JP2005152818A - 液体分離膜およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
特に海水のような高濃度の原水から淡水を得る際に、非常に低い圧力、すなわち、低エネルギーで、高い多価イオン除去性能を発揮しつつ、膜面へのファウリングを抑制できる液体分離膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
少なくともオルト位(o-)にアミノ基を有するo−芳香族ジアミンおよび脂肪族アミンを含む多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合反応させて架橋ポリアミドの分離機能層を形成し、温度25℃、圧力1.0MPaにおける純水透過流束が40×10-6m3/m2・s以上であり、温度25℃、pH6.5、全溶質濃度4.5重量%の模擬海水を透過流束0.5m3/m2・日で透過させたとき、圧力が2.0MPa以下、ナトリウムイオン阻止率が20〜60%の範囲内、かつ、カルシウムイオン阻止率が70%以上である液体分離膜を得る。
【選択図】なし
特に海水のような高濃度の原水から淡水を得る際に、非常に低い圧力、すなわち、低エネルギーで、高い多価イオン除去性能を発揮しつつ、膜面へのファウリングを抑制できる液体分離膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
少なくともオルト位(o-)にアミノ基を有するo−芳香族ジアミンおよび脂肪族アミンを含む多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合反応させて架橋ポリアミドの分離機能層を形成し、温度25℃、圧力1.0MPaにおける純水透過流束が40×10-6m3/m2・s以上であり、温度25℃、pH6.5、全溶質濃度4.5重量%の模擬海水を透過流束0.5m3/m2・日で透過させたとき、圧力が2.0MPa以下、ナトリウムイオン阻止率が20〜60%の範囲内、かつ、カルシウムイオン阻止率が70%以上である液体分離膜を得る。
【選択図】なし
Description
本発明は、液体中の多価イオンを選択分離するための液体分離膜及びそれを用いた液体処理方法に関し、特に、海水中に含まれるスケール分を除去するにあたり好適な液体分離膜およびその製造方法に関するものである。
近年、世界的な水不足・水質悪化などの水環境問題の深刻化に伴い、浄水場などにおける飲料水の製造や海水・かん水の淡水化に分離膜を用いたプロセスが普及しつつある。中でも、海水淡水化については、蒸留法や電気透析法など従来の方法に加えて省エネルギー性や省資源性、省スペース性に優れた逆浸透膜プロセスの適用が進められている。
この海水淡水化のプロセスに対する改良要求は年々高まり、特に、省エネルギーという観点から、原海水をより有効に活用する高回収率可能なプロセスの出現が望まれている。一般に、原海水から淡水を採取して海水が濃縮されるにつれて、海水中に含まれるイオン成分の濃度は高まり、供給水(海水)側と透過水(淡水)側との水の溶質濃度差によって、蒸気圧の低下、浸透圧の上昇、濃度分極の増大などを引き起こす。したがって、海水から淡水を効率的に分離するためには、より大きなエネルギー(例えば、蒸発法の場合はより高い温度)を加えなければならない。しかしながら、海水を高度に濃縮すると、硫酸マグネシウムや炭酸カルシウムといったスケール成分が溶解度を超えて濃縮海水の流路や膜面などに析出し、システムの運転を継続できなくなる。
この課題を解決するために、蒸発法や海水淡水化逆浸透膜プロセスの原水を、ナノろ過膜で前処理することによってスケール成分である多価イオンを除去し、回収率を高めようという試みがなされている(特許文献1、2)。この方法は、前処理において、一価イオンをある程度透過させ、多価イオンを選択的に除去することによって、後段の蒸発法や海水淡水化逆浸透膜プロセスにおける浸透圧や濃度分極による分離効率低下を抑えられるため、エネルギーコストの低いスケール除去方法といえる。さらに、ナノろ過膜によって塩分をある程度除去することで後段の脱塩工程への負荷を低減できるため、プロセス全体としてのエネルギーコストを最適化することが可能であり、インテグレーテッドプロセスとして注目されている。
しかしながら、ナノろ過膜は、従来、上水処理における農薬などの有害成分除去や硬水の軟水化など、比較的低濃度の原水を処理するために開発されてきた経緯があり、海水淡水化の前処理においても、例えば、特許文献1、非特許文献1に示されるように、既存のナノろ過膜の考え方に基づいたものが利用されてきた。すなわち、前述の浸透圧や濃度分極、ファウリングなど溶質濃度が高濃度の場合に発生する問題などを厳密に考慮したものではなく、海水淡水化用途としては阻止性能、分離性能および透水性のバランスが悪く、良好な性能が得られなかった。
具体的には、上水処理における農薬などの有害成分除去や硬水の軟水化など、比較的低濃度の原水を処理するために開発されてきた従来のナノろ過膜の場合、透水性能が高いため、クロスフロー効果が得られにくくファウリングを生じやすい。圧力を低減し膜分離に作用する有効圧力を低減することでフラックスを低減し、ファウリングを抑えることもできるが、圧力を低減するとイオンの阻止率が大きく低下してしまう。イオン阻止率をあげるために、逆浸透膜に近い性能を有するナノろ過膜を適用することもできるが、その場合、イオン除去性能は向上されるものの、透水性が必要以上に低下し、浸透圧や濃度分極による分離特性やエネルギー効率の低下が大きくなる。また、ファウリングに対して、表面素材を変更した低ファウリング膜(非特許文献2)や表面の形状を工夫した低ファウリング膜(非特許文献3)が開発されているが、これらの低ファウリング膜は、特定の原水条件においてファウリングの進行を抑えることはできるものの、海水など多成分系の水に対しては効果が小さい。
さらに、比較的低濃度の原水においては膜の荷電反発力を利用して高透水性を維持しながら比較的高い阻止性能を発現することができるが、海水のようにイオン濃度の高い原液中では、荷電反発力が大きく低減するために、十分な阻止性能が発現できないという問題を有していた。
