JP2005120305A - 低臭気樹脂組成物およびそれを含む被覆材およびそれを用いた被覆工法 - Google Patents

低臭気樹脂組成物およびそれを含む被覆材およびそれを用いた被覆工法 Download PDF

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Abstract

【課題】 低臭気性で靭性、強度、耐久性、耐薬品性、硬化特性、塗膜乾燥性、ライニング作業性に優れ、ライニング材、防水材および繊維強化プラスチック等に使用可能な樹脂組成物、該樹脂組成物を使用するライニング被覆工法及び防水被覆工法の提供。
【解決手段】
(A)分子末端に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)アセトアセトキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(C)炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(D)ワックスを配合した樹脂組成物あるいはさらに(E)フェニル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを併用して使用する樹脂組成物、該樹脂組成物に対して繊維強化材、充填材および骨材の内の少なくとも1種を配合して得られる樹脂複合組成物並びに該樹脂複合組成物を用いた土木建築物の防水被覆工法またはライニング被覆工法。
【選択図】 なし。

Description

本発明は、ライニング被覆材及び/または防水被覆材に適する樹脂組成物、該樹脂組成物を含有する被覆材および該被覆材を用いることを特徴とする被覆工法に関する。より詳しくは、低臭気性で硬化特性、塗膜乾燥性、ライニング作業性に優れ、ライニング材、防水材および繊維強化プラスチック等に使用可能な樹脂組成物に関する。その硬化物は靭性、強度、耐久性、耐薬品性に優れたものであり、さらに該樹脂組成物を含有する被覆材およびこの被覆材を用いることを特徴とするライニング被覆工法及び防水被覆工法に関する。
近年、屋上、ベランダ、駐車場あるいは工場などの床の防水施工や防食施工に成形性と耐水性、機械的特性(強度など)などの利点を取り入れたFRP(防水)ライニングが利用されるようになってきた。FRP(防水)ライニングの構成は、まず、下地との接着性を上げるためにプライマーをまず塗布し乾燥させる。プライマー材としては、一液型の湿気硬化タイプのウレタンプライマーなどが使用されており、下地の種類に応じて適正なタイプを選択して使用する。次に、不飽和ポリエステル樹脂と繊維強化材(ガラス繊維マットなど)を用いて被覆を行い、硬化させてFRP防水層を形成する。最後に、仕上げ材としてトップコート樹脂を塗布してそれを硬化させる。トップコート樹脂は、美観、保護などを目的にするものであり、それゆえ耐候性に優れる着色した樹脂を使用する。トップコート樹脂としては、アクリルウレタン塗料系、不飽和ポリエステル樹脂系などがあり、これらから要求に応じて選択して使用する。
FRP防水と同様に駐車場、工場などの床の防水施工や防食施工に、モルタルライニングが利用され、施工性の良さと耐水性、耐食性などの利点から、不飽和ポリエステル樹脂が使用されるようになってきた。モルタルライニングの構成は、まず下地との接着性を上げるためにFRP防水と同様にプライマーを塗布し乾燥させる。次に、不飽和ポリエステル樹脂と充填材(炭酸カルシウムなど)、骨材(珪砂など)を混合した樹脂モルタルをライニングして硬化させ、レジンモルタル層を形成する。更に必要に応じて、仕上げ材としてトップコート樹脂を塗布して硬化させる、あるいはFRPなどをライニングして仕上げる。
FRP防水用やモルタルライニングに使用する樹脂としては、下地との密着性、下地への追従性、硬化収縮の歪みの緩和を考慮して、軟質樹脂を使用する。軟質樹脂とは、FRP防水施工指針(案)に記載されているように、樹脂硬化物の引張り強度が10MPa以上で、引張り伸び率が25%以上のものが利用されている。また、これらの特性を有する軟質不飽和ポリエステル樹脂をFRP防水用に利用した場合の有効性と、不飽和ポリエステルの成分として不飽和酸と、飽和酸成分としてイソフタル酸とテレフタル酸、グリコール成分としてジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールを必須成分として使用した軟質不飽和ポリエステル樹脂のFRP防水用に利用した場合の有効性が示されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
前記の発明においては、FRP防水用として不飽和ポリエステルの処方を工夫することで、硬化物が軟質で且つ耐久性を有する軟質不飽和ポリエステル樹脂に仕上げられているが、それらに示されている特性は硬化物の初期の特性に関するものであり、さらに耐久性に関しては機械的特性である疲労特性に関するものだけである。これらの疲労特性も重要な耐久性の評価要因ではあるが、実際の使用においては熱的及び化学的劣化による評価要因も、さらに重要な耐久性の要素である。上記の発明等では、その様な樹脂組成から防水材の化学的な耐久性である耐水性や耐薬品性・耐加熱劣化性・耐酸性・耐アルカリ性・耐候性などの耐劣化性を考慮したものではないため、しばしば樹脂硬化物の柔軟性が低下すること、耐水性の低下を招くこと、耐薬品性の低下を招くことなどがあり、その用途である屋上、ベランダ、駐車場、水槽などで長期間その性能を発揮し続けることが難しく、しばしば亀裂・膨れの発生を起こすなどの性能低下の問題を起こすことがある。さらに近年、新築住宅の構造性能の10年間保証が義務付けられ、防水材も10年以上の性能保証が求められるようになってきている。このような環境下で、現在市販の軟質樹脂組成物ではこれらの要求性能を充分に満足できなくなることが出ている。
更にFRP防水用やモルタルライニングの施工作業において、ライニング作業工程で樹脂に含まれるラジカル重合性モノマー(以下単に「重合性モノマー」という。)であるスチレン、あるいは溶剤系のトップコートに含まれる有機溶剤等が揮発し、作業環境の悪化や臭気の問題を生ずる。特に、住宅街などで施工する場合には、スチレン臭気・溶剤の臭気の問題がクローズアップされてきている。現在現場において、施工時における作業環境の改善と臭気の低減を目的に脱臭装置を設置しているが、臭気などの低減が十分でないことや装置の維持管理の経費が大幅にかかることなどの大きな問題となってきている。
