JP2005119950A - 単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法及び単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶 - Google Patents

単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法及び単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶 Download PDF

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Abstract

【課題】焦電性により発生した表面電荷を導電性を向上させて迅速に消失させることが可能な単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を短時間で効率的に製造する方法及び単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を提供する。
【解決手段】タンタル酸リチウム結晶の製造方法であって、少なくとも、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下の単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を、250℃以上且つキュリー温度以下の温度で還元雰囲気下で熱処理することを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法及び単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶であって、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下であり、導電率が1×10-12Ω-1・cm-1以上であることを特徴とする単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶。
【選択図】なし

Description

本発明は、弾性表面波素子などのウエハ上に金属電極でパターンを形成して電気信号を処理する用途に使用する単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法及び単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶に関する。
タンタル酸リチウムは、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)を用いて信号処理を行なうSAWデバイス等、電気的特性を利用する用途に使用され、この用途ではタンタル酸リチウム結晶は単一分極化されたものが使われる。この用途に適したタンタル酸リチウム結晶は、その結晶構造に起因し、SAWデバイスに必要とされる圧電気応答(圧電性)を示すが、通常の方法で入手できるタンタル酸リチウム結晶は圧電性に加えて焦電気応答(焦電性)を生じる。
タンタル酸リチウム結晶の圧電性は、タンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして利用する時に不可欠となる特性である。一方、焦電性はタンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで結晶の外側表面に発生する表面電荷として観察され、結晶を帯電させるものである。この表面電荷は、タンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして使用するときに、タンタル酸リチウム結晶からなるウエハ上に形成された金属電極間で火花放電を起こし、SAWデバイスの著しい性能の欠陥を引き起こすとされている。このため、タンタル酸リチウム結晶を用いるSAWデバイスの設計では、表面電荷を発生させない工夫、発生した表面電荷を逃がす工夫、あるいは金属電極同士の間隔を広くするなどの工夫等が必要とされ、これら工夫を取り入れるために、SAWデバイス自体の設計に制約が加わるといった不利益があった。
また、タンタル酸リチウム結晶を用いたSAWデバイスの製造工程では、金属膜の蒸着、レジストの除去といった工程でタンタル酸リチウム結晶に熱を加える工程があり、これら工程で加熱あるいは降温といった温度変化がタンタル酸リチウム結晶に与えられると、タンタル酸リチウム結晶の焦電性により外側表面に電荷が発生する。前述のように、この表面電荷により、金属電極間に火花放電が生じ、電極パターンの破壊を引き起こすため、SAWデバイスの製造工程では出来るだけ温度変化を与えないように工夫をしたり、温度変化を緩やかにするといった工夫をしており、これら工夫のために製造工程のスループットが低下したり、あるいはSAWデバイスの性能を保証するマージンが狭くなるといった不利益が生じている。
通常の方法で製造された単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶では、焦電性により発生した外側表面の電荷は周囲環境からの遊離電荷により中和され、時間の経過とともに消失するが、この消失時間は数時間以上と長いので、SAWデバイスの製造工程において、生じた表面電荷をこのような自然の中和により消失させることは工業的ではない。
上記背景から、SAWデバイスのような用途に対しては、デバイス特性を発揮するために必要とされる圧電性を維持した上で、結晶外側表面に電荷の発生あるいは蓄積が見られない圧電性結晶の要求が増大しており、このような用途に対して表面電荷の蓄積が見られない単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶が必要とされている。
