JP2012101386A - 流体動圧軸受装置用ハウジング及びその製造方法、並びにこれを備えた流体動圧軸受装置 - Google Patents

流体動圧軸受装置用ハウジング及びその製造方法、並びにこれを備えた流体動圧軸受装置 Download PDF

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Abstract

【課題】側部及び底部を一体に有し、底部にスラスト動圧溝が形成されたハウジングを、バリの発生や成形不良を招くことなく、樹脂の射出成形で高精度に成形する。
【解決手段】内側20のうち、少なくともハウジング7の側部7aの内周面7a1を成形する成形面21、及び、底部7bのスラスト動圧溝7b10を成形する溝成形面22aを、一体の金型に形成する。また、内型20の成形端面22のうち、スラスト動圧溝7b10の溝底を成形する溝底成形面22a1を、成形端面22の外径端部まで面一に連続させる。
【選択図】図6

Description

本発明は、流体動圧軸受装置用ハウジング(以下、単にハウジングと言う。)及びその製造方法、並びにこれを備えた流体動圧軸受装置に関し、特に樹脂製のハウジングの製造方法に関する。
例えば特許文献1には、側部及び底部を一体に有し、樹脂の射出成形で形成されたハウジングと、ハウジングの内周面に固定された軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入され、軸部及びフランジ部を有する軸部材とを備えた流体動圧軸受装置が示されている。この流体動圧軸受装置の軸部材が回転すると、軸部の外周面と軸受スリーブの内周面との間にラジアル軸受隙間が形成されると共に、フランジ部の上側端面と軸受スリーブの下側端面との間、及び、フランジ部の下側端面とハウジングの底部の内側端面との間にスラスト軸受隙間が形成され、ラジアル軸受隙間及びスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体(例えば潤滑油)の動圧作用で、軸部材がラジアル方向及びスラスト方向に支持される。
特開2008−256046号公報
上記ハウジングの内周面は軸受スリーブが固定されるため、ハウジングの内周面の面精度は軸受スリーブの内周に形成されるラジアル隙間の精度、ひいてはラジアル方向の支持力に影響する。また、上記ハウジングの底部の内側端面はスラスト軸受隙間に面するため、ハウジングの底部の内側端面の面精度は、スラスト軸受隙間の精度、ひいてはスラスト方向の支持力に影響する。特に、ハウジングの底部の内側端面に、スラスト軸受隙間の潤滑流体に動圧作用を積極的に発生させるスラスト動圧溝が形成される場合、スラスト動圧溝の加工精度はスラスト方向の支持力に大きく影響する。このため、ハウジングの内周面及び底部の内側端面(特にスラスト動圧溝)は高精度に成形する必要がある。
このようなハウジングは、例えば図9に示すような外型110及び内型120からなる成形金型を用いて樹脂で射出成形される。内型120は、ハウジングの内周面の成形面121を有する円筒状の金型120aと、金型120aの内周面に嵌合し、ハウジングの底部の内側端面に形成されるスラスト動圧溝の成形面122を有する円筒状の金型120bと、金型120bの内周面に嵌合し、スラスト動圧溝の内径側領域の成形面125を有する円筒状の金型120cとを組み立てて構成される。金型120bの成形面122には、スラスト動圧溝の溝底を成形する溝底成形面122aと、スラスト動圧溝間の丘部を成形する丘部成形面122bとが設けられる。金型120cの軸心には、金型120cに対して軸方向に摺動可能な突き出しピン130が設けられる。上述のように、ハウジングの内周面及び底部の内側端面のスラスト動圧溝は高精度に形成する必要があるため、これらの面を成形する金型の成形面121,122は高精度な加工が要求される。図9に示すように、成形面121,122を別々の金型120a及び120bに設けることで、各金型120a,120bの加工がしやすくなり、成形面121,122の加工精度を高めることができる。しかし、このような成形金型でハウジングを成形すると、以下のような不具合が生じる恐れがある。
第一に、個々の金型120a,120bを精度良く加工しても、これらの金型120a,120bの組立精度が悪いと、成形されるハウジングの各面の相対的な位置精度、具体的には、ハウジングの内周面と底部の内側端面との直角度を十分に高めることができない恐れがある。このような場合、一旦組み立てた金型120a,120bをばらして再び組み立て直したり、高精度に組み立てられた別の金型を用いたりする必要があるため、多大な手間がかかる。
