JP2011033103A - 流体軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸受部材を低コストかつ高精度に製造可能とし、もって高い軸受性能を具備する流体軸受装置を低コストに提供可能とする。
【解決手段】モータの静止側もしくは回転側に取り付けられる軸受部材7は、軸方向の両端が開口した円筒状に樹脂で射出成形されたものであり、内周に、外周面2a1でラジアル軸受部R1,R2のラジアル軸受隙間を形成する軸部材2を収容する。この軸受部材7は、その下側端面7a3に、周方向等間隔に設けられた3以上でかつ奇数のゲート跡8、例えば5つのゲート跡8を有する。すなわち、軸受部材7は、周方向等間隔に配置された点状ゲートを介して溶融樹脂をキャビティに射出・充填することによって成形される。
【選択図】図4
【解決手段】モータの静止側もしくは回転側に取り付けられる軸受部材7は、軸方向の両端が開口した円筒状に樹脂で射出成形されたものであり、内周に、外周面2a1でラジアル軸受部R1,R2のラジアル軸受隙間を形成する軸部材2を収容する。この軸受部材7は、その下側端面7a3に、周方向等間隔に設けられた3以上でかつ奇数のゲート跡8、例えば5つのゲート跡8を有する。すなわち、軸受部材7は、周方向等間隔に配置された点状ゲートを介して溶融樹脂をキャビティに射出・充填することによって成形される。
【選択図】図4
Description
本発明は、流体軸受装置に関するものである。
流体軸受装置は、軸受隙間に形成される潤滑流体の潤滑膜で軸部材を相対回転自在に支持するものである。この流体軸受装置は、高速回転、高回転精度、低騒音等の特徴を有するものであり、近年ではその特徴を活かして、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として、より具体的には、HDD等の磁気ディスク装置やCD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、PC等のファンモータなどのモータ用軸受装置として好適に使用されている。
ディスク装置の低価格化が急速に進展している昨今、スピンドルモータに搭載される流体軸受装置に対するコスト低減の要請が益々厳しさを増している。かかる要請に対応すべく、例えば特開2004−116667号公報(特許文献1)に記載のように、流体軸受装置の一構成部材であるハウジングを、金属の機械加工品から樹脂の射出成形品に置換する試みがなされている。ハウジングとは、例えばモータブラケット等、モータの構成部材に対する取り付け部を外周に有すると共に、ラジアル軸受面を有する軸受スリーブを内周に保持した円筒状の部材である。
上記のように樹脂で射出成形されるハウジングを所定の成形精度(寸法精度等)に仕上げるには、射出成形の態様、特にキャビティ内に溶融樹脂を充填するゲートの形状や位置が重要となる。この点に着目し、特開2005−61557号公報(特許文献2)には、成形金型のうち、ハウジングの一端外周縁部に対応する位置に設けた円環状のフィルムゲートを介してキャビティ内に溶融樹脂を射出、充填することにより、ハウジングを射出成形する構成が開示されている。このようにすれば、キャビティの円周方向および軸方向に均一に溶融樹脂を充填することができるので、高精度のハウジングを得ることができる。
上記のような樹脂の射出成形品は、通常、キャビティ内に充填された溶融樹脂を固化させた後、型開きを行い、成形品を離型することによって得られる。型開き前の段階では、成形品とゲート内に残存する樹脂(ゲート内樹脂)とが繋がっている一方、型開動作等に伴ってゲート内樹脂が分断されると、ゲート内樹脂の一部がゲート形状に対応するかたちでゲート跡として成形品側に残る。そのため、上記特許文献2に記載のハウジングでは、その一端外周縁部に環状のゲート跡が残るが、これをそのまま放置しておくと、外観上、また機能上好ましくないことから、機械加工等を施すことによってゲート跡を除去するようにしている。しかし、環状を呈するゲート跡の除去加工は煩雑を極めるために製造コストの上昇が避けられず、ハウジングを樹脂で射出成形することによるコストメリットを十分に享受することができないという問題がある。
流体軸受装置には、構成部材として、上記のハウジングに相当する部分と軸受スリーブに相当する部分とを一体に有する部材(軸受部材)を用いる場合もあるが、かかる軸受部材を樹脂で射出成形する場合にも上記同様の問題がある。
本発明の課題は、ハウジングもしくは軸受部材を低コストかつ高精度に製造可能とし、もって高い軸受性能を具備する流体軸受装置を低コストに提供可能とすることにある。
上記課題を解決するための第1の構成として、本発明では、軸方向の両端が開口した円筒状に樹脂で射出成形され、モータの静止側もしくは回転側に取り付けられるハウジングと、ラジアル軸受面を有し、ハウジングの内周に保持された軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入された軸部材とを備え、軸受スリーブと軸部材の相対回転に伴って軸受スリーブのラジアル軸受面と軸部材の外周面との間にラジアル軸受隙間が形成される流体軸受装置において、ハウジングが、軸方向の一方の端面に、周方向等間隔に設けられた3以上でかつ奇数のゲート跡を有することを特徴とする流体軸受装置を提供する。
なお、モータの静止側としてはモータブラケットを、また、モータの回転側としては、ディスク等を保持するディスクハブを挙げることができる。流体軸受装置がいわゆる軸回転型である場合、ハウジングはモータブラケットに取り付けられ、流体軸受装置がいわゆる軸固定型である場合、ハウジングはディスクハブに取り付けられる。後述する本発明の第2構成に係る流体軸受装置についても同様である。
