JP2008190711A - 動圧軸受装置の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スラスト軸受隙間の隙間幅を高精度かつ低コストに設定することができる動圧軸受装置の製造方法を提供する
【解決手段】ハウジング7の内底面7b1の変形により、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間及び第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間の幅設定を行う。これにより、従来スラスト軸受隙間の隙間幅を設定するために使用されていた位置決め用の段部や位置決め部材が不要となるため、動圧軸受装置の製造コストを低減することができる。
【選択図】図8

Description

本発明は、動圧軸受装置の製造方法に関するものである。
動圧軸受装置は、情報機器、例えばHDD等の磁気ディスク駆動装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク駆動装置、MD、MO等の光磁気ディスク駆動装置等のスピンドルモータ用、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイール、あるいは電気機器の冷却ファン等に使用されるファンモータなどの小型モータ用として好適に使用可能である。
例えば、特許文献1および特許文献2に示されている動圧軸受装置は、側部および底部を有するコップ状のハウジングと、ハウジングの内周に固定された軸受スリーブと、フランジ部を有する軸部材とを備える。軸受スリーブの内周面と軸部材の外周面との間にはラジアル軸受隙間が形成され、フランジ部の上側端面と軸受スリーブの下側端面との間、およびフランジ部の下側端面とハウジングの内底面との間にそれぞれスラスト軸受隙間が形成される。各軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で、軸部材がラジアル方向およびスラスト方向に非接触支持されている。
特開2005−282779号公報 特開2002−61637号公報
このような動圧軸受装置の軸受隙間の隙間幅は動圧効果に大きな影響を与えるため、できるだけ高精度に設定することが望ましい。しかし、特に上記のようなコップ状のハウジングを用いる場合、スラスト軸受隙間の隙間幅の設定は困難であるため、様々な方法でスラスト軸受隙間を高精度に設定する工夫がなされている。
例えば、特許文献1に示される動圧軸受装置は、ハウジングの内周に段部を設け、その段部に軸受スリーブの下側端面を当接させて位置決めすることにより、スラスト軸受隙間の隙間幅を設定している。また、特許文献2に示される動圧軸受装置は、ハウジングの内底面と軸受スリーブの下側端面との間に、両面に当接する位置決め部材を設けることにより、スラスト軸受隙間の隙間幅を設定している。
しかしながら、上記の何れの方法も、ハウジングの段部、あるいは位置決め部材を必要するため、工程数や部材数が増加する。さらに、これらの段部や位置決め部材はスラスト軸受隙間の隙間幅の精度に直結するため、高精度に加工する必要がある。従って、上記のようなスラスト軸受隙間の隙間幅の設定方法は、コスト高や生産効率の低下を招く。
本発明の課題は、スラスト軸受隙間の隙間幅を高精度かつ低コストに設定することができる動圧軸受装置の製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明は、側部および底部を有するハウジングと、ハウジングの内周に固定された軸受スリーブと、フランジ部を有する軸部材と、軸受スリーブの内周面と軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で前記軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部と、フランジ部の一方の端面と軸受スリーブの一方の端面との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で前記軸部材をスラスト方向に支持する第1スラスト軸受部と、フランジ部の他方の端面とハウジングの内底面との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で前記軸部材をスラスト方向に支持する第2スラスト軸受部とを備えた動圧軸受装置を製造するための方法であって、ハウジングの内底面の変形により、第1スラスト軸受部のスラスト軸受隙間及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間の幅設定を行うことを特徴とする。
このように本発明では、ハウジングの内底面を変形させることにより、第1スラスト軸受部のスラスト軸受隙間及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間の幅設定を行う。これにより、スラスト軸受隙間の隙間幅を設定する際、位置決め用の段部や位置決め部材が不要となるため、動圧軸受装置の製造コストを低減することができる。
このハウジングの内底面の変形は、例えば弾性変形により行うことができる。この場合、ハウジングの内底面をハウジング開口側へ弾性変形させた状態で、軸部材及び軸受スリーブをハウジング内周に挿入し、フランジ部の他方の端面をハウジングの内底面に当接させると共に、フランジ部の一方の端面を軸受スリーブの一方の端面に当接させ、その後ハウジングの内底面を弾性的に復元させることで、両スラスト軸受隙間の幅設定を行うことができる。