第二に、内型120を複数の金型120a,120b,120cで構成すると、ハウジングの底部の内型端面を成形する内型120の成形端面126に継ぎ目127が形成される。このような内型120を用いて射出成形を繰り返すと、樹脂との摩擦により金型が摩耗し、成形端面126の継ぎ目127に微小な隙間が形成され、この微小隙間に樹脂が入り込むことにより成形品にバリが形成される恐れがある。特に、スラスト軸受面にバリが形成されると、スラスト方向の支持力に悪影響を及ぼす。
第三に、内型120の成形端面126の継ぎ目127には、金型の加工誤差の影響を抑えるために段差が形成されることがある。具体的には、図9に示すように、金型120bの成形面122の溝底成形面122aを、金型120aの端面123及び120cの端面125よりも後退させる(図示では上側に配する)ことにより、成形端面126の継ぎ目127に段差が設けられる。このように成形端面126に段差が設けられることで、ゲート150からキャビティ140に射出された樹脂の流動性が低下し、成形不良を招く恐れがある。
本発明の解決すべき課題は、側部及び底部を一体に有し、底部にスラスト動圧溝が形成されたハウジングを、バリの発生や成形不良を招くことなく、樹脂の射出成形で高精度に成形することにある。
前記課題を解決するためになされた本発明は、内周面に軸受スリーブを固定するための固定面が設けられた筒状の側部と、側部の一端開口部を閉塞し、内側端面にスラスト動圧溝が形成された底部とを一体に有する流体動圧軸受装置用ハウジングを製造するための方法であって、側部の内周面を成形する成形面及び底部の内側端面を成形する成形端面を有する内型と、底部の外側端面を成形する外型とを備え、内型のうち、少なくとも側部の内周面の成形面とスラスト動圧溝の成形面とが一体の金型に形成された成形金型を用いて樹脂で射出成形するものである。このような製造方法で形成された流体動圧軸受装置用ハウジングは、底部の内側端面のうち、スラスト軸受溝の外径端部及びそれよりも外径側の領域に、金型の継ぎ目跡が形成されていない。
このように、側部の内周面の成形面と底部のスラスト動圧溝の成形面とを一体の金型に形成することで、側部の内周面(軸受スリーブの固定面)と底部のスラスト動圧溝形成領域との相対的な位置精度(例えば直角度)を金型の加工精度で保証することができる。また、図9に示す金型120a及び120bを一体化することで、内型120の成形端面126に形成されていた少なくとも外径側の継ぎ目127が省略されるため、この継ぎ目に起因するバリの発生が回避され、バリによるスラスト方向の支持力の低下を防止できる。
また、図9に示す金型120a,120bを一体化することで、各金型の加工誤差の影響を抑えるための段差を設ける必要がなくなるため、金型の成形面、特に内型の成形端面をフラットにして樹脂の流動性を高めることができる。具体的には、スラスト動圧溝の溝底を成形する溝底成形面を含む平面を、内型の成形端面の外径端部まで面一に連続させることで、樹脂の流動性を高めることができる。より詳しくは、例えば、溝底成形面を内型の成形端面の外径端部まで延ばしたり(図8参照)、あるいは、溝底成形面を、スラスト動圧溝の外径側に設けられた平坦部を成形する成形面と面一に連続させたりすることができる(図6参照)。さらに、溝底成形面を、スラスト動圧溝の内径側に設けられた平坦部を成形する成形面と面一に連続させれば、樹脂の流動性をより一層高めることができる。
尚、図9に示す金型120a,120bを一体化することで、これらを別々に形成する場合と比べ、側部の内周面の成形面やスラスト動圧溝の成形面の加工がしにくくなり、成形面の加工精度の低下が懸念される。しかし、本発明者らの試行錯誤により、上記のように金型120a,120bを一体化することにより、成形面の相対的な位置精度の向上、バリの発生の回避、及び樹脂の流動性の向上を図ることができるため、たとえ成形面の加工精度が若干低下したとしても、これを補って余りある効果が得られることが明らかとなった。
内型の軸心には、内型に対して軸方向に摺動可能な突き出しピンを設けることができる。この場合、突き出しピンと内型との間に分割面が形成され、成形面に継ぎ目が形成されるため、成形品にバリが生じる恐れがある。そこで、内型に、底部の内側端面の軸心に設けられる凹部を成形する成形面を設け、該成形面に突き出しピンの先端部を配置することで、突き出しピンと金型との継ぎ目に起因して成形品にバリが生じた場合でも、底部の内側端面の凹部にバリを配することができるため、バリが軸部材と干渉する事態を回避できる。