上記のように、本発明に係る流体軸受装置は、ハウジングが、軸方向の一方の端面に、周方向等間隔に設けられた3以上でかつ奇数のゲート跡を有することを特徴とするものである。これはすなわち、ハウジングが、その軸方向一方側の端面に対応する位置に周方向等間隔に配置した3以上でかつ奇数の点状ゲートを介してキャビティ内に溶融樹脂を充填することによって得られることを意味する。このようにすれば、ゲート跡が、除去加工等のゲート処理が必要な程度にハウジングに残ったとしても、ハウジングの全周に亘ってではなく、周方向の一部に対してゲート処理を施せば足りる。従って、ゲート処理を従来よりも簡略化することができるので、ハウジングの製造コストを低廉化することが可能となる。
ところで、周方向に複数設けたゲートを介してキャビティに溶融樹脂を射出・充填した場合、溶融樹脂はキャビティに沿って周方向に流動し、隣り合うゲート間で合流する。これに伴い、成形品のゲート跡間にはウェルドと称される樹脂の合流痕が形成される。ウェルドの形成位置では、相対的に成形収縮量が大きくなる傾向となるため、ハウジングの成形精度、特に内周面の精度(真円度等)に崩れが生じ、軸受性能に悪影響が及ぶおそれがある。
これに対し、上記のように、周方向等間隔に配置した3以上でかつ奇数のゲートを介してキャビティ内に溶融樹脂を射出・充填するようにすれば、各ウェルドの形成位置における対角の径(各ウェルドと、これと180°位相を異ならせた部分とを繋ぐ線分の寸法)を概ね一定とすることができ、内周面精度の低下を可及的に防止することができる。また、ハウジングの軸方向の一端面に対応した位置に配したゲートを介して溶融樹脂がキャビティ内に充填されるから、キャビティの軸方向に対して均一に溶融樹脂を充填することができる。以上から、高精度なハウジングを低コストに製造することができ、もって高い軸受性能を具備する流体軸受装置を低コストに提供することができる。
ハウジングの軸方向の他端面には、成形金型(射出成形金型)に設けた突き出し機構の突き出し力を受ける受圧部を設けることができる。これにより、キャビティに被着した成形後のハウジングを確実に離型することができる。
周方向に複数設けたゲートを介してキャビティ内に溶融樹脂を充填すると、溶融樹脂は、キャビティ内に介在する空気を圧縮しながらキャビティ内を流動し、隣り合うゲート間で合流する。このとき、圧縮される空気の逃げ道(いわゆるエアーベント)がないと、キャビティに対する溶融樹脂の充填量が不足する等して、成形精度不良やウェルド強度の低下を招く一因となる。かかる問題を解消するには、上記の受圧部を、上記他方の端面のうち、周方向で隣り合うゲート跡の中間部分に対応する位置に設けておくのが有効である。受圧部が受ける突き出し力は、キャビティに対して進退可能に設けられた突き出しピン等の突き出し機構によって付与されるものであり、突き出しピンが進退可能である以上、突き出しピンとこれを挿通した孔との間には微小な隙間が存在する。そのため、当該微小隙間を、エアーベントとして利用することができるからである。特に、上記構成としておけば、空気の圧縮率が最も高くなる領域で圧縮空気を逃がすことができるので、高精度なハウジングを得る上で好適である。
ハウジングは、軸部材との間にシール隙間を形成するシール部を有するものとすることができる。これにより、別途のシール部材をハウジングに固定する手間を省略しつつ、この種の流体軸受装置に必須の構成部位であるシール隙間を得ることが可能となる。特に、このシール部を、軸方向の他端側に設ければ、このシール部の端面に上記受圧部を設けることができる。このようにシール部を軸方向の他端側に設ける場合、この他端側の肉厚が増大するので、突き出し機構の突き出し力を受けたときに、ハウジングが変形等する可能性を減じることもできる。
上述した本発明の第1構成に係る流体軸受装置では、ハウジングの一端開口をハウジングの内周面又は外周面に固定した蓋部材で閉塞し、この蓋部材の一端面で、軸部材をスラスト方向に支持するスラスト軸受部を形成することができる。このスラスト軸受部は、軸部材の一端を接触支持するいわゆるピボット軸受であっても良いし、軸部材を非接触支持する動圧軸受であっても良い。
また、上記課題を解決するための第2構成として、本発明では、軸方向の両端が開口した円筒状に樹脂で射出成形され、モータの静止側もしくは回転側に取り付けられると共に、内周にラジアル軸受面を有する軸受部材と、軸受部材の内周に挿入された軸部材とを備え、軸受部材と軸部材の相対回転に伴って軸受部材のラジアル軸受面と軸部材の外周面との間にラジアル軸受隙間が形成される流体軸受装置において、軸受部材が、軸方向の一方の端面に、周方向等間隔で設けられた3以上でかつ奇数のゲート跡を有することを特徴とする流体軸受装置を提供する。
この第2の構成に係る流体軸受装置においても、軸受部材の軸方向の他端面に、成形金型に設けた突き出し機構の突き出し力を受ける受圧部を設けることができる。また、この受圧部は、軸方向の他端面のうち、周方向で隣り合うゲート跡の中間部分に対応する位置に設けるのが望ましい。さらに、軸受部材の軸方向の他端に、軸部材との間にシール隙間を形成するシール部を設け、このシール部の端面に受圧部を設けることができる。これらの各構成を採用することによる作用効果は、「ハウジング」を「軸受部材」に置き換えて読むことで上述した本発明の第1構成に係る流体軸受装置と共通する。従って、ここでは、これらの構成を採用することよる作用効果についての詳細な言及を省略する。
なお、本発明の第2構成に係る流体軸受装置においては、樹脂の射出成形品とされる軸受部材にラジアル軸受面が設けられることから、部材点数および組立工数を減じて低コスト化を図りつつ、高精度なラジアル軸受面を得ることができるというメリットがある。軸受部材のラジアル軸受面には、ラジアル軸受隙間を満たす潤滑流体に動圧作用を発生させるラジアル動圧発生部を設けることができ、このラジアル動圧発生部は、軸受部材を射出成形するのと同時に型成形することができる。このようにすれば、別途ラジアル動圧発生部を形成する手間を省略しつつ、ラジアル方向の支持能力(回転精度)を高めることができる。
