JP2005149989A - プロトン伝導膜およびそれを用いた直接メタノール型燃料電池 - Google Patents

プロトン伝導膜およびそれを用いた直接メタノール型燃料電池 Download PDF

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公彦 吉井
Toshitaka Otsuki
敏敬 大月
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Abstract

【課題】製造過程等での金属イオンによる汚染によるプロトン伝導度の低下の小さいプロトン伝導膜およびこのプロトン伝導膜を用いた直接メタノール型燃料電池を提供すること。
【解決手段】プロトン伝導膜は、下記繰り返し単位(A)および(B)からなるスルホン酸基を有するポリアリーレンと分子量500未満の窒素含有化合物との複合体からなる。
【化1】
Figure 2005149989

((A)中、Aは2価の電子吸引性基、Bは2価の電子供与基または直接結合、Arは−SO3Hを有する芳香族基、m、nは0〜10の整数、kは1〜4の整数、(B)中、R1〜R8は水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基、アリー
ル基等からなる群より選ばれた少なくとも1種、Wは2価の電子吸引性基または単結合、Tは単結合または2価の有機基、pは0または正の整数)。
【選択図】 なし

Description

本発明は、例えば直接メタノール型燃料電池用の電解質膜として好適に使用されるプロトン伝導膜および該プロトン伝導膜を用いた直接メタノール型燃料電池に関する。
燃料電池は、化学エネルギーから電気エネルギーへの変換効率が高く、クリーンな電源となりうることから、自動車等の移動体電源、住宅用電源等の分散型電源、小型携帯機器等の携帯用電源として実用化段階にある。
これらの用途のうち、携帯用電源用途として、メタノールを水素に改質せずに直接セルに供給して発電を行わせる直接メタノール型燃料電池(DMFC)は、取り扱いが容易であり、システムの小型化が可能であることから、携帯電話やパーソナルコンピュータ等のポータブル用電源として、従来のリチウムイオン電池に代わる電源として注目されている。
この直接メタノール型燃料電池用の電解質膜としては、米国デュポン社のナフィオン(Nafion(商標))に代表されるパーフルオロアルキルスルホン酸系のイオン伝導膜が使用されてきた。しかしながらパーフルオロスルホン酸系の電解質膜を直接メタノール型燃料電池に使用したときに、メタノールがアノード側からカソード側へ透過し、出力電圧を低下させる、いわゆるクロスオーバー現象が発生し、電池性能が著しく低下するという問題があった。
また、電解質膜は、製造過程および使用過程において、ステンレス配管由来と考えられる鉄イオンやクロムイオン、人間による取り扱い作業由来と考えられるナトリウムイオン等の金属イオンによる汚染がおきやすい。そしてこの汚染によりプロトン伝導度の低下が起こり、使用に大きな支障をきたすことになる。パーフルオロアルキルスルホン酸系のプロトン伝導膜では、汚染によるプロトン伝導度の低下に対応するため、燃料電池の電解質膜として用いる際には、3%過酸化水素水中での煮沸処理、1モル/Lの濃度の硫酸中での浸漬処理等の前処理が必須となっている。
本発明者らは上記のクロスオーバー現象の問題について鋭意検討したところ、スルホン酸基を有するポリアリーレンは、プロトン伝導度を維持しつつ、メタノールクロスオーバーを改良できることを見いだした。
しかし、このスルホン酸基を有するポリアリーレンからなるプロトン伝導膜も、パーフルオロアルキルスルホン酸系の膜に比べ程度は低いものの、やはり金属イオン汚染による物性低下がおきる。電解質膜に要求される物性、例えばプロトン伝導度は高性能になる一方で、量産に向けてのコスト削減も急務となっている。そのため、良好な物性を維持しつつも、煩雑な前処理工程を必要としない、即ち金属イオン汚染への耐性が高い電解質膜の開発が求められている。
本発明者らは上記の金属イオン汚染の課題について鋭意検討した結果、分子量500未満の窒素含有化合物をスルホン酸基を有するアリーレンからなる膜と複合化することによって、鉄イオン、クロムイオン、ナトリウムイオンに対する耐性を大幅に改良できることを見いだして本発明を完成するに至った。
本発明の課題は、上記のような従来技術における課題を背景としてなされたものであっ
て、製造過程、使用過程での鉄イオン、クロムイオン、ナトリウムイオンなどの金属イオンによる汚染によって起こるプロトン伝導度の低下の小さいプロトン伝導膜およびこのプロトン伝導膜を用いた直接メタノール型燃料電池を提供することにある。
本発明によれば、下記のプロトン伝導膜およびそれを用いた直接メタノール型燃料電池が提供されて、本発明の上記課題が解決される。
(1) スルホン酸基を有するポリアリーレンと分子量500未満の窒素含有化合物との複合体からなることを特徴とするプロトン伝導膜。
(2) 上記スルホン酸基を有するポリアリーレンが、下記一般式(A)で表される繰り返し単位および下記一般式(B)で表される繰り返し単位からなるポリアリーレンであることを特徴とする上記(1)に記載のプロトン伝導膜;
Figure 2005149989
(式(A)中、Aは2価の電子吸引性基を示し、Bは2価の電子供与基または直接結合を示し、Arは−SO3Hで表される置換基を有する芳香族基を示し、mは0〜10の整数
を示し、nは0〜10の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。)
Figure 2005149989
(式(B)中、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基、アリール基およびシアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Wは2価の電子吸引性基または単結合を示し、Tは単結合または2価の有機基を示し、pは0または正の整数を示す。)。
(3) 上記分子量500未満の窒素含有化合物が、グアニジン、トリアゾール、イミダゾールおよびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のプロトン伝導膜。
(4) 上記複合体は、スルホン酸基を有するポリアリーレンからなる膜の少なくとも1面に分子量500未満の窒素含有化合物がコートされてなるものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプロトン伝導膜。
(5) 上記複合体は、スルホン酸基を有するポリアリーレンからなる膜の内部に分子量500未満の窒素含有化合物が分散されてなるものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプロトン伝導膜。
(6) 電解質膜が上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のプロトン伝導膜であることを特徴とする直接メタノール型燃料電池。
本発明により、金属イオン汚染に対する耐性の向上したプロトン伝導膜およびこのプロトン伝導膜を電解質膜として用いた直接メタノール型燃料電池を提供することができる。そのため、プロトン伝導膜を直接メタノール型燃料電池の電解質膜として使用する際の前処理が不要となり、その工業的価値は絶大である。
以下、本発明に係るプロトン伝導膜およびそれを用いた直接メタノール型燃料電池について説明する。
本発明に係るプロトン伝導膜は、スルホン酸基を有するポリアリーレンと分子量500未満の窒素含有化合物との複合体からなる。
まず本発明に使用されるスルホン酸基を有するポリアリーレンについて具体的に説明する。
(スルホン酸基を有するポリアリーレン)
本発明に使用されるスルホン酸基を有するポリアリーレンは、下記一般式(A)で表される繰り返し構成単位と、下記一般式(B)で表される繰り返し構成単位とを含んでいる。
