JP2002079246A - 造水方法 - Google Patents

造水方法

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JP2002079246A
JP2002079246A JP2001173608A JP2001173608A JP2002079246A JP 2002079246 A JP2002079246 A JP 2002079246A JP 2001173608 A JP2001173608 A JP 2001173608A JP 2001173608 A JP2001173608 A JP 2001173608A JP 2002079246 A JP2002079246 A JP 2002079246A
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ion
water
carbon atoms
ions
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Yasushi Tateishi
康 立石
Masahiro Kihara
正浩 木原
Takayuki Nakanishi
貴之 中西
Mutsuo Murakami
睦夫 村上
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】膜面へのスケール発生を抑えつつ、高回収率で
造水が可能な造水方法を提供する。 【解決手段】イオン分離膜に原水を供給して透過水を得
た後、この透過水を逆浸透膜に供給するにあたり、原水
のpHを2〜5の範囲内に制御するとともに、前記イオ
ン分離膜により、原水に含まれる1価のイオンを10%
以上透過させ、かつ、原水に含まれる2価以上の金属イ
オンおよび/または2価以上の金属イオンと結合しうる
2価以上のイオンを90%以上除去する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、浄水場における飲
料水の製造や工業排水などの処理、海水やかん水からの
淡水の製造などに好適に用いることができる造水方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、浄水場などにおける飲料水の製造
や海水・かん水の淡水化に逆浸透膜を用いた方法が取り
入れられ、広く普及するに至っている。中でも、海水淡
水化については、従来の蒸留法やイオン交換法に比べて
省エネルギー性や省資源性、省スペース性に優れるた
め、急ピッチで開発が進められている。
【0003】この海水淡水化のプロセスに対する改良要
求は年々高まり、特に、省エネルギーという観点から、
高い塩除去性を維持したまま、より高回収率の可能な膜
プロセスの出現が望まれている。しかしながら、高い塩
除去性を維持しようとすると、海水中に含まれるイオン
成分の全ての除去性が高まり、供給水(海水)側と透過
水(淡水)側との水の浸透圧差が高まって、より大きな
エネルギーを加えないと膜分離が行えず、造水コストが
増大するといった問題があった。一方、透過水の水質を
保ったまま、すなわち、高い塩除去性を維持したまま高
回収率で膜分離を行おうとすると、濃縮水側のイオン成
分濃度が高まって、硫酸カルシウムや硫酸マグネシウ
ム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムなどのスケー
ルが膜面に析出し、透過水水質の低下やプロセスの不安
定性につながるなどの問題が生じていた。
【0004】そこで、たとえば、特開平9−29027
5号公報では、逆浸透膜への供給水に含まれる2価以上
の陽イオンをあらかじめNF(ナノフィルトレーショ
ン)膜により除去する前処理を行い回収率を高めること
が提案されているが、装置全体で高回収率運転を行おう
とすると、前処理膜についても回収率を高める必要があ
り、結局、前処理膜であるNF膜にスケールが析出し、
全体の回収率を高めることが困難になるという問題があ
った。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
した従来の問題を解決し、膜面へのスケール発生を抑え
つつ、高回収率で造水が可能な造水方法を提供すること
にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、イオン分離膜に原水を供給して得た透過水
を逆浸透膜に供給するに際し、原水のpHを2〜6.5
の範囲内に制御するとともに、前記イオン分離膜によ
り、原水に含まれる1価のイオンを10%以上透過さ
せ、かつ、原水に含まれる2価以上の金属イオンおよび
/または2価以上の金属イオンと結合しうる2価以上の
イオンを90%以上除去する造水方法を特徴とする。
【0007】ここで、1価のイオンとして、ナトリウム
イオン、カリウムイオン、臭素イオンおよびフッ素イオ
ンからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンを選
択し、2価以上の金属イオンおよび/または2価以上の
金属イオンと結合しうる2価以上のイオンとして、カル
シウムイオン、マグネシウムイオン、硫酸イオンおよび
炭酸イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のイ
オンを選択する上記の造水方法も好ましい。
【0008】また、25℃において、pH6.5の、塩
化ナトリウム濃度が500mg/lであり、硫酸カルシ
ウム濃度が500mg/lである水溶液を1MPaの圧
力で加えたときの塩素イオンおよびナトリウムイオンの
透過率がいずれも10%以上であり、カルシウムイオン
および/または硫酸イオンの除去率が90%以上である
イオン分離膜を用いる上記の造水方法も好ましい。
【0009】さらに、原水として海水またはかん水を用
いる上記の造水方法も好ましく、上記の造水方法により
得られた水も好ましい。
【0010】また、本発明は、多官能アミンと多官能酸
ハロゲン化物とを反応させて、多孔性支持膜膜上に架橋
ポリアミドの分離機能層を設けるに際し、多官能アミン
として脂肪族多官能アミンと芳香族多官能アミンとを用
いるとともに、脂肪族多官能アミンと芳香族多官能アミ
ンとのモル比を10/90〜90/10の範囲内に制御
するイオン分離膜の製造方法も好ましい。
【0011】この場合、脂肪族多官能アミンとして、化
学式(1)および/または化学式(2)で表されるアミ
ン、もしくは、化学式(1)および/または化学式
(2)で表されるアミンの誘導体を用い、かつ、芳香族
