JP2005161636A - 液体供給システム - Google Patents

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博 松岡
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Abstract

【課題】所定範囲の背圧を伴ってインクジェット記録ヘッドにインクを供給することができ、かつ、インクの使用効率、収容効率を向上させることが可能なインク供給システムを提供する。
【解決手段】インク供給システムは、分離可能なインクタンク36と記録ヘッド部11とを連結して構成されている。インクタンク36内には、インク15を自由状態で直接保持する主インク室13が形成されている。主インク室は、記録ヘッド部11側のバッファインク室30に接続され、これを介して記録ノズル12に通じている。また、バッファインク室30は、インク吸収部材32が設けられた孔を介して、退避用インク室31に通じている。退避用インク室31には、外部に通じる大気連通孔18が接続している。
【選択図】図1

Description

本発明は、液体をノズルから吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドに液体を供給する液体供給システムに関する。
インクジェット記録装置は、通常、キャリッジに搭載したインクジェット記録ヘッドを使用し、制御システムによって、キャリッジを紙等の記録媒体を横切って移動させる時に、インクジェット記録ヘッドを作動させて記録媒体上に液滴を射出させ、文字および画像を形成する。インクジェット記録ヘッドの射出用のインクや反応剤などの液体(以下、代表してインクとも称する)は記録装置内に固定して配置されるか、あるいはキャリッジ上にインクジェット記録ヘッドと共に搭載され、キャリッジと共に移動させられるインクタンクからインクジェット記録ヘッドに供給される。インクタンクが固定配置された構成では、柔軟なインク供給チューブをインクジェット記録ヘッドに結合し、このインク供給チューブを介してインクが供給される。インクタンクがキャリッジと共に移動する構成では、インクタンクはインクジェット記録ヘッドに直接連結され、連結部を介してインクが供給される。いずれの場合にも、インクタンクとしては、収容されたインクが尽きた時に交換できるように、インクジェット記録ヘッド側から分離可能な構成になっているものがある。
インクジェット記録ヘッドを正常に機能させるために、インク供給システムは、インクを途切れること無く供給するとともに、インク供給システム内に適正な背圧を生成し、維持することができる必要がある。ここで、背圧とは、大気圧を基準としたインク供給システム内の圧力を意味している。
背圧が低くなり過ぎると、インク吐出口、すなわちオリフィスにおけるインクメニスカスの凹面の湾曲が大きくなり、特にインク吐出後、気泡をインクジェット記録ヘッド内に抱き込みやすくなり、これが不吐出の要因となる場合がある。また、背圧が高いと、背圧が、オリフィスにおけるインクの表面張力による界面力を超えてしまい、インク漏れを生じてしまう恐れがある。
このため、液体供給システムは記録装置の保管中および作動中に遭遇する幅広い温度および大気圧において適正範囲内の背圧を生成し、保持することを要求される。この要求を実現する液体供給システムとしては、種々のものが用いられており、そのうちの1つは特許文献1に記載されている。また、同様な主旨の構成は、特許文献2や特許文献3にも開示されており、その効用が述べられている。
これらの従来技術に類似した方式として、図8の断面図に示した液体供給システムが実用に供されている。
この液体供給システムにおけるインクタンク113は、インク115を自由状態で直接収容するインク室114と、インク吸収部材117a,117b,117cを収容するインク吸収部材収納室116を有している。インク吸収部材117a,117b,117cは、インク115とインク吸収部材117a,117b,117cとの間に働く界面力によってインク115を保持するものであり、ウレタンやポリエステルなどの繊維片集合体からなる部材で構成されている。インク室114とインク吸収部材収納室116とは隔壁によって隔てられており、この隔壁の、底部に形成された孔部分のみで連通している。この隔壁には、底部の孔の、インク吸収部材収納室116側の開口の上縁から上方に延びる複数の溝125が形成されている。
インク室114は、インク吸収部材収納室116に通じる孔を除いては、密閉されており、底部にインク残量検出部材124が取付けられている。インク残量検出部材124は、光学的反射部材であり、インク115が減ってきた時に、外光を反射し、それによってインク115が無くなってきたのが分かるようになっている。
インク吸収部材収納室116には、記録ヘッド111に接合される筒状の連結部138が設けられており、この部分の内部にインク吸収部材117aが設けられ、さらに、これに接して下から順にインク吸収部材117b,117cが積層するように設けられている。インク吸収部材収納室116の天井部には、大気連通孔118が通じている。
このインクタンク113は図示しないガイド等に導かれて記録ヘッド部111にパッキング部材123を挟んで分離可能に密閉状態に接合して使用される。このように接合した状態で、インク115は、インク室114から、インク吸収部材収納室116を通って記録ヘッド部111に供給される。インク室114からインク吸収部材収納室116へのインク115の導入は、導入されたインク115に相当する空気がインク室114側へ入る形で行なわれ、この際、溝125は空気やインクの移動を容易にする働きをする。記録ヘッド部111に供給されたインクは、記録ヘッド部111の入口部分に設けられたフィルタ部材120によって、ゴミなどを取り除かれ、インク通路122を通ってヘッド液室121内に満たされ、記録ノズル112に充填される。
このインクタンク113において、インク吸収部材117b,117cは周囲環境が変動した際の背圧制御手段として機能する。すなわち、例えば、気圧が低下した場合やインクタンク113の温度が上昇した場合には、インク室114の上層部の空気の圧力が相対的に高まり、この空気が膨張する。すると、その膨張した空気の分量のインク115がインク室114からインク吸収部材収納室116側に押し出される。このように押し出されたインク115は、インク吸収部材117b、さらにはインク吸収部材117cの、それまでインクを保持していなかった部分に収容され、それによって、環境変化時にも記録ヘッド部111内の背圧を適正な一定範囲内に保つことができる。
このようにインク吸収部材117cにまで一旦収容されたインク115は、その後、インク115が消費される際などに、優先的にインク吸収部材117b側へと戻される。この際、インク115がインク吸収部材117cから離れやすいように、インク吸収部材117cはインク吸収部材117bに比べて弱い界面力しか働かない構成となっており、これによって、インクタンク113の使用末期にインク吸収部材117cにインクが残りにくくしている。インク吸収部材117aはインク吸収部材117bよりさらに強い毛細管力でインクを吸引する構成となっており、インク115を記録ヘッド部111へ導く働きをし、また同時に、インク漏れを抑制する働きもする。
特開2001−187459号公報 特開2001−246761号公報 特開2001−130024号公報
上記の従来例に示したようなタイプの液体供給システムにおいては、背圧の生成やインクの漏洩防止のために、インクを供給する流路の途中部分にインク吸収部材を用いており、このインク吸収部材がインクタンク113の過半を占めている。このインク吸収部材を用いた部分では、その部分の全容積の約70%の範囲でしかインクを収容することができず、このために、このような液体供給システムには、空間の使用効率が悪いという課題が有る。また、インク吸収部材に充填したインクの20%程度がインク吸収部材に残留して使用できず、インクの残量の検出を正確に行うのも困難であり、インクの使用効率が低下してしまうという課題もある。
また、このようなタイプの液体供給システムにおいて、インクタンクの使用寿命を延ばすために、インクタンクの貯留インク量を増やすと、それに応じてインク消費後の、インク室の上層に溜まる空気の量も増え、これに比例して、押し出されたインクを吸収するインク吸収部材の体積も大きくしなくてはならない。このため、このようなタイプの液体供給システムでは、貯留インク量を増やすと、必然的に、貯留インク量を増やした分以上にインクタンクを大型化する必要が生じてしまう。また、消耗品として適宜交換して使用されるインクタンクに大型のインク吸収部材を用いると、それがゴミの発生源になってしまい、さらに、インクタンクのコストを圧迫する要因ともなってしまう。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的の1つは、インクを、所定範囲の背圧を伴ってインクジェット記録ヘッドに供給することができ、それによってインクジェット記録装置を高い信頼性で良好に動作させることが可能であり、かつ、構造の複雑化を伴うことなく低いコストで製造可能であり、消耗品として適宜交換して使用される液体供給容器内のインクの収容効率、使用効率を向上させることが可能な液体供給システムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、さらに、インクの収容効率を向上させてより小型化が可能な液体供給システムを提供することにある。