あるいは、第1及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間が何れも0の状態、すなわちフランジ部の一方の端面と軸受スリーブの端面、及びフランジ部の他方の端面とハウジングの内底面をそれぞれ当接させた状態で、ハウジングの内底面をハウジング開口側へ弾性変形させ、これによる軸受スリーブのスライドにより両スラスト軸受隙間の幅設定を行うことができる。このときの幅設定を、軸受スリーブのスライド量に基づいて行うと、隙間幅の高精度な設定が可能となる。
また、上記のハウジングの内底面の変形を、塑性変形により行うこともできる。この場合、例えば、ハウジングの内底面に凸部を形成し、ハウジング内に軸部材及び軸受スリーブを収容した後、フランジ部の一方の端面を軸受スリーブの端面に当接させると共に、フランジ部の他方の端面をハウジング内底面の凸部に当接させた状態で、軸受スリーブをハウジングの内周面に固定し、その後、軸部材を押込んでフランジ部ので凸部を塑性変形させることにより、スラスト軸受隙間の幅設定を行うことができる。
このとき、凸部をハウジング内底面の一部領域に形成することにより、ハウジング底部全体を突出させる場合と比べ、ハウジング底部の軸受外部側端面の変形を最小限の領域にとどめることができる。ハウジング底部の外部側端面は、動圧軸受装置をモータ等に取付ける際の基準面となることがあるため、この面の変形を抑えて平面度を維持することにより、モータ等への組み付け精度を高めることができる。
上記のような方法で製造された動圧軸受装置は、スラスト軸受隙間の幅精度が高精度に設定されるため、優れたスラスト方向の軸受性能を得ることができる。
以上のように、本発明によれば、スラスト軸受隙間の隙間幅を高精度かつ低コストに設定することができる動圧軸受装置の製造方法が得られる。
以下、本発明の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る動圧軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、ディスクハブ3を取付けた軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、モータブラケット6とを備えている。ステータコイル4はモータブラケット6の外周に取付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の内周に取付けられている。動圧軸受装置1のハウジング7は、モータブラケット6の内周に固定される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスク状情報記録媒体(以下、単にディスクという。)Dが1又は複数枚保持される。このように構成されたスピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する電磁力でロータマグネット5が回転し、これに伴って、ディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
図2は、動圧軸受装置1を示している。この動圧軸受装置1は、側部7aおよび底部7bを有するコップ状のハウジング7と、ハウジング7に固定された軸受スリーブ8と、ハウジング7および軸受スリーブ8に対して相対回転する軸部材2とを主な構成要素として構成される。なお、説明の便宜上、ハウジング7の底部7bの側を下側、底部7bと反対の側を上側として以下説明する。
軸部材2は、例えばSUS鋼などの金属材料で形成され、軸部2aと、軸部2aの下端に一体又は別体に設けられるフランジ部2bとを備える。なお、軸部材2はこれに限らず、例えば金属材料と樹脂材料とのハイブリッド構造とすることもできる。
軸受スリーブ8は、例えば銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成される。この他、軸受スリーブ8を他の金属や樹脂、あるいはセラミック等で形成することも可能である。
軸受スリーブ8の内周面8aの全面又は一部円筒領域には、ラジアル動圧発生部として、例えば図3(a)に示すように、複数の動圧溝8a1、8a2をヘリングボーン形状に配列した領域が軸方向に離隔して2箇所形成される。この動圧溝8a1、8a2の形成領域は、ラジアル軸受面として軸部2aの外周面2a1と対向し、軸部材2の回転時には、外周面2a1との間に後述するラジアル軸受部R1、R2のラジアル軸受隙間を形成する(図2を参照)。また、上側の動圧溝8a1の形成領域では、動圧溝8a1が、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。
軸受スリーブ8の外周面8dには、軸方向に延びる溝10が軸方向全長に亘って1又は複数本形成される。この実施形態では、3本の軸方向溝10を円周方向等間隔に形成している。これら軸方向溝10は、軸受スリーブ8をハウジング7の内周に固定した状態では、対向するハウジング7の内周面7a1との間に潤滑油の流体流路を構成する(図2を参照)。これら軸方向溝10は、例えば軸受スリーブ8本体をなす圧粉体の成形型に予め軸方向溝10に対応する箇所を設けておくことで、軸受スリーブ8本体の圧粉体成形と同時に成形することができる。
軸受スリーブ8の下端面8cの全面または一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、図3(b)に示すように、複数の動圧溝8c1をスパイラル形状に配列した領域が形成される。この動圧溝8c1の形成領域は、スラスト軸受面としてフランジ部2bの上側端面2b1と対向し、軸部材2の回転時には、上側端面2b1との間に後述する第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。
