JP4233771B2 - 動圧型軸受ユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧により、軸部材を非接触支持する動圧型軸受ユニットに関するものであり、特に情報機器用スピンドルモータのスピンドル支持用に好適な軸受ユニットに関する。ここでいう「情報機器用スピンドルモータ」には、例えばCD−R/RW、DVD−ROM/RAMなどの光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、HDDなどの磁気ディスクを駆動するスピンドルモータ、あるいはレーザビームプリンタ(LBP)や複写機のポリゴンスキャナモータなどが含まれる。
【0002】
【従来の技術】
上記各種情報機器用スピンドルモータのスピンドルを支持する軸受としては、従来、転がり軸受が一般的であったが、近年では、高回転精度、低コスト、低騒音等の優れた特徴を備える動圧型軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
【0003】
この動圧型軸受を用いた軸受ユニットとしては、図4に示すように、含油焼結金属からなる軸受部材800の内周と軸部材200(スピンドル)の外周との間にラジアル軸受隙間260を形成すると共に、軸部材200の軸端にフランジ部201を設けてフランジ部201の軸方向両側にスラスト軸受隙間360,460を形成し、軸部材200の回転時に、各軸受隙間260,360,460に面した動圧溝で各軸受隙間260,360,460にくさび形潤滑流体膜による動圧を発生させてラジアル方向およびスラスト方向で軸部材200と軸受部材800を非接触に保持するものが知られている。
【0004】
図5に示すように、ラジアル軸受隙間260に面する動圧溝210は、例えば軸受部材800の内周二箇所に設けたラジアル軸受面220,230に形成される。従来、両ラジアル軸受面220,230には、一方に傾斜した動圧溝210を有する溝領域m1’と、他方に傾斜した動圧溝210を有する溝領域m2’とが軸方向で対称に形成されている。
【0005】
また、図6(A)(B)に示すように、スラスト軸受隙間360,460に面する動圧溝310、410は、それぞれスパイラル型やへリングボーン型に配列して、例えばハウジング700の底部710の端面(スラスト受け900)や軸受部材800の端面810に設けたスラスト軸受面320,420にそれぞれ形成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に動圧型軸受では、安定した動圧作用や高回転精度を得るため、ラジアル軸受面やスラスト軸受面に高精度の動圧溝深さ(例えば12±2μm)と平面度(例えば2μm以下)とが必要とされる。
【0007】
上記各軸受面のうち、軸受部材800に形成されるラジアル軸受面220,230やスラスト軸受面420については、軸受部材800が多孔質材で形成されているため、プレスでも上記基準を満たすような高精度の加工は比較的容易である。これに対し、スラスト受け900に形成されるスラスト軸受面320は、ハウジング700の底部710が銅や真ちゅう等の金属材料(軟質金属)で形成されているため、高精度にプレスするには、プレススピード、プレス圧力、あるいはプレス後の型保持時間などを厳密に管理する必要があり、これらの精密制御を行い得る特殊なプレス装置が新たに必要となって設備投資が高騰する。また、このような精密加工が要求されるため、サイクルタイムの短縮化にも限界がある。
【0008】
