JP3842499B2 - 動圧型軸受ユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、動圧型軸受ユニットに関する。この軸受ユニットは、特に情報機器、例えばHDD、FDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、DVD−ROM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置などのスピンドルモータ、あるいはレーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータなどのスピンドル支持用として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
上記各種情報機器のスピンドルモータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化などが求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の一つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、この種の軸受として、上記要求性能に優れた特性を有する動圧型軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
【0003】
図5は、この種の動圧型軸受ユニットの概略構造を示す断面図で、軸2’の外周側に配置した円筒状の軸受部材7’の内周面に動圧発生部A’、B’を軸方向に離隔配設し、この動圧発生部A’、B’で軸2’の回転時にラジアル軸受すきまCr’に潤滑油の動圧を発生させて軸2’を回転自在に非接触支持する構造である。図6に示すように、動圧発生部A’、B’のそれぞれには、一方に傾斜する動圧溝14’が配列された第一の溝領域m1と、第一の溝領域m1から軸方向に離隔し、他方に傾斜する動圧溝14’が配列された第二の溝領域m2と、二つの溝領域m1、m2間に位置する環状の平滑部nとを備え、平滑部nと動圧溝14’間の背の部分15’は同レベルにある(クロスハッチングで示す)。また、二つの動圧発生部A’、B’の間には円周方向溝16’があり、この円周方向溝16’は両隣にある動圧発生部A’、B’の動圧溝14’と同レベルである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、例えばノート型パソコンへの搭載等を考慮し、上記軸受ユニットのさらなるコンパクト化、特に軸方向寸法の短縮化(薄型化)の要求が高まっている。この対策としては、軸受部材7’の軸方向長さを短くすることが有効であるが、その場合には軸方向長さの短縮に伴って動圧発生部A’、B’間のスパンが減少するため、モーメント負荷に対する支持力が低下し、軸受ユニット全体のモーメント負荷容量が低下する。
【0005】
そこで本発明は、動圧型軸受ユニット全体でのモーメント負荷容量の増大を図ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明にかかる動圧型軸受ユニットは、軸と、軸の外周側に配置され、油を含浸させた多孔質材からなる軸受部材と、軸の外周面と軸受部材の内周面との間に設けられたラジアル軸受隙間と、軸受部材の内周面に、ラジアル軸受すきまに面して軸方向に離隔配設され、回転側の部材の回転時に上記ラジアル軸受すきまに流体の動圧を発生させて回転側部材を非接触支持する一対の動圧発生部とを具備するものにおいて、一方又は双方の動圧発生部が、円周方向に連続した平滑なランド部と、ランド部の内側に設けられ、回転側部材の回転時にランド部に上記流体を押し込む複数の動圧発生溝とをそれぞれ具備し、動圧発生部のうちで最大の動圧を生じる最大圧力部を、当該動圧発生部の軸方向中心よりもランド部側にそれぞれシフトさせ、動圧発生部を圧縮成形してその表面の開孔部の分布を均一にしたものである。
【0007】
これにより、それぞれの動圧発生部での最大圧力部間の軸方向距離が増大するため、モーメント負荷に対する剛性を高めることができる。つまり、図5および図6に示す従来品では、各動圧発生部A’、B’の軸方向中央部分、すなわち平滑部nに流体が集められるため、図7に示すように、動圧の圧力分布は動圧発生部A’、B’の軸方向中心O A ’、O B ’(平滑部n)付近で最大となる。この最大圧力部17’を図3に示すように動圧発生部A、Bの軸方向中心O A 、O B よりも外側にシフトすれば、最大圧力部17間の距離Lを従来品の当該距離L'よりも増大させることができ、これによりモーメント負荷に対する支持力を向上させることができる。最大圧力部のシフトは、上記のように双方の動圧発生部で行う他、何れか一方の動圧発生部でのみ行ってもよい。
【0009】
この場合、軸または軸受部材の何れか一方が回転側部材、他方が固定側部材となる。一対の動圧発生部は、軸受部材の内周面に設けられるが、この場合、軸受部材を油を含浸させた多孔質材で形成すれば、圧縮成形により動圧発生部を低コストに加工することができる。多孔質材としては、焼結金属が望ましい。
【0010】
