JP2008069805A - 動圧軸受装置 - Google Patents

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栗村  哲弥
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Abstract

【課題】スラスト軸受隙間を介して対向する面同士の接触摺動を回避し、安定した回転精度及びスラスト方向の支持力を維持する
【解決手段】スラスト軸受隙間Tの内径側に、スラスト軸受隙間Tの隙間幅Mよりも小さい隙間幅Nを有する微小隙間Cを形成する。これにより、スラスト軸受隙間Tの潤滑油に動圧作用が十分に発現されない場合は、この微小隙間Cを介して対向する面、すなわちディスクハブ10(鍔状部)の円盤部10aの第2端面10a12と軸受スリーブ8の上側端面8cとが接触する。従って、スラスト軸受隙間Tを介して対向する面、すなわちディスクハブ10の第1端面10a11とハウジング9の上端面9aとの接触摺動が防止されるため、これらの面の摩耗が抑えられ、回転精度及びスラスト方向の支持力を維持することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、軸受隙間に生じる潤滑膜の動圧作用で、軸部材を回転自在に支持する動圧軸受装置に関する。
この種の動圧軸受装置は、情報機器、例えばHDD等の磁気ディスク駆動装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク駆動装置、MD、MO等の光磁気ディスク駆動装置等のスピンドルモータ用、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイール、あるいは電気機器、例えばファンモータなどの小型モータ用として好適に使用可能である。
例えば、特許文献1に示されている動圧軸受装置は、軸部材と、軸部材の外径方向へ突出して設けたディスクハブと、内周に軸部材を挿入した軸受スリーブと、軸受スリーブを保持するハウジングとを備える。ディスクハブの端面及びハウジングの端面の何れか一方には、これらの面の間に形成されるスラスト軸受隙間に動圧作用を発生させる動圧発生部が形成され、この動圧作用で軸部材及びディスクハブが相対回転自在に支持される。
特開2005−337342号公報
この動圧軸受装置では、軸受スリーブとディスクハブとの接触を避けるため、軸受スリーブの端面はハウジングの端面よりも軸方向で軸受内部側に配されている。このため、スラスト軸受隙間における潤滑油の動圧作用が十分に発現されない軸受装置の起動、停止時等の低速回転時には、スラスト軸受隙間を介して対向するディスクハブの端面とハウジングの端面とが接触摺動する。この接触摺動によりスラスト軸受隙間を介して対向する面が摩耗すると、スラスト軸受隙間の隙間幅の精度が低下し、スラスト方向の支持力が低下する恐れがある。特に、この面に形成された動圧発生部が摩耗すると、回転精度やスラスト方向の支持力が大幅に低下する恐れがある。
本発明の課題は、スラスト軸受隙間を介して対向する面同士の接触摺動を回避し、これらの面の摩耗を防止することにより、安定した回転精度及びスラスト方向の支持力を維持できる動圧軸受装置を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明は、回転側の部材と、固定側の部材とを備え、回転側の部材と固定側の部材との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で回転側の部材をスラスト方向に支持する動圧軸受装置であって、回転側の部材と固定側の部材との間に、前記スラスト軸受隙間よりも隙間幅の小さいスラスト方向の微小隙間を形成したことを特徴とする。
このように、本発明の動圧軸受装置は、回転側の部材と固定側の部材の間に、スラスト軸受隙間よりも隙間幅の小さいスラスト方向の微小隙間を形成した。例えば軸受装置の起動、停止時等の低速回転時には、この微小隙間を介して対向する面が接触することにより、スラスト軸受隙間を介して対向する面同士の接触が防止される。これにより、回転側の部材及び固定側の部材のスラスト軸受隙間に面する部分の摩耗が抑えられるため、回転精度やスラスト方向の支持力を維持することができる。
この微小隙間は、スラスト軸受隙間の内径側に設けることが好ましい。これにより、微小隙間を介して対向する面、すなわち軸受装置の低速回転時に接触摺動する面の周速を抑えることができるため、この面の接触摺動による摩耗をさらに抑えることができる。
この微小隙間を介して対向する面の何れか一方を含油性の材料で形成すると、微小隙間に逐次潤滑油が供給されるため、接触摺動による摩耗をさらに抑えることができる。