Figure 2005149989
式中、Aは2価の電子吸引性基を示し、具体的には−CO−、−SO2−、−SO−、
−CONH−、−COO−、−(CF2l−(ここで、lは1〜10の整数である)、−C(CF32−などが挙げられる。Bは2価の電子供与基または直接結合を示し、電子供与基の具体例としては、−(CH2)−、−C(CH32−、−O−、−S−、−CH=
CH−、−C≡C―および
Figure 2005149989
などが挙げられる。
なお、電子吸引性基とは、ハメット(Hammett)置換基常数がフェニル基のm位の場合、
0.06以上、p位の場合、0.01以上の値となる基をいう。
Arは−SO3Hで表される置換基を有する芳香族基を示し、芳香族基として具体的には
フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナンチル基などが挙げられる。これらの基のうち、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
mは0〜10、好ましくは0〜2の整数、nは0〜10、好ましくは0〜2の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。
Figure 2005149989
式(B)中、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基、アリール基およびシアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基などが好ましい。
フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられ、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが好ましい。
アリル基としては、プロペニル基などが挙げられ、
アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
Wは単結合または2価の電子吸引性基を示す。2価の電子吸引性基としては上述したものと同様のものが挙げられる。
Tは単結合または2価の有機基を示す。2価の有機基として具体的には、電子吸引性基および電子供与基が挙げられ、電子吸引性基および電子供与性基としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
式(B)において、pは0または正の整数であり、上限は通常100、好ましくは10〜80である。
スルホン酸基を有するポリアリーレンは、具体的には下記一般式(C)で表される重合体である。
Figure 2005149989
(式(C)中、W、T、A,B、Ar、m、n、k、pおよびR1〜R8は、それぞれ上記一般式(A)および(B)中のW、T、A、B、Ar、m、n、k、pおよびR1〜R8と同義である。)
本発明で用いられるスルホン酸基を有するポリアリーレンは、式(A)で表される繰り返し構成単位を0.5〜100モル%、好ましくは10〜99.999モル%の割合で、式(B)で表される繰り返し構成単位を99.5〜0モル%、好ましくは90〜0.001モル%の割合で含有している。
(スルホン酸基を有するポリアリーレンの製造方法)
スルホン酸基を有するポリアリーレンは、上記一般式(A)で表される構造単位となりうるスルホン酸エステル基を有するモノマーと、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるオリゴマーとを共重合させ、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを製造し、このスルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを加水分解して、スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換することにより合成することができる。
また、スルホン酸基を有するポリアリーレンは、上記一般式(A)で表される骨格を有しスルホン酸基、スルホン酸エステル基を有しない構造単位と、上記一般式(B)の構造単位からなるポリアリーレンを予め合成し、この重合体をスルホン化することにより合成することもできる。
上記一般式(A)の構造単位となりうるモノマーと、上記一般式(B)の構造単位となりうるオリゴマーとを共重合させてスルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを合成する場合には、上記一般式(A)の構造単位となりうるモノマーとしては、例えば下記一般式(D)で表されるスルホン酸エステル(以下、「モノマー(D)」ともいう。)が用いられる。
Figure 2005149989
式(D)中、Xはフッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2Z(
ここで、Zはアルキル基、フッ素置換アルキル基またはアリール基を示す。)から選ばれる原子または基を示し、A、B、m、nおよびkは、それぞれ上記一般式(A)中のA、B、m、nおよびkと同義である。Raは炭素原子数1〜20、好ましくは4〜20の炭
化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチル基、アダマンタンメチル基、2−エチルヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]へプチル基、ビシクロ[2.2.1]へプチルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メチルブチル基、3,3−ジメチル−2,4−ジオキソランメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基などの直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、脂環式炭化水素基、5員の複素環を有する炭化水素基などが挙げられる。これらのうちn−ブチル基、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、さらにはネオペンチル基が好ましい。
Ar'は−SO3bで表されるスルホン酸エステル基を有する芳香族基を示し、芳香族
基として具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナンチル基などが挙げられる。これらの基のうち、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
スルホン酸エステル基−SO3bは、芳香族基に1個または2個以上置換しており、置換基−SO3bが2個以上置換している場合には、これらのスルホン酸エステル基は互いに同一でも異なっていてもよい。
ここで、Rbは炭素原子数1〜20、好ましくは4〜20の炭化水素基を示し、具体的
には上記炭素原子数1〜20の炭化水素基などが挙げられる。これらのうちn−ブチル基、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、さらにはネオペンチル基が好ましい。
式(D)で表されるスルホン酸エステルの具体例としては、以下の様な化合物が挙げられる。
Figure 2005149989
Figure 2005149989
Figure 2005149989
Figure 2005149989
Figure 2005149989
Figure 2005149989
Figure 2005149989
Figure 2005149989
また、上記一般式(D)で表されるスルホン酸エステルとして、上記化合物において塩素原子が臭素原子に置き換わった化合物、上記化合物において−CO−が−SO2−に置
き換わった化合物、上記化合物において塩素原子が臭素原子に置き換わり、かつ−CO−が−SO2−に置き換わった化合物なども挙げられる。