表面電荷を減少させたタンタル酸リチウム結晶の製造方法としては、タンタル酸リチウム結晶を500℃以上の還元雰囲気にさらして導電率を高め、焦電性により生じた表面電荷を迅速に中和又は消滅させるという方法が開示されている(特許文献1参照)。
特開平11−92147号公報(第1表)
しかし、上記のような方法でタンタル酸リチウム結晶を還元処理すると、還元雰囲気温度がタンタル酸リチウムのキュリー温度である610℃以上の場合には、SAWデバイス用途で必要とされる単一分極化構造が失われ、また、610℃以下の場合には、反応速度が速いとされているニオブ酸リチウム結晶でも、例えば500℃で加熱しても表面抵抗は1.2E+14Ωとまだ大きな値のままであるように、還元処理の速度が極めて遅く、結果として工業的に単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の導電率は向上できない。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、SAWデバイスの製造工程等でタンタル酸リチウムに与えられた温度変化等により発生する表面電荷を、タンタル酸リチウムの導電率を向上させることで、発生した表面電荷を蓄積させることなく迅速に消失させることが可能な、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法及び単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は、タンタル酸リチウム結晶の製造方法であって、少なくとも、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下の単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を、250℃以上且つキュリー温度以下の温度で還元雰囲気下で熱処理することを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法を提供する(請求項1)。
このように、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下の単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を、250℃以上且つキュリー温度以下の温度で還元雰囲気下で熱処理することにより、単一分極化構造を保持したまま導電率を高くしたタンタル酸リチウム結晶を短時間で効果的に製造することができる。また、この場合、前記光の吸収係数は0.15cm-1以下であればより好ましい。
また、前記単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶として、少なくともスライス処理されたウェハ、あるいはラップ処理されたウェハ、もしくは片面が鏡面処理されたウェハを用いることが好ましい(請求項2)。
本発明の方法は、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下の単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶であればその形態にかからわず適用できるので、例えばスライス処理前の結晶に行なってもよいが、このように、少なくともスライス処理されたウェハ、あるいはラップ処理されたウェハ、もしくは片面が鏡面処理されたウェハに前記熱処理を行なうことで、デバイスが形成されるウェハ表面をより速やかに熱処理することができる。
また、前記還元雰囲気を、水素、重水素、一酸化炭素およびNO(X<2.5)のいずれか、あるいはこれらのうち2以上からなる混合ガスとすることが好ましい(請求項3)。
このような還元性ガスあるいはこれらの混合ガスを適宜選択して還元雰囲気として用いることにより、前記の還元雰囲気下の熱処理を容易に行なうことができる。
このとき、前記還元雰囲気にさらに、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス、窒素および二酸化炭素のうち1以上のガスを添加してもよい(請求項4)。これらの非還元性ガスを添加することによって還元雰囲気による熱処理の反応速度を制御することにより、熱処理時間を調整することができる。
また、本発明は、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶であって、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下であり、導電率が1×10-12Ω-1・cm-1以上であることを特徴とする単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を提供する(請求項5)。
このように、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下であれば、還元処理により黒灰色状に着色した時のウェハ面内の色ムラが少なく、ウェハ面内の導電率がより均一なタンタル酸リチウム結晶とできるし、導電率が1×10-12Ω-1・cm-1以上であれば、焦電性により発生した表面電荷が迅速に消失するタンタル酸リチウム結晶とできる。
本発明に従い、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下の単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を、250℃以上且つキュリー温度以下の温度で還元雰囲気下で熱処理することにより、単一分極化構造を保持したままで導電率を高くしたタンタル酸リチウム結晶を短時間で効果的に製造することができる。このようにして得られた単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶は結晶の導電率が向上しているので、圧電性を維持した上で結晶表面に電荷の蓄積がみられないものとなっており、SAWデバイス製造上極めて有利な材料である。さらに、本発明の方法は前記のようなタンタル酸リチウム結晶を極めて短時間の処理で得ることができ工業的に有利である。