一対の動圧発生部間に流体を補給する補給手段を設けることにより、両動圧発生部に流体を円滑に補給することが可能となる。この補給手段は、動圧発生部間に開口した流体流路で構成したり、流体としての油を含浸させた多孔質材で構成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1乃至図4に基いて説明する。
【0012】
図4は、本発明にかかる動圧型軸受ユニット1を備える情報機器用スピンドルモータの断面図で、一例としてHDD(ハードディスクドライブ)スピンドルモータを示している。このスピンドルモータは、スピンドルとなる軸部材2を回転自在に支持する軸受ユニット1と、軸部材2に取付けられ、磁気ディスクDを一又は複数枚保持するディスクハブ3と、半径方向のギャップを介して対向させたモータステータ4およびモータロータ5とを有する。ステータ4は、軸受ユニット1を保持するケーシング9の円筒状外周部に取付けられ、ロータ5はディスクハブ3の内周面に取付けられている。ステータ4に通電すると、ステータ4とロータ5との間の励磁力でロータ5が回転し、ディスクハブ3および軸部材2が回転する。
【0013】
軸受ユニット1は、軸部材2と、有底円筒状のいわゆる袋型ハウジング6と、ハウジング6の内周面に固定された厚肉円筒状の軸受部材7と、軸受部材7の一端側(ハウジング6の開口側)を密封するシールワッシャ等のシール部材8とを主な構成要素とする。軸部材2は、軸2aと軸2aの下端部に設けられ、外径側に突出するスラスト円盤2b(フランジ部)とで構成される。この軸部材2は、軸2aを軸受部材7の内周部に、フランジ部2bを軸受部材7とハウジング6の底部との間に収容して垂直姿勢で配置される。
【0014】
軸受部材7の内周面には、後述の動圧発生部A、Bを有するラジアル軸受面10aが形成され、これより軸部材2と軸受部材7の相対回転時(本実施形態では軸部材2の回転時)には、固定側のラジアル軸受面10aと回転側の軸2aの外周面との間のラジアル軸受隙間Crに潤滑油の動圧が発生し、軸2aをラジアル方向で非接触支持するラジアル軸受部10が構成される。
【0015】
軸受部材は、焼結金属などの多孔質材によって成形される。焼結金属を使用する場合の動圧溝は、圧縮成形、すなわち、コアロッドの外周面にラジアル軸受面10aの動圧溝形状(図2参照)に対応した凹凸形状の溝型を形成し、コアロッドの外周に焼結金属を供給して焼結金属を圧迫し、焼結金属の内周部に溝型形状に対応した動圧溝を転写することによって、低コストにかつ高精度に成形することができる。この場合、焼結金属の脱型は、圧迫力を解除することによる焼結金属のスプリングバックを利用して簡単に行える。脱型後の軸受部材7に潤滑剤、例えば潤滑油や潤滑グリースを含浸して油を保有させることにより、動圧型焼結含油軸受が構成される。なお、動圧溝サイジングを行う前に、多孔質材の内部に回転サイジングを施し、当該内径面の開孔部の分布を予め均一化させておくのが望ましい。
【0016】
フランジ部2bの軸方向両側には、軸方向の隙間であるスラスト軸受隙間Cs1、Cs2が設けられる。スラスト軸受隙間Cs1は、フランジ部2bの上端面とこれに対向する軸受部材7の端面との間に形成され、他方のスラスト軸受隙間Cs2は、フランジ部2bの下端面と、これに対向するスラスト支持部13の上面との間に形成される。本実施形態は、スラスト支持部13をハウジング6の他端開口を封口する底部とし、かつハウジング6と一体に形成した場合を例示しているが、スラスト支持部13をハウジング6と別体に構成してもよい。一方のスラスト軸受隙間Cs1を臨む軸受部材7の下端面、および他方のスラスト軸受隙間Cs2を臨むスラスト支持部13の上面には、それぞれ動圧溝を有するスラスト軸受面11a、11bが形成され、これより軸部材2の回転時には、スラスト軸受隙間Cs1、Cs2に潤滑油の動圧が発生し、フランジ部2bをスラスト方向両側から非接触支持するスラスト軸受部11が構成される。
【0017】
上記軸受ユニット1は、ハウジング6内にフランジ部2bを下にして軸部材2を挿入し、さらに所定幅のスラスト軸受隙間Cs1、Cs2が形成されるようにハウジング6内周部の所定位置に、軸受部材7を圧入あるいは接着することにより組立てられる。そして、この軸受ユニット1をケーシング9の円筒状内周部に圧入あるいは接着し、さらにロータ5やディスクハブ3からなるアッセンブリ(モータロータ)を軸2aの上端に圧入することにより、図4に示すスピンドルモータが組立てられる。
【0018】
本発明では、ラジアル軸受面10aに図1および図2に示すように、軸方向に離隔する第一および第二動圧発生部A、Bがラジアル軸受面10aの軸方向中心線Pを挟んで対称に形成される。軸方向一端側(図面上方)の第一動圧発生部Aは、円周方向に連続した平滑かつ環状のランド部13aと、ランド部13aの内側(第二動圧発生部B側)に隣接して円周方向に等間隔に配列された複数の動圧発生溝14a(以下、「動圧溝」と称する)とを具備する。ランド部13aは、ラジアル軸受面10aの上記一端部に設けられ、かつ動圧溝14a間の背の部分15aと同レベルで形成される(ランド部13aおよび背の部分15aにクロスハッチングを付している)。動圧溝14aは、軸部材2の回転時に油をランド部13aに押し込む方向に傾斜している。第二動圧発生部Bは、第一動圧発生部Aと同様に、ラジアル軸受面10aの軸方向他端部に設けられたランド部13bと、このランド部13bの内側(第一動圧発生部A側)で当該ランド部13bに油を押し込む方向に傾斜した複数の動圧溝14bと、動圧溝14b間の背の部分15bとを有する。両動圧発生部A、Bの動圧溝14a、14bは、両動圧発生部A、B間に設けられた円周方向の溝16を介して連続している。両動圧溝14a、14bおよび円周方向溝16の溝底は、同レベルに形成される。
