JP4172944B2 - 動圧軸受装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、動圧軸受装置に関する。この軸受装置は、情報機器のモータ類、例えばHDD・FDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM・DVD−ROM等の光ディスク装置、MD・MO等の光磁気ディスク装置などのスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用として好適である。
【0002】
【従来の技術】
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化などが求められている.これらの要求性能を決定づける構成要素の一つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年ではこの種の軸受として、上記要求性能に優れた特性を有する動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
【0003】
例えば、HDD等のディスク装置のスピンドルモータに組み込まれる動圧軸受装置としては、ハウジングの内周に軸受スリーブを固定すると共に、軸受スリーブの内周に軸部材を配置した構造が知られている。この動圧軸受装置では、軸部材の回転により、軸受スリーブの内周と軸部材の外周との間のラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させて、軸部材を非接触状態で支持する。ラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させるための溝(動圧溝)は、軸部材の外周、もしくは軸受スリーブの内周の何れか一方に形成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この種の動圧軸受装置において、軸受スリーブの内周に動圧溝を形成する場合、この動圧溝は、軸受スリーブの内周に、動圧溝形状に対応した溝型を配置した状態で軸受スリーブを加圧し、この加圧力で軸受スリーブの内周面を成形型に押し付けることによって形成することができる。このようにして動圧溝を形成した軸受スリーブは、ハウジングの内周に接着や圧入等の手段で固定され、さらに軸受スリーブの内周に軸部材を挿入することで製品化される。
【0005】
このように従来の動圧軸受装置は、軸受スリーブを成形する工程、軸受スリーブに動圧溝を形成する工程、軸受スリーブをハウジング内周に固定する工程など多くの工程を経て製造されている。動圧軸受装置の低コスト化を図るため、従来から上記各工程ごとにそれぞれコスト削減への努力がなされているが、現状ではさらなる低コスト化を図ることは難しくなっている。
【0006】
また動圧軸受装置の種類によっては、軸部材をラジアル方向だけでなくスラスト方向でも非接触支持するため、軸受スリーブの端面に複数の動圧溝を有するスラスト軸受面を形成する場合がある。この場合、スラスト軸受面の動圧溝成形が終了した軸受スリーブを別工程(例えば軸受スリーブのハウジング内周への固定工程)に移送する必要があるが、この移送中などに精密に加工されたスラスト軸受面が傷付くおそれがある。このような傷付きを防止するため、従来では特殊な機構や装置を用い、細心の取り扱いで軸受スリーブを移送する必要があり、コストが嵩む一因となっている。
【0007】
また、軸受スリーブをハウジング内周に接着して固定する場合は、接着剤の乾燥工程が必要となり、この点も低コスト化を阻む要因となっている。
【0008】