回転側の部材及び固定側の部材は、例えば、一方を、軸部材と、軸部材に外径方向へ突出させて設けた鍔状部とを備えた構成とし、他方を、内周に軸部材を挿入した軸受スリーブと、内周に軸受スリーブを保持するハウジングとを備えた構成とすることができる。この軸受スリーブの端面の一部を突出させ、この突出部と鍔状部との間に前記微小隙間を形成すると、軸受スリーブの端面全体で接触摺動する場合と比べ、接触摺動する部分の面積が減少するため、回転トルクを低減させることができる。あるいは、鍔状部の端面の一部を突出させ、この突出部と軸受スリーブの端面の一部領域との間に前記微小隙間を形成した場合にも、上記と同様の効果が得られる。
以上のように、本発明によると、スラスト軸受隙間を介して対向する面同士の接触摺動を回避し、これらの面の摩耗を防止することにより、安定した回転精度及びスラスト方向の支持力を維持できる動圧軸受装置が得られる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明が適用される動圧軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2およびディスクハブ10を相対回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、ブラケット6とを備えている。ステータコイル4はブラケット6の外周側内周面に取付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ10の外径側に設けられたヨーク12に固定されている。動圧軸受装置1は、ブラケット6の内周に固定される。また、ディスクハブ10には、図示は省略するが、情報記録媒体としてのディスクが一又は複数枚保持される。このように構成されたスピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する励磁力でロータマグネット5が回転し、これに伴って、ディスクハブ10およびディスクハブ10に保持されたディスクが軸部材2と一体に回転する。
図2は、動圧軸受装置1を示している。この動圧軸受装置1は、回転側の部材3と固定側の部材7とからなる。回転側の部材3は、軸部材2と、軸部材2外径へ突出して設けられた鍔状部としてのディスクハブ10とを備え、固定側の部材7は、軸受スリーブ8と、ハウジング9と、ハウジング9の一端を閉口する蓋部材11とを備える。なお、説明の便宜上、軸方向両端に形成されるハウジング9の開口部のうち、蓋部材11で閉口される側を下側、閉口側と反対の側を上側として以下説明する。
軸部材2の外周面2aと軸受スリーブ8の内周面8aとの間には、ラジアル軸受部R1、R2が軸方向に離隔して設けられる。また、軸受スリーブ8の下側端面8bと軸部材2のフランジ部2bの上側端面2b1との間に第1スラスト軸受部T1が設けられると共に、ハウジング9の上端面9aとディスクハブ10の円盤部10aの下側端面10a1との間に第2スラスト軸受部T2が設けられる。
軸受スリーブ8は、例えば銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成され、ハウジング9の内周面9cに、例えば接着(ルーズ接着を含む)、圧入(圧入接着を含む)、溶着(超音波溶着を含む)等、適宜の手段で固定される。
軸受スリーブ8の内周面8aの全面又は一部円筒領域には、ラジアル動圧発生部として、例えば図3に示すように、複数の動圧溝8a1、8a2をヘリングボーン形状に配列した領域が軸方向に離隔して形成される。また、軸受スリーブ8の下側端面8bの全面又は一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図4に示すように、複数の動圧溝8b1をスパイラル状に配列した領域が形成される。さらに、軸受スリーブ8の外周面8dには、軸方向溝8d1が形成される。
ハウジング9は、金属材料又は樹脂材料で略円筒状に形成される。この実施形態では、ハウジング9は、その軸方向両端を開口した形状をなし、かつ一端側を蓋部材11で封口している。他端側の端面(上端面)9aの全面または一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図5に示すように、複数の動圧溝9a1をスパイラル形状に配列した領域が形成され、動圧溝9a1の間の領域には背部9a10が形成される。ハウジング9の上方部外周には、上方(封口側とは反対の側)に向かって漸次拡径する第1テーパ面9bが形成される。ハウジング9の下方部外周には円筒面9eが形成され、この円筒面9eがブラケット6の内周に、接着、圧入、溶着等の手段で固定される。
ハウジング9の下端側を封口する蓋部材11は、金属あるいは樹脂で形成され、ハウジング9の下端内周側に設けられた段部9dに、接着、圧入、溶着等の手段で固定される。
