JP2005161634A - 液体収納容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】所定範囲の背圧を発生して、インクを液体噴射ヘッドに高い信頼性で良好に供給することが可能であり、かつ、構造の複雑化を伴うことなく低いコストで製造可能であり、より小型化が可能な液体収納容器を提供する。
【解決手段】液体収納容器12は、インク14を直接保持する主液体収納室13と、主液体収納室13とは別に液体を貯溜可能であり、主液体収納室13と上方の空間がつながっている副液体収納室26を有している。副液体収納室26と壁を挟んで隣接して液体収容空間部27が形成されており、液体収容空間部27は、主液体収納室13から隔離され、大気連通孔18に通じている。副液体収納室26と液体収容空間部27の間の壁の底部には、両者間に延びる孔が形成され、この孔は、毛細管力を発生するインク吸収体16によって塞がれている。
【選択図】図1

Description

本発明は、液体噴射ヘッドに供給する液体を貯留する、液体噴射ヘッドから分離可能な液体収納容器に関する。
インクジェット記録装置は、通常、キャリッジに搭載した液体噴射ヘッドを使用し、制御システムによって、キャリッジを紙等の記録媒体を横切って移動させる時に、液体噴射ヘッドを作動させて記録媒体上に液滴を射出させ、文字および画像を形成する。液体噴射ヘッドの射出用の液体(以下インク)は記録装置内に固定して配置されるか、あるいはキャリッジ上に液体噴射ヘッドと共に搭載され、キャリッジと共に移動させられる液体収納容器から液体噴射ヘッドに供給される。液体収納容器が固定配置された構成では、柔軟なインク供給チューブを液体噴射ヘッドに結合し、このインク供給チューブを介してインクが供給される。液体収納容器がキャリッジと共に移動する構成では、液体収納容器は液体噴射ヘッドに直接接合され、接合部を介してインクが供給される。いずれの場合にも、液体収納容器としては、収容されたインクが尽きた時に交換できるように、液体噴射ヘッド側から分離可能な構成になっているものがある。
液体噴射ヘッドを正常に機能させるために、液体収納容器は、インクを途切れること無く供給するとともに、液体収納容器内および/または液体噴射ヘッド内に適正な背圧を生成し、維持することができる必要がある。ここで、背圧とは、大気圧を基準とした液体噴射ヘッドや液体収納容器内の圧力を意味している。
背圧が低くなり過ぎると、インク吐出口、すなわちオリフィスにおけるインクメニスカスの凹面の湾曲が大きくなり、特にインク吐出後、気泡を液体噴射ヘッド内に抱き込みやすくなり、これが不吐出の要因となる場合がある。また、背圧が高いと、背圧が、オリフィスにおけるインクの表面張力による界面力を超えてしまい、インク漏れを生じてしまう恐れがある。
このため、液体収納容器および/または液体噴射ヘッドは記録装置の保管中および作動中に遭遇する幅広い温度および大気圧において適正範囲内の背圧を生成し、保持することを要求される。この要求を実現するインク供給装置としては、特許文献1や特許文献2に記載されたインクジェット記録装置が有る。また、同様な主旨の構成は、特許文献3や特許文献4にも開示されており、その効用が述べられている。
これらの従来技術に類似した方式として、図5の断面図に示した液体収納容器112が実用に供されている。
この液体収納容器112は、インク114を自由状態で直接収容する主液体収納室113と、インク吸収体116a,116b,116cを収容するインク吸収体収納室115を有している。インク吸収体116a,116b,116cは、インク114とインク吸収体116a,116b,116cとの間に働く界面力によってインク114を保持するものであり、ウレタンやポリエステルなどの繊維片集合体による毛細管力発生部材で構成されている。主液体収納室113とインク吸収体収納室115とは隔壁によって隔てられており、この隔壁の、底部に形成された孔部分のみで連通している。この隔壁には、底部の孔の、インク吸収体収納室115側の開口の上縁から上方に延びる複数の大気導入路123が形成されている。
主液体収納室113は、インク吸収体収納室115に通じる孔を除いては、密閉されており、底部に液体残量検出部材122が取付けられている。液体残量検出部材122は、光学的反射部材であり、インク114の残量が減ってきた時に、外光を反射し、それによってインク114が無くなってきたのが分かるようになっている。