上記スラスト軸受面320は、スラスト受け900の他、これに対向するフランジ部201の端面に形成することも可能であるが、通常、フランジ部201はステンレス鋼等の金属材料で形成されるため、上記と同様の問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、高回転精度を有し、かつ低コストに製造可能の動圧型軸受ユニットの提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的の達成のため、本発明では、軸部材と、軸部材の外周に配置した軸受部材と、軸部材の端面と対向するスラスト受けと、一端を開口すると共に、他端を閉じた有底筒状をなし、内周に軸受部材が固定され、底部にスラスト受けが設けられたハウジングと、軸部材の外周と軸受部材の内周との間にラジアル軸受隙間を備える動圧型のラジアル軸受部と、軸部材をスラスト一方向で支持する第一スラスト軸受部と、軸部材をスラスト他方向で支持する第二スラスト軸受部とを有する動圧型軸受ユニットにおいて、第一スラスト軸受部に第一スラスト軸受隙間を、第二スラスト軸受部に第二スラスト軸受隙間をそれぞれ設け、ラジアル軸受部に、軸方向両側で非対称に形成された動圧溝を有し、かつラジアル軸受隙間と面するラジアル軸受面を設け、第一スラスト軸受隙間の受圧面積を、第二スラスト軸受隙間のそれよりも大きくし、両スラスト軸受隙間のうち、少なくとも第一スラスト軸受隙間と軸方向両側で対向する面を何れも平滑面とし、ハウジングの内部が、軸受部材の開口側端面に配置したシール部材と軸部材との間の隙間を介してのみ大気に開放され、ラジアル軸受隙間および両スラスト軸受隙間を油で満たし、ラジアル軸受面に設けた前記動圧溝で、ラジアル軸受隙間の油を第二スラスト軸受隙間と、これに連通する第一スラスト軸受隙間に押し込み、両スラスト軸受隙間で油の圧力を発生させて軸部材をスラスト両方向で支持することを特徴とする。
【0011】
このように、ラジアル軸受隙間から第一および第二スラスト軸受隙間に押し込まれた潤滑流体が両スラスト軸受隙間で圧力を発生する結果、第一および第二スラスト軸受部は、いわば静圧軸受と同等の機能を果たし、軸部材をスラスト両方向で支持する。この場合、軸部材は、ラジアル方向およびスラスト両方向で非接触支持されるので、図4に示す従来の動圧型軸受ユニットと同様に低騒音化、あるいは高回転精度化を達成することができる。また、スラスト軸受部の少なくとも一方では、動圧溝等の動圧発生部を省略することが可能となる。
【0012】
ラジアル軸受面に設けた軸方向両側で非対称形状の動圧溝は、ラジアル軸受面の溝形状を変更するだけで、つまりプレス加工時の型を変更するだけで簡単に形成できるので、低コストに押し込み機能を得ることができる。非対称形状の動圧溝は、従来のようにラジアル軸受面の軸方向中央部に潤滑流体を押し込むものではなく、図3(A)に示すように、主として軸方向一方側(スラスト軸受部側)へ潤滑流体を押し込む形状とする。例えば軸方向の両側の溝領域m1、m2のうち、軸方向他方側の溝領域m1で動圧溝長さを長くすることにより、軸方向一方側への潤滑流体の押し込み力を強化し、各スラスト軸受隙間に潤滑流体を押し込むことが可能となる。
【0013】
図2に示すように、軸部材2が軸端にフランジ部2bを有するものである場合、第一スラスト軸受隙間36の受圧面積(スラスト方向の圧力を受ける面の面積)は第二スラスト軸受隙間46の受圧面積よりも軸径分だけ大きくなる。このように両スラスト軸受隙間の受圧面積が異なる場合、両スラスト軸受部で生じるスラスト支持力に差が生じるので、スラスト支持力をスラスト両方向で最適値に配分することが可能となる。
【0014】
両スラスト軸受隙間のうち、少なくとも受圧面積の大きい第一スラスト軸受隙間と軸方向両側で対向する面を何れも平滑面に形成することにより、両面に動圧溝等の動圧発生部を形成するための加工が不要となり、製造コストの低減化が可能となる。ここでの「平滑面」は、動圧溝等の動圧発生部のない平面を意味する。
【0015】
以上に述べた第一スラスト軸受隙間は、例えばスラスト受けと、これに対向する軸部材の一端面との間に形成することができる。
【0016】
スラスト受けの端面は、軸受の起動・停止時に軸部材と接触するので、接触時の摩擦低減を図るため、スラスト受けに軸部材の一端面と接触可能の突出部を形成するのが望ましい。
【0017】
受圧面積の小さい第二スラスト軸受隙間では、軸部材のスラスト支持力が不足するため、スラスト支持力のバランスが崩れる。従って、この場合には、第二スラスト軸受部に動圧型軸受を付加するのが望ましい。
【0018】