多官能アミンとして、メタフェニレンジアミン、パラフ
ェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンお
よびこれらのN−アルキル化物からなる群から選ばれる
少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。
【0012】
【化4】
【0013】n=1以上の整数 R1〜R16:H、OH、COOH、SO3H、NH2
および炭素数が1〜4の範囲内にある脂肪族基からなる
群から選ばれるもの
【0014】
【化5】
【0015】n=1以上の整数 R1〜R8:H、OH、COOH、SO3H、NH2、炭
素数が1〜4の直鎖状の飽和脂肪族基、炭素数が1〜4
の直鎖状の不飽和脂肪族基、炭素数が3〜4の環状の飽
和脂肪族基および炭素数が3〜4の環状の不飽和脂肪族
基からなる群から選ばれるものまた、多官能酸ハロゲン
化物として、多官能酸塩化物および/または多官能酸無
水物塩化物を用いること、そして、化学式(3)で表さ
れるトリメリット酸無水物塩化物および/または化学式
(3)で表されるトリメリット酸無水物塩化物の誘導体
を用いることが好ましい。
【0016】
【化6】
【0017】n=1以上の整数 X1、X2:炭素数が1〜3の直鎖状の飽和脂肪族基、
炭素数が1〜3の直鎖状の不飽和脂肪族基、炭素数が3
の環状の飽和脂肪族基、炭素数が3の環状の不飽和脂肪
族基、H、OH、COOH、SO3H、COF、COC
l、COBrおよびCOIからなる群から選ばれるも
の、または、酸無水物を形成するもの X3 :炭素数が1〜3の直鎖状の飽和脂肪族基、
炭素数が1〜3の直鎖状の不飽和脂肪族基、炭素数が3
の環状の飽和脂肪族基、炭素数が3の環状の不飽和脂肪
族基、H、OH、COOH、SO3H、COF、COC
l、COBrおよびCOIからなる群から選ばれるもの Y :F、Cl、BrおよびIからなる群から選
ばれるもの
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の造水方法について、図1
に示すような海水から淡水を製造するための造水装置に
基づいて説明する。図1において、造水装置1は、pH
制御手段2、原水槽3、イオン分離膜を含むイオン分離
装置4、逆浸透膜を含む淡水化装置5からなっている。
6、7は、それぞれ、イオン分離装置4、淡水化装置5
に供給水を供給するためのポンプである。pH制御手段
2は、原水のpHを測定するpHメーター8と、得られ
た測定値に基づいて硫酸や塩酸などの酸を適量添加する
ポンプ9とからなっている。原水たる海水は、後述する
前処理を施された後、原水流路10を通る際、pH制御
手段2によりpHが2〜6.5の範囲内に制御され、原
水槽3に貯えられる。この原水は、ポンプ6によりイオ
ン分離装置4に供給されてイオンが選択的に分離され、
濃縮水と透過水とに分かれる。このうち濃縮水は濃縮水
流路11を通って、必要に応じて排出されるか、また
は、原水槽3に戻される。また、透過水はポンプ7によ
り淡水化装置5に供給され、濃縮水と透過水とに分離さ
れる。透過水は淡水として透過水流路12から取り出さ
れ、濃縮水は濃縮水流路13により排出される。
【0019】さて、本発明においては、イオン分離膜に
供給する原水のpHを2〜6.5の範囲内、より好まし
くはpH2〜5の範囲内に制御する工程を含んでいる。
この工程は、硫酸カルシウムや炭酸カルシウム、硫酸マ
グネシウム、水酸化マグネシウムなどのスケールの溶解
度を増加させるためのもので、イオン分離膜や逆浸透膜
の膜面にスケールを析出させにくくする。従って、原水
のpHを上記範囲内に制御すれば、長期に渡って高い回
収率を維持しつつ造水を行うことができる。pHが2を
下回ると、スケールの析出防止という観点からは好まし
いが、イオン分離膜や逆浸透膜の劣化を招くとともに、
配管にも特別の配慮が必要となり造水には不利となる。
また、pHが6.5を超えると、スケールの析出を招き
やすくなる。
【0020】上記のようにpHを制御するためには、無
機酸や有機酸などの酸を加えることが好ましく、具体的
には、塩酸や硫酸、硝酸、シュウ酸、クエン酸などを用
いることができる。中でも、塩酸を用いると、硫酸を用
いる場合のようにスケール成分となることもなく、ま
た、硝酸やシュウ酸、クエン酸を用いる場合のようにバ
クテリアなどの栄養源となることもないので、スケール
析出を防ぎ、かつ、バイオファウリングなどの発生を抑
えやすくなるので好ましい。
【0021】また、本発明の造水方法は、上記のイオン
分離膜により、原水に含まれる1価のイオンを10%以
上透過させ、かつ、原水に含まれる2価以上の金属イオ
ンおよび/または2価以上の金属イオンと結合しうる2
価以上のイオンを90%以上除去することを特徴として
いる。これは、1価の陽イオンや陰イオンはスケールの
生成には関与しないことに基づいている。すなわち、原
水中に含まれるナトリウムイオンやカリウムイオン、臭
素イオン、フッ素イオンなどの1価のイオンを10%以
上透過させることにより、イオン分離膜の原水側と透過
水側との浸透圧差を小さく保つことができるので、エネ
ルギー消費を抑えつつ造水量を高めることができる。さ
らに、本発明においては、上記に加え、スケールの析出
を抑えるため、2価の金属イオンおよび/またはこの金
属イオンと結合してスケールを析出させる2価以上のイ
オンを90%以上除去する。2価以上の金属イオンに
は、たとえば、カルシウムイオンやマグネシウムイオ
ン、バリウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、アル
ミニウムイオンがあり、硫酸イオンや炭酸イオン、水酸
化物イオンなどと結合してスケールを析出させる。スケ
ールの析出を防ぐには、上記の金属イオンおよびこの金
属イオンと結合してスケールを析出するイオンのいずれ
かを90%以上除去しておけば、結合そのものが起こり
にくくなりスケールの析出を抑えることができる。ま
た、その両方のイオンを90%以上除去しても、pHを
2〜6.5の範囲内に制御するので、膜の濃縮側でのス
ケール析出を十分に抑えることができる。
【0022】つまり、本発明では、これらのイオン除去
を選択的に行うことにより、スケール成分の析出に関与
しない1価のイオンを透過させて造水量を確保しつつ、
スケールの析出に関わるイオンを除去して、省エネルギ
ーかつ高効率な造水を行うことができるのである。
【0023】上記のような選択的なイオン除去を行うた
めのイオン分離膜としては、25℃において、pH6.