インク吸収体収納室115には、液体噴射ヘッド110に接合される筒状の接合部117が設けられており、この部分の内部にインク吸収体116aが設けられ、さらに、これに接して下から順にインク吸収体116b,116cが積層するように設けられている。インク吸収体収納室115の天井部には、大気連通孔18が通じている。
この液体収納容器112は図示しないガイド等に導かれて液体噴射ヘッド110にパッキング部材125を挟んで分離可能に密閉状態に接合して使用される。このように接合した状態で、インク114は、主液体収納室113から、インク吸収体収納室115を通って液体噴射ヘッド110に供給される。主液体収納室113からインク吸収体収納室115へのインク114の導入は、導入されたインク114に相当する空気が主液体収納室115側へ入る形で行なわれ、この際、大気導入路23は空気やインクの移動を容易にする働きをする。液体噴射ヘッド110に供給されたインクは、液体噴射ヘッド110の入口部分に設けられたフィルタ部材119によって、ゴミなどを取り除かれ、インク通路120を通ってヘッド液室121内に満たされ、ノズル部111に充填される。
この液体収納容器112において、インク吸収体116cは周囲環境が変動した際の背圧制御手段として機能する。すなわち、例えば、気圧が低下した場合や液体収納容器112の温度が上昇した場合には、主液体収納室113の上層部の空気の圧力が相対的に高まり、この空気が膨張する。すると、その膨張した空気の分量のインク114が主液体収納室113からインク吸収体収納室115側に押し出される。このように押し出されたインク114は、インク吸収体116b、さらにはインク吸収体116cの、それまでインクを保持していなかった部分に収容され、それによって、環境変化時にも液体噴射ヘッド110内の背圧を適正な一定範囲内に保つことができる。
このようにインク吸収体116cにまで一旦収容されたインクは、その後、インクが消費される際などに、優先的にインク吸収体116b側へと戻される。この際、インクがインク吸収体116cから離れやすいように、インク吸収体116cはインク吸収体116bに比べて弱い界面力しか働かない構成となっており、これによって、液体収納容器112の使用末期にインク吸収体116cにインクが残りにくくしている。インク吸収体116aはインク吸収体116bよりさらに強い毛細管力でインクを吸引する構成となっており、インク114を液体噴射ヘッド10へ導く働きをし、また同時に、インク漏れを抑制する働きもする。
特開平8-207304号公報 特開2002−36593号公報 特開2001−246761号公報 特開2001−130024号公報
上記の従来例に示したようなタイプの液体収納容器においては、インクを主として自由状態で貯留しているが、背圧の生成やインクの漏洩防止のために、インクを供給する流路の途中部分にインク吸収体を用いている。このインク吸収体を用いた部分では、その部分の全容積の約20%〜70%の範囲でしかインクを収容したり排出したりすることが出来ず、容積効率が悪いという課題が有る。
また、このようなタイプの液体収納容器において、インクタンクの使用寿命を延ばすために、貯留インク量を増やすと、それに応じてインク消費後の、主液体収納室の上層に溜まる空気の量も増え、これに比例して、押し出されたインクを吸収するインク吸収体の体積も大きくしなくてはならない。このため、このようなタイプの液体収納容器は、貯留インク量を増やすと、必然的に、貯留インク量を増やした分以上に液体収納容器を大型化する必要が生じてしまう。また、大型のインク吸収体を用いると、それがゴミの発生源になってしまい、さらに、消耗品である交換用インクタンクのコストを圧迫する要因ともなってしまう。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、所定範囲の背圧を発生して、インクを液体噴射ヘッドに高い信頼性で良好に供給することが可能であり、かつ、構造の複雑化を伴うことなく低いコストで製造可能であり、より小型化が可能な液体収納容器を提供することにある。
上述の目的を達成するため、本発明の液体収納容器は、液体を自由状態で直接貯溜し、その液体を液体噴射ヘッドに供給するための開口が形成された主液体収納室と、外部に通じる大気連通孔とを有する液体収納容器において、コンパクトで簡素な構成とすることが可能な背圧制御手段が、主液体収納室と大気連通孔との間に配置されていることを特徴とする。
このような背圧制御手段は、一実施態様において、主液体収納室とは別に液体を貯溜可能であり、主液体収納室と上方の空間がつながっている副液体収納室と、副液体収納室の一側壁の底部の、大気連通孔側に通じる孔を塞ぐように配置された毛細管力発生部材によって構成されている。