そこで、本発明は、上述した各種弊害を解消し、動圧軸受装置のさらなる低コスト化を図ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的の達成のため、本発明にかかる動圧軸受装置は、軸部材と、軸部材の外周とラジアル軸受隙間を介して対向するラジアル軸受面を備え、ラジアル軸受面に動圧溝が設けられた軸受スリーブと、両端を開口した側部および側部と軸方向で当接して側部の一方の開口部を封口する底部を備え、内周に軸受スリーブが固定されたハウジングと、軸受スリーブの端面とハウジングの底部の端面との間に形成されたスラスト軸受隙間とを有し、軸と軸受スリーブの相対回転でラジアル軸受隙間およびスラスト軸受隙間に流体動圧を発生させて軸部材と軸受スリーブとを非接触に保持する動圧軸受装置において、軸受スリーブの外周面が、ハウジング内で、パンチを用いて軸受スリーブに付与した軸方向の加圧力により締め代をもってハウジングの内周面に押し付けられ、ラジアル軸受面が、上記加圧力により軸受スリーブの内周面を型(図5の符号22a,22b)に押し付けて成形され、ハウジング側部のうち底部と軸方向で当接する面および軸受スリーブの上記端面の双方が、単一のパンチと当接する部分を有するものである
【0010】
ハウジング内に軸受スリーブを配置した状態で軸受スリーブに軸方向の加圧力を付与し、スリーブ外周をハウジング内周に締め代をもって押し付けることにより、軸受スリーブがハウジング内周に固定される。この加圧力で軸受スリーブの内周面を型22a,22bに押し付けてラジアル軸受面を成形することにより、軸受スリーブのハウジングへの固定と動圧溝成形とを同時に行うことが可能となり、これらを別個の工程で行っていた従来に比べて工程の簡略化、省略化が可能となる。また、動圧溝成形後の軸受スリーブは、ハウジング内に保持され、ハウジングによって保護された状態で移送されるので、動圧溝を形成した軸受面が移送中に傷付く事態を防止することができる。
【0011】
さらに、軸受スリーブが、その一方の端面を上記加圧力により型(図5の符号27)に押し付けて成形した、動圧溝を有するスラスト軸受面を有するものとすることにより、特に傷付き易いスラスト軸受面がハウジングによって保護され、軸受スリーブの取り扱いがより容易なものとなる。
【0012】
同様の観点から、上記動圧軸受装置を製造するに際し、ハウジング内に軸受スリーブを配置し、その状態でパンチを用いて軸受スリーブに軸方向の加圧力を付与することにより、軸受スリーブの外周面をハウジングの内周面に締め代をもって押し付けると共に、上記加圧力により軸受スリーブの内周面を型(符号22a,22b)に押し付けてラジアル軸受面を成形し、ハウジング側部のうち底部と軸方向で当接する面および軸受スリーブの上記端面の双方を単一のパンチに当接させる。
【0013】
この場合、さらに軸受スリーブの一方の端面を上記加圧力により型(符号27)に押し付けることによって複数の動圧溝を有するスラスト軸受面を成形することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この実施形態にかかる動圧軸受装置1を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、半径方向のギャップを介して対向させたモータステータ4およびモータロータ5とを備えている。ステータ4はケーシング6の外周に取付けられ、ロータ5はディスクハブ3の内周に取付けられる。動圧軸受装置1のハウジング7は、ケーシング6の内周に装着される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚保持される。ステータ4に通電すると、ステータ4とロータ5との間の励磁力でロータ5が回転し、それによってディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
【0016】
図2は、動圧軸受装置1を示している。動圧軸受装置1は、一端に開口部7a、他端に底部7cを有する有底円筒状のハウジング7と、ハウジング7の内周面に固定された円筒状の軸受スリーブ8と、軸部材2と、ハウジング7の開口部7aに固定されたシール部材10とを主要な部材として構成される。後述するように、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の軸部2aの外周面との間に第1ラジアル軸受部R1と第2動圧軸受部R2とが軸方向に離隔して設けられる。また、軸受スリーブ8の下側端面8cと軸部材2のフランジ部2bの上側端面2b1との間に第1スラスト軸受部S1が設けられ、ハウジング7の底部7cの内底面7c1とフランジ部2bの下側端面2b2との間に第2スラスト軸受部S2が設けられる。尚、説明の便宜上、ハウジング7の開口部7aの側を上方向、ハウジング7の底部7cの側を下方向とする。
