を発生させることで、スラスト軸受部24及びシャフト2bの端面とシールブッシュ6aの内面との間の静圧軸受部で発生するロータ2の浮上圧とバランスさせて、ロータ2のスラスト方向の支持を安定させている。このようなロータ2に対する磁気的な付勢は、例えば、ステータ14とロータマグネット12との磁気的中心を軸線方向に相違させることによっても作用させることが可能である。
【0046】
(4)連通路の構成及び作用
次に図3及び図4を参照して、本実施形態における連通路の構成及び作用について説明する。
【0047】
スリーブ8の外周面に設けられる軸線方向溝8a及び上端面に設けられる半径方向溝8bは、断面形状が略矩形状あるいは三角形状又は半円状となるようプレス加工あるいは切削加工により形成されている。尚、図3に図示される構成では、軸線方向溝8a及び半径方向溝8bは、スリーブ8に2組設けられているが、これら軸線方向溝8a及び半径方向溝8bは、少なくとも1組設けられていればよく、また、複数組設ける場合は、ロータ2の回転軸心に対して周方向等間隔に設けることが望ましい。
【0048】
スリーブ8がハウジング6に取付けられると、ハウジング6の内周面と軸線方向溝8aとの間及びフランジ部6bの下方側の面と半径方向溝8bとの間に、スリーブ8の軸線方向上端部から下端部を連続する連通路9が規定される。連通路9内には、上述したとおり一連の軸受間隙内に保持されるオイルに連続してオイルが保持されている。また、連通路9内に保持されるオイルの内圧は、各軸受部に保持されるオイルの内圧とバランスしている。
【0049】
上部及び下部ラジアル軸受部20,22が構成されるスリーブ8の内周面とシャフト2bの外周面との間に形成される微小間隙が所定の寸法を維持している場合、あるいは、ヘリングボーングルーブ20a,22aが所定の精度を維持して形成されている場合には、各軸受部に保持されるオイルは少なくともスラスト軸受部24で発生する圧力と等価となり、オイルの内圧が負圧となることはない。
【0050】
しかし、スリーブ8の内周面又はシャフト2bの外周面の加工誤差によって、スリーブ8の内周面とシャフト2bの外周面との間に形成される微小間隙が、その軸線方向上端部側が下端部側よりも広く形成されると、下部ラジアル軸受部22側の発生する動圧が上部ラジアル軸受部20で発生する動圧を上回り、軸線方向下方側から上方側へと向かうオイルの流動が発生して、シールブッシュ6a側、すなわち軸受隙間の奥側に保持されているオイルの内圧が負圧となる懸念がある。また、スリーブ8の内周面とシャフト2bの外周面との間に形成される微小間隙が、その軸線方向上端部側が下端部側よりも狭く形成された場合には、上部ラジアル軸受部に設けられたヘリングボーングルーブ22aの発生する動圧が所定圧以上となり、シャフト2bの端面とシールブッシュ6aの内面との間で負圧が発生し、また、オイルが軸線方向上端部側から下端部側へと流動する場合は、シャフト2bの端面とハウジング6のシールブッシュ6aの内面との間のオイルの内圧が必要以上に高まってロータ2の過浮上が発生する懸念がある。
【0051】
これに対し、連通路9を設けることで、スラスト軸受部24で発生した圧力が幾分減衰はされるものの、軸受隙間内のシールブッシュ6a側に保持されるオイルへと伝播されるので、通常状態では、この領域でオイルの内圧が負圧となることはない。
【0052】
また、上部ラジアル軸受部20に設けられるヘリングボーングルーブ20aを軸線方向に非対称な形状とし、オイルに対して下方側へと押圧する動圧を発生することで、上部ラジアル軸受部20と下部ラジアル軸受部22との間の領域の圧力が大気圧以上の正圧に保たれ、負圧の発生が防止されると共に、ヘリングボーングルーブ20aの発生する押圧力によって、オイルは常に下部ラジアル軸受部22、スリーブ8の下端側の端面とシールブッシュ6aの内面との間から連通孔9、更に半径方向溝8bとハウジング6のフランジ部6bの下方側面との間を経て、シャフト2bの外周面及びスリーブ8の内周面の軸線方向上端部側へと流動し、また上部ラジアル軸受部20へと環流するよう加圧され、一連の循環路が形成される。
【0053】
これにより、軸受隙間内のオイルが常に一定方向に流動することとなり、圧力の均衡がはかられるので、負圧による気泡の発生やロータ2の過浮上の発生が防止されると共に、加工誤差に対する許容範囲が格段に拡大するので、歩留まりが改善される。ところで、下部ラジアル軸受部22側で発生する流体動圧の最大圧力が上部ラジアル軸受部20で発生する押し込み圧を上回るほどに加工誤差が大きくなった場合でも、その差圧によって、オイルは上記とは逆の方向に流動して同じく循環路が形成されるので、圧力差は解消される。
【0054】
尚、連通路9の一端がスラスト軸受部24よりも半径方向内方側に開口するよう配置することで、大気圧よりも高圧な領域内でオイルの圧力が一定に保たれるようになる。このように、スラスト軸受部24によって、これよりも軸受部の奥側は圧力的に密封された状態となる。
