JP2008248977A - 流体軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】所望の軸受性能を安定的に維持可能な流体軸受装置を低コストに提供する。
【解決手段】ハウジング7は、外周面8dを中間スリーブ11で被覆した軸受スリーブ8をインサート部品として射出成形されている。中間スリーブ11の内周面11aと軸受スリーブ8の外周面8dとの間に軸受スリーブ8の両端面8b、8cに開口した循環路12が形成されている。
【選択図】図2
【解決手段】ハウジング7は、外周面8dを中間スリーブ11で被覆した軸受スリーブ8をインサート部品として射出成形されている。中間スリーブ11の内周面11aと軸受スリーブ8の外周面8dとの間に軸受スリーブ8の両端面8b、8cに開口した循環路12が形成されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、流体軸受装置に関するものである。
流体軸受装置は、軸受隙間に形成される油膜で軸部材を回転自在に支持する軸受装置である。この流体軸受装置は、高速回転、高回転精度、低騒音等の特徴を有するものであり、近年ではその特徴を活かして、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として、より具体的には、HDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、ファンモータなどのモータ用軸受装置として好適に使用されている。
この種の流体軸受装置は、軸受隙間を満たす潤滑油に動圧を発生させるための動圧発生部を備えた動圧軸受と、動圧発生部を有さない真円軸受(軸受断面が真円形状である軸受)とに大別される。
流体軸受装置の運転中、様々な要因によって内部空間を満たす潤滑油がその一部領域で負圧になる場合がある。かかる負圧の発生は、気泡の発生や潤滑油の漏れ、あるいは振動の発生等を招き、軸受性能低下の一因となる。この種の不具合を回避するには流体軸受装置の内部で潤滑油を循環させるのが有効であり、このような潤滑油の流動循環を実現する目的で、軸受スリーブの外周面に軸方向溝を設け、当該軸方向溝とハウジングの内周面とで軸受スリーブの両端面に開口した循環路を設けた構成が公知である(例えば、特許文献1を参照)。
近年、流体軸受装置に対するコスト低減の要請が益々厳しさを増しており、この要請に対応するために軸受スリーブをインサートしてハウジングを射出成形する場合がある。かかる構成とすれば、ハウジングの成形、およびハウジングと軸受スリーブの固定を一工程で行うことができるため、流体軸受装置のコスト低減策として有効である(例えば、特許文献2を参照)。
特開2003−232353号公報
特開2003−130043号公報
しかしながら、軸受スリーブの外周面に軸方向溝を予め設けた状態でハウジングを射出成形しても、射出成形時に供給される樹脂等の溶融材料によって溝が埋められてしまうため上記の循環路を形成することができない。これを回避する手段として、例えば、軸方向溝にピンを差し込んだ状態でハウジングを射出成形し、その後ピンを抜き取る手段が考えられる。しかしながら、循環路は通常数十μm〜数百μm程度の微小な孔径に設定されるため、抜き取り時にピンが折れ易いという問題がある。従って、かかる手法では生産効率の低下が懸念され、循環路を精度良くかつ低コストに得ることは困難である。
本発明の課題は、所望の軸受性能を安定的に維持可能な流体軸受装置を低コストに提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明では、ハウジングと、ハウジングの内周に配置された軸受スリーブと、軸受スリーブの内周面が面するラジアル軸受隙間に形成した油膜で支持すべき軸をラジアル方向に支持するラジアル軸受部とを備える流体軸受装置であって、外周面を中間スリーブで被覆した軸受スリーブをインサート部品としてハウジングが射出成形され、中間スリーブの内周面と軸受スリーブの外周面との間に軸受スリーブの両端面に開口した循環路が形成されていることを特徴とする流体軸受装置を提供する。
上記のように、本発明は、外周面を中間スリーブで被覆した軸受スリーブをインサート部品としてハウジングが射出成形され、中間スリーブの内周面と軸受スリーブの外周面との間に軸受スリーブの両端面に開口した循環路が形成されていることを特徴とするものである。かかる構成とすることで、軸受スリーブの外周面あるいは中間スリーブの内周面に軸方向溝を設けた場合でも、かかる軸方向溝がハウジングの射出成形時にキャビティに露出することがなくなる。そのため、ハウジングを射出成形するのに伴って循環路となる軸方向溝が射出材料で埋まることはない。また、軸受スリーブは中間スリーブと共にインサートされるから、これらを成形型内に正確に位置決めするだけで、ハウジングの成形と、ハウジング、軸受スリーブ、および中間スリーブの固定とを一工程で精度良く行うことができる。従って、軸受性能の安定維持に不可欠な循環路を容易かつ高精度に形成することができ、所望の軸受性能を安定的に維持可能な流体軸受装置が低コストに得られる。
