JP2010091004A - 流体動圧軸受装置及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸受性能を低下させることなく、且つ、低コストに、軸受スリーブをハウジングの内周面に固定する。
【解決手段】軸受スリーブ体18の内周にコアロッド10を挿入した後、軸受スリーブ体18をハウジング7の内周に圧入する。これにより、軸受スリーブ体18がハウジング7から内径向きの抗力を受け、軸受スリーブ体18の内周面18aがコアロッド10の外周面10aに押し付けられ、コアロッド10の外周面10aに形成された軸方向に沿った凸部の形状が軸受スリーブ体18の内周面18aに転写され、軸受スリーブ体18の内周面18aに軸方向に沿った凹部が形成される。
【選択図】図6
【解決手段】軸受スリーブ体18の内周にコアロッド10を挿入した後、軸受スリーブ体18をハウジング7の内周に圧入する。これにより、軸受スリーブ体18がハウジング7から内径向きの抗力を受け、軸受スリーブ体18の内周面18aがコアロッド10の外周面10aに押し付けられ、コアロッド10の外周面10aに形成された軸方向に沿った凸部の形状が軸受スリーブ体18の内周面18aに転写され、軸受スリーブ体18の内周面18aに軸方向に沿った凹部が形成される。
【選択図】図6
Description
本発明は、軸部材の回転に伴って軸受隙間に形成される流体膜の動圧作用で、軸部材を回転自在に支持する流体動圧軸受装置及びその製造方法に関する。
流体動圧軸受装置は、その高回転精度および静粛性から、情報機器(例えばHDD)の磁気ディスク駆動装置、CD・DVD・ブルーレイディスク等の光ディスク駆動装置、若しくはMD・MO等の光磁気ディスク駆動装置等のスピンドルモータ用、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ用、プロジェクタのカラーホイールモータ用、又は電気機器の冷却等に使用されるファンモータなどの小型モータ用として使用されている。
例えば特許文献1に示されている流体動圧軸受装置は、軸部材と、内周に軸部材を挿入した軸受スリーブと、内周面に軸受スリーブを固定したハウジングとを備える。軸部材が回転すると、軸部材の外周面と軸受スリーブの内周面との間のラジアル軸受隙間に流体膜が形成され、この流体膜の圧力が軸受スリーブの内周面に形成された凹部(動圧溝)の動圧作用により高められ、この動圧作用で軸部材が回転自在に支持される。
上記のような流体動圧軸受装置の組み立ては、例えば、軸受面となる軸受スリーブの内周面を精度良く加工した後、この軸受スリーブをハウジングの内周面に圧入することにより行われる。この圧入時に、軸受スリーブがハウジングから内径向きの抗力を受けるため、軸受スリーブが変形し、内周面に形成した軸受面の面精度(例えば円筒度等)が低下する恐れがある。軸受面の面精度が低下すると、軸受隙間の幅精度の低下、ひいては軸受性能の低下を招くこととなる。
例えば、流体動圧軸受装置の組み立てに際し、軸受スリーブとハウジングとを隙間嵌めの状態で接着すれば、軸受スリーブは抗力を受けないため、軸受スリーブの変形を回避できる。しかし、この場合、軸受スリーブをハウジングに対して高精度に位置決めし、且つ、接着が完了するまでその状態で保持する必要があるため、工程や装置が煩雑になり、組立コストの高騰を招くことになる。
本発明の課題は、軸受性能を低下させることなく、且つ、低コストに、軸受部品(例えば軸受スリーブ)を外側部材(例えばハウジング)の内周面に固定することのできる流体動圧軸受装置及びその製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明は、軸部材と軸受部材との間の軸受隙間に生じる流体膜の動圧作用で軸部材を支持する流体動圧軸受装置を製造するための方法であって、コアロッドを内周に挿入した軸受部品を外側部材の内周面に固定すると同時に、軸受部品の内周面をコアロッドの外周面に押し付けて、該内周面に軸方向に沿った凹部を型成形することを特徴とする。