本発明の第2構成に係る流体軸受装置では、軸受部材の一端開口を軸受部材の内周面又は外周面に固定した蓋部材で閉塞し、この蓋部材の一端面で、軸部材をスラスト方向に支持するスラスト軸受部を形成することができる。このスラスト軸受部は、軸部材の一端を接触支持するいわゆるピボット軸受であっても良いし、軸部材を非接触支持する動圧軸受であっても良い。
以上より、本発明によれば、高精度なハウジングもしくは軸受部材を低コストに製造することが可能となり、もって高い軸受性能を具備する流体軸受装置を低コストに提供することが可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、流体軸受装置を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に支持する流体軸受装置1と、軸部材2に固定されたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、モータブラケット6とを備えている。ステータコイル4はモータブラケット6の外周に取り付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の内周に取り付けられる。流体軸受装置1の軸受部材7は、モータブラケット6の内周に固定される。ディスクハブ3には磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚(図示例は2枚)保持される。以上の構成において、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が回転し、それによって、ディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る流体軸受装置1を示すものである。この流体軸受装置1は、両端が開口した略円筒状の軸受部材7と、軸受部材7の内周に挿入された軸部材2と、軸受部材7の一端開口を閉塞する蓋部材10とを構成部材として備え、その内部空間には潤滑流体としての潤滑油が充填されている。なお、以下では、便宜上、蓋部材10が設けられた側を下側、その軸方向反対側を上側として説明を進める。
軸部材2は、軸部2aとフランジ部2bとを有する。軸部2aおよびフランジ部2bの双方は、耐摩耗性に富む金属材料、例えばステンレス鋼で形成される。本実施形態では、軸部2aの下端に形成した小径部2a2を環状のフランジ部2bの内周に嵌合固定することで軸部材2が形成される。軸部2aとフランジ部2bの固定方法は両者間に所定の固定強度を確保し得る限りにおいて任意であり、圧入、接着、溶接(特にレーザ溶接)等を採用することができる。軸部材2は、上記のように、個別に製作した軸部2aおよびフランジ部2bを適宜の手段で一体化したものの他、両者を鍛造等で一体成形したものを使用することもできる。
軸受部材7は、軸方向両端が開口した略円筒状をなす樹脂の射出成形品であり、軸方向に延び、モータブラケット6(図1を参照)に対する取り付け面7a1を有する円筒状のハウジング部7aと、ハウジング部7aの上端部から内径側に延びるシール部7cと、ハウジング部7aの略中間部分から内径側に延び、シール部7cの下方に設けられたスリーブ部7bとを一体に有する。後述するように、本実施形態では、スリーブ部7bの内周面7b1および下側端面7b2でラジアル軸受部R1,R2のラジアル軸受隙間および第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間がそれぞれ形成される。
シール部7cの内周面には、対向する軸部2aの外周面2a1との間にシール隙間Sを形成するシール面7c1が設けられる。シール面7c1は下方に向けて漸次縮径したテーパ面状に形成される一方、軸部2aの外周面2a1は径一定の円筒面状に形成される。従って、シール隙間Sは下方に向けて径方向寸法を漸次縮小させたテーパ形状を呈する。なお、これとは逆に、シール面7c1を径一定の円筒面状に形成する一方、軸部2aのうち、シール面7c1と対向する領域を下方に向けて漸次拡径させたテーパ面状としても良い。この場合、軸部材2が回転するのに伴って、シール隙間Sには、いわゆる遠心力シールとしての機能も付加される。
シール部7cの上側端面7c2は軸線と直交する方向の平坦面とされる。後述するように、この上側端面7c2(厳密には、上側端面7c2のうちの外径側一部領域)には、軸受部材7の射出成形工程において、成形金型内に配置した突き出し機構(突き出しピン24。図7を参照)の突き出し力を受ける受圧部9が設けられる。
スリーブ部7bの内周面7b1には、図3に示すように、対向する軸部2aの外周面2a1との間にラジアル軸受隙間を形成する円筒状のラジアル軸受面A1,A2が軸方向の二箇所に離隔して設けられる。ラジアル軸受面A1,A2には、それぞれ、複数の動圧溝Aa1,Aa2をヘリングボーン形状に配列してなるラジアル動圧発生部が形成される。上側の動圧溝Aa1は、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。一方、下側の動圧溝Aa2は軸方向対称に形成され、その上下領域の軸方向寸法は上記軸方向寸法X2と等しくなっている。
スリーブ部7bの下側端面7b2には、図4に示すように、対向するフランジ部2bの上側端面2b1との間に第1スラスト軸受隙間を形成する環状のスラスト軸受面Bが設けられる。スラスト軸受面Bには、複数の動圧溝Baをヘリングボーン形状に配列してなるスラスト動圧発生部が形成されている。詳細は後述するが、以上で述べたラジアル動圧発生部およびスラスト動圧発生部は、軸受部材7を射出成形するのと同時に型成形される。
また図4に示すように、ハウジング部7aの下側端面7a3には、3以上でかつ奇数個(図示例では5個)のゲート跡8が周方向等間隔で設けられている。すなわち、詳細は後述するが、本実施形態の軸受部材7は、下側端面7a3に対応する位置に、周方向等間隔で配置された5つのゲートを介してキャビティ内に溶融樹脂を射出、充填することで成形される。