上述の目的を達成するため、本発明の一実施態様の液体供給システムは、液体を貯溜し、インクジェット記録ヘッドに通じている液体収容室と、外部に通じる大気連通孔が上部に接続している退避用液体収容室と、液体収容室と退避用液体収容室とをつなぐ、液体が充填された時に毛細管力を発生する毛細管手段とを有し、液体収容室内の圧力が高まった時に、液体は、インクジェット記録ヘッドの記録ノズルを通って外部に押し出される前に、毛細管手段を通って退避用液体収容室に押し出されることを特徴とする。
この構成によれば、液体供給システム内の背圧は毛細管手段によって所定の範囲内に制御される。すなわち、外気圧の低下や、液体収容室内の温度上昇によって液体収容室内の圧力が相対的に高まった際には、液体の一部が毛細管手段を通って退避用液体収容室に押し出されることによって、背圧の上昇を相殺し、所定範囲を越えた背圧の上昇を回避することができる。逆に、液体を消費することによって液体供給システム内の背圧が低下し、あるいは、外気圧の上昇や、液体収容室内の温度低下によって液体収容室内の圧力が相対的に低下した際には、退避用液体収容室に一旦押し出された液体、または大気連通孔を介して退避用液体収容室内に導入された空気の一部が毛細管手段を通って液体収容室内に入ることによって、背圧の低下が相殺され、所定範囲を越える背圧の低下を回避することができる。
この構成において、液体が記録ノズル側から外部に押し出される前に、毛細管手段側から退避用液体収容室に押し出されるようにするためには、毛細管手段を適当な構成にすることによって、記録ノズルのオリフィスにおける液体の界面力に対して、毛細管手段における液体の界面力が適当な値になるように調整してやればよい。この際、毛細管手段は、記録ノズルのオリフィスと実質的に同じ高さに配置するのが好ましい。それによって、毛細管手段側よりも、記録ノズル側に大きな水頭圧が加わらないようにして、液体供給室内の圧力が高まった時に、記録ノズル側から液体が押し出されることなく、毛細管手段側から液体が押し出されるようにするのを容易にすることができる。すなわち、この場合、毛細管手段に充填された液体に働く界面力が、記録ノズルのオリフィスに充填された液体に働く界面力よりも小さくなるように、毛細管手段の構成を調整すれば、記録ノズル側から液体が押し出されることなく、毛細管手段側から液体が押し出されるようにすることができる。
また、本発明の他の実施態様の液体供給システムは、液体を貯溜し、インクジェット記録ヘッドに通じている液体収容室と、外部に通じる大気連通孔が上部に接続している退避用液体収容室と、液体収容室と退避用液体収容室との間に位置する空気バッファ室と、液体収容室と空気バッファ室とをつなぐ、液体が充填された時に毛細管力を発生する毛細管手段とを有し、退避用液体収容室と空気バッファ室とは、両者をつなぐ孔が底部に形成された壁によって隔てられ、毛細管手段は、退避用液体収容室と空気バッファ室とをつなぐ孔よりも高い位置に配置されており、液体収容室内の圧力が高まった時に、液体は、インクジェット記録ヘッドの記録ノズルを通って外部に押し出される前に、毛細管手段を通って空気バッファ室に押し出されることを特徴とする。
この構成においても、液体供給システム内の背圧は毛細管手段によって所定の範囲内に制御される。この際、毛細管手段を介して空気バッファ室に押し出された液体は、滴下して、退避用液体収容室と空気バッファ室とをつなぐ孔を塞ぎ、その後、さらに液体が滴下すると、それに見合った量の液体が退避用液体収容室内に押し出されるようにすることができる。したがって、退避用液体収容室と空気バッファ室とをつなぐ孔より高い位置に配置された毛細管手段の、空気バッファ室側は、空気バッファ室内の空気に接した状態に保たれ、毛細管手段内の液体に界面力が作用する状態を保つことができる。それによって、液体供給システムの背圧制御の精度をより高く保つことができる。
また、本発明のさらに他の実施態様の液体供給システムは、液体を貯溜し、インクジェット記録ヘッドに通じている液体収容室と、外部に通じる大気連通孔が上部に接続している退避用液体収容室と、液体収容室と退避用液体収容室との間に位置する第2および第3の液体収容室と、液体収容室と第2の液体収容室をつなぐ、液体が充填された時に毛細管力を発生する第1の毛細管手段と、第2の液体収容室と第3の液体収容室をつなぐ、液体が充填された時に毛細管力を発生する第2の毛細管手段とを有し、退避用液体収容室と第3の液体収容室とは、両者をつなぐ孔が底部に形成された壁によって隔てられ、第2の毛細管手段は、退避用液体収容室と第3の液体収容室とをつなぐ孔よりも高く、かつ第1の毛細管手段より高い位置に配置されており、液体収容室内の圧力が高まった時に、液体は、インクジェット記録ヘッドの記録ノズルを通って外部に押し出される前に、第1の毛細管手段を通って第2の液体収容室に押し出され、さらに、第2の毛細管手段を通って第3の液体収容室に押し出されることを特徴とする。
この構成では、液体供給システム内の背圧は第1、第2の毛細管手段によって所定の範囲内に制御される。この際、第2の毛細管手段は、液体収容容器内の圧力が高まって、液体が退避用インク室側に押し出される際には、第3のインク収容室側が空気に接した状態に保たれ、液体収容容器内の圧力が低下して、液体が退避用インク室側から液体収容室内に押し戻される際には、第2の液体吸収室側が空気に接した状態に保たれる。しがって、いずれにしても、第2の毛細管手段内の液体に界面力が作用する状態を保つことができ、それによって、液体供給システムの背圧制御の精度をより高く保つことができる。
これらの実施態様において、毛細管手段は、具体的には、毛細管力によって液体を吸収して保持可能な液体吸収部材、または、内面が親水化された細孔とすることができる。
いずれにしても、これらの実施態様の構成では、毛細管手段として液体吸収部材を用いる以外では、従来技術におけるように大きな液体吸収部材を設ける必要はなく、液体収容室などは、液体を自由状態で直接保持する構成とすることができ、液体の収容効率、使用効率を向上させることができる。
さらに、液体収容室は、インクジェット記録装置本体に対して着脱自在に構成された液体収容容器内に形成された主液体収容室と、インクジェット記録ヘッドと一体に形成された筐体内に形成されたバッファ液体収容室とがつながって形成された構成とすることができる。この場合、バッファ室に、外部からバッファ液体収容室内に液体が存在しているかどうかを確認可能な液体残量検出部材を設ければ、液体収容容器側に液体残量検出手段を設ける必要がなくなり、液体収容容器の構成を簡素なものとすることができる。
液体収容室を、液体収容容器と、インクジェット記録ヘッド側の筐体とによって構成する場合、液体収容容器内には、主液体収容室の、バッファ液体収容室への開口を塞ぐ位置に付勢された栓部材を設け、インクジェット記録ヘッド側に、主液体収容室をバッファ液体収容室に接続した時に、栓部材に当接して、栓部材を、主液体収容室の、バッファ液体収容室への開口を開く位置に移動させる柱状部材を設けた構成とすることができる。これによれば、液体収容容器を分離した状態では、栓部材によって主液体収容室内の液体の漏洩を防ぐことができ、液体収容容器をインクジェット記録ヘッド側に連結した状態では、液体収容容器から、バッファ液体収容室へ液体を導入することが可能となる。この際、柱状部材の周囲に液体吸収部材を配すれば、主液体収容室とバッファ液体収容室との接続孔が小さい場合であっても、液体を主液体収容室からバッファ液体収容室にスムースに導入することができる。
本発明のさらに他の態様の液体供給システムは、インクジェット記録装置本体に対して着脱自在に構成された液体収容容器内に形成された、液体を貯溜する主液体収容室と、主液体収容室に接続し、インクジェット記録ヘッドに通じているバッファ液体収容室と、外部に通じる大気連通孔が上部に接続している退避用液体収容室と、バッファ液体収容室内に配置された、毛細管力によって液体を吸収して保持可能な第1の液体吸収部材と、退避用インク室内に配置された、毛細管力によって液体を吸収して保持可能な第2の液体吸収部材とを有し、バッファ液体収容室と退避用液体収容室とは、両者をつなぐ連絡路が形成された壁によって隔てられ、第1の液体吸収部材は、少なくとも、バッファ液体収容室と退避用液体収容室とをつなぐ連絡路の開口を塞ぐ位置に設けられており、液体収容室内の圧力が高まった時に、液体は、インクジェット記録ヘッドの記録ノズルを通って外部に押し出される前に、液体吸収部材を通って連絡路に押し出されることを特徴とする。
この構成では、第1の液体吸収部材によって、液体供給システムの背圧が所定の範囲内に制御される。この際、液体収容容器内には、従来技術におけるように液体吸収部材を配置する必要はなく、主液体収容室は、液体を自由状態で直接保持すものとすることができ、それによって、液体収容容器における液体の収容効率、使用効率を向上させることができる。