さらに、前記臭気の問題を解決すべく、重合性モノマーとして(メタ)アクリル系モノマーなどの低臭気樹脂を用いる方法も試みられているが、これらを利用した低臭気性樹脂は、利用する(メタ)アクリル系モノマーがスチレンより薄膜での硬化が悪い特性があるため、ライニング施工等で硬化不良が起こりやすいという問題があり、現時点では実用になりにくいという問題があった。
また、これらの(メタ)アクリル系モノマーを軟質不飽和ポリエステル樹脂に利用した場合には、不飽和ポリエステルと(メタ)アクリル系モノマーの共重合性が劣るため十分な強度を有する硬化物が得られないだけでなく、硬化不良を生じやすい結果にもなりやすい。
更にこれらアクリル系樹脂の硬化反応においては、空気中の酸素が重合阻害剤として働くため、塗膜樹脂及びライニング樹脂の硬化過程において空気中の酸素の浸透を遮断する方法が取られる。このため、従来、樹脂組成物中にパラフィンワックスと重合性モノマーとを含有させ、該重合性モノマーを揮発させること及び塗膜中の重合が進むに連れて重合性モノマー中のパラフィン濃度を高め、溶解できなくなったパラフィンワックスを樹脂表面層(塗膜表面やライニング表面)に析出させ、結果として薄いパラフィンワックス層を形成させ空気遮断材として機能させて、硬化を促進させる方法が採られている。
これらパラフィンワックスを添加する方法は、樹脂の保管中に液状樹脂表面に分離析出してしまうことや、硬化塗膜表面及びライニング表面に奇麗に浮かず、浮き斑を発生することがしばしば有り、ライニングの施工の工程で問題となることがしばしば有る。
また、ライニング作業の工程では、塗膜が硬化又は乾燥後に次の工程作業に入ることが多く、その場合には次の工程で塗布する塗膜樹脂やライニング樹脂との二次接着性が必要となる。塗膜表面及びライニング表面にパラフィンワックスが奇麗に形成されると、従来の樹脂をそのまま塗布すると二次接着性が大変劣る結果となり、硬化後にライニング層の剥離を生ずることが有るため、施工上の問題となることがしばしばある。この様な剥離を防止するためには、被接着面である一次のライニング層等の表面を研磨・サンディング等を行い、パラフィンワックス層を除去する必要がある。それゆえ、施工上の工程が増すため手間と時間が大幅に掛かる結果を招いてしまう。
従って、このような被覆材料として臭気防止や作業性に優れ、且つ硬化物の靭性、及び強度、耐久性等の全ての点で硬化物性能を満足させるものとすることは、従来の樹脂組成物を使用する限りでは極めて困難であった。
それゆえ、FRP防水施工業者、モルタルライニング施工業者から、軟質で且つ現状樹脂以上の長期耐久性を有し、作業環境の改善と臭気の低減ができ、作業性に優れるライニング用樹脂の開発が望まれていた。
特許第2570898号公報 特許第3131947号公報
本発明は、上記従来の問題点を解決し、低臭気性及び塗膜乾燥性、硬化性、施工時の作業性に優れ、且つ硬化物の靭性及び耐久性に優れる樹脂組成物、これを含有する被覆材および該被覆材を用いた被覆工法の提供を目的とするものである。
本発明は、
[1] (A)分子末端に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)アセトアセトキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(C)炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(D)ワックスを配合したことを特徴とする樹脂組成物、
[2] (A)(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)アセトアセトキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(C)炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマー及び(D)ワックスからなる樹脂組成物において、(A)100重量部に対して、(B)1〜20重量部、(C)1〜20重量部且つ上記3成分の合計100重量部に対して(D)0.01〜2重量部を配合した上記[1]に記載の樹脂組成物、
[3] (A)(メタ)アクリレートオリゴマーが、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートの中の少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の樹脂組成物、
[4] (A)(メタ)アクリレートオリゴマーが、ポリアルキレングリコール、ポリイソシアネート、水酸基を1つ以上有する(メタ)アクリレートモノマーから合成して得られるウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[5] (A)(メタ)アクリレートオリゴマーが、飽和もしくは不飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリル化合物を反応させたものである上記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[6] 上記樹脂組成物に、(E)フェニル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを併用して使用する上記[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[7] (A)(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)アセトアセトキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(C)炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(E)フェニル基を有する(メタ)アクリレートモノマー及び(D)ワックスからなる樹脂組成物において、(A)100重量部に対して、(B)1〜20重量部、(C)1〜20重量部、(E)150重量部以下、且つ上記4成分の合計100重量部に対して(D)0.01〜2重量部を配合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法、
[8] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物と繊維強化材、充填材および骨材の内の少なくとも1種を組合わせて得られる樹脂複合組成物において、樹脂組成物100重量部に対して、繊維強化材、充填材および骨材の内の少なくとも1種を1〜300重量部配合して得られる樹脂複合組成物、