また、本発明の単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶は、ウェハ面内の導電率がより均一であり、焦電性により発生した表面電荷が迅速に消失するタンタル酸リチウム結晶とできる。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
前述のように、タンタル酸リチウム結晶は圧電性とともに焦電性も有するので、これを用いたSAWデバイスの製造工程等で温度変化を受けると表面電荷が生じ、SAWデバイスの金属電極間で火花放電等が生じてデバイスの特性劣化や破損を招く可能性がある。これを避けるため、SAWデバイスの設計や製造工程が制約を受ける場合があり、デバイスの性能や生産性を制限する要因となっていた。
また、前述したように、タンタル酸リチウム結晶を500℃以上の還元雰囲気にさらして導電率を高め、焦電性により生じた表面電荷を迅速に中和又は消滅させるという方法が開示されているが、タンタル酸リチウムのキュリー温度である610℃以上では、SAWデバイス用途で必要とされる単一分極化構造が失われ、また、610℃以下の温度、例えば500℃で加熱しても、還元処理の速度が極めて遅いので、表面抵抗は例えば1.2E+14Ωと大きいままであり、結果として工業的に単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の導電率は向上できないことが分かった。
そこで本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下の単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を、250℃以上且つキュリー温度以下の温度で還元雰囲気下で熱処理すれば、単一分極化構造を保持したまま導電率を高くしたタンタル酸リチウム結晶を短時間で効果的に製造することができることを見出した。また、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下であり、還元処理により導電率が1×10-12Ω-1・cm-1以上となった単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶であれば、還元処理により黒灰色状に着色した時のウェハ面内の色ムラが少なく、ウェハ面内の導電率がより均一であり、また焦電性により発生した表面電荷が迅速に消失することを見出し、本発明を完成させた。
以下では、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明で用いる波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下のタンタル酸リチウム結晶は、例えば、以下の方法により得ることができる。まず、炭酸リチウムと五酸化タンタルとを秤量、混合し、電気炉で1000℃以上に加熱することで得られたタンタル酸リチウム多結晶を、イリジウムなどの貴金属製のルツボに入れる。そして、これを高純度の窒素にわずかの高純度の酸素を混合した、水蒸気を含まず露点がマイナス35℃以下の雰囲気ガスの下で、加熱、溶融後に種結晶を用いて回転引上げ(いわゆるチョクラルスキー法)にて育成することで、たとえば直径が4インチ(100mm)の多分域状態(結晶が、任意の方向に分極した多数の分極ドメインからなる状態)のタンタル酸リチウム結晶として得られる。
このようにして得られた多分域状態の直径4インチ(100mm)のタンタル酸リチウム結晶に貴金属電極を設置し、キュリー温度以上の温度、たとえば650℃にて電圧を印加して結晶内に発生させた外部電場により各分極ドメインの分極の方向を同一方向に揃え、そのまま冷却することで単一分極化処理がされる。この単一分極化した結晶を、たとえばワイヤソーを用いてスライスすることで直径4インチ(100mm)、厚さが例えば0.5mmのスライス処理がおこなわれたウエハが得られ、さらにこのウエハの両面をラップ機で処理することで直径4インチ(100mm)、厚さ0.4mmラップウエハが得られる。
次に、この両面ラップウエハに対して次の方法で吸収係数を測定する。すなわち、例えばPerkin Elmer社製のFT−IR分析装置を用い、試験光の波数3480cm-1で下式により吸収係数α(cm−1)を算出する。
α= A/t
A: 吸光度
t: タンタル酸リチウムウエハの厚さ(cm)
A= Log10(I/I)
: 試験光がタンタル酸リチウムウエハを通過しない時の光量
I : 試験光がタンタル酸リチウムウエハを通過した時の光量
なお、波数3480cm-1での光吸収はタンタル酸リチウム結晶中のOH基の光吸収に対応していると考えられる。
さらに、ウエハの面状態により、受光器に入らない反射光、散乱光が発生するために、光吸収のない波数にてベースラインを設け、次のように算出する。
A=A3480−Abase
3480: 波数3480cm−1の吸光度
base: ベースラインの吸光度
base=(A3380+A3580)/2
3380: 波数3380cm−1の吸光度
3580: 波数3580cm−1の吸光度
前述のように、貴金属製るつぼを用いて実質水蒸気を含まない雰囲気下でチョクラルスキー法により育成されたタンタル酸リチウム結晶とすることで、波数3480cm-1での光の吸収係数は0.3cm−1以下、さらに好ましくは0.15cm−1以下のウエハを得ることができる。