5の、塩化ナトリウム濃度が500mg/lであり、硫
酸カルシウム濃度が500mg/lである水溶液を1M
Paの圧力で加えたときの塩素イオンおよびナトリウム
イオンの透過率が10%以上であり、カルシウムイオン
または硫酸イオンの除去率が90%以上である特性を有
するイオン分離膜を用いることが好ましい。ここで、透
過率および除去率とは次式(1)、(2)で算出される
値をいう。
【0024】 透過率(%)=((透過水中の溶質濃度)/(原水中の溶質濃度))×100 ・・・ (1) 除去率(%)=(1−(透過水中の溶質濃度)/(原水中の溶質濃度))×1 00 ・・・ (2) 次に、本発明において好適に用いることができるイオン
分離膜の製造方法について述べる。
【0025】本発明のイオン分離膜は、多官能アミンと
多官能酸ハロゲン化物とを反応させて、多孔性支持膜膜
上に架橋ポリアミドの分離機能層を設けるに際し、多官
能アミンとして脂肪族多官能アミンと芳香族多官能アミ
ンとを用いるとともに、脂肪族多官能アミンと芳香族多
官能アミンとのモル比を10/90〜90/10の範囲
内に制御することで得ることができる。
【0026】上記において、超低圧運転条件下でも高排
除率、高造水量を達成できる膜とするためいには、脂肪
族多官能アミンとして、以下の化学式(1)、(2)で
表されるアミンおよび化学式(1)、(2)で表される
アミンの誘導体から少なくとも一種を選んで用いること
が好ましい。または、アミンとその誘導体とを同時に用
いてもよい。
【0027】
【化7】
【0028】n=1以上の整数 R1〜R16:H、OH、COOH、SO3H、NH2
および炭素数が1〜4の範囲内にある脂肪族基からなる
群から選ばれるもの
【0029】
【化8】
【0030】n=1以上の整数 R1〜R8:H、OH、COOH、SO3H、NH2、炭
素数が1〜4の直鎖状の飽和脂肪族基、炭素数が1〜4
の直鎖状の不飽和脂肪族基、炭素数が3〜4の環状の飽
和脂肪族基および炭素数が3〜4の環状の不飽和脂肪族
基からなる群から選ばれるもの すなわち、ビス(4−ピペリジル)アルカン系アミンお
よび/またはピペラジン系アミンおよびその誘導体を用
いることができ、具体的には、1,2−(4−ピペリジ
ル)エタン、1,3−(4−ピペリジル)プロパン、
1,4−(4−ピペリジル)ブタン、1,5−(4−ピ
ペリジル)ペンタン、ピペラジン、2,5−ジメチルピ
ペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピ
ペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,5
−ジエチルピペラジン、2,3,5−トリエチルピペラ
ジン、2−N−プロピルピペラジンなどを用いることが
できる。中でも、1価のイオンを透過させつつ2価以上
のイオンを効率よく除去するためには、1,2−(4−
ピペリジル)エタンや1,3−(4−ピペリジル)プロ
パン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジンを用い
ることが好ましい。
【0031】また、芳香族多官能アミンとしては、メタ
フェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、1,
3,5−トリアミノベンゼンおよびそれらのN−アルキ
ル化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物
を用いることが好ましい。N−アルキル化物の具体例と
しては、N,N−ジメチルメタフェニレンジアミンや
N,N−ジエチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジ
メチルパラフェニレンジアミン、N,N−ジエチルパラ
フェニレンジアミンなどを用いることができる。上記の
中では、特に、メタフェニレンジアミンや1,3,5−
トリアミノベンゼンを用いることが好ましい。
【0032】多官能酸ハロゲン化物とは、1分子中に2
個以上のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化
物をいい、上記のアミンと反応して架橋ポリアミドを生
成する。具体的には、1,3,5−シクロヘキサントリ
カルボン酸や1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−ベ
ンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカル
ボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベン
ゼンジカルボン酸などの各種酸の酸ハロゲン化物を用い
ることができる。中でも、低コストで入手しやすく、取
り扱い性や反応性なども良好な1,3,5−ベンゼント
リカルボン酸の酸ハロゲン化物であるトリメシン酸クロ
ライド等、多官能酸塩化物が好ましい。もちろん、上記
の酸ハロゲン化物はそれぞれ単独で用いてもよいし、混
合して用いることもできる。
【0033】また、多官能酸ハロゲン化物としては、高
い水透過性や溶解性有機物を除去する適度な細孔径をも
たせるために、多官能酸無水物ハロゲン化物を用いるこ
とが好ましい。多官能酸無水物ハロゲン化物とは、一分
子中に1個以上の酸無水物部分と1個以上のハロゲン化
カルボニル基を有するものであって、例えば無水安息香
酸、無水フタル酸のカルボニルハロゲン化物などが挙げ
られる。より好ましくは、多官能無水物塩化物、特に化
学式(3)で表されるトリメリット酸無水物塩化物及び
その誘導体を用いる。
【0034】
【化9】
【0035】n=1以上の整数 X1、X2:炭素数が1〜3の直鎖状の飽和脂肪族基、
炭素数が1〜3の直鎖状の不飽和脂肪族基、炭素数が3