このように、内周にコアロッドを挿入した軸受部品を外側部材の内周に圧入すると、軸受部品が外側部材から内径向きの抗力を受け、軸受部品の内周面がコアロッドの外周面に押し付けられる。これにより、軸受部品が外側部材に圧入固定されると共に、コアロッドの外周面の形状が軸受部品の内周面に転写される。このとき、コアロッドの外周面を精度良く加工しておくことにより、軸受部品の内周面に軸受面を高精度に形成することができる。このように、軸受部品の軸受面の成形と、軸受部品の外側部材への固定とを同時に行うことにより、軸受面を精度良く加工した状態で軸受部品を外側部材へ固定することができる。また、予めコアロッドの外周面に凸部を形成しておけば、軸受部品の内周面に軸受面を成形すると同時に、該内周面に凹部を型成形することができる。この凸部を軸方向に沿って形成することで、凹部も凸部に倣って軸方向に沿った形状に形成されるため、軸受部品の内周からコアロッドを軸方向に引き抜く際、コアロッドの凸部と軸受部品の凹部との干渉を回避することができる。
外側部材の外周面を拘束しない状態で、外側部材の内周面に軸受部品を圧着固定すれば、外側部材の外周面を拘束するための金型等が不要となり、低コスト化が図られる。この場合、軸受部品の内周面とコアロッドの外周面とを圧着させて凹部を型成形した後、両者が圧着した状態で軸受部品の内周からコアロッドを引き抜く必要があるため、上記のようにコアロッドの凸部を軸方向に沿って形成することにより成形部と凹部との干渉を防止することが特に有効となる。
軸受部品は、例えば多孔質体で形成することができる。多孔質体は無数の内部空孔を有するものであり、この内部空孔に潤滑油等の潤滑流体を含浸させれば、この潤滑油が軸受隙間に逐次供給することができ、潤滑性が高められる。この場合、軸受面に形成される表面開孔が多すぎると、軸受隙間の潤滑油が軸受部品の表面開孔から内部に多量に浸入し、軸受隙間に十分な流体膜が形成されない恐れがある。そこで、軸受部品の内周面に凹部を型成形する際の圧迫力により、この内周面の表面開孔を減じておくと、表面開孔から侵入する潤滑油量を低減して十分な流体膜を形成し、優れた軸受性能を得ることができる。さらに、凹部を型成形した後、軸受部品の内周面にコアロッドの外周面を圧着させながらコアロッドを軸受部品の内周から引き抜くことにより、軸受部品の内周面の表面開孔をさらに減じれば、上記不具合をより一層確実に防止できる。
以上のように、本発明に係る流体動圧軸受装置の製造方法によれば、軸受性能を低下させることなく、且つ、低コストに、軸受部品を外側部材の内周面に固定することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る流体動圧軸受装置1を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する流体動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、流体動圧軸受装置1の外周に取り付けられたブラケット6と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5とを備えている。ステータコイル4は、ブラケット6の外周面に取り付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の内周に取り付けられる。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが複数枚(図示例では2枚)保持される。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が相対回転し、それによって、ディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
図2に示す流体動圧軸受装置1は、外側部材としてのハウジング7と、ハウジング7の内周に配された軸受スリーブ8と、軸受スリーブ8の内周に挿入される軸部材2と、ハウジング7の軸方向一方の開口部に設けられたシール部9と、ハウジング7の軸方向他方の開口部を閉塞する蓋部材10とで構成される。尚、説明の便宜上、軸方向でハウジング7が開口している側を上側、蓋部材10で閉塞されている側を下側として説明を進める。
軸部材2は、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、軸部2aと軸部2aの下端に設けられたフランジ部2bとを備えている。軸部2aの外周面2a1には、他の部分よりも若干小径な逃げ部2a2が形成される。軸部材2は、全体を金属で形成する他、例えばフランジ部2bの全体あるいはその一部(例えば両端面)を樹脂で構成することにより、金属と樹脂のハイブリッド構造とすることもできる。