循環路は、軸受スリーブの外周面と中間スリーブの内周面との間に設けた軸方向隙間に可溶性の循環路形成材を充填した状態でハウジングを射出成形した後、循環路形成材を溶解して形成することができる。このようにすることで、固化した循環路形成材が中間スリーブのバックアップとして機能するため、中間スリーブが、射出成形時の圧迫力(射出圧)によって変形する事態を防止することができ、循環路形状の高精度化が図られる。また、かかる構成を採用すれば、射出圧による変形を回避することができるので、中間スリーブを十分に薄肉化することが可能となり、軸受スリーブの肉厚は、この種の中間スリーブを設けない場合とほぼ同等に設定することが可能となる。そのため、軸受スリーブの端面でスラスト軸受部を形成する場合でも、軸受スリーブの端面に設けるべきスラスト軸受面の面積を十分に確保することができ、スラスト軸受部における軸受剛性の低下を極力抑制あるいは防止することが可能となる。
循環路形成材としては、例えば熱可溶性のソリッドインク又は水溶性のインクを主成分とするものを用いるのが好適である。ソリッドインク(ホットメルトインクとも称される)は、特段の硬化装置を用いることなく急速硬化させることができる一方で、例えば加熱するだけで溶解、除去することが可能であり、また、水溶性インクは水中に浸漬等するだけで溶解、除去することが可能である。そのため、循環路形成材を用いることによるコスト増をできるだけ抑制でき、望ましい。
循環路形成材の充填は、例えばマイクロディスペンサ、インクジェット方式の印刷装置等を用いることによって精度良く行うことができる。
以上の構成からなる流体軸受装置は、ステータコイルと、ロータマグネットとを有するモータ、例えばHDD等の情報機器用のスピンドルモータに好ましく使用することができる。
以上より、本発明によれば、高い軸受性能を安定的に維持可能な流体軸受装置を低コストに提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、流体軸受装置を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に支持する流体軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5とを備えている。ステータコイル4はブラケット6の外周に取付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の内周に取付けられる。流体軸受装置1のハウジング7は、ブラケット6の内周に装着される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚保持される。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が回転し、それによって、ディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
図2は、本発明にかかる流体軸受装置の第1実施形態を示すものである。同図に示す流体軸受装置1は、ハウジング7と、ハウジング7の内周に配置された中間スリーブ11および軸受スリーブ8と、軸受スリーブ8の内周に挿入された軸部材2と、ハウジング7の開口部をシールするシール部材9とを主要な構成部品として備える。なお、以下では、説明の便宜上、シール部材9の側を上側、これと軸方向反対側を下側として説明を進める。
軸部材2は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、軸部2aと、軸部2aの下端に一体又は別体に設けられたフランジ部2bとを備えている。軸部材2は、その全体を金属材料で形成する他、例えばフランジ部2bの全体あるいはその一部(例えば両端面)を樹脂で構成し、金属と樹脂のハイブリッド構造とすることもできる。
軸受スリーブ8は、焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成される。なお、焼結金属に限らず、多孔質体ではない他の金属材料、例えば黄銅等の軟質金属で軸受スリーブ8を形成することも可能である。また、焼結金属以外の多孔質体で形成することも可能である。
