JP2007255593A - 流体軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 軸受剛性の向上、さらには低コスト化を図ることを目的とする。
【解決手段】 第1および第2のラジアル軸受部R1、R2のラジアル軸受隙間に油膜を形成し、軸部材2を回転可能に支持する。軸受スリーブ8及び軸部材2をハウジング7の内部に収容し、ハウジング7の内部空間を潤滑油で満たし、ハウジング7の開口部をシール部材9でシールする。シール部材9の内周面9a2で第1のシール空間S1を形成する。ハウジング7およびシール部材9は樹脂の射出成形で形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、ラジアル軸受隙間に形成した油膜で軸部材を回転可能に支持する流体軸受装置に関する。
この種の流体軸受装置として、有底円筒状のハウジングの内周に焼結金属製の軸受スリーブを固定すると共に、軸受スリーブの内周に軸部材を挿入し、軸部材の外周面と軸受スリーブの内周面との間にラジアル軸受隙間を形成した構造が公知である。ハウジング内には、軸受スリーブの軸方向に隣接してシール部材が配置され、このシール部材の内周面と軸部材の外周面との間に潤滑油を満たしたシール空間を形成することにより、毛細管作用でハウジング内部に満たした潤滑油の漏れを防止している。
ハウジングやシール部材の一例として、快削黄銅の削り出し品が公知である(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−172336
近年、例えばHDD装置では、大容量化に伴って磁気ディスクの搭載枚数が増える傾向にあり(多積層化)、これによる重量増に応じて軸を支持する流体軸受装置にもさらなる軸受剛性の向上、特にモーメント荷重に対する軸受剛性(モーメント剛性)の向上が求められている。その一方で、低コスト化に対する要請も依然として厳しく、従って、単に軸受剛性を向上させるだけでは足りず、これに伴うコスト高騰を如何に回避するか、という点への配慮も重要となる。
本発明は、かかる実情を考慮し、軸受剛性を向上させた低コストの流体軸受装置の提供を目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明では、ラジアル軸受隙間に形成した油膜で軸部材を回転可能に支持するラジアル軸受部と、ラジアル軸受部を内部に収容するハウジングと、ハウジングの内部空間を満たす潤滑油と、ハウジングの開口部をシールするシール部材とを有する流体軸受装置において、シール部材の内周面で第1のシール空間を形成すると共に、外周面で第2のシール空間を形成し、かつハウジングを樹脂の射出成形で形成したものである。
このようにシール部材の外周面でシール空間(第2のシール空間)を形成することにより、ラジアル軸受部のラジアル軸受隙間よりも外径側にシール空間を配置することが可能となる。そのため、従来のようにラジア軸受隙間とシール空間を軸方向に並べて配置する必要はなく、軸方向で両者の少なくとも一部を重ねて配置することができる。従って、ラジアル軸受部およびシール空間を収容するハウジングの軸方向寸法を削減することができる。これは、ハウジングの軸方向寸法を変えずに隣接するラジアル軸受部間の軸方向スパンを拡大できることを意味する。これにより、軸受剛性、特にモーメント剛性をより一層向上させることが可能となる。
このような構成を採用した場合、ハウジングの形状がより複雑となるので、従来の金属材料の旋削品ではコストアップが著しくなる。これに対し、ハウジングを樹脂の射出成形品とすれば、複雑な形状のハウジングであっても低コストに形成可能となるので、製作コストの高騰を抑制することができる。
射出成形後のハウジングは、型開きにより、雄型(コア)の外周に被着した状態で金型から取り出される。この時、ハウジングの開口側の端面に、突き出し機構からの突き出し力を受ける突き出し面を形成することにより、成形品を円滑に脱型することが可能となる。突き出し面には、突き出しピン等から必要な突き出し力を受けられるよう十分な受圧面積が必要となるが、ハウジングの外周面に大径外周面と小径外周面とを設け、シール部材の外径側に大径外周面を配置しておけば、突き出し面に必要とされる受圧面積を容易に確保することができ、円滑な脱型が可能となる。また、このような構成を採用することで、ハウジングのうち、シール部材の外径側の領域とその他の領域とをほぼ等しい肉厚で形成することが可能となり、成形収縮量のばらつきによるハウジングの精度不良を回避することができる。
以上の説明では、ハウジングを樹脂で成形する場合を説明したが、シール部材を樹脂の射出成形で形成することもできる。シール部材の内周面および外周面でシール空間を形成する関係上、ハウジングのみならずシール部材の形状も複雑化するので、これを樹脂の射出成形品とすれば、旋削品に比べてより一層低コスト化を図ることができる。シール部材のみを樹脂の射出成形品とする他、シール部材とハウジングの双方を樹脂の射出成形品とすることもでき、これによってさらなるコストダウンを図ることが可能となる。