一般式(D)中のRb基は1級のアルコール由来で、β炭素が3級または4級炭素であ
ることが、重合工程中の安定性に優れ、脱エステル化によるスルホン酸の生成に起因する重合阻害や架橋を引き起こさない点で好ましく、さらには、これらのエステル基は1級アルコール由来でβ位が4級炭素であることが好ましい。
また、上記一般式(D)で表されるスルホン酸エステルと同様の骨格を有し、スルホン酸基、スルホン酸エステル基を有しない化合物の具体例としては、下記の様な化合物が挙げられる。
Figure 2005149989
上記化合物において塩素原子が臭素原子に置き換わった化合物、上記化合物において−CO−が−SO2−に置き換わった化合物、上記化合物において塩素原子が臭素原子に置
き換わり、かつ−CO−が−SO2−に置き換わった化合物なども挙げられる。
上記一般式(B)の構造単位となりうるオリゴマーとしては、例えば下記一般式(E)で表される化合物(以下「オリゴマー(E)」ともいう。)が用いられる。
Figure 2005149989
式(E)中、R1〜R8、W、Tおよびpは、それぞれ上記一般式(B)中のR1〜R8、W、Tおよびpと同義である。
R'およびR''は互いに同一でも異なっていてもよく、フッ素原子を除くハロゲン原子ま
たは−OSO2Z(ここで、Zはアルキル基、フッ素置換アルキル基またはアリール基を
示す。)で表される基を示す。Zが示すアルキル基としてはメチル基、エチル基などが挙げられ、フッ素置換アルキル基としてはトリフルオロメチル基などが挙げられ、アリール基としてはフェニル基、p−トリル基などが挙げられる。
上記一般式(E)で表される化合物として具体的には、p=0の場合、例えば4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンズアニリド、ビス(クロロフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−クロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4−ク
ロロ安息香酸−4−クロロフェニル、ビス(4−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが挙げられる。これらの化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物、さらにこれらの化合物において4位に置換したハロゲン原子の少なくとも1つ以上が3位に置換した化合物などが挙げられる。
またp=1の場合、上記一般式(E)で表される具体的な化合物としては、例えば4,
4'−ビス(4−クロロベンゾイル)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロベ
ンゾイルアミノ)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロフェニル)ジフェニルエーテルジカルボキシレート、4,4'−ビス〔(4−クロロフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフル
オロプロピル〕ジフェニルエーテル、4,4'−ビス〔(4−クロロフェニル)テトラフルオロエチル〕ジフェニルエーテル、これらの化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物、さらにこれらの化合物において4位に置換したハロゲン原子が3位に置換した化合物、さらにこれらの化合物においてジフェニルエーテルの4位に置換した基の少なくとも1つが3位に置換した化合物などが挙げられる。
さらに上記一般式(E)で表される化合物としては、2,2−ビス[4−{4−(4−
クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロ
パン、ビス[4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル]スルホン、および下記式で表される化合物が挙げられる。
Figure 2005149989
上記一般式(E)で表される化合物は、例えば以下に示す方法で合成することができる。
まず電子吸引性基で連結されたビスフェノールを対応するビスフェノールのアルカリ金属塩とするために、N−メチル−2−ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキサイドなどの誘電率の高い極性溶媒中でリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩などを加える。
通常、アルカリ金属はフェノールの水酸基に対し、過剰気味で反応させ、通常、1.1〜2倍当量を使用する。好ましくは、1.2〜1.5倍当量の使用である。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどの水と共沸する溶媒を共存させて、電子吸引性基で活性化されたフッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された芳香族ジハライド化合物、例えば、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−クロロフルオロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、4−フルオロフェニル−4'−クロロ
フェニルスルホン、ビス(3−ニトロ−4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロ
ロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、ヘキサフルオロベンゼン、デカ
フルオロビフェニル、2,5−ジフルオロベンゾフェノン、1,3−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼンなどを反応させる。反応性から言えば、フッ素化合物が好ましいが、次の芳香族カップリング反応を考慮した場合、末端が塩素原子となるように芳香族求核置換反応を組み立てる必要がある。活性芳香族ジハライドはビスフェノールに対し、2〜4倍モル、好ましくは2.2〜2.8倍モルの使用である。芳香族求核置換反応の前に予め、ビスフェノールのアルカリ金属塩としていてもよい。反応温度は60℃〜300℃で、好ましくは80℃〜250℃の範囲である。反応時間は15分〜100時間、好ましくは1時間〜24時間の範囲である。最も好ましい方法としては、下記式で示される活性芳香族ジハライドとして反応性の異なるハロゲン原子を一個ずつ有するクロロフルオロ体を用いることであり、フッ素原子が優先してフェノキシドと求核置換反応が起きるので、目的の活性化された末端クロロ体を得るのに好都合である。
Figure 2005149989
(式中、Wは一般式(E)に関して定義した通りである。)
また、上記一般式(E)で表される化合物を合成する方法としては、特開平2−159号公報に記載のように求核置換反応と親電子置換反応を組み合わせ、目的の電子吸引性基、電子供与性基からなる屈曲性化合物の合成方法がある。
具体的には電子吸引性基で活性化された芳香族ビスハライド、例えば、ビス(4−クロロフェニル)スルホンをフェノールと求核置換反応させてビスフェノキシ置換体とする。次いで、このビスフェノキシ置換体を例えば、4−クロロ安息香酸クロリドとのフリーデルクラフト反応により目的の化合物を得る。ここで用いる電子吸引性基で活性化された芳
