JP2010043666A - 動圧軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】動圧軸受装置の低コスト化、および更なる軸受性能向上を図る。
【解決手段】動圧軸受装置1を構成する軸受部材7は、ラジアル軸受面A1,A2、シール面9b1、およびスラスト軸受面Bを有する射出成形品とされ、かつ外周面7a2にゲート跡10を有する。このゲート跡10は、軸受部材7の軸方向全長Lの略中央(=L/2)位置に設けられる。
【選択図】図3
【解決手段】動圧軸受装置1を構成する軸受部材7は、ラジアル軸受面A1,A2、シール面9b1、およびスラスト軸受面Bを有する射出成形品とされ、かつ外周面7a2にゲート跡10を有する。このゲート跡10は、軸受部材7の軸方向全長Lの略中央(=L/2)位置に設けられる。
【選択図】図3
Description
本発明は動圧軸受装置に関するものである。
動圧軸受装置は、軸受隙間に生じる潤滑流体(例えば、潤滑油)の動圧作用で軸部材を回転自在に支持するものである。この動圧軸受装置は、高速回転、高回転精度、低騒音等の特徴を有するものであり、近年ではその特徴を活かして、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として、より具体的には、HDD等の磁気ディスク装置やCD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、PC等のファンモータなどのモータ用軸受装置として好適に使用されている。
例えば特開2003−336636号公報(特許文献1)には、ハウジングおよびその内周に固定された焼結金属製の軸受スリーブからなる軸受部材と、軸受部材に対して相対回転する軸部材と、シール部材とを主要な構成部材として備える動圧軸受装置が開示されている。この動圧軸受装置では、軸受スリーブの内周面と軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部が形成され、軸受スリーブの一端面とこれに対向する軸部材(フランジ部)の端面との間のスラスト軸受隙間に軸部材をスラスト一方向に支持するスラスト軸受部が形成される。また、ラジアル軸受隙間の一端側にはシール部材の内周面で形成されるシール隙間が設けられる。シール隙間は、軸受内部に充填された潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収するバッファ機能を有するものであり、想定される温度変化の範囲内では潤滑油の油面(気液界面)を常にその軸方向範囲内に保持し、軸受外部への潤滑油漏れを防止する。
特開2003−336636号公報
ディスク装置の低価格化が急速に進展している昨今、動圧軸受装置に対するコスト低減の要請が益々厳しさを増している。しかしながら、軸受隙間(ラジアル軸受隙間、スラスト軸受隙間)およびシール隙間を、ハウジングとは別に設けた軸受スリーブおよびシール部材でそれぞれ形成するようにした特許文献1の構成では、多くの部品点数が必要で、かつ組み付けコストも嵩むことからコスト低減の要請に対応するのが困難である。
また、近年のディスク装置の高容量化に伴い、動圧軸受装置に対する回転精度向上の要請も一層厳しいものとなっている。回転精度向上のための一手段として、ラジアル軸受部の軸受スパンを拡大し、ラジアル軸受部の軸受剛性を高めることが考えられる。しかしながら、軸受部材の一部を焼結金属の多孔質体からなる軸受スリーブで構成した場合には、軸受内部に充填される潤滑油量が多くなる分、シール隙間の軸方向寸法を大きくとる必要がある。そのため、特許文献1に記載のように、シール隙間とラジアル軸受隙間とが軸方向で積み重なった構造を有する動圧軸受装置では、軸受スパンを拡大するのは困難である。
本発明の課題は、この種の動圧軸受装置の低コスト化、および更なる軸受性能の向上を図ることにある。
上記課題を解決するため、本発明では、少なくとも一端が開口した軸受部材と、軸受部材に対して相対回転する軸部材と、軸受部材の内周面と軸部材の外周面との間に形成されるラジアル軸受隙間と、ラジアル軸受隙間の一端側に設けられ、軸受部材の一端開口をシールするシール隙間と、ラジアル軸受隙間の他端側に設けられたスラスト軸受隙間とを備える動圧軸受装置において、軸受部材が、ラジアル軸受隙間を形成するラジアル軸受面、シール隙間を形成するシール面、およびスラスト軸受隙間を形成するスラスト軸受面を有する射出成形品とされ、かつ外周面にゲート跡を有することを特徴とするものである。なお、ここでいうラジアル軸受面およびスラスト軸受面は、ラジアル軸受隙間およびスラスト軸受隙間を形成する一方側の面を意味しており、この面に動圧溝等の動圧発生部が形成されているか否かは問わない。
このように、本発明に係る動圧軸受装置では、軸受部材が、ラジアル軸受面、シール面、およびスラスト軸受面を有する射出成形品、換言すると、上記特許文献1中に記載の動圧軸受装置でいうハウジング、軸受スリーブおよびシール部材を一体に有する射出成形品とされるから、部品点数および組立工数を低減することができ、動圧軸受装置の低コスト化を図ることができる。また、本発明に係る軸受部材では、従来の軸受スリーブに相当する部分を非多孔質体(ソリッド材)に置換することができるので、内部空間に充填する潤滑油量を減じることができる。これにより、充填すべき潤滑油量の低減分だけシール隙間の軸方向寸法を短縮することができるため、この寸法短縮分だけラジアル軸受部の軸受スパン(全長)を拡大することが可能となる。従って、ラジアル軸受部の軸受剛性、ひいてはラジアル方向の回転精度を高めることができる。