本発明におけるシール部材の具体的構成としては、内周面で第1のシール空間を形成する第1シール部と、第1シール部の一方の端面から軸方向に突出し、外周面で第2のシール空間を形成する第2シール部とを有するものを挙げることができる。
流体軸受装置では、ハウジング内に満たした油の圧力のアンバランスを解消するため、ハウジング内で油を循環させる場合が多い。シール部材が上記の構成を有する場合、ハウジング内での油循環を実現するためには、第1シール部の上記一方の端面に油循環用の溝を形成する必要がある。シール部材が旋削品である場合、当該溝はフライス加工で形成せざるを得ず、製作コストの高騰を招くが、本発明のようにシール部材が樹脂の成形品であれば、シール部材の成形と同時に油循環用の溝も型成形することができ、さらなるコストダウンを図ることができる。
本発明によれば、流体軸受装置の軸方向寸法の増大を避けつつ軸受剛性を高めることができ、しかもこの種の効果が低コストに得られる。
以下、本発明の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
図1は、流体軸受装置の一種である動圧軸受装置(流体動圧軸受装置)1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。この情報機器用スピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、動圧軸受装置1と、動圧軸受装置1の軸部材2に取り付けられたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、ブラケット6とを備えている。ステータコイル4は、ブラケット6の例えば外周面に取り付けられ、ロータマグネット5は、ディスクハブ3の内周に取り付けられている。ディスクハブ3は、その外周に磁気ディスク等のディスクDを一枚または複数枚保持する。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する電磁力でロータマグネット5が回転し、それに伴ってディスクハブ3、および軸部材2が一体となって回転する。
図2は、上記スピンドルモータで使用される動圧軸受装置1の一実施形態を例示するものである。この動圧軸受装置1は、軸部材2と、有底筒状のハウジング7と、ハウジング7内に収容された軸受スリーブ8と、ハウジング7の一端開口部をシールするシール部材9とを主要構成部品として構成される。なお、以下では、説明の便宜上、ハウジング7の開口側を上側、その軸方向反対側を下側として説明を進める。
軸部材2は、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、軸部2aと軸部2aの下端に一体又は別体に設けられたフランジ部2bとを備えている。軸部材2の全体を金属で形成する他、例えばフランジ部2bの全体あるいはその一部(例えば両端面)を樹脂で構成することにより、金属と樹脂のハイブリッド構造とすることもできる。
ハウジング7は、円筒状の小径部7aと、小径部7aの一端側に配置された大径部7bと、小径部7aの他端開口部を封口する底部7cとで一体構成される。大径部7bの外周面7b1(大径外周面)は小径部7aの外周面7a1(小径外周面)より大径に形成され、同様に大径部7bの内周面7b2も小径部7aの内周面7a2より大径に形成されている。両内周面7a2、7b2の境界面7eは軸方向と直交する方向の平坦面状に形成される。底部7cの内底面7c1には、スラスト軸受面となる動圧溝領域(図2に黒塗りで示す)が形成され、この領域には、動圧発生部として、例えばスパイラル状に配列した複数の動圧溝(図示省略)が形成されている。小径外周面7a1は例えば接着によって図1に示すブラケット6の内周面に固定される。
ハウジング7は、樹脂の射出成形によって形成される。樹脂が固化する際の成形収縮差による変形を防止するため、ハウジング7の各部7a〜7cはほぼ均一な肉厚に形成してある。
ハウジング7を形成する樹脂は主に熱可塑性樹脂であり、例えば、非晶性樹脂として、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルイミド(PEI)等、結晶性樹脂として、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を用いることができる。また、上記の樹脂に充填する充填材の種類も特に限定されないが、例えば、充填材として、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカー状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボンファイバー、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、金属粉末等の繊維状又は粉末状の導電性充填材を用いることができる。これらの充填材は、単独で用い、あるいは、二種以上を混合して使用しても良い。