軸受部品としての軸受スリーブ8は、多孔質体、例えば焼結金属、特に銅を主成分とし、あるいは銅及び鉄を主成分とする焼結金属で形成される。軸受スリーブ8の内周面8a及び下側端面8cは、それぞれラジアル軸受面及びスラスト軸受面として機能する。
軸受スリーブ8の内周面8aには、ラジアル動圧発生部として軸方向に沿った凹部が形成される。本実施形態では、図3に示すように、軸受スリーブ8の内周面8aの円周方向等間隔位置に複数の軸方向溝8a1が軸方向全長に亘って形成される。図示例では、軸方向溝8a1が外径へ向けて先細りの形状(略三角形状)を成している。隣り合う軸方向溝8a1の円周方向間には、円筒面8a2が形成される。軸受スリーブ8の内周面8aは、横断面形状(図3(a)参照)が軸方向で一定となるように形成される。
軸受スリーブ8の下側端面8cには、スラスト動圧発生部として、例えばスパイラル形状の動圧溝8c1が形成される(図示省略)。軸受スリーブ8の外周面8dには、図3(b)に示すように、任意の本数(図示例では4本)の軸方向溝8d1が軸方向全長に亙って形成され、軸受スリーブ8の上側端面8bには、任意の本数(図示例では4本)の径方向溝8b1が形成される。
ハウジング7は、軸方向両側に開口した筒状を成し、例えば樹脂材料で形成される。ハウジング7の樹脂材料としては、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の結晶性樹脂、あるいはポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)等の非晶性樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物が使用可能である。また、上記樹脂組成物に、例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、各種金属粉等の繊維状または粉末状の導電性充填材など、目的に応じて上記ベース樹脂に適量配合しても良い。
ハウジング7の射出材料は上記に限らず、例えば、マグネシウム合金やアルミニウム合金等の低融点金属材料が使用可能である。また、金属紛とバインダーの混合物で射出成形した後、脱脂・焼結するいわゆるMIM成形や、金属材料、例えば真ちゅう等の軟質金属のプレス成形でハウジング7を形成することもできる。
蓋部材10は、例えば金属材料で形成され、ハウジング7の下端開口部に接着、圧入、圧入接着、溶着等の適宜の手段で固定される。蓋部材10の上側端面10aには、例えばスパイラル形状の動圧溝が形成される(図示省略)。
シール部9は、例えば樹脂材料で環状に形成され、内周面9aが下方へ向けて漸次縮径したテーパ状に形成される。このテーパ状内周面9aと軸部2aの円筒面状外周面2a1との間に、下方へ向けて半径方向寸法を漸次縮小した楔状のシール空間Sを形成し、このシール空間Sの毛細管力で潤滑油を保持する毛細管シールを構成する。シール空間Sの容積は、軸受装置の使用温度範囲内において、軸受装置の内部に保持された潤滑油の熱膨張量よりも大きくなるように設定され、これにより、軸受装置の使用温度範囲内では、潤滑油がシール空間Sから漏れ出すことはなく、油面が常時シール空間S内に保持される。
軸部材2が回転すると、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の外周面2a1との間の隙間のうち、軸部2aの逃げ部2a2の軸方向両側の領域に、ラジアル軸受隙間が形成される。ラジアル軸受隙間は、図3(a)に示すように、軸受スリーブ8の内周面8aの軸方向溝8a1と軸部材2の外周面2a1との間に形成された比較的隙間幅の大きい大隙間部A1と、軸受スリーブ8の内周面8aの円筒面8a2と軸部材2の外周面2a1との間に形成された比較的隙間幅の小さい小隙間部A2とを有する。そして、軸部材2の回転に伴って、ラジアル軸受隙間の大隙間部A1の潤滑油が小隙間部A2に押込まれることにより、潤滑油の圧力が高められる。この潤滑油の動圧作用により、軸部材2の軸部2aをラジアル方向に回転自在に非接触支持するラジアル軸受部R1、R2が構成される(図2参照)。