軸部材2は、この実施形態では金属製で、その下端には、抜止めとしてフランジ部2bが別体に設けられる。フランジ部2bは金属製で、例えばねじ結合等の手段により軸部材2に固定される。軸部材2の上端には凹部(この実施形態では環状溝)2cが形成されており、軸部材2をインサート部品とする樹脂の射出成形でディスクハブ10を形成する場合、上記凹部2cがディスクハブ10に対する軸部材2の抜止めとして作用する。
ディスクハブ10は、ハウジング9の開口側(上側)を覆う円盤部10aと、円盤部10aの外周部から軸方向下方に延びる筒状部10bと、筒状部10bから外径側に突出する鍔部10cおよび鍔部10cの上端に形成されるディスク搭載面10dとを備える。図示されていないディスクは、円盤部10aの外周に外嵌され、ディスク搭載面10dに載置される。そして、図示しない適当な保持手段(クランパなど)によってディスクがディスクハブ10に保持される。
上記構成のディスクハブ10は、例えば液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の結晶性樹脂や、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)等の非晶性樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物の射出成形で成形される。この実施形態では、ディスクハブ10は、軸部材2をインサート部品として射出成形される。また、炭素繊維やガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、各種金属粉等の繊維状または粉末状の導電性充填材を、目的に応じて上記ベース樹脂に適量配合したものを使用することもできる。
円盤部10aの下側端面10a1は、ハウジング9の上端面9aの動圧溝9a1形成領域とスラスト方向で対向する第1端面10a11と、第1端面10a11の内径側に軸方向の段差を介して形成され、第1端面10a11よりも軸方向下方に設けられた第2端面10a12とを備える。これにより、ディスクハブ10の円盤部10aの内径部が外径部よりも厚肉に形成される。この部分を厚肉に形成することで、軸部材2との固定強度が高められ、ディスクハブ10の抜去力の向上を図ることができる。
回転側の部材3の回転時には、ディスクハブ10の円盤部10aの第1端面10a11とハウジング9の上端面9aとの間に第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間Tが形成されると共に、ディスクハブ10の円盤部10aの第2端面10a12と軸受スリーブ8の上側端面8cとの間に微小隙間Cが形成される。このとき、図2(b)に示すように、微小隙間Cの隙間幅Nが、第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間Tの隙間幅Mよりも小さくなる(M>N)ように、第1端面10a11と第2端面10a12との段差(軸方向距離)が設定される。
筒状部10bの内周面のうち、ハウジング9の外周上端に設けられた第1テーパ面9bと対向する部分には、上方へ向けて拡径した第2テーパ面10b1が形成される。この第2テーパ面10b1の軸方向に対するテーパ角は、第1テーパ面9bのテーパ角よりも小さく設定される。これにより、第1テーパ面9bと第2テーパ面10b1との間に、径方向寸法が上方に向かって漸次縮小するテーパ状のシール空間Sが形成される。このシール空間Sは、回転側の部材3の回転時、スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間の外径側と連通する。後述する潤滑油を動圧軸受装置1内部に充満させた状態では、潤滑油は毛細管力によりシール空間Sの幅狭側に引き込まれるため、油面は常時シール空間Sの範囲内に保持される。また、シール空間Sの外周部が第2テーパ面10b1で形成されることで、シール空間S内の潤滑油に外径方向の遠心力が加わった際、テーパ面10b1で上方へ向けて押し込まれるため、より確実に潤滑油をシール空間Sの内部に保持することができる。
上記の構成を有する動圧軸受装置1の内部空間に潤滑油が充満され、その油面はシール空間S内に保持される。充満される潤滑油としては、種々のものが使用可能であるが、HDD等のディスク駆動装置用の動圧軸受装置に提供される潤滑油には、その使用時あるいは輸送時における温度変化を考慮して、低蒸発率及び低粘度性に優れたエステル系潤滑油、例えばジオクチルセバケート(DOS)、ジオクチルアゼレート(DOZ)等を基油にした潤滑油が好適に使用可能である。