の環状の飽和脂肪族基、炭素数が3の環状の不飽和脂肪
族基、H、OH、COOH、SO3H、COF、COC
l、COBrおよびCOIからなる群から選ばれるも
の、または、酸無水物を形成するもの X3 :炭素数が1〜3の直鎖状の飽和脂肪族基、
炭素数が1〜3の直鎖状の不飽和脂肪族基、炭素数が3
の環状の飽和脂肪族基、炭素数が3の環状の不飽和脂肪
族基、H、OH、COOH、SO3H、COF、COC
l、COBrおよびCOIからなる群から選ばれるもの Y :F、Cl、BrおよびIからなる群から選
ばれるもの 多孔性支持膜は、分離機能層に機械的強度を与える役割
を果たし、たとえば、布帛により強化されたポリスルホ
ン支持膜を用いることができる。この多孔性支持膜の構
造は、均一で微細な孔を有するか、または、片方の面か
らもう一方の面に向かって徐々に孔径が大きくなってい
るような孔を有しているものがよい。孔径としては、少
なくとも片面の表面において100nm以下であると好
ましく用いることができる。多孔性支持膜は、ポリスル
ホンや酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニ
ルなどのホモポリマーやそれらをブレンドしたものを用
いて湿式凝固法により得ることができる。具体的には、
たとえば、化学的、機械的、熱的に安定性が高く好まし
いポリスルホンを用いた例で説明すると、まず、密に織
ったポリエステル布や不織布の上にポリスルホンのジメ
チルホルムアミド(DMF)溶液を一定の厚みになるよ
うに注型し、次いでドデシル硫酸ソーダ0.5重量%と
DMF2重量%とを含む水溶液中で湿式凝固させること
により、表面の孔径が数10nm以下である微細な孔を
備えた多孔性支持膜を得ることができる。
【0036】さて、イオン分離膜の製造は、まず上記の
多官能アミンの水溶液を多孔性支持膜に被覆することに
より行う。この被覆は、水溶液が表面に均一に、かつ、
連続的に被覆されていればよく、上記の水溶液を塗布し
たり、水溶液中に多孔性支持膜を浸漬したりして行うこ
とができる。このとき、用いる多官能アミンは、脂肪族
多官能アミンと芳香族多官能アミンとのモル比が10/
90〜90/10の範囲内、好ましくは30/70〜9
0/10の範囲内になるように制御する。このモル比が
10/90を下回ると、1価のイオンの透過性が低下す
る傾向にあり、また、90/10を超えると、2価以上
の金属イオンまたはこの金属イオンと結合しうる2価以
上のイオンの除去率が低下し、選択的なイオン分離が困
難になりやすい。また、上記の水溶液の多官能アミン化
合物濃度は、0.1〜20重量%の範囲内であると好ま
しい。さらに、この水溶液中には、後述の重縮合反応を
妨害しない範囲において、必要に応じて、アシル化触媒
や極性溶媒、酸捕捉剤、界面活性剤、酸化防止剤などの
化合物を存在させてもよい。
【0037】次に、過剰の多官能アミン水溶液を液切り
工程により除去する。これは、たとえば、被覆面を垂直
に保持して自然流下させたり、熱風を吹き付けたりして
行うことができる。液切りを終えた後は、被覆面を乾燥
させ、水溶液中の水の全部または一部を除去しておいて
もよい。
【0038】次いで、多官能酸ハロゲン化物を含有す
る、水とは非混和性の有機溶媒溶液を多官能アミン水溶
液の被覆面の上に被覆して、それらの界面にて重縮合反
応を起こさせ、架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成
する。この有機溶媒溶液中の多官能酸ハロゲン化物の濃
度は、0.01〜1重量%の範囲内にあると好ましい。
0.01重量%を下回ると、分離機能層の形成は不十分
となりやすく、また、1重量%を超えると、コスト増大
につながりやすい。また、この有機溶媒溶液の被覆は、
上記のアミン水溶液の被覆と同様に行えばよく、過剰の
有機溶媒溶液の除去については、たとえば、特開平5−
76740号公報に記載の方法により行うことができ
る。上記の有機溶媒溶液は、水と非混和性であり、か
つ、多官能酸ハロゲン化物を溶解し、また、多孔性支持
膜を破壊しないことが必要である。具体的には、液状の
炭化水素、トリクロロトリフルオロエタンなどのハロゲ
ン化炭化水素を用いることができるが、オゾン層を破壊
せず、入手が容易で、取り扱い易く、また、安全性が高
いオクタンや、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカ
ン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサ
デカン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、1−
オクテン、1−デセンなどを用いることが好ましい。も
ちろんこれらは単独で用いても、混合して用いても構わ
ない。
【0039】逆浸透膜は、上記したイオン分離膜の製造
方法において、アミンとしてm−フェニレンジアミンな
どの芳香族多官能アミンのみを用いることにより製造す
ることができる。
【0040】上記した本発明のイオン分離膜は、平膜形
態としても中空糸膜形態としても用いることができる。
平膜の場合は、これらをスパイラル型モジュールやチュ
ーブラー型モジュール、プレート・アンド・フレーム型
モジュールとして用いると好適である。また、中空糸膜
形態の場合は、それらをI字状やU字状に束ねて筐体に
納めた中空糸膜モジュールとして用いることができる。
【0041】イオン分離膜を透過した水は、さらに逆浸
透膜で処理することにより、純水や飲料水を高効率で得
ることができるようになる。この場合、イオン分離膜で
スケール析出の原因となるイオンをあらかじめ選択除去
しているので、逆浸透膜処理において高回収率処理を行
ってもスケールの析出が発生しにくくなる。逆浸透膜処
理法としては、たとえば、海水やかん水から飲料水など