これと同時に、軸受スリーブ8の下側端面8cと軸部材2のフランジ部2bの上側端面2b1との間、及び蓋部材10の上側端面10aと軸部材のフランジ部2bの下側端面2b2との間にそれぞれスラスト軸受隙間が形成される。そして、軸受スリーブ8の下側端面8cの動圧溝、及び蓋部材10の上側端面10aの動圧溝が、上記各スラスト軸受隙間の潤滑油に動圧作用を発生させることにより、軸部材2のフランジ部2bを両スラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部T1及び第2スラスト軸受部T2が構成される(図2参照)。
以下、上記の流体動圧軸受装置1の製造方法、特に軸受スリーブ8とハウジング77との固定方法の一例を示す。尚、図4〜7では、理解の容易化のために、コアロッドの外周面の凸部の高さや、軸受スリーブの内周面の凹部の深さを誇張して示している。
まず、銅を主成分とする混合金属粉末を圧粉成形した後、焼結することにより、およそ完成品の形状を成した軸受スリーブ8(以下、スリーブ体18と言う)を成形する(図4参照)。このとき、スリーブ体18の内周面18aは、動圧発生部のない円筒面状を成し(図5(b)参照)、図3に示す完成品の内周面8aの円筒面8a2よりも僅かに大径に形成される。また、スリーブ体18の外周面18dは、ハウジング7の内周面7aよりも、圧入代の分だけ大径に形成される。
上記のスリーブ体18を、図4に示す装置を用いてハウジング7の内周面7aに圧入する。この装置は、コアロッド10と、上パンチ11と、下パンチ12とを有する。コアロッド10は、例えばSUS鋼で形成され、外周面10aには軸受スリーブ8の内周面8aの凹部8a1を成形するための凸部10a1が軸方向に沿って設けられる。図示例の凸部10a1は、横断面で外径へ向けて先細りの略三角形状を成し(図5(a)参照)、コアロッド10の軸方向全長に亘って延びている。凸部10a1の円周方向間には円筒面10a2が設けられる。この凸部10a1及び円筒面10a2が、それぞれ軸受スリーブの内周面8aの軸方向溝8a1及び円筒面8a2を成形する成形部となる。コアロッド10の凸部10a1の先端部における外径寸法D1は、スリーブ体18の内径寸法Rよりも大きく、コアロッド10の円筒面10a2における外径寸法D2は、スリーブ体18の内径寸法Rよりも小さい(D2<R<D1)。
上記のようなコアロッド10を、スリーブ体18の内周に挿入する(図6参照)。このとき、コアロッド10の凸部10a1における外径寸法D1、円筒面10a2における外径寸法D2、及びスリーブ体18の内径寸法Rが、上記の関係(D2<R<D1)を成しているため、コアロッド10の凸部10a1の外径部分がスリーブ体18の内周面18aに圧入されると共に、コアロッド10の円筒面10a2とスリーブ体18の内周面18aとの間に径方向隙間δが形成される(図7参照)。コアロッド10の凸部10a1が、外径へ向けて先細りの形状(尖端形状)をなしていることにより、スリーブ体18の内周面18aに圧入される凸部10a1の外径部分の円周方向寸法を比較的小さくすることができるため、容易に圧入することができる。
こうして内周にコアロッド10を挿入したスリーブ体18を、ハウジング7の内周面7aに圧入する(図8参照)。この圧入により、スリーブ体18がハウジング7の内周面7aに圧着固定されると共に、スリーブ体18がハウジング7から内径向きの抗力(図8中白抜き矢印で示す)を受けて変形し、スリーブ体18の内周面18aがコアロッド10の外周面10aに押し付けられ、スリーブ体18の内周面18a(軸受スリーブ8の内周面8a)にラジアル動圧発生部が成形される。詳しくは、コアロッド10の凸部10a1で軸受スリーブ8の凹部8a1が成形されると共に、コアロッド10の円筒面10a2で軸受スリーブ8の円筒面8a2が成形される。このとき、スリーブ体18の内周面18a(凸部8a1及び円筒面8a2)が、コアロッド10の外周面10aに十分な力で押し付けられるように、ハウジング7とスリーブ体18との圧入代や、コアロッド10の外径寸法D1及びD2、及びスリーブ体18内径寸法Rを設定する。このように、スリーブ体18の内周面18aをコアロッド10の外周面10aに押し付けることにより、内周面18aの表面開孔を減じることができる。また、上記のように、コアロッド10によるラジアル動圧発生部の型成形を、コアロッド10の凸部10a1の外径尖端部分をスリーブ体18内周へ圧入することによる第1段階(図6及び図7参照)と、スリーブ体18をハウジング7内周への圧入することによる第2段階とに分けて行うことにより、動圧発生部が確実に型成形され、成形精度の向上が図られる。尚、上記の圧入工程において上パンチ11及び下パンチ12はスリーブ体18を積極的に圧縮しておらず、上パンチ及び下パンチ12をハウジング7の内周面7aに嵌合させることで、コアロッド10及びスリーブ体18のハウジング7に対する芯出しを行うと共に、ハウジング7への圧入に伴うスリーブ体18の軸方向寸法の増大を規制することで、スリーブ体18の軸方向寸法及び両端面の面精度を高めている。