[9] 上記[1]〜[6]または上記[8]のいずれかに記載の樹脂組成物および/または樹脂複合組成物を防水層及び/または保護層として土木建築物に施工することを特徴とする土木建築物の防水被覆工法またはライニング被覆工法、
[10] 上記[1]〜[6]または上記[8]のいずれかに記載の樹脂組成物および/または樹脂複合組成物を用いて、上記[9]に記載の方法により防水被覆工法またはライニング被覆工法により施工されたライニング被覆構造体、を開発することにより上記の課題を解決した。
本発明の樹脂組成物は、分子末端に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー、アセトアセトキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマー及びワックスを必須成分として含有する新規な樹脂組成物に関わるものであり、揮散性の高いモノマーを使用しないため、低臭気性、低毒性に効果があり、ラジカル硬化可能でき、塗膜表面乾燥性に優れ、さらに硬化させて得られる硬化物の強度特性、耐薬品性、耐熱性、耐候性および二次接着性に優れ、防水被覆材等の土木建築材料の用途に大変有用である。
本発明は、(A)成分として分子末端に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーを必須成分として含有する。(A)成分の(メタ)アクリレートオリゴマーとは、分子末端に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートの中から少なくとも1つ以上を使用する。
好ましくは、分子末端に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートを使用する。
本発明の(A)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートは、ポリアルキレングリコール、ポリイソシアネート、1分子中に水酸基を1つ以上有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させ合成して得られるウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。更により好ましくは、ポリアルキレングリコールのアルキレン基の繰返し単位の炭素数が2から4のポリアルキレングリコールであり、より好ましくはポリプロピレングリコールである。これらを使用することで、合成して得られるウレタン(メタ)アクリレートから得られる硬化物が軟質になり、且つ耐水性等の優れた耐久性を示すことができる。
使用されるポリプロピレングリコールとしては、好ましくは数平均分子量が200〜3000、より好ましくは300〜2000のものである。この範囲より分子量が小さいと硬化物の柔軟性(伸び率)が小さくなってしまうことや樹脂粘度が大幅に上がる結果となる。一方この範囲より分子量が大きいと柔軟性は増すが強度が低下することがある。ポリプロピレングリコール以外のポリアルキレングリコールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(ポリテトラヒドロフラン)、ビスフェノールAまたはビスフェノールFにアルキレンオキサイドを付加させたポリオールなどのポリエーテルポリオールが挙げられる。
諸物性を損なわない範囲で、ポリアルキレングリコール以外に他のポリオールを併用できる。使用できるポリオールとしては、代表的にはポリエステルポリオール、ポリカ−ボネ−トポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。
又、ポリエステルポリオールとは、二塩基酸類と多価アルコール類の縮合重合体又はポリカプロラクトンの様に環状エステル化合物の開環重合体である。ここで使用する二塩基酸類としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等を挙げることができる。
又、多価アルコール類とは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等を挙げることができる。
更に、ポリアルキレングリコールと併用できるポリオールとして、前記ポリエステルポリオールの原料として例示した各種の多価アルコール類を支障のない範囲で使用できる。
本発明の(A)成分に使用されるウレタン(メタ)アクリレートには、ポリイソシアネートを用いる。用いられるポリイソシアネートとしては、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略す)2,4−トリレンジイソシアネート及びその異性体または異性体の混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができ、それらの1種または2種以上を使用することができる。上記ポリイソシアネートのうちジイソシアネートが好ましく用いられる。
さらに本発明の(A)成分に使用されるウレタン(メタ)アクリレートには、1分子に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーが使用される。用いられる1分子に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレートモノマー類を挙げることができる。
(A)成分に使用されるウレタン(メタ)アクリレートは、公知の方法で製造できる。その製造方法の例を挙げれば、先ずポリイソシアネートとポリオールを好ましくはNCO/OH=1.3〜2で反応させ、末端イソシアネート化合物を生成させ、次いでそれに水酸基含有(メタ)アクリレート化合物をイソシアネート基に対して水酸基がほぼ等量になるように反応する方法と、ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物をNCO/OH=2以上で反応させ、片末端イソシアネートの化合物を生成させ、次いでポリオールを加えて反応する方法等が挙げられる。これら合成は、50℃〜100℃の温度で反応し、更に公知のウレタン化触媒を使用して合成することもできる。
本発明の(A)成分として使用されるポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する飽和若しくは不飽和ポリエステルであり、飽和若しくは不飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリル化合物を反応させたものである。かかる樹脂の数分子量としては、好ましくは500〜5000である。
本発明で用いられる飽和ポリエステルとは、飽和二塩基酸類と多価アルコール類との縮合反応、また、不飽和ポリエステルとはα,β−不飽和二塩基酸を含む二塩基酸類と多価アルコール類との縮合反応で得られるものである。