ところで、射出成形品の寸法精度や形状精度は、キャビティのうち、ゲートとの離間距離が大きな領域で成形された部分ほど良好となる。そのため、軸受部材が外周面にゲート跡を有する、換言すると、外周面に対応する位置に設けたゲートから射出材料が充填されることによって軸受部材が射出成形された本発明の構成においては、ラジアル軸受面、およびその一端端、他端側にそれぞれ設けられるシール面、スラスト軸受面を精度良く成形することができ、高い軸受性能を発揮することが可能となる。
特に、ゲート跡が、軸受部材の軸方向全長の略中央位置に形成されるようにすれば、軸受部材の両端に設けられるシール面およびスラスト軸受面の成形精度を均等に高めることができ、望ましい。なお、ここでいう「軸方向全長の略中央位置」とは、軸方向全長をLとした場合に、軸受部材の一端を基準として0.4L〜0.6Lの範囲内に位置することを意味する。
上記の軸受部材は、ゲート跡を周方向の複数箇所に有するものとするのが、換言すると、周方向に複数の点状ゲートを配した成形金型を用いて射出成形するのが望ましい。一点ゲートや環状ゲート等、公知のその他のゲートを用いて軸受部材を射出成形することも可能であるが、一点ゲートでは軸受部材の各部を精度良く成形するのが困難であり、環状ゲートではゲート跡の後処理に多大な手間を要するからである。
また、このように、周方向に複数の点状ゲートを配した成形金型を用いて軸受部材を射出成形すれば、軸受部材の周方向における成形収縮量の差を利用してラジアル軸受面を複数の円弧面で構成することができる。このようにすれば、軸受部材のラジアル軸受面、あるいはこれと径方向に対向する軸部材の外周面に動圧溝等の複雑形状からなる動圧発生部(ラジアル動圧発生部)を設けることなく、ラジアル軸受部を動圧軸受の一種である多円弧軸受で構成することができる。
軸受部材のスラスト軸受面には、スラスト軸受隙間に流体動圧を発生させるスラスト動圧発生部を設けることができる。このスラスト動圧発生部は、軸受部材を射出成形するのと同時に型成形することができる。
軸受部材を、他端も開口した円筒形態とした場合、当該他端開口は、軸受部材とは別体の蓋部材で閉塞することができるが、所期の軸受性能を安定維持可能とするためには、軸受部材に対する蓋部材の固定強度が問題となる。動圧軸受装置の運転中等に衝撃荷重が加わると、軸部材の端部が蓋部材に突き当たり、この時の衝撃で蓋部材が脱落するおそれがあるからである。近年のディスク装置の大容量化に伴って軸部材に搭載されるディスク枚数が増加している分、蓋部材に加わる衝撃荷重も増大する傾向にあるため、蓋部材の耐抜け強度を高める必要が生じている。上記特許文献1の動圧軸受装置のように軸受部材の内周面に蓋部材を固定する場合、蓋部材の肉厚を増せば軸受部材に対する蓋部材の固定面積が拡大する分、軸受部材に対する蓋部材の固定強度を高めることができる。しかし、蓋部材の肉厚を増すと、軸受装置の軸方向寸法の長大化、あるいはラジアル軸受部の軸受スパンの縮小を招くため、蓋部材をむやみに厚肉化することはできない。
かかる事情に鑑みて、本発明に係る動圧軸受装置では、軸受部材の外周面に蓋部材を固定することで軸受部材の他端開口を閉塞するようにした。このようにすれば、蓋部材を軸受部材の内周面に固定する場合に比べて、内周面と外周面の径差分だけ固定面積を増すことができる。蓋部材を軸受部材の外周面に固定する場合、開口部を閉塞する円盤状の部分(プレート部)と、外周面に固定される筒状の部分(起立部)とが必要となるが、軸受部材に対する固定面積を拡大するには、起立部の軸方向寸法を長大化すれば足り、蓋部材(プレート部)を厚肉化する必要がない。また、起立部を延ばしても軸受装置の全長寸法に影響は及ばない。以上から、軸受装置の軸方向寸法やラジアル軸受部の軸受スパンに影響を与えることなく蓋部材の耐抜け強度を高めることができ、所期の軸受性能を安定維持することが可能となる。
また、上記構成とすれば、軸受部材の外周面に固定した蓋部材をモータのベースとなる部材、例えばモータブラケットへの取り付け部として活用することができる。コスト面を考慮すると軸受部材を樹脂の射出成形品とするのが有効であるが、これでは、通常金属製とされるモータブラケットに接着固定する場合に、必要とされる固定強度を確保することが難しくなる。一方、軸受部材を金属製とすれば、固定強度を満足することはできるものの、樹脂製とする場合に比べコスト高となることは否めない。これに対し、上記構成とすれば、蓋部材をモータブラケットとの接着性に富む金属材料で形成してモータブラケットに対する動圧軸受装置の固定強度を満足しつつ、軸受部材を樹脂で形成してコスト低減の要求も満足することができる。
なお、軸受部材に対する蓋部材の固定手段に特段の限定はないが、軸受部材が樹脂の射出成形品とされ、かつ軸受部材のラジアル軸受面の一部又は全部と蓋部材の起立部とが軸方向でオーバーラップするような場合(例えば、図2に示すような場合)には、蓋部材は軸受部材に対して隙間接着するのが望ましい。圧入を伴う固定手段で蓋部材を軸受部材の外周に固定すると、圧入に伴う軸受部材の変形がラジアル軸受面にも及び、ラジアル軸受隙間の幅精度、ひいてはラジアル方向の支持精度を低下させるおそれがあるからである。