この構成によれば、毛細管力発生部材は、副液体収納室に貯溜された液体に浸されて、液体を含浸保持した状態に保たれるようにすることができる。したがって、主液体収納室内は、液体を含浸保持したこの毛細管力発生部材によって、外気から遮蔽された状態になり、主液体収納室内には、外気圧に対して、所定の背圧を生じさせることが可能となる。すなわち、毛細管力発生部材に含浸した液体が、主液体収納室側と大気連通孔側である程度圧力差が生じても、毛細管力によってこの圧力に耐え、空気が毛細管力発生部材を越えて行き来しないようにする働きをする。一方、液体が消費されることによって、または環境変化によって、背圧に変動が生じ、背圧と外気圧の差が所定以上になった時には、含浸された液体の一部が一旦空気によって毛細管力発生部材から押し出されて、毛細管力発生部材を挟んで空気がやりとりされる。これによって、主液体収納容器内の背圧は所定の範囲内に制御される。
この実施態様の液体収納容器において、毛細管力発生部材によって塞がれた孔の上面に、副液体収納室側の端部および/または大気連通孔側の端部から、副液体収納室側と大気連通孔側とをつなぐ方向に、孔の途中まで延びる溝を形成すれば、毛細管力発生部材を介した空気のやりとりがスムースに行なわれるようにすることができる。
また、主液体収納室から隔離され、毛細管力発生部材によって塞がれた孔が形成された壁を挟んで副液体収納室と隣接して配置され、大気連通孔が上部に接続している液体収容空間部をさらに設けてもよい。このような液体収容空間部は、環境変化によって、副液体収納空間から毛細管力発生部材を介して流れ出た液体の、一時的な貯溜部として利用することができる。
本発明の他の実施態様において、背圧制御手段は、主液体収納室に通じる開口から下方に延び、折り返して上方に延びて大気連通孔に通じており、少なくとも折り返し部に、毛細管力を発生する微細通路部が形成された大気連通孔連絡路によって構成されている。
この構成では、折り返し部の微細通路部に、常に液体が充填された状態にすることができる。そして、この微細通路部に充填された液体によって、主液体収容空間内は、外気から遮蔽され、それによって、外気圧に対して所定の背圧を主液体収容空間内に発生させることができる。すなわち、微細通路部に充填された液体が、主液体収納室側と大気連通孔側である程度圧力差が生じても、毛細管力によってこの圧力に耐え、空気が微細通路部を越えて行き来しないようにする働きをする。一方、液体が消費されることによって、または環境変化によって、背圧に変動が生じ、背圧と外気圧の差が所定以上になった時には、微細通路部に充填された液体が一旦空気によって微細通路部から押し出されて、微細通路部を挟んで空気がやりとりされる。これによって、主液体収納容器内の背圧は所定の範囲内に制御される。
この実施態様の液体収納容器において、微細通路部には親水化処理を施しておくのが好ましく、それによって、スムースに微細通路部に液体が充填された状態にすることができる。
また、大気連通孔連絡路は、毛細管力を発生する微細通路部と、該微細通路部よりも幅が大きい液溜まり部とが交互につながれた構成としてもよい。それによって、大気連通孔連絡路内での液体の大きな流動を抑えることができる。また、この場合、微細通路部と液溜まり部は、大気連通孔連絡部の折り返し部を挟んで線対称に配置してもよい。
また、大気連通孔連絡路の、主液体収納室に通じる開口の幅を、大気連通孔連絡路の他の部分より大きくしておけば、液体収納容器が、記録装置のキャリッジと共に移動する際などに生じる、主液体収納容器内の液体の液面の変動時に、液体が大気連通孔連絡路内に補給されるようにすることができる。
本発明の液体収納容器は、液体を自由状態で直接貯溜する主液体収納室と大気連通孔との間に配された背圧制御手段によって、液体収納容器内の背圧を所定の範囲内に制御することができ、それによって、高い信頼性で背圧を制御して良好に液体を液体噴射ヘッドに供給可能なものとすることができる。この際、背圧制御手段は、従来の、比較的大きな退避空間とインク吸収体とを備えるインク吸収体収納室に比べて、コンパクトで簡素な構成とすることができ、したがって、液体収納容器内の大部分を、主液体収納室として利用することができる。このため、本発明の液体収納容器は、従来に比べて、液体の収納効率を格段に高くすることができ、また、収納した液体をほぼ100%使い切るのが容易である。また、大きなインク吸収体を必要としないので、製造コストも低減でき、廃棄物の低減にもつながる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