香族ビスハライドは上記で例示した化合物が適用できる。フェノールは置換されていてもよいが、耐熱性や屈曲性の観点から、無置換化合物が好ましい。なお、フェノールの置換反応にはアルカリ金属塩とするのが好ましく、アルカリ金属化合物としては上記に例示した化合物を使用できる。使用量はフェノール1モルに対し、1.2〜2倍モルである。反応に際し、上述した極性溶媒や水との共沸溶媒を用いることができる。フリーデルクラフト反応では、ビスフェノキシ置換体を塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛などのルイス酸のフリーデルクラフト反応の活性化剤存在下に、アシル化剤として、クロロ安息香酸クロライドを反応させる。クロロ安息香酸クロライドはビスフェノキシ化合物に対し、2〜4倍モル、好ましくは2.2〜3倍モルの使用である。フリーデルクラフト活性化剤は、アシル化剤のクロロ安息香酸などの活性ハライド化合物1モルに対し、1.1〜2倍当量使用する。反応時間は15分〜10時間の範囲で、反応温度は−20℃から80℃の範囲である。使用溶媒は、フリーデルクラフト反応に不活性な、クロロベンゼンやニトロベンゼンなどを用いることができる。
一般式(E)において、pが2以上である化合物は、例えば、一般式(E)において電子供与性基Tであるエーテル性酸素の供給源となるビスフェノールと、電子吸引性基Wである、>C=O、−SO2−および>C(CF32から選ばれる少なくとも1種の基とを
組み合わせた化合物、具体的には2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビスフェノールのアルカリ金属塩と、過剰の4,4−ジクロロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホンなどの活性芳香族ハロゲン化合物との置換反応をN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチル
アセトアミド、スルホランなどの極性溶媒存在下で前記単量体の合成手法に順次重合して得られる。
このような化合物の例示としては、下記式で表される化合物などを挙げることができる。
Figure 2005149989
上記において、pは0または正の整数であり、上限は通常100、好ましくは10〜80である。
上記一般式(C)で表されるスルホン酸エステル基を有するポリアリーレンは、モノマ
ー(D)とオリゴマー(E)を触媒の存在下に反応させることにより合成されるが、この際使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、(i)遷移金属塩および配位子となる化合物(以下、「配位子成分」という。)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、ならびに(ii)還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、「塩」を添加してもよい。
ここで、遷移金属塩としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナートなどのニッケル化合物;塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウムなどのパラジウム化合物;塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄などの鉄化合物;塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルトなどのコバルト化合物などが挙げられる。これらのうち特に、塩化ニッケル、臭化ニッケルなどが好ましい。
また、配位子成分としては、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジン、1,5−
シクロオクタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどが挙げられる
。これらのうち、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジンが好ましい。上記配位子成分である化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
さらに、配位子が配位された遷移金属錯体としては、例えば、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、硝酸ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、臭化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ヨウ化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、硝酸ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ビス(1,5−シク
ロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどが挙げられる。これらのうち、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)が好ましい。
上記触媒系に使用することができる還元剤としては、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどが挙げられる。これらのうち、亜鉛、マグネシウム、マンガンが好ましい。これらの還元剤は、有機酸などの酸に接触させることにより、より活性化して用いることができる。
また、上記触媒系において使用することのできる「塩」としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのナトリウム化合物、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム化合物;フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウムなどのアンモニウム化合物などが挙げられる。これらのうち、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
各成分の使用割合は、遷移金属塩または遷移金属錯体が、上記モノマーの総計(モノマー(D)+オリゴマー(E)の総計、以下同じ)1モルに対し、通常、0.0001〜10モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。0.0001モル未満では、重合反応が十分に進行しないことがあり、一方、10モルを超えると、分子量が低下することがある。
上記触媒系において、遷移金属塩および配位子成分を用いる場合、この配位子成分の使用割合は、遷移金属塩1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、触媒活性が不十分となることがあり、一方、100モル
を超えると、分子量が低下することがある。
また、還元剤の使用割合は、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、重合が十分進行しないことがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難になることがある。
さらに、「塩」を使用する場合、その使用割合は、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.001〜100モル、好ましくは0.01〜1モルである。0.001モル未満では、重合速度を上げる効果が不十分であることがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難となることがある。
モノマー(D)とオリゴマー(E)とを反応させる際に使用することのできる重合溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,
N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリド
ン、γ−ブチロラクトン、N,N'−ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。これらのうち、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N'−ジメチルイミダゾリジノンが好ましい。これらの重合溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
重合溶媒中における上記モノマーの総計の濃度は、通常、1〜90重量%、好ましくは5〜40重量%である。
また、重合する際の重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは50〜120℃である。また、重合時間は、通常、0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
モノマー(D)を用いて得られたスルホン酸エステル基を有するポリアリーレンは、スルホン酸エステル基を加水分解して、スルホン酸基に変換することによりスルホン酸基を有するポリアリーレンとすることができる。
加水分解は、
(1)少量の塩酸を含む過剰量の水またはアルコールに、上記スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを投入し、5分間以上撹拌する方法
(2)トリフルオロ酢酸中で上記スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを80〜120℃程度の温度で5〜10時間程度反応させる方法
(3)スルホン酸エステル基を有するポリアリーレン中のスルホン酸エステル基(−SO3R)1モルに対して1〜3倍モルのリチウムブロマイドを含む溶液、例えばN−メチル
ピロリドンなどの溶液中で上記ポリアリーレンを80〜150℃程度の温度で3〜10時間程度反応させた後、塩酸を添加する方法
などを挙げることができる。
スルホン酸基を有するポリアリーレンは、上記一般式(D)で表されるスルホン酸エステルと同様の骨格を有しスルホン酸エステル基を有しないモノマーと、上記一般式(E)で表されるオリゴマーを共重合させることによりスルホン酸基を有しないポリアリーレンを予め合成し、このスルホン酸基を有しないポリアリーレンをスルホン化することにより合成する場合は、上記合成方法に準じた方法によりスルホン酸基を有しないポリアリーレンを製造した後、スルホン化剤を用い、スルホン酸基を有しないポリアリーレンにスルホン酸基を導入することによりスルホン酸基を有するポリアリーレンを得ることができる。
このスルホン酸基を有しないポリアリーレンのスルホン化の反応条件としては、スルホン酸基を有しないポリアリーレンを、無溶剤下、あるいは溶剤存在下で、スルホン化剤を用い、常法によりスルホン酸基を導入することにより得ることが出来る。
スルホン酸基を導入する方法としては、例えば、上記スルホン酸基を有しないポリアリー
レンを、無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸、硫酸、亜硫酸水素ナトリウムなどの公知のスルホン化剤を用いて、公知の条件でスルホン化することができる〔Polymer Preprints,Japan,Vol.42,No.3,p.730(1993);Polymer Preprints,Japan,Vol.43,No.3,p.736(1994);Polymer Preprints,Japan,Vol.42,No.7,p.2490〜2492(1993)〕。
すなわち、このスルホン化の反応条件としては、上記スルホン酸基を有しないポリアリーレンを、無溶剤下、あるいは溶剤存在下で、上記スルホン化剤と反応させる。溶剤としては、例えばn−ヘキサンなどの炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような非プロトン系極性溶剤のほか、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。反応温度は特に制限はないが、通常、−50〜200℃、好ましくは−10〜100℃である。また、反応時間は、通常、0.5〜1,000時間、好ましくは1〜200時間である。
上記のような方法により製造されるスルホン酸基を有するポリアリーレン(C)中の、スルホン酸基量は、通常0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜3meq/g、さらに好ましくは0.8〜2.8meq/gである。0.3meq/g未満では、プロトン伝導度が低く実用的ではない。一方、5meq/gを超えると、耐水性が大幅に低下してしまうことがあるため好ましくない。
上記のスルホン酸基量は、例えばモノマー(D)とオリゴマー(E)の種類、使用割合、組み合わせを変えることにより、調整することができる。
このようにして得られるスルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万である。
スルホン酸基を有するポリアリーレンには、老化防止剤、好ましくは分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物を含有させて使用してもよく、老化防止剤を含有することで電解質としての耐久性をより向上させることができる。
本発明で使用することのできるヒンダードフェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロオネート](商品名:IRGANOX 245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−
ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 259)
、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン(商品名:IRGANOX 565)、ペンタエリスリチルーテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−
ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(商品名:IRGANOX 1076)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(商品名:IRGAONOX 1098)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(
3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:IRGANOX 1330)
、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト(
商品名:IRGANOX 3114)、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:Sumilizer GA-80)などを挙げることができる。
本発明において、スルホン酸基を有するポリアリーレン100重量部に対してヒンダードフェノール系化合物は0.01〜10重量部の量で使用することが好ましい。
以上で述べたスルホン酸基を有するポリアリーレンは10μm〜500μmの膜厚範囲で製膜して用いることができるが、導電性と機械的強度のバランスおよび取り扱いの容易さから考えると、20μm〜200μmの膜厚範囲が好ましい。
(分子量500未満の窒素含有化合物)
本発明で用いられる分子量500未満の窒素含有化合物としては、グアニジン、トリアゾール、イミダゾールおよびこれらの誘導体が好ましく、具体的にはグアニジノベンズイミダゾール、グアニン、グアニジンカーボネート、プリン、ジアミノプリン、ジアミノトリアゾール、ヒスタミン、およびこれらの塩等が挙げられる。
(プロトン伝導膜)