この構成において、第1、第2の液体吸収部材は、第1の液体吸収部材に含浸した液体に働く界面力が、第2の液体吸収部材に含浸した液体に働く界面力より大きくなるように構成するのが好ましく、それによって、一旦退避用液体収容室に退避され、第2の液体吸収部材に吸収された液体が、効率的に、バッファ液体収容室側に戻るようにすることができる。
また、外部からバッファ液体収容室内に液体が存在しているかどうかを確認可能な液体残量検出部材をバッファ液体収容室に設ければ、液体収容容器に液体残量検出部材を設ける必要がなくなり、液体収容容器を簡素な構成にすることができる。
本発明の一実施態様によれば、液体吸収部材、または、内面が親水化された細孔である毛細管手段によって、液体供給システムの背圧を高い信頼性で所定の範囲内に制御することができ、インクジェット記録装置を安定して良好に動作可能とすることができる。この実施態様の液体供給システムでは、毛細管手段として液体吸収部材を用いる他は、従来技術におけるような大きな液体吸収部材を用いる必要がない。したがって、液体の収容効率、使用効率を大きく向上させることができる。液体の収容効率を向上させることによって、液体供給システムの小型化を図ることができる。
また、消耗品として適宜交換して使用される液体収容容器は、液体を自由状態で保持する主液体収容室を主要な構成要素とする簡素な構成にすることができ、液体収容容器の製造コストを低減し、したがって、インクジェット記録装置のランニングコストを低減することができる。また、液体収容容器内に液体吸収部材を設ける必要がないので、廃棄物の低減にもつながる。
本発明の他の実施態様によれば、分離可能な液体収容容器内の主液体収容室に接続し、インクジェット記録ヘッド、および退避用液体収容室に通じているバッファ液体収容室内に配置した液体吸収部材によって、液体供給システムの背圧を高い信頼性で制御することができ、インクジェット記録装置を安定して良好に動作可能とすることができる。この実施態様の液体供給システムにおいても、主液体収容室内に、液体吸収部材を設ける必要はなく、主液体収容室内の液体の収容効率、使用効率を向上させることができる。また、液体収容容器は、液体を自由状態で保持する主液体収容室を主要な構成要素とする簡素な構成にすることができ、液体収容容器の製造コストを低減し、したがって、インクジェット記録装置のランニングコストを低減することができる。また、液体収容容器内に液体吸収部材を設ける必要がないので、廃棄物の低減にもつながる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
最初に、図1を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。図1は本実施形態のインクジェット記録ヘッドへのインク供給システム(液体供給システム)を模式的に示す断面図である。
本実施形態のインク供給システムは、インクジェット記録装置本体に対して着脱自在に構成されたインクタンク(液体収容容器)36と、インクジェット記録ヘッドが一体に形成された記録ヘッド部11が連結されて構成されている。インクタンク36や記録ヘッド部11の筐体には、一定の剛性を有し耐インク性の良い材料が選択して用いられる。インクタンク36に、耐インク性の良い材料を用いることによって、長期のインク貯留を可能とすることができ、また、透明なプラスチック部材を用いれば、インク量の視認が容易となる。
インクタンク36の内部は、インク(液体)15を自由状態で直接貯溜する主インク室(主液体収容室)13になっている。インクタンク36は、円筒状の連結部38を有しており、連結部38の外周には、ドーナツ状の弾性部材29が巻き付けられている。連結部38の開口は、インクタンク36を分離した状態で、ばね部材27により付勢された栓部材26によって内側から塞がれるようになっている。栓部材26としては、弾性部材を用いても剛性部材を用いてもよく、インクタンク36を単体で保存・輸送中インクが漏れることが無いように連結部38の開口を封止可能に構成されている。
記録ヘッド部11には、インクタンク36の連結部38の外周を囲む大きさの円筒状の連結部39が形成されている。インクタンク36は、例えば、インクジェット記録装置本体に設けられた、図示しないハウジングガイドに案内されて、記録ヘッド部11に対して位置決めされ、図1に示すように連結される。このようにインクタンク36を記録ヘッド部11に連結した状態では、弾性部材29が、インクタンク36の連結部38の外面と記録ヘッド部11の連結部39の内面との間に、一定の押圧力を加えられて挟み付けられた状態になっており、それによって、連結部38,39内が外気から密閉状態に保たれている。
記録ヘッド部11の連絡部39の中心には、インクタンク36側に向かって突出する柱状部材28が設けられている。柱状部材28の外周は、インク吸収部材(液体吸収部材)34によって覆われている。図1に示すように、インクタンク36をインクタンク連結部37に連結した状態では、インクタンク36の開口を塞ぐ栓部材26が、記録ヘッド部11の柱状部材28が当接することによって、ばね部材27の付勢力に抗して、内側に移動させられており、それによって、インクタンク36の連結部38の開口が開かれている。この際、栓部材26の、連結部38の開口から出ていた部分が主インク室13内に押し込まれることによって、対応する体積分のインク15が記録ヘッド部11側に押し出される。
記録ヘッド部11の、連結部39に接続する部分は、バッファインク室(バッファ液体収容室)30になっている。バッファインク室30にはインク残量検出部材24が設けられている。インク残量検出部材24は、その一面がバッファインク室30の外面に露出し、反対側の面が内面に面している。インク残量検出部材24は、図には詳細には示していないが、内面が、45度の2等辺直角三角形状に成型された所定の屈折率を有するプラスチック製の光学的反射部材である。例えば、インク残量検出部材24の屈折率は約1.5、インクの屈折率は約1.3であり、両者の比はCOS45度(=約1.4)を越えないので、内面にインク15が接触している状態では、外面から入射した光はインク残量検出部材24とインク15の界面を透過する。一方、インク残量検出部材24の内面が空気に接していると、空気の屈折率1.0とインク残量検出部材24の屈折率約1.5との比が、COS45度を越えるので、外面から入射した光は、インク残量検出部材24と空気の界面で全反射される。この反射光を検出することによって、バッファインク室30内にインク15が残っているかどうかを確認することができるようになっている。
バッファインク室30はインク通路22を経てヘッド液室21に通じている。詳細には図示していないが、ヘッド液室21には、多数のノズルが高密度で形成された記録ノズル12が接続している。記録ノズル12には、例えば、1色あたり256個のノズルが300dpi(dot per inch)の密度で形成されている。各ノズルには通電によって気泡を発生させ、インク15をインク滴の形で吐出させるための発熱体が設けられている。図1において、インク滴の吐出は下向きに行われる。また、図示していないが、記録ノズル12の発熱体に電気信号を供給するプリント配線基板等も存在しており、これらによってインクジェット記録ヘッドが構成されている。
インク通路22の、バッファインク室30からの入口には、フィルタ部材20が設けられている。フィルタ部材20は記録ノズル12へのゴミ、異物、インクの凝集成分、気泡などの混入を防ぐために設けられている。フィルタ部材20としては、記録ノズル12のオリフィスを詰まらせるような大きさの異物の混入を防ぐ目的から濾過精度20μm程度のものが使用される。
バッファインク室30は、さらに、下方に延びる連絡掘溝33を介して退避用インク室31に通じている。連絡掘溝33と退避用インク室31とは、両者をつなぐ孔が底部に形成された壁によって隔てられており、底部の孔内に、インク吸収部材32が配置されている。
本実施形態において、インク吸収部材32,34としては、例えば、ポリエステルフェルトやポリウレタンなどの多孔性部材や、1次元的または2次元的に延びる繊維構造体などを用いることができる。しかし、インク吸収部材部材32,34はこれに限定されるものではなく、インク15の界面で適度の毛細管力を発生させる部材であればどのような部材を用いてもよく、金網や樹脂製の網などの網目状体や多孔質体等を用いることができる。インク吸収部材32は、異物阻止用のフィルタ20より粗い濾過精度のものであってよく、例えば濾過精度70μm程度以下のものも使用できる。
退避用インク室31の上方には、外気に通じる大気連通孔18が接続している。大気連通孔18は、図では簡単に示しているが、インク15が万が一にも漏出するのを防止するため、また、インクの蒸発を最小限に抑えるために、微細な孔が長く迷路状に延びるように構成されている。