上記構成の動圧軸受装置1において、軸部材2の回転時、軸受スリーブ8の内周面8aに形成された動圧溝8a1、8a2形成領域は、対向する軸部材2の外周面2aとの間にラジアル軸受隙間を形成する。そして、軸部材2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間の潤滑油が動圧溝8a1、8a2の軸方向中心側に押し込まれ、その圧力が上昇する。このように、第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2に形成された動圧溝8a1、8a2によって生じる潤滑油の動圧作用によって、回転側の部材3をラジアル方向に非接触支持する。
これと同時に、軸受スリーブ8の下側端面8bの動圧溝8b1形成領域と、これに対向するフランジ部2bの上側端面2b1との間にスラスト軸受隙間が形成されると共に、ハウジング9の上端面9aの動圧溝9a1形成領域と、これに対向するディスクハブ10の下側端面10a1の第1端面10a11との間にスラスト軸受隙間Tが形成される。これらのスラスト軸受隙間の潤滑油膜の圧力が、第1スラスト軸受部T1及び第2スラスト軸受部T2に設けられた動圧溝8b1、9a1の動圧作用により高められ、回転側の部材3をスラスト方向に非接触支持する。
軸受装置の起動、停止時等における低速回転時には、上記のような動圧溝による動圧作用が十分に発現されない。このため、例えば動圧軸受装置1を図2に示す上下方向で使用する場合、低速回転時には、重力により、ディスクハブ10の円盤部10aの第1端面10a11とハウジング9の上端面9aとが接近し、スラスト軸受隙間Tの隙間幅が0に近づく。本発明では、上記のように、ディスクハブ10の円盤部10aの下側端面10a1に形成した第2端面10a12と、軸受スリーブ8の上側端面8cとの間の微小隙間Cの隙間幅Nを、第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間Tの隙間幅Mよりも小さく設定している。これにより、動圧作用が十分に発現されない低速回転時には、微小隙間Cを介して対向するディスクハブ10の第2端面10a12と軸受スリーブ8の上側端面8cとが接触することにより、スラスト軸受隙間Tを介して対向するディスクハブ10の第1端面10a11とハウジング9の上端面9aとの接触が防止される。従って、ハウジング9の上端面9a、特に動圧溝9a1間の背部9a10の摩耗を防止することができるため、スラスト方向の支持力を維持することができる。
また、微小隙間Cはスラスト軸受隙間Tよりも内径側にあるため、微小隙間Cを介して対向する面同士の接触摺動は、スラスト軸受隙間Tを介して対向する面同士の接触摺動よりも周速が遅くなる。これにより、微小隙間Cを介して対向するディスクハブ10の端面10a1及び軸受スリーブ8の上側端面8cの摩耗を抑えることができる。さらに、軸受スリーブ8が含油性の材料である焼結含油金属で形成されるため、軸受スリーブ8に含浸された潤滑油が摺動部に逐次供給されることにより摺動面の潤滑性が向上し、これらの面の摩耗をより効果的に抑えることができる。
ところで、第1端面10a11と第2端面10a12との段差(軸方向距離)は、上記のようにスラスト軸受隙間Tの隙間幅Mが微小隙間Cの隙間幅Nよりも大きくなるように設定すると共に、スラスト軸受隙間Tにおける動圧作用が十分に発現される範囲内で設定する必要がある。この段差は、例えばハウジング9の上端面9a(詳しくは動圧溝9a1の背部9a10)と、軸受スリーブ8の上側端面8cとの軸方向距離よりも、極僅かだけ小さく設定すると良い。これにより、第2スラスト軸受部によるスラスト方向の支持力(ディスクハブ10の浮上力)が十分に得られるため、高速回転時に微小隙間Cを介して対向する面同士が接触摺動することを防止できる。
尚、この実施形態では、軸受スリーブ8の外周面8dに軸方向溝8d1が形成される。これにより、軸受内部に充満された潤滑油を循環させることが可能となり、局所的な負圧の発生に伴う気泡の生成等を回避できる。具体的には、ディスクハブ10の円盤部10aの第2端面10a12と軸受スリーブ8の上側端面8cとの間の隙間、第1、第2ラジアル軸受部R1、R2のラジアル軸受隙間、および第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間にそれぞれ充填された潤滑油が循環可能となる。この実施形態では、軸受スリーブ8の内周面8aに形成された動圧溝8a1が軸方向で上下非対称に形成されることで、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間の潤滑油を下方へ押し込み、軸受内部の潤滑油を強制的に循環させる構成となっている(図3を参照)。このような強制的な循環が特に必要なければ、ラジアル軸受面の動圧溝を軸方向で上下対称に形成してもよい。
本発明は、上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明する。尚、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成、機能を有する箇所には同一符号を付し、説明を省略する。