ここでいう飽和二塩基酸類とは、前記のポリエステルポリオールの項に示した化合物を挙げることができ、不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができる。また、多価アルコール類についても、前記のポリエステルポリオールの項に示した化合物を挙げることができる。
ここでいう多価アルコール類とは、ウレタン(メタ)アクリレートの項及びポリエステルポリオールの項に示した化合物と同一であり、ウレタン(メタ)アクリレートと同様にポリアルキレングリコールを使用する。より好ましくはポリアルキレングリコールのアルキレン基の繰返し単位の炭素数が2から4のポリアルキレングリコールであり、更に好ましくはポリプロピレングリコールである。
本発明の(A)として使用されるポリエステル(メタ)アクリレートに用いる(メタ)アクリル化合物としては、不飽和グリシジル化合物、アクリル酸またはメタクリル酸の如き各種の不飽和一塩基酸、およびそのグリシジルエステル類等である。好ましくは、グリシジル(メタ)アクリレートの使用が望ましい。
本発明の(A)成分としてエポキシ(メタ)アクリレートを使用できる。使用できるエポキシ(メタ)アクリレートとは、好ましくは1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するもので、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とをエステル化触媒の存在下で反応して得られるものである。
ここでいうエポキシ樹脂の例を挙げれば、ビスフェノールタイプまたはノボラックタイプのエポキシ樹脂単独、または、ビスフェノールタイプとノボラックタイプのエポキシ樹脂とを混合した樹脂などであって、その平均エポキシ当量が好ましくは150から450の範囲のものである。
ここで、上記ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂として代表的なものを挙げれば、エピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られる実質的に1分子中に2個以上のエポキシ基を有するグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、メチルエピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られるメチルグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、あるいはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリン若しくはメチルエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂などである。また、上記ノボラックタイプのエポキシ樹脂として代表的なものには、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックと、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂などがある。
エポキシ(メタ)アクリレートに用いられる不飽和一塩基酸として代表的なものには、アクリル酸、メタアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノ(2−エチルヘキシル)あるいはソルビン酸などがある。なお、これらの不飽和一塩基酸は、単独でも2種以上混合しても用いられる。上記エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応は、好ましくは60〜140℃、特に好ましくは80〜120℃の温度においてエステル化触媒を用いて行われる。
上記のエステル化触媒としては、たとえばトリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアンリン若しくはジアザビシクロオクタンなどの如き三級アミン、トリフェニルホスフィンあるいはジエチルアミン塩酸塩などの如き公知の触媒がそのまま使用できる。
本発明は、(B)成分としてアセトアセトキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを必須成分として含有する。アセトアセトキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中からモノマーの臭気を考慮して選定して使用することが好ましい。好ましくは、アセトアセトキシエチルメタクリレートを使用する。
これらのアセトアセトキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを使用することで、低温から高温まで(0℃〜40℃)優れたライニング樹脂の硬化特性が得られ、更に塗膜やライニング層の表面乾燥性を促進させることができる。アセトアセトキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを使用しない場合には低温硬化性が遅くなったり、表面乾燥性が低下する。
本発明は、(C)成分として炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを必須成分として含有する。炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。また、炭素数12〜15の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの混合物(例えば、共栄社製のライトエステルL−7、ライトエステルL−8、日本油脂製のブレンマーSLMA、ブレンマーCMAなど)も使用できる。これらの中からモノマーの臭気を考慮して選定して使用することが好ましい。好ましくは、(メタ)アクリル酸ラウリル、炭素数12〜15の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの混合物を使用する。
これらの炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを使用することでワックスの溶解性及び溶解の安定性が大幅に向上できる。更に塗膜やライニング層の塗り重ねにおいて、ワックスを使用しているにも拘わらず二次接着性を向上できる。また、ウレタン(メタ)アクリレート等を合成するときの希釈剤としても有用である。炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを使用しない場合には、ワックスの溶解性及び溶解の安定性が不安定になることや、塗り重ねにおける二次接着性の低下を招いたりすることがある。