本実施形態のインク供給システムにおいて、インクタンク36を記録ヘッド部11に接続した状態では、バッファインク室30は、主インク室13からのインクによって満たされ、さらに、バッファインク室30を介してインク通路22、ヘッド液室21、および記録ノズル12もインク15によって満たされる。この際、柱状部材28の周囲を覆うインク吸収部材34は、主インク室13内のインク15を引っ張り、それによって、重力の作用と共に、インク15がバッファインク室30側にスムースに導入されるようにする働きをする。特に、フルカラー記録においては4色から7色のインクが必要となり、主インク室13を4〜7個キャリッジ上に並べる必要があり、主インク室13の厚みは極力薄い方が好ましい。このような場合、主インク室13の連結部38内の孔の径も小さくなり、特に、10mm程度以下となった場合には、界面力のために、重力の作用のみでは、揺するか押すかしないとインク15がスムースに導出されない。そこで、このような場合に、インク吸収部材34を設ければ、効果的にインク15の導出を促す作用を得ることができる。連結部38の孔の径を十分に大きく取れる場合には、インク吸収部材34は必ずしも設けなくてもよい。
ここで、記録ノズル12の各オリフィス径は数十ミクロンであり、ここにインク15が満たされた状態では、ここに数十mmH2O程度の圧力が加わっても、そこを満たすインク15の表面張力によりインク15とオリフィスとの間に働く界面力のために、インク15が漏洩することはなく、また、外気が入り込むこともない。
一方、退避用インク室31側では、連絡掘溝33に満たされたインク15が毛細管力によってインク吸収部材32に含浸する。これによって、インク吸収部材32内で、含浸したインク15の表面張力によりインク15とインク吸収部材32との間に働く界面力が働くことによって、インク15は退避用インク室31側に流れることなく保持され、また外気が侵入しないようになっている。
このように、インク供給システム内は、所定の毛細管力を伴う、記録ノズル12に形成されたメニスカス、およびインク吸収部材32に含浸したインク15のメニスカスによって、外気から遮断され、これによって、所定の背圧が発生した状態とすることができる。
また、バッファインク室30と退避用インク室31との間に配されたインク吸収部材32は、インク供給システムが遭遇する多彩な保存・使用環境に対して適正な背圧を保つ制御手段としても機能する。このことについて、以下に説明する。
主インク室13内は、初期には、インク15を100%満たした状態とすることができるが、インク15が消費されるにしたがって、後述するように、消費されたインク15に相応する分の外気が主インク室13内に導入され、上部に空気層14が形成される。この状態で、周囲気圧が低下したり、主インク室13内の温度が上昇したりした場合には、主インク室13内の空気層14の空気の圧力が相対的に高まり、空気が膨張する。この高まった空気圧によって、インク15に圧力が加わり、この圧力は、このインク供給システムの2つの開口部である記録ノズル12の各オリフィス部と退避用インク室31へのインク吸収部材32のメニスカスに加わる。各メニスカスは、界面力によって、ある程度の圧力に耐える。
そして、この際、インク吸収部材32の濾過精度を適切に設定し、インク吸収部材42内でインク15のメニスカスに働く界面力が適切な大きさになるようにしておくことによって、インク15が記録ノズル12側から押し出される前に、インク吸収部材32側から押し出されるようにすることができる。このように構成しておくことによって、インク供給システムの背圧が高まった際、記録ノズル12からインク15が漏洩することなく、退避用インク室31側にインク15が流出し、それによって、インク供給システムの背圧が所定範囲を越えて高くならないようにすることができる。
この際、退避用インク室31と連絡掘溝33を隔てる壁における、インク吸収部材32の高さ方向の位置は、記録ヘッド11の最底部として、記録ノズル12の各オリフィス部とほぼ同じ高さとし、あるいは、それに近い高さとするのが好ましい。それによって、記録ノズル12側で、インク吸収部材32側に比べて大きな水頭圧が加わらないようにし、記録ノズル12側でインク15を流出させることなく、インク吸収部材32側で退避用インク室31へとインク15を流出させるのを容易にすることができる。すなわち、このように水頭圧が同等になるようにした場合、インク吸収部材32でのインク15の界面力が、記録ノズル12の各オリフィスでの界面力に比べて小さくなるようにしてやればよい。
また、退避用インク室31は、主インク室13の内容積と環境変化幅を考慮して、押し出されることが想定される最大量のインク15を収容できる内容積としておく。特に、環境変化幅としては、高地への移動を想定して、外気圧が0.7気圧程度まで低下した場合を考慮すれば、通常の環境変化による影響をほぼカバーすることができる。そして、退避用インク室31の内容積をこのように設定しておけば、大気連通孔18からインク15が漏れ出すことはない。
次に、インク15が消費されることによって、インク15が消費された分だけインク供給システムの背圧が下がる場合について説明する。この場合、退避用インク室31内にインク15が貯溜されている場合には、まず、このインク15が連絡堀溝33側に取り込まれ、それによって、背圧の低下が補われる。
そして、退避用インク室31内のインク15が無くなった後、あるいは、始めから退避用インク室31内にインク15が無い場合には、ある程度以上背圧が低下すると、インク吸収部材32のインク15に、退避用インク室31側から、インク15の界面力を越える圧力が加わり、インク吸収部材32内のインクの界面が、一旦、連絡掘溝33側に後退させられ、大気連通孔18を介して退避用インク室31内に取り込まれた外気の一部が、連絡掘溝33内に取り込まれる。それによって、背圧の低下が補われる。連絡堀溝33内に取り込まれた外気は、気泡の形でバッファインク室30に達し、最終的に、主インク室13内に取り込まれ、空気層14に加わる。この際、気泡の代わりに、鳥の水差しの原理で気液交換によりインク15がバッファインク室30へ随時補給される。
このように、インク供給システムの背圧が低下した場合には、インク吸収部材32を介して、一旦退避されたインク15または外気が取り込まれ、それによって、背圧の低下が補われ、インク供給システムの背圧の低下は所定の範囲内に抑えられる。この動作は、大気圧の上昇や、主インク室13内の温度の低下によって、背圧が相対的に低下した場合についても同様に行なわれる。
以上のように、本実施形態のインク供給システムでは、バッファインク室30と退避用インク室31との間に配されたインク吸収部材32によって、インクタンク36内や記録ノズル12の部分の背圧を所定の範囲内に制御することができる。背圧の制御範囲は、このインク吸収部材32の濾過精度に依存し、すなわち、インク吸収部材32の濾過精度を最適に設定することによって、背圧を最適な所望の範囲内に制御することができる。
また、本実施形態のインク供給システムは、比較的コンパクトな構成のインク吸収部材32を用いて、インク供給システム内および/または記録ヘッド内の背圧を所定の範囲内に制御することを可能としている。このため、比較的大きなインク吸収部材と、それを収容するインク吸収部材収容室を必要とする従来のインク供給システムに比べて、コンパクトな構成とすることができる。また、インク吸収部材32の部分以外では、基本的に、インク吸収部材を用いる必要はなく、インク15を自由状態で直接収容する構成とすることができ、それによって、インクの収容効率を大きく向上させることができる。すなわち、このことは、同じサイズならばより多くのインクを収容可能であり、同じインク量ならばインク供給システムをより小型化できることを意味している。また、インク15を直接貯溜することによって、インク15をほぼ100%使い切ることも可能となる。さらに、インクタンク36内にインク吸収部材が配されることはないので、廃棄物を低減することにもつながる。
また、インク吸収部材32による背圧制御は、上述したように、所定範囲を越える背圧の変動を確実に抑えることができる信頼性の高い方法である。したがって、本実施形態のインク供給システムでは、インクをインクジェット記録ヘッドに所定の背圧を伴って供給し、インクジェット記録装置を安定して高い信頼性で動作可能とすることができる。
なお、本実施形態において、バッファインク室30は、あまり大きなものとする必要はなく、インクの有無を検出するインク残量検出部材24の高さを確保できる範囲で、必要最小限の容量にすればよい。
また、本実施形態では、バッファインク室30や退避用インク室31などは、記録ヘッド部11側に設ける構成を示した。この構成は、消耗品として適宜交換して使用されるインクタンク36を、基本的に、インク15を自由状態で直接保持する主インク室13を構成する筐体と、栓部材26だけからなる簡素な構成とでき、インクタンク36のコストを抑えてランニングコストを低減することができ、好ましい。特に、この構成では、筐体をペットボトルのようにブロー成型により一部品で製造することが可能となり、それによって製造コストを大きく低減することが可能である。しかし、インクタンク36側にバッファインク室30や退避用インク室31などを一体的に構成することも可能であり、あるいは、インクタンク36と記録ヘッド部11を一体に形成して、全体を交換可能な構成としてもよい。インク残量検出部材24についても、バッファインク室30に設ければ、インクタンク36の構成を簡素なものとして、コストを低減する効果が得られ、また、主インク室13内のインク15をほぼ100%使い切った後、インク切れを検知でき、好ましいが、これに限られることはなく、主インク室13側に配置してもよい。