さらにまた、近年、開発されている高透水性の逆浸透膜やナノろ過膜は、低い圧力での運転には耐えうるものの、高透水化するために膜の強度が低下しており、数MPaでの高圧運転、さらには、高圧領域での圧力変動に対しては耐久性の点で問題であった。
特開平8−206460号公報
米国特許第6508936号明細書
A.M.Hassanら,Proc. of IDA World Congress Bahrain, 2002,P3-15
井上岳治ら,膜, 2001, 第26巻, 第5号, P231-233
Water Desalination Report, May 29, 2003, Vol.39, No.22
本発明は、上記のような問題点を解決し、特に海水のような高濃度の原水から淡水を得る際に、非常に低い圧力、すなわち、低エネルギーで、高い多価イオン除去性能を発揮しつつ、膜面へのファウリングを抑制できる液体分離膜およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
前記課題を解決するための本発明は、下記(1)〜(7)を特徴とするものである。
(1)温度25℃、圧力1.0MPaにおける純水透過流束が40×10-6m3/m2・s以上であり、温度25℃、pH6.5、全溶質濃度4.5重量%の模擬海水を透過流束0.5m3/m2・日で透過させたとき、圧力が2.0MPa以下、ナトリウムイオン阻止率が20〜60%の範囲内、かつ、カルシウムイオン阻止率が70%以上であることを特徴とする液体分離膜。
(2)温度45℃、pH6.5、全容質濃度4.5重量%の模擬海水を透過流束0.5m3/m2・日で透過させたとき、圧力が2.0MPa以下、ナトリウムイオン阻止率が20〜60%の範囲内、かつ、カルシウムイオン阻止率が70%以上であることを特徴とする上記(1)に記載の液体分離膜。
(3)少なくともオルト位(o-)にアミノ基を有するo−芳香族ジアミンおよび脂肪族アミンを含む多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合反応させて架橋ポリアミドの分離機能層を形成することを特徴とする液体分離膜の製造方法。
(4)多官能アミンとして、さらに、メタ位(m−)にアミノ基を有するm−芳香族ジアミンおよび/またはパラ位(p−)にアミノ基を有するp−芳香族ジアミンを含むことを特徴とする上記(3)に記載の液体分離膜の製造方法。
(5)上記(1)もしくは(2)に記載の液体分離膜または上記(3)もしくは(4)に記載の方法により製造された液体分離膜を備えたことを特徴とする液体処理装置。
(6)上記(1)もしくは(2)に記載の液体分離膜または上記(3)もしくは(4)に記載の方法により製造された液体分離膜を用いて液体中の多価イオンを除去することを特徴とする液体処理方法。
(7)前記液体が海水であることを特徴とする上記(6)に記載の液体処理方法。
(1)温度25℃、圧力1.0MPaにおける純水透過流束が40×10-6m3/m2・s以上であり、温度25℃、pH6.5、全溶質濃度4.5重量%の模擬海水を透過流束0.5m3/m2・日で透過させたとき、圧力が2.0MPa以下、ナトリウムイオン阻止率が20〜60%の範囲内、かつ、カルシウムイオン阻止率が70%以上であることを特徴とする液体分離膜。
(2)温度45℃、pH6.5、全容質濃度4.5重量%の模擬海水を透過流束0.5m3/m2・日で透過させたとき、圧力が2.0MPa以下、ナトリウムイオン阻止率が20〜60%の範囲内、かつ、カルシウムイオン阻止率が70%以上であることを特徴とする上記(1)に記載の液体分離膜。
(3)少なくともオルト位(o-)にアミノ基を有するo−芳香族ジアミンおよび脂肪族アミンを含む多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合反応させて架橋ポリアミドの分離機能層を形成することを特徴とする液体分離膜の製造方法。
(4)多官能アミンとして、さらに、メタ位(m−)にアミノ基を有するm−芳香族ジアミンおよび/またはパラ位(p−)にアミノ基を有するp−芳香族ジアミンを含むことを特徴とする上記(3)に記載の液体分離膜の製造方法。
(5)上記(1)もしくは(2)に記載の液体分離膜または上記(3)もしくは(4)に記載の方法により製造された液体分離膜を備えたことを特徴とする液体処理装置。
(6)上記(1)もしくは(2)に記載の液体分離膜または上記(3)もしくは(4)に記載の方法により製造された液体分離膜を用いて液体中の多価イオンを除去することを特徴とする液体処理方法。
(7)前記液体が海水であることを特徴とする上記(6)に記載の液体処理方法。
なお、本発明において、全容質濃度4.5重量%の模擬海水とは、pH6.5において組成比がNaCl=30.762g/l, Na2SO4=5.151g/l, KCl=0.949g/l, NaHCO3=0.252g/l, MgCl2=6.521g/l, CaCl2=1.475g/lに調整された水をいう。
本発明の液体分離膜によれば、低圧力、すなわち、低エネルギーで高い多価イオン除去性能を発揮するので、海水処理において膜面へのファウリングを抑制でき、高効率の海水淡水化システムを提供することが可能となる。
本発明の液体分離膜は、低圧力での運転に際し膜面へのファウリング抑制と高い多価イオン除去性能を併せ有するもので、温度25℃、圧力1.0MPaにおける純水透過流束が40×10-6m3/m2・s以上であり、温度25℃、pH6.5、全溶質濃度4.5重量%の模擬海水を透過流束0.5m3/m2・日で透過させたとき、圧力が2.0MPa以下、ナトリウムイオン阻止率が20〜60%の範囲内、かつ、カルシウムイオン阻止率が70%以上である。