外型のうち、底部の外側端面を成形する成形面の軸心にピンゲートを設けることができる。この場合、外型に、底部の外側端面の軸心に設けられる凹部を成形する成形面を設け、該成形面に前記ピンゲートを設ければ、底部の外側端面の凹部にピンゲートのゲートカット跡を配置することができるため、ゲートカット跡が他の部材と干渉する事態を防止できる。
上記の製造方法によれば、内周面に軸受スリーブを固定するための固定面が設けられた筒状の側部と、側部の一端開口部を閉塞し、内側端面にスラスト動圧溝が形成された底部とを一体に有し、樹脂で射出成形された流体動圧軸受装置用ハウジングであって、スラスト動圧溝の溝底面が、スラスト動圧溝の外径側に設けられた平坦部と面一に連続している流体動圧軸受装置用ハウジングが得られる。
スラスト動圧溝は、例えばスパイラル形状やヘリングボーン形状とすることができる。また、スラスト動圧溝は、例えばポンプアウトタイプあるいはポンプインタイプとすることができる。
上記のハウジングと、ハウジングの側部の内周面に固定された軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入され、軸部及びフランジ部を有する軸部材と、軸部の外周面と軸受スリーブの内周面との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部と、フランジ部の一方の端面と軸受スリーブの端面との間の第1のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材をスラスト方向一方に支持する第1のスラスト軸受部と、フランジ部の他方の端面とハウジングの底部の内側端面との間の第2のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材をスラスト方向他方に支持する第2のスラスト軸受部とを備えた流体動圧軸受装置は、軸受スリーブの内周面(ラジアル軸受面)とハウジングの底部の内側端面(スラスト軸受面)との相対的な位置精度を高精度に設定できる。
軸受スリーブは、例えば焼結金属製とすることができる。
軸受スリーブの内周面に、ラジアル軸受隙間の潤滑流体に動圧作用を発生させるラジアル動圧発生部を形成することができる。また、軸受スリーブの一方の端面に、第1のスラスト軸受隙間の潤滑流体に動圧作用を発生させるスラスト動圧発生部を形成することができる。
以上のように、本発明によれば、側部及び底部を一体に有し、底部にスラスト動圧溝が形成されたハウジングを、バリの発生や成形不良を招くことなく、樹脂の射出成形で高精度に成形することができる。
スピンドルモータの断面図である。 上記スピンドルモータに組み込まれた流体動圧軸受装置の断面図である。 上記流体動圧軸受装置に組み込まれた(a)断面図、及び(b)下面図である。 上記流体動圧軸受装置に組み込まれた本発明の実施形態に係るハウジングの上面図である。 上記ハウジングの成形金型の断面図である。 上記成形金型の拡大断面図である。 他の実施形態に係るハウジングの上面図である。 図7のハウジングの成形金型の断面図である。 従来の成形金型の断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に支持する流体動圧軸受装置1と、軸部材2の一端に設けられたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、流体動圧軸受装置1のハウジング7を内周に固定したブラケット6とを備えている。ステータコイル4はブラケット6の外周に取付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の内周に取付けられる。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが複数枚(図示例は3枚)保持される。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が回転し、それによって、ディスクハブ3およびこれに保持されたディスクDが、軸部材2と一体に回転する。
図2は、上記のスピンドルモータに組み込まれた流体動圧軸受装置1を示している。この流体動圧軸受装置1は、本発明の一実施形態に係る有底筒状のハウジング7と、ハウジング7の内周面に固定された軸受スリーブ8と、軸受スリーブ8の内周に挿入された軸部材2と、ハウジング7の開口部をシールするシール部材9とを主要な構成部材として備える。なお、以下の説明において、軸方向でハウジング7の開口側を上側、ハウジング7の閉口側を下側とする。