また、本実施形態では、インク吸収部材32によって背圧を制御する構成を示したが、このインク吸収部材32の、前述したような働きは、一般には、毛細管力を発生する毛細管手段を用いれば、果たすことができる。したがって、図2に示すように、インク吸収部材32を配置した孔の代わりに、毛細管力を発生する所定の大きさの、内面を親水化処理された細孔35を用いることも可能である。
すなわち、この場合、細孔35内は、通常、連絡掘溝33からインク15が満たされた状態になっており、充填されたインク15に働く毛細管力のために、インク供給システム内に所定の背圧を発生させることが可能となる。そして、環境変化により、インク供給システム内の圧力が高まり、例えば、その設定値20〜30mmH2O程度を越えた場合に、細孔35内のインク15のメニスカスに所定の大きさ以上の圧力が加わることによって、インク15の一部が退避用インク室31に一旦流出するようにすることができる。この際、記録ノズル12の各オリフィスからインクが流入しないようにするため、細孔35の大きさは、少なくとも各オリフィスの大きさよりも大きい。また、逆に、インク供給システム内の圧力が下がると、退避用インク室31内に一旦押し出されたインク15、または大気連通孔18からの外気が、細孔35を介してインク供給システム内に取り込まれ、それによって、背圧の低下が補われる。
(第2の実施形態)
次に、図3を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、本実施形態のインク供給システムを模式的に示す断面図である。図3において、第1の実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
本実施形態では、バッファインク室30は、空気バッファ室43を介して退避用インク室31に通じている。バッファインク室30と空気バッファ室43とは、バッファインク室30の底部の高さで、記録ノズル12に対してある程度高い位置に、バッファインク室30と空気バッファ室43とをつなぐ孔が形成された壁によって隔てられており、この孔内にインク吸収部材42が設けられている。空気バッファ室43は、記録ヘッド部11の底部で、記録ノズル12とほぼ同じ高さのところまで下方に延びている。空気バッファ室43と退避用インク室31とは、記録ヘッド部11の底部の高さに、空気バッファ室43と退避用インク室31とをつなぐ孔44が形成された壁によって隔てられている。
本実施形態の構成では、バッファインク室30と空気バッファ室43との間に設けられたインク吸収部材42が、インク供給システムが遭遇する多彩な保存・使用環境に対して適正な背圧を保つ制御手段として機能する。このことについて以下に説明する。
まず、例えば、周囲気圧が低下し、または主インク室内の温度が上昇した場合には、インク供給システム内の圧力が相対的に高まり、インク供給システム内で、主として、主インク室13の上部に空気層14として存在している空気が膨張する。膨張した空気によってインク15に圧力が加わり、この圧力は、インク供給システムの2つの開口部である記録ノズル12の各オリフィスと空気バッファ室43へのインク吸収部材42内のインク15のメニスカスに加わる。各メニスカスでは、界面力が働くことによって、ある程度の圧力が加わってもインク15が流出することはない。この際、インク吸収部材42を適切な濾過精度を有する構成として、インク吸収部材42内でインク15のメニスカスに働く界面力を適切に設定しておくことによって、記録ノズル12からインク15を流出させることなく、インク吸収部材42側で、空気バッファ室43にインク15が流出するようにすることができる。そして、空気バッファ室43にインク15が流出することによって、インク供給システム内の背圧の上昇が抑えられ、したがって、背圧が所定の範囲を越えて上昇するのを回避することができる。
インク吸収部材42を介して空気バッファ室43内に流出したインク15は、空気バッファ室43内を滴下し、まず、底部に位置する孔44がインク15によって塞がれる。その後、さらにインク15が空気バッファ室43内に滴下されると、空気バッファ室43内は、密閉された状態となっているために、滴下されたインク15に相当する量のインク15が孔44から退避用インク室31内に押し出される。このようにして、本実施形態の構成では、インク15がインク吸収部材42を介して流出する間、インク吸収部材42の空気バッファ室43側は、インク15に塗れることなく空気に接した状態に保たれ、したがって、インク吸収部材42内にインク15のメニスカスが形成された状態を維持することができる。したがって、インク15が流出する間、背圧制御の精度を高く保つことができる。
次に、インクが消費されることによって背圧が低下し、あるいは、周囲気圧が上昇し、または主インク室13内の温度が下がることによって背圧が相対的に低下した場合について説明する。この場合、退避用インク室31内に、上述のようにして一時的に退避されたインク15がある場合には、まず、このインク15が孔44を介して空気バッファ室43内に押し込まれる。空気バッファ室43内に押し込まれたインク15によって、空気バッファ室43内のインク15の液面が上昇し、最終的にインク15はバッファインク室30内に戻され、これによって、背圧の低下が補われる。
そして、退避用インク室31内にインク15が無くなった後、あるいは、始めから退避用インク室31内にインクが無い場合には、大気連通孔18を介して退避用インク室31内に取り込まれた外気が、孔44を介して空気バッファ室43内に入り、さらに、インク吸収部材42内のインク15のメニスカスを後退させて、バッファインク室30内に取り込まれる。これによって、背圧の低下が補われる。バッファインク室30内に気泡の形で取り込まれた空気は、最終的に、主インク室13内に取り込まれ、空気層14に加わる。この際、気泡の代わりに、鳥の水差しの原理で気液交換によりインク15がバッファインク室30へ随時補給される。
以上のように、本実施形態においても、インク吸収部材42によって、インク供給システム内の背圧が上昇する場合には、インク15をバッファインク室30から退避用インク室31側に一時的に流出させ、背圧が低下する場合には、退避されたインク15または外気を退避用インク室31側からバッファインク室30側に導入して、背圧を所定の範囲に制御することができる。したがって、本実施形態のインク供給システムを用いることによって、高い信頼性で所定の背圧を伴ってインクをインクジェット記録ヘッドに供給することができ、インクジェット記録装置を安定して高い信頼性で動作させることが可能となる。
背圧の制御範囲は、インク吸収部材42の濾過精度に依存し、すなわち、インク吸収部材42の濾過精度を最適に設定することによって、背圧を最適な所望の範囲内に制御することができる。このようなインク吸収部材42の働きは、一般には、毛細管力を発生する毛細管手段によって果たすことができる。すなわち、インク吸収部材42の代わりに、毛細管力を発生可能な大きさで、内面に親水化処理を施した細孔を用いることが可能である。この場合、この細孔の大きさは、少なくとも、数十ミクロン程度の、記録ノズル12の各オリフィスの径よりも大きなものとする必要がある。
いずれにしても、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、コンパクトな構成のインク吸収部材42あるいは細孔である毛細管手段を用いて背圧を制御することができ、インク供給システムをコンパクトな構成とすることができる、また、本実施形態のインク供給システムは、その大部分でインク15を自由状態で直接保持する構成とすることができ、インクの収容効率や使用効率を向上させることができる。特に、消耗品として適宜交換して使用されるインクタンクを、ほとんど筐体と栓部材26のみからなる簡素な構成とすることでき、それによって、インクタンクの製造コストを低減して、インクジェット記録装置のランニングコストを低減することができる。
(第3の実施形態)
次に、図4,5を参照して本発明の第3の実施形態について説明する。図4は、本実施形態のインク供給システムを模式的に示す断面図であり、図5は、図4のA部の拡大図である。これらの図において、第1の実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
本実施形態のインク供給システムでは、バッファインク室30は、主インク室13とバッファインク室30を含めたインク収容室(液体収容室)に対する第2のインク収容室(第2の液体収容室)50および第3のインク収容室(第3の液体収容室)53を経て、退避用インク室31に通じている。バッファインク室30には、記録ヘッド部11の底部、したがって、記録ノズル12のオリフィスと同等の高さ付近まで下方に延びる延伸通路51が設けられており、この延伸通路51と第2のインク収容室50は、底部に両者をつなぐ孔が設けられ、この孔内に第1のインク吸収部材52が設けられた壁を挟んで隔てられている。第2のインク収容室50と第3のインク収容室53は、第1のインク吸収部材52が設けられた孔よりも高い位置に位置する、第2のインク収容室50と第3のインク収容室53をつなぐ孔が形成され、この孔内に第2のインク吸収部材54が設けられた壁によって隔てられている。第3のインク収容室53と退避用インク室31は、底部に両者をつなぐ孔55が形成された壁によって隔てられている。