ここでいう「動圧型軸受」は、回転部材と静止受部材の相対運動によるくさび形潤滑膜で発生する動圧によって荷重を支持するものをいう。動圧を発生させる動圧発生部の構造は任意で、軸受面にへリングボーン型やスパイラル型の動圧溝を形成する他、ステップ型や多円弧型の軸受面でも動圧発生部を確保することができる。
【0019】
第二スラスト軸受隙間は、軸受部材の端面と、これに対向する軸部材の他端面との間に形成することができる。この際、加工性を考えると、上記動圧発生部は軸受部材の端面に形成するのが望ましい。
【0020】
軸受部材を多孔質材料、例えば含油焼結金属で形成すれば、圧縮成形により、動圧発生部を有する軸受面を軸受部材の内周や端面に精度よくかつ低コストに形成することができる。特に含油焼結金属を使用した場合、軸受部材の表面から滲み出した潤滑流体が軸受隙間に次々と補充されるので、各軸受隙間での油膜剛性を高めることができるという独自の効果も得られる。
【0021】
以上に説明した動圧型軸受ユニットを備える情報機器用スピンドルモータは、良好な回転精度を有するため、上記情報機器における情報の記録・再生精度や印字精度を高めることができ、しかも低コストに組み立て可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明にかかる動圧型軸受ユニット1を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一例を示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスクドライブとして使用されるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧型軸受ユニット1と、ギャップを介して対向させたモータステータ4およびモータロータ5とを備えている。軸部材2の軸端には、一または複数の磁気ディスクDを支持するディスクハブ3が装着されており、このディスクハブ3の内周にロータ5が取り付けられている。ステータ4は、内周に動圧型軸受ユニット1を固定したケーシング6の外周に取り付けられている。ステータ4に通電すると、ステータ4とロータ5との間の励磁力でロータ5が回転し、それによってディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
【0024】
図2は、動圧型軸受ユニット1の拡大断面図である。この動圧型軸受ユニット1は、軸部材2と、円筒状の内周面を有するハウジング7と、ハウジング7の内周面に固定された円筒状の軸受部材8とを主要な構成要素とする。
【0025】
軸部材2は、例えばステンレス鋼(SUS420J2)等の金属材で形成され、軸部2aと軸部2aに一体または別体に設けられたフランジ部2bとを備えている。本実施形態では、フランジ部2bを軸部2aの軸端に設けた場合を例示している。
【0026】
ハウジング7は、例えば真ちゅう等の軟質金属材で形成される。このハウジング7は一端を開口すると共に、他端を閉じた有底筒状のもので、開口部を上にしてケーシング6の内周に固定される[以下の説明では、ハウジングの開口側(図面上方)を「開口側」と称し、その軸方向反対側(図面下方)を「反開口側」と称する]。ハウジング7の反開口側は底部7aによって封口される。ハウジング底部7aは、ハウジング7の円筒部分7bと一体成形する他、図4と同様に別部材で形成することもできる。
【0027】
この底部7aの端面9は、軸部材2の端面(具体的にはフランジ部2bの端面2b1)と対向するスラスト受けとして機能する。スラスト受け9には、環状に形成し若しくは円周方向の複数箇所に突設した突出部10が設けられる。
【0028】
軸受部材8は、例えば多孔質材、望ましくは焼結金属に潤滑油あるいは潤滑グリースを含浸させて空孔内に油を保有させた含油焼結金属で形成される。焼結金属としては、例えば銅系、あるいは鉄系、またはその双方を主成分とするものが使用でき、望ましくは銅を20〜95%使用して形成される。軸受部材8の開口側端面には、シールワッシャ等のシール部材11が配置されており、このシール部材11によって軸受部材8の内周と軸部2aの外周との間の隙間がシールされる。