ファウリングは膜の透水性や分離性能を著しく低下させるため、液体分離膜を用いるに際しファウリングを抑止することは非常に重要な要素である。そのため、透過流束を一定の範囲内に制御する必要がある。また、海水の処理を行う場合は浸透圧の分だけより高圧で運転する必要があるが、ナノろ過膜は、緻密な構造を有する逆浸透膜に比べてルースな構造を有しているため、本質的に耐圧性に劣り、高圧での長期使用で性能が低下する。しかしながら、本発明の液体分離膜は、温度25℃、pH6.5、全溶質濃度4.5重量%の模擬海水を透過流束が0.5m3/m2・日となるように制御して処理しても、ナトリウムイオン阻止率が20〜60%の範囲内、かつ、カルシウムイオン阻止率が70%以上という性能を満足し、かつ、このときの運転圧力が2.0MPa以下と小さいので、低エネルギーで、高い多価イオン除去性能を発揮しつつ、膜面へのファウリングを抑制でき、しかも長期間安定に運転することができる。さらに、本発明の液体分離膜は、温度25℃、pH6.5、全溶質濃度4.5重量%の模擬海水を透過流束0.5m3/m2・日で透過させたときのナトリウムイオン阻止率が20%以上60%以下であるとともにカルシウムイオン阻止率が70%以上であるので、海水淡水化の前処理に用いた場合、スケール分をできるだけ除去して回収率を上げつつ、いくらかの塩分も除去して後段の脱塩工程への負担を軽減することができるので、造水コストを削減することができる。さらに、、前述の海水において2.0MPa以下の圧力で0.5m3/m2・日の透過流束を実現するためには、温度25℃、圧力1.0MPaにおける純水透過流束が40×10-6m3/m2・s以上である必要がある。高い純水透過係数を有することによって、海水を処理するにあたり、透過流束を一定の範囲内に制御しながら低圧で運転することができ、圧力による膜の変化やファウリングを抑制しながら高い多価イオン除去性能を発揮することができる。
そして、本発明の液体分離膜を逆浸透膜による海水淡水化の前処理に用いる場合は、阻止率が高いほうが好ましく、具体的には、温度25℃、pH6.5、全溶質濃度4.5重量%の模擬海水を透過流束0.5m3/m2・日で透過させたときのナトリウムイオン阻止率が40%以上60%以下、カルシウムイオン阻止率が90%以上であることが好ましく、蒸発法の前処理に用いる場合は、ナトリウムイオン阻止率20%以上50%以下であることが好ましい。
さらに、耐圧性の観点からは、同条件で流束0.5m3/m2・日透過させたときの運転圧力は1.5MPa以下であることが好ましく、また、蒸発法による液体分離の前処理や中東地域の夏季の液体分離に用いられることが想定される場合は、模擬海水の温度が45℃であっても運転圧力が同様に2.0MPa以下、ナトリウムイオン阻止率が20〜60%の範囲内、かつ、カルシウムイオン阻止率が70%以上という性能を満足する液体分離膜であることが好ましい。模擬海水の温度が45℃であっても流束0.5m3/m2・日で透過させたときの運転圧力は1.5MPa以下であることがさらに好ましい。
そして、本発明の液体分離膜は、海水中のスケール除去に用いることを考慮すると、硫酸イオンを主として除去する必要があるので、運転範囲(一般的にはpH6〜8)において膜がアニオン性、すなわち、ゼータ電位が、負の値であることが好ましい。したがって、本発明に係る液体分離膜としては、少なくともpH8におけるゼータ電位が負の値であることが好ましく、さらには、pH6におけるゼータ電位が負になることがより好ましい。そして、膜がアニオン性の場合は、カルシウムイオン阻止率を80%以上とすることが好ましく、その場合、他のスケール成分であるマグネシウムや硫酸イオン阻止率が90%以上となる。一方、膜がカチオン性の場合は、カルシウムイオン阻止率を90%以上とすることで、カルシウムイオンの対イオンであるマグネシウムイオンや硫酸イオンを除去するようにしてもよい。
上述の本発明の液体分離膜は、たとえば微多孔性支持膜を含む支持体の上に架橋ポリアミドの分離機能層を形成することで得られる。架橋ポリアミドの分離機能層を形成するにあたっては、多官能アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する、水と非混和性の有機溶媒溶液とを用い、支持体上で界面重縮合反応させることによりその骨格を形成できる。具体的には、支持体上に多官能アミンを含有する水溶液を塗布した後、多官能酸ハロゲン化物を含有する、水と非混和性の有機溶媒溶液をさらに塗布し、支持体上で多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合反応させる。
微多孔性支持膜を含む支持体は、実質的には分離性能を有さない層であり、実質的に分離性能を有する架橋ポリアミドの分離機能層に機械的強度を与えるために設けられるもので、微多孔性支持膜単体、布帛や不織布などの基材上に微多孔性支持膜を形成したものなどが用いられる。
支持体としては、ミリポア社製”ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製”ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるが、通常は、”オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造できる。
支持体の素材としては、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロースやポリ塩化ビニル等のホモポリマーあるいはブレンドしたものが通常使用されるが、化学的、機械的、熱的に安定性の高い、ポリスルホンを使用するのが好ましい。
また、支持体の厚みは、液体分離膜の強度や透水性能、扱いやすさ、モジュール加工のしやすさという観点から、1μm〜数mmの範囲内であるのが好ましく、10〜数100μmの範囲内であるのがより好ましい。
微多孔性支持膜の素材としては、特に限定されず、例えば、ポリスルホン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン等のホモポリマーまたはコポリマーを単独あるいはブレンドして使用することができる。これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることから、ポリスルホンが好ましく使用される。