軸受スリーブ8の上端面8bの径方向の略中央部には、図3(a)に示すように、V字断面の周方向溝8b1が全周に亘って形成される。周方向溝8b1によって区画された上端面8bの内径側領域には、1又は複数本の半径方向溝8b2が形成される。この半径方向溝8b2は、軸受スリーブ8にシール部9を当接させた状態で、周方向溝8b1とラジアル軸受隙間との間を連通する(図2参照)。
ハウジング7は、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の結晶性樹脂、あるいはポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)等の非晶性樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物で射出成形され、例えば図2に示すように、側部7aと、側部7aの下端に一体に形成された底部7bとを有する。ハウジング7を形成する上記樹脂組成物としては、例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、各種金属粉等の繊維状または粉末状の導電性充填材を、目的に応じて上記ベース樹脂に適量配合したものが使用可能である。尚、ハウジング7を成形金型から離型した後、底部7bの下端面7b2の中央部には射出ゲート跡が形成される。このゲート跡が下端面7b2の面精度に影響しないように、下端面7b2の中央部には軸受内部側へ凹んだ逃げ部7b20が形成される。
ハウジング7の射出材料は上記に限らず、例えば、マグネシウム合金やアルミニウム合金等の低融点金属材料が使用可能である。また、金属紛とバインダーの混合物で射出成形した後、脱脂・焼結するいわゆるMIM成形や、金属材料、例えば真ちゅう等の軟質金属のプレス成形でハウジング7を形成することもできる。
ハウジング7の内底面7b1の全面又は一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、図4に示すように、複数の動圧溝7b11をスパイラル形状に配列した領域が形成される。この動圧溝の形成領域は、スラスト軸受面としてフランジ部2bの下側端面2b2と対向し、軸部材2の回転時には、下側端面2b2との間に後述する第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。尚、図4にクロスハッチングで示す領域Aは、スラスト動圧発生部の丘部を表している。
ハウジング7の内周面7a1には、軸受スリーブ8の外周面8dが、例えば接着(ルーズ接着や圧入接着を含む)、圧入、溶着等の適宜の手段で固定される。
シール部9は、図2に示すように、例えば金属材料や樹脂材料でハウジング7とは別体に形成され、ハウジング7の側部7aの上端部内周に圧入、接着、溶着、溶接等の手段で固定される。シール部9の固定は、シール部9の下端面9bを軸受スリーブ8の上端面8bに当接させた状態で行われる(図2を参照)。
シール部9の内周面9aにはテーパ面が形成されており、このテーパ面と、テーパ面に対向する軸部2aの外周面2a1との間には、上方に向けて半径方向寸法が漸次拡大する環状のシール空間Sが形成される。シール部9で密封されたハウジング7の内部空間には、潤滑油が注油され、ハウジング7内が潤滑油で満たされる(図2中の散点領域)。この状態では、潤滑油の油面はシール空間Sの範囲内に維持される。
上記構成の動圧軸受装置1において、軸部材2の回転時、軸受スリーブ8のラジアル軸受面(内周面8aの動圧溝8a1、8a2形成領域)は、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙間を介して対向する。軸部材2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間の潤滑油が動圧溝8a1、8a2の軸方向中心m側に押し込まれ、その圧力が上昇する。このような動圧溝8a1、8a2の動圧作用によって、軸部材2をラジアル方向に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが構成される。
これと同時に、軸受スリーブ8のスラスト軸受面(下端面8cの動圧溝8c1形成領域)とこれに対向するフランジ部2bの上側端面2b1との間のスラスト軸受隙間、およびハウジング7のスラスト軸受面(上端面7b1の動圧溝形成領域)とこれに対向するフランジ部2bの下側端面2b2との間のスラスト軸受隙間に、各動圧溝の動圧作用により潤滑油の油膜がそれぞれ形成される。そして、これら油膜の圧力によって、軸部材2をスラスト方向に非接触支持する第1スラスト軸受部T1と、第2スラスト軸受部T2とが構成される。なお、上記のラジアル軸受隙間およびスラスト軸受隙間の隙間幅は、1μm以上50μm以下の任意の値に設定される。また、この隙間幅の公差は20μm以内、望ましくは10μm以内に設定される。
また、ハウジング7の下端内部に位置するスラスト軸受部T1、T2のスラスト軸受隙間と、ハウジング7の開口側に形成されるシール空間Sとの間が、軸方向溝10や半径方向溝8b2等を介して連通状態となる。これによれば、例えば何らかの理由でスラスト軸受部T1、T2の側の流体(潤滑油)圧力が過度に高まり、あるいは低下するといった事態を避けて、軸部材2をスラスト方向に安定して非接触支持することが可能となる。