【0029】
軸受部材8の内周面には、複数の動圧溝21を有する二種類のラジアル軸受面22,23が形成される。ラジアル軸受面22,23の動圧溝形状は、各動圧溝21が軸方向に対して傾斜している限り任意に選択することができ、例えば図示のようなへリングボーン型の他、スパイラル型等も使用することができる。図3(A)に示すようにラジアル軸受面22,23は、一方に傾斜する動圧溝21が円周方向に配列された第一の溝領域m1と、第一の溝領域m1から軸方向に離隔し、他方に傾斜する動圧溝21が円周方向に配列された第二の溝領域m2と、二つの溝領域m1、m2間に位置する環状の平滑部nとを備える。二つの溝領域m1、m2の動圧溝21は平滑部nで区画されて非連続になっており、平滑部nと動圧溝21間の背の部分24とは同一レベルにある。
【0030】
ラジアル軸受面22,23のうち、開口側の軸受面22(第一ラジアル軸受面)は、平滑部nの軸方向中心を通る円周方向の中心線に対して軸方向両側で対称に形成され、従って、二つの溝領域m1、m2の軸方向幅は等しくなっている。一方、反開口側の軸受面23(第二ラジアル軸受面)は、上記中心線に対して軸方向両側が非対称に形成される。二つの溝領域m1、m2のうち、開口側の溝領域m1の軸方向幅、すなわち動圧溝21の長さは、他方の領域m2のそれよりも長くなっている。この非対称形状の動圧溝21は、後述するように潤滑流体としての油をハウジング底部7a側に押し込む圧力発生機構25としても機能する。
【0031】
軸受部材8の反開口側端面には、図3(B)に示すようにスラスト軸受面42が形成される。スラスト軸受面42は、動圧を発生させるための動圧発生部を有するもので、図面では、動圧発生部として動圧溝41をヘリングボーン型に配列した場合を例示している。この他、動圧溝をスパイラル型に配列してもよく、あるいはステップ型等の形状の軸受面を使用することもできる。
【0032】
ラジアル軸受面22,23の動圧溝は、圧縮成形、すなわち図示しないコアロッドの外周面に軸受面22,23の動圧溝形状に対応した成形型を形成し、コアロッドの外周に軸受部材8の素材である焼結金属を供給して焼結金属を圧迫し、焼結金属の内周部に成形型の形状に対応した動圧溝を転写することによって、低コストにかつ高精度に成形することができる。なお、焼結金属の脱型は、圧迫力を解除することによる素材のスプリングバックを利用して簡単に行える。脱型後の軸受部材8に潤滑剤、例えば潤滑油や潤滑グリースを含浸させることにより、含油焼結金属が得られる。
【0033】
また、スラスト軸受面42も同様の圧縮成形、すなわち、焼結金属の一方の端面にスラスト軸受面42の動圧溝形状に対応した成形型を押し当て、焼結金属の端面に成形型の形状に対応した動圧溝を転写することによって成形することができる。この際、型内でラジアル軸受面22,23に対応した成形型とスラスト軸受面42に対応した成形型とを同時に焼結金属に押し当てることにより、ラジアル軸受面22,23とスラスト軸受面42とを同時に成形することができる。ラジアル軸受面22,23とスラスト軸受面42を別工程で成形する場合は、後工程において先に成形した軸受面の精度低下を生じる懸念があるが、型内での同時成形であればそのような問題も生じない。以上の工程から、ラジアル軸受面22,23やスラスト軸受面42を要求精度(動圧溝深さ12±2μm、平面度2μm以下)に仕上げることが可能となる。
【0034】
軸部2aは軸受部材8の内周に挿入され、フランジ部2bは軸受部材8の反開口側の端面8bとスラスト受け9との間の空間部に収容される。これにより、軸受ユニット1には、▲1▼軸部2aの外周面と軸受部材8の内周面との間にラジアル軸受隙間26を有するラジアル軸受部20、▲2▼フランジ部2bの反開口側端面2b1とスラスト受け9との間に第一スラスト軸受隙間36を有する第一スラスト軸受部30、および、▲3▼フランジ部2bの開口側端面2b2と軸受部材8の反開口側端面8bとの間に第二スラスト軸受隙間46を有する第二スラスト軸受部40、がそれぞれ形成される。