その後、スリーブ体18(軸受スリーブ8)の内周からコアロッド10を引き抜いて、ハウジング7及び軸受スリーブ8の一体品とコアロッド10とを分離する(図9参照)。このとき、軸受スリーブ8の内周面8aとコアロッド10の外周面10a、詳しくは、軸受スリーブ8の凹部8a1及び円筒面8a2と、コアロッド10の凸部10a1及び円筒面10a2とが圧着しているが、コアロッド10の凸部10a1が軸方向に沿って形成されていることにより、すなわち、コアロッド10の外周面10aの横断面形状が軸方向で一定であることにより、コアロッド10の凸部10a1と軸受スリーブ8の凹部8a1とが干渉することなく、コアロッド10を軸受スリーブ8から引き抜くことができる。このように、コアロッド10の外周面10a(凸部10a1及び円筒面10a2)と軸受スリーブ8の内周面(凹部8a1と円筒面8a2)とを圧着させた状態で、コアロッド10を軸受スリーブ8から引き抜くことにより、軸受スリーブ8の内周面8aの表面開孔をさらに減じることができる。
このように、軸受スリーブ8とハウジング7との圧入と同時に、軸受面となる軸受スリーブ8の内周面8aを成形することにより、圧入力で軸受面が変形する事態を回避することができる。また、このように軸受スリーブ8及びハウジング7の固定と軸受面の成形とを同一工程で行うことにより、これらを別途行う場合と比べて工程数を削減できることができ、低コスト化が図られる。
また、上記の方法では、ハウジング7の外周面7bを拘束しない状態で、ハウジング7の内周に軸受スリーブ8(スリーブ体18)を圧入している。すなわち、ハウジング7は、外周から拘束しなくても軸受スリーブ8の圧入に耐え得る程度の強度及び剛性を有している。これにより、ハウジング7の外周面7bを拘束する金型等が不要となり、製造コストの低減が図られる。これに対し、ハウジングの外周面を金型で拘束した状態で軸受スリーブを圧入すると、軸受スリーブが固定されたハウジングを金型から離型する際、ハウジング及び軸受スリーブにスプリングバックが生じ、軸受スリーブの内周面がコアロッドの外周面から剥離して両者の間に径方向隙間が形成されることとなる。この場合、軸受スリーブの表面開孔の低減(目潰し)を行うことはできなくなるため、別途工程が必要となり、高コスト化を招く。
こうして固定された軸受スリーブ8及びハウジング7の内周に軸部材2を挿入した後、ハウジング7の下端開口部に蓋部材10を固定すると共に、ハウジング7の上端開口部にシール部9を固定する。そして、ハウジング7の内部空間に潤滑流体として例えば潤滑油を注入し、軸受スリーブ8の内部空孔を含めた軸受内部空間に潤滑油を満たす。このとき、油面はシール空間S内に保持される。以上により、流体動圧軸受装置1が完成する。
この流体動圧軸受装置1は、上記のように、軸受スリーブ8の内周面8aをコアロッド10で成形する際に、内周面8aの表面開孔が減じられている。従って、流体動圧軸受装置の作動時に、ラジアル軸受隙間における圧力の高められた流体膜(油膜)が軸受スリーブ8の表面開孔から内部に抜ける、いわゆる「動圧抜け」を抑えることができ、優れた軸受性能を発揮することができる。
本発明は、上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明する。尚、以下の説明において、上記実施形態と同様の構成、機能を有する部位には、同一の符号を付して説明を省略する。
上記の実施形態では、軸受スリーブ8(スリーブ体18)をハウジング7の内周面7aに圧入することで、軸受スリーブ8の内周面8aに動圧発生部(凹部8a1)を成形したが、これに限られず、例えば次のようにしてもよい。まず、内周にコアロッド10を挿入したスリーブ体18を、ハウジング7の内周に隙間嵌めの状態で挿入する(スリーブ体18の外周面18dとハウジング7の内周面7aとの間に微小な径方向隙間が形成されている)。この状態から上パンチ11及び下パンチ12でスリーブ体18を軸方向両側から圧縮することにより、スリーブ体18が径方向に拡張し、これによりスリーブ体18の外周面18dがハウジング7の内周面7aに圧着固定されると共に、スリーブ体18の内周面18aがコアロッド10の外周面10aに押し付けられ、動圧発生部が成形される。