また、この実施形態では、第1ラジアル軸受部R1の動圧溝8a1は、軸方向中心mに対して軸方向非対称(X1>X2)に形成されているため(図3参照)、軸部材2の回転時、動圧溝8a1による潤滑油の引き込み力(ポンピング力)は上側領域が下側領域に比べて相対的に大きくなる。そして、この引き込み力の差圧によって、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面2a1との間の隙間に満たされた潤滑油が下方に流動し、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間→軸方向溝10→シール部9の下端面9bと軸受スリーブ8の上端面8bとの間の隙間→円周方向溝8b1→半径方向溝8b2という経路を循環して、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間に再び引き込まれる。このように、潤滑油がハウジング7の内部空間を流動循環するように構成することで、軸受内部の圧力バランスが適正に保たれる。これにより、潤滑油の負圧発生に伴う気泡の生成を防止し、これに伴う潤滑油の漏れや振動の発生等の問題を解消することができる。
以上のような構成を有する動圧軸受装置1の組立方法、特にスラスト軸受隙間の設定方法の一例を、図5〜図8に基づいて概略的に示す。
図5〜8に示す組立装置100は、固定台13と、固定台13に対して軸方向に可動である可動部11およびハウジング押さえ12と、押し上げピン14と、押し上げカム15と、変位計16とで構成される。押し上げカム15は回転軸とカムの中心が偏心した偏心カムであり、押し上げカム15が回転すると、押し上げピン14が軸方向に押し上げられる。
まず、図5で示すように、固定台13にハウジング7を載置するとともに、可動部11に設けられたチャック部11aで、軸受スリーブ8が外挿された軸部材2をチャッキングする。
次に、図6で示すように、ハウジング押さえ12でハウジング7を固定台13に固定する。ハウジング押さえ12は、円筒部12aと円筒部12aの上端開口部に配された円盤部12bとを備え、円盤部12bの中央部には軸受スリーブ8及びフランジ部2bが通過できる穴12b1が形成される。この穴12b1の径は、ハウジング7開口部の内径寸法より大きく、外径寸法より小さい。このハウジング押さえ12による固定は、組立工程終了まで外されない。
次に、図7(a)で示すように、軸受スリーブ8および軸部材2をハウジング7の内周に圧入し、フランジ部2bの上側端面2b1と軸受スリーブ8の下端面8cとを当接させるとともに、フランジ部2bの下側端面2b2とハウジング7の内底面7b1とを当接させる(図7(b)参照)。すなわち、この状態では、後に形成されるスラスト軸受隙間に相当する隙間幅が0となる。このとき変位計16をリセットし、この状態を基準として測定する。
次に、図8(a)、(b)に示すように、可動部11の移動量、すなわち軸受スリーブ8および軸部材2の移動量δを変位計16で測定しながら、押し上げカム15を回転させて押し上げピン14を押し上げる。この押し上げピン14の上端面14aでハウジング7の底部7bの下端面7b2を押し上げ、ハウジング7の内底面7b1をハウジング開口側(図中上側)へ弾性的に突出させる。このハウジング7の内底面7b1の弾性変形により、軸受スリーブ8および軸部材2をハウジング開口側へ移動させる(図8(b)参照)。尚、理解の容易化のため、図8(b)では、ハウジング7の内底面7b1の変形量を誇張して示している(図9〜図14においても同様)。
移動量δが所定の値、すなわち第1スラスト軸受部T1および第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間の隙間幅の合計量まで達したら、押し上げを止め、押し上げピン14を下げてハウジング7の底部7bに加えていた圧力を解放する。これにより、ハウジング7の底部7bは弾性的に復元し、もとの状態(図8(b)に点線で示す)に戻る。
以上の工程を経て、各スラスト軸受隙間の隙間幅が所定の値に設定される。その後、シール部9をハウジング7の内周へ固定し、潤滑油が注油されることにより、図2に示す動圧軸受装置1が完成する。
このように本発明では、ハウジング7の内底面7b1を変形(弾性変形)させることにより、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間及び第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間の幅設定を行う。これにより、従来の動圧軸受装置においてスラスト軸受隙間の幅設定のために用いられていた位置決め用の段部や位置決め部材等が不要となるため、動圧軸受装置1の製造コストを低減することができる。また、各スラスト軸受隙間の隙間幅を一旦0の状態にしてから、ハウジング7の内底面7b1を弾性的に突出させてスラスト軸受隙間の幅設定を行うことにより、各部材の加工精度によらず、高精度なスラスト軸受隙間が得られる。これにより、部材の加工精度を緩和することができるため、さらなるコストの低減を図ることができる。
ところで、ハウジング7の内底面7b1の突出量を、例えば押し上げピン14の押し上げ量を測定することにより管理することも考えられる。しかし、ハウジング7の底部7bの下端面7b2は、その加工精度が軸受性能に直接影響を及ぼすことは無いため、加工精度が緩和されることが多い。このため、下端面7b2には凹凸が形成されたり、あるいは製品ごとの加工精度にばらつきが生じることがある。従って、押し上げピン14の押し上げ量が、必ずしもハウジング7の内底面7b1の突出量に対応するとは限らず、スラスト軸受隙間の隙間幅の設定精度が低下する恐れがある。本発明では、高精度に加工された軸受スリーブ8の移動量を測定することにより内底面7b1の突出量を管理するため、スラスト軸受隙間の隙間幅を精度良く設定することができる。