本実施形態の構成では、第1、第2のインク吸収部材52,54が、インク供給システムが遭遇する多彩な保存・使用環境に対して適正な背圧を保つ制御手段として機能する。以下にこのことについて説明する。
まず、周囲気圧が低下した際や主インク室13内の温度が上昇した際には、インク供給システム内の圧力が相対的に高まり、主インク室13内の空気層14の空気が膨張して、インク15に圧力が加わる。インク15に加わった圧力はこのインク供給システムの2つの開口部である、記録ノズル12の各オリフィスと第2のインク収容室50へ連通する第1のインク吸収部材52内のインク15のメニスカスに加わる。各メニスカスでは、一定の背圧の上昇に対して、界面力によってインク15の流出が防がれる。ここで、第1のインク吸収部材52を適切な濾過精度を有する構成として、第1のインク吸収部材52内でインク15のメニスカスに働く界面力を適切に設定しておくことによって、記録ノズル12からインク15を流出させることなく、第1のインク吸収部材52側で、第2のインク収容室50にインク15が流出するようにすることができる。第2のインク収容室50にインク15が流出することによって、インク供給システムの背圧の上昇が抑えられ、背圧が所定の範囲を越えて上昇するのを回避することができる。
第1のインク吸収部材52を介してインク15が引き続き流出すると、流出したインク15は、第2のインク収容室50内に溜まり、液位が上昇し、やがて、図5(a)に示すように、液位は第2のインク吸収部材54に達する。液位が第2のインク吸収部材54に達すると、インク15は第2のインク吸収部材54内に含浸し、第2のインク吸収部材54内にメニスカスが形成される。その後、さらに、背圧が高まった際には、この第2のインク吸収部材54内に形成されたメニスカスの界面力が適当な大きさになるようにすることによって、記録ノズル12側からのインク15の流出を回避して、インク15が第2のインク吸収部材54側で第3のインク収容室53へと流出するようにすることができる。
ここで、第2のインク収容室50内のインク15の液位が、第1のインク吸収部材52の高さと第2のインク吸収部材54の高さの中間の高さにある場合には、退避用インク室31側では、インク15に、界面力の作用が加わらないことになり、代わりに水頭圧が加わることになる。この際、第2のインク吸収部材54の配置高さを適切に設定し、第2のインク収容室50内のインク15によって加わる水頭圧が所定の範囲内となるようにすることによって、記録ノズル12からは、その部分での界面力のためにインク15が流出しないようにしつつ、背圧の上昇が、第2のインク収容室50内のインク15の液位の上昇によって相殺され、背圧が所定の範囲を越えて上昇しないようにすることができる。
次に、第2のインク吸収部材54を介して第3のインク収容室53に流出したインク15は、滴下して、まず、第3のインク収容室53から退避用インク室31への孔55を満たす。その後、インク15が第2のインク収容部材54を介して第3のインク収容室53内に流入してきた際には、第3のインク収容室53が密閉された状態にあるため、第3のインク収容室53内に流入したインク15の分だけ、インク15は孔55を介して退避用インク室31へと導出される。したがって、インク15がバッファインク室30側から流出している間に、第3のインク収容室53内で液位が上昇して、第2のインク吸収部材54の、第3のインク収容室53側がインク15によって濡らされることはなく、第2のインク吸収部材54内は、メニスカスが形成された状態に保たれる。このため、第2のインク吸収部材54内のインク15のメニスカスでの界面力の作用によって、背圧を高精度で、所定の範囲以下に抑えることができる。
次に、記録動作を行ってインク15を消費することによって、主インク室13内の背圧が低下し、あるいは、周囲気圧が上昇し、または主インク室13内の温度が下がることによって背圧が相対的に低下した場合について説明する。この場合、退避用インク室31および第2のインク収容室50に、上述のようにインク15が押し出されている時には、まず、退避用インク室31内のインク15が第3のインク収容室53内に押し戻され、第3のインク収容室53内で液位が上昇すると共に、第2のインク収容室50内のインク15がバッファインク室30に押し戻され、第2のインク収容室50内の液位が下降し、これによって背圧の低下が補われる。そして、図5(b)に示すように、第2のインク収容室50内の液位はやがて第1のインク吸収部材52の高さまで下降し、第3のインク収容室53内の液位は、第2のインク吸収部材54の高さまで上昇した状態となり、第2のインク吸収部材54内にメニスカスが形成された状態になる。その後、さらに背圧が低下すると、退避用インク室31から孔55を介して第3のインク収容室53内に取り込まれたインク15が、第2のインク吸収部材54のメニスカスを押して、第2のインク収容室50内に滴下し、滴下した分だけ、第2のインク収容室50からバッファインク室30にインク15が導入され、それによって背圧の低下が補われる。
このようにして、退避用インク室31内のインク15が無くなった後、あるいは、始めから退避用インク室31内にインク15が無い場合には、背圧の低下に伴って、大気連通孔18を介して退避用インク室31内に取り込まれた外気が、孔55を介して第3のインク収容室53内に入り、それに相当する量の空気が、第2のインク吸収部材54を介して第2のインク収容室50に入り、さらに第1のインク吸収部材52を介してバッファインク室30内に入る。これによって、背圧の低下が補われる。バッファインク室30内に気泡の形で取り込まれた空気は、最終的に、主インク室13内に取り込まれ、空気層14に加わる。この際、気泡の代わりに、鳥の水差しの原理で気液交換によりインク15がバッファインク室30へ随時補給される。
以上のように、本実施形態においても、第1、第2のインク吸収部材52,54によって、インク供給システム内の背圧が上昇する場合には、インク15をバッファインク室30から退避用インク室31側に一時的に流出させ、背圧が低下する場合には、退避されたインク15または外気を退避用インク室31側からバッファインク室30側に導入して、背圧を所定の範囲に制御することができる。したがって、本実施形態のインク供給システムを用いることによって、高い信頼性で所定の背圧を伴ってインクをインクジェット記録ヘッドに供給することができ、インクジェット記録装置を安定して高い信頼性で動作させることが可能となる。
背圧の制御範囲は、第1、第2のインク吸収部材52,54の濾過精度に依存し、すなわち、第1、第2のインク吸収部材52,54の濾過精度を最適に設定することによって、背圧を最適な所望の範囲内に制御することができる。このような第1、第2のインク吸収部材52,54の働きは、一般には、毛細管力を発生する毛細管手段によって果たすことができる。すなわち、第1のインク吸収部材52および/または第2のインク吸収部材54の代わりに、毛細管力を発生可能な大きさで、内面に親水化処理を施した細孔を用いることが可能である。この場合、これらの細孔の大きさは、少なくとも、数十ミクロン程度の、記録ノズル12の各オリフィスの径よりも大きなものとする必要がある。
いずれにしても、本実施形態によれば、第1、第2の実施形態と同様に、コンパクトな構成の第1、第2のインク吸収部材52,54あるいは細孔である毛細管手段を用いて背圧を制御することができ、インク供給システムをコンパクトな構成とすることができる、また、本実施形態のインク供給システムは、その大部分でインク15を自由状態で直接保持する構成とすることができ、インクの収容効率や使用効率を向上させることができる。特に、消耗品として適宜交換して使用されるインクタンク36を、ほとんど筐体と栓部材26のみからなる簡素な構成とすることでき、それによって、インクタンクの製造コストを低減して、インクジェット記録装置のランニングコストを低減することができる。
本実施形態の変形例を図6に示す。図6(b)は、図6(a)のバッファインク室30と退避用インク室31を隔てる壁を、図6(a)の紙面に垂直な方向に切断した断面図である。
図4,5には、第2のインク収容室50と第3のインク収容室53を、バッファインク室30から退避用インク室31に向かう方向に順に並べて配置した例を示したが、図6に示す例では、第2のインク収容室50と第3のインク収容室53は、バッファインク室30から退避用インク室31に向かう方向に対して垂直な方向に並べて配置されている。すなわち、第2のインク収容室50は、図6(b)の紙面裏側に位置する延伸通路51に第1のインク吸収部材52を介してつながっている。第2のインク吸収室50に第2のインク吸収部材54を介してつながった第3のインク収容室53は、図6(b)の紙面手前側に位置する退避用インク室31に孔55を介してつながっている。この構成によれば、第2のインク収容室50と第3のインク収容室53を、バッファインク室30と退避用インク室31を隔てる壁内にコンパクトに形成することができる。
(第4の実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。図7(a)は、本実施形態のインク供給システムを模式的に示す断面図であり、図7(b)は、図7(a)の記録ヘッド部11の連結部68の平面図である。図7において、第1の実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