【0055】
例えば、連通路9の一端を例えば軸受部とテーパシール部との間に開口した場合も、モータの定常回転時等軸受部で所定の動圧が発生している間は十分な支持剛性が得られているため、軸受部の接触や摺動が発生する可能性は低い。しかし、モータの停止時等モータの回転速度が低下すると、連通路9の一端が圧力的に密封された領域以外の部分、すなわち、オイルの圧力が大気圧と同等もしくはそれ以下の領域に開口していることで、軸受部内で高く維持されていたオイルの圧力が、連通路9の開口部分のオイルの圧力との差圧によって急激に低下することとなる。
【0056】
このように軸受部内の圧力が急激に低下することで、ロータ2は容易に振れ回ったり偏心したりして、シャフト2bやスリーブ8等軸受部を構成する部材に接触や摺動が発生することとなる。これは、ロータハブ2aに載置される記録ディスクを含むロータ2の重量アンバランス、モータを構成する部材の加工や組立公差あるいはステータ14とロータマグネット12との間に作用する磁気力のアンバランス等が原因と考えられるが、このような軸受部の接触や摺動がモータが停止する度に繰り返されることで、軸受部を構成する部材の摩耗や損傷が顕著となり、モータの信頼性や耐久性を低下させる。
【0057】
これに対し、連通路9をスラスト軸受部24よりも半径方向内方側に開口させることで、モータが完全に停止する直前までスパイラルグルーブ24aによるポンピングが作用し、オイルには半径方向内方側に作用する流体動圧が誘起され続ける。従って、スラスト軸受部24が圧力的な隔壁として働くので、軸受部内の圧力の低下が緩やかになり、軸受部を構成する部材の接触や摺動が緩和され、モータの信頼性や耐久性の低下が抑制される。
【0058】
(5)ディスク駆動装置の構成
図5に、一般的なディスク駆動装置50の内部構成を模式図として示す。ケーシング51の内部は塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円板状のディスク板53が装着されたスピンドルモータ52が設置されている。加えてケーシング51の内部には、ディスク板53に対して情報を読み書きするヘッド移動機構57が配置され、このヘッド移動機構57は、ディスク板53上の情報を読み書きするヘッド56、このヘッドを支えるアーム55及びヘッド56及びアーム55をディスク板53上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部54により構成される。
【0059】
このようなディスク駆動装置50のスピンドルモータ52として上記実施形態のスピンドルモータを使用することで、ディスク駆動装置50の薄型化並びに低コスト化を可能にすると同時に、スピンドルモータの安定性や信頼性及び耐久性が改善されるので、より信頼性の高いディスク駆動装置とすることができる。
【0060】
以上、本発明に従うスピンドルモータ及びこれを備えたディスク駆動装置の一実施形態について説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0061】
例えば、スリーブ8の下端面をシールブッシュ6aの内面に当接させ、スリーブ8の下端面に、その内周面と軸線方向溝8aとに連続する半径方向溝を設け、オイルの連通をはかることも可能である。
【0062】
また、スリーブ8は、アルミニウム系の材料、銅系材料、ステンレス鋼といった無垢の金属材あるいは銅粉末や鉄粉末等を焼結しオイルを含浸した多孔質の含油焼結金属材等から適宜選択して使用可能である。
【0063】
とりわけ、スリーブ8を多孔質の含油焼結金属材から形成した場合には、スリーブ8上端部付近の焼結金属材の表面開口率(単位面積あたりの空孔開口率)を、スリーブ8の内周面におけるラジアル軸受部20,22が形成される部分よりも大きくすることで、焼結金属材内の空孔を通じて、スリーブ8の内周面と外周面との間をオイルが流通可能となるので、半径方向溝8bは必ずしも設ける必要はない。
【0064】
更に、上部及び下部ラジアル軸受部20,22に形成される動圧発生溝は、オイルに対して常に一方向に向かう流動を誘起するよう配置されることが重要であり、上記実施形態では、上部ラジアル軸受部20の動圧発生溝を軸線方向に非対称な形状のヘリングボーングルーブ20aとし、下部ラジアル軸受部22の動圧発生溝を軸線方向に対称な形状のヘリングボーングルーブ22aとしているが、上部ラジアル軸受部20の動圧発生溝を軸線方向に対称な形状のヘリングボーングルーブとし、下部ラジアル軸受部22の動圧発生溝を軸線方向に非対称な形状のヘリングボーングルーブとして、オイルに対して押し込み圧を付与することも可能である。
【0065】