軸受スリーブ8の内周面8aには、第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面となる上下2つの領域が軸方向に離隔して設けられ、該2つの領域には、例えば図3(a)に示すようなヘリングボーン状に配列された複数の動圧溝8a1、8a2がそれぞれ形成されている。上側の動圧溝8a1は、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。動圧溝は、軸部2aの外周面2a1に形成することもでき、またその形状は、スパイラル状等、公知のその他の形状とすることもできる。軸受スリーブ8の外周面8dには、1又は複数本の軸方向溝8d1が形成され、本実施形態で、軸方向溝8d1は、円周方向の3箇所に等配されている(図3(b)を参照)。
軸受スリーブ8の下側端面8bには第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受面となる領域が設けられ、該領域には、図3(b)に示すように、例えばスパイラル状に配列された複数の動圧溝8b1が形成されている。動圧溝8b1は、フランジ部2bの上側端面2b1に形成することもでき、またその形状は、へリングボーン状等、公知のその他の形状とすることもできる。
軸受スリーブ8の上側端面8cの半径方向略中央部には円周溝8c1が形成され、円周溝8c1よりも内径側の領域には、一又は複数の半径方向溝8c2が形成されている。本実施形態で、半径方向溝8c2は、円周方向の三箇所に等配されている。
軸受スリーブ8の外周面8dは、円筒状の中間スリーブ11で被覆される。中間スリーブ11の内周面11aと軸受スリーブ8の外周面8dに設けた軸方向溝8d1とで、軸受スリーブ8の両端面8b、8cに開口した循環路12が形成される。なお、中間スリーブ11の肉厚は、軸受スリーブ8の肉厚に比して相当量薄肉に設定される。
ハウジング7は、外周面8dを中間スリーブ11で被覆された軸受スリーブ8をインサート部品として樹脂で射出成形され、その内周面7aは平滑な円筒面状に形成される。樹脂以外にも、例えばアルミニウム合金等の低融点金属でハウジング7を射出成形することも可能である。
ハウジング7の下端開口部は、円盤部10aおよび円筒部10bを一体に有する有底筒状の蓋部材10で封止される。円筒部10bの上側端面10b1には、一又は複数の半径方向溝10b11が形成されている。
円盤部10aの内底面10a1には、第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受面となる領域が設けられ、該領域には、図示は省略するが、例えばスパイラル状に配列された複数の動圧溝が形成されている。動圧溝は、フランジ部2bの下側端面2b2に形成することもでき、またその形状は、ヘリングボーン状等、公知のその他の形状とすることができる。
シール部材9は、例えば、黄銅等の軟質金属材料やその他の金属材料、あるいは樹脂材料でリング状に形成される。シール部材9の内周面9aは、軸部2aの外周面2a1と所定のシール空間S1を介して対向する。シール部材9の下側端面9bの外径側領域9b1は、内径側領域よりも僅かに軸方向上方に後退させた状態に形成されている。
上記の構成部材からなる流体軸受装置1の製造工程を、ハウジング7を射出成形する工程を中心に以下説明する。
本実施形態では、まず図4(a)に示すように、軸受スリーブ8の外周面8dに設けた軸方向溝8d1に可溶性の循環路形成材13を充填し、これを硬化させる。使用可能な循環路形成材13に特段の限定はない。例えばソリッドインクを主成分とする熱可溶タイプ、水溶性インクを主成分とする水溶性タイプ、有機溶媒で可溶するタイプ等の循環路形成材13が使用可能である。この中でも特に容易に硬化、除去を行うことができ、かつ環境負荷の少ない熱可溶性タイプあるいは水溶性タイプが好適であり、本実施形態では水溶性タイプのエコマティAX(日本合成化学工業株式会社製)を使用している。
なお、ソリッドインクとは別名ホットメルトインクとも称されるものであり、溶剤等を含まず、融点以上の温度領域では低粘度の液状をなす一方で、常温作業環境下におかれると急速に硬化し、適当な機械的強度を有すものである。ソリッドインクは、ワックスと称される化合物を主原料とする。ワックスとしては、ステアリン酸やベヘン酸、またはパルミチン酸等に代表される直鎖型の高級脂肪酸からなる脂肪酸系ワックス、リグノセリン酸ドトリアコンシル等を主成分とするカルナウバワックスに代表されるエステル系ワックス、N・ステアリルステアリン酸アミド、N,N・エチレンビスオレイン酸アミド等に代表される脂肪酸アミド系ワックス、あるいは、キャンデリラワックスやパラフィンワックス等に代表される炭化水素系ワックス等が使用可能である。なお、上記のワックスには、必要に応じて、溶融時の低粘度化を図るための粘度調整剤の他、接着性向上のための接着性付与材、可撓性付与のための可塑剤、熱安定性を付与するための酸化防止剤等の添加剤を適宜添加することも可能である。