本実施形態では、バッファインク室30および退避用インク室31内にインク吸収部材63,61がそれぞれ配置されている。バッファインク室30と退避用インク室31とは、両者を隔てる壁の底部に形成された、両者をつなぐ孔である連絡路65を介してつながっている。連絡路65は、プラスチック成型部材に穿かれた細孔であり、撥水性を有し、通常はインク15が満たされることはない。
バッファインク室30内のインク吸収部材63は、インク残量検出部材24の周囲の部分を除いて、バッファインク室30内のほぼ全体を占めており、退避用インク室31への連絡路65およびヘッド液室21へのインク通路22の入口に接している。記録ヘッド部11の、インクタンク36との、円筒状の連結部68内では、インク吸収部材63の周囲に空隙部70が確保されている。
本実施形態の構成では、インクカートッジ36と記録ヘッド部11とは、インクタンク36の円筒状の連結部67が、インクジェット記録ヘッド部11側の、インク吸収部材63が内部に配置された連結部68の外周を囲み、連結部68の外面と連結部67の内面との間に弾性部材29を挟み込むようにして連結されている。記録ヘッド部11側の連結部68の先端には、部分的な突起部69が形成されており、図1(a)に示すように、この突起部69が、インクタンク36の、連結部68の開口を塞ぐ栓部材66に当接して押し上げることによって、連結部68の開口が開かれている。この際、栓部材66を弾性部材29と部分的に連結しておき、栓部材66が弾性部材29との連結部で弾性変形して、連結部68の開口を開く位置に移動するようにしておくのが好ましい。このようにしておくことによって、インクタンク36を取り外した際には、栓部材66と弾性部材29の連結部の復元力によって、連結部68の開口を塞ぐ位置に速やかに移動するようにすることができる。インクタンク36は、弾性部材20の内径を3〜6mm程度と細くすれば、インク15が残った状態でインクタンク36を外しても、残ったインク15が界面力のために漏れにくくなるようにすることができるが、この場合でも、振動や押し圧が加わった場合には、インク15が漏れる危惧がある。そこで、栓部材66が速やかに閉じるようにしておくことによって、万が一にもインク15が漏れるのを防止することができ、また、漏れたとしても、漏洩量を低減することができる。また、弾性部材20は、ドーナツ状の複数の弾性部材20を一体に構成し、先端部分を突出させた構成としてもよく、それによって、接触位置を保ち、接触面積を増やして密閉力を向上させ、密封性能を向上させることができる。
本実施形態のインク供給システムにおいて、インクタンク36を記録ヘッド部11のハウジングに形成されたハウジングガイド(図示せず)に従って位置決めし、栓部材16が記録ヘッド部11の連結部68の突起部69によって主インク室13内に押し込まれると、栓部材66の、連結部67の主インク室12側の開口からはみ出ていた体積分のインク15が連結部68の開口内に押し出される。このようにして押し出されたインク15は連結部68内を占めるインク吸収部材63の先端部に触れ、吸収される。この際、同時にインク吸収部材63に内包された空気がインク15と入れ替わって主インク室13内に入る。このように、連結部68内にインク吸収部材63を配置した構成とすることによって、連結部68の開口が小さい場合であっても、インク15の初期充填がスムースに行なわれるようにすることができる。
インク吸収部材63に吸収されたインクは下方に向かい、バッファインク室30内の、インク吸収部材63が設けられていない、インク残量検出部材24の周りの部分もインク15によって満たされる。この際、インク残量検出部材24の周りの部分に存在していた空気は、連結部68内のインク吸収部材23の周囲の空隙70を通って主インク室13内部に侵入する。そして、バッファインク室21がインク15で満たされ、バッファインク室21内の空気が無くなると、バッファインク室21へのインク15の供給も停止する。
このようにして、バッファインク室21内の空気が主インク室13の上層部に移動して空気層14を形成し、代わりにインク15がバッファインク室21側に移動した状態では、主インク室13とバッファインク室30内部は概ね大気圧と同等の内圧になっており、インク15は、記録ノズル13の各オリフィスおよびインク吸収部材23におけるインクの界面力によって保持されている。インクタンク36の着脱時、記録ノズル12は、記録装置本体側に設けられたキャッピング手段(図示せず)によって覆った状態にされ、これによって、インクが万が一にも漏洩するのを防ぐことができる。
この状態で、キャッピング手段に連結された吸引ポンプ(図示せず)で軽く吸引することにより、記録ノズル12からインク15を少量吸引し、新たなインク15を各オリフィス部へ誘導し、かつバッファインク室30や主インク室13内部を軽い負圧状態にすることができる。この際、インク吸収部材63に含浸したインク15の界面力によって、連絡路65から外気が侵入するのが防がれ、外気と主インク室12上層部の内気との間に一定範囲内の気圧差を生じさせ、すなわち所定の背圧を発生させることができる。この気圧差の範囲は、インク吸収部材63と含浸されたインク15との間に働く毛細管力などによって決まり、オリフィスからインク15が漏れることがなく、また、記録に適した範囲として、例えば±20mmH2O程度となるように設定するのが好ましい。この設定は、インク吸収部材63のボアサイズや寸法を変えることによって調整することができる。
本実施形態において、インク吸収部材63としては、含浸させたインク15に対して、上記のように適度の毛細管力を発生する部材であればどのような部材を用いてもよく、例えば、厚さが100μ前後のステンレス鋼製薄板のような親水性のシートを多数枚、数百μ間隔で積層させた構造物や金属製繊維片の不織布構造物のような、隙間や網目や多孔質構造を形作る親水性の構造物を用いることができる。しかし、インク吸収部材63としては、これらに限定されることはなく、ポリエステルフェルトやポリウレタンのような多孔性部材や繊維構造体などを用いてもよい。
上記のように、バッファインク室30および記録ノズル12にインク15が満たされ、所定の背圧が生じた状態で、記録動作を行うと、減少したインク分だけ、背圧が低下する。背圧が所定の範囲を越えて低下し、内外の圧力差がインク吸収部材63と含浸さしたインク15との間に働く一定の界面力を越えると、外気が連絡路65を介して少量ずつバッファインク室30内に侵入する。バッファインク室30内に侵入した外気は、連結部68内の空隙70を経て気泡の形で主インク室13内に侵入し、侵入した気泡分のインク15がバッファインク室30に供給される。主インク室13に貯留されたインク15が残っている間は、消費されたインク15の分だけ、このような気液交換が繰り返され、バッファインク室30内のインクは満杯状態に保たれる。
主インク室13内のインク15が全て消費されると、バッファインク室30内のインク15の液位が下がり始める。この液位の低下は、バッファインク室21内に配置されたインク残量検出部材24を利用して検出することができ、液位の低下が検出された時に警報を出力するようにすることができる。警報は、液位がフィルタ部材20にまで達する前に、バッファインク室30の底部に未だインク15が残る状態で発するようにするのが好ましい。
次に、外気圧が低下し、または主インク室13内の温度が上昇して、外気に対して内部の圧力が相対的に上昇した場合について説明する。この場合、主インク室12の上層の空気層14が膨張して、インク15に圧力が加わり、インク15に働く圧力がインク吸収部材63内のインク15の界面力を上回ると、インク吸収部材63に吸収されたインク15の一部が連通路65を通って退避インク室31に漏出する。この際、記録ノズル13のオリフィス部のインク15の界面力が、インク保持部材63内に含浸したインク15の界面力に比べて充分に強くなるように、インク保持部材63の構成を調整しておくことによって、記録ノズル12からインク15が漏出するのを回避することができる。バッファインク室30から退避用インク室31に押し出されたインク15は、退避インク室31内に配されたインク吸収部材61に含浸する。
このように、退避用インク室31にインク15の一部を一旦退避させることによって、背圧の上昇が抑えられ、背圧が所定の範囲を越えて上昇しないようにすることができる。この際、退避用インク室31内に退避されたインク15は、インク吸収部材61に含浸保持されるので、このインク15によって、記録ノズル13のオリフィス部に水頭圧が加わることもない。
退避用インク室31にインク15が一旦退避された状態で、記録動作によってインク15が消費されることによって背圧が低下し、あるいは、外気圧が上昇し、または主インク室13内の温度が低下することによって背圧が相対的に低下した際には、上述のようにバッファインク室30内に空気が導入される前に、まず、インク吸収部材61に含浸したインク15が、大気連通孔18を介して退避用インク室31内に導入される外気の圧力によって押されて、連絡路65を通ってバッファインク室30内に戻される。この際、インク保持部材61内におけるインク15の界面力を、インク保持部材63内におけるインク15の界面力に比べてやや低めの値に設定しておくことによって、インク15がインク保持部材61内に残留するのを抑えることができる。