【0017】
ハウジング7は、例えば真ちゅう等の軟質金属材で形成され、円筒状の側部7bと円板状の底部7cとを別体構造として備えている。底部7cの内底面7c1の、スラスト軸受面(第2スラスト軸受部S2の軸受面)となる領域には、スパイラル形状等の動圧溝(図示省略)が形成されている。ハウジング7の側部7bの内周面7dの他端には、他所よりも大径に形成した大径部7eが形成され、この大径部7eに底部7cとなる蓋状部材が例えば加締め、接着等の手段で固定されている。
【0018】
軸部材2は、例えば、ステンレス鋼(SUS420J2)等の金属材で形成され、軸部2aと、軸部2aの下端に一体又は別体に設けられたフランジ部2bとを備えている。
【0019】
軸受スリーブ8は、焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする燒結金属の多孔質体で形成され、内部の気孔(組織気孔)と、その気孔が表面に開口して形成される表面開孔を備えている。また、軸受スリーブ8の内周面8aには、ラジアル軸受面(第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面)となる上下2つの領域が軸方向に離隔して設けられている。
【0020】
図3に示すように、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受面となる領域はヘリングボーン形状の複数の動圧溝8a1,8a2を備える。この実施形態において、図面上方側の動圧溝8a1の軸方向長さは、これと反対方向に傾斜した図面下方側の動圧溝8a2よりも大きく、軸方向非対称形状になっている。第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面となる領域も、同様に、ヘリングボーン形状の複数の動圧溝8a3,8a4を備え、軸方向の一方に傾斜した複数の動圧溝8a3と、軸方向の他方に傾斜した複数の動圧溝8a4とが軸方向に離隔して形成されている。但し、第1ラジアル軸受部R1と異なり、両動圧溝8a3,8a4の軸方向長さは等しく、軸方向対称形状になっている。また、第1ラジアル軸受部R1の軸方向長さの全長は、第2ラジアル軸受部R2の軸方向長さの全長よりも大きい。
【0021】
軸受スリーブ8の両端面8b、8cのうち、下側端面8cの、スラスト軸受面(第1スラスト軸受部のスラスト軸受面)となる領域には、図3(b)に示すように、スパイラル形状の複数の動圧溝8c1が形成されている。
【0022】
図1に示すように、シール部材10は環状のもので、ハウジング7の開口部7aの内周面に圧入、接着等の手段で固定される。この実施形態において、シール部材10の内周面は円筒状に形成され、シール部材10の下側端面10bは軸受スリーブ8の上側端面8bと当接している。
【0023】
軸部材2の軸部2aは軸受スリーブ8の内周面8aに挿入され、フランジ部2bは軸受スリーブ8の下側端面8cとハウジング7の内底面7c1との間の空間部に収容される。軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の領域)は、それぞれ、軸部2aの外周面とラジアル軸受隙間を介して対向する。また、軸受スリーブ8の下側端面8cのスラスト軸受面となる領域はフランジ部2bの上側端面とスラスト軸受隙間を介して対向し、ハウジング7の内底面7c1のスラスト軸受面となる領域はフランジ部2bの下側端面とスラスト軸受隙間を介して対向する。ラジアル軸受部R1、R2間の領域では、軸部2aの外周面2a1と軸受スリーブ8の内周面8aとの間にラジアル軸受隙間よりも大きな隙間が設けられる。
【0024】
シール部材10の内周面に対向する軸部2aの外周面にはテーパ面が形成されており、このテーパ面と軸部2aの外周面との間には、ハウジング7の外部方向(同図で上方向)に向かって漸次拡大するテーパ形状のシール空間Sが形成される。シール部材10で密封されたハウジング7の内部空間は、軸受スリーブ8の内部気孔を含め、潤滑油(潤滑油)で充満され、その潤滑油の油面はシール空間S内にある。
【0025】