また、上記の実施形態では、軸受スリーブ8の内周面8aに形成される動圧発生部が、横断面略三角形状の凹部8a1で構成されているが、これに限られない。例えば、動圧発生部として、図10に示すような底部が円弧状の溝8a3や、図11に示すような断面矩形の溝8a4を形成してもよい。
また、図12に示すような多円弧軸受でラジアル軸受部R1、R2を構成することもできる。この例では、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域が、3つの円弧面8a6で構成されている(いわゆる3円弧軸受)。これらの円弧面8a6は、ラジアル動圧発生部として機能し、上記実施形態と同様に、軸受スリーブ8をハウジング7に圧入する際に、コアロッドの外周面で成形することができる。各円弧面8a6の曲率中心は、それぞれ、軸受スリーブ8(軸部2a)の軸中心Oから等距離オフセットされている。各円弧面8a6で区画される各領域において、ラジアル軸受隙間は、円周方向の両方向に対してそれぞれ楔状に漸次縮小した形状を有している。すなわち、軸受スリーブ8の内周面8aには、各円弧面8a6の円周方向中央部から円弧面8a6同士の接続部へ向けて徐々に拡径した凹部が軸方向に沿って形成され、これによりラジアル軸受隙間に大隙間部A1及び小隙間部A2が形成される。軸部2aが回転すると、その回転の方向に応じて、ラジアル軸受隙間内の潤滑流体が楔状に縮小した小隙間部A2側に押し込まれて、その圧力が上昇する。このような潤滑流体の動圧作用によって、軸受スリーブ8と軸部2aとが非接触支持される。尚、3つの円弧面8a6の境界部に、分離溝と称される一段深い軸方向溝を形成しても良い。
図13に、他の多円弧軸受でラジアル軸受部R1、R2を構成した場合を示す。この例においても、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域が、3つの円弧面8a7で構成されているが(いわゆる3円弧軸受)、各円弧面8a7で区画される各領域において、ラジアル軸受隙間は、円周方向の一方向に対してそれぞれ楔状に漸次縮小した形状を有している。このような構成の多円弧軸受は、テーパ軸受と称されることもある。すなわち、軸受スリーブ8の内周面8aには、円周方向一方に向けて徐々に拡径した凹部が軸方向に沿って形成され、これによりラジアル軸受隙間に大隙間部A1及び小隙間部A2が形成される。3つの円弧面8a7の境界部には、分離溝と称される、一段深い軸方向溝8a8が形成されている。円弧面8a7及び軸方向溝8a8を含み、軸受スリーブ8の内周面8aは、上記の実施形態と同様に、軸受スリーブ8をハウジング7に圧入する際に、コアロッドの外周面で成形することができる。軸部2aが所定方向に回転すると、ラジアル軸受隙間内の潤滑流体が楔状に縮小した小隙間部A1側に押し込まれて、その圧力が上昇する。このような潤滑流体の動圧作用によって、軸受スリーブ8と軸部2aとが非接触支持される。
図14に、さらに他の多円弧軸受でラジアル軸受部R1、R2を構成した場合を示す。この例では、図13に示す構成において、3つの円弧面8a7の最小隙間A3側の所定領域θが、それぞれ、軸受スリーブ8(軸部2a)の軸中心Oを曲率中心とする同心の円弧で構成されている。従って、各所定領域θにおいて、ラジアル軸受隙間(最小隙間)は一定になる。このような構成の多円弧軸受は、テーパ・フラット軸受と称されることもある。
以上の各例における多円弧軸受は、いわゆる3円弧軸受であるが、これに限らず、いわゆる4円弧軸受、5円弧軸受、さらに6円弧以上の数の円弧面で構成された多円弧軸受を採用しても良い。また、ラジアル軸受部は、上記実施形態のように2つのラジアル軸受部R1、R2を軸方向に離隔して設ける他、軸部材2の逃げ部2a2を省略して外周面2a1を円筒面状とし、軸受スリーブ8の内周面8aの軸方向全域に亘るラジアル軸受部を設けても良い。
1 流体動圧軸受装置
2 軸部材
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
8a 内周面
8a1 凹部(動圧発生部)
8a2 円筒面
9 シール部
10 コアロッド
10a 外周面
10a1 凸部
10a2 円筒面
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