最初に、図1,2を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。図1、2は、本実施形態の液体収納容器12の、液体噴射ヘッド10に接続した状態の断面図である。
この液体収納容器12は、その内部の大部分が、インク14を自由状態で直接保持する主液体収納室13となっている。液体収納容器12の筐体の材料としては、所定の剛性を有し、耐インク性の良い材料が選択される。
液体収納室13の底部には、液体残量検出部材22が設けられている。液体残量検出部材22は、その一面が液体収納容器12の外面に露出し、反対側の面が液体収納室13のインク14に接触している。液体残量検出部材22は、図には詳細に示していないが、インク14に接する内面が、45度の2等辺直角三角形状に成型された所定の屈折率を有する光学的反射部材であり、内面にインク14が接触している状態では、外面から入射した光を透過するが、内面が空気に接していると、入射した光を反射する。これによって、使用者が、液体収納容器12内にインク14が残っているかどうかを確認することができるようになっている。
液体収納容器12の上部には、主液体収納室13に比べてはるかに小規模であるが、主液体収納室13とは別にインク14を貯溜可能な副液体収納室26と液体収容空間部27が設けられている。これらは、図に示す例では、液体収納容器12の一方の側壁から中央付近まで水平に延びる水平板部30と、水平板部30の中央寄りの縁から上方に延びる立壁部31によって形成されている。また、立壁部31の上端には、液体収納容器12の端部側へ戻るように一定の長さだけ水平に延びる返し部32が形成されている。
副液体収納室26と液体収容空間部27は、液体収納容器12の天井部から水平板部27に向かう突出部33と、突出部33と水平板部30との間の隙間を埋めるように設けられたインク吸収体16とによって隔てられ、中央側が副液体収納室26、その反対側が液体収容空間部27となっている。
突出部33には、図1に示す例では、副液体収納室26側から突出部33の底面に沿って底面の中程まで延びる大気導入路23が形成されている。あるいは、図2に示すように、副液体収納室26側から突出部33の底面の中程まで延びるものと、液体収容空間部27側から延びるものとの2種の大気導通路23a,23bを設けてもよい。大気導入路23,23a,23bは、1つでもよいが、平行に複数配置してもよい。
立壁部31は、液体収納容器12の天井部には達しておらず、したがって、副液体収納室26は、主液体収納室13と、立壁部31の上縁と液体収納容器12の天井部との間の隙間を介して繋がっている。この際、立壁部31とインク吸収体16の高さは、副液体収納室26に上限までインク14を貯溜した時に、インク14の液面がインク吸収体16の上端より高い位置にくるようになっている。
液体収容空間部27には、外部に通じる大気連通孔18が接続している。大気連通孔18は、図では簡単に示しているが、インク14が万が一にも漏出するのを防止するため、また、インクの蒸発を最小限に抑えるために、微細な孔が長く迷路状に延びるように構成されている。
液体収納容器12の底部には、筒状に突出した、液体噴射ヘッド10との接合部17が形成されている。接合部17は、液体収納室13に直接接続しており、内部には、インク吸収体16aが設けられている。
この液体収納容器12は、その接合部17のところで、間にパッキング部材25を挟んで液体噴射ヘッド10に接合して接続される。液体噴射ヘッド10には、接合部17に接続されるインク通路20が、接合面に開口しており、インク通路20の入口には、フィルタ部材19が取付けられている。フィルタ部材19は、ゴミ、異物、インクの凝集成分、気泡など、液体噴射ヘッド10のノズル部11のオリフィスを詰まらせるような大きさの異物の混入を防ぐ働きをし、このために濾過精度20μm程度のものが使用される。
インク通路20は、ヘッド液室21に通じ、詳細には図示していないが、ヘッド液室21には、多数のノズルが高密度で形成されたノズル部11が接続している。ノズル部11には、例えば、一色あたり256個のノズルが300dpi(dot per inch)の密度で形成されている。各ノズルには通電によって気泡を発生させ、インクを液滴の形で吐出させるための発熱体が設けられている。図1においてはインク滴の吐出は下向きに行われる。又、図示していないが、ノズル部11に電気信号を供給するプリント配線基板等も存在している。