また、微多孔性支持膜の構造としては特に限定されず、膜の表面から裏面にわたって孔径が均一な微細な孔を有する構造であっても、片面に緻密で微細な孔を有し、その面からもう一方の面まで徐々に孔径が大きくなるような孔を有する非対称構造であってもよい。緻密な微細孔の大きさは100nm以下であることが好ましい。例えば、ポリスルホン素材の微多孔性支持膜を形成する場合、ポリスルホンのジメチルホルムアミド(DMF)溶液を、密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、それをドデシル硫酸ソーダ0.5重量%およびDMF2重量%を含む水溶液中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有した微多孔性支持膜が得られる。
そして、架橋ポリアミドの分離機能層を形成するにあたって本発明の液体分離膜を得るには、多官能アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する、水と非混和性の有機溶媒溶液とを用いて界面重縮合反応させる際に、多官能アミンとして脂肪族多官能アミンとオルト位(o−)位にアミノ基を有するo−芳香族ジアミンとの混合アミンを用いることが必要である。脂肪族多官能アミンにo−芳香族ジアミンを混合して用いることで、o−芳香族ジアミンの立体構造の特異性によりナノろ過膜を効果的に得ることが可能になる。
脂肪族多官能アミンとしては、[1]式に示すようなピペラジン系アミン及びその誘導体が好ましく、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,3,5−トリエチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2,5−ジ−n−ブチルピペラジンなどが例示される。中でも本発明に適した阻止性能および透過性能を有するナノろ過膜を幅広い組成比で得ることができるピペラジンや2,5−ジメチルピペラジンを用いることが特に好ましい。
これら多官能アミンのモル比は、用いるアミンおよび酸ハロゲン化物によって適宜最適な組成比を選ぶことができるが、o−芳香族ジアミンの添加比率が高いほど透水性は向上し、反面、溶質全体の阻止性能は低下する。また、脂肪族多官能アミンを多くすることで、多価イオンと一価イオンの分離性能が向上する。これによって目的とする透水性能とイオン分離性能、溶質全体の阻止性能を満足する本発明の液体分離膜を得ることが可能となる。
また、アミン成分として脂肪族アミンが多いと耐熱安定性が低下するため、耐熱性を重視したい場合は、脂肪族アミンを少なくすることによって耐熱性の向上を達成することもできる。
さらに、一価イオンと多価イオンとの分離性能を高く維持しながら全溶質阻止性能を向上するため、メタ位(m−)にアミノ基を有するm−芳香族ジアミンやパラ位(p−)にアミノ基を有するp−芳香族ジアミンを、脂肪族多官能アミンやo−芳香族ジアミンとともに併用してもよい。これらm−芳香族ジアミンやp−芳香族ジアミンとしては、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、1、3、5−トリアミノベンゼン、そのN−アルキル化物としてN、N−ジメチルメタフェニレンジアミン、N、N−ジエチルメタフェニレンジアミン、N、N−ジメチルパラフェニレンジアミン、N、N−ジエチルパラフェニレンジアミンなどを挙げることができるが、製膜性が良好で、全溶質阻止性能が均質で欠陥やばらつきの少ない膜を得やすい、メタフェニレンジアミン、1、3、5−トリアミノベンゼンおよびその混合物を用いることが好ましい。
一方、多官能酸ハロゲン化物としては、一分子中に2個以上のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物および多官能酸無水物ハロゲン化物であり、上記多官能アミンとの反応により架橋ポリアミドの分離機能層を形成するものであれば特に限定されるものではない。例えば1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、1,4-ベンゼンジカルボン酸の酸ハロゲン化物の混合物などである。中でも、製膜性が良好で、全溶質阻止性能が均質で欠陥やばらつきの少ない膜を得やすい、[2]式、[3]式で表されるジカルボン酸やトリカルボン酸が好ましく、とくに、経済性、取り扱い易さ、反応の容易さ等の点から、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸の酸ハロゲン化物であるトリメシン酸クロライドが好ましい。
また、多官能酸無水物ハロゲン化物としては、一分子中に1個以上の酸無水物部分と1個以上のハロゲン化カルボニル基を有し、無水安息香酸、無水フタル酸のカルボニルハロゲン化物である、下記一般式[4]で表されるトリメリット酸無水物ハロゲン化物及びその誘導体が好ましく用いられる。
さらに、酸ハロゲン化物の成分によっても透水性能や全容質阻止性能を性能を制御することができる。例えば、酸ハロゲン化物として、トリメシン酸クロライドとトリメリット酸無水物ハロゲン化物を用いた場合、トリメリット酸無水物ハロゲン化物の比率を高めるほど透水性は上がり、溶質阻止性能は低下する。トリメリット酸無水物ハロゲン化物は、前述のo−芳香族ジアミンと同様にその立体的構造から効率的に逆浸透膜をルース化できる酸クロライド成分である。
また、上述の多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液としては、水と非混和性であり、多官能酸ハロゲン化物を溶解し微多孔性支持膜を破壊せず、重縮合反応により架橋ポリマを形成し得るものであればいずれであっても良い。このような有機溶媒の代表例としては、液状の炭化水素、トリクロロトリフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられるが、オゾン層を破壊しない物質であることや入手のしやすさ、取り扱いの容易さ、取り扱い上の安全性を考慮するとオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、1−デセンなどの単体あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる
そして、上述の混合アミンの濃度は、多官能アミンを含有する水溶液中0.1〜10重量%の範囲内であることが好ましく、さらには0.5〜5.0重量%の範囲内であることが好ましい。濃度が0.1重量%を下回ると反応の進行が遅くなる傾向があり、10重量%を越えると分離機能層が厚くなり透水性が不十分となりやすい。一方、有機溶媒溶液中の多官能酸ハロゲン化物の濃度は、0.01〜10重量%の範囲内であることが好ましく、0.02〜2.0重量%の範囲内であることがさらに好ましい。0.01重量%を下回ると反応の進行が遅くなる傾向があり、10重量%を越えると副反応が起こりやすい。
そして、上述の混合アミンの濃度は、多官能アミンを含有する水溶液中0.1〜10重量%の範囲内であることが好ましく、さらには0.5〜5.0重量%の範囲内であることが好ましい。濃度が0.1重量%を下回ると反応の進行が遅くなる傾向があり、10重量%を越えると分離機能層が厚くなり透水性が不十分となりやすい。一方、有機溶媒溶液中の多官能酸ハロゲン化物の濃度は、0.01〜10重量%の範囲内であることが好ましく、0.02〜2.0重量%の範囲内であることがさらに好ましい。0.01重量%を下回ると反応の進行が遅くなる傾向があり、10重量%を越えると副反応が起こりやすい。
なお、多官能アミン水溶液には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などが含まれていてもよい。界面活性剤は、多孔性支持膜表面の濡れ性を向上させ、アミン水溶液と非極性溶媒との間の界面張力を減少させる効果があり、有機溶媒は界面重縮合反応の触媒として働くことがあり、添加することにより界面重宿合反応を効率よく行える場合がある。さらに、有機溶媒溶液にN,N−ジメチルホルムアミドのようなアシル化触媒を含有させ、界面重縮合を促進することも好ましい。
さらに、特に、脂肪族アミンとしてピペラジン、芳香族ジアミンとしてオルトフェニレンジアミンとメタフェニレンジアミン、酸クロライド成分としてトリメシン酸クロライドおよびトリメリット酸クロライドを使用する場合、ピペラジンのモル比率a、オルトフェニレンジアミンのモル比率b、メタフェニレンジアミンのモル比率c、トリメシン酸クロライドのモル比率d、トリメリット酸クロライドのモル比率eの関係が膜中において次式を満足するようにすると、本発明の液体分離膜を容易に得ることができる。
e/d≦2 かつ 1.5≦(2a+4b+2e)/(c+2d)≦4.0
そして、温度25℃だけでなく温度45℃においてもバランスのとれた性能を発現する液体分離膜を容易に得るにはさらに次式の関係を満足するようにすることが好ましい。
そして、温度25℃だけでなく温度45℃においてもバランスのとれた性能を発現する液体分離膜を容易に得るにはさらに次式の関係を満足するようにすることが好ましい。
2.5≦(2a+4b+2e)/(c+2d)≦4.0
また、前述のようにaの組成比が大きい方がイオン分離特性が高い、すなわち、カルシウム阻止率に比してナトリウム阻止率が小さく、耐熱安定性、すなわち、高温の原水に対して耐久性が低下する方向にある。したがって、イオン分離特性を高めるために、具体的には、2a/(b+c)が0.5以上であることが好ましい。また、用途に応じて高温耐久性を強化したい場合は、aの代わりにbとcを増やすことによって性能バランスに優れた液体分離膜を得ることができるが、透水性能と全体溶質阻止性能を本発明の目的に適した範囲にするためには、c/(2a+4b)<0.3にすることが好ましい。なお、bの添加比率を増やしすぎるとイオン分離性能が低下する傾向があるので注意が必要である。具体的には、2a/(b+c)は0.1以上にする方がよい。
また、前述のようにaの組成比が大きい方がイオン分離特性が高い、すなわち、カルシウム阻止率に比してナトリウム阻止率が小さく、耐熱安定性、すなわち、高温の原水に対して耐久性が低下する方向にある。したがって、イオン分離特性を高めるために、具体的には、2a/(b+c)が0.5以上であることが好ましい。また、用途に応じて高温耐久性を強化したい場合は、aの代わりにbとcを増やすことによって性能バランスに優れた液体分離膜を得ることができるが、透水性能と全体溶質阻止性能を本発明の目的に適した範囲にするためには、c/(2a+4b)<0.3にすることが好ましい。なお、bの添加比率を増やしすぎるとイオン分離性能が低下する傾向があるので注意が必要である。具体的には、2a/(b+c)は0.1以上にする方がよい。
なお、膜中や製膜原液中のアミンの組成比や多官能酸ハロゲン化物の組成比は、NMR法によって測定することができる。たとえば、基材上にポリスルホンからなる多孔性支持膜を形成した支持体上に分離機能層を有する液体分離膜についてNMR法により組成比を測定するにあたっては次のように行う。まず、支持体の一部である基材(ポリエステル繊維からなるタフタや不織布)を剥がし、ポリスルホンからなる微多孔性支持膜と架橋ポリアミドの分離機能層を得る。これを塩化メチレンに溶解した後ろ過を行って分離機能層を得る。その分離機能層を乾燥後バイアル瓶に採取し、6N 水酸化ナトリウムを加えて120℃に加熱して溶解後、不溶物をろ過する。得られたろ液をNMRチューブに入れFT−NMR分析装置で分析を行い、得られたプロトンのピーク強度から膜中組成比を算出する。
ところで、界面重縮合を支持体上で行うためには、まず、支持体表面に上述の多官能アミン水溶液を被覆する。この被覆は、水溶液が支持体表面に均一にかつ連続的に被覆されればよく、公知の塗布手段、例えば、多官能アミン水溶液を支持体表面にコーティングする方法、支持体を多官能アミンに浸漬する方法等で行えばよい。この際、支持体上に多官能アミンを十分に被覆するめ、支持体と多官能アミン水溶液との接触時間が、1〜10分間の範囲内であることが好ましく、1〜3分間の範囲内であるとさらに好ましい。
支持体に多官能アミン水溶液を被覆したあとは、膜上に過剰な液滴が残らないようにエアブローなどで十分に液切りする。液滴が過剰に残ると、膜形成後に液滴過剰部分が膜欠点となって膜性能の低下を招きやすい。液切りの方法としては、たとえば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能アミン水溶液接触後の多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの風を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させ、水溶液の水の一部を除去することもできる。