ハウジング部7aの下端側の内周面7a2には、蓋部材10が接着、圧入、圧入接着(接着剤の介在のもとで圧入する)等の適宜の手段で固定され、これにより軸受部材7の下端開口部が閉塞される。蓋部材10は、ステンレス鋼等の金属材料で円盤状に形成され、その上側端面10a1には、図5に示すように、対向するフランジ部2bの下側端面2b2との間に第2スラスト軸受隙間を形成する環状のスラスト軸受面Cが設けられる。スラスト軸受面Cには、複数の動圧溝Caをヘリングボーン形状に配列してなるスラスト動圧発生部が形成されている。
以上の構成からなる流体軸受装置1において、軸部材2が回転すると、スリーブ部7bの内周面7b1の上下2箇所に離隔して設けたラジアル軸受面A1,A2と、これに対向する軸部2aの外周面2a1との間にそれぞれラジアル軸受隙間が形成される。そして軸部材2の回転に伴って両ラジアル軸受隙間の油膜圧力が動圧溝Aa1,Aa2の動圧作用によって高められ、その結果、軸部材2をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部R1,R2が軸方向の二箇所に離隔形成される。
これと同時に、スリーブ部7bの下側端面7b2に設けたスラスト軸受面Bとフランジ部2bの上側端面2b1との間、および、フランジ部2bの下側端面2b2と蓋部材10の上側端面10a1に設けたスラスト軸受面Cとの間に、それぞれ第1および第2スラスト軸受隙間が形成される。そして、軸部材2の回転に伴って両スラスト軸受隙間の油膜圧力が動圧溝Ba,Caの動圧作用によってそれぞれ高められ、その結果、軸部材2をスラスト両方向に非接触支持する第1スラスト軸受部T1および第2スラスト軸受部T2が形成される。
また、シール隙間Sが、下方(流体軸受装置1の内部側)に向かって径方向寸法を漸次縮小したテーパ形状を呈しているため、シール隙間S内の潤滑油は毛細管力による引き込み作用により、シール隙間Sの隙間幅が狭くなる流体軸受装置1の内部側に向けて引き込まれる。また、シール隙間Sは、軸受部材7の内部空間に充填された潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収するバッファ機能を有し、想定される温度変化の範囲内で潤滑油の油面を常にシール隙間S内に保持する。これらの構成から、軸受内部からの潤滑油漏れが効果的に防止される。なお、図示は省略しているが、潤滑油漏れを一層効果的に防止すべく、シール隙間Sに隣接する部位、例えばシール部7cの上側端面7c2に撥油膜を設けても良い。
以上に示す流体軸受装置1では、軸受部材7に、ラジアル軸受面A1,A2、さらにはスラスト軸受面Bを有するスリーブ部7bを一体的に設けたことから、上記特許文献に記載の流体軸受装置で用いていた軸受スリーブを省略することができる。そのため、部品点数および組立工数を減じて流体軸受装置1の低コスト化を図ることができる。また、ラジアル軸受面A1,A2、スラスト軸受面B、およびシール面7c1等、軸受性能を左右する面が成形面とされるので、これらの面の高精度化を低コストに達成することができる。また、軸受部材7は樹脂の射出成形品、すなわち非多孔質体とされるから、焼結金属の多孔質体からなる軸受スリーブを用いる場合に比べて軸受内部に充填する潤滑油量を減じることができる。そのため、潤滑油量の低減分だけシール隙間Sの軸方向寸法を短縮することができ、この寸法短縮分だけラジアル軸受部R1、R2の軸受スパンを拡大して軸受剛性、ひいては軸受性能を向上することができる。
図6に拡大して示すように、軸部材2には、フランジ部2bの上側端面2b1と下側端面2b2とに開口する連通孔11が設けられる。このような連通孔11を設けることにより、軸部材2の回転中には連通孔11を介して第1スラスト軸受隙間と第2スラスト軸受隙間との間で潤滑油を流通させることができる。これにより、第1スラスト軸受隙間と第2スラスト軸受隙間との間で圧力バランス(特にモータ起動時の圧力バランス)をとることができる。
図6に示すように、本実施形態の連通孔11は、径方向部11aと軸方向部11bとで構成され、両スラスト軸受面B,Cに設けたスラスト動圧発生部の形成領域を避けてその内径側に開口させるため、屈曲した形状を呈する。より詳細には、径方向部11aの外径端がフランジ部2bの上側端面2b1、スリーブ部7bの下端内周チャンファ(面取り)、および軸部2aの下端に設けたヌスミ部2a3で形成される空間に開口し、径方向部11aの内径端に繋がった軸方向部11bが軸部2aの小径部2a2の外周面に沿って延び、第2スラスト軸受部T2の内径側(底面空間12)に開口している。なお、連通孔11は、円周方向の一箇所に設ける他、円周方向の複数箇所に設けることもできる。
軸部材2の回転中は、軸方向の二箇所に離隔して設けたラジアル動圧発生部のポンピング能力のアンバランス(図3参照)により、軸受部材7のスリーブ部7bの内周面7b1と軸部2aの外周面2a1との間に介在する潤滑油が下方に押し込まれる。そのため、軸受内部の閉塞側の空間、特に第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間よりも内径側の空間(底面空間12)で圧力が高くなる傾向にある。このような場合に、第2スラスト軸受部T2の動圧溝Caをポンプインタイプのスパイラル形状にすると、第2スラスト軸受隙間に介在する潤滑油が内径側に押し込まれるため、底面空間12の圧力増大を助長することになる。これを回避するため、第2スラスト軸受隙間に動圧作用を発生させる動圧溝Caは、上記のとおりへリングボーン形状(図5参照)にするのが望ましい。一方、第1スラスト軸受部T1ではこの種の問題が生じないので、動圧溝Baを、図4に示すヘリングボーン形状ではなく、ポンプインタイプのスパイラル形状に形成しても良い。
以上の構成からなる流体軸受装置1のうち、軸受部材7は、以下示す態様で射出成形することによって得られる。