なお、ハウジング7の下端面7b2が精度良く加工されていれば、上記のように押し上げピン14の押し上げ量を変位計16で測定することで、内底面7b1の突出量を管理することもできる。あるいは、カム15の回転角で押し上げ量を管理することもできる。この場合、変位計16が不要となり、装置の簡略化が図られる。これらの方法でスラスト軸受隙間の幅設定を行う場合、押し上げピン14の上端面14aで、ハウジング7の底部7bの下側端面7b2に形成した逃げ部7b20の外径側を含めた領域を押圧すると、逃げ部7b20の加工精度や逃げ部7b20に形成された射出ゲート跡等の影響を受けることなくハウジング7の底部7bを押し上げることができる(図8(b)参照)。
また、従来スラスト軸受隙間の隙間幅を設定するために、軸部材2のフランジ部2bの外径側に設けられていた、ハウジングの段部あるいは位置決め部材が不要であるため、フランジ部2bを外径方向へ拡大することができる。これにより、スラスト軸受面も外径方向へ拡大され、スラスト方向の軸受剛性を向上させることができる。
本発明の製造方法は、上記に限られない。上記では、軸受スリーブ8がハウジング7の内周に圧入された場合を示したが、この他、圧入接着や隙間接着、あるいは超音波溶着等で固定することもできる。例えば隙間接着のように、軸受スリーブ8とハウジング7とが隙間嵌めとなる場合、ハウジング7の内底面7b1を突出させた状態(図8(b)参照)で両部材が固定されるまで保持した後に、押し上げピン14による圧力を解放し、内底面7b1をもとの状態に弾性的に復元させる。
また、上記では、押し上げピン14を押し上げる手段として、断面円形の偏心カム15が用いられているが、断面楕円形や多角形等、他の形状のカムを用いることもできる。この他、油圧等を用いて押し上げピン14を押し上げても良い。
また、上記では、スラスト軸受隙間の隙間幅を設定した後に、シール部9をハウジング7に固定する場合を示したが、例えば、軸受スリーブ8、軸部材2、およびシール部9をハウジング7の内周に挿入してから、上記の方法でスラスト軸受隙間の隙間幅を設定してもよい。
また、以上に示した製造方法では、ハウジング7の内周に軸部材2及び軸受スリーブ8を挿入した後に、ハウジング7の内底面7b1を弾性変形させているが、これに限られない。例えば、予めハウジング7の内底面7b1を弾性変形させてから、ハウジング7の内周に軸部材2及び軸受スリーブ8を挿入してもよい。具体的には、図9に示すように、ハウジング7の内底面7b1を両スラスト軸受隙間の隙間幅の合計量δだけ突出させる。このハウジング7の内周に軸部材2及び軸受スリーブ8を挿入し、突出させたハウジング7の内底面7b1と軸部材2のフランジ部2bの下側端面2b2とを当接させると共に、フランジ部2bの上側端面2b1と軸受スリーブ8の下側端面8cとを当接させる(図8(b)と同様の状態)。この状態で、軸受スリーブ8をハウジング7に固定した後、ハウジング7の内底面7b1を弾性的に復元させる(図8(b)の点線で示す状態)。以上の方法により、両スラスト軸受隙間の隙間幅が設定される。
この方法によると、スラスト軸受面となるフランジ部2bの上側端面2b1及び下側端面2b2に大きな負荷を加えることなくスラスト軸受隙間の幅設定をすることができるため、スラスト軸受面の変形、特に動圧発生部の変形を回避することができる。
また、以上に示した製造方法では、ハウジング7の内底面7b1を弾性変形させることによりスラスト軸受隙間の幅設定を行っているが、スラスト軸受隙間の幅設定をハウジング7の内底面7b1の塑性変形で行うこともできる。この方法は、ハウジング7を金属材料で形成し、底部7bの抜け耐力及び振動特性の向上を図る場合に有効である。以下、ハウジング7の内底面7b1の塑性変形によるスラスト軸受隙間の幅設定の一例を、図10を用いて概略的に示す。
まず、円筒状の側部7aと円盤状の底部7bとを一体に有するハウジング7を形成する(図10(a)参照)。ハウジング7は、例えば金属材料のプレス加工で形成され、このプレス加工と同時に、ハウジング7の内底面7b1にスラスト動圧発生部として、例えばスパイラル形状の動圧溝を型成形する(図示省略)。
次に、ハウジング7の底部7bを塑性変形させ、内底面7b1をハウジング7の開口側へ向けて突出させる。具体的には、図10(b)に示すように、固定型21と可動型22とで底部7bを軸方向両側からプレスし、固定型21のプレス面21aの中央部に形成された凹部21a1と、可動型22のプレス面22bの中央部に形成された凸部22a1とで、ハウジング7の底部7bをハウジング開口側へ塑性変形させる。これにより、ハウジング内底面7b1の中央部に凸部7b10が形成される(図10(c)参照)。このとき、内底面7b1からの凸部7b10の突出量δが、両スラスト軸受隙間の隙間幅の合計量と同じか、これよりも大きくなるように、固定型21の凹部21a1及び可動型22の凸部22a1の形状を設計する。
このハウジング7の内周に、軸部材2及び軸受スリーブ8を収容し、軸部材2のフランジ部2bの上側端面2b1を軸受スリーブ8の下側端面8cに当接させると共に、フランジ部2bの下側端面2b2をハウジング7の内底面7b1の凸部7b10に当接させる(図10(d)参照)。この状態で、軸受スリーブ8をハウジング7の内周に固定する。例えば、軸受スリーブ8の外周面8dとハウジング7の内周面7a1とを隙間接着で固定する場合、両部材の間に熱硬化性接着剤を介在させ、上記の状態で熱処理(ベーキング)することにより、これらを固定することができる。