軸部材にフランジ部を設け、フランジ部の一端面とこれに対向する蓋部材の端面との間に、さらにスラスト軸受隙間を形成することができる。かかる構成を採用することで、軸部材をスラスト両方向に動圧軸受で支持することが可能となるので、軸受性能を一層向上することができる。
この際、軸受部材と蓋部材の間に、二つのスラスト軸受隙間が0となるまで軸受部材と蓋部材の軸方向の接近移動を許容する軸方向隙間を介在させておけば、スラスト軸受隙間を高精度に設定することが可能となる。この場合、両スラスト軸受隙間の隙間幅を0にした状態から、軸受部材から離反する方向に蓋部材を所定量だけ移動させれば(これによって軸受部材と蓋部材の間に、前記軸方向隙間が形成される)、スラスト軸受隙間を規定幅に設定することができる。この方法によれば、各部材の精度に依存することなく、蓋部材の移動量でスラスト軸受隙間の幅設定を行うことができるため、各部品の加工精度が緩和され、加工コストを低減することができる。
軸部材のフランジ部には、その両端面に開口した連通孔を設けることができる。このような連通孔を設けておけば、両スラスト軸受隙間間での圧力バランスに狂いが生じても、この連通孔を介して潤滑油が両スラスト軸受隙間間を行き来することで、圧力バランスの狂いが早期に解消され、スラスト方向の回転精度の安定化が図られる。
以上に示す本発明に係る動圧軸受装置は、ステータコイルと、ロータマグネットとを備えるモータ、例えばHDD等、情報機器用のスピンドルモータに組み込んで好適に使用することができる。
以上より、本発明によれば、この種の動圧軸受装置の低コスト化、および更なる軸受性能向上を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、動圧軸受装置を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に支持する動圧軸受装置1と、軸部材2に固定されたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、ベース部材としてのモータブラケット6とを備えている。ステータコイル4はモータブラケット6の外周に取り付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の内周に取り付けられる。動圧軸受装置1の軸受部材7は、モータブラケット6の内周に固定される。ディスクハブ3には磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚(図示例は2枚)保持され、ディスクDは図示しないクランプ機構で固定される。以上の構成において、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が回転し、それによって、ディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る動圧軸受装置1を示すものである。この動圧軸受装置1は、両端が開口した略円筒状の軸受部材7と、軸受部材7の内周に挿入された軸部材2と、軸受部材7の一端開口を閉塞する蓋部材8とを構成部材として備える。なお、以下では、便宜上、蓋部材8が設けられた側を下側、その軸方向反対側を上側として説明を進める。
軸部材2は、軸部2aとフランジ部2bとを有する。軸部2aおよびフランジ部2bの双方は、耐摩耗性に富む金属材料、例えばステンレス鋼で形成される。軸部2aの下端には小径部2a2が形成され、この小径部2a2を環状のフランジ部2bの内周に嵌合固定することで軸部材2が形成される。軸部2aとフランジ部2bの固定方法は両者間に所定の固定強度を確保し得る限りにおいて任意であり、圧入、接着、溶接(特にレーザ溶接)等を採用することができる。軸部材2は、上記のように、個別に製作した軸部2aおよびフランジ部2bを適宜の手段で一体化したものの他、両者を鍛造等で一体成形したものを使用することもできる。
軸受部材7は両端が開口した円筒状をなし、軸受隙間形成部7aと、軸受隙間形成部7aの上端内径側に配置されたシール部7bとを一体に有する。軸受隙間形成部7aは、その内周面7a1が径一定の円筒面状に形成される一方、その外周面が、軸方向で大径外周面7a2と小径外周面7a3とに区画された段付き形状とされる。両外周面7a2,7a3は軸線と直交する方向に延びる段差面7a4で繋がっている。
シール部7bの内周面7b1は、軸部2aの外周面2a1との間にシール隙間Sを形成するシール面として機能する。シール部7bの内周面(シール面)7b1は下方に向けて漸次縮径したテーパ面状に形成される一方、軸部2aの外周面2a1は径一定の円筒面状に形成されている。従い、シール隙間Sは下方に向けて径方向寸法を漸次縮小させたテーパ形状を呈する。