軸部材2は、軸部2aと、軸部2aの下端から外径側に張り出した平板状のフランジ部2bとを有し、高剛性の金属材料、例えばステンレス鋼で形成される。軸部2aの外周面2a1は、軸方向の略中央部のヌスミ部(環状の凹部)を除いて平滑な円筒面とされ、フランジ部2bの両端面2b1,2b2は平滑な平坦面とされる。
軸受スリーブ8は、例えば、銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成される。軸受スリーブ8は、焼結金属以外にも、無垢の金属(例えば黄銅等の軟質金属)や、樹脂で形成することもできる。
軸受スリーブ8の内周面8aには、ラジアル動圧発生部として例えばラジアル動圧溝が形成される。本実施形態では、図3(a)に示すように、軸受スリーブの内周面8aの軸方向に離隔した2箇所の領域に、ヘリングボーン形状に配列した複数の動圧溝8a1,8a2が形成される。このうち、上側の動圧溝8a1は軸方向非対称に形成されており、詳しくは、動圧溝8a1の軸方向中間部に形成された帯状の丘部(図3にクロスハッチングで示す)に対して、上側の軸方向寸法X1が下側の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。一方、下側の動圧溝8a2は軸方向対称に形成される。
軸受スリーブ8の下側端面8bには、スラスト動圧発生部として例えばスラスト動圧溝が形成され、本実施形態では図3(b)に示すように、スパイラル形状に配した複数の動圧溝8b1が形成される。軸受スリーブ8の外周面8dには、軸方向溝8d1が任意の本数(本実施形態では3本)形成される。また、軸受スリーブ8の上側端面8cには、円環溝8c1、および円環溝8c1の内径側に接続された任意の本数の径方向溝8c2が形成される。
ハウジング7は、図2に示すように、筒状の側部7aと、側部7aの下端開口部を閉塞する底部7bとを一体に有する。側部7aの内周面7a1には、軸受スリーブ8の外周面8dを固定するための円筒面状の固定面が設けられる。底部7bの内側端面7b1には、スラスト動圧溝が形成され、本実施形態では図4に示すように、スパイラル形状に配した複数のスラスト動圧溝7b10が形成される。スラスト動圧溝7b10は、溝底面から盛り上がった丘部7b11で区画される(図4にクロスハッチングで示す)。
ハウジング7の底部7bの内側端面7b1のうち、スラスト動圧溝7b10の外径端部あるいはそれよりも外径側の領域には、金型の継ぎ目跡は形成されていない。また、スラスト動圧溝7b10の溝底面を含む平面は、内側端面7b1の外径端部まで延びている。本実施形態では、スラスト動圧溝7b10形成領域の外径側及び内径側に平坦部7b12及び7b13が形成され、平坦部7b12及び7b13がスラスト動圧溝7b10の溝底面と面一に連続している。平坦部7b13の内径側には、凹部7b3が形成される(図2参照)。凹部7b3の軸心には、成形金型の突き出しピン30による突き出し跡30’が形成される(図4参照)。
ハウジング7の底部7bの外側端面7b2の軸心には、凹部7b4が形成される(図2参照)。凹部7b4の軸心には、成形金型のゲート50内で固化した樹脂を切断したゲートカット跡(あるいは、切断部に後処理を施した跡)が形成される(図示省略)。
ハウジング7は樹脂の射出成形で成形される。ハウジング7を形成する樹脂は主に熱可塑性樹脂であり、例えば、非晶性樹脂として、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルイミド(PEI)等、結晶性樹脂として、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)等を用いることができる。また、上記の樹脂に、充填材として、例えばガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカー状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボンファイバー、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、金属粉末等の繊維状又は粉末状の導電性充填材を用いることができる。これらの充填材は、単独で用い、あるいは、二種以上を混合して使用しても良い。