図7は、軸受部材7の射出成形工程を概念的に示すものである。この工程で用いる成形金型20は、相対的な接近および離反移動が可能とされた雄型21および雌型22を主要部とし、両型21,22が型締めされることにより軸受部材7を成形するキャビティ26が形成される。本実施形態では雄型21が静止側を、また、雌型22が可動側を構成する。
雄型21にはコア23が設けられ、コア23の外周面には、ラジアル軸受面A1,A2に設けられるラジアル動圧発生部の形状に対応した型部23a,23bが軸方向の二箇所に離隔して形成されている。また、雄型21には型締め方向に延びる孔が設けられ、この孔内に、キャビティ26に対して進退移動可能な突き出し機構、例えば突き出しピン24が配置されている。突き出しピン24(および孔)は、キャビティ26のうち、軸受部材7のシール部7cの上側端面7c2に対応する位置に、円周方向等間隔で5つ設けられている。
雌型22には、スラスト軸受面Bに設けられるスラスト動圧発生部(動圧溝Ba)の形状に対応した型部22aと、キャビティ26に樹脂材料Pを射出・充填するためのゲート25とが設けられている。ゲート25は、点状ゲートであり、キャビティ26のうち、軸受部材7のハウジング部7aの下側端面7a3に対応する位置(下側端面7a3を成形する位置)に円周方向等間隔で5つ設けられる。このゲート25は、円周方向の配設位置を突き出しピン24とは異ならせている。詳細に述べると、図8に模式的に示すように、各ゲート25は、隣り合う突き出しピン24,24の中間部分に対応する位置(隣り合う突き出しピン24,24の二等分線上)に設けられる。つまり、平面視すると、突き出しピン24とゲート25とが円周方向に36°間隔で交互に設けられる。
成形金型20は主に以上の構成からなり、両型21,22を型締めした後、ゲート25を介して溶融状態の樹脂材料Pをキャビティ26内に射出・充填する。使用可能な樹脂材料Pは、熱可塑性樹脂、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)等の結晶性樹脂、あるいはポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)等の非晶性樹脂をベース樹脂とするものであれば特段限定はないが、本実施形態では液晶ポリマーをベース樹脂としている。ベース樹脂には、必要に応じて各種充填材を配合することができる。充填材としては、例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル等の導電性充填材が使用可能である。これらの充填材は、単独で用いても良いし、複数組み合わせて用いても良い。
樹脂材料Pのベース樹脂を液晶ポリマーとしたのには訳があり、液晶ポリマーが、その他の熱可塑性樹脂(例えば、上記のポリフェニレンサルファイド)とは異なる特性を示すからである。具体的には、液晶ポリマーをベース樹脂とする樹脂材料で円筒体を射出成形すると、当該円筒体が固化するのに伴って、内径寸法が拡大する方向の成形収縮が生じる。従って、上記の樹脂材料Pで射出成形された軸受部材7に成形収縮が生じると、軸受部材7の内周面とコア23の外周面との間に微小な径方向隙間が形成される。
各ゲート25からキャビティ26内に射出された樹脂材料Pは、各ゲート25からそれぞれ軸方向および円周方向に流動し、隣り合うゲート25,25の中間位置で合流してウェルドを形成する。このとき、樹脂材料Pは、キャビティ26内に介在する空気を圧縮しながらキャビティ26内を流動するが、圧縮された空気を型外に排出しなければ、キャビティ26内への樹脂材料Pの充填量が不足する等して、軸受部材7の成形精度やウェルド強度が低下するおそれがある。この点、上記のように、軸受部材7の上側端面7c2に対応する位置に、キャビティ26に対して進退可能な突き出しピン24を配置すれば、突き出しピン24と、これを挿通した孔との間の隙間から圧縮された空気を排出することができる。特に、このように、ゲート25の他端側で、かつ隣り合うゲート25,25の中間部分に対応する位置、すなわち空気の圧縮率が最も高くなる位置に突き出しピン24を配置したことから、圧縮された空気を効率的に型外に排出することができる。従って、キャビティ26に対する樹脂材料Pの充填性を高め、成形精度およびウェルド強度の高い軸受部材7を得ることができる。
以上のようにして、樹脂材料Pをキャビティ26に充填した後、キャビティ26に充填された樹脂材料Pを固化させる。樹脂材料Pが固化するのに伴い、軸受部材7の各部では若干量の成形収縮が生じるが、ウェルドの形成位置では成形収縮量が若干大きくなる傾向にある。そのため、ウェルド形成位置において、軸受部材7の成形精度、特にその内周面に必要とされる真円度等の成形精度の崩れが大きくなり、軸受性能に悪影響が及ぶおそれがある。これに対し、上記のように、周方向等間隔に配置した5つのゲート25を介してキャビティ26内に樹脂材料Pを充填すれば、各ウェルドの形成位置における対角の径(各ウェルドと、これと180°位相を異ならせた部分とを繋ぐ線分の寸法)を概ね一定とすることができるので、内周面精度の低下を可及的に防止することができる。
なお、成形収縮に伴って内周面7b1の真円度の狂いが大きくなるような場合であっても、上記のように、周方向等間隔に配置した複数のゲート25から樹脂材料Pを射出するようにすれば、内周面7b1をいわゆる多円弧面(本実施形態では5円弧面)とすることができる。これにより、ラジアル軸受部を動圧軸受の一種である多円弧軸受で構成することが可能となる。この場合には、ラジアル軸受面A1,A2にそれぞれ設けた動圧溝Aa,Abが不要となる。