尚、上部ラジアル軸受部20又は下部ラジアル軸受部22の動圧発生溝として軸線方向に非対称なヘリングボーングルーブを用いるのは、オイルが常に一定方向に流動するよう押し込み圧を付与しておくことで、スリーブ8の内周面等に加工誤差が生じた場合でも、これを許容し安定して支持することができるよう、設計上余裕を持たせておくことを主な目的とするものである。従って、上部及び下部ラジアル軸受部20,22ともに軸線方向に対称なヘリングボーングルーブを設けた場合であっても、オイルに対してはスラスト軸受部24に設けられたポンプインのスパイラルグルーブ24aによって押し込み圧が付与可能であることから、上部及び下部ラジアル軸受部20,22の少なくともいずれかの動圧発生溝を必ず非対称なヘリングボーングルーブとする必要はない。
【0066】
【発明の効果】
請求項1及び2に記載のスピンドルモータによれば、オイル内の負圧の発生やロータの過浮上の発生を防止することが可能になると共に、軸受部を構成する部材の接触や摺動が抑制され、スピンドルモータの信頼性や耐久性を高く維持することが可能になる。また、スリーブをハウジングに対して取付ける際の軸線方向の位置決めが容易になるので、組立工数が削減され、モータの低コスト化が促進される。
【0067】
請求項3に記載のスピンドルモータによれば、フルフィル構造の軸受においても軸受部内のオイルを正圧に保つことができる。
【0068】
請求項4に記載のスピンドルモータによれば、加工の困難性をともなうことなく連通路を形成することが可能になり、モータのコスト増を抑制することができる。
【0069】
請求項5に記載のスピンドルモータによれば、シール部の容積が増大しモータの信頼性や耐久性を向上することができる。また、オイルミストによる軸受外部へのオイルの流出をより効果的に防止することができる。
【0070】
請求項6に記載のスピンドルモータによれば、ロータをより効率的且つ安定して支持することができる。
【0071】
請求項7に記載のディスク駆動装置によれば、薄型化並びに低コスト化を可能にすると同時に、スピンドルモータの安定性や信頼性及び耐久性が改善されるので、より信頼性の高いディスク駆動装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のスピンドルモータの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスピンドルモータの概略構成を示す断面図である。
【図3】図2に図示するスピンドルモータのスリーブの構成を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図4】図2に図示するスピンドルモータの軸受部の構成を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図5】ディスク駆動装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
2 ロータ
2a シャフト
6 ハウジング
6b フランジ部
8 スリーブ
9 連通路
20,22 ラジアル軸受部
24 スラスト軸受部
Claims (7)
- シャフトと、該シャフトが挿通される軸受穴を有する円筒状スリーブと、該スリーブを保持する内周面と該シャフトの端面と軸線方向に対向する閉塞端面とを有する一方開口の円筒状ハウジングと、該シャフトとともに回転するロータとを備えてなるスピンドルモータであって、
前記ロータは、前記シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する円周状平坦面を有し、
前記ハウジングの開口側端部には、前記シャフトが挿通される中央開口を有すると共に、前記ロータの平坦面と軸線方向に対向する平坦面を有する周状のフランジ部が内径側に設けられており、
前記ロータの平坦面とこれに軸線方向に対向する前記フランジ部の平坦面との間及び、前記シャフトの外周面と前記軸受穴の内周面との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、
前記フランジ部の平坦面と前記ロータの平坦面との間には、前記ロータの回転時に前記オイルに対して半径方向内方側に作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたスラスト軸受部が形成され、
前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間には、前記ロータの回転時に前記オイルに対して軸線方向両側から作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたラジアル軸受部が形成されており、
前記スリーブの外周面と前記ハウジングの内周面との間には、前記スリーブの上端面と下端面とに開口する軸線方向連通路が形成され、
前記スリーブの上端が前記フランジ部に当接されると共に、前記スリーブの上端面と前記フランジ部の下方側の面との間には、前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間に形成される軸受隙間の軸線方向上端部と前記軸線方向連通路の上端部とに連通する半径方向連通路が形成され、