ハウジング7は、例えば図5に示す金型を用いて成形される。この金型は、外型10と、内型20と、内型20に設けられた突き出しピン30とを備える。外型10は固定型であり、内型20は外型10に対して軸方向に移動可能な可動型である。外型10には、ハウジング7の底部7bの外側端面7b2を成形する成形面11と、側部7aの外周面7a2の一部を成形する成形面12とが設けられる。内型20には、ハウジング7の側部7aの内周面7a1を成形する成形面21と、底部7bの内側端面7b1を成形する成形端面22と、側部7aの外周面7a2の一部を成形する成形面23とが設けられる。外型10と内型20とを型締めすることでキャビティ40が形成され、このキャビティ40にゲートから樹脂を射出することによりハウジング7が成形される。図示例では、外型10の成形面の軸心に、ピンゲート50が設けられる。
図6に拡大して示すように、内側20の成形端面22には、ハウジング7の底部7bの内側端面7b1のスラスト動圧溝7b10を成形する溝成形面22aが設けられる。溝成形面22aには、スラスト動圧溝7b10の溝底面を成形する溝底成形面22a1と、スラスト動圧溝7b10の間の丘部7b11(図4参照)を成形する丘部成形面22a2とからなる。内型20のうち、少なくともハウジング7の側部7aの内周面7a1を成形する成形面21と溝成形面22aとは一体の金型に設けられる。溝成形面22aの外径側には、底部7bのスラスト動圧溝7b10の外径側に形成された平坦部7b12(図4参照)を成形する成形面22bが設けられる。溝成形面22aの内径側には、底部7bのスラスト動圧溝7b10の内径側に形成された平坦部7b13(図4参照)を成形する成形面22cが設けられる。
溝底成形面22a1を含む平面は、内型20の成形端面22の外径端部まで面一に連続している。本実施形態では、溝底成形面22a1は、溝成形面22aの外径側の成形面22b及び内径側の成形面22cと面一に連続している。すなわち、溝底成形面22a1、成形面22b、及び成形面22cで構成される平坦面から、丘部成形面22a2が一段凹んだ状態となっている。この丘部成形面22a2は、例えば、内型20の成形端面22のうち、丘部成形面22a2の形成領域を除く領域にマスキングシールを施した状態で、ショットブラストにより形成される。この他、放電加工や機械加工で丘部成形面22a2を形成することもできる。
内型20には、ハウジング7の底部7bの内側端面7b1の軸心に設けられる凹部7b3(図2参照)を成形するための成形面22dが設けられる。成形時には、この成形面22dと突き出しピン30の先端面とが面一になるように配置される(図6参照)。ただし、現実的には成形面22dと突き出しピン30の先端面とを面一にすることは不可能であるため、これらの加工誤差を考慮して、例えば突き出しピン30の先端面が成形面22dから僅かに後退するように(図中で僅かに上方に配されるように)設計される。
外型10の成形面11には、ハウジング7の底部7bの外側端面7b2の軸心に設けられる凹部7b4(図2参照)を成形するための凸部11aが設けられ、この凸部11aの軸心にピンゲート50が設けられる(図6参照)。
ゲート50から樹脂を射出すると、図6に鎖線矢印で示すように、樹脂が内型20の成形端面22に沿って外径側に流動する。このとき、上記のように、溝底成形面22a1を含む平面が内型20の成形端面22の外径端部まで面一に連続しているため、具体的には溝底成形面22a1、成形面23、及び成形面24が面一に連続しているため、この平面に沿って樹脂がスムーズに流動する。尚、図示例では、丘部成形面22a2の深さを誇張して示しているが、通常、丘部成形面22a2の深さ(すなわちスラスト動圧溝7b10の溝深さ)は5〜10μm程度であるため、樹脂の流動を阻害することはほとんどない。こうして、樹脂がスムーズに流動することで、キャビティ40の端部まで確実に樹脂を充填することができ、成形不良を防止できる。
また、上記のように、ハウジング7の内周面7a1を成形する成形面21と、スラスト動圧溝7b10を成形する溝成形面22aとを一体の金型に設けることで、ハウジング7の内周面7a1とスラスト動圧溝7b10の形成領域との相対的な位置精度(例えば直角度)を金型の加工精度で保障することができる。また、内型20の成形端面22に金型の継ぎ目が形成されないため、継ぎ目に起因するバリの発生を回避できる。さらに、溝成形面22aを内型20の成形端面22の外径端部付近まで拡径すれば、スラスト動圧溝7b10の面積が拡大され、スラスト方向の支持力が高められる。