使用するワックスの種類および融点に応じて、炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの種類を選定することが好ましい。特に融点が高いワックスを使用する場合には、炭素数が10以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを選定して使用する。より好ましくは炭素数が12以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを使用する。
本発明は、(E)成分としてフェニル基を有する(メタ)アクリレートモノマーをモノマー成分として併用することが好ましい。フェニル基を有する(メタ)アクリレートモノマーのその具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド(EO)変性(メタ)アクリレート、ノニルフェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノールプロピレンオキサイド(PO)変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールPO変性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等が挙げられる。これらの中からモノマーの臭気を考慮して選定して使用することが好ましい。好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレートを使用する。
これらのフェニル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを使用することで、十分な引張り強度及び伸び率を有する硬化物が得られ、更に耐水性・耐熱劣化性・耐候性などの耐久性に優れる硬化物が得られる。
本発明の効果を損なわない範囲で、上記の(B)(C)(E)成分以外にスチレン系のモノマーも併用できる。具体例としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
更に上記の(B)(C)(E)成分以外の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーも併用することができる。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン−グリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
更にエチルビニルエーテル、メチルビニルケトンなどのビニルモノマーや、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルサクシネート、トリアリルシアヌレートなどのアリル化合物およびそれらのオリゴマーなどが挙げられる。これらのうち、樹脂組成物の低臭性を維持するためにはモノマーの揮発性及び臭気を考慮して選定することが好ましい。
本発明では、(D)成分としてワックスを必須成分として含有する。使用されるワックスとしては、石油系ワックス、オレフィン系ワックス、極性ワックス、特殊ワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
前記石油系ワックスとしては、たとえば、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。前記オレフィン系ワックスとしては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。さらに極性ワックスとしては、これらの石油系ワックス、オレフィン系ワックスに極性基(水酸基・エステル基など)を導入したワックス類やオレイン酸・リノール酸・リノレン酸などの不飽和脂肪酸エステルなどが挙げられる。特殊ワックスとしては、ビックケミー社製のByk LPS−6665などが挙げられる。
これらのワックスを使用することで、樹脂が硬化する際に塗膜表面やライニング層表面に析出して酸素遮断剤として有効に働き、塗膜やライニング層の表面乾燥性を得ることができる。これらのワックスを使用しないと、良好な表面乾燥性を得ることが難しい。
本発明の必須成分の組成比率は、好ましくは(A)成分100重量部に対して、(B)成分が1〜20重量部、(C)成分が1〜20重量部、(E)成分が0〜150重量部である。より好ましくは、(B)成分が5〜15重量部、(C)成分が2〜10重量部、(E)成分が10〜100重量部である。
更に(A)成分+(B)成分+(C)成分+(E)成分の合計100重量部に対して(D)成分のワックスを0.01〜2重量部の比率で含有する。この比率より少ないと表面乾燥性の低下を招き、これより多いとワックスの溶解性や安定性、更にライニング時の二次接着性が劣る結果を招くことがある。
本発明において、表面乾燥性を向上させる目的でコバルト系、バナジウム系、マンガン系等の有機酸金属石鹸類を併用することが好ましく、その中でもコバルトの有機酸塩が好適に使用できる。その添加量としては、(A)成分+(B)成分+(C)成分の合計100重量部に対して好ましくは0.1〜3重量部、より好ましくは0.3〜1重量部である。
本発明の組成物には、樹脂組成物を硬化させるため及び硬化速度を調整するために、ラジカル硬化剤、光ラジカル開始剤、硬化促進剤、重合禁止剤を使用することができる。
ラジカル硬化剤とは、有機過酸化物が挙げられ、具体的にはジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等公知公用のものが使用される。
光ラジカル開始剤とは、光増感剤であり具体的にはベンゾインアルキルエーテルのようなベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエートなどのベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン系、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系等が挙げられる。
硬化促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等金属石鹸類、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート類、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、4−フェニルモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類が挙げられる。