図4は、ハウジング7の射出成形工程を示すものである。図示のように、ハウジング7は、型締めした二つの金型(雄型12と雌型13)のうち、雌型13の軸芯部に設けた点状ゲート14から溶融樹脂をキャビティに射出して成形される。ゲートの構成や数は任意で、複数の点状ゲートやディスクゲートを採用することもできる。ゲート位置も任意で、例えば底部7cの外周縁部にゲート14を配置することもできる。
樹脂の固化後に型開きすると、成形品は雄型12に被着した状態で雌型13から取り出される。その後、雄型12に設けた突き出し機構、例えば突き出しピン15で開口側端面7fを押圧することにより、ハウジング7が雄型12から分離される。ハウジング7の突き出しは、突き出しピン以外にも例えば突き出しリングや突き出しプレートで行うこともできる
軸受スリーブ8は、焼結合金からなる多孔質体、例えば銅を主成分とする焼結金属で円筒状に形成される。焼結金属には潤滑油が含浸されている。この他、中実の金属材料、例えば黄銅等の軟質金属で軸受スリーブ8を形成することもできる。
軸受スリーブ8の内周面8aには、ラジアル軸受面となる上下2つの動圧溝領域(図2に黒塗りで示す)が軸方向に離隔して設けられる。これら2つの領域には、図3に示すように、動圧発生部として、例えばヘリングボーン形状に配列した複数の動圧溝Gがそれぞれ形成される。上側の領域の動圧溝Gは軸方向で非対称に形成されており、該領域内では上側の動圧溝の軸方向長さX1が下側の動圧溝の軸方向長さX2よりも若干大きくなっている(X1>X2)。一方、下側の領域の動圧溝Gは軸方向対称に形成され、該領域内では上下の動圧溝Gの軸方向長さがそれぞれ等しい。動圧溝Gを有するラジアル軸受面となる領域は、軸部材2の軸部2aの外周面に形成することもできる。
軸受スリーブ8の下側端面8bには、スラスト軸受面となる動圧溝領域(図2に黒塗りで示す)が形成される。この領域には、動圧発生部として、例えばスパイラル状に配列した複数の動圧溝(図示省略)が形成されている。
軸受スリーブ8の外周面の一箇所もしくは円周方向に等配した複数箇所には、潤滑油を循環させるための循環溝8dが軸方向に形成される。循環溝8dの両端は軸受スリーブ8の両端面8b、8cに開口している。
シール部材9は、円盤状の第1シール部9aと、第1シール部9aの一方の端面9a1から軸方向に突出した円筒状の第2シール部9bとで断面逆L字形に一体形成される。本実施形態において、第2シール部9bの外周面9b1および内周面9b2は何れも円筒面状に形成されるが、第1シール部9aの内周面9a2は上方を拡径させたテーパ面状に形成される。図6および図7に示すように、上記一方の端面9a1には、潤滑油を循環させるための半径方向の循環溝10が形成されている。この循環溝10は、端面9a1を横断して一箇所もしくは円周方向の等配複数箇所(図7では3箇所)に形成される。このシール部材9も上記ハウジングと同様に樹脂の射出成形品で形成される。使用可能なベース樹脂や充填材は、ハウジング7でのこれらの例示に準じるので、説明を省略する。
動圧軸受装置1の組立は、ハウジング7内に軸部材2を収容した後、ハウジング7の内周面に軸受スリーブ8を固定し、さらに軸受スリーブ8の外周面上端にシール部材9を固定することで行われる。その後、ハウジング7の内部空間に潤滑油を充満させれば、図2に示す動圧軸受装置1が得られる。ハウジング7と軸受スリーブ8の固定、および軸受スリーブ8とシール部材9の固定は、圧入や接着、さらには圧入接着(接着剤の介在の下で圧入する)で行うことができる。組立後は、シール部材9を構成する第1シール部9aの端面9a1が軸受スリーブ8の上側端面8cと当接し、第2シール部9bの下側端面がハウジング7の内周の境界面7eと軸方向隙間11を介して対向している。また、シール部材9は、ハウジング7の大径部7bの内径側に配置される。
軸部材2の回転時には、軸受スリーブ8の内周面8aのうち、ラジアル軸受面となる上下2箇所の動圧溝領域は、それぞれ軸部2aの外周面とラジアル軸受隙間を介して対向する。また、軸受スリーブ8の下側端面8bのスラスト軸受面となる動圧溝領域がフランジ部2bの上側端面2b1とスラスト軸受隙間を介して対向し、ハウジング底部7cの内底面7c1のスラスト軸受面となる動圧溝領域は、フランジ部2bの下側端面2b2とスラスト軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材2がラジアル軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によってラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが構成される。同時に、上記スラスト軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材2が二つのスラスト軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によってスラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をスラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部T1と第2スラスト軸受部T2とが構成される。