以上のようにして軸受部材7を成形した後、可動型である雌型22を駆動させて型開きすると、成形品としての軸受部材7は、雄型21に被着した状態で雌型22から取り出される。雌型22からの軸受部材7の取り出しに伴い、軸受部材7と繋がったゲート25内で固化した樹脂(ゲート内樹脂)が分断される。ゲート内樹脂が分断されると、その一部がゲート跡8として軸受部材7に残るが、点状ゲート内に形成されるゲート内樹脂の強度は、環状ゲートのそれに比べて弱い。そのため、ゲート25として点状ゲートを採用した本実施形態においては、除去加工等のゲート処理を必要とするほどのゲート跡8が残り難くなる。仮に、ゲート処理が必要な程度のゲート跡8が形成されたとしても、ゲート跡8は周方向の一部にのみ形成されることから、ゲート処理は、軸受部材7の離型後に部分的に施せば足りる。従って、ゲート処理を従来よりも簡略化して、軸受部材7の製造コストを低廉化することができる。なお、ゲート処理の方法は任意であり、ゲート跡8を機械加工で切除する、ゲート跡8を塑性変形させて下側端面7a3を均す、ゲート跡8を被覆材で被覆する等の手法を採用することができる。
次いで、突き出しピン24を前進移動させ、軸受部材7の上側端面7c2(受圧部9)に突き出し力を付与する。これにより、軸受部材7からコア23が引き抜かれ、完成品としての軸受部材7が成形金型から取り出される(以上、図9を参照)。このような突き出しピン24を用いる場合に、軸受部材7が概ね肉厚一定の薄肉円筒状であると、軸受部材7が突き出し力を受けた際に変形等するおそれがある。これに対し、軸受部材7の上端に内径側に延びるシール部7cを設けると共に、このシール部7cの上側端面7c2に突き出し力を受ける受圧部9を設け、突き出し力を受ける部分の肉厚を増して高強度化を図ったことから、突き出し時の変形を抑制することができる。また、シール隙間Sを形成するシール部7cを一体に設けたことから、別途のシール部材を用いることなく、低コストに、流体軸受装置1に必須の構成部位であるシール隙間Sを得ることができる。
なお、液晶ポリマーをベース樹脂とした樹脂材料Pで軸受部材7を射出成形したことから、軸受部材7に成形収縮が生じると、上記のとおり、軸受部材7の内周面(スリーブ部7bの内周面7b1)とコア23の外周面との間に微小な径方向隙間が形成される。そのため、雄型21からの軸受部材7の分離、すなわち軸受部材7からのコア23の引き抜きはスムーズに行われる。従って軸受部材7の内周面7b1に型成形されたラジアル動圧発生部が、コア23の引き抜きに伴って損傷する可能性が大幅に減じられる。もちろん、液晶ポリマー以外の樹脂、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)をベース樹脂とした樹脂材料Pを用いて軸受部材7を射出成形しても良い。このような場合でも、軸受部材7からコア23を無理抜きすることで上記構成の軸受部材7を成形金型から離型することができる。
以上、本発明に係る流体軸受装置1の一実施形態について説明を行ったが、本発明は上記構成の流体軸受装置1に限定適用されるものではない。以下、他の実施形態に係る流体軸受装置1について説明を行うが、実質的に同一の部材、部位には共通の参照番号を付して重複説明を省略することとし、異なる構成についてのみ詳述する。
図10は、本発明の第2実施形態に係る流体軸受装置1を示すものである。同図に示す流体軸受装置1が上述したものと異なる主な点は、モータブラケット6(図1参照)に取り付けられ、ハウジング部7aに相当する略円筒状のハウジング17と、ハウジング17の内周に保持され、ラジアル軸受面A1,A2を有するスリーブ部7bに相当する軸受スリーブ18とで軸受部材7を構成した点にある。この場合、軸受スリーブ18の内周面18aに設けられたラジアル軸受面A1,A2と軸部2aの外周面2a1との間にラジアル軸受部R1、R2のラジアル軸受隙間が形成され、軸受スリーブ18の下側端面18bに設けられたスラスト軸受面Bとフランジ部2bの上側端面2b1との間に第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間が形成される。
ハウジング17は、外周面17a1がモータブラケット6に取り付けられる筒部17aと、軸部2aとの間にシール隙間Sを形成するシール部17bとを一体に有する。このハウジング17は樹脂の射出成形品とされ、ハウジング17の筒部17aの下側端面17a3にゲート跡8が設けられ、ハウジング17のシール部17bの上側端面17b2に受圧部9が設けられる。すなわち、詳細な図示は省略するが、このハウジング17は、上述した軸受部材7と同様にして成形される。
上記のように、別体のハウジング17と軸受スリーブ18とで軸受部材7を構成した場合には、軸受内部に、潤滑油が流動循環する一連の循環経路を構築することができる。詳しくは、軸受スリーブ18の内周面18aと軸部2aの外周面2a1との間の径方向隙間(ラジアル軸受部R1,R2のラジアル軸受隙間)、軸受スリーブ18の下側端面18bとフランジ部2bの上側端面2b1との間の軸方向隙間(第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間)、軸受スリーブ18の外周面18dに設けた軸方向溝18d1で形成される流体通路、および軸受スリーブ18の上側端面18cに設けた径方向溝18c1で形成される流体通路で上記の循環経路を構築することができる。
かかる構成とすることで、軸受内部に充満された潤滑油の圧力バランスが保たれると同時に、局部的な負圧の発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑油の漏れや振動の発生等の問題を解消することができる。上記の循環経路には、シール隙間Sが連通しているので、何らかの理由で潤滑油中に気泡が混入した場合でも、気泡は、潤滑油が循環する際にシール隙間S内の潤滑油の油面(気液界面)から外気に排出される。従って、気泡による悪影響は効果的に防止される。なお、このような循環経路を設けた場合、フランジ部2bには、図2等に示す連通孔11を必ずしも設ける必要はなく、省略しても構わない。本実施形態は省略した場合を示している。