の淡水を製造する場合は、逆浸透膜を1回透過させて濃
縮水と透過水を得る1段法や、逆浸透膜を前後段の2段
備え、前段で得られた濃縮水を後段への供給水とする濃
縮水2段法、さらに、前段の透過水を後段への供給水と
する透過水2段法などがあり、いずれも好適に用いるこ
とができる。
【0042】上記においては、原水として海水やかん水
を用いる例について説明したが、もちろん、これらに限
られることはなく、たとえば、河川水や湖水、地下水、
工場排水などを供給水として上水などの処理水を得るこ
とができる。水道水を得る浄水処理施設にも好適であ
る。また、原水中の2価以上のイオンを濃縮して有価物
を回収する用途にも本発明は適している。
【0043】本発明においては、原水はイオン分離膜に
供給されるわけであるが、その前に濁質成分の除去や殺
菌などの前処理を施しておくことが好ましい。これらの
処理によりイオン分離膜や逆浸透膜の性能低下を防ぐこ
とができ、処理装置の長期に渡る安定運転を可能にす
る。具体的な処理は、原水の性状により適宜選択すれば
よいが、たとえば、濁質成分が多く含まれる原水を処理
する場合は、ポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤を加え
た後に砂ろ過を行い、さらに中空糸膜などの限外ろ過膜
によるろ過を行うことが好ましい。また、バクテリアや
藻類などの微生物が多い場合は、殺菌剤を添加すること
が好ましい。殺菌には塩素を用いることが好ましく、た
とえば塩素ガスや次亜塩素酸ナトリウムを遊離塩素とし
て1〜5mg/lの範囲内となるように原水に添加する
とよい。この場合、なるべく原水の流れる方向に関して
上流側で添加することが好ましい。この塩素は、あまり
残留濃度が高いとイオン分離膜や逆浸透膜を劣化させる
ため、膜の原水入口側近傍にて残留塩素濃度を測定し、
この測定値に基づいて塩素ガスや次亜塩素酸ナトリウム
の添加量を制御したり、亜硫酸水素ナトリウムなどの還
元剤を添加したりするとよい。さらに、溶解性の有機物
が多く含まれている場合には、塩素ガスや次亜塩素酸ナ
トリウムの添加によりそれら有機物は分解されるが、溶
解性の有機物やこれらの分解物は、いずれも、活性炭ろ
過を行うことにより除去が可能である。また、溶解性の
無機物が多く含まれている場合は、有機系高分子電解質
やヘキサメタ燐酸ソーダなどのキレート剤を添加した
り、イオン交換樹脂などを用いて溶解性イオンと交換し
たりするとよい。鉄やマンガンが可溶な状態で存在して
いるときは、ばっ気酸化ろ過法や接触酸化ろ過法などを
用いることが好ましい。
【0044】本発明の造水方法を用いれば、装置全体の
回収率、すなわち、装置に供給した原水の総量に対する
透過水の総量の百分率を50%以上、より好ましくは6
0%以上とすることができ、エネルギー消費量を低く抑
えて、長期間に渡り安定して飲料水や上水などを造水す
ることができる。
【0045】
【実施例】実施例において造水量は、単位時間(1日)
に単位面積(1m2)の膜を透過する透過水量(m3/m
2/d)で求めた。また、原水や透過水中のイオン濃度
の測定はイオンクロマト法、原子吸光法または誘導結合
プラズマ(ICP)発光分析法で行った。
【0046】実施例において用いたイオン分離膜1、
2、3および逆浸透膜は、以下のようにして製造した。 (イオン分離膜1)まず、繊維補強ポリスルホン支持膜
(多孔性支持膜)を製造した。すなわち、縦30cm、
横20cmの大きさのポリエステル繊維からなるタフタ
(経糸、緯糸とも170dtexのマルチフィラメント
糸、織密度は経方向に35本/cm、緯方向に27本/
cm、厚み160μm)をガラス板上に固定し、その上
にポリスルホン(ユニオン・カーバイト(株)製“Ud
el−P3500”)を15重量%含むジメチルホルム
アミド(DMF)溶液を200μmの厚みで20℃にて
キャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置し
た。
【0047】上記で得られた繊維補強ポリスルホン支持
膜(以下、FR−PS支持膜という)を以下に示す水溶
液中に1分間浸漬した。
【0048】 (ただし、上記3種のアミン化合物の総含有量は3重量
%である。) 次いで、FR−PS支持膜を垂直方向にゆっくりと引き
上げ、表面から過剰の水溶液を除去した後、トリメシン
酸クロライドを0.06重量%含むデカン溶液を表面が
完全に濡れるように塗布して1分間静置した。次に、膜
を垂直にして過剰の溶液を液切りして除去した後、膜表
面での風速が8m/sとなるように温度が30℃の空気
を1分間吹き付けて、膜面に残った溶媒を蒸発させた。
得られた膜を炭酸ナトリウムを1重量%含む水溶液に5
分間浸漬した後、十分に水洗してイオン分離膜1を得
た。このイオン分離膜1の特性を表1に示す。 (イオン分離膜2)FR−PS支持膜を浸漬する水溶液
の組成を以下のとおりにした他は、イオン分離膜1と同
様にしてイオン分離膜2を得た。このイオン分離膜2の
特性を表1に示す。
【0049】 (ただし、上記3種のアミン化合物の総含有量は3重量
%である。) (イオン分離膜3)FR−PS支持膜を浸漬する水溶液
の組成及び多官能酸ハロゲン化物の組成を以下のとおり
にした以外はイオン分離膜1と同様にしてイオン分離膜
3を得た。即ち、m−フェニレンジアミン/ピペラジン
=15/85モル比となるようにピペラジンを加え、ト
リメシン酸クロライド0.06重量%を含んだデカン溶
液に、さらにトリメシン酸クロライド/トリメリット酸
無水物クロライド=50/50モル比となるようにトリ
メリット酸無水物クロライドを加えた以外はイオン分離
膜1と同様にしてイオン分離膜3を得た。このイオン分
離膜3の特性を表1に示す。 (逆浸透膜)FR−PS支持膜を浸漬する水溶液として
m−フェニレンジアミンを9重量%含む水溶液を用いた