硬化剤の添加量は、好ましくは樹脂組成物の合計量100重量部に対して、0.1〜6重量部である。本発明においてはジアシルパーオキサイド系のベンゾイルパーオキサイド、パーオキシエステル系及びハイドロパーオキサイド系のt−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイドを使用することが好ましい。又、硬化促進剤の添加量は、0.1〜5重量部の範囲で使用する。本発明においてはアミン系促進剤及び、コバルト金属石鹸系促進剤と使用が好ましい。なお、硬化促進剤は、2種以上の組み合わせで使用しても良く、更に予め樹脂に添加しておいても良いし、使用時に添加しても良い。
重合禁止剤としては、例えばトリハイドロベンゼン、トルハイドロキノン、1,4−ナフトキノン、パラベンゾキノン、ハイドロキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等を挙げることができる。好ましくは樹脂組成物に、10〜1000ppm添加しうるものである。
また、本発明の樹脂組成物を被覆材として用いるときは、必要に応じて揺変性付与剤、揺変性付与助剤、増粘剤、着色剤、可塑剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲内で含んでいてもよい。
上記揺変性付与剤としては、具体的には、無水微粉末シリカ、アスベスト、クレー等が挙げられる。また、揺変性付与助剤としては、具体的には、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、有機4級アンモニウム塩、BYK−R−605(商品名;ビックケミージャパン(株)製)等が挙げられる。
増粘剤としては、具体的には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。
着色剤としては、具体的には、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。
可塑剤としては、具体的には、塩素化パラフィン、リン酸エステル、フタル酸エステル等が挙げられる。
本発明では、成分(A)〜(E)からなる樹脂組成物に繊維補強材及び/又は充填材・骨材を組合わせて樹脂複合組成物を作成する。使用される繊維補強材としては、例えば、ガラス繊維、アミド、アラミド、ビニロン、ポリエステル、フェノール等の有機繊維、カーボン繊維、金属繊維、セラミック繊維或いはこれらを組合わせて用いることができる。施工性、経済性を考慮した場合、好ましいのはガラス繊維及び有機繊維であり、特にガラス繊維である。また、繊維の形態は、平織り、朱子織り、不織布、マット、ロービング、チョップ、編み物、組み物、これらの複合構造の物等があるが、施工法、厚み保持等によりマット状が好ましい。また、ガラスロービングを20〜100mmにカットしてチョップドストランドにして使用することも可能である。上記(A)〜(E)成分の全体に占める繊維補強材成分の割合としては、1〜50重量%が好ましい。
充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、フライアッシュ、硫酸バリウム、タルク、クレー、ガラス粉末など、骨材としては、珪砂・砂利・砕石などが挙げられる。これらをモルタル用として使用するときは、これらの粒径が5mm以下程度のものが好ましい。充填剤または骨材の配合量としては、上記(A)〜(E)成分の全体量に対して、充填剤及び骨材成分の割合としては、1〜300重量%が好ましい。
本発明の樹脂組成物からなる防水被覆構造体またはライニング被覆構造体は、防水材及びライニング材組成物または複合組成物を用いて土木建築物の基体上に、ウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系等種々のものから施工性、基体状況等を勘案して適宜選択されたプライマーを塗布する工程、プライマー乾燥後に、本発明の防水組成物、ライニング組成物または複合組成物をハンドレイアップやスプレーアップ法等で被覆施工する工程などからなる工程を経て形成される。
本発明の樹脂組成物は目的用途に応じ、防水被覆構造体またはライニング被覆構造体の上に種々の材料と組合せて利用される。防水材として用いた場合には、防水被覆構造体の上に耐候性に優れるフッ素系、アクリル系、ウレタン系、アクリルシリコン系等の公知慣用のトップコートと称される上塗り塗料が塗布される。また表面を車両走行用として使う場合は走路表面に硅砂や壁砂等を散布して、すべり止め施工をする方法も採られる。
本発明で基体とは、例えばセメントコンクリート、アスファルトコンクリート、ALC板、PC板、FRP、プラスチック、木質物、金属などの単独あるいは組み合わせて構成されたものを意味し、その形状はいずれのものでも良く、土木建築物の表面であれば球面、曲面、円柱面、平面、垂直面、斜面、天井面等のいずれでも良い。コンクリート、金属等の堅固な基体の場合には必要に応じて下地処理、プライマー処理等を行うと良い。
本発明の樹脂組成物は、反応性モノマーの揮散量を低く抑えて、臭気が少なくできるので施工時の臭気が問題となる住宅密集地での新設または補修工事、店舗等の新設または補修工事等の用途に適しており、またこれを用いた土木建築物の防水被覆構造体はFRPの耐久性を保持しているため、建築物の屋根、屋上、開放廊下、ベランダ、外壁、地下外壁、室内及び水槽類の防水構造体及びメンブレン防水構造体として適する。特に屋外防水では、人や車がその上を通行しても十分耐久性を保持するので、重歩行防水や駐車場等の被覆用材として利用できる。
以下に本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また文章中「部」とあるのは、重量部を示すものである。
[合成例] ウレタン(メタ)アクリレート〔以下UMAと略記〕の合成
[合成例1] ウレタン(メタ)アクリレート〔UMA−1〕の合成