軸部材2と軸受スリーブ8の相対回転時、例えば軸部材2の回転時には、上記ラジアル軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材2の軸部2aが上記ラジアル軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によってラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが構成される。同時に、上記スラスト軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材2のフランジ部2bが上記スラスト軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によって両スラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をスラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部S1と第2スラスト軸受部S2とが構成される。
【0026】
上記動圧軸受装置1は、以下の手順で製造することができる。
【0027】
先ず、金属粉の圧粉・焼結により、軸受スリーブ8として円筒状の焼結金属を成形する。この焼結金属8(軸受スリーブ)を図4に示すようにハウジング7内に圧入等の手段で収容する。この場合、軸受スリーブ8の外周面とハウジング7の内周面7dとの間の嵌め合いは、ハウジング7内に挿入した軸受スリーブ8が自然に抜け落ちない程度とすれば足りる。
【0028】
次いで、図5に示すように、ハウジング7および軸受スリーブ8からなるアッセンブリ12をサイジング装置に移送する。この装置は、軸受スリーブ8のサイジングと同時に軸受スリーブ8への動圧溝成形と軸受スリーブ8のハウジング7への固定とを行うもので、軸受スリーブ8の内周に挿入された成形型としてのコアロッド21と、ハウジング7の外周に配置されたダイ23と、軸受スリーブを軸方向に加圧する一対のパンチ25,26とを備える。コアロッド21は、軸受スリーブ8の内周において均一な外径を有し、その外周面には、第1および第2ラジアル軸受部R1,R2の各ラジアル軸受面を成形するための凹凸形状の溝型22a,22bがそれぞれの動圧溝形状に対応して軸方向に離隔形成されている。一対のパンチ25,26のうち、上側のパンチ25は、コアロッド21と一体に昇降可能で、その端面には、軸受スリーブ8の下側端面8cに動圧溝8c1を有するスラスト軸受面を形成するための凹凸形状の溝型27が動圧溝形状に対応して形成されている。ダイ23は、移送されたアセンブリ12のハウジング7の外径よりも僅かに小さい均一な内径を有する。
【0029】
図5に示すように、この工程において、軸受スリーブ8およびハウジング7からなるアッセンブリ12は、ハウジング7の開口部7a側を下に向けてサイジング装置に搬入される。軸受スリーブ8の上側端面8bを下パンチ26で支持し、その状態で、軸受スリーブ8内周にコアロッド21を挿入し、さらに下側端面8cを上パンチ25で加圧すると、軸受スリーブ8がダイ23内に押し込まれ、一対のパンチ25,26によって軸方向に加圧される。この際、図5(b)に示すようにハウジング側部7bのうち、底部7cと軸方向で当接する面7gと軸受スリーブ8の下側端面8cとが上パンチ25に当接する。
【0030】
この加圧力により、軸受スリーブ8の外周肉部に外径側への塑性流動が生じる。ハウジング7の外周面7fはダイス23の内周面で拘束されているため、この塑性流動によって軸受スリーブ8の外周面8d全体がハウジング7の内周面7dに締め代をもって強く押し付けられる。これにより軸受スリーブ8がハウジング内に固定され、軸受スリーブ8に十分な抜去力を具備させることが可能となる。この場合、軸受スリーブ8の外周面8dおよびハウジング7の外周面7fは、段差のないストレートな円筒形状に保持される。
【0031】
また、上記軸方向の加圧力により、軸受スリーブ8の内周肉部は内径側へ塑性流動を生じる。この塑性流動により軸受スリーブの内周面がコアロッド21の溝型22a,22bに押し付けられ、軸受スリーブ8の内周面に溝型22a,22bの形状が転写されて、第1および第2ラジアル軸受部R1,R2の各ラジアル軸受面が形成される。同時に軸受スリーブ8の下側端面8cが上パンチ25の溝型27に押し付けられ、第一スラスト軸受部S1のスラスト軸受面が形成される。