軸受部材7(軸受隙間形成部7a)の内周面7a1には、図3(a)に示すように、対向する軸部2aの外周面2a1との間にラジアル軸受隙間を形成するラジアル軸受面A1,A2が軸方向の二箇所に離隔して設けられ、該ラジアル軸受面A1,A2には、それぞれ、複数の動圧溝Aa1,Aa2をヘリングボーン形状に配列してなるラジアル動圧発生部が形成される。上側の動圧溝Aa1は、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。一方、下側の動圧溝Aa2は軸方向対称に形成され、その上下領域の軸方向寸法は上記軸方向寸法X2と等しくなっている。
軸受隙間形成部7aの下側端面7a5には、図3(b)に示すように、対向するフランジ部2bの上側端面2b1との間に第1スラスト軸受隙間を形成するスラスト軸受面Bが設けられ、該スラスト軸受面Bには、複数の動圧溝Baをヘリングボーン形状に配列してなるスラスト動圧発生部が形成されている。
以上の構成からなる軸受部材7は樹脂材料で射出成形され、ラジアル軸受面A1,A2に設けられるラジアル動圧発生部、およびスラスト軸受面Bに設けられるスラスト動圧発生部も射出成形と同時に型成形される。軸受部材7の外周面のうち、この軸受部材7の軸方向全長Lの中央(=2/L)位置(図2中、微小な黒丸で示す位置)には、キャビティ内に樹脂を射出・充填するゲートを除去加工してなるゲート跡10が周方向等間隔で複数箇所(例えば3箇所)に形成されている。さらに言えば、ゲート跡10の軸方向形成位置は、図3(a)にも示すように、両ラジアル軸受面A1,A2間に介在する円筒面状領域(図2に示す完成品状態で言えば、軸部2aに設けられた外径寸法が小径の、いわゆる中逃げ部。)の外径側とされる。すなわち、詳細な図示は省略するが、本実施形態の軸受部材7は、成形金型のうち、軸受部材7の軸方向全長Lの中央(=L/2)に対応した位置に周方向等間隔で3箇所設けたゲートから樹脂材料をキャビティ内に射出・充填することにより射出成形される。
軸受部材7の成形に用いる樹脂材料は射出成形可能であれば特段の限定はなく、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の結晶性樹脂、あるいはポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)等の非晶性樹脂をベース樹脂としたものを用いることができる。この樹脂材料には、必要に応じて各種充填材を適量配合することもでき、例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、その他適宜の粉末状充填材が使用可能である。また、導電性確保のため、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、各種金属粉等の導電性充填材を配合することも可能であるが、後述するように、本実施形態においては蓋部材8で導電性が確保されるので、この種の導電性充填材は基本的に不要である。但し、軸受部材7の成形性等に悪影響を及ぼさず、コスト面でも支障がなければ、導電性充填材を配合しても良い。
蓋部材8は、軸受部材7(軸受隙間形成部7a)の小径外周面7a3に固定され、軸受部材7の下側開口を閉塞する。蓋部材8は、導電性を有する金属材料で形成され、例えば金属板をプレス加工することにより、略円盤状のプレート部8aと、プレート部8aの外径端から上方に延びる円筒状の起立部8bとを一体に有する有底筒状(コップ状)に形成される。起立部8bは、軸受部材7の内周面7a1に設けられた下側のラジアル軸受面A2の一部又は全部(本実施形態では一部)と軸方向でオーバーラップしている。
プレート部8aの上側端面8a1には、図4に示すように、対向するフランジ部2bの下側端面2b2との間に第2スラスト軸受隙間を形成するスラスト軸受面Cが設けられ、該スラスト軸受面Cには、複数の動圧溝Caをヘリングボーン形状に配列してなるスラスト動圧発生部が形成されている。
蓋部材8の起立部8bの上側端面8b1と軸受部材7の段差面7a4とは軸方向に対向している。後述するスラスト軸受隙間の幅設定後は、両面8b1,7a4間に隙間幅δ1の軸方向隙間11が形成される。スラスト軸受隙間の幅設定後は、例えば接着剤により、軸方向隙間11を完全に封止するようにしても良い。
以上の構成からなる動圧軸受装置1は、例えば以下のようにして組み立てられる。
まず、軸受部材7の内周に軸部材2を挿入する。次いで、軸受部材7の軸受隙間形成部7aの小径外周面7a3、および蓋部材8の起立部8bの内周面の何れか一方又は双方に接着剤を塗布し、小径外周面7a3に蓋部材8の起立部8bの内周面を嵌合する。そのまま軸受部材7と蓋部材8とを軸方向に相対移動させ、フランジ部2bの上側端面2b1を軸受部材7の下側端面7a5に当接させると共に、フランジ部2bの下側端面2b2を蓋部材8のプレート部8aの上側端面8a1に当接させる(すなわち、両スラスト軸受隙間の隙間幅をそれぞれ0の状態にする)。このとき、蓋部材8の起立部8bの上側端面8b1と軸受部材7の段差面7a4とが接触しないように各部材の寸法を設定しておく。次いで、両スラスト軸受隙間の隙間幅の合計量分だけ蓋部材8を軸受部材7に対して下方(軸受部材7から離反する方向)に引き戻し、その後、接着剤を固化させることにより、軸受部材7に対する蓋部材8の組み付けと、スラスト軸受隙間の幅設定とが同時に完了し、図2に示す動圧軸受装置1の組立が完了する。その後、動圧軸受装置1の内部空間に、潤滑流体としての潤滑油を充満する。以上のような組立手順であれば、蓋部材8の移動量でスラスト軸受隙間の幅設定を行うことができるので、各部材の加工精度を緩和して、加工コストを低減することができる。