本実施形態において、インク吸収体16,16aとしては、例えば、ポリエステルフェルトを用いることができる。しかし、インク吸収体16,16aはこれに限定されるものではなく、インク14の界面で適度の毛細管力を発生させる毛細管力発生部材であればどのような部材を用いてもよく、例えばポリウレタンなどの多孔質部材や、1次元状に、または2次元状に延びる繊維構造体なども用いることができる。また、金属や樹脂繊維の網などの網目状体や多孔質体等のフィルタを用いることもできる。インク吸収体16は、フィルタ19より粗い濾過精度を有するものであってよく、例えば濾過精度70μm程度のものも使用できる。インク吸収体16として、ポリエステルフェルト等の柔軟な部材を用いる場合は、突出部33や水平板部30の壁面との密着性を高めるため、円筒形状にして圧縮した状態で配するとよい。
この液体収納容器12には、初期には、図1に示すように、インク14が9分目程度充填されている。この状態では、主液体収納室13だけでなく、副液体収納室26にもインク14の一部が貯溜され、インク吸収体16はインク14で十分に湿った状態にある。主液体収納室13と副液体収納室26の上部は空気層が占めている。この空気層は、副液体室26、インク吸収体16、液体収容空間部27、および大気連通孔18を経て、外気に間接的につながっているが、副液体収納室26の液面によって外気から遮蔽されている。
副液体収納室26内のインク26は、後述するように、環境変化によって、一部が液体収容空間部27側へ移ることがあり、また、副液体収納室26と主液体収納室13とは、上部で接続されているので、例えば、記録動作時に、液体収納容器12が記録装置のキャリッジと共に移動することによって、インク14の液面が動揺し、副液体収納室26と主液体収納室13との間でインクが行き来する可能性がある。このため、副液体収納室26の液面は、下がることがあるが、その場合でも、主液体収納室13の上層の空気は、副液体収納室26の液面に加え、十分にインク14を含浸したインク吸収体16によって、外気から遮蔽された状態に保たれる。この際、返し部32が形成されていることによって、インク14は副液体収納室26側から主液体収納室13側へは移動しにくくなっているので、副液体収納室26には、常に、ある程度のインク14が確保されるようになっている。
このように、主液体収納室13内が外気から遮蔽されることによって、主液体収納室13内は、外気に対して所定範囲の背圧を生じさせることが可能となっている。そして、副液体収納室26、インク吸収体16、液体収容空間部27は、周囲環境が変動した際などにおいても、主液体収納室13内の背圧を一定範囲内に保つ背圧制御手段として機能する。
例えば、気圧が低下した場合や、液体収納容器12内の温度が上昇した場合、インクを貯留した主液体収納室13内の空気が膨張する。この場合、図1に示すように、副液体収納室26内のインク14の液面がインク吸収体16より高い場合は、最初に、副液体収納室26内のインク14が、膨張した空気によってインク吸収体16の大気側に配した液体収容空間部27側に押し出される。それによって、背圧の上昇が補われる。そして、図2に示すように、副液体収納室26内のインク14の液面がインク吸収体16の上端に達した場合、あるいは、始めから、副液体収納室26内の液面がインク吸収体16の上端より低い場合には、インク14に代わって主液体収納室13内の空気がインク吸収体16を経て気泡28の形で液体収容空間部27側へ排出される。この際、大気導入路23を設けておくことによって、空気の移動をスムースにし、端面での気泡の分離が安定して行なわれるようにすることができる。このように膨張した内気が、インク14を充分に含浸したインク吸収体16を介して徐々に微細な気泡の形で外部へ放出されることによって、主液体収納室13内の背圧は、所定範囲以上には上昇しないようになっている。
逆に、記録動作を行うことによって、主液体収納室13内のインクが消費され、インク14が減少することによって、あるいは、気圧の上昇や温度の低下によって、主液体収納室13内の背圧が相対的に低下した際は、上記とは逆の動作が行われる。すなわち、液体収容空間部27にインク14がインク吸収体16の上端を越えて貯溜されている場合には、液体収容空間部27内のインク14がインク吸収体16を経て副液体収納室26側に移され、それによって、背圧の低下が補われる。さらに、液体収容空間部27のインク14の液面がインク吸収体16の上端より低くなった場合、あるいは始めから低い場合には、大気連通孔18を介して補給される、液体収容空間部27内の空気が、図1に示すように、インク吸収体16を介して徐々に主液体収納室13内に微細な気泡28の形で侵入し、それによって、背圧の低下が補われる。このようにして、主液体収納室13内の背圧は、所定範囲以下には低下しないようになっている。