第1シール部9aの内周面9a2は、軸部2aの外周面との間に所定の容積をもった第1のシール空間S1を形成する。この実施形態において、第1シール部9aの内周面9a2は上方に向かって漸次拡径したテーパ面状に形成され、そのため第1のシール空間S1は下方に向かって漸次縮小したテーパ形状を呈する。また、第2シール部9aの外周面9b1は、ハウジング7の大径部内周面7b2との間に所定の容積をもった第2のシール空間S2を形成する。この実施形態において、ハウジング7の大径部7bの内周面7b2は、上方に向かって漸次拡径したテーパ面状に形成され、そのため第1および第2のシール空間S1、S2は下方に向かって漸次縮小したテーパ形状を呈する。従って、シール空間S1、S2内の潤滑油は毛細管力による引き込み作用により、シール空間S1、S2が狭くなる方向に向けて引き込まれ、これによりハウジング7の上端開口部がシールされる。シール空間S1、S2は、ハウジング7の内部空間に充満された潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収するバッファ機能をも有し、油面は常時シール空間S1、S2内にある。第1のシール空間S1と第2のシール空間の容積は、第1のシール空間S1の方が小さい。
なお、第1シール部9aの内周面9a2を円筒面とする一方、これに対向する軸部2aの外周面をテーパ面状に形成してもよく、この場合、さらに第1のシール空間S1に遠心力シールとしての機能も付与することができるのでシール効果がより一層高まる。
上述のように、第1ラジアル軸受部R1の動圧溝Gは軸方向非対称に形成されており、上側領域の軸方向寸法Xが下側領域の軸方向寸法Yよりも大きくなっている。そのため、軸部材2の回転時、動圧溝Gによる潤滑油の引き込み力(ポンピング力)は上側領域が下側領域に比べて相対的に大きくなる。そして、この引き込み力の差圧によって、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面との間の隙間に満たされた潤滑油が下方に流動し、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間→軸方向の循環溝8d→半径方向の循環溝10という経路を循環して、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間に再び引き込まれる。
このように、潤滑油がハウジング7の内部を流動循環するように構成することで、ハウジング7の内部に満たされた潤滑油の圧力が局所的に負圧になる現象を防止して、負圧発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑油の漏れや振動の発生等の問題を解消することができる。この潤滑油の循環経路には、第1のシール空間S1が連通し、さらに軸方向隙間11を介して第2のシール空間S2が連通しているので、何らかの理由で潤滑油中に気泡が混入した場合でも、気泡が潤滑油に伴って循環する際にこれらシール空間S1、S2内の潤滑油の油面(気液界面)から外気に排出され、気泡による悪影響はより一層効果的に防止される。
なお、軸方向の循環溝8dはハウジング7の内周面に形成することができ、半径方向の循環溝10は軸受スリーブ8の上側端面8cに形成することもできる。
本発明においては、前述のようにこのようにシール部材9の内周面だけでなく、外周面によってもシール空間S2が形成されている。従来では、軸部2aの外周面を利用してラジアル軸受隙間およびシール空間の双方を形成しているため、両者は軸方向に並べて配置せざるを得ず、軸方向の所要スペースが嵩む。これに対し、本発明のように、シール部材9の外周面で第2のシール空間S2を形成する場合、第2のシール空間S2をラジアル軸受隙間の外径側に形成することができ、図2に示すように、第2のシール空間S2の形成領域とラジアル軸受隙間(図示例では第1のラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間)の形成領域とを軸方向で重ねることができる。また、バッファ機能を確保する上で必要な油量が第2のシール空間S2でも確保されるので、第1のシール空間S1で保持すべき油量が減り、第1のシール空間S1の低容積化、つまり第1シール部9aの薄肉化を図ることができる。以上の理由から、軸受装置の軸方向寸法の増大を抑えつつ軸受スリーブ8の軸方向寸法を増すことが可能となる。これにより、2つのラジアル軸受部R1、R2間のスパンを長くすることができ、軸受剛性(特にモーメント剛性)を向上させ、HDD装置でのディスクの多積層化に対応することが可能となる。