また、有機溶媒で可溶するタイプの循環路形成材13としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン、ナイロン、エチルセルロース、アセチルブチルセルロース、シェラック(天然樹脂)、アセチルセルロース等を主成分とするものが使用可能である。
軸受スリーブ8の軸方向溝8d1に対する循環路形成材13の充填は、図示は省略するが、例えばマイクロディスペンサやインクジェット方式の印刷装置を用いて行われる。これらは、微小な幅の軸方向溝8d1に精度良く循環路形成材13を充填することができるから、特に好適である。軸方向溝8d1に対する循環路形成材13の充填方法はこれに限定されるわけではなく、例えば射出成形によって行うことも可能である。
次に、図4(b)に示すように、軸受スリーブ8の外周面8dを被覆するように中間スリーブ11を配し、軸受スリーブ8と中間スリーブ11とが一体化したアセンブリを形成する。中間スリーブ11は、ハウジング7を射出成形する際の射出圧や熱によって変形等が生じない限り、金属あるいは樹脂の何れで形成してもよい。アセンブリは、例えば、予め円筒状に形成した中間スリーブ11を圧入、接着等の手段で軸受スリーブ8の外周に固定することによって形成することができる他、軸受スリーブ8の外周面8dにめっき処理を施すことによって形成することも可能である。
以上のようにして形成したアセンブリは、図4(c)に概念的に示すハウジング7の射出成形工程に移送される。同図に示す金型は、主に可動側の上型14および固定側の下型15からなり、両型14,15でハウジング7形状に対応したキャビティ17が構成される。上型14には、キャビティ17内に溶融材料Pを射出するゲート18が設けられる。ゲート18形状は、成形すべきハウジング7の形状に対応させた任意形状のものが選択可能である。下型15の軸線上には固定ピン16が設けられ、アセンブリ(軸受スリーブ8)は固定ピン16の外周に半径方向移動を規制する程度の嵌め合いで嵌合される。これによりアセンブリが固定ピン16に位置決め配置される。
上記構成の金型において、アセンブリを下型15に位置決め配置した状態で上型14を下型15に接近させて型締めする。型締め完了後、ゲート18を介してキャビティ17内に溶融材料Pを射出・充填し、ハウジング7を軸受スリーブ8および中間スリーブ11と一体に型成形する。
本実施形態では溶融材料Pとして、熱可塑性樹脂をベース樹脂とする樹脂材料が使用される。ベース樹脂としては、非晶性樹脂あるいは結晶性樹脂の何れも使用可能である。使用可能な非晶性樹脂としては、例えば、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルイミド(PEI)等を挙げることができる。また使用可能な結晶性樹脂としては、例えば、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を挙げることができる。上記のベース樹脂には、これに種々の特性を付与する充填材を添加することができる。使用可能な充填材の種類にも特段の限定はないが、例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカー状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボンファイバー、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、金属粉末等の繊維状又は粉末状の導電性充填材を用いることができる。これらの充填材は、単独で用いる他、二種以上を混合して使用しても良い。
ハウジング7の成形に用いる溶融材料Pは樹脂材料に限定されるわけではなく、アルミニウム合金やマグネシウム合金等、低融点の金属材料を使用することも可能である。
溶融材料Pの固化完了後型開きを行うと、ハウジング7、中間スリーブ11、および軸受スリーブ8が一体となった成形品19が得られる。得られた成形品19は、循環路形成材13の除去工程に移送される。除去工程では、硬化した循環路形成材13を水で溶解、除去する。これにより、図4(d)に示すように、中間スリーブ11の内周面11aと軸受スリーブ8の外周面8dに設けた軸方向溝8d1とで軸受スリーブ8の両端面8b、8cに開口した循環路12が形成された成形品19が得られる。なお、循環路形成材13としてソリッドインクを主成分とするものを用いた場合には、成形品19(循環路形成材13)を加熱することにより循環路形成材13が溶解、除去される。