【0035】
ラジアル軸受隙間26と第二スラスト軸受隙間46は連通状態にあり、第二スラスト軸受隙間46はフランジ部2b外周の環状隙間12を介して第一スラスト軸受隙間36と連通状態にある。このように互いに連通状態にあるラジアル軸受隙間26および両スラスト軸受隙間36,46は潤滑流体となる油で満たされている。
【0036】
軸部材2と軸受部材8の相対回転時(本実施形態では軸部材2の回転時)には、二つのラジアル軸受面22,23の動圧溝21によってラジアル軸受隙間26にくさび形潤滑油膜が形成され、その動圧によって軸部材2が軸受部材8に対してラジアル方向で非接触に保持される。この際、第二ラジアル軸受面23では、くさび形潤滑油膜の形成領域が第二ラジアル軸受面23の軸方向中心よりも反開口側よりに移行するため、油の一部は、ラジアル軸受隙間26と連通状態にある第二スラスト軸受隙間46、さらにはこれと連通状態にある第一スラスト軸受隙間36に押し込まれ、両軸受隙間46,36で圧力を生じる。そして、各スラスト軸受隙間36,46に押し込まれた油の圧力により、軸部材2がスラスト両方向から支持力を受ける。
【0037】
本実施形態の構造であれば、第一スラスト軸受隙間36では、フランジ部2bの端面2b1全面がスラスト方向の受圧面となるのに対し、第二スラスト軸受隙間46では、軸部2aの断面積分だけ受圧面積(スラスト方向)となるフランジ部端面2b2の面積が小さい。従って、この場合には第二スラスト軸受部40で生じるスラスト支持力が第一スラスト軸受部30のスラスト支持力に対して不足する。
【0038】
しかしながら、第二スラスト軸受部40では、動圧溝41の作用で第二スラスト軸受隙間46にくさび形潤滑油膜が形成され、その動圧によってスラスト支持力の不足分が補われる。そのため、スラスト両方向のスラスト支持力がバランスされ、軸部材2を軸受部材8およびスラスト受け9に対してスラスト両方向で非接触に保持することができる。このように本実施形態では、第一スラスト軸受部30でラジアル軸受隙間26から押し込まれた油の圧力のみにより軸部材2を支持する一方、第二スラスト軸受部40で同様の油の圧力と動圧とによって軸部材2を支持しており、第二スラスト軸受部40はハイブリッド型ともいうべき機能を備えている。
【0039】
第二スラスト軸受隙間46の幅が大きいと、ここでの動圧効果が減じられるため、軸部材2が開口側に上昇する。一方、軸部材2が上昇すると、第二スラスト軸受隙間46での動圧効果が高まり、軸部材2を反開口側に押し下げる力が強くなる。このように本発明の動圧型軸受ユニット1は、スラスト両方向の支持力を自動的にバランスさせる自己制御性を有するので、軸部材2の軸方向位置を安定化して、軸部材2と静止側部材(軸受部材8およびスラスト受け9)を確実に非接触状態に保持することができる。
【0040】
第一スラスト軸受30は、ラジアル軸受隙間26から押し込まれた油の圧力で支持力を得る構造であるため、第一スラスト軸受隙間36と軸方向両側で対向する面(フランジ部2bの反開口側端面2b1およびスラスト受け9)は、動圧溝をはじめとする動圧発生部のない平滑面とすることができる。従って、これらの面への動圧溝の成形工程を省略することができ、図4に示す従来品に比べて製造コストを削減することが可能となる。
【0041】
一方、第二スラスト軸受部40では、第二スラスト軸受隙間46と対向する面に動圧溝付きのスラスト軸受面42が形成されるが、このスラスト軸受面42は軸受部材8の端面8bに設けられるため、焼結金属の圧縮成形により容易に高精度の動圧溝加工が可能であり、これに伴って、製造コストが大幅に高騰することもない。
【0042】
軸部材2の起動・停止時には、スラスト支持力が減少または消滅するので、軸部材2が落ち込んでスラスト受け9と摺接するが、この摺接は、スラスト受け9に形成された突出部10との間で行われるため、摺接に伴うスラスト受け9やフランジ部2bの摩耗を抑制することができ、軸受ユニットの寿命向上を図ることができる。
【0043】