その後、軸部材2をハウジング7の底部7b側へ押込み、フランジ部2bの下側端面2b2でハウジング7の内底面7b1の凸部7b10を圧迫し、内底面7b1を元の平面状に戻す方向に塑性変形させる(図10(e)参照)。これにより、両スラスト軸受隙間の幅設定が行われる。この方法によると、金型設計によるハウジング7の内底面7b1の凸部7b10の突出量、及び、軸部材2の押込み量を調整することにより、スラスト軸受隙間の幅設定を精度良く行うことができる。
ところで、図10は概略図であるため、図10(e)に示す軸部材2の押込みによりハウジング7の底部7bがもとの円盤形状に完全に戻っているように示しているが、実際には、一度塑性変形させたハウジング7の内底面7b1の凸部7b10、及び底部7bの下側端面7b2の凹部7b21を完全に平面状に戻すことはできない。図11に、図10に示す方法でスラスト軸受隙間の幅設定を行う際におけるハウジング7の底部7bの変形の様子を示す。
図11(a)は、ハウジング7をプレス成形した後の状態、すなわち図10(a)に示す工程後の状態を示す。コップ状のハウジングをプレス成形すると、図11(a)に示すように内底面7b1の中央部7b12が僅かにへこむことが多い。このとき、内底面7b1に形成されたスラスト動圧発生部の丘部Aは、中央へ向けてやや傾斜する。例えば、スラスト動圧発生部の丘部Aの高さが10μm程度の場合、丘部Aの内径端A1と外径端A2との軸方向位置の差t1は1〜2μm程度となる。この底部7bの中央部を、図10(b)及び(c)に示すプレス加工によりハウジング開口側に突出させる(図11(b)参照)。このときの底部7bの突出量、すなわち、底部7bの下側端面7b2の凹部の深さt2は、例えば20〜40μm程度に設定される。その後、ハウジング7の内底面7b1の凸部7b10を軸部材2のフランジ部2bの下側端面2b2で下方へ押込み、底部7bをもとの円盤状に戻す(図11(c)参照)。そして、軸部材2の押込みを解放すると、底部7bが弾性的に僅かに復元し、底部7bの中央部7b12がややハウジング開口側へ盛り上がる(図11(d)参照)。このときのスラスト動圧発生部の丘部Aの内径端A1と外径端A2との軸方向位置の差t3は、1〜2μm程度となる。
このように、ハウジング7の内底面7b1の中央部7b12がやや盛り上がることにより、以下のような効果を得ることができる。すなわち、軸受装置の起動直後や停止直前の低速回転時には、動圧作用が十分に発現されないため、スラスト軸受隙間を介して対向するハウジング7の内底面7b1と軸部材2のフランジ部2bの下側端面2b2とが接触摺動する。プレス成形直後のハウジング7の内底面7b1は、図11(a)に示すように中央部7b12がやや凹んでいる。このような状態のハウジング内底面7b1をスラスト軸受面として使用すると、軸受装置の低速回転時にはスラスト動圧発生部の丘部Aの外径端A2とフランジ部2bの下側端面2b2とが接触する。スラスト軸受面の外径側は内径側と比べて周速が速いため、外径側が接触摺動するとスラスト動圧発生部の摩耗が早期に生じることとなる。これに対し、図11(d)に示すようにハウジング7の内底面7b1の中央部7b12が盛り上がっていることにより、内底面7b1とフランジ部2bとを周速が0となる内底面7b1の中心で摺動させることができる。これにより、フランジ部2bの下側端面2b2やハウジングの内底面7b1の摩耗、特にスラスト動圧発生部の丘部Aの摩耗を抑えることができ、スラスト方向の軸受性能を長期間に亘り良好に維持することができる。
尚、図11に示す例では、凸部7b21の形成領域がスラスト動圧発生部の形成領域にかかっているが、これに限らず、スラスト動圧発生部の内径側領域に凸部7b21を形成してもよい。この場合、凸部7b21の形成によるスラスト動圧発生部の変形を抑えることができる。
ところで、図11(d)に示すハウジング内底面7b1の中央部7b12の盛り上がりが非常に小さい場合は、スラスト動圧発生部の丘部Aの内径端A1が摺動することとなる。この場合でも、外径端A2よりも周速が遅い場所で摺動させることができるため、スラスト動圧発生部の摩耗をある程度抑えることができるが、やはり周速が0となる内底面7b1の中心で摺動させた方が摩耗をより確実に抑えることができる。この効果を確実に得るために、例えば図12に示すように、ハウジング内底面7b1のうち、動圧溝7b11形成部分のみを除去することによりスラスト動圧発生部を形成してもよい。このようなスラスト動圧発生部(動圧溝7b11)は、例えば電解加工やエッチングにより形成することができる。これにより、ハウジング内底面7b1の中央部7b12の盛り上がりが僅かであっても、その中心を最もハウジング開口側に突出させることができるため、周速が0となる内底面7b1の中心でフランジ部2bの下側端面2b2と摺動させることができる(図12(b)参照)。このとき、内底面7b1の中央部7b12の盛り上がり量t4は、第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間よりも小さくなるように設定することが好ましい。