図11は、本発明の第3実施形態に係る流体軸受装置1を示すものであり、図10に示す第2実施形態の変形例である。この実施形態では、蓋部材10を、フランジ部2bとの間に第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する円盤状のプレート部10aと、プレート部10aの外径端から下方に延びる円筒状の筒部10bとを一体に有する逆凹字状に形成し、筒部10bの外周面10b1をハウジング17の筒部17aの内周面7a2に固定することによってハウジング17(軸受部材7)の下端開口を閉塞した。プレート部10aと筒部10bとを一体に有する蓋部材10は、ステンレス鋼板等の金属板をプレス加工することによって得られる。
上記のようにすれば、図10に示す実施形態に比べて、ハウジング17に対する蓋部材10の固定面積が増すので、ハウジング17に対する蓋部材10の固定力が高まる。そのため、軸部材2に搭載されるディスクDの枚数が増加して回転側の部材が重量化し、蓋部材10に負荷される衝撃荷重が増大するような場合においても、蓋部材10の耐抜け強度を高めることができる。上述した実施形態のように円盤状の蓋部材10を用いる場合であっても、蓋部材10を軸方向に厚肉化すれば、ハウジング17に対する蓋部材10の固定力を高めることができるが、蓋部材10の重量化やコスト増が問題となる。これに対し、特に金属板をプレス加工することによって得た上記の蓋部材10でハウジング17の下端開口を閉塞すれば、重量化やコスト増を招くことなく蓋部材10の耐抜け強度を高めることができる。
蓋部材10の耐抜け強度を高める観点から言えば、図示する蓋部材10の上下を反転させて、筒部10bの外周面10b1をハウジング17の内周面17a2に固定しても良い。ところが、同一形状のハウジング17を用いる場合にかかる構成を採用すると、筒部10bの内周にフランジ部2bを収容するために、フランジ部2bを小径化する必要が生じる。これでは、スラスト軸受部T1,T2の支持面積が縮小し、スラスト方向の回転精度に悪影響が及ぶ可能性がある。これに対し本実施形態の構成であれば、このような問題も考慮せずとも足りる。
図12は、本発明の第4実施形態に係る流体軸受装置1を示すものである。同図に示す流体軸受装置1は図10に示す第2実施形態の変形例であり、主に、蓋部材10をハウジング17の外周面に固定した点において構成を異にしている。詳細には、蓋部材10を、金属板をプレス加工することにより、円盤状のプレート部10aと、プレート部10aの外径端から軸方向に延びる円筒状の筒部10bとを一体に有するコップ状に形成し、筒部10bの内周面10b2をハウジング17の筒部17aに設けた小径外周面17a11に固定している。
このように、ハウジング17の外周面(ここでは小径外周面17a11)に蓋部材10を固定すれば、蓋部材10をハウジング17の内周面に固定する場合に比べ、内周面と外周面の径差分だけ固定面積を増すことができるので、蓋部材10の耐抜け強度を高めることができる。しかも、ハウジング17との固定面積を一層増大すべく筒部10bを軸方向に長大化しても、図11に示す実施形態のように流体軸受装置1(ハウジング17)の軸方向寸法を長大化する必要がない。従って、流体軸受装置1の軸方向寸法やラジアル軸受部R1、R2の軸受スパンに影響を与えることなく、蓋部材10の耐抜け強度を高めることができるというメリットがある。
また、蓋部材10の筒部10bを、モータブラケット6(図1参照)に対する取り付け部として活用することができる。蓋部材10とモータブラケット6は何れも金属製であるので、両部材間に高い固定強度を確保することができる。従って、ハウジング17が樹脂の射出成形品とされる本実施形態においても、流体軸受装置1がモータブラケット6から脱落するような事態を防止することができる。
さらに、蓋部材10は金属材料で形成されているので、軸受装置の運転に伴ってディスクD等に帯電した静電気を、軸部材2→蓋部材10→モータブラケット6という経路を介して確実に接地側に放電することができる。このように蓋部材10で導電経路を構成できれば、ハウジング17に導電性をもたせる必要がなくなる。そのため、ハウジング17を形成する樹脂材料中への高価な導電性充填材の配合を不要とし、あるいは配合量を少なくすることができる。これにより、ハウジング17の材料コストを抑えることができる。
なお、図示は省略するが、図11および図12に示す蓋部材10の構成を、図2に示す第1実施形態に係る流体軸受装置1に適用することももちろん可能である。
同様に図示は省略するが、以上で説明した各実施形態において、蓋部材10の上側端面10a1には、摺動特性や耐摩耗性を向上するための被膜を形成しても良い。摺動特性や耐摩耗性を向上できるのであれば、被膜の種類に特段の限定はないが、例えば、ニッケルめっきに代表されるめっき被膜を挙げることができる。このようなめっき被膜は、無電解めっきあるいは電解めっきの何れで形成しても良い。
以上では、ゲート跡8が形成される軸受部材7の下側端面7a3、およびハウジング17の下側端面17a3を軸線と直交する方向の平坦面としているが、これら下側端面7a3,17a3に凹部を設け、この凹部内にゲート跡8が形成されるようにしても良い。このとき、凹部の深さ(上方への後退量)を適切に設定しておけば、ゲート跡8が突起状に形成されたとしても、その先端部を凹部内に収容することができる。そのため、ゲート処理を一層簡略化することが、あるいはゲート処理を省略することが可能となる。
また、以上の実施形態では、ヘリングボーン形状等の動圧溝による動圧作用により動圧軸受からなるラジアル軸受部R1,R2を、また動圧軸受の一種である多円弧軸受でラジアル軸受部を構成する場合について説明を行ったが、いわゆるステップ軸受や波型軸受等、公知のその他の動圧軸受でラジアル軸受部を構成することもできる。また、ラジアル軸受隙間を介して対向する二面の双方を円筒面とした、いわゆる真円軸受でラジアル軸受部を構成することもできる。