このように本実施形態の液体収納容器12では、インク14が充分に含浸されたインク吸収体16を介して内外の空気が行き来する構成とすることによって、主液体収納室13内の背圧を一定範囲内に保つことができる。主液体収納室13内の背圧の範囲は、このインク吸収体16の毛細管力に依存する。したがって、この毛細管力を最適に設定することによって主液体収納室13内の背圧を最適な所定範囲に保持することができる。
以上説明した本実施形態では、大気連通孔18が接続された液体収容空間部27、主液体収納室13に繋がっており、主液体収納室13とは別にインク14を保持可能な副液体収納室26、およびインク吸収体16を用いて、背圧が一定範囲に保たれるようにしている。すなわち、本実施形態では、従来、液体収納容器において用いられていた、大きな容積を占めるインク退避空間、およびインク吸収体、すなわちインク吸収体が配された大きなインク収容体収納室の代わりに、簡素でコンパクトな構成の背圧制御手段を用いて背圧制御を可能としている。この際、本実施形態における背圧制御手段は、このようにコンパクトで簡素な構成であるにも拘わらず、高い信頼性で背圧を制御し、液体噴射ヘッド10への良好なインク供給を可能とするものである。
そして、このような背圧制御手段を用いているために、本実施形態の液体収納容器12は、その大部分を、インク14を自由状態で保持する主液体収納室13として利用可能となっている。したがって、本実施形態によれば、従来実施されていたように、インク吸収体が配された大きなインク収容体収納室を用いるのに比べて、インク14を、空間の使用効率を著しく向上させて液体収納容器12内に貯留することが可能である。このことは同じサイズならばより多くのインクを収納可能で、同じインク量ならば液体収納容器をより小型化できることを意味する。また、インク14の大部分を自由状態のまま貯溜しているので、貯留させたインク14をほぼ100%使い切ることが可能である。また、消耗品である液体収納容器12から大きなインク吸収体を無くすことができるので、より安価に提供することが可能であり、廃棄物を低減することにもつながる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図3、4を参照して説明する。図3,4は、本実施形態の液体収納容器52の、液体噴射ヘッド10に接続した状態の断面図である。なお、図3(b)は図3(a)の左側部分の断面図であり、大気連通孔連絡通路58は、図3(a)および図4では、分かりやすくするために正面から見て左右方向に展開して記載しているが、実際には、図3(b)に示すように、図3(a)および図4の左側の側面に沿って配置されている。また、これらの図において、第1の実施形態と同様の部分には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
本実施形態の液体収納容器52も、第1の実施形態と同様に、内部の大部分が、インク14を自由状態で直接保持する主液体収納室53となっている。この液体収納容器52には、主液体収納室53に通じる上方を向いた開口66から、液体収納容器52の底部へと下方に延び、折り返して、液体収納容器52の天井部に形成された大気連通孔18に通じている、全体としてU字状の大気連通孔連絡路58が形成されている。大気連通孔連絡路58は、横方向の断面積が、毛細管力が働くように小さくなった微細通路部68と、微細通路部68に比べて断面積が大きい液溜まり部69が交互に複数組形成された構成になっている。特に、大気連通孔連絡路58が底部で折り返す部分では、主液体収納室53側に通じる側と、大気連通孔18側に通じる側とにそれぞれ液溜まり部69が位置し、両者が微細通路部68によって接続された構成になっており、この微細通路部68にはマット処理などの親水化処理が施されている。また、図に示す例では、大気連通孔連絡路58には、この折り返し部を挟んで左右対称に微細通路部68と液溜まり部69が位置する構成になっている。
この液体収納容器52には、初期には、図3に示すように、満杯に近いインク14が充填されており、インク14の液面は、大気連通孔連絡路58の開口66よりも上方に位置している。したがって、この状態では、大気連通孔連絡路58の、少なくとも開口66が形成された液溜まり部69にインク14が満たされている。インク14が消費されるにつれて、主液体収納室53内のインク14の液面は、開口66より下がるが、この時にも、大気連通孔連絡路58の、少なくとも底部のどちらかの液溜まり部69と微細通路部68には、インク14が残るようになっている。また、開口66は、断面積が比較的大きくなっており、主液体収納室53内のインク14の液面が開口66より低くなった後でも、液体収納容器52が記録装置のキャリッジと共に移動する際などに、インク14が動揺した際に、大気連通孔連絡路58内にある程度インク14が補給される。