以上のように、本実施形態においても、インク吸収部材63によって、インク供給システム内の背圧が上昇する場合には、インク15をバッファインク室30から退避用インク室31側に一時的に流出させ、背圧が低下する場合には、退避されたインク15または外気を退避用インク室31側からバッファインク室30側に導入して、背圧を所定の範囲に制御することができる。したがって、本実施形態のインク供給システムを用いることによって、高い信頼性で所定の背圧を伴ってインクをインクジェット記録ヘッドに供給することができ、インクジェット記録装置を安定して高い信頼性で動作させることが可能となる。
また、本実施形態においても、インクタンク36は、インク15を自由状態で直接保持する構成とすることができ、インクの収容効率や使用効率を向上させることができる。また、耗品として適宜交換して使用されるインクタンク36を簡素な構成とすることができ、それによって、インクタンクの製造コストを低減して、インクジェット記録装置のランニングコストを低減することができる。
本発明の第1の実施形態のインク供給システムを模式的に示す断面図である。 図1の変形例のインク供給システムを模式的に示す断面図である。 本発明の第2の実施形態のインク供給システムを模式的に示す断面図である。 本発明の第3の実施形態のインク供給システムを模式的に示す断面図である。 図4のA部の拡大図であり、図5(a)は、インク供給システム内の背圧が外気圧に対して相対的に高まった時の状態、図5(b)は、インク供給システム内の背圧が外気圧に対して相対的に低下した時の状態を示している。 図4のインク供給システムの変形例を模式的に示す断面図である。 本発明の第4の実施形態のインク供給システムの模式図であり、図7(a)は断面図、図7(b)は、図7(a)の記録ヘッド部の連結部の平面図である。 従来例のインク供給システムを模式的に示す断面図である。
符号の説明
11,111 記録ヘッド部
12,112 記録ノズル
13 主インク室
14 空気層
15,114 インク
18,118 大気連通孔
20,120 フィルタ部材
21,121 ヘッド液室
22,122 インク通路
24,124 インク残量検出部材
26,66 栓部材
27 ばね部材
28 柱状部材
29 弾性部材
30 バッファインク室
31 退避用インク室
32,34,42,61,63 インク吸収部材
33 連絡堀溝
35 細孔
36,113 インクタンク
38,39,67,68,138 連結部
43 空気バッファ室
44,55 孔
50 第2のインク収容室
51 延伸通路
52 第1のインク吸収部材
53 第3のインク収容室
54 第2のインク吸収部材
65 連絡路
69 突起部
70 空隙
114 インク室
116 インク吸収部材収納室
117 接合部
125 溝

Claims (13)

  1. 液体を貯溜し、インクジェット記録ヘッドに通じている液体収容室と、
    外部に通じる大気連通孔が上部に接続している退避用液体収容室と、
    前記液体収容室と前記退避用液体収容室とをつなぐ、前記液体が充填された時に毛細管力を発生する毛細管手段とを有し、
    前記液体収容室内の圧力が高まった時に、前記液体は、前記インクジェット記録ヘッドの記録ノズルを通って外部に押し出される前に、前記毛細管手段を通って前記退避用液体収容室に押し出される液体供給システム。
  2. 前記毛細管手段は、前記記録ノズルのオリフィスと実質的に同じ高さに配置されており、前記毛細管手段に充填された前記液体に働く界面力が、前記記録ノズルの前記オリフィスに充填された前記液体に働く界面力よりも小さい、請求項1に記載の液体供給システム。
  3. 液体を貯溜し、インクジェット記録ヘッドに通じている液体収容室と、
    外部に通じる大気連通孔が上部に接続している退避用液体収容室と、
    前記液体収容室と前記退避用液体収容室との間に位置する空気バッファ室と、
    前記液体収容室と前記空気バッファ室とをつなぐ、前記液体が充填された時に毛細管力を発生する毛細管手段とを有し、
    前記退避用液体収容室と前記空気バッファ室とは、両者をつなぐ孔が底部に形成された壁によって隔てられ、前記毛細管手段は、前記退避用液体収容室と前記空気バッファ室とをつなぐ前記孔よりも高い位置に配置されており、
    前記液体収容室内の圧力が高まった時に、前記液体は、前記インクジェット記録ヘッドの記録ノズルを通って外部に押し出される前に、前記毛細管手段を通って前記空気バッファ室に押し出される液体供給システム。
  4. 前記毛細管手段は、毛細管力によって前記液体を吸収して保持可能な液体吸収部材である、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体供給システム。
  5. 前記毛細管手段は、内面が親水化された細孔である、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体供給システム。
  6. 液体を貯溜し、インクジェット記録ヘッドに通じている液体収容室と、
    外部に通じる大気連通孔が上部に接続している退避用液体収容室と、
    前記液体収容室と前記退避用液体収容室との間に位置する第2および第3の液体収容室と、
    前記液体収容室と前記第2の液体収容室をつなぐ、前記液体が充填された時に毛細管力を発生する第1の毛細管手段と、
    前記第2の液体収容室と前記第3の液体収容室をつなぐ、前記液体が充填された時に毛細管力を発生する第2の毛細管手段とを有し、
    前記退避用液体収容室と前記第3の液体収容室とは、両者をつなぐ孔が底部に形成された壁によって隔てられ、前記第2の毛細管手段は、前記退避用液体収容室と前記第3の液体収容室とをつなぐ前記孔よりも高く、かつ前記第1の毛細管手段より高い位置に配置されており、
    前記液体収容室内の圧力が高まった時に、前記液体は、前記インクジェット記録ヘッドの記録ノズルを通って外部に押し出される前に、前記第1の毛細管手段を通って前記第2の液体収容室に押し出され、さらに、前記第2の毛細管手段を通って前記第3の液体収容室に押し出される液体供給システム。
  7. 前記第1および/または第2の毛細管手段は、毛細管力によって前記液体を吸収して保持可能な液体吸収部材である、請求項6に記載の液体供給システム。
  8. 前記第1および/または第2の毛細管手段は、内面が親水化された細孔である、請求項6に記載の液体供給システム。
  9. 前記液体収容室は、インクジェット記録装置本体に対して着脱自在に構成された液体収容容器内に形成された主液体収容室と、前記インクジェット記録ヘッドと一体に形成された筐体内に形成されたバッファ液体収容室とがつながって形成されており、前記バッファ室に、外部から前記バッファ液体収容室内に前記液体が存在しているかどうかを確認可能な液体残量検出部材が設けられている、請求項1から8のいずれか1項に記載の液体供給システム。
  10. 前記液体収容容器内に設けられ、前記主液体収容室の、前記バッファ液体収容室への開口を塞ぐ位置に付勢された栓部材と、
    前記主液体収容室を前記バッファ液体収容室に接続した時に、前記栓部材に当接して、前記栓部材を、前記主液体収容室の、前記バッファ液体収容室への前記開口を開く位置に移動させる、前記インクジェット記録ヘッド側に設けられた柱状部材と、
    前記柱状部材の周囲を覆う、毛細管力によって前記液体を吸収して保持可能な液体吸収部材とをさらに有する、請求項9に記載の液体供給システム。
  11. インクジェット記録装置本体に対して着脱自在に構成された液体収容容器内に形成された、液体を貯溜する主液体収容室と、
    前記主液体収容室に接続し、インクジェット記録ヘッドに通じているバッファ液体収容室と、
    外部に通じる大気連通孔が上部に接続している退避用液体収容室と、
    前記バッファ液体収容室内に配置された、毛細管力によって前記液体を吸収して保持可能な第1の液体吸収部材と、
    前記退避用インク室内に配置された、毛細管力によって前記液体を吸収して保持可能な第2の液体吸収部材とを有し、
    前記バッファ液体収容室と前記退避用液体収容室とは、両者をつなぐ連絡路が形成された壁によって隔てられ、前記第1の液体吸収部材は、少なくとも、前記バッファ液体収容室と前記退避用液体収容室とをつなぐ前記連絡路の開口を塞ぐ位置に設けられており、
    前記液体収容室内の圧力が高まった時に、前記液体は、前記インクジェット記録ヘッドの記録ノズルを通って外部に押し出される前に、前記液体吸収部材を通って前記連絡路に押し出される液体供給システム。
  12. 前記第1の液体吸収部材に含浸した前記液体に働く界面力が、前記第2の液体吸収部材に含浸した前記液体に働く界面力より大きい、請求11に記載の液体供給システム。
  13. 前記バッファ液体収容室に配置された、外部から前記バッファ液体収容室内に前記液体が存在しているかどうかを確認可能な液体残量検出部材をさらに有する、請求項11または12に記載の液体供給システム。
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