前記スリーブの下端面と前記ハウジングの閉塞端面との間には、前記軸受隙間の軸線方向下端部と前記軸線方向連通路の下端部とに連通する連通路が形成され、
これら連通路により当該軸受隙間内の圧力の均衡がはかられている、ことを特徴とするスピンドルモータ。 - シャフトと、該シャフトが挿通される軸受穴を有する円筒状スリーブと、該スリーブを保持する内周面と該シャフトの端面と軸線方向に対向する閉塞端面とを有する一方開口の円筒状ハウジングと、該シャフトとともに回転するロータとを備えてなるスピンドルモータであって、
前記ロータは、前記シャフトの外周面から半径方向外方に延伸する円周状平坦面を有し、
前記ハウジングの開口側端部には、前記シャフトが挿通される中央開口を有すると共に、前記ロータの平坦面と軸線方向に対向する平坦面を有する周状のフランジ部が内径側に設けられており、
前記ロータの平坦面とこれに軸線方向に対向する前記フランジ部の平坦面との間及び、前記シャフトの外周面と前記軸受穴の内周面との間には、オイルで満たされた一連の軸受隙間が形成され、
前記フランジ部の平坦面と前記ロータの平坦面との間には、前記ロータの回転時に前記オイルに対して半径方向内方側に作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたスラスト軸受部が形成され、
前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間には、前記ロータの回転時に前記オイルに対して軸線方向両側から作用する圧力を付与する形状の動圧発生溝が設けられたラジアル軸受部が形成されており、
前記スリーブの外周面と前記ハウジングの内周面との間には、前記スリーブの上端面と下 端面とに開口する軸線方向連通路が形成され、
前記スリーブの下端が前記ハウジングの閉塞端面に当接されると共に、前記スリーブの下端面と前記ハウジングの閉塞端面との間には、前記軸受穴の内周面と前記シャフトの外周面との間に形成される軸受隙間の軸線方向下端部と前記軸線方向連通路の下端部とに連通する半径方向連通路が形成され、
前記スリーブの上端面と前記フランジ部の下方側の面との間には、前記軸受隙間の軸線方向上端部と前記軸線方向連通路の上端部とに連通する連通路が形成され、
これら連通路により当該軸受隙間内の圧力の均衡がはかられている、ことを特徴とするスピンドルモータ。 - 前記スラスト軸受部には、前記動圧発生溝としてポンプイン形状のスパイラル溝が設けられており、また前記ラジアル軸受部は、前記シャフトの外周面と前記軸受穴の内周面との間に軸線方向に離間して一対構成されていると共に、該一対のラジアル軸受部のうち少なくともいずれか一方のラジアル軸受部には、前記動圧発生溝として前記オイルを前記ハウジングの開口端側から閉塞端側へと押圧する軸線方向にアンバランスな形状のヘリングボーン溝が設けられている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスピンドルモータ。
- 前記軸線方向連通路は、前記スリーブの外周面に形成された軸線方向溝と前記ハウジングの内周面とによって構成される、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスピンドルモータ。
- 前記ロータには前記平坦面から垂下し且つ前記ハウジングの外周面と間隙を介して半径方向に対向する円筒壁が設けられ、また前記ハウジングの外周面には、前記ロータの平坦面から離れるにしたがって外径が縮径するようテーパ面が設けられ、前記オイルは該テーパ面と該円筒壁の内周面との間でメニスカスを形成して保持されている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスピンドルモータ。
- 前記ロータは、前記スラスト軸受部で誘起される前記ロータに対する浮上力作用方向とは軸線方向反対側に向かって軸線方向に作用する磁気力によって付勢されている、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のスピンドルモータ。
- 情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク駆動装置において、ケーシングと、該ケーシングの内部に固定され該記録媒体を回転させるスピンドルモータと、該記録媒体の所要の位置に情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク駆動装置であって、
前記スピンドルモータは、請求項1乃至6のいずれかに記載したスピンドルモータである、ことを特徴とするディスク駆動装置。
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