温度計、攪拌機、ガス導入口、及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量1000)1695g、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート847g、ライトエステルL−8(炭素数12〜15の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの混合物)847g、ハイドロキノン0.6gを仕込み、乾燥空気雰囲気中70℃まで昇温した。内温が70℃に達したら、触媒としてジブチルチンジラウレート1.5gを添加し、1時間攪拌した後、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量400)365g、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート456g、ジブチルチンジラウレート1.8gを添加し、攪拌を続け、1時間後及び1.5時間後に反応物のIRピークを測定し変化がないことを確認した後、ヒドロキシプロピルメタクリレート790gを30分かけて添加した。攪拌を続け、1時間後にIRにてイソシアネートのピークが消失したことを確認して冷却して、ウレタンメタアクリレート樹脂5000gを得た。この重合体を以下[UMA−1]とした。
[合成例2] ウレタンメタアクリレート〔UMA―2〕の合成
合成例1と同様にして、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量400)1507g、イソホロンジイソシアネート1673g、ライトエステルL−8(炭素数12〜15の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの混合物 )791g、ハイドロキノン0.6gを仕込み、乾燥空気雰囲気中70℃まで昇温する。内温が70℃に達したら、触媒としてジブチルチンジラウレート3.2gを添加し、1時間攪拌した後、ジブチルチンジラウレートを添加し、攪拌を続ける。1時間後、80℃まで昇温し、さらに攪拌を続ける。昇温してから1時間後と1.5時間後の反応物のIRピークに変化がないことを確認した後、ヒドロキシエチルメタクリレート1030gを30分かけて添加し、IRにてイソシアネートのピークがなくなるまで反応させることにより、ウレタンメタアクリレート樹脂5000gを得た。この重合体を以下[UMA−2]とした。
[合成例3]ポリエステルメタアクリレート〔PMA―1〕の合成
温度計、攪拌機、ガス導入口、及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量400)1610g、ジプロピレングリコール848g、イソフタル酸573gを仕込み、窒素雰囲気中220℃まで昇温し12時間反応させ、酸価9.4になったところで冷却し、引き続き無水マレイン酸789gを仕込み205℃まで昇温して4時間反応し、酸価75.8になった時点で100℃まで冷却した。乾燥空気下で、これにハイドロキノン0.6g、グリシジルメタアクリレート540.0部を加え、更にトリフェニルホスフィン8.0gを添加し、120〜130℃で2.5時間反応させて、酸価15.8で冷却してポリエステルメタアクリレート4000gを得た。この重合体を以下[PMA−1]とした。
[合成例4] 軟質不飽和ポリエステル樹脂〔UPE−1〕の合成
合成例1と同様の装置にて、二段反応法にて、ジプロピレングリコール1714g、イソフタル酸1698g、ジブチル錫オキサイド0.30gを仕込み窒素雰囲気下で反応して、酸価が8.4mgKOH/gで冷却し、引き続き無水マレイン酸351gを仕込み、同様にエステル化反応を行ない、酸価24.4mgKOH/g、数平均分子量が2110、重量平均分子量が7200の不飽和ポリエステル[UPE−1]3250gを得た。
[実施例1〜9]
合成例で合成したUMA−1及びUMA−2、PMA−1、アセトアセトキシエチルメタアクリレート(AAEM)、フェノキシエチルメタアクリレート(PhOEMA)、ライトエステルL−8(炭素数12〜15の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの混合物)、オクチルメタクリレート(OcMA)、ビニルトルエンを用いて、表5および表6に示す配合比で混合溶解して樹脂液を得た。この樹脂液に各評価温度に合せた促進剤とワックスとを混合して樹脂組成物を調製した。
液状樹脂の評価では、液状樹脂の粘度、樹脂液の安定性、塗膜の乾燥性、臭気、樹脂のゲル化時間を測定した。結果を表5および表6に示す。
硬化物の引張り試験結果及び促進劣化試験結果、ライニング時の二次接着性評価結果をそれぞれ表9、表11に示す。
[比較例1〜10]
実施例と同様に 合成例で合成したUMA−1及びUPE−1、アセトアセトキシエチルメタアクリレート(AAEM)、フェノキシエチルメタアクリレート(PhOEMA)、ライトエステルL−8(炭素数12〜15の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの混合物)、スチレン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ブチルメタクリレート(BuMA)、ヘキシルメタクリレート(HeMA)を用いて、表7および表8に示す配合比で混合溶解して樹脂液を得た。この樹脂液に各評価温度に合せた促進剤とワックスとを混合して樹脂組成物を調製した。
液状樹脂の評価では、液状樹脂の粘度、樹脂液の安定性、塗膜の乾燥性、臭気、樹脂のゲル化時間を測定した。結果を表7および表8に示す。
硬化物の引張り試験結果及び促進劣化試験結果、ライニング時の二次接着性評価結果をそれぞれ表10、表12に示す。
以下に各評価方法及び評価基準を示す。
[ゲル化時間・塗膜乾燥時間(指触乾燥性)の測定]
各評価温度に樹脂を調整し、硬化剤を混合して、組成物の一部を300mm×300mm(縦×横)の大きさで厚さ50mmのコンクリート板上に0.3mmの厚みに塗布した。樹脂塗膜のゲル化時間を測定するとともに、硬化過程における臭気(官能試験)、硬化物の塗膜乾燥時間(指触乾燥性)を測定した。
[粘度・樹脂液の安定性の評価]
表−5から表−8に示す比率で調整した樹脂組成物の25℃での粘度をJIS法に従って測定した。
調整した樹脂組成物300gを500mlのガラス瓶に取り、各評価温度に30日間放置し、樹脂の分離・ワックスの分離・ゲル物の発生の有無を測定した。塗膜乾燥性・臭気・樹脂液の安定性の評価基準を表1に示す。
Figure 2005120305
[硬化物の評価(促進劣化試験・引張り試験)]
調整した樹脂組成物に硬化剤を混合して脱気した後に、300mm×300mm×3mm(縦×横×厚)の大きさの離型処理した型に樹脂を注入し、室温で8時間硬化させた後、さらに40℃の硬化炉中で24時間後硬化させ、注形板を作成した。JIS法に従って試験片を作製して、引張り強度及び伸び率を測定した。
更に以下に示す促進劣化処理を行い、処理後の試験片についても引張り強度及び伸び率を測定し、耐久性の評価をした。促進劣化条件を表2に、引張試験・促進劣化試験の評価基準を表3に示す。