【0032】
その後、軸受スリーブ8を脱型させると、軸受スリーブ8のスプリングバックにより軸受スリーブ8のラジアル軸受面とコアロッド21の溝型22a,22bとの凹凸係合が外れるので、ラジアル軸受部R1,R2の動圧溝8a1〜8a4を崩すことなく、コアロッド21を軸受スリーブ8の内周から抜き取ることができる。軸受スリーブ8の肉厚が薄すぎたり厚すぎたりした場合、スプリングバック量が不足してコアロッド2の抜き取りに支障を来たす懸念がある(この他、軸受スリーブ8の肉厚が薄すぎると強度面でも不安が生じる)が、軸受スリーブ8の外径寸法φDと内径寸法φd(何れも図3参照)の比D/dを、D/d=1.4〜3.0の範囲に設定すれば、これらの不具合を解消することができる。
【0033】
以上の動圧溝成形と同時に軸受スリーブ8の内周面8aのサイジングがなされ、その内径寸法と表面開孔率(単位面積当たりに占める表面開孔の面積割合)とが調整される。ラジアル軸受部R1のラジアル軸受面、およびラジアル軸受部R2のラジアル軸受面の表面開孔率は、動圧溝8a1〜8a4の領域も含め、例えば2〜10%未満、好ましくは2〜5%に設定される。また、軸受スリーブ8の下側端面8cは、上記サイジング装置に搬入するより以前に、バニシング処理(擦過処理)等によって内周面との直角度と表面開孔率とが調整される。下側端面8c(第1スラスト軸受部S1のスラスト軸受面)の表面開孔率は、動圧溝8c1の領域も含め、例えば2〜10%未満、好ましくは2〜5%に設定される。
【0034】
その後、アッセンブリ12の軸受スリーブ8に潤滑油や潤滑グリースを含浸させた上で、軸受スリーブ8の内周に軸部材2を挿入し、次いでハウジング7の大径部7eに底部7cを固定して封口し、さらにハウジング7の一端開口部にシール部材10を装着することにより、図2に示す動圧軸受装置1が得られる。
【0035】
このように、本発明では、ハウジング7の内に軸受スリーブ8を配置した状態で、軸受スリーブ8の動圧溝成形とハウジング7への固定を同時に行っているので、従来では別に行われていたこれらの工程を一つに纏めることができ、加工工数を削減して低コスト化を図ることができる。また、軸受スリーブ8のハウジング7への固定後は、ハウジング7の端部がスラスト軸受面を有する軸受スリーブ8の端面8cよりも軸方向に突出している。この突出部分により各軸受面(特にスラスト軸受面)が保護されるため、その後アッセンブリ12を次工程に移送する際などにも、これら軸受面の傷付きを回避することができ、このような傷付き防止対策が不要となって、製造ラインの簡略化、延いては低コスト化を図ることができる。
【0036】
また、従来のように軸受スリーブ8をハウジング7に接着固定する場合に比べると、接着剤の乾燥工程が不要となるので、生産効率を高めることができ、さらなる低コスト化が可能となる。
【0037】
従来のように軸受スリーブをハウジングの内周に圧入固定する場合、ハウジング内周と軸受スリーブ外周との間の締め代(圧入代)は、これが過大であると軸受スリーブ8の変形によって動圧溝形状が崩れるおそれがあるため、一定の制限が課されていたが、本発明によれば、動圧溝成形と同時に軸受スリーブの固定を行うので、このような観点から締め代を制限する必要はなく、より大きな締め代を設定することができ、軸受スリーブ8の抜去力をさらに高めることが可能である。
【0038】
なお、以上に説明した動圧軸受装置1の構成は、全て例示にすぎない。例えば各軸受面に形成した動圧溝形状は、例示したものに限らず、スパイラル形やヘリングボーン形などを必要に応じて選択使用することができる。また、本実施形態では、スラスト軸受部S1,S2をラジアル軸受部R1,R2と同様に動圧軸受で構成した場合を説明しているが、スラスト軸受部S1,S2に動圧溝を有しない軸受(例えば軸部材2を接触支持するピボット軸受等)を使用する場合でも、同様に本発明を適用することができる。
【0039】