ハウジング内底面7b1の塑性変形によるスラスト軸受隙間の幅設定方法は上記に限らず、例えば図13に示すように、ハウジング7の内底面7b1の全体を予めハウジング7の開口側へ突出させてもよい。この場合、内底面7b1の突出量δは、両スラスト軸受隙間の隙間幅の合計量に対応して設定される。このハウジング7の内周に軸部材2及び軸受スリーブ8を挿入し、突出させた内底面7b1にフランジ部2bの下側端面2b2を当接させると共に、フランジ部2bの上側端面2b1と軸受スリーブ8の下側端面8cとを当接させ(図13(a)参照)、この状態で軸受スリーブ8をハウジング7の内周面に固定する。その後、さらに軸部材2を下方へ押込むことにより、フランジ部2bの下側端面2b2でハウジング7の内底面7b1を塑性変形させ、ハウジング7の内底面7b1を平坦化する(図13(b)参照)。以上の方法により、両スラスト軸受隙間の幅設定が行われる。
ところで、図13に示す方法によると、ハウジング7の底部7bの下側端面7b2の全体に塑性変形が生じることとなる。上記のように、一旦塑性変形した面は、その後に軸部材2を押込んでも完全には平坦化しないため、ハウジング7の底部7bの下側端面7b2の平面度は塑性変形前と比べて大きく低下することとなる。このような端面7b2を基準として動圧軸受装置1をモータ等に取付けると、取付け精度に問題が生じる恐れがある。従って、底部7bの下側端面7b2が、モータ等に組み込む際の基準面となる場合には、図10に示すように底部7bの一部のみを塑性変形させることにより内底面7b1の一部領域に凸部7b10を形成し、底部7bに塑性変形の影響が及ばない領域を残しておくことが好ましい。
あるいは、図14に示すように、ハウジング7の内底面7b1に予めハウジング7の開口側へ突出した凸部7b10を形成してもよい。この場合も、上記と同様に、軸部材2を下方へ押込むことにより、凸部7b10を押し潰して内底面7b1を平坦化する。このような凸部7b10は、樹脂材料や金属材料の型成形により形成することができる。
以上のように、スラスト軸受隙間の幅設定をハウジング7の内底面7b1の塑性変形で行うと、ハウジング7の内底面7b1を弾性変形させるために用いた押し上げピン14等が不要となるため、装置を簡略化することができる。また、塑性変形によるスラスト軸受隙間の幅設定は、ハウジングが樹脂製、金属製の何れであっても適用することができる。特に、図10に示すようにハウジングの底部を2度塑性変形させる場合、すなわち、凸部7b10の形成するために塑性変形させた後、凸部7b10を潰すために塑性変形させる場合は、ハウジングを金属材料で形成することが好ましい。
本発明の製造方法が適用される動圧軸受装置1の形態は上記に限られない。上記の実施形態では、ハウジング7の側部7a及び底部7bが一体に形成されているが、例えば図15に示すように、ハウジング7の側部7a及び底部7bを別体に形成してもよい。
また、図10〜図14に示す実施形態にように、スラスト軸受隙間の幅設定を行う際に軸受スリーブ8をハウジング側部7aに対して移動させる必要がない場合は、軸受スリーブ8とハウジング側部7aとを一体品として形成することもできる(図示省略)。この場合、別体に形成したハウジング底部7bに凸部を形成した後、ハウジング底部7bをハウジング側部7aと軸受スリーブ8との一体品に固定し、ハウジング底部7bの凸部を塑性変形させることでスラスト軸受隙間の幅設定を行うことができる。
あるいは、図16に示すような動圧軸受装置1にも適用することができる。この動圧軸受装置1は、ハウジング7の開口部でシール空間が2箇所形成されている点で上記の動圧軸受装置と異なる。具体的には、ハウジング7の開口部に配されるシール部材19が、円盤部19aと、円盤部19aの外径端から下方へ延びた円筒部19bとからなる断面L字型に形成される。シール部材19の円盤部19aの内周面19a2は上方へ向けて拡径したテーパ面状に形成され、円筒部19bの外周面19b1及び内周面19b2は円筒面状に形成される。また、ハウジング7の側部7aの開口端部には、側部7aよりも大径な大径部7cが形成され、この大径部7cの内周面7c1は上方へ向けて拡径したテーパ状に形成される。
シール部材19は、円盤部19aの下側端面19a1が軸受スリーブ8の上側端面8bに固定されると共に、円筒部19bの内周面19b2が軸受スリーブ8の外周面8dに嵌合する。この状態で、シール部材19の円筒部19bの下端は、ハウジング7の側部7aと大径部7cとの間に形成された肩面7eと軸方向隙間20を介して対向する。
軸部材2が回転すると、シール部材19の円盤部19aの内周面19a2と軸部材2の軸部2aの外周面2a1との間に、下方へ向けて径方向寸法が漸次縮小した第1シール空間S1が形成される。同時に、シール部材19の円筒部19bの外周面19b1とハウジング7の大径部7cの内周面7c1との間に、下方へ向けて径方向寸法が漸次縮小した第2シール空間S2が形成される。シール部材19の円盤部19aの下側端面19a1には径方向溝19a10が形成され、この径方向溝19a10、及び軸受スリーブ8の外周面8dに形成された軸方向溝10により、第1スラスト軸受部の軸受隙間の外径端、第1シール空間S1、及び第2シール空間S2が連通する。
以上の実施形態では、ラジアル動圧発生部としてヘリングボーン形状の動圧溝8a1、8a2が形成されているが、これに限らず、例えばスパイラル形状の動圧溝やステップ軸受、あるいは多円弧軸受を採用してもよい。また、上記では、スラスト動圧発生部としてスパイラル形状の動圧溝が形成されているが、これに限らず、例えばヘリングボーン形状の動圧溝やステップ軸受、あるいは波型軸受(ステップ型が波型になったもの)等を採用することもできる。
また、上記では、動圧発生部が軸受スリーブ8の内周面8a、下端面8c、およびハウジング7の内底面7b1に形成されているが、それぞれと軸受隙間を介して対向する面、すなわち軸部2aの外周面2a1、フランジ部2bの上側端面2b1、および下側端面2b2に動圧発生部を設けてもよい。