本発明のプロトン伝導膜は、上記スルホン酸基を有するポリアリーレンと、分子量500未満の窒素含有化合物との複合体により構成されるものである。該複合体は、分子量500未満の窒素含有化合物が、スルホン酸基を有するポリアリーレンからなる膜の表面にコートされているものであっても、分子量500未満の窒素含有化合物が、スルホン酸基を有するポリアリーレンからなる膜の内部に分散させられていてもよい。また、該複合体は、積層体の内部の一層として分子量500未満の窒素含有化合物からなる層を有する積層体であってもよい。
スルホン酸基を有するポリアリーレンから膜を製造するには、例えば該ポリアリーレンと有機溶媒とからなる組成物を調製し、この組成物を用いてキャスティングにより、基体上に流延し、フィルム状に成形するキャスティング法がある。
なお、上記組成物はスルホン酸基を有するポリアリーレンおよび有機溶媒以外に、硫酸、リン酸などの無機酸、カルボン酸を含む有機酸、適量の水などが含まれても良い。
組成物中のポリマー濃度は、スルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量にもよるが、通常、5〜40重量%、好ましくは7〜25重量%である。5重量%未満では、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすくなることがある。一方、40重量%を超えると、溶液粘度が高すぎてフィルム化し難く、また、表面平滑性に欠けることがある。
組成物の溶液粘度は、スルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量や、ポリマー濃度にもよるが、通常、2,000〜100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。2,000mPa・s未満では、加工中の溶液の滞留性が悪く
、基体から流れてしまうことがあり。一方、100,000mPa・sを超えると、高粘
度過ぎて、ダイからの押し出しができず、流延法によるフィルム化が困難となることがある。
組成物は、例えば上記各成分を所定の割合で混合し、従来公知の方法、例えばウエーブローター、ホモジナイザー、ディスパーサー、ペイントコンディショナー、ボールミルなどの混合機を用いて混合することにより調製することができる。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル1−プ
ロパノール、シクロヘキサノール、ジシクロヘキサノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキ
サノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセロール、m−クレゾール、ジエチレ
ングリコール、ジプロピレングリコール、エチルラクテート、n−ブチルラクテート、ジアセトンアルコール、ジオキサン、ブチルエーテル、フェニルエーテル、イソペンチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、シネオール、ベンジルエチルエーテル、フラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、アセタール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2,4−ジメチル−3−ペ
ンタノン、2−オクタノン、アセトフェノン、メシチルオキサイド、ベンズアルデヒド、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセタート、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ―ブチロラクトン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジメチルジエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルサルフィド、アセトニトリル、ブチロニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、2−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、シメチルアセアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどを挙げることができ、これらは1種類以上を組み合わせて用いることもでき、そのうち1種類以上は、−O−、−OH、−CO−、−SO2−、−SO3−、−CNおよび−CO2−からな
る基を少なくとも1種類以上有する有機溶媒であることが好ましい。
上記基体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが挙げられるが、これに限定されるものではなく、通常の溶液キャスティング法に用いられる基体であれば、いかなる素材でもよく、例えばプラスチック製でも、金属製でも特に制限されるものではない。
上記キャスティング法による製膜後、30〜160℃、好ましくは50〜150℃で3〜180分、好ましくは5〜120分乾燥することにより、フィルム(プロトン伝導膜)を得ることができる。その乾燥膜厚は、通常、10〜500μm、導電性と機械的強度のバランスおよび取り扱いの容易さから考えると、20μm〜200μmである。乾燥後、膜中に溶媒が残存する場合は、必要に応じて、水抽出により脱溶媒することもできる。
分子量500未満の窒素含有化合物をスルホン酸基を有するポリアリーレンからなる膜の表面にコートする場合には、その膜厚が薄いほどプロトン伝導度の低下が少なくなるので好ましく、膜厚は通常0.01〜10μmであるが、0.1〜1μmであることが好ましい。なお、分子量500未満の窒素含有化合物は、膜の片面または両面にコートすることができる。
分子量500未満の窒素含有化合物がスルホン酸基を有するポリアリーレンからなる膜の表面にコートされているプロトン伝導膜は、例えば分子量500未満の窒素含有化合物と、別の導電性物質とを適切な溶剤に溶解して溶液を調製し、これをスルホン酸基を有するポリアリーレンからなる膜に塗布することによって形成することができる。この溶液における分子量500未満の窒素含有化合物の濃度は、通常0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%である。なお、溶剤としては、例えば水、アルコール、エーテル、エステル溶剤などを用いることができ、別の導電性物質としては、例えば炭酸塩、塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
分子量500未満の窒素含有化合物がスルホン酸基を有するポリアリーレンからなる膜の内部に分散されているプロトン伝導膜は、例えば分子量500未満の窒素含有化合物と、別の導電性物質とを適切な溶剤に溶解して溶液を調製し、これにスルホン酸基を有するポリアリーレンからなる膜を浸漬することによっても形成することができる。この浸漬法により作製する場合には、分子量500未満の窒素含有化合物の濃度は低い方が好ましく、具体的には0.1%以下、好ましくは0.005〜0.05%の低濃度で処理することによって、より優れた効果を得ることができる。また、浸漬時間は、通常1〜120分、好ましくは5〜30分である。ここで用いられる別の導電性物質および溶剤としては上記と同様のものが挙げられる。
積層体からなるプロトン伝導膜を製造するには、例えば上述したキャスティング法により得られた膜の表面に、上記方法により分子量500未満の窒素含有化合物をコートし、さらにその上にキャスティング法によりスルホン酸基を有するポリアリーレンからなる層を形成する方法が挙げられる。積層体からなるプロトン伝導膜では、分子量500未満の窒素含有化合物からなる層の膜厚は通常0.01〜10μmであるが、0.1〜1μmであることが好ましい。
なお、上記方法により製造されたプロトン伝導膜は、ホットプレス等の熱処理を加えてもよい。