また、図4および図5に示す工程では、軸受スリーブ8を予めハウジング7内に収容した上で(図4)、このアッセンブリを型内に押し込むようにしているが(図5)、この他にも例えば図5(a)(b)に示す段階でかかるアッセンブリ化を行うこともできる。例えば、コアロッド21の外周に軸受スリーブ8を配置すると共に、下パンチ26上にハウジング7を配置し、その状態でハウジング7内にコアロッド21を挿入すれば、アッセンブリ化と軸受スリーブ8の加圧とを連続して(あるいは同時に)行うことができる。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、動圧溝成形と軸受スリーブのハウジングへの固定とを同時に行うことができるので、これを別工程で行っていた従来に比べて、工数を削減して製造コストの低廉化を図ることができ、特に軸受スリーブを接着固定する場合に比べると、より顕著なコスト低廉効果を得ることができる。また、ハウジングへの固定後は、軸受スリーブがハウジングによって保護されるため、その後の工程における軸受面(特にスラスト軸受面)の傷付きを回避することができ、そのような傷付き対策の省略による製造コストの低廉化や、製品の信頼性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の動圧軸受装置を有するスピンドルモータの断面図である。
【図2】本発明の動圧軸受装置を示す断面図である。
【図3】(a)図は軸受スリーブの断面図、(b)図はその下側端面の平面図である。
【図4】軸受スリーブとハウジングをアッセンブリ化する工程を示す断面図である。
【図5】軸受スリーブのサイジング工程を示す断面図である。
【符号の説明】
1 動圧軸受装置
2 軸部材
2a 軸部
2b フランジ部
7 ハウジング
7a ハウジング開口部
7b ハウジング側部
7c ハウジング底部
7d ハウジング内周面
7f ハウジング外周面
8 軸受スリーブ
8a スリーブ内周面
8b スリーブ端面(ハウジング開口側)
8c スリーブ端面(ハウジング閉塞側)
8d スリーブ外周面
10 シール部材
21 コアロッド
22a,22b 型(溝型)
23 ダイ
25 上パンチ
26 下パンチ
27 型(溝型)
Claims (3)
- 軸部材と、軸部材の外周とラジアル軸受隙間を介して対向するラジアル軸受面を備え、ラジアル軸受面に動圧溝が設けられた軸受スリーブと、両端を開口した側部および側部と軸方向で当接して側部の一方の開口部を封口する底部を備え、内周に軸受スリーブが固定されたハウジングと、軸受スリーブの端面とハウジングの底部の端面との間に形成されたスラスト軸受隙間とを有し、軸と軸受スリーブの相対回転でラジアル軸受隙間およびスラスト軸受隙間に流体動圧を発生させて軸部材と軸受スリーブとを非接触に保持する動圧軸受装置において、
軸受スリーブの外周面が、ハウジング内で、パンチを用いて軸受スリーブに付与した軸方向の加圧力により締め代をもってハウジングの内周面に押し付けられ、ラジアル軸受面が、上記加圧力により軸受スリーブの内周面を型に押し付けて成形され、ハウジング側部のうち底部と軸方向で当接する面および軸受スリーブの上記端面の双方が、単一のパンチと当接する部分を有する動圧軸受装置。 - さらに、軸受スリーブが、その上記端面を上記加圧力により型に押し付けて成形した、動圧溝を有するスラスト軸受面を有する請求項1記載の動圧軸受装置。
- 軸部材と、軸部材の外周とラジアル軸受隙間を介して対向するラジアル軸受面を備え、ラジアル軸受面に動圧溝が設けられた軸受スリーブと、両端を開口した側部、および側部と軸方向で当接して側部の一方の開口部を封口する底部を備え、内周に軸受スリーブが固定されたハウジングと、軸部材の端面とハウジングの底部の端面との間に形成されたスラスト軸受隙間とを有し、軸と軸受スリーブの相対回転でラジアル軸受隙間およびスラスト軸受隙間に流体動圧を発生させて軸部材と軸受スリーブとを非接触に保持する動圧軸受装置を製造するに際し、
ハウジング内に軸受スリーブを配置し、その状態でパンチを用いて軸受スリーブに軸方向の加圧力を付与することにより、軸受スリーブの外周面をハウジングの内周面に締め代をもって押し付けると共に、上記加圧力により軸受スリーブの内周面を型に押し付けてラジアル軸受面を成形し、ハウジング側部のうち底部と軸方向で当接する面および軸受スリーブの上記端面の双方を単一のパンチに当接させることを特徴とする動圧軸受装置の製造方法。
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