また、以上の実施形態では、ラジアル軸受部R1、R2が軸方向で離隔して設けられているが、これらを軸方向で連続的に設けてもよい。あるいは、これらの何れか一方のみを設けてもよい。
また、以上の実施形態では、動圧軸受装置1の内部に充満し、ラジアル軸受隙間や、スラスト軸受隙間に動圧作用を生じる流体として、潤滑油を例示したが、それ以外にも各軸受隙間に動圧作用を発生可能な流体、例えば空気等の気体や、磁性流体、あるいは潤滑グリース等を使用することもできる。
また、本発明の動圧軸受装置は、上記のようにHDD等のディスク駆動装置に用いられるスピンドルモータに限らず、光ディスクの光磁気ディスク駆動用のスピンドルモータ等、高速回転下で使用される情報機器用の小型モータ、レーザビームプリンタのポリゴンスキャナモータ等における回転軸支持用、あるいは電気機器の冷却ファン用のファンモータとしても好適に使用することができる。
動圧軸受装置1を組込んだスピンドルモータの断面図である。 動圧軸受装置1の断面図である。 軸受スリーブ8の(a)断面図、および(b)下面図である。 図2に示すハウジング7のA−A断面を矢印方向に見た断面図である。 動圧軸受装置1の組立工程を示す断面図である。 動圧軸受装置1の組立工程を示す断面図である。 動圧軸受装置1の組立工程を示す(a)断面図、および(b)拡大図である。 動圧軸受装置1の組立工程を示す(a)断面図、および(b)拡大図である。 動圧軸受装置1の組立工程の他の例を示す断面図である。 (a)〜(e)は、動圧軸受装置1の組立工程の他の例を示す断面図である。 (a)〜(d)は、図9に示す組み立て工程におけるハウジング7の底部7bの拡大断面図である。 (a)、(b)は、ハウジング7の内底面7b1に形成されるスラスト動圧発生部の他の例を示す断面図である。 (a)、(b)は、動圧軸受装置1の組立工程の他の例を示す断面図である。 動圧軸受装置1の組立工程の他の例を示す断面図である。 他の例の動圧軸受装置1の断面図である。 他の例の動圧軸受装置1の断面図である。
符号の説明
1 動圧軸受装置
2 軸部材
2a 軸部
2b フランジ部
7 ハウジング
7a 側部
7b 底部
7b1 内底面
8 軸受スリーブ
9 シール部
11 可動部
12 ハウジング押さえ
13 固定台
14 押し上げピン
15 押し上げカム
16 変位計
100 組立装置
δ 移動量
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
S シール空間

Claims (9)

  1. 側部および底部を有するハウジングと、ハウジングの内周に固定された軸受スリーブと、フランジ部を有する軸部材と、軸受スリーブの内周面と軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で前記軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部と、フランジ部の一方の端面と軸受スリーブの一方の端面との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で前記軸部材をスラスト方向に支持する第1スラスト軸受部と、フランジ部の他方の端面とハウジングの内底面との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で前記軸部材をスラスト方向に支持する第2スラスト軸受部とを備えた動圧軸受装置を製造するための方法であって、
    ハウジングの内底面の変形により、第1スラスト軸受部のスラスト軸受隙間及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間の幅設定を行うことを特徴とする動圧軸受装置の製造方法。
  2. 前記ハウジングの内底面の変形が、弾性変形である請求項1記載の動圧軸受装置の製造方法。
  3. ハウジングの内底面をハウジング開口側へ弾性変形させた状態で、軸部材及び軸受スリーブをハウジング内周に挿入し、フランジ部の他方の端面をハウジングの内底面に当接させると共に、フランジ部の一方の端面を軸受スリーブの一方の端面に当接させることで、両スラスト軸受隙間の幅設定を行う請求項2記載の動圧軸受装置の製造方法。
  4. 第1及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間が何れも0の状態で、ハウジングの内底面をハウジング開口側へ弾性変形させ、これによる軸受スリーブのスライドで両スラスト軸受隙間の幅設定を行う請求項2記載の動圧軸受装置の製造方法。
  5. 軸受スリーブのスライド量に基づいて、両スラスト軸受隙間の幅設定を行う請求項4記載の動圧軸受装置の製造方法。
  6. 前記ハウジングの内底面の変形が、塑性変形である請求項1記載の動圧軸受装置の製造方法。
  7. ハウジングの内底面に凸部を形成し、ハウジング内に軸部材及び軸受スリーブを収容した後、フランジ部の一方の端面を軸受スリーブの端面に当接させると共に、フランジ部の他方の端面をハウジング内底面の凸部に当接させた状態で、軸受スリーブをハウジングの内周面に固定し、その後、軸部材を押込んでフランジ部ので凸部を塑性変形させることにより、スラスト軸受隙間の幅設定を行う請求項6記載の動圧軸受装置の製造方法。
  8. 凸部をハウジング内底面の一部領域に形成する請求項7記載の動圧軸受装置の製造方法。
  9. 請求項1〜8の何れかに記載の方法で製造された動圧軸受装置。
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