他は、イオン分離膜1と同様にして逆浸透膜を得た。 (実施例1)図1に示すような造水装置を用いて、造水
を行った。まず、琵琶湖水に、前処理として次亜塩素酸
ナトリウム(殺菌剤)を残留塩素が1.0mg/lとな
るように加えた後、ポリ塩化アルミニウム(凝集剤)を
5mg/lとなるように加えて砂ろ過し、次いで高重合
度ポリアクリロニトリルを用いた中空糸限外ろ過膜モジ
ュールでろ過を行った。次いで、亜硫酸水素ナトリウム
(還元剤)を100mg/lとなるように添加して残存
する塩素を取り除き、pHが4となるように塩酸を加え
て原水槽に貯えた。次に、塩化ナトリウムを500mg
/l、硫酸カルシウムを500mg/lとなるように添
加し、イオン分離膜1に1MPaの圧力で供給した。こ
のとき、このイオン分離膜に関する回収率は60%に設
定した。次いで、得られた透過水を逆浸透膜に6.2M
Paの圧力で供給し、装置全体として50%の回収率で
透過水を得た。運転条件および評価結果を表2に示す。
【0050】この例では、運転開始から1ヶ月運転後で
も造水量が低下することなく安定に運転することができ
た。その後、イオン分離膜1や逆浸透膜を組み込んだエ
レメントを解体し、膜表面をX線マイクロアナライザー
で分析したが金属元素は検出されず、スケールが析出し
ていないことを確認した。 (実施例2)イオン分離膜2を用い、原水槽のpHを3
になるように制御し、1.2MPaの圧力で供給し、イ
オン分離膜2に関する回収率を70%となるようにし、
逆浸透膜に6.7MPaの圧力で供給し、装置全体とし
て63%の回収率で透過水を得た他は、実施例1と同様
にして造水を行った。運転条件および評価結果を表2に
示す。
【0051】この例でも、実施例1と同様に、運転開始
から1ヶ月運転後でも造水量が低下することなく安定に
運転することができた。また、その後エレメントを解体
し、膜表面をX線マイクロアナライザーで分析したが金
属元素は検出されず、スケール成分が析出していないこ
とを確認した。 (実施例3)図1に示すような造水装置を用いて海水を
処理した。まず、海水に前処理として、次亜塩素酸ナト
リウムを残留塩素が0.5mg/lとなるように加えた
後、塩化第二鉄(凝集剤)を7mg/lとなるように加
えて砂ろ過し、次いで高重合度ポリアクリロニトリルを
用いた中空糸型限外ろ過膜を含むモジュールでろ過を行
った。次いで、亜硫酸水素ナトリウムを50mg/lと
なるように添加して残存する塩素を取り除き、pHが
3.5となるように塩酸を加えて原水槽に貯えた後、イ
オン分離膜1に1.8MPaの圧力で供給した。このと
き、このイオン分離膜1に関する回収率を60%に設定
した。次いで、得られた透過水を逆浸透膜に8.3MP
aの圧力で供給し、装置全体として54%の回収率で透
過水を得た。運転条件および評価結果を表2に示す。
【0052】この例でも、実施例1と同様に、運転開始
から1ヶ月運転後においても、造水量が低下することな
く、安定して運転することができた。その後、イオン分
離膜1や逆浸透膜を組み込んだエレメントを解体し、膜
表面をX線マイクロアナライザーで分析したところ、金
属元素は検出されず、スケールも析出していないことを
確認した。 (実施例4)イオン分離膜2を用い、原水槽のpHを3
に制御するとともに、圧力2.1MPaで原水を供給
し、イオン分離膜2に関する回収率を80%になるよう
にし、装置全体として72%の回収率で透過水を得た他
は、実施例3と同様にして透過水を得た。運転条件およ
び評価結果を表2に示す。
【0053】この例でも、実施例1と同様に、運転開始
から1ヶ月運転後においても、造水量が低下することな
く、安定して運転することができた。また、その後エレ
メントを解体し、膜表面をX線マイクロアナライザーで
分析したところ、金属元素は検出されず、スケールも析
出していないことを確認した。 (実施例5)イオン分離膜3を用い、原水槽のpHを
3.5になるように制御し、1.5MPaの圧力で供給
し、イオン分離膜3に関する回収率を75%となるよう
にし、逆浸透膜に6.7MPaの圧力で供給し、装置全
体として65%の回収率で透過水を得た他は、実施例1
と同様にして造水を行った。運転条件および評価結果を
表2に示す。
【0054】この例でも、実施例1と同様に、運転開始
から1ヶ月運転後でも造水量が低下することなく安定に
運転することができた。また、その後エレメントを解体
し、膜表面をX線マイクロアナライザーで分析したが金
属元素は検出されず、スケール成分が析出していないこ
とを確認した。 (比較例1)原水のpHを7.2に制御し、0.55M
Paの圧力で供給し、イオン分離膜1に関する回収率を
30%にし、逆浸透膜に6.0MPaの圧力で供給し、
装置全体として24%の回収率で透過水を得た他は、実
施例1と同様にして造水を行った。評価結果を表2に示
す。
【0055】この例では、イオン分離膜1に関する回収
率を30%と低く設定したため、目立ったスケール析出
は見られなかった。 (比較例2)イオン分離膜1に代えてイオン分離膜2を
用いた他は比較例1と同様にして造水を行った。評価結
果を表2に示す。
【0056】この例でも、比較例1と同様にイオン分離
膜2に関する回収率を30%と低く設定したため、目立
ったスケール析出は見られなかった。 (比較例3)回収率を60%に設定し、1.0MPaで
イオン分離膜1に供給し、逆浸透膜に6.2MPaの圧
力で供給し、装置全体として50%の回収率で透過水を
得た他は、比較例1と同様にして造水を行った。評価結
果を表2に示す。
【0057】この例では、運転開始から造水量が低下
し、1週間運転後には造水量が当初の40%程度まで低
下したため、運転を停止した。その後、イオン分離膜1
や逆浸透膜を組み込んだエレメントを解体し、膜表面を
X線マイクロアナライザーで分析したところカルシウム