次に、導電率を向上させる熱処理の方法としては、たとえば、上記のようにして得られた、単一分極化処理された波数3480cm−1での光の吸収係数が0.3cm−1以下のタンタル酸リチウム結晶のラップウエハを、ステンレススチール容器に入れ、このステンレススチール容器を電気炉内に置き、容器内に毎分1.5リットルの速度で水素ガスを流し、炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で昇温させ、タンタル酸リチウム結晶のキュリー温度以下の温度、たとえば500℃に24時間保持して熱処理した後に炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、30℃以下となったところでウエハをステンレススチールの容器から取り出すという手順で行なわれる。
このとき熱処理するタンタル酸リチウム結晶は、ラップ処理された後のラップウエハに限らず、スライス処理されたのみのウエハでもよいし、ラップウエハの片面をさらに鏡面処理した後のウエハであってもよい。少なくともスライス処理されたウェハに熱処理を行なう方が、育成された単結晶のスライス前の状態で熱処理を行なうよりも、デバイスが形成されるウェハ表面をより速やかに熱処理することができる。
また、熱処理温度については500℃に限らず、250℃以上であれば、導電率を高くする効果が現れるし、キュリー温度以下であれば単一分極化構造を保持したまま導電率を高くすることができる。特に、350℃以上とすれば、熱処理時間が短縮され熱処理をより速やかに行なうことができる。熱処理時間については、所望の導電率になるように適宜調整すればよいが、例えば5〜100時間とすればよく、好ましくは10〜50時間である。
また、還元雰囲気としては水素に限らず、重水素、一酸化炭素およびNO(X<2.5)等の還元性ガスのいずれか、あるいはこれらの混合ガスであってもよいし、これにさらに希ガス、窒素および二酸化炭素などの非還元性ガスあるいはこれらの混合ガスを添加したものであってもよい。これらの雰囲気ガスの組成については、熱処理するタンタル酸リチウムの特性や熱処理温度等に応じて最適なものを適宜選択することができる。また、これらの組成を調整することにより、熱処理時間を調整することもできる。
本発明で得られた単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の導電率は次のように測定することができる。すなわち、導電率は体積抵抗率の逆数であるが、体積抵抗率は例えばHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter及び16008A Resistivity Cell等の測定器を用いて測定した抵抗値等から、次式により得ることができる。
ρ=(πd/4t)・R
ρ:体積抵抗率(Ω・cm)
π:円周率
d:中心電極直径(cm)
t:タンタル酸リチウムウエハ厚さ(cm)
R:抵抗値(Ω)
この場合、例えば500ボルトの電圧をウエハに印加し、安定した測定値を得るため電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定すればよい。
上記の測定により得られた結晶の導電率は、還元雰囲気下の熱処理により向上したものとなり、焦電性等により生じる表面電荷は速やかに消滅する。従って、圧電性を維持した上で結晶表面に電荷の蓄積がみられないものとなり、SAWデバイス製造上極めて有利な材料である。
そして、例えば上記のような方法で得られる単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶は、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下であり、導電率が1×10-12Ω-1・cm-1以上であるので、還元処理により黒灰色状に着色した時のウェハ面内の色ムラが少なく、ウェハ面内の導電率がより均一であり、焦電性により発生した表面電荷が迅速に消失するタンタル酸リチウム結晶とできる。
なお、上記実施形態では、波数3480cm−1での光の吸収係数が0.3cm−1以下のタンタル酸リチウム結晶を、実質上水蒸気を含まない、露点がマイナス35℃以下の雰囲気ガス下でチョクラルスキー法により育成することで得られたが、この方法に限定する必要はなく、水蒸気を含む雰囲気ガス下で育成したタンタル酸リチウム結晶あるいはそれをスライス処理、ラップ処理等したウエハを真空中で加熱処理することでも得ることができるし、また塩素で例示される脱水効果をもつガス中で加熱処理することでも得ることができる。
以下に本発明の実施例をあげてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜11)
炭酸リチウムと五酸化タンタルとを秤量、混合し、電気炉で1000℃以上に加熱することで得られたタンタル酸リチウム多結晶を、イリジウムのルツボに投入した。そして雰囲気ガスとして酸素を1%含む窒素からなり露点がマイナス35度以下の高純度ガスを用い、y方向40°回転の直径4インチ(100mm)、長さ50mmのタンタル酸リチウム結晶をチョクラルスキー法で育成し、その後育成した結晶を適当に加工して白金電極を設置し、650℃で単一分極化処理をおこなった。この単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶をワイヤソーにてスライス切断処理した後、ラップ加工を行い、厚さ0.4mmの両面ラップウエハを得た。
次に、この両面ラップウエハに対してPerkin Elmer社製、FT−IR分析装置を用いて波数3480cm-1の光の吸収係数を算出し、0.3cm−1以下であることを確認した。