次いで、多官能アミン水溶液で被覆した後の支持体に、多官能酸ハロゲン化物を含有する、水と非混和性の有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合により架橋ポリアミドの分離機能層の骨格を形成する。多官能酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液のアミノ化合物水溶液相への接触の方法は、多官能アミン水溶液の支持体への被覆方法と同様に行えばよい。
この結果、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とが重縮合反応し、支持体上に架橋ポリアミドの分離機能層が形成される。分離機能層が形成されたあとは、余剰の溶媒を液切りするとよい。液切りの方法は、たとえば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることもできれば、エアーノズルから窒素などの風を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることもできる。また、液切り後、膜面を乾燥させ、水溶液の水の一部を除去することもできる。る。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1〜5分間の間にあることが好ましく、1〜3分間であるとより好ましい。短かすぎると分離機能層が完全に形成せず、長すぎると有機溶媒が過乾燥となり欠点が発生しやすく、性能低下を起こしやすい。
そして、支持体上での重縮合反応を停止させ、残存する多官能酸ハロゲン化物及び残存する有機溶媒を除去するため、例えば、炭酸ナトリウム1重量%と、ラウリル硫酸ナトリウム0.3重量%とを含む水溶液に2分間浸漬する。また、残存するアミノ化合物などを除去するために、30〜100℃の範囲内、好ましくは50〜100℃の範囲内にある水で膜を洗浄することも好ましい。さらに、例えばpHが5〜13の範囲内の塩素含有水溶液に常圧で接触させることで、膜を高性能化することも好ましい。
また、前述したように、本発明の液体分離膜を海水処理に用いる場合は、特に硫酸イオンの阻止率が高いことが好ましく、そのためには表面にアニオン荷電を有するアニオン性膜であることが好ましい。アニオン性液体分離膜を得るには、分離機能層を形成して得られた膜を次亜塩素酸水溶液に浸漬処理する方法が簡便で効果的である。処理温度、濃度、やpHについては特に限定はないが、温度については、常温が簡便で好ましいが、加温することによって処理速度を上げることができる。pHについては、有害な塩素ガスが発生させないために6.0〜13.0が好ましい。濃度と時間は、大きいほど処理総量が増加するが、過剰に処理すると膜が分解してしまうため、注意を要する。具体的には、50〜10000ppmの濃度で、5秒〜1時間程度の処理が本発明への適用に好ましい。特に、50〜1000ppmの濃度で5秒〜5分程度でpH6における膜面ゼータ電位が負になる。さらに、処理効率を上げる方法として、触媒の併用も可能である。
本発明の液体分離膜は、たとえば原液流路材や透過液流路材と共に集水管の周囲に巻囲され、スパイラル状のエレメントとして使用され、浸透圧以上の圧力を負荷することで、原液を透過液と濃縮液とに分離する。液体分離膜に供給される原液として特に制限されるものではないが、本発明の液体分離膜は、海水中の多価イオン除去に使用すると効果をより発揮できるので好ましい。そして、得られた透過液はスケール成分が除去されているので、逆浸透膜装置、蒸発法装置、電気透析装置、凍結脱塩装置などの海水淡水化システムへ供給しても、スケール生成なしに高回収率での脱塩、淡水化が可能である。
エレメントとしては、スパイラル状エレメントに限られるものではなく、液体分離膜の膜形態に合わして適切な形態のエレメントとすればよい。本発明の液体分離膜としては、中空糸膜、管状膜、平膜のいずれでもよく、エレメントとしては、液体分離膜の両側に実質的な液室を有し、液体分離膜の一方の表面から他方の表面に液体を加圧透過させることができるものであれば、とくに制限されるものではない。平膜の場合は、枠体で支持した液体分離膜を複数枚積層する構造のプレート&フレーム型や、上述のスパイラル型と呼ばれるタイプが一般的であり、これらのエレメントを矩形や円筒状の筐体に納めて用いる。また、中空糸膜、管状膜の場合は、複数本の液体分離膜の筐体内に配置するとともにその端部をポッティングして液質を形成してエレメントを構成する。なお、エレメントは、単体でも複数個を直列あるいは並列に接続して使用することもできる。
また、原液は、本発明の液体分離膜に供給する前に、濁質成分の除去や殺菌などの前処理を施しておくことが好ましい。これらの処理により液体分離膜のファウリングなどによる性能低下を防ぐことができ、処理装置の長期に渡る安定運転を可能にする。具体的な前処理は、原液の性状により適宜選択すればよいが、たとえば、濁質成分が多く含まれる原液を処理する場合は、ポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤を加えた後に砂ろ過を行い、さらに例えば複数本の中空糸膜を束ねた精密ろ過膜や限外ろ過膜によるろ過を行うことが好ましい。
中空糸膜を用いる場合は、ろ過水による逆洗や、空気によるエアーフラッシング、スクラビング洗浄が行えるようにモジュール化すれば、一旦低下した膜の透水性能を回復させることができる。中空糸膜の孔径は、10μm以下であると好ましく、さらに好ましくは2μm以下である。さらに微小な固体を除去する場合には、孔径0.1μm以下のものを用いると好ましい。その素材としては、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ポリフツ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロースやセラミック等の無機素材からなる群から選ばれるものであることが好ましく、さらにはアクリロニトリル系共重合体やポリフツ化ビニリデンが好ましい。