上記の実施形態では、ディスクハブ10の円盤部10aの下側端面10a1に、段差を介して第1端面10a11及び第2端面10a12を形成し、この第2端面10a12と軸受スリーブ8の上側端面8cとの間に微小隙間Cを形成したが、これに限られない。例えば、図6に示すように、ディスクハブ10の円盤部10aの下側端面10a1を段差のない平面状に形成する一方で、軸受スリーブ8の上側端面8cをハウジング9の上端面9aよりも軸方向上方に配することにより、円盤部10aの下側端面10a1と軸受スリーブ8の上側端面8cとの間に微小隙間Cを形成することもできる。これにより、微小隙間Cの隙間幅Nが、第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間Tの隙間幅Mよりも小さく設定される。
あるいは、図7に示すように、軸受スリーブ8の上側端面8cの一部を上方へ突出させ、この突出部8c1とディスクハブ10の円盤部10aの下側端面10a1との間に微小隙間Cを形成することもできる。この微小隙間Cの隙間幅Nも、上記の実施形態と同様に、スラスト軸受隙間Tの隙間幅Mよりも小さくなるように設定される。この例では、突出部8c1は、軸受スリーブ8の上側端面8cの径方向中央部で、環状に形成される。これによると、上記の実施形態のように軸受装置の低速回転時に軸受スリーブ8の上側端面8c全体が接触摺動する場合と比べ、接触摺動する部分の面積が小さいため、回転トルクを抑えることができる。
また、突出部8c1の形状は特に限定されず、例えば図8に示すように、軸受スリーブ8の上側端面8cに放射状に形成してもよい。この場合、回転側の部材3が回転すると、スラスト軸受隙間Tの潤滑油だけでなく、突出部8c1とディスクハブ10の円盤部10aの下側端面10a1との間に形成される微小隙間Cの潤滑油にも動圧作用が発生する。この動圧により、例えば軸受装置の起動時におけるディスクハブ10の浮上が早期化され、微小隙間Cを介して対向する面同士の接触摺動を低減することができる。
あるいは、図9に示すように、ディスクハブ10の円盤部10aの下側端面10a1の一部を下方へ突出させ、この突出部10a13と軸受スリーブ8の上側端面8cの一部領域との間に微小隙間Cを形成することもできる。この微小隙間Cの隙間幅Nも、上記の実施形態と同様に、スラスト軸受隙間Tの隙間幅Mよりも小さくなるように設定される。
また、動圧軸受装置1の構成も上記に限定されない。例えば、上記の実施形態では、スラスト軸受部が2箇所に設けられているが、これに限られない。例えば、図10に示す動圧軸受装置21では、スラスト軸受部Tが一箇所、すなわちディスクハブ10の円盤部10aの下側端面10a1とハウジング9の上端面9aとの間に設けられる。また、上記の実施形態では、軸部材2の下端に設けられたフランジ部2bで、軸部材2の抜け止めを行っていたが、本実施形態では、ディスクハブ10の内周に抜け止め部材15を固定し、この抜け止め部材15とハウジングとが軸方向で係合することにより、軸部材2及びディスクハブ10の抜け止めが行われる。この抜け止め部材15は、例えば金属材料のプレス加工で断面略L字型に形成され、ディスクハブ10の筒状部10bの内周面の上端に設けられた段部10eに固定される。抜け止め部材15の内周面15aは、対向するハウジング9の外周面上方の第1テーパ面9bとの間にシール空間Sを形成する。この内周面15aは、上方へ向けて拡径したテーパ状に形成され、上記実施形態の第2テーパ面10b1と同様の機能を果たす。
また、この動圧軸受装置21では、ディスクハブ10は、芯金13をインサート部品とした樹脂の射出成形で形成される。これにより、上記のように樹脂のみで形成する場合と比べ、ディスクハブ10の剛性を高めることができる。また、この芯金13が微小隙間Cに面することにより、軸受スリーブ8の上側端面8cと接触摺動する部分の耐摩耗性の向上を図ることができる。ハウジング9はコップ状に形成され、その内底面9fには、径方向溝9f1が設けられる。この径方向溝9f1と、軸受スリーブ8の外周面8dに設けられた軸方向溝8d1とで、軸部材2の下端面2dとハウジング9の内底面9fとの間の隙間と、ディスクハブ10の円盤部10aの下側端面10a1と軸受スリーブ8の上側端面8cとの間の隙間とを連通している。
以上の実施形態では、ディスクハブ10が樹脂又は芯金入りの樹脂で形成されているが、これに限らず、例えば金属材料で形成してもよい。また、以上の実施形態では、軸受スリーブ8が焼結金属で形成されているが、これに限らず、例えば多孔質樹脂で形成してもよい。
また、以上の実施形態では、軸部材2及びディスクハブ10を備えた側を回転側の部材とし、軸受スリーブ8及びハウジング9を備えた側を固定側の部材としたが、回転側の部材と固定側の部材をこれと逆に設定してもよい。