本実施形態の液体収納容器52では、このように、主液体収納室53と大気連通孔18を接続する大気連通孔連絡路58内の、少なくとも1組の微細通路部68と液溜まり部69に満たされたインク14によって、主液体収納室53は、外気から遮蔽されており、それによって、主液体収納室53内に所定の背圧を発生させることが可能となっている。さらに、大気連通孔連絡路58は、周囲環境が変動した際の背圧制御手段として機能する。
例えば、記録動作を行って主液体収納室13内のインクが消費されインク14が減少することによって主液体収納室13の内圧が低下した場合について考える。この場合、先ず、大気連通孔連絡路58の折り返し部より大気連通孔18側にインク14が存在していれば、このインク14が徐々に主液体収納室13側に取り込まれ、それによって、内圧の低下が補われる。
そして、大気連通孔連絡路58の折り返し部より大気連通孔18側のインク14の液面が、折り返し部の微細通路部68より低くなった後、あるいは、始めから低い場合について考えると、この場合、折り返し部の微細通路部68にはまだインク14が満たされており、細管力による界面力が生じている。特に、折り返し部の微細通路部68に親水化処理が施されていることによって、このように、この微細通路部68にインク14が満たされた状態となることが保障されている。そして、外気圧と内圧の差のために、外気がこの微細通路部68に満たされたインク14の界面を、主液体収納室53側に押し戻そうとする。微細通路部27内のインク14は界面力によって、侵入しようとする外気の、ある程度の圧力に耐えるが、その界面力を超える圧力が加わると、微細通路部27内を押し戻され、一定量の外気が主液体収納室53側に侵入する。それによって、内圧の低下が補われると、折り返し部の微細通路68内には再びインク14が侵入し、界面力が再度働いて、ある程度の圧力に耐える状態になる。一方、主液体収納室53側に侵入した外気は気泡28の形で、主液体収納室53側の液溜まり部69に残り、インク14中を上昇する。このようにして、記録動作を続ける間、インクで満たされた大気連通孔連絡路58の折り返し部の微細通路部27を介して外気が気泡28の形で徐々に主液体収納室13内に取り込まれ、主液体収納室13内部の背圧は一定範囲内に保たれる。
このような動作は、気圧が上昇したり、液体収納容器52の温度が低下したりすることによって、外気圧に対して内圧が一定範囲以上に低くなった際にも同様に行われる。それによって、背圧は所定範囲内に保たれる。
次に、気圧が低下したり、液体収納容器52内の温度が上昇したりして、背圧が相対的に高くなった場合について考える。この場合、インク14を貯留した主液体収納室13内上層部の空気が膨張する。大気連通孔連絡部58の折り返し部より主液体収納室53側にインク14が存在している場合には、この膨張した空気によって、先ず、図4に示すように、このインク14が大気連通孔18側に移動させられる。
次に、大気連通孔連絡路58の折り返し部より主液体収納室53側のインク14の液面が、折り返し部の微細通路部68より低くなった後、あるいは、始めから低い場合について考える。この場合、折り返し部の微細通路部68に満たされたインク14の界面力を越える圧力が加わることによって、微細通路部68に満たされたインク14が一旦大気連通孔18側に押し戻され、主液体収納室53側の空気が気泡28の形で大気連通孔18側の液溜まり部69に排出される。これによって、背圧の相対的な上昇が補われ、背圧はある程度以上に上昇しないようにすることができる。
なお、図3の初期状態におけるように、主液体収納室53内の液面が開口66よりも高い場合には、主液体収納室53内の上層部の空気の排出は行われない。しかし、この場合には、上層部に溜まった空気量が少ないので、環境変化に対するこの空気の膨張量は小さなものであり、インク14がある程度大気連通孔18側に移動することによって、内圧の上昇は抑えられる。すなわち、開口66の位置と、大気連通孔連絡路58の容量を適当に設定しておくことによって、インク14が大気連通孔18にまでは達しないようにすることができる。