以上のようにして形成された成形品の内周に軸部材2を挿入し、ハウジング7の上端開口部および下端開口部に、シール部材9および蓋部材10をそれぞれ接着、圧入等適宜の手段で固定する。なお、本実施形態において、蓋部材10を構成する円筒部10bの上側端面10b1と円盤部10aの内底面10a1との軸方向離間距離は、軸部材2のフランジ部2bの幅と両スラスト軸受隙間の軸方向寸法とを合算した値に設定されている。従って、蓋部材10は、円筒部10bの上側端面10b1を軸受スリーブ8の下側端面8bに当接させるようにしてハウジング7の内周に固定するだけで、両スラスト軸受部T1、T2の隙間幅(スラスト軸受隙間幅)が精度良く設定される。その後、シール部材9で密封されたハウジング7の内周に潤滑油を充満させることにより、図2に示す流体軸受装置1が完成する。
以上の構成からなる流体軸受装置1において、軸部材2が回転すると、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる上下2箇所の領域は、それぞれ、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴って、各ラジアル軸受隙間に形成される油膜は、ラジアル軸受面にそれぞれ形成された動圧溝8a1、8a2の動圧作用によってその油膜剛性を高められ、この圧力によって軸部材2がラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが形成される。
また、軸部材2が回転すると、軸受スリーブ8の下側端面8bのスラスト軸受面となる領域は、フランジ部2bの上側端面2b1とスラスト軸受隙間を介して対向し、蓋部材10の内底面10a1のスラスト軸受面となる領域は、フランジ部2bの下側端面2b2とスラスト軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴って、各スラスト軸受隙間に形成される油膜は、スラスト軸受面にそれぞれ形成された動圧溝の動圧作用によってその油膜剛性を高められ、この圧力によって軸部材2が両スラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2を両スラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部T1と第2スラスト軸受部T2とが形成される。
また、軸部材2の回転時には、上述のように、シール空間S1が、ハウジング7の内部側に向かって漸次縮小したテーパ形状を呈しているため、シール空間S1内の潤滑油は毛細管力による引き込み作用により、シール空間が狭くなる方向、すなわちハウジング7の内部側に向けて引き込まれる。これにより、ハウジング7の内部からの潤滑油の漏れ出しが効果的に防止される。また、シール空間S1は、ハウジング7の内部空間に充満された潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収するバッファ機能を有し、想定される温度変化の範囲内では、潤滑油の油面は常にシール空間S1内にある。
また、上側の動圧溝8a1は、軸方向中心mに対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。そのため、軸部材2の回転時、動圧溝8a1による潤滑油の引き込み力(ポンピング力)は上側領域が下側領域に比べて相対的に大きくなる。そして、この引き込み力の差圧によって、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面2a1との間の隙間に満たされた潤滑油は、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間→蓋部材10の上側端面10b1の半径方向溝10b11→循環路12→シール部材9の下側端面9bの外径側領域9b1と軸受スリーブ8の上側端面8cとの間の環状隙間→軸受スリーブ8の上側端面8cの円周溝8c1→軸受スリーブ8の上側端面8cの半径方向溝8c2という経路を循環して、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間に再び引き込まれる。