が検出され、カルシウムスケールが生成していることを
確認した。 (比較例4)回収率を60%に設定し、1.0MPaで
イオン分離膜2に供給し、逆浸透膜に6.8MPaの圧
力で供給し、装置全体として57%の回収率で透過水を
得た他は、比較例2と同様にして造水を行った。評価結
果を表2に示す。
【0058】この例でも、比較例3と同様に運転開始か
ら造水量が低下し、1週間運転後には造水量が当初の4
0%程度まで低下したため、運転を停止した。その後、
イオン分離膜2や逆浸透膜を組み込んだエレメントを解
体し、膜表面をX線マイクロアナライザーで分析したと
ころカルシウムが検出され、カルシウムスケールが生成
していることを確認した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【発明の効果】本発明によれば、イオン分離膜に原水を
供給して得た透過水を逆浸透膜に供給するに際し、原水
のpHを2〜5の範囲内に制御するので、たとえスケー
ル析出の原因となりうるイオンの濃度が高まっても、ス
ケールの析出を抑えることができる。また、このpHの
制御とともに、前記イオン分離膜により、原水に含まれ
る1価のイオンを10%以上透過させ、かつ、原水に含
まれる2価以上の金属イオンおよび/または2価以上の
金属イオンと結合しうる2価以上のイオンを90%以上
除去するので、スケール析出にはほとんど関係のない1
価イオン濃度の膜間差が小さくなって浸透圧差を減少さ
せることができ、少ないエネルギーでより多くの透過水
を得ることができる。しかも、スケール析出の原因とな
りうる2価以上のイオンを90%以上除去するのでスケ
ールの析出も発生しにくい。
【0062】また、1価のイオンとして、ナトリウムイ
オン、カリウムイオン、臭素イオンおよびフッ素イオン
からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンを選択
し、2価以上の金属イオンおよび/または2価以上の金
属イオンと結合しうる2価以上のイオンとして、カルシ
ウムイオン、マグネシウムイオン、硫酸イオンおよび炭
酸イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオ
ンを選択すれば、より効果的にスケールの析出を防ぐこ
とができる。
【0063】さらに、上記において、イオン分離膜とし
て、25℃において、pH6.5の、塩化ナトリウム濃
度が500mg/lであり、硫酸カルシウム濃度が50
0mg/lである水溶液を1MPaの圧力で加えたとき
の塩素イオンおよびナトリウムイオンの透過率がいずれ
も10%以上であり、カルシウムイオンおよび/または
硫酸イオンの除去率が90%以上である膜を用いれば、
上記したイオンの選択分離をより効率的に行うことがで
き、低コストな造水を行うことができる。
【0064】また、原水として海水やかん水を用いれ
ば、簡便に飲料水や農業用水、工業用水などの淡水を得
ることができる。
【0065】さらに、本発明においては、多官能アミン
と多官能酸ハロゲン化物とを反応させて、多孔性支持膜
膜上に架橋ポリアミドの分離機能層を設けるに際し、多
官能アミンとして脂肪族多官能アミンと芳香族多官能ア
ミンとを用いるとともに、脂肪族多官能アミンと芳香族
多官能アミンとのモル比を10/90〜90/10の範
囲内に制御してイオン分離膜を製造するので、上記した
イオンの選択分離に好適なイオン分離膜とすることがで
きる。
【0066】このとき、脂肪族多官能アミンとして化学
式(1)及び/または化学式(2)で表されるアミンや
そのアミンの誘導体を用い、かつ、芳香族多官能アミン
としてメタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミ
ン、1,3,5−トリアミノベンゼンおよびこれらのN
−アルキル化物からなる群から選ばれる少なくとも1種
の化合物を用いれば、分離機能層の細孔径などが適度に
制御されるので、さらにイオンの選択分離に好適なイオ
ン分離膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施するための造水装置を示す概略
図である。
【符号の説明】
1:造水装置 2:pH制御手段 3:原水槽 4:イオン分離装置 5:淡水化装置 6:ポンプ 7:ポンプ 8:pHメーター 9:ポンプ 10:原水流路 11:濃縮水流路 12:透過水流路 13:濃縮水流路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B01D 71/56 B01D 71/56 C08G 69/26 C08G 69/26 C08J 5/22 101 C08J 5/22 101 CFG CFG // C08L 77:06 C08L 77:06 (72)発明者 村上 睦夫 滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株 式会社滋賀事業場内 Fターム(参考) 4D006 GA03 GA07 KA01 KA52 KA57 KA81 KB30 MA09 MB07 MC54X NA45 NA64 PB03 PB04 PB08 PB27 PB28 PC80 4F071 AA60 FA05 FA06 FA09 FB01 FB02 FC05 FD03 4J001 DA01 DB02 DB03 DC15 DD05 DD07 DD13 DD18 EB23 EB26 EB34 EB67 EC25 EC33 EC45 EC46 EC77 FB03 FC06 GA16 GA20 GB20 GD08 HA03 JA17 JA20

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イオン分離膜に原水を供給して得た透過
    水を逆浸透膜に供給するに際し、原水のpHを2〜6.