Figure 2005120305
Figure 2005120305
[二次接着性の評価]
300mm×300mm(縦×横)の大きさで厚さ50mmのコンクリート板に、プライマーとして低臭気ビニルエステル樹脂NSR−112(昭和高分子製)を厚さ0.3mmとなるように硬化剤を混合して塗布し、2時間後に塗膜が乾燥した状態を確認してから、 調整した樹脂組成物に硬化剤を混合して厚さ0.4mmとなるように塗布した(捨て塗り)。塗膜を塗布して乾燥してから1日後、5日後、14日後に表面処理を行わずに、そのまま調整した樹脂組成物に硬化剤を混合して、450g/mのガラスマットを用いて1プライの積層(FRPライニング)を行った。1層目の積層を行ってから2日後に建研式にて接着性を確認し、接着強度及び破壊モードを測定した。二次接着性の評価は、表面乾燥性の良い配合に関して実施し、表面乾燥性の悪い配合に関しては、捨て塗りを表面乾燥性の良い樹脂配合で実施した。二次接着性の評価基準を表4に示す。
Figure 2005120305
Figure 2005120305
Figure 2005120305
Figure 2005120305
Figure 2005120305
Figure 2005120305
Figure 2005120305
Figure 2005120305
Figure 2005120305
本発明は、硬化したときに靭性、強度、耐久性、耐薬品性に優れ、低臭気性で硬化特性、塗膜乾燥性、ライニング作業性に優れた樹脂組成物であり、またそれを用いたライニング被覆材及び/または防水被覆材に適する樹脂組成物、該樹脂組成物を含有する被覆材および該被覆材を用いるライニング被覆工法及び防水被覆工法被覆工法の発明である。
本発明の樹脂組成物は、臭気が少なくできるので施工時の臭気が問題となる住宅密集地での新設または補修工事、店舗等の新設または補修工事等の用途に適しており、またこれを用いた土木建築物の防水被覆構造体はFRPの耐久性を保持しているため、建築物の屋根、屋上、開放廊下、ベランダ、外壁、地下外壁、室内及び水槽類の防水構造体及びメンブレン防水構造体として適する。特に屋外防水では、人や車がその上を通行しても十分耐久性を保持するので、重歩行防水や駐車場等の被覆用材として使用できる。

Claims (10)

  1. (A)分子末端に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)アセトアセトキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(C)炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(D)ワックスを配合したことを特徴とする樹脂組成物。
  2. (A)(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)アセトアセトキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(C)炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマー及び(D)ワックスからなる樹脂組成物において、(A)100重量部に対して、(B)1〜20重量部、(C)1〜20重量部且つ上記3成分の合計100重量部に対して(D)0.01〜2重量部を配合した請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. (A)(メタ)アクリレートオリゴマーが、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートの中の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. (A)(メタ)アクリレートオリゴマーが、ポリアルキレングリコール、ポリイソシアネート、水酸基を1つ以上有する(メタ)アクリレートモノマーから合成して得られるウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. (A)(メタ)アクリレートオリゴマーが、飽和もしくは不飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリル化合物を反応させたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 上記樹脂組成物に、(E)フェニル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを併用して使用する請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. (A)(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)アセトアセトキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(C)炭素数が8以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(E)フェニル基を有する(メタ)アクリレートモノマー及び(D)ワックスからなる樹脂組成物において、(A)100重量部に対して、(B)1〜20重量部、(C)1〜20重量部、(E)150重量部以下、且つ上記4成分の合計100重量部に対して(D)0.01〜2重量部を配合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物と繊維強化材、充填材および骨材の内の少なくとも1種を組合わせて得られる樹脂複合組成物において、樹脂組成物100重量部に対して、合計して1〜300重量部の繊維強化材、充填材および骨材の内の少なくとも1種を配合して得られる樹脂複合組成物。
  9. 請求項1〜6または請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物および/または樹脂複合組成物を防水層及び/または保護層として土木建築物に施工することを特徴とする土木建築物の防水被覆工法またはライニング被覆工法。
  10. 請求項1〜6または請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物および/または樹脂複合組成物を用いて、請求項9に記載の方法により防水被覆工法またはライニング被覆工法により施工されたライニング被覆構造体。
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