【0019】
上記構成におけるラジアル軸受面10aでの動圧の圧力分布を図3に示す。図示のように動圧の最大圧力部17は両動圧発生部A、Bのランド部13a、13bの縁で生じるが、ランド部13a、13bはそれぞれラジアル軸受面10aの両端部に設けられ、両動圧発生部A、Bの軸方向中心O A 、O B よりも外側にシフトした位置にあるため、最大圧力部17間の距離Lが従来品(図7参照)の距離L'(O A ’、O B ’間の距離)よりも拡大する。従って、軸部材2に作用するモーメント負荷に対する支持力を増し、軸受ユニットのモーメント負荷容量を増大させることが可能となる。
【0020】
上記実施形態は、ラジアル軸受面10aの中央部(円周方向溝16の近傍)から軸方向両端に向けて油を押し込む構造であるから、油の押し込みを継続すべくラジアル軸受面10aの中央部へ油を補給する補給手段が別途必要となる。図1に示すように、補給手段19は、例えば油の供給路19aを動圧発生部A、B間の円周方向溝16に開口させて構成することができる。供給路19aの他端は軸受部材7の端面などに開口させる。これより軸受部材7の端面に面した空間に存在する潤滑油が供給路19aに引き込まれため、軸受部材7を軟質金属等で形成した場合にも円周方向溝16に十分な量の油を供給することができ、動圧発生部A、Bでの動圧の発生を円滑に保持することができる。
【0021】
軸受部材7を焼結金属で形成した場合は、軸受部材7内部の油が軸受部材7の内周面の細孔から滲み出すため、上記供給路19aは不要となる。つまり、この場合は、円周方向溝16近傍の含油焼結金属自身が補給手段19としての役割を果たすことになる。
【0022】
以上の説明では、動圧発生部A、Bを軸受部材7のラジアル軸受面10aに形成する場合を説明したが、軸2aの外周面に同形状の動圧発生部を形成しても同様の効果が得られる。この場合の動圧発生部A、Bの加工は、上記圧縮成形によらずとも通常の機械加工やエッチング加工等を利用して行うことができる。また、流体として油を例示しているが、空気等の他の流体を使用することもできる。
【0023】
なお、図1乃至図4においては、ラジアル軸受隙間Crやスラスト軸受隙間Cs1、Cs2の幅、動圧溝の深さ等は誇張して描かれている。
【0024】
【発明の効果】
このように本発明によれば、動圧の圧力中心間の距離を増大させているので、動圧型軸受ユニット全体のモーメント負荷容量を増大させることができる。従って、動圧型軸受ユニットのさらなる薄型化が可能となり、特に薄型化の要請の強い2.5インチディスク用のHDDスピンドルモータに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる動圧型軸受ユニットの概略構造を示す断面図である。
【図2】上記動圧型軸受ユニットの動圧発生部を示す展開平面図である。
【図3】上記動圧発生部での圧力分布を示す断面図である。
【図4】動圧型軸受ユニットを有するスピンドルモータの断面図である。
【図5】従来の動圧型軸受ユニットの概略構造を示す断面図である。
【図6】従来の動圧型軸受ユニットの動圧発生部を示す展開平面図である。
【図7】従来の動圧発生部での圧力分布を示す断面図である。
【符号の説明】
2 軸部材
2a 軸
7 軸受部材
10a ラジアル軸受面
13a ランド部
13b ランド部
14a 動圧発生溝
14b 動圧発生溝
17 最大圧力部
19 補給手段
19a 供給路
A 第一動圧発生部
B 第二動圧発生部
O A 第一動圧発生部の軸方向中心
O B 第二動圧発生部の軸方向中心
Cr ラジアル軸受すきま
Claims (4)
- 軸と、軸の外周側に配置され、油を含浸させた多孔質材からなる軸受部材と、軸の外周面と軸受部材の内周面との間に設けられたラジアル軸受隙間と、軸受部材の内周面に、ラジアル軸受すきまに面して軸方向に離隔配設され、回転側の部材の回転時に上記ラジアル軸受すきまに流体の動圧を発生させて回転側部材を非接触支持する一対の動圧発生部とを具備するものにおいて、
一方又は双方の動圧発生部が、円周方向に連続した平滑なランド部と、ランド部の内側に設けられ、回転側部材の回転時にランド部に上記流体を押し込む複数の動圧発生溝とをそれぞれ具備し、動圧発生部のうちで最大の動圧を生じる最大圧力部を、当該動圧発生部の軸方向中心よりもランド部側にそれぞれシフトさせ、動圧発生部を圧縮成形してその表面の開孔部の分布を均一にした動圧型軸受ユニット。 - 上記一対の動圧発生部間に流体を補給する補給手段が設けられている請求項1記載の動圧型軸受ユニット。
- 流体の補給手段が、動圧発生部間に開口した流体流路で構成されている請求項2記載の動圧型軸受ユニット。
- 流体の補給手段が、当該流体としての油を含浸させた多孔質材で構成されている請求項2記載の動圧型軸受ユニット。
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