    5の範囲内に制御するとともに、前記イオン分離膜によ
    り、原水に含まれる1価のイオンを10%以上透過さ
    せ、かつ、原水に含まれる2価以上のイオンおよび/ま
    たは2価以上のイオンと結合しうる2価以上のイオンを
    90%以上除去することを特徴とする造水方法。
  2. 【請求項2】 1価のイオンとして、ナトリウムイオ
    ン、カリウムイオン、塩素イオン、臭素イオン、フッ素
    イオンおよびホウ素イオンからなる群から選ばれる少な
    くとも1種のイオンを選択し、2価以上のイオンおよび
    /または2価以上のイオンと結合しうる2価以上のイオ
    ンとして、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、硫
    酸イオンおよび炭酸イオンからなる群から選ばれる少な
    くとも1種のイオンを選択する、請求項1に記載の造水
    方法。
  3. 【請求項3】 25℃において、pH6.5の、塩化ナ
    トリウム濃度が500mg/lであり、硫酸カルシウム
    濃度が500mg/lである水溶液を1MPaの圧力で
    加えたときの塩素イオンおよびナトリウムイオンの透過
    率がいずれも10%以上であり、カルシウムイオンおよ
    び/または硫酸イオンの除去率が90%以上であるイオ
    ン分離膜を用いる、請求項1または2に記載の造水方
    法。
  4. 【請求項4】 原水として海水またはかん水を用いる、
    請求項1〜3のいずれかに記載の造水方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の造水方
    法により得られた水。
  6. 【請求項6】 多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物と
    を反応させて、多孔性支持膜膜上に架橋ポリアミドの分
    離機能層を設けるに際し、多官能アミンとして脂肪族多
    官能アミンと芳香族多官能アミンとを用いるとともに、
    脂肪族多官能アミンと芳香族多官能アミンとのモル比を
    10/90〜90/10の範囲内に制御することを特徴
    とするイオン分離膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 脂肪族多官能アミンとして、化学式
    (1)および/または化学式(2)で表されるアミン、
    もしくは、化学式(1)および/または化学式(2)で
    表されるアミンの誘導体を用い、かつ、芳香族多官能ア
    ミンとして、メタフェニレンジアミン、パラフェニレン
    ジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンおよびこれ
    らのN−アルキル化物からなる群から選ばれる少なくと
    も1種の化合物を用いる、請求項6に記載のイオン分離
    膜の製造方法。 【化1】 n=1以上の整数 R1〜R16:H、OH、COOH、SO3H、NH2
    および炭素数が1〜4の範囲内にある脂肪族基からなる
    群から選ばれるもの 【化2】 n=1以上の整数 R1〜R8:H、OH、COOH、SO3H、NH2、炭
    素数が1〜4の直鎖状の飽和脂肪族基、炭素数が1〜4
    の直鎖状の不飽和脂肪族基、炭素数が3〜4の環状の飽
    和脂肪族基および炭素数が3〜4の環状の不飽和脂肪族
    基からなる群から選ばれるもの
  8. 【請求項8】 多官能酸ハロゲン化物として、多官能酸
    塩化物および/または多官能酸無水物塩化物を用いるこ
    とを特徴とする請求項6または7に記載のイオン分離膜
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 多官能酸ハロゲン化物として、化学式
    (3)で表されるトリメリット酸無水物塩化物および/
    または化学式(3)で表されるトリメリット酸無水物塩
    化物の誘導体を用いることを特徴とする請求項6または
    7に記載のイオン分離膜の製造方法。 【化3】 n=1以上の整数 X1、X2:炭素数が1〜3の直鎖状の飽和脂肪族基、
    炭素数が1〜3の直鎖状の不飽和脂肪族基、炭素数が3
    の環状の飽和脂肪族基、炭素数が3の環状の不飽和脂肪
    族基、H、OH、COOH、SO3H、COF、COC
    l、COBrおよびCOIからなる群から選ばれるも
    の、または、酸無水物を形成するもの X3 :炭素数が1〜3の直鎖状の飽和脂肪族基、
    炭素数が1〜3の直鎖状の不飽和脂肪族基、炭素数が3
    の環状の飽和脂肪族基、炭素数が3の環状の不飽和脂肪
    族基、H、OH、COOH、SO3H、COF、COC
    l、COBrおよびCOIからなる群から選ばれるもの Y :F、Cl、BrおよびIからなる群から選
    ばれるもの
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