シール部材9は、例えば、黄銅等の軟質金属材料やその他の金属材料、あるいは樹脂材料でリング状に形成される。このシール部材9の内周面9aと、軸部2aのテーパ面2a2との間には所定のシール空間Sが形成される。本実施形態において、シール部材9の内周面9aは径一定の円筒面とされる一方、軸部2aのテーパ面2a2は上方に向かって外径寸法を漸次縮小させた面とされる。従ってシール空間Sは、ハウジング7の内部側に向かって漸次縮小したテーパ形状を呈する。
上記構成の流体動圧軸受装置1において、スラスト軸受隙間の幅設定は例えば以下のようにして行われる。まず、内周に軸部材2を挿入した軸受スリーブ8をハウジング7の内周に挿入し、軸部材2のフランジ部2bの両端面2b1,2b2と軸受スリーブ8の下側端面8b及びハウジング7の底部7bの内側端面7b1とを当接させる(すなわち、スラスト軸受隙間が0の状態とする)。この状態から、スラスト軸受隙間の設定幅の分だけ軸部材2をハウジング7に対して相対的に引き上げ、その状態で軸受スリーブ8の外周面8dをハウジング7の内周面7a1に固定する。このように、スラスト軸受隙間の幅設定を、軸部材2の相対的な引き上げ量で管理することにより、各部材の加工精度に関わらずスラスト軸受隙間を高精度に設定することができる。
このように、軸部材2のハウジング7に対する引き上げ量でスラスト軸受隙間を管理することで、ハウジングの底部7bと軸受スリーブ8との間にスラスト軸受隙間を設定するための段部やスペーサ等を軸部材2のフランジ部2bの外径側に設ける必要はない。従って、図2に示すように、フランジ部2bを、軸受スリーブ8の外周面8dが固定されるハウジング7の内周面7a1の近傍まで拡径することができる。これにより、スラスト軸受面が拡大され、スラスト方向の支持力が高まる。特に、本実施形態では、上述のように内型20の成形端面22の外径端部付近まで溝成形面22を形成することで、スラスト動圧溝7b10がハウジング7の内周面7a1の近傍まで形成されているため、上記のフランジ部2bの大径化と相俟って、スラスト方向の支持力をさらに高めることができる。
流体動圧軸受装置1は以上の構成からなり、シール部材9でシールされたハウジング7の内部空間には、軸受スリーブ8の内部気孔も含め潤滑流体としての潤滑油が充満される。尚、潤滑流体として、潤滑油のほか、磁性流体や気体(例えば空気)を使用することもできる。
以上の構成からなる流体動圧軸受装置1において、軸部材2が回転すると、軸受スリーブ8の内周面8aの動圧溝8a1,8a2形成領域と軸部2aの外周面2a1との間にはそれぞれラジアル軸受隙間が形成される。ラジアル軸受隙間に生じる油膜は、動圧溝8a1,8a2の動圧作用によってその圧力が高められ、この圧力によって軸部材2がラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持するラジアル軸受部R1,R2が軸方向に離隔して形成される。
これと同時に、軸受スリーブ8の下側端面8bの動圧溝8b1形成領域とフランジ部2bの上側端面2b1との間にスラスト軸受隙間が形成されると共に、ハウジング7の底部7bの内側端面7b1のスラスト動圧溝7b10形成領域とフランジ部2bの下側端面2b2との間にスラスト軸受隙間が形成される。両スラスト軸受隙間に生じる油膜は、動圧溝8b1,7b10の動圧作用によってその圧力が高められ、この圧力によって軸部材2が両スラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2を両スラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部T1と第2スラスト軸受部T2とが形成される。
また、シール空間Sがハウジング7の内部側に向かって漸次縮小したテーパ形状を呈しているため、シール空間S内の潤滑油は毛細管力による引き込み作用によりハウジング7の内部方向に引き込まれる。さらに、本実施形態では、シール空間Sを形成する軸部2aのテーパ面2a2が上方に向かって外径寸法を漸次縮小させているため、軸部材2の回転時には遠心力シールとしての機能も付加され、ハウジング7の内部からの潤滑油の漏れ出しがより効果的に防止される。シール空間Sは、ハウジング7の内部空間に充填された潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収するバッファ機能を有し、想定される温度変化の範囲内で潤滑油の油面は常にシール空間S内にあるように、その容積が設定される。
また、ラジアル軸受部R1を形成する上側の動圧溝8a1は、軸方向非対称に形成されている。これにより、潤滑油が強制的に循環され、潤滑油の圧力バランスが保たれると同時に、局部的な負圧の発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑油の漏れや振動の発生等の問題を解消することができる。