このように、潤滑油がハウジング7の内部空間を流動循環するように構成することで、内部空間内の潤滑油の圧力が局部的に負圧になる現象を防止して、負圧発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑油の漏れや軸受性能の劣化、振動の発生等の問題を解消することができる。また、何らかの理由で潤滑油中に気泡が混入した場合でも、気泡が潤滑油に伴って循環する際にシール空間S1内の潤滑油の油面(気液界面)から外気に排出されるので、気泡による悪影響はより一層効果的に防止される。
以上に示すように、本発明では、外周面8dを中間スリーブ11で被覆した軸受スリーブ8をインサート部品としてハウジング7を射出成形し、中間スリーブ11の内周面11aと軸方向溝8d1とで軸受スリーブ8の両端面8b、8cに開口した循環路12を形成した。このように、外周面8dを中間スリーブ11で被覆した軸受スリーブ8をインサート部品とすることで、図4(c)にも示すように軸受スリーブ8の外周面8dに形成した軸方向溝8d1がハウジング7を成形するキャビティ17に露出することがなくなる。そのため、ハウジング7を射出成形するのに伴って軸受スリーブ8の軸方向溝8d1が射出材料(溶融材料P)で埋まることはない。また、軸受スリーブ8は中間スリーブ11と共にインサートされるから、これらを成形型内に正確に位置決めするだけで、ハウジング7の成形と、ハウジング7、軸受スリーブ8、および中間スリーブ11の固定とを一工程で精度良く行うことができる。従って、軸受性能の安定維持に不可欠な循環路12を容易かつ高精度に形成することができ、所望の軸受性能を安定的に維持可能な流体軸受装置1が低コストに得られる。
また、本実施形態では、軸受スリーブ8に設けた軸方向溝8d1に可溶性の循環路形成材13を充填した状態でハウジング7を射出成形した後、循環路形成材13を溶解することにより循環路12を形成した。このようにすることで、固化した循環路形成材13が中間スリーブ11のバックアップとして機能するため、ハウジング7の射出成形時にあっては中間スリーブ11の軸方向溝8d1との対向領域が、射出成形時の圧迫力(射出圧)によって変形する事態を防止することができる。また、射出圧による変形を確実に防止できるため、中間スリーブ11を十分に薄肉化することが可能となり、軸受スリーブ8の肉厚は、この種の中間スリーブ11を設けない場合とほぼ同等に設定することが可能となる。そのため、特に本実施形態のように、軸受スリーブ8の下端側にスラスト軸受部T1を設けた構成とする場合、軸受スリーブ8の下側端面8bに設けるべきスラスト軸受面の面積を十分に確保できるため、第1スラスト軸受部T1における軸受剛性の低下を極力抑制あるいは防止することが可能となる。
また、可溶性の循環路形成材13として、水溶性インクを主成分とするものを用いたので、固化した循環路形成材13の除去を簡便に行うことが可能である。そのため、循環路形成材13を用いることによるコスト増をできるだけ抑制することができ、高精度な循環路12を低コストに形成することができる。
以上、本発明に係る流体軸受装置の一実施形態について説明を行ったが、本発明は上記構成の流体軸受装置に限定適用されるものではない。
図6は、本発明にかかる流体軸受装置の第2実施形態を示している。同図に示す流体軸受装置21が上述した流体軸受装置と異なる主な点は、第2スラスト軸受部T2が、軸部材2に固定されたディスクハブ3の下側端面3aとハウジング7の上側端面7bとの間に設けられた点、およびシール空間S1がハウジング7の上部外周面7cとディスクハブ3の内周面3bとの間に形成された点にある。これ以外の主たる構成は、図2に示す流体軸受装置1に準ずるので、共通の参照番号を付して重複説明を省略する。
なお、以上では、軸受スリーブ8の両端面8b、8cに開口した循環路12を、軸受スリーブ8の外周面8dに設けた軸方向溝8d1と中間スリーブ11の内周面11aとで形成する場合を示したが、循環路12は、中間スリーブ11の内周面11aの円周方向一又は複数箇所に軸方向溝を設け、当該軸方向溝と軸受スリーブ8の外周面8dとで形成することも可能である。
また、以上では、ラジアル軸受部R1、R2およびスラスト軸受部T1、T2として、ヘリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝により潤滑油の動圧作用を発生させる場合について説明を行ったが、ラジアル軸受部R1、R2として、いわゆるステップ軸受、多円弧軸受、あるいは非真円軸受を、スラスト軸受部T1、T2として、いわゆるステップ軸受や波型軸受を採用しても良い。また、上述した流体軸受装置では、ラジアル軸受部を、ラジアル軸受部R1、R2のように、軸方向2箇所に離隔して設けた構成を例示しているが、軸方向の上下領域に亘って1つのラジアル軸受部を設けた構成としても良い。また、ラジアル軸受部を軸方向3箇所以上に離隔して設けることもできる。