本発明のプロトン伝導膜は、スルホン酸基を有するポリアリーレンと分子量500未満の窒素含有化合物との合計量に対して、分子量500未満の窒素含有化合物を0.002〜50重量%、好ましくは0.05〜5重量%の割合で含有することが望ましい。プロトン伝導膜が、分子量500未満の窒素含有化合物を上記のような量で含有すると、プロトン伝導度に優れ、かつ金属イオンの汚染によるプロトン伝導度の低下が少ない。
なお、上記で得られたプロトン伝導膜に、パーフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロ酢酸、リン酸、ピロメリット酸、および硝酸等の有機酸または無機酸をドープすることによって、プロトン伝導膜の導電性をさらに高めることができる。
本発明のプロトン伝導膜は、電子ビーム、イオンビーム、ガンマ線、あるいは紫外線等を照射したり、マイクロウェーブやヒータで加熱したりして使用することもできる。
本発明のプロトン伝導膜は、プロトン伝導度等の物性を保持しつつ、鉄イオン、ナトリウムイオン、およびクロムイオンの汚染に対して優れた耐性を有しており、家庭用電源向け燃料電池、燃料電池自動車、携帯電話用燃料電池、パーソナルコンピュータ用燃料電池、携帯端末用燃料電池、デジタルカメラ用燃料電池、ポータブルCD、MD用燃料電池、ヘッドホンステレオ用燃料電池、ペットロボット用燃料電池、電動アシスト自転車用燃料電池、電動スクーター用燃料電池等の用途に好適に使用することができる。
(直接メタノール型燃料電池)
次に、本発明に係る直接メタノール型燃料電池の構成について説明する。図1は当該直接メタノール型燃料電池の構成図である。
図1に示されるように、直接メタノール型燃料電池は、燃料極1と、1と接する電解質膜2と、燃料極1と対向して設けられ、電解質膜2と接する空気極3と、燃料極1及び空気極3と接続された外部回路4を備えている。この電解質膜2は、上記プロトン伝導膜よりなる。
また、直接メタノール型燃料電池は、第1の流路11、第2の流路12、第3の流路13及び第4の流路14を備えている。この第1の流路11には、燃料であるメタノール水
溶液が供給される(図1のA)。第2の流路12からは、メタノール分の少なくなった水溶液(二酸化炭素を含む)が排出される(図1のB)。第3の流路13には、酸素を含む空気が供給される(図1のC)。第4の流路14からは、酸素の少なくなったガス(水を含む)が排出される(図1のD)。
ここで、直接メタノール型燃料電池において生じる反応について説明する。燃料極1では、メタノールと水とが反応して、二酸化炭素、水素イオンと電子とが生成される。水素イオンは、電解質膜2を通って空気極3に向かい、電子は外部回路4を流れる。即ち、燃料極1では次の反応が生じる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e-
空気極3では、酸素と燃料極1からきた水素イオンと外部回路4からきた電子とが反応して水になる。即ち、空気極では、次の反応が生じる。
(3/2)O2+6H++6e- → 3H2
全体としての反応は次のように表すことができる。
CH3OH+(3/2)O2 → CO2+2H2
[実施例]
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
実施例において、スルホン酸当量、分子量およびプロトン伝導度は以下のようにして求めた。
1.スルホン酸当量
得られたスルホン酸基を有する重合体の水洗水が中性になるまで洗浄し、フリーに残存している酸を除いて充分に水洗し、乾燥後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解したフェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液を用いて滴定を行い、中和点から、スルホン酸当量を求めた。
2.分子量の測定
スルホン酸基を有しないポリアリーレンの重量平均分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、GPCによって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。スルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量は、溶剤として臭化リチウムと燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶離液として用い、GPCによって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
3.プロトン伝導度の測定
交流抵抗は、5mm幅の短冊状のプロトン伝導膜試料の表面に、白金線(f=0.5mm)を押し当て、恒温恒湿装置中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンス測定から求めた。すなわち、85℃、相対湿度70%の環境下で交流10kHzにおけるインピーダンスを測定した。抵抗測定装置として、(株)NF回路設計ブロック製のケミカルインピーダンス測定システムを用い、恒温恒湿装置には、(株)ヤマト科学製のJW241を使用した。白金線は、5mm間隔に5本押し当てて、線間距離を5〜20mmに変化させ、交流抵抗を測定した。線間距離と抵抗の勾配から、膜の比抵抗を算出し、比抵抗の逆数からプロトン伝導度を算出した。
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
[合成例1]
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三つ口のフラスコに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)67.3g(0.20モル)、4,4'−ジク
ロロベンゾフェノン(4,4'−DCBP)60.3g(0.24モル)、炭酸カリウム71.9g(0.52モル)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)300mL、ト
ルエン150mLをとり、オイルバス中、窒素雰囲気下で加熱し撹拌下130℃で反応させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean-Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。反応温度を130℃から徐々に150℃まで上げた。反応温度を徐々に150℃まで上げながら大部分のトルエンを除去し、150℃で10時間反応を続けた後、4,4'−DCBP 10.0g(0
.040モル)を加え、さらに5時間反応した。得られた反応液を放冷後、副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を4Lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥後、テトラヒドロフラン300mLに溶解した。これをメタノール4Lに再沈殿し、目的の化合物95g(収率85%)を得た。
得られた重合体のGPC(THF溶媒)で求めたポリスチレン換算の重量平均分子量は11,200であった。また、得られた重合体はTHF、NMP、DMAc、スルホラン
などに可溶で、Tgは110℃、熱分解温度は498℃であった。
得られた化合物は式(I)で表されるオリゴマー(以下、「BCPAFオリゴマー」という)であった。
Figure 2005149989
[合成例2]
(ネオペンチル基を保護基としたポリアリーレン(PolyAB−SO3 neo-Pe)の調製)
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三つ口のフラスコに、4−[4−(2,5−ジクロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゼンス
ルホン酸neo-ペンチル(A−SO3 neo-Pe)39.58g(98.64ミリモル)とBCPAFオリゴマー(Mn=11200)15.23g(1.36ミリモル)、Ni(PPh32Cl2 1.67g(2.55ミリモル)、PPh3 10.49g(40ミリモル)、NaI 0.45g(3ミリモル)、亜鉛末 15.69g(240ミリモル)、乾燥NMP 390mLを窒素下で加えた。反応系を攪拌下に加熱し(最終的には75℃まで
加温)、3時間反応させた。重合反応液をTHF 250mLで希釈し、30分攪拌し、
セライトをろ過助剤に用い、ろ過紙、ろ液を大過剰のメタノール1500mLに注ぎ、凝固させた。凝固物を濾集、風乾し、さらにTHF/NMP(それぞれ200/300mL)に再溶解し、大過剰のメタノール1500mLで凝固析出させた。風乾後、加熱乾燥により目的の黄色繊維状のネオペンチル基で保護されたスルホン酸誘導体からなる共重合体(PolyAB-SO3neo-Pe)47.0g(収率99%)を得た。GPCによる分子量はMn=47,600、Mw=159,000であった。
こうして得られたPolyAB-SO3neo-Pe 5.1gをNMP60mLに溶解し、90℃に加
温した。反応系にメタノール50mLと濃塩酸8mLの混合物を一時に加えた。懸濁状態となりながら、温和の還流条件で10時間反応させた。蒸留装置を設置し、過剰のメタノールを溜去させ、淡緑色の透明溶液を得た。この溶液を大量の水/メタノール(1:1重量比)中に注いで、ポリマーを凝固させた後、洗浄水のPHが6以上となるまで、イオン交換水でポリマーを洗浄した。こうして得られたポリマーのIRスペクトルおよびイオン交換容量の定量分析から、スルホン酸エステル基(−SO3a)は定量的にスルホン酸基
(−SO3H)に転換していることがわかった。
得られたスルホン酸基を有するポリアリーレンのGPCによる分子量は、Mn=53,2
00、Mw=185,000であり、スルホン酸等量は1.9meq/gであった。
[実施例1〜5]
上記合成例2で得られたスルホン酸基を有するポリアリーレンをN―メチル−2−ピロリドンに溶解し、プラスチック基板上にキャストし、150℃で30分間乾燥させてフィルムを作製した。膜厚は51μmであった。
上記で得られたフィルムを0.01%の分子量500未満の窒素含有化合物水溶液に100℃で1時間浸漬した後、室温で水洗浄してプロトン伝導膜を得た。
上記で得られたプロトン伝導膜を所定の金属イオンを含む水溶液に2時間浸漬し、汚染されたサンプルを作製した。用いた汚染用の金属イオンは鉄イオン、クロムイオン、ナトリウムイオンであり、いずれも塩化物を水に溶かして用いた。汚染されたプロトン伝導膜中の金属イオン含有量は、ICP−MSを用いて測定した。分子量500未満の窒素含有化合物および汚染用に用いた金属イオン種の実験条件は表1に記載した通りである。
得られたプロトン伝導膜について上記した方法でプロトン伝導度を測定した。結果を表1に示す。
[実施例6]
得られたプロトン伝導膜を金属イオンを含む水溶液に浸漬しなかったこと以外は実施例1〜5と同様にしてプロトン伝導膜を製造した。
得られたプロトン伝導膜について上記した方法でプロトン伝導度を測定した。結果を表1に示す。
[比較例1〜4]
得られたフィルムを分子量500未満の窒素含有化合物水溶液に浸漬しなかったこと以外は実施例1〜5と同様にしてプロトン伝導膜を得た。得られたプロトン伝導膜について、実施例1〜5と同様にして汚染されたサンプルを作製した。汚染用に用いた金属イオン種の実験条件は表1に記載した通りである。
得られたプロトン伝導膜について上記した方法でプロトン伝導度を測定した。結果を表1に示す。
[参考例1]
得られたフィルムを分子量500未満の窒素含有化合物水溶液に浸漬しなかったこと以外は実施例1〜5と同様にしてプロトン伝導膜を得た。得られたプロトン伝導膜については、金属イオンを含む水溶液に浸漬することなく測定用サンプルとした。
得られたプロトン伝導膜について上記した方法でプロトン伝導度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2005149989
表1に示されるように、本発明のプロトン伝導膜は、金属イオンで汚染された場合(実施例1〜5)において、汚染のない場合(実施例6)と比べてプロトン伝導度の値はほぼ保持されている。複合化処理をしていない通常の場合では、金属イオン汚染のある場合(比較例1〜4)は、汚染のない場合(参考例1)に比べ、プロトン伝導度が大きく低下しているのと対照的である。また、実施例6と参考例1を比べると、複合化処理によるプロトン伝導度の低下はほとんど見られなかった。
このことから、本発明のプロトン伝導膜は、金属イオンの汚染を受けても、汚染によるプロトン伝導度の低下がきわめて小さく、汚染に対する耐性が向上しているといえる。
本発明に係る直接メタノール型燃料電池の一例を示す構成概略図である。
符号の説明
1 燃料極
2 電解質膜
3 空気極
4 外部回路

Claims (6)

  1. スルホン酸基を有するポリアリーレンと分子量500未満の窒素含有化合物との複合体からなることを特徴とするプロトン伝導膜。
  2. 上記スルホン酸基を有するポリアリーレンが、下記一般式(A)で表される繰り返し単位および下記一般式(B)で表される繰り返し単位からなるポリアリーレンであることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導膜;
    Figure 2005149989
    (式(A)中、Aは2価の電子吸引性基を示し、Bは2価の電子供与基または直接結合を示し、Arは−SO3Hで表される置換基を有する芳香族基を示し、mは0〜10の整数
    を示し、nは0〜10の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。)
    Figure 2005149989
    (式(B)中、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基、アリール基およびシアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Wは2価の電子吸引性基または単結合を示し、Tは単結合または2価の有機基を示し、pは0または正の整数を示す。)。
  3. 上記分子量500未満の窒素含有化合物が、グアニジン、トリアゾール、イミダゾールおよびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のプロトン伝導膜。
  4. 上記複合体は、スルホン酸基を有するポリアリーレンからなる膜の少なくとも1面に分子量500未満の窒素含有化合物がコートされてなるものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプロトン伝導膜。
  5. 上記複合体は、スルホン酸基を有するポリアリーレンからなる膜の内部に分子量500未満の窒素含有化合物が分散されてなるものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプロトン伝導膜。
  6. 電解質膜が請求項1ないし5のいずれかに記載のプロトン伝導膜であることを特徴とする直接メタノール型燃料電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007149653A (ja) * 2005-10-26 2007-06-14 Sumitomo Chemical Co Ltd 直接メタノール型燃料電池用電解質及び、それを使用した直接メタノール型燃料電池
US8853285B2 (en) 2012-07-23 2014-10-07 Hyundai Motor Company Polymer electrolyte membrane chemically bonded with ionic liquid and fuel cell using the same

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