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、ハウジング7の底部7bの内側端面7b1に形成されるスラスト動圧溝7b10が、内側端面7b1の外径端部の手前で止まっている場合を示したが、これに限らず、図7に示すようにスラスト動圧溝7b10及び丘部7b11を内側端面7b1の外径端部まで延ばしても良い。この場合、ハウジング7を成形する金型は、図8に示すように、内型20の成形端面22に設けられる溝成形面22aが、成形端面22の外径端部まで延びている。すなわち、溝底成形面22a1が、成形端面22の外径端部まで面一に連続している。これによれば、スラスト動圧溝7b10の面積がさらに拡大され、スラスト方向の支持力がより一層高められる。
また、上記の実施形態では、ハウジング7の底部7bの内側端面7b1のうち、スラスト動圧溝7b10の内径側に平坦部7b13が設けられる場合を示したが、この内径側の平坦部7b13を省略し、スラスト動圧溝7b10の内径端部に接して凹部7b3を設けても良い(図示省略)。
また、以上の実施形態では、軸受スリーブ8の内周面にラジアル動圧溝8a1,8a2が形成されているが、この面とラジアル軸受隙間を介して対向する軸部2aの外周面2a1にラジアル動圧溝を形成してもよい。また、軸受スリーブ8の下側端面8bにスラスト動圧溝8b1が形成されているが、この面とスラスト軸受隙間を介して対向するフランジ部2bの上側端面2b1にスラスト動圧溝を形成してもよい。
また、以上の実施形態では、ラジアル動圧溝として、ヘリングボーン形状の動圧溝を形成する場合を例示したが、これに限らず、例えば、スパイラル形状やステップ形状、あるいは波型形状の動圧溝を採用することもできる。また、ラジアル動圧溝を省略し、軸受スリーブ8の内周面8a及び軸部材2の外周面2a1の双方を円筒面とした、いわゆる真円軸受を構成することもできる。
また、以上の実施形態では、スラスト動圧溝として、スパイラル形状の動圧溝を例示したが、これに限らず、例えばヘリングボーン形状やステップ形状、あるいは波型形状の動圧溝を採用することもできる。また、以上の実施形態では、軸部材2の回転に伴い、スラスト軸受隙間の潤滑油を外径側から内径側に引き込む、いわゆるポンプインタイプの動圧溝を示したが、これに限らず、潤滑油を内径側から外径側に押し出すポンプアウトタイプの動圧溝を採用することもできる。
また、以上の実施形態では、ラジアル軸受部R1,R2が軸方向に離隔して設けられているが、これらを軸方向で連続的に設けても良い。あるいは、これらの何れか一方のみを設けてもよい。
また、以上の実施形態では、軸部材2が回転する場合を示したが、軸部材2を固定し、ハウジング7側を回転させる、いわゆる軸固定タイプとすることもできる。
1 流体動圧軸受装置
2 軸部材
7 ハウジング
7a 側部
7b 底部
7b10 スラスト動圧溝
7b11 丘部
7b12 平坦部
7b13 平坦部
7b3 凹部
7b4 凹部
8 軸受スリーブ
9 シール部材
10 外型
20 内型
21 成形面
22 溝成形面
22a 溝底成形面
22b 丘部成形面
23 成形面
24 成形面
25 成形面
30 突き出しピン
40 キャビティ
50 ゲート
D ディスク
R1,R2 ラジアル軸受部
T1,T2 スラスト軸受部
S シール空間

Claims (26)

  1. 内周面に軸受スリーブを固定するための固定面が設けられた筒状の側部と、側部の一端開口部を閉塞し、内側端面にスラスト動圧溝が形成された底部とを一体に有する流体動圧軸受装置用ハウジングを製造するための方法であって、
    側部の内周面を成形する成形面及び底部の内側端面を成形する成形端面を有する内型と、底部の外側端面を成形する外型とを備え、内型のうち、少なくとも側部の内周面の成形面とスラスト動圧溝の成形面とが一体の金型に形成された成形金型を用いて樹脂で射出成形する流体動圧軸受装置用ハウジングの製造方法。
  2. スラスト動圧溝の溝底を成形する溝底成形面を含む平面が、内型の前記成形端面の外径端部まで面一に連続している請求項1の流体動圧軸受装置用ハウジングの製造方法。
  3. 前記溝底成形面が前記成形端面の外径端部まで延びている請求項2の流体動圧軸受装置用ハウジングの製造方法。
  4. 前記溝底成形面が、スラスト動圧溝の外径側に設けられた平坦部を成形する成形面と面一に連続した請求項2の流体動圧軸受装置用ハウジングの製造方法。