なお、上述のように、本実施形態に係る動圧軸受装置1では、軸受部材7が樹脂製、蓋部材8が金属製とされ、かつこの蓋部材8の起立部8bは、軸受部材7の内周面7a1に設けられた下側のラジアル軸受面A2の一部と軸方向でオーバーラップしている。このような場合に、圧入を伴う手法(圧入、圧入接着等)で蓋部材8を軸受部材7に固定したのでは、圧入に伴う軸受部材7の変形がラジアル軸受面A2にも及び、ラジアル軸受隙間の幅精度、ひいてはラジアル方向の回転精度に悪影響が及ぶおそれがある。そのため、本実施形態では、蓋部材8の起立部8bの内周面と軸受部材7の軸受隙間形成部7aの小径外周面7a3との間に微小な径方向隙間を介在させ、この径方向隙間を満たす接着剤で両者が接着固定される(隙間接着)。
本実施形態では、蓋部材8を軸受部材7に固定する際、軸受部材7の軸受隙間形成部7aの小径外周面7a3や蓋部材8の起立部8bの内周面に予め接着剤を塗布するようにしたが、蓋部材8と軸受部材7とを嵌合して、スラスト軸受隙間の幅設定を行った後に、軸方向隙間11から接着剤を供給し、軸受隙間形成部7aの小径外周面7a3と起立部8bの内周面との間の径方向隙間の毛細管力を利用して接着剤を引き込むことで両者を接着固定してもよい。
以上の構成からなる動圧軸受装置1において、軸部材2が回転すると、軸受部材7の内周面7a1の上下2箇所に離隔して設けられたラジアル軸受面A1,A2と、これに対向する軸部2aの外周面2a1との間にそれぞれラジアル軸受隙間が形成される。そして軸部材2の回転に伴い、両ラジアル軸受隙間の油膜圧力が動圧溝Aa1,Aa2の動圧作用によって高められる結果、軸部材2をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部R1,R2が軸方向の二箇所に離隔形成される。これと同時に、軸受部材7の下側端面7a5に設けられたスラスト軸受面Bとフランジ部2bの上側端面2b1との間、および、フランジ部2bの下側端面2b2と蓋部材8のプレート部8aの上側端面8a1に設けたスラスト軸受面Cとの間に、それぞれ第1および第2スラスト軸受隙間が形成される。そして、軸部材2の回転に伴い、両スラスト軸受隙間の油膜圧力が、動圧溝Ba,Caの動圧作用によって高められる結果、軸部材2をスラスト両方向に非接触支持する第1スラスト軸受部T1および第2スラスト軸受部T2が形成される。
また、シール隙間Sが、下方(軸受部材7の内部側)に向かって径方向寸法を漸次縮小したテーパ形状を呈しているため、シール隙間S内の潤滑油は毛細管力による引き込み作用によってシール隙間Sが狭くなる方向、すなわち軸受部材7の内部側に向けて引き込まれる。また、シール隙間Sは、軸受部材7の内部空間に充填された潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収するバッファ機能を有し、想定される温度変化の範囲内で潤滑油の油面を常にシール隙間S内に保持する。これらの構成から、軸受部材7内部からの潤滑油漏れが効果的に防止される。
以上の構成からなる動圧軸受装置1は、蓋部材8の起立部8bの外周面、および軸受部材7の大径外周面7a2を、アルミ合金等の金属材料で形成されたモータブラケット6(図1を参照)の内周面に例えば接着固定することでモータに組み込まれる。このとき、軸受部材7と蓋部材8の外径寸法を等しくしておけば、これらをモータブラケット6の内周面に確実に固定することができる。またこのとき、モータブラケット6の内周面を軸受部材7の大径外周面7a2よりもある程度大径に形成しておけば、両者間に形成される径方向隙間に充填した接着剤で両者を接着固定することができる(隙間接着)。このようにすれば、軸受部材7をモータブラケット6の内周に挿入する際に軸受部材7のゲート跡10がモータブラケット6に接触せず、かつ両者の固定後にはゲート跡10が接着剤で被覆されるので、ゲート跡10の除去処理を入念に行う必要はない。そして、蓋部材8とモータブラケット6は何れも金属製とされるから、動圧軸受装置1はモータブラケット6に対して高い接着強度でもって固定することができる。
なお、蓋部材8とモータブラケット6との間で十分な接着強度を確保できるのであれば、軸受部材7をモータブラケット6に対して必ずしも接着固定する必要はない。但し、軸受部材7をモータブラケット6に接着固定しないのであれば、ゲート跡10の処理工数を減じる観点から、軸受部材7の外径寸法を蓋部材8の外径寸法よりも小さくしておくのが望ましい。
上述のように、本発明では、軸受部材7が、ラジアル軸受面A1,A2、シール面9b1、およびスラスト軸受面Bを有する射出成形品、すなわち、従来の動圧軸受装置でいうハウジング、軸受スリーブ、およびシール部材を一体に有する射出成形品とされるから、部品点数および組立工数を減じて動圧軸受装置1の低コスト化を図ることができる。また、軸受部材7は、従来の軸受スリーブに相当する部分が非多孔質の樹脂材料で形成されるから、軸受内部に充填する潤滑油量を減じることができる。これにより、潤滑油量の低減分だけシール隙間Sの軸方向寸法を短縮することができるため、この寸法短縮分だけラジアル軸受部R1、R2の軸受スパンを拡大して軸受剛性、ひいては軸受性能を向上することができる。