この両面ラップウェハ10枚を、ガス配管付きの外径150mm且つ内径130mmのステンレススチール製容器中に積み重ねるようにして置き、容器内を所定の還元雰囲気に置換した。そしてこのステンレススチール製容器をヒータ材質がカンタル線である管状炉にウエハが設置された円筒部分を挿入し、上部をアルミナシリケートからなるウールで保温し、炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で所定の温度まで昇温した。そして所定の温度と時間にて保持して熱処理した後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、30℃以下となったところでステンレススチール製の容器からウェハを取り出し、黒灰色状の還元処理されたタンタル酸リチウム結晶の両面ラップウェハを得た。
表1に示したように、各実施例について、所定の還元雰囲気、熱処理温度、熱処理時間で異なる結晶ロットから作製されたウエハを同様な方法で処理することで5バッチ、計50枚の黒灰色状の還元処理された両面ラップウェハを得た。
このウエハをさらにラップ機で両面をラップした後、SAWデバイス用基板として標準的な仕様である片面鏡面とするため研磨機で片面を鏡面研磨し、単一分極化されたタンタル酸リチウム製品ウェハを得た。
この製品ウエハについて、体積抵抗率を算出し、その逆数から導電率を求めた。体積抵抗率はHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter及び16008A Resistivity Cellを用いて測定した抵抗値から前述のように算出した。なお、抵抗値の測定は、500ボルトの電圧を印加し、電圧を印加してから1分後の安定した状態でおこなった。
(比較例1〜3)
実施例と同様な方法でタンタル酸リチウムの多結晶原料を用意し、チョクラルスキー法で結晶を育成する時に、露点を考慮しない通常の条件で育成した結晶、あるいは、得られた単一分域化処理前のタンタル酸リチウム結晶を通常の条件と同じく水蒸気を含む大気中で熱処理し、結晶をワイヤソーで切断し、ラップ加工を行なった。なお、比較例1は露点を考慮しない条件で育成した結晶、比較例2は1000℃にて10時間、比較例3は1400℃にて20時間水蒸気を含む大気中にて熱処理することで得た。その後は実施例と同様な方法で加工を行った。
実施例1〜11及び比較例1〜3について、波数3480cm−1の光の吸収係数と還元雰囲気、熱処理温度及び熱処理時間、そして片面鏡面に仕上げた時の導電率の値を表1に示す。なお、表1において、導電率の「1.1E−11」というような記載は、「1.1×10−11」という意味である。
Figure 2005119950
表1より、実施例1〜11では、5バッチの平均導電率が1.66E−12〜3.3E−11Ω−1・cm−1と高い値が得られた。一方、比較例1、2のように、波数3480cm-1の吸収係数が0.3cm-1より大きなタンタル酸リチウム結晶の片面鏡面ウエハの導電率は、それぞれ2.5E−13Ω−1・cm−1、5.0E−15Ω−1・cm−1であり、実施例1〜11の値に比べて著しく小さかった。また、比較例3のように、波数3480cm-1の吸収係数が0.3cm-1以下のタンタル酸リチウム結晶の片面鏡面ウエハであっても、200℃という低温で熱処理されているので、やはり導電率が6.3E−15Ω−1・cm−1と著しく小さかった。特に、比較例1の片面鏡面ウエハの外観は薄く着色したに過ぎなかった。また、比較例2、3の片面鏡面ウエハでは色調の変化はみられず、導電率もほとんど処理前と変わらなかった。
また、実施例1〜11では、還元処理後の両面ラップウェハの波数3480cm-1の光の吸収係数は全て0.3cm-1以下であり、ウェハ面内の黒灰色状の色ムラは非常に少なかった。また、比較例1では還元処理後の両面ラップウェハの波数3480cm-1の光の吸収係数は0.40cm-1であり、ウェハ面内の黒灰色状の色ムラは顕著であった。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

Claims (5)

  1. タンタル酸リチウム結晶の製造方法であって、少なくとも、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下の単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を、250℃以上且つキュリー温度以下の温度で還元雰囲気下で熱処理することを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  2. 前記単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶として、少なくともスライス処理されたウェハ、あるいはラップ処理されたウェハ、もしくは片面が鏡面処理されたウェハを用いることを特徴とする請求項1に記載されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  3. 前記還元雰囲気を、水素、重水素、一酸化炭素およびNO(X<2.5)のいずれか、あるいはこれらのうち2以上からなる混合ガスとすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  4. 前記還元雰囲気にさらに、希ガス、窒素および二酸化炭素のうち1以上のガスを添加することを特徴とする請求項3に記載されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  5. 単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶であって、波数3480cm-1の光の吸収係数が0.3cm-1以下であり、導電率が1×10-12Ω-1・cm-1以上であることを特徴とする単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶。
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