また、以上の実施形態では、ヘリングボーン形状等の動圧溝による動圧作用により動圧軸受からなるスラスト軸受部T1,T2を構成した場合について説明を行ったが、いわゆるステップ軸受や波型軸受等、公知のその他の動圧軸受でスラスト軸受部T1,T2の何れか一方又は双方を構成することもできる。また、スラスト軸受部は、軸部材2の一端を接触支持するピボット軸受で構成することもできる。
また、以上では、モータの静止側を構成するモータブラケット6に軸受部材7を取り付ける一方、モータの回転側を構成するディスクハブ3に軸部材2を取り付けた、いわゆる軸回転型の流体軸受装置1に本発明を適用した場合について説明を行ったが、これとは逆に、ディスクハブ3に軸受部材7を取り付ける一方、モータブラケット6に軸部材2を取り付ける、いわゆる軸固定型の流体軸受装置に、以上で述べた本発明を適用することももちろん可能である。
1 流体軸受装置
2 軸部材
6 モータブラケット
7 軸受部材
7a ハウジング部
7b スリーブ部
7c シール部
8 ゲート跡
9 受圧部
10 蓋部材
17 ハウジング
18 軸受スリーブ
20 成形金型
24 突き出しピン(突き出し機構)
25 ゲート(点状ゲート)
26 キャビティ
A1、A2 ラジアル軸受面
B、C スラスト軸受面
S シール隙間
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
2 軸部材
6 モータブラケット
7 軸受部材
7a ハウジング部
7b スリーブ部
7c シール部
8 ゲート跡
9 受圧部
10 蓋部材
17 ハウジング
18 軸受スリーブ
20 成形金型
24 突き出しピン(突き出し機構)
25 ゲート(点状ゲート)
26 キャビティ
A1、A2 ラジアル軸受面
B、C スラスト軸受面
S シール隙間
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
Claims (11)
- 軸方向の両端が開口した円筒状に樹脂で射出成形され、モータの静止側もしくは回転側に取り付けられるハウジングと、ラジアル軸受面を有し、ハウジングの内周に保持された軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入された軸部材とを備え、軸受スリーブと軸部材の相対回転に伴って軸受スリーブのラジアル軸受面と軸部材の外周面との間にラジアル軸受隙間が形成される流体軸受装置において、
ハウジングが、軸方向の一方の端面に、周方向等間隔に設けられた3以上でかつ奇数のゲート跡を有することを特徴とする流体軸受装置。 - ハウジングが、軸方向の他方の端面に、成形金型に設けた突き出し機構の突き出し力を受ける受圧部を有する請求項1記載の流体軸受装置。
- 前記他方の端面のうち、周方向で隣り合うゲート跡の中間部分に対応する位置に前記受圧部が設けられた請求項2記載の流体軸受装置。
- ハウジングの軸方向の他端に、軸部材との間にシール隙間を形成するシール部を設け、このシール部の端面に前記受圧部を設けた請求項2記載の流体軸受装置。
- ハウジングの一端開口を、ハウジングの内周面又は外周面に固定した蓋部材で閉塞し、この蓋部材の一端面で、軸部材をスラスト方向に支持するスラスト軸受部を形成した請求項1記載の流体軸受装置。
- 軸方向の両端が開口した円筒状に樹脂で射出成形され、モータの静止側もしくは回転側に取り付けられると共に、内周にラジアル軸受面を有する軸受部材と、軸受部材の内周に挿入された軸部材とを備え、軸受部材と軸部材の相対回転に伴って軸受部材のラジアル軸受面と軸部材の外周面との間にラジアル軸受隙間が形成される流体軸受装置において、
軸受部材が、軸方向の一方の端面に、周方向等間隔に設けられた3以上でかつ奇数のゲート跡を有することを特徴とする流体軸受装置。 - 軸受部材が、軸方向の他方の端面に、成形金型に設けた突き出し機構の突き出し力を受ける受圧部を有する請求項6記載の流体軸受装置。
- 前記他方の端面のうち、周方向で隣り合うゲート跡の中間部分に対応する位置に前記受圧部を設けた請求項7記載の流体軸受装置。
- 軸受部材の軸方向の他端に、軸部材との間にシール隙間を形成するシール部を設け、このシール部の端面に前記受圧部を設けた請求項7記載の流体軸受装置。
- ラジアル軸受面に、ラジアル軸受隙間を満たす潤滑流体に動圧作用を発生させる動圧発生部が射出成形と同時に型成形された請求項6記載の流体軸受装置。
- 軸受部材の一端開口を、軸受部材の内周面又は外周面に固定した蓋部材で閉塞し、この蓋部材の一端面で、軸部材をスラスト方向に支持するスラスト軸受部を形成した請求項6記載の流体軸受装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009179192A JP2011033103A (ja) | 2009-07-31 | 2009-07-31 | 流体軸受装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2019139007A1 (ja) * | 2018-01-11 | 2019-07-18 | Ntn株式会社 | 流体動圧軸受装置及びこれを備えたモータ |
US11136988B2 (en) * | 2019-03-29 | 2021-10-05 | Nidec Corporation | Gas dynamic bearing, motor, and blower apparatus |
JP2023079465A (ja) * | 2021-11-29 | 2023-06-08 | シチズンファインデバイス株式会社 | 軸受け部材 |
-
2009
- 2009-07-31 JP JP2009179192A patent/JP2011033103A/ja active Pending
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