また、キャビティのうち、ゲートとの離間距離が大きな領域で成形された部分ほど、その寸法精度や形状精度が良好となることから、軸受部材7の外周面(軸受隙間形成部7aの大径外周面7a2)にゲート跡10が設けられる本発明の構成にあっては、ラジアル軸受面A1,A2、およびその上側、下側にそれぞれ設けられるシール面9b1、スラスト軸受面Bを精度良く成形することができる。特に、ゲート跡10が、軸受部材7の軸方向全長Lの中央(=L/2)位置に形成されるように当該軸受部材7を射出成形したことから、軸受部材7の両端に配されるシール面9b1又はスラスト軸受面Bの何れか一方に精度不良が生じるような事態を懸念する必要がなく、双方共、均等に精度良く成形されたものとなる。これらの構成から、高い軸受性能を発揮することが可能となる。
なお、必ずしも軸受部材7の軸方向全長Lの中央(=L/2)にゲート跡10が形成されるように軸受部材7を射出成形する必要はなく、軸受部材7の一端を基準とし、この基準点からの距離が0.4L〜0.6Lの範囲内にゲート跡10が形成されるように軸受部材7を射出成形すれば、上記同様の効果を得ることができる。但し、本実施形態のように、軸方向の二箇所に離隔してラジアル軸受面A1,A2を設ける場合には、ラジアル軸受面A1,A2(ラジアル動圧発生部)の成形精度を高める観点から、ゲート跡10が両ラジアル軸受面A1,A2間に形成されるようにするのが望ましい。
また、蓋部材8を軸受部材7の外周面(軸受隙間形成部7aの小径外周面7a3)に固定しているので、従来のように蓋部材を軸受部材(ハウジング)の内周面に固定する場合に比べ、内周面と外周面の径差分だけ両部材間の固定面積を増すことができる。また、軸受部材7の軸受隙間形成部7aの厚肉部分(大径外周面7a2を有する部分)の軸方向寸法を短縮する一方、薄肉部分(小径外周面7a3を有する部分)の軸方向寸法を長大化することにより、蓋部材8の起立部8bの軸方向寸法を増すことができるので、固定面積の更なる増大、すなわち固定強度の更なる向上も容易に達成できる。しかも、これに伴って蓋部材8を厚肉化する必要がなく、さらに、蓋部材8は接着性の良好な金属材料で形成されている。従って、動圧軸受装置1の軸方向寸法やラジアル軸受部R1,R2の軸受スパンに影響を与えることなく蓋部材8の耐抜け強度を高めることができるので、所期の軸受性能が安定的に維持される。
また、蓋部材8は金属材料で形成されているので、ディスクDが回転することによって帯電した静電気を、軸部材2→蓋部材8→モータブラケット6という経路を介して確実に接地側に放電することができる。但し、蓋部材8とモータブラケット6とを接着固定した本実施形態においては、接着剤(通常は絶縁体)によって導電経路が遮断される事態を防止するため、必要に応じて蓋部材8の下端外径端部とブラケット6の下端内径端部とにまたがって適当な導電材を塗布し、導電性被膜を形成するのが望ましい。
このように蓋部材8で導電経路を構成すれば、軸受部材7の導電性を考慮せずとも足りるため、軸受部材7の成形材料を検討する際に材料選択の余地が広がり、動圧軸受装置1の設計自由度が増す。樹脂製とした軸受部材7に導電性を持たせる場合には樹脂材料中に高価な導電性充填材を配合するのが通例であるが、本発明では、この種の導電性充填材の配合を不要とし、あるいは配合量を少なくすることができるので、材料コストの高騰を抑制することができる。
ところで本実施形態において、両ラジアル軸受部R1,R2を形成する動圧溝のうち、上側の動圧溝Aa1は、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっているため、軸部材2の回転時、動圧溝Aa1による潤滑油の引き込み力は上側領域が下側領域に比べて相対的に大きくなる。このような引き込み力の差圧(ポンピング能力のアンバランス)により、軸受部材7の軸受隙間形成部7aの内周面7a1と軸部2aの外周面2a1との間の隙間に充満された潤滑油は下方に押し込まれる。この場合、軸受内部の閉塞側の空間、特に第2スラスト軸受隙間の内径側の空間(底面空間P、図5を参照)で圧力が高くなり、軸部材2に作用する上向きの浮上力が過剰となる結果、両スラスト軸受部T1,T2間でのスラスト支持力をバランスさせることが難しくなる。この点に鑑み、本実施形態に係る動圧軸受装置1では、フランジ部2bに、その両端面2b1,2b2に開口した連通孔9を設けている(図2および図5を参照)。これにより、連通孔9を介して両スラスト軸受隙間間で潤滑油が行き来可能となるので、両スラスト軸受隙間間での圧力バランスの崩れを早期に解消し、両スラスト軸受部T1,T2間でのスラスト支持力をバランスさせることができる。
図5に示すように、本実施形態の連通孔9は、径方向部9aと軸方向部9bとで構成され、両スラスト軸受面B,C(スラスト動圧発生部)の形成領域を避けてその内径側に開口させるため、屈曲した形状を呈する。より詳細には、径方向部9aの外径端がフランジ部2bの上側端面2b1と軸受部材7の下端側内周チャンファ(面取り)と軸部2aの下端に設けられたヌスミ部2a3とで形成される空間に開口し、径方向部9aの内径端に繋がった軸方向部9bが軸部2aの小径部2a2の外周面に沿って延び、第2スラスト軸受部T2の内径側に開口している。かかる構成は、円環状のフランジ部2bの内周面に軸方向溝を形成すると共に、フランジ部2bの上側端面2b1に前記軸方向溝に通じる半径方向溝を形成し、その後、フランジ部2bの内周に軸部2aの小径部2a2を嵌合することによって形成することができる。なお、連通孔9は、円周方向の一箇所に設ける他、円周方向の複数箇所に設けることもできる。