また、以上では、ラジアル軸受部R1、R2の双方を動圧軸受で構成した場合について説明を行ったが、ラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方をこれ以外の軸受で構成することもできる。例えば図示は省略するが、軸部材2の外周面2a1を真円状外周面に形成すると共に、この外周面と対向する軸受スリーブ8の内周面8aを真円状内周面とすることで、いわゆる真円軸受を構成することもできる。
また、以上では、スラスト軸受部T1、T2の双方を動圧軸受で構成した場合について説明を行ったが、軸部材2の下端を凸球状に形成することにより、スラスト軸受部をピボット軸受で構成することもできる。
また、以上の説明では、流体軸受装置の内部に充満し、ラジアル軸受隙間やスラスト軸受隙間に充満される潤滑流体として潤滑油を例示したが、潤滑油以外にも、例えば空気等の気体や、磁性流体等を使用することもできる。
1 流体軸受装置
2 軸部材
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
8d1 軸方向溝
10 蓋部材
11 中間スリーブ
12 循環路
13 循環路形成材
14 上型
15 下型
17 キャビティ
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
S1 シール空間
2 軸部材
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
8d1 軸方向溝
10 蓋部材
11 中間スリーブ
12 循環路
13 循環路形成材
14 上型
15 下型
17 キャビティ
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
S1 シール空間
Claims (3)
- ハウジングと、ハウジングの内周に配置された軸受スリーブと、軸受スリーブの内周面が面するラジアル軸受隙間に形成した油膜で支持すべき軸をラジアル方向に支持するラジアル軸受部とを備える流体軸受装置であって、
外周面を中間スリーブで被覆した軸受スリーブをインサート部品としてハウジングが射出成形され、中間スリーブの内周面と軸受スリーブの外周面との間に軸受スリーブの両端面に開口した循環路が形成されていることを特徴とする流体軸受装置。 - 循環路が、中間スリーブの内周面と軸受スリーブの外周面との間に設けた軸方向隙間に可溶性の循環路形成材を充填した状態でハウジングを射出成形した後、循環路形成材を溶解して形成されている請求項1記載の流体軸受装置。
- 循環路形成材が、ソリッドインク又は水溶性インクを主成分とするものである請求項2記載の流体軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007089121A JP2008248977A (ja) | 2007-03-29 | 2007-03-29 | 流体軸受装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007089121A JP2008248977A (ja) | 2007-03-29 | 2007-03-29 | 流体軸受装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008248977A true JP2008248977A (ja) | 2008-10-16 |
Family
ID=39974171
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007089121A Withdrawn JP2008248977A (ja) | 2007-03-29 | 2007-03-29 | 流体軸受装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2008248977A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015098921A (ja) * | 2013-11-20 | 2015-05-28 | Ntn株式会社 | 流体動圧軸受装置及びその製造方法 |
-
2007
- 2007-03-29 JP JP2007089121A patent/JP2008248977A/ja not_active Withdrawn
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