また、原液中にバクテリアや藻類などの微生物が多く含まれる場合は、殺菌剤を添加することも好ましい。殺菌には塩素を用いることが好ましく、たとえば塩素ガスや次亜塩素酸ナトリウムを遊離塩素として1〜5mg/lの範囲内となるように原液に添加するとよい。この場合、なるべく原液の流れる方向に関して上流側で添加することが好ましい。この塩素は、あまり残留濃度が高いと複合半透膜を劣化させるため、膜の原水入口側近傍にて残留塩素濃度を測定し、この測定値に基づいて塩素ガスや次亜塩素酸ナトリウムの添加量を制御したり、亜硫酸水素ナトリウムなどを添加し還元するとよい。
さらに、原液中にフミン質や水溶性高分子など溶解性の有機物が多く含まれる場合には、塩素ガスや次亜塩素酸ナトリウムの添加によりそれら有機物を分解したり、活性炭ろ過により除去すればよい。また、溶解性の無機物が多く含まれている場合は、有機系高分子電解質やヘキサメタ燐酸ソーダなどのキレート剤を添加したり、イオン交換樹脂などを用いて溶解性イオンと交換したりするとよい。鉄やマンガンが可溶な状態で存在しているときは、曝気酸化ろ過法や接触酸化ろ過法などを用いることが好ましい。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例において阻止率は次式により求めた。
阻止率(%)={1−(透過液中の溶質濃度)/(供給液中の溶質濃度)}×100
原水および透過水中の溶質濃度のうち、陽イオンはICP発光分析装置、また、陰イオン濃度の測定はイオンクロマト法で行った。
原水および透過水中の溶質濃度のうち、陽イオンはICP発光分析装置、また、陰イオン濃度の測定はイオンクロマト法で行った。
また、透過流束は単位時間(日)に単位面積(m2)当たりの膜を透過する透過水量(m3/m2・日)で求めた。
<参考例>
実施例および比較例において使用した繊維補強ポリスルホン微多孔性支持膜(支持体)は、以下の手法により製造した。
<参考例>
実施例および比較例において使用した繊維補強ポリスルホン微多孔性支持膜(支持体)は、以下の手法により製造した。
タテ30cmヨコ20cmの大きさのポリエステル繊維からなるタフタ(タテ糸、ヨコ糸とも30本の単糸よりなる16.665テックスのマルチフィラメント糸、織密度タテ3543本/m、ヨコ2638本/m、厚さ160μm)をガラス板上に固定し、その上にポリスルホン(ユニオン・カーバイト社製のUdel(登録商標)−P3500)の15重量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を200μmの厚みで室温(20℃)でキャストし、ただちに純水中に室温で浸漬して5分間放置することによって繊維補強ポリスルホン微多孔性支持膜(以下FR−PS支持膜と略す)を作製する。このようにして得られたFR−PS支持膜(厚さ210〜215μm)の透過流束は、圧力0.1MPa、温度25℃で測定して1.7m3/m2・日であった。
<実施例1>
参考例に従って製造した支持膜を全アミン濃度を3wt%(ピペラジン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンのモル比が7:2:1)とした混合水溶液中に1分間浸漬した。該支持膜を垂直方向にゆっくりと引上げ、支持膜表面から余分な水溶液を取除いた後、全酸クロライド濃度を0.1wt%(トリメシン酸クロライドとトリメリット酸クロライド無水物のモル比が4:6)としたデカン溶液に表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置した。次に膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去した後、膜面に残った溶媒を蒸発させるために膜表面での風速が8m/s、温度30℃の空気を1分間吹き付けた。この膜を炭酸ナトリウムの1wt%と、ラウリル硫酸ナトリウム0.3wt%とを含む水溶液に2分間浸漬して反応を停止させた後、十分に水洗した。つづいて、90℃、2分間熱水洗浄した後、pH7で500ppmの塩素濃度の水溶液に2分間浸漬して液体分離膜を得た。NMR法によるこの液体分離膜分離機能層部分のアミン組成は、ピペラジン:o−フェニレンジアミン:m−フェニレンジアミン=45:39:16、酸クロライド組成はトリメシン酸クロライド:トリメリット酸クロライド=41:59であった。
<実施例1>
参考例に従って製造した支持膜を全アミン濃度を3wt%(ピペラジン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンのモル比が7:2:1)とした混合水溶液中に1分間浸漬した。該支持膜を垂直方向にゆっくりと引上げ、支持膜表面から余分な水溶液を取除いた後、全酸クロライド濃度を0.1wt%(トリメシン酸クロライドとトリメリット酸クロライド無水物のモル比が4:6)としたデカン溶液に表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置した。次に膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去した後、膜面に残った溶媒を蒸発させるために膜表面での風速が8m/s、温度30℃の空気を1分間吹き付けた。この膜を炭酸ナトリウムの1wt%と、ラウリル硫酸ナトリウム0.3wt%とを含む水溶液に2分間浸漬して反応を停止させた後、十分に水洗した。つづいて、90℃、2分間熱水洗浄した後、pH7で500ppmの塩素濃度の水溶液に2分間浸漬して液体分離膜を得た。NMR法によるこの液体分離膜分離機能層部分のアミン組成は、ピペラジン:o−フェニレンジアミン:m−フェニレンジアミン=45:39:16、酸クロライド組成はトリメシン酸クロライド:トリメリット酸クロライド=41:59であった。