また、上記のように、本実施形態に係る動圧軸受装置1では、底面空間Pの圧力が高くなる傾向にあるので、第2スラスト軸受部T2を形成する動圧溝Caを、従来多用されてきたポンプインタイプのスパイラル形状に配列すると、第2スラスト軸受隙間内に充満された潤滑油が内径側に押し込まれるため、底面空間Pの圧力増大を助長することとなる。これを回避するため、第2スラスト軸受部T2を形成する動圧溝Caは、上記のとおりヘリングボーン形状に形成(配列)するのが望ましい(図4を参照)。一方、第1スラスト軸受部T1では、この種の問題が生じないので、動圧溝Baを、図3(b)に示すヘリングボーン形状ではなく、ポンプインタイプのスパイラル形状に形成しても良い。
図6は、本発明の第2実施形態に係る動圧軸受装置1を示すものである。同図に示す動圧軸受装置1は、軸部材2をラジアル方向に支持するラジアル軸受部を、軸方向に延びる単一のラジアル軸受部Rで構成した点において図2に示す動圧軸受装置1と構成を異にする。その他の構成は、図2に示す動圧軸受装置1と実質的に同一であるから共通の参照番号を付して重複説明を省略し、異なる点についてのみ以下詳述する。
図6に示す動圧軸受装置1において、ラジアル軸受部Rは、いわゆる多円弧軸受で構成される。このラジアル軸受部Rは、図7に示すように、軸受部材7(軸受隙間形成部7a)の内周面7a1に設けられるラジアル軸受面Aを複数(図示例は3つ)の円弧面7a11で構成する一方、軸部2aの外周面2a1を真円状円筒面に形成することにより、軸受部材7のラジアル軸受面Aと軸部2aの外周面2a1との間にくさび形状のラジアル軸受隙間(くさび状隙間Gr)を周方向の3箇所に形成することで得られる。本実施形態に係る軸受部材7は、ゲートを除去して得られるゲート跡10を、隣り合う円弧面7a11の中間位置の外径側に有する。この軸受部材7は以下のようにして成形される。
図8は、図7に示す軸受部材7の成形工程を模式的に示す断面図である。同図に示す成形金型は、内型21および外型22で形成されるキャビティ23内に樹脂材料を射出するゲート(点状ゲート)24を、キャビティ23の軸方向全長の略中央部に円周方向等間隔で3箇所有するものとされる。なお、本実施形態の軸受部材7は、液晶ポリマー(LCP)をベース樹脂とする樹脂材料25を用いて射出成形される。
図8に示す成形金型において、スプール、ランナ(何れも図示省略)、およびゲート24を介してキャビティ23内に樹脂材料25を射出・充填する。各ゲート24からキャビティ23内に送り込まれた樹脂材料25は、各ゲート24からそれぞれ円周方向に向けて流動し、隣り合うゲート24,24の中間位置で合流し、各合流位置26でいわゆるウェルド(ウェルドライン)を形成する。キャビティ23内への樹脂材料25の充填が完了した後、型開きして成形品をキャビティ23から脱型する。脱型された成形品には樹脂材料25の固化に伴う成形収縮が生じるが、この成形収縮は、図9中実線で示す成形品の内周面7a1が、図9中一点鎖線で示す態様に変形するように生じる。このとき、内周面7a1の(外径方向への)収縮量は、特に樹脂材料25の合流位置26(隣り合うゲート跡10の中間位置)において大となるため、内周面7a1のうち、合流位置26と一致する周方向領域では、他所に比べて外径側への後退量が大きくなる。これにより、軸受隙間形成部7aの内周面7a1に、複数(3つ)の円弧面7a11が連続したラジアル軸受面Aが成形される。
このようにすれば、軸受部材7のラジアル軸受面A、あるいはこれに対向する軸部2aの外周面2a1に、図3(a)に示すような複雑形状からなるラジアル動圧発生部を形成することなく、ラジアル軸受部Rを動圧軸受の一種である多円弧軸受で構成することが可能となる。従って、動圧軸受装置1のより一層の低コスト化を達成することができる。なお、以上の構成を採用した動圧軸受装置1では、軸受部材7の外周面にも成形収縮(図9中に一点鎖線で示す)が生じる場合もあるが、前述したように、本発明に係る動圧軸受装置1では、蓋部材8をモータブラケット6との取り付け部として活用することができるため、成形収縮によって軸受部材7の外周面の精度(真円度等)が低下した場合であっても、モータブラケット6に対する動圧軸受装置1の取り付け態様に問題が生じることはない。
図10は、ラジアル軸受部Rを多円弧軸受で構成した動圧軸受装置1の他の実施形態を概念的に示す断面図である。同図に示す動圧軸受装置1は、軸受部材7を構成する軸受隙間形成部7aの肉厚を周方向で異ならせた形状としたものであり、具体的には、相対的に肉厚の部分(厚肉部71)を周方向等間隔に3箇所設けたものである。この場合、内周面7a1の径方向の成形収縮量は、厚肉部71の形成領域で相対的に大きくなる。従って、軸受部材7の内周面7a1に複数(3つ)の円弧面7a11で構成されたラジアル軸受面Aを形成することができ、かつこのラジアル軸受面Aと軸部2aの真円状外周面2a1との間に、くさび状隙間Grを形成することができる。