その一方で、このような構成に応じて形状が複雑化するハウジング7およびシール部材9を樹脂の射出成形品としているので、これらの部材の高コスト化を抑え、安価な動圧軸受装置1を提供することが可能となる。特にシール部材9については、その形状が略円筒状となるので、金属材料の削り出し品では端面9a1に半径方向溝10を形成することが困難となってシール部材9が著しく高コスト化するが、樹脂の射出成形であれば、シール部材9の成形と同時に半径方向溝10を同時に成形することができるので、より一層の低コスト化を図ることができる。
また、図2に示すように、ハウジング7の外周面を、開口側で他所よりも大径に形成しているので(大径外周面7b1)、シール部材9の外径側に位置する大径部7bで十分な肉厚を確保することができる。従って、射出成形工程において樹脂の固化後、成形品を突き出しピン15等で突き出す際にも、突き出し面7fで十分な大きさの受圧面積を確保することができ、突き出しピン等による円滑な突き出しが可能となる。また、大径部7bを含むハウジング7全体をほぼ均一な肉厚にすることが可能となるので、成形収縮量のばらつきによるハウジング7の精度悪化を回避することができる。図5のハウジング7’は、本願発明との対比のため、大径部7bに相当する部分7b’の外周面を他所と同径寸法に形成したものであるが、この場合、突き出し面7f’で十分な受圧面積を確保することが難しく、かつ大径部7bに相当する部分7b’が他所に比べて薄肉となるので、成形収縮量にばらつきを生じることとなる。
以上の説明では、第1および第2スラスト軸受部T1、T2の動圧溝を軸受スリーブ8の端面8bやハウジング底部7cの内底面7c1に形成する場合を例示したが、フランジ部2bの両端面2b1、2b2の一方または双方に動圧発生部としての動圧溝を形成することもできる。
また、ラジアル軸受部R1、R2およびスラスト軸受部T1、T2として、ヘリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝により潤滑油の動圧作用を発生させる構成を例示しているが、ラジアル軸受部R1、R2として、いわゆるステップ軸受や、波型軸受、あるいは多円弧軸受を採用することもでき、スラスト軸受部T1、T2としてステップ軸受や波型軸受を採用することもできる。さらには、ラジアル軸受部R1、R2として、動圧発生部を有しない、いわゆる真円軸受を採用することもでき、スラスト軸受部T1、T2として軸部材の端部を接触支持するピボット軸受を採用することもできる。
本発明にかかる流体軸受装置を組込んだHDD用スピンドルモータの断面図である。 本発明にかかる流体軸受装置の断面図である。 軸受スリーブの断面図である。 ハウジングの射出成形工程を示す断面図である。 対比例としてのハウジングを示す断面図である。 シール部材のA−A線(図7参照)での断面図である。 B方向(図6参照)から見たシール部材の平面図である。
符号の説明
1 流体軸受装置(流体動圧軸受装置)
2 軸部材
3 ハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
6 ブラケット
7 ハウジング
7a 小径部
7a1 小径外周面
7b 大径部
7b1 大径外周面
7c 底部
7f 突き出し面
8 軸受スリーブ
9 シール部材
9a 第1シール部
9b 第2シール部
10 循環溝
12 雄型
13 雌型
14 ゲート
R1 第1のラジアル軸受部
R2 第2のラジアル軸受部
S1 第1のシール空間
S2 第2のシール空間
T1 第1のスラスト軸受部
T2 第2のスラスト軸受部

Claims (5)

  1. ラジアル軸受隙間に形成した油膜で軸部材を回転可能に支持するラジアル軸受部と、ラジアル軸受部を内部に収容するハウジングと、ハウジングの内部空間を満たす潤滑油と、ハウジングの開口部をシールするシール部材とを有する流体軸受装置において、
    シール部材の内周面で第1のシール空間が形成されると共に、外周面で第2のシール空間が形成され、かつハウジングが樹脂の射出成形で形成されていることを特徴とする流体軸受装置。
  2. ハウジングの開口側の端面に、突き出し機構の突き出し力を受ける突き出し面を形成した請求項1記載の流体軸受装置。
  3. ハウジングの外周面に、大径外周面と小径外周面とを設け、シール部材の外径側に大径外周面を配した請求項1又は2記載の流体軸受装置。
  4. ラジアル軸受隙間に形成した油膜で軸部材を回転可能に支持するラジアル軸受部と、ラジアル軸受部を内部に収容するハウジングと、ハウジングの内部空間を満たす潤滑油と、ハウジングの開口部をシールするシール部材とを有する流体軸受装置において、
    シール部材の内周面で第1のシール空間が形成されると共に、外周面で第2のシール空間が形成され、かつシール部材が樹脂の射出成形で形成されていることを特徴とする流体軸受装置。
  5. シール部材が、内周面で第1のシール空間を形成する第1シール部と、第1シール部の一方の端面から軸方向に突出し、外周面で第2のシール空間を形成する第2シール部とを備え、第1シール部の上記一方の端面に循環溝を形成した請求項4記載の流体軸受装置。
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