また、以上の実施形態では、ラジアル軸受部R1、R2およびスラスト軸受部T1、T2として、へリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝により潤滑油の動圧作用を発生させる構成を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ラジアル軸受部R1、R2として、図示は省略するが、軸方向の溝を円周方向の複数箇所に形成した、いわゆるステップ状の動圧発生部、あるいは、円周方向に複数の円弧面を配列し、対向する軸部材2の真円状外周面2aとの間に、くさび状の径方向隙間(軸受隙間)を形成した、いわゆる多円弧軸受を採用してもよい。
あるいは、軸受スリーブ8の内周面8aを、動圧発生部としての動圧溝や円弧面等を設けない真円内周面とし、この内周面8aと対向する軸部材2の真円状外周面2aとで、いわゆる真円軸受を構成することができる。
また、第1スラスト軸受部T1と第2スラスト軸受部T2の一方又は双方は、同じく図示は省略するが、動圧発生部が形成される領域(例えば軸受スリーブ8の下側端面8b、ハウジング9の上端面9a)に、複数の半径方向溝形状の動圧溝を円周方向所定間隔に設けた、いわゆるステップ軸受、あるいは波型軸受(ステップ型が波型になったもの)等で構成することもできる。
また、以上の実施形態では、軸受スリーブ8の側にラジアル動圧発生部(動圧溝8a1、8a2)が、また、軸受スリーブ8やハウジング9の側にスラスト動圧発生部(動圧溝8b1、9a1)がそれぞれ形成される場合を説明したが、これら動圧発生部が形成される領域は、例えばこれらに対向する軸部材2の外周面2aやフランジ部2bの上側端面2b1、あるいはディスクハブ10の下側端面10a1の側に設けることもできる。
また、本発明の動圧軸受装置は、上記のようにHDD等のディスク駆動装置に用いられるスピンドルモータに限らず、光ディスクの光磁気ディスク駆動用のスピンドルモータ等、高速回転下で使用される情報機器用の小型モータ、レーザビームプリンタのポリゴンスキャナモータ等における回転軸支持用、あるいは電気機器の冷却ファン用のファンモータとしても好適に使用することができる。
動圧軸受装置1を組み込んだスピンドルモータを示す断面図である。 本発明に係る動圧軸受装置1を示す断面図である。 軸受スリーブ8の軸方向断面図である。 軸受スリーブ8の上面図である。 ハウジング9の上面図である。 他の例を示す動圧軸受装置の微小隙間C付近における断面図である。 (a)は、他の例を示す動圧軸受装置の微小隙間C付近における断面図、(b)は、その動圧軸受装置の軸受スリーブ8の上面図である。 他の例を示す軸受スリーブ8の上面図である。 他の例を示す動圧軸受装置の微小隙間C付近における断面図である。 他の例を示す動圧軸受装置21の断面図である。
符号の説明
1 動圧軸受装置
2 軸部材
3 回転側の部材
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
6 ブラケット
7 固定側の部材
8 軸受スリーブ
8c 上側端面
8c1 突出部
9 ハウジング
10 ディスクハブ(鍔状部)
10a 円盤部
10a1 下側端面
10a11 第1端面
10a12 第2端面
10a13 突出部
11 蓋部材
12 ヨーク
13 芯金
C 微小隙間
N 隙間幅
R1 第1ラジアル軸受部
R2 第2ラジアル軸受部
T1 スラスト軸受部
T2 スラスト軸受部
スラスト軸受隙間
M 隙間幅
S シール空間

Claims (6)

  1. 回転側の部材と、固定側の部材とを備え、回転側の部材と固定側の部材との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で回転側の部材をスラスト方向に支持する動圧軸受装置であって、
    回転側の部材と固定側の部材との間に、前記スラスト軸受隙間よりも隙間幅の小さいスラスト方向の微小隙間を形成したことを特徴とする動圧軸受装置。
  2. 前記微小隙間を、前記スラスト軸受隙間の内径側に設けた請求項1記載の動圧軸受装置。
  3. 前記微小隙間を介して対向する面の何れか一方を、含油性の材料で形成した請求項1記載の動圧軸受装置。
  4. 回転側の部材及び固定側の部材のうち、一方が、軸部材と、軸部材に外径方向へ突出させて設けた鍔状部とを備え、他方が、内周に軸部材を挿入した軸受スリーブと、内周に軸受スリーブを保持するハウジングとを備えた請求項1記載の動圧軸受装置。
  5. 軸受スリーブの端面の一部を突出させ、この突出部と鍔状部との間に前記微小隙間を形成した請求項4記載の動圧軸受装置。
  6. 鍔状部の端面の一部を突出させ、この突出部と軸受スリーブの端面の一部領域との間に前記微小隙間を形成した請求項4記載の動圧軸受装置。
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