なお、図10は、キャビティ内への樹脂材料の充填性を考慮して、各厚肉部71の周方向中間位置にゲート跡10が形成されるように軸受部材7を射出成形したものであるが、隣り合う厚肉部71の周方向中間位置にゲート跡10が形成されるようにする(厚肉部71の周方向中央位置で樹脂材料が合流するようにゲートを配設する)ことにより、くさび状隙間Grのくさび形状をさらに鋭くし、くさび状隙間Grによる動圧作用を一層高めることも可能である。
以上の実施形態では、軸受部材7の成形材料として樹脂を使用しているが、コスト面等で問題がなければ、例えば、マグネシウム合金やアルミニウム合金等の低融点金属材料を使用して軸受部材7を射出成形することも可能である。また、以上の実施形態では、軸受部材7が周方向の3箇所にゲート跡10を有する構成としたが、軸受部材7は、周方向の4箇所以上にゲート跡10を有する構成としても良い(周方向の4箇所以上に設けたゲートから射出成形されたものであっても良い)。
また、以上の実施形態では、ラジアル軸受隙間およびスラスト軸受隙間に動圧作用を発生させる動圧発生部を、それぞれ軸受部材7(軸受隙間形成部7a)の内周面7a1、下側端面7a5、および蓋部材8のプレート部8aの上側端面8a1に形成したが、これら動圧発生部の一部又は全部は、軸受隙間を介して対向する面、すなわち軸部2aの外周面2a1、フランジ部2bの端面2b1,2b2に形成してもよい。
また、以上の実施形態では、ヘリングボーン形状等の動圧溝による動圧作用により動圧軸受からなるラジアル軸受部R1,R2を、また動圧軸受の一種である多円弧軸受でラジアル軸受部Rを構成した場合について説明を行ったが、いわゆるステップ軸受や波型軸受等、公知のその他の動圧軸受でラジアル軸受部を構成することもできる。また、ラジアル軸受隙間を介して対向する軸受部材7の内周面7a1および軸部2aの外周面2a1の双方を円筒面とした、いわゆる真円軸受でラジアル軸受部を構成することもできる。
また、以上の実施形態では、ヘリングボーン形状等の動圧溝による動圧作用により動圧軸受からなるスラスト軸受部T1,T2を構成した場合について説明を行ったが、いわゆるステップ軸受や波型軸受等、公知のその他の動圧軸受でスラスト軸受部T1,T2の何れか一方又は双方を構成することもできる。
1 動圧軸受装置
2 軸部材
2a 軸部
6 モータブラケット
7 軸受部材
7a 軸受隙間形成部
7b シール部
7b1 シール面
8 蓋部材
9 連通孔
10 ゲート跡
11 軸方向隙間
A、A1、A2 ラジアル軸受面
B、C スラスト軸受面
L 軸受部材の軸方向全長
S シール隙間
R、R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
2 軸部材
2a 軸部
6 モータブラケット
7 軸受部材
7a 軸受隙間形成部
7b シール部
7b1 シール面
8 蓋部材
9 連通孔
10 ゲート跡
11 軸方向隙間
A、A1、A2 ラジアル軸受面
B、C スラスト軸受面
L 軸受部材の軸方向全長
S シール隙間
R、R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
Claims (10)
- 少なくとも一端が開口した軸受部材と、軸受部材に対して相対回転する軸部材と、軸受部材の内周面と軸部材の外周面との間に形成されるラジアル軸受隙間と、ラジアル軸受隙間の一端側に設けられ、軸受部材の一端開口をシールするシール隙間と、ラジアル軸受隙間の他端側に設けられたスラスト軸受隙間とを備える動圧軸受装置において、
軸受部材が、ラジアル軸受隙間を形成するラジアル軸受面、シール隙間を形成するシール面、およびスラスト軸受隙間を形成するスラスト軸受面を有する射出成形品とされ、かつ外周面にゲート跡を有することを特徴とする動圧軸受装置。 - ゲート跡が、軸受部材の軸方向全長の略中央位置に形成された請求項1記載の動圧軸受装置。
- ゲート跡が、周方向の複数箇所に形成された請求項1又は2記載の動圧軸受装置。
- ラジアル軸受面が複数の円弧面で構成された請求項3記載の動圧軸受装置。
- スラスト軸受面に、スラスト軸受隙間に流体動圧を発生させるスラスト動圧発生部が設けられた請求項1記載の動圧軸受装置。
- 軸受部材の他端を開口させ、該他端開口を軸受部材の外周面に固定した蓋部材で閉塞した請求項1記載の動圧軸受装置。
- 軸部材にフランジ部を設け、フランジ部の一端面とこれに対向する蓋部材の端面との間に、さらにスラスト軸受隙間を形成した請求項6記載の動圧軸受装置。
- 軸受部材と蓋部材の間に、二つのスラスト軸受隙間が0となるまで軸受部材と蓋部材の軸方向の接近移動を許容する軸方向隙間を介在させた請求項7記載の動圧軸受装置。
- フランジ部が、その両端面に開口した連通孔を有する請求項7記載の動圧軸受装置。
- 請求項1〜9の何れか記載の動圧軸受装置と、ステータコイルと、ロータマグネットとを備えるモータ。
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-
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