S シール空間
2 軸部材
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
8a 内周面
8a1 凹部(動圧発生部)
8a2 円筒面
9 シール部
10 コアロッド
10a 外周面
10a1 凸部
10a2 円筒面
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
S シール空間
Claims (6)
- 軸部材と、内周に軸部材を挿入した軸受部材と、内周面に軸受部材が固定された外側部材とを備え、軸部材の外周面と軸受部材の内周面との間の軸受隙間に生じる流体膜の動圧作用で軸部材を支持する流体動圧軸受装置であって、
軸受部品を外側部材の内周面に圧着固定すると同時に、軸受部品の内周面に軸方向に沿った凹部が型成形された流体動圧軸受装置。 - 軸部材と軸受部材との間の軸受隙間に生じる流体膜の動圧作用で軸部材を支持する流体動圧軸受装置を製造するための方法であって、
コアロッドの外周面に凸部を軸方向に沿って形成し、該コアロッドを内周に挿入した軸受部品を外側部材の内周面に圧入することにより、軸受部品を外側部材の内周面に圧着固定すると同時に、軸受部品の内周面をコアロッドの外周面の凸部に押し付けて、該内周面に軸方向に沿った凹部を型成形することを特徴とする流体動圧軸受装置の製造方法。 - 外側部材の外周面を拘束しない状態で、外側部材の内周面に軸受部品を圧着固定する請求項2記載の流体動圧軸受装置の製造方法。
- 軸受部品を多孔質体で形成した請求項2記載の流体動圧軸受装置の製造方法。
- 凹部の成形と同時に、軸受部品の内周面の表面開孔を減じる請求項4記載の流体動圧軸受装置の製造方法。
- 凹部を型成形した後、軸受部品の内周面にコアロッドの外周面を圧着させながらコアロッドを軸受部品の内周から引き抜くことにより、軸受部品の内周面の表面開孔をさらに減じる請求項5記載の流体動圧軸受装置の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008261792A JP2010091004A (ja) | 2008-10-08 | 2008-10-08 | 流体動圧軸受装置及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008261792A JP2010091004A (ja) | 2008-10-08 | 2008-10-08 | 流体動圧軸受装置及びその製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2010091004A true JP2010091004A (ja) | 2010-04-22 |
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ID=42253931
Family Applications (1)
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JP2008261792A Pending JP2010091004A (ja) | 2008-10-08 | 2008-10-08 | 流体動圧軸受装置及びその製造方法 |
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JP (1) | JP2010091004A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015233382A (ja) * | 2014-06-10 | 2015-12-24 | Ntn株式会社 | 流体動圧軸受装置及びこれを備えたモータ、並びに流体動圧軸受装置の樹脂部品の製造方法 |
JP2019504974A (ja) * | 2016-02-02 | 2019-02-21 | ボーグワーナー インコーポレーテッド | 軸受及びその製造並びに使用方法 |
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2008
- 2008-10-08 JP JP2008261792A patent/JP2010091004A/ja active Pending
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