以上のように、本実施形態によれば、主液体収納室53に通じる開口66から下方に延び、折り返して上方に延びて大気連通孔18に接続する大気連通孔連絡路58を介して、主液体収納室53の内外で空気をやりとりすることによって、主液体収納室53内の背圧を、インクの消費や環境変化による変動を抑えて所定の範囲内に保つことができる。主液体収納室13内の背圧の範囲は、大気連通孔連絡路58内に満たされるインク14の量や微細通路部68に働く界面力の大きさなどに依存する。したがって、大気連通孔連絡路58の微細通路部68や液溜まり部69の数や寸法を最適に設定することによって、主液体収納室53内の背圧を所望の最適な範囲内に保持することができる。
本実施形態の液体収納容器52では、従来、液体収納容器において用いられていた、インク吸収体が配された比較的大きなインク収容体収納室を用いることなく、比較的コンパクトで簡素な構成とすることができる大気連通孔連絡路58を用いて、液体収納容器52内の背圧を制御している。したがって、本実施形態の液体収納容器52は、第1の実施形態と同様に、その大部分を、インク14を自由状態で保持する主液体収納室53として利用可能となっている。このため、従来に比べて、インク14を、空間の使用効率を著しく向上させて液体収納容器12内に貯留することが可能であり、また、インク14をほぼ100%使い切ることが可能であり、大きなインク吸収体を必要としないため、安価に製造することが可能であり、廃棄物を低減することにもつながる。
本発明の第1の実施形態の液体収納容器を模式的に示す断面図である。 図1の液体収納容器の、インクをある程度消費した状態の断面図である。 本発明の第2の実施形態の液体収納容器を模式的に示す断面図である。 図3の液体収納容器の、インクをある程度消費した状態の断面図である。 従来例の液体収納容器を模式的に示す断面図である。
符号の説明
10,110 液体噴射ヘッド
11,111 ノズル部
12,52,112 液体収納容器
13,53,113 主液体収納室
14,114 インク
16,16a,116a,116b,116c インク吸収体
17,117 接合部
18,118 大気連通孔
19,119 フィルタ部材
20,120 インク通路
21,121 ヘッド液室
22,122 液体残量検出部材
23,123 大気導入路
25 パッキング部材
26 副液体収納室
28 気泡
30 水平板部
31 立壁部
32 返し部
33 突出部
58 大気連通孔連絡路
66 開口
68 微細通路部
69 液溜まり部
115 インク吸収体収納室

Claims (8)

  1. 液体が貯溜され、該液体を液体噴射ヘッドに供給するための開口が形成された主液体収納室と、
    該主液体収納室とは別に液体を貯溜可能であり、該主液体収納室と上方の空間がつながっている副液体収納室と、
    外部に通じる大気連通孔とを有し、
    前記副液体収納室の一側壁には底部に孔が形成され、前記副液体収納室は該孔を介して前記大気連通孔に通じており、該孔は毛細管力発生部材によって塞がれている液体収納容器。
  2. 前記毛細管力発生部材によって塞がれた前記孔の上面に、前記副液体収納室側の端部および/または前記大気連通孔側の端部から、前記副液体収納室側と前記大気連通孔側とをつなぐ方向に、前記孔の途中まで延びる溝が形成されている、請求項1に記載の液体収納容器。
  3. 前記主液体収納室から隔離され、前記毛細管力発生部材によって塞がれた前記孔が形成された壁を挟んで前記副液体収納室と隣接して配置され、前記大気連通孔が上部に接続している液体収容空間部をさらに有する、請求項1または2に記載の液体収納容器。
  4. 液体が貯溜され、該液体を液体噴射ヘッドに供給するための開口が形成された主液体収納室と、
    外部に通じる大気連通孔と、
    前記主液体収納室に通じる開口から下方に延び、折り返して上方に延びて前記大気連通孔に通じており、少なくとも折り返し部に、毛細管力を発生する微細通路部が形成された大気連通孔連絡路とを有する液体収納容器。
  5. 前記微細通路部には親水化処理が施されている、請求項4に記載の液体収納容器。
  6. 前記大気連通孔連絡路は、毛細管力を発生する微細通路部と、該微細通路部よりも幅が大きい液溜まり部とが交互につながれて構成されている、請求項4または5に記載の液体収納容器。
  7. 前記微細通路部と前記液溜まり部は、前記大気連通孔連絡部の折り返し部を挟んで線対称に配置されている、請求項6に記載の液体収納容器。
  8. 前記大気連通孔連絡路の、前記主液体収納室に通じる前記開口の幅は、前記大気連通孔連絡路の他の部分より大きくなっている、請求項4から7のいずれか1項に記載の液体収納容器。
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