  5. 前記溝底成形面が、スラスト動圧溝の内径側に設けられた平坦部を成形する成形面と面一に連続した請求項1〜4何れかの流体動圧軸受装置用ハウジングの製造方法。
  6. 内型の軸心に、内型に対して軸方向に摺動可能な突き出しピンを設けた請求項1〜5何れかの流体動圧軸受装置用ハウジングの製造方法。
  7. 内型に、底部の内側端面の軸心に設けられる凹部を成形する成形面を設け、該成形面に突き出しピンの先端部を配置する請求項6の流体動圧軸受装置用ハウジングの製造方法。
  8. 外型のうち、底部の外側端面を成形する成形面の軸心にピンゲートが設けられた請求項1〜7何れかの流体動圧軸受装置用ハウジングの製造方法。
  9. 外型に、底部の外側端面の軸心に設けられる凹部を成形する成形面を設け、該成形面に前記ピンゲートを設けた請求項8の流体動圧軸受装置用ハウジングの製造方法。
  10. 内周面に軸受スリーブを固定するための固定面が設けられた筒状の側部と、側部の一端開口部を閉塞し、内側端面にスラスト動圧溝が形成された底部とを一体に有し、樹脂で射出成形された流体動圧軸受装置用ハウジングであって、
    底部の内側端面のうち、スラスト軸受溝の外径端部及びそれよりも外径側の領域に、金型の継ぎ目跡が形成されていない流体動圧軸受装置用ハウジング。
  11. スラスト動圧溝の溝底面を含む平面が、底部の内側端面の外径端部まで面一に連続している請求項10の流体動圧軸受装置用ハウジング。
  12. スラスト動圧溝の溝底面が、底部の内側端面の外径端部まで延びている請求項11の流体動圧軸受装置用ハウジング。
  13. スラスト動圧溝の溝底面が、スラスト動圧溝の外径側に設けられた平坦部と面一に連続している請求項11の流体動圧軸受装置用ハウジング。
  14. スラスト動圧溝の溝底面が、スラスト動圧溝の内径側に設けられた平坦部と面一に連続している請求項10〜13何れかの流体動圧軸受装置用ハウジング。
  15. 底部の内側端面の軸心に凹部が形成された請求項10〜14何れかの流体動圧軸受装置用ハウジング。
  16. 底部の内側端面の前記凹部に、射出成形金型の突き出しピンの跡が形成された請求項15の流体動圧軸受装置用ハウジング。
  17. 底部の外側端面の軸心に凹部が形成された請求項10〜16何れかの流体動圧軸受装置用ハウジング。
  18. 底部の外側端面の前記凹部に、射出成形金型のゲートカット跡が形成された請求項17の流体動圧軸受装置用ハウジング。
  19. 前記スラスト動圧溝がスパイラル形状を成した請求項10〜18何れかの流体動圧軸受装置用ハウジング。
  20. 前記スラスト動圧溝がヘリングボーン形状を成した請求項10〜18何れかの流体動圧軸受装置用ハウジング。
  21. 前記スラスト動圧溝がポンプインタイプである請求項10〜20何れかの流体動圧軸受装置用ハウジング。
  22. 前記スラスト動圧溝がポンプアウトタイプである請求項10〜20何れかの流体動圧軸受装置用ハウジング。
  23. 請求項10〜22何れかのハウジングと、ハウジングの側部の内周面に固定された軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入され、軸部及びフランジ部を有する軸部材と、軸部の外周面と軸受スリーブの内周面との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部と、フランジ部の一方の端面と軸受スリーブの端面との間の第1のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材をスラスト方向一方に支持する第1のスラスト軸受部と、フランジ部の他方の端面とハウジングの底部の内側端面との間の第2のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の動圧作用で軸部材をスラスト方向他方に支持する第2のスラスト軸受部とを備えた流体動圧軸受装置。
  24. 軸受スリーブが焼結金属製である請求項23の流体動圧軸受装置。
  25. 軸受スリーブの内周面に、ラジアル軸受隙間の潤滑流体に動圧作用を発生させるラジアル動圧発生部が形成された請求項23又は24の流体動圧軸受装置。
  26. 軸受スリーブの一方の端面に、第1のスラスト軸受隙間の潤滑流体に動圧作用を発生させるスラスト動圧発生部が形成された請求項23〜25何れかの流体動圧軸受装置。
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