このようにして得られた液体分離膜を温度25℃、圧力1.0MPaで純水透過運転を24時間実施した後における純水透過流束は、67×10-6m3/m2・sであった。つづいて、この膜を、NaCl=30.762g/l, Na2SO4=5.151g/l, KCl=0.949g/l, NaHCO3=0.252g/l, MgCl2=6.521g/l, CaCl2=1.475g/lの組成でpH6.5,25℃に調整した全溶質濃度4.5%の模擬海水を原水として、透過流束0.5m3/m2・日に設定したときの圧力は1.1MPaで、そのときのナトリウムイオン阻止率は22%、カルシウムイオン阻止率は86%であった。また、この模擬海水を45℃に昇温し、透過流束0.5m3/m2・日に設定したときの圧力は、0.9MPaで、そのときのナトリウムイオン阻止率は20%、カルシウムイオン阻止率は74%と、実用領域において低圧運転可能で、かつ、イオン阻止性能のバランスに優れた膜であった。
<実施例2>〜<実施例7>
アミン組成として、ピペラジンとo−フェニレンジアミンとm−フェニレンジアミンとのモル比、および、酸クロライド組成として、トリメシン酸クロライドとトリメリット酸クロライド無水物とのモル比を表1に示すように変更した他は、実施例1と同じ方法で製膜し、同じ手順で評価を実施した。結果を表1に示す。
<比較例1>
アミン組成として、ピペラジンとm−フェニレンジアミンのモル比、および、酸クロライド組成として、トリメシン酸クロライドとトリメリット酸クロライド無水物のモル比を表1に示すように変更した他は、実施例1と同じ方法で製膜し、同じ手順で評価を実施した。結果を表1に示すが、純水透過流束は小さく、透過流束0.5m3/m2・日に設定したときのナトリウムイオン阻止性能は高すぎてイオン分離性能も悪く、さらに運転圧力が高くエネルギーコストがかかる膜であった。
<比較例2>〜<比較例6>
アミン組成として、ピペラジンとm−フェニレンジアミンとのモル比、および、酸クロライド組成として、トリメシン酸クロライドとトリメリット酸クロライド無水物とのモル比を表1に示すように変更した他は、実施例1と同じ方法で製膜し、同じ手順で評価を実施した。結果を表1に示すが、いずれも、純水透過流束、ナトリウムイオン阻止性能、イオン分離性能のバランスの悪い膜であった。
<実施例2>〜<実施例7>
アミン組成として、ピペラジンとo−フェニレンジアミンとm−フェニレンジアミンとのモル比、および、酸クロライド組成として、トリメシン酸クロライドとトリメリット酸クロライド無水物とのモル比を表1に示すように変更した他は、実施例1と同じ方法で製膜し、同じ手順で評価を実施した。結果を表1に示す。
<比較例1>
アミン組成として、ピペラジンとm−フェニレンジアミンのモル比、および、酸クロライド組成として、トリメシン酸クロライドとトリメリット酸クロライド無水物のモル比を表1に示すように変更した他は、実施例1と同じ方法で製膜し、同じ手順で評価を実施した。結果を表1に示すが、純水透過流束は小さく、透過流束0.5m3/m2・日に設定したときのナトリウムイオン阻止性能は高すぎてイオン分離性能も悪く、さらに運転圧力が高くエネルギーコストがかかる膜であった。
<比較例2>〜<比較例6>
アミン組成として、ピペラジンとm−フェニレンジアミンとのモル比、および、酸クロライド組成として、トリメシン酸クロライドとトリメリット酸クロライド無水物とのモル比を表1に示すように変更した他は、実施例1と同じ方法で製膜し、同じ手順で評価を実施した。結果を表1に示すが、いずれも、純水透過流束、ナトリウムイオン阻止性能、イオン分離性能のバランスの悪い膜であった。
Claims (7)
- 温度25℃、圧力1.0MPaにおける純水透過流束が40×10-6m3/m2・s以上であり、温度25℃、pH6.5、全溶質濃度4.5重量%の模擬海水を透過流束0.5m3/m2・日で透過させたとき、圧力が2.0MPa以下、ナトリウムイオン阻止率が20〜60%の範囲内、かつ、カルシウムイオン阻止率が70%以上であることを特徴とする液体分離膜。
- 温度45℃、pH6.5、全容質濃度4.5重量%の模擬海水を透過流束0.5m3/m2・日で透過させたとき、圧力が2.0MPa以下、ナトリウムイオン阻止率が20〜60%の範囲内、かつ、カルシウムイオン阻止率が70%以上であることを特徴とする請求項1に記載の液体分離膜。
- 少なくともオルト位(o-)にアミノ基を有するo−芳香族ジアミンおよび脂肪族アミンを含む多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合反応させて架橋ポリアミドの分離機能層を形成することを特徴とする液体分離膜の製造方法。
- 多官能アミンとして、さらに、メタ位(m−)にアミノ基を有するm−芳香族ジアミンおよび/またはパラ位(p−)にアミノ基を有するp−芳香族ジアミンを含むことを特徴とする請求項3に記載の液体分離膜の製造方法。
- 請求項1もしくは2に記載の液体分離膜または請求項3もしくは4に記載の方法により製造された液体分離膜を備えたことを特徴とする液体処理装置。
- 請求項1もしくは2に記載の液体分離膜または請求項3もしくは4に記載の方法により製造された液体分離膜を用いて液体中の多価イオンを除去することを特徴とする液体処理方法。
- 前記液体が海水であることを特徴とする請求項6に記載の液体処理方法。
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JP2010137192A (ja) * | 2008-12-15 | 2010-06-24 | Toray Ind Inc | 複合ナノろ過膜 |
JP2021035658A (ja) * | 2019-08-30 | 2021-03-04 | 東レ株式会社 | 複合半透膜および複合半透膜の製造方法 |
WO2023276586A1 (ja) * | 2021-06-29 | 2023-01-05 | 住友化学株式会社 | 膜分離方法およびルーズro膜の製造方法 |
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2003
- 2003-11-27 JP JP2003396729A patent/JP2005152818A/ja active Pending
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