なお、以上の説明では、ラジアル軸受面22,23を軸受部材8の内周に形成した場合を例示しているが、これを軸部材2の外周面に形成した場合にも上記と同様の効果が得られる。また、非対称形状の動圧溝21は、第二ラジアル軸受面23のみならず、第一ラジアル軸受面22に形成することもできる。
【0044】
【発明の効果】
このように本発明によれば、第一スラスト軸受部で動圧溝の形成工程を省略できるので、製造コストを大幅に抑制することができる。この場合でも軸部材はラジアル方向およびスラスト両方向で確実に非接触支持されるので、高い回転精度を確保することができ、低騒音、低トルクといった利点も備える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる動圧型軸受ユニットを使用した情報機器用スピンドルモータの断面図である。
【図2】上記動圧型軸受ユニットの断面図である。
【図3】(A)図は軸受部材の断面図、同図(B)は軸受部材端面の平面図である。
【図4】従来の動圧型軸受ユニットの断面図である。
【図5】従来の軸受部材の断面図である。
【図6】(A)図は軸受部材の端面に形成したスラスト軸受面の平面図、同図(B)はスラスト受けに形成したスラスト軸受面の平面図である。
【符号の説明】
1 軸受ユニット
2 軸部材
2b フランジ部
8 軸受部材
9 スラスト受け
10 スラスト受け
20 ラジアル軸受部
21 動圧溝
22 ラジアル軸受面
23 ラジアル軸受面
25 圧力発生機構
26 ラジアル軸受隙間
30 第一スラスト軸受部
31 動圧溝
32 ラジアル軸受面
36 第一スラスト軸受隙間
40 第二スラスト軸受部
41 動圧溝
42 スラスト軸受面
46 第二スラスト軸受隙間
Claims (8)
- 軸部材と、軸部材の外周に配置した軸受部材と、軸部材の端面と対向するスラスト受けと、一端を開口すると共に、他端を閉じた有底筒状をなし、内周に軸受部材が固定され、底部にスラスト受けが設けられたハウジングと、軸部材の外周と軸受部材の内周との間にラジアル軸受隙間を備える動圧型のラジアル軸受部と、軸部材をスラスト一方向で支持する第一スラスト軸受部と、軸部材をスラスト他方向で支持する第二スラスト軸受部とを有する動圧型軸受ユニットにおいて、
第一スラスト軸受部に第一スラスト軸受隙間を、第二スラスト軸受部に第二スラスト軸受隙間をそれぞれ設け、ラジアル軸受部に、軸方向両側で非対称に形成された動圧溝を有し、かつラジアル軸受隙間と面するラジアル軸受面を設け、第一スラスト軸受隙間の受圧面積を、第二スラスト軸受隙間のそれよりも大きくし、両スラスト軸受隙間のうち、少なくとも第一スラスト軸受隙間と軸方向両側で対向する面を何れも平滑面とし、ハウジングの内部が、軸受部材の開口側端面に配置したシール部材と軸部材との間の隙間を介してのみ大気に開放され、ラジアル軸受隙間および両スラスト軸受隙間を油で満たし、ラジアル軸受面に設けた前記動圧溝で、ラジアル軸受隙間の油を第二スラスト軸受隙間と、これに連通する第一スラスト軸受隙間に押し込み、両スラスト軸受隙間で油の圧力を発生させて軸部材をスラスト両方向で支持することを特徴とする動圧型軸受ユニット。 - 第一スラスト軸受隙間を、スラスト受けと、これに対向する軸部材の一端面との間に形成した請求項1記載の動圧型軸受ユニット。
- スラスト受けに、軸部材の一端面と接触可能の突出部を形成した請求項2記載の動圧型軸受ユニット。
- 第二スラスト軸受部に動圧型軸受を付加した請求項1〜3何れか記載の動圧型軸受ユニット。
- 第二スラスト軸受隙間を、軸受部材の端面と、これに対向する軸部材の他端面との間に形成した請求項1〜4何れか記載の動圧型軸受ユニッ
ト。 - 軸受部材の端面に、第二スラスト軸受隙間に動圧を発生させる動圧発生部を形成した請求項5記載の動圧型軸受ユニット。
- 軸受部材を、含油焼結金属で形成した請求項1〜6何れか記載の動圧型軸受ユニット。
- 請求項1〜7の何れかに記載した動圧型軸受ユニットを備える情報機器用スピンドルモータ。
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