JP2004269300A - タンタル酸リチウム結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】タンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで発生する表面電荷をタンタル酸リチウム結晶の導電性を向上することで、発生した表面電荷を蓄積させることなく消失させるという原理に基づいており、この導電性を向上させたタンタル酸リチウム結晶の製造方法を提供するものである。
【解決手段】予め高温度で還元処理した物質を、より低い温度にてかつ還元雰囲気中でタンタル酸リチウム結晶に接触することで、結晶の導電率を増加させる特殊タンタル酸リチウム結晶の製造方法
【解決手段】予め高温度で還元処理した物質を、より低い温度にてかつ還元雰囲気中でタンタル酸リチウム結晶に接触することで、結晶の導電率を増加させる特殊タンタル酸リチウム結晶の製造方法
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波素子などのウエハ上に金属電極でパターンを形成して電気信号を処理する用途に使用するタンタル酸リチウム結晶の特性改善に関する方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
タンタル酸リチウムは、弾性表面波(SAW)の信号処理といった電気的特性を利用する用途に使用されている。この用途に適したタンタル酸リチウム結晶は、その結晶構造に起因するSAWデバイスに必要とされる圧電気応答(圧電性)を示すが、通常の方法で入手できるタンタル酸リチウム結晶は圧電性に加えて焦電気応答(焦電性)を生じる。
【0003】
タンタル酸リチウム結晶の圧電性はタンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして利用する時に、不可欠となる特性であるが、一方、焦電性はタンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで結晶の外側表面に発生する表面電荷として観察され、結晶を帯電させるものである。この表面電荷は、タンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして使用するときに、タンタル酸リチウム結晶からなるウエハ上に形成された金属電極間で火花放電を起こし、SAWデバイスの著しい性能の欠陥を引き起こすとされている。このため、タンタル酸リチウム結晶を用いるSAWデバイスの設計では、表面電荷を発生させない工夫、発生した表面電荷を逃がす工夫、あるいは金属電極同士の間隔を広くするなどの工夫が必要とされ、これら工夫を取り入れるために、SAWデバイス自体の設計に制約が加わるといった不利益があった。
【0004】
また、タンタル酸リチウム結晶を用いたSAWデバイスの製造工程では金属膜の蒸着、レジストの除去といった工程でタンタル酸リチウム結晶に熱が加わる工程があり、これら工程で加熱あるいは降温といった温度変化がタンタル酸リチウム結晶に与えられるとタンタル酸リチウム結晶の焦電性により外側表面に電荷が発生する。この表面電荷により、金属電極間に火花放電が生じ、電極パターンの破壊となるため、SAWデバイスの製造工程では出来るだけ温度変化を与えないように工夫をしたり、温度変化を緩やかにするといった工夫をしており、これら工夫のために製造工程のスループットが低下したり、あるいはSAWデバイスの性能を保証するマージンが狭くなるといった不利益が生じている。
【0005】
通常の方法で製造されたタンタル酸リチウム結晶では、焦電性により発生した外側表面の電荷は周囲環境からの遊離電荷により中和され、時間の経過とともに消失するが、この消失時間は数時間以上と長く、SAWデバイスの製造工程では、この自発的な焦電性の消失に期待できない。。
【0006】
弾性表面波(SAW)デバイスのような用途に対してはデバイス特性を発揮するために必要とされる圧電性を維持した上で、上記背景により、結晶外側表面に電荷の発生が見られない圧電性結晶の要求が増大しており、このような用途に対して表面電荷の蓄積が見られないタンタル酸リチウム結晶が必要とされている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−92147号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記された問題の解決方法を提供するものであり、タンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで発生する表面電荷をタンタル酸リチウム結晶の導電性を向上することで発生した表面電荷を蓄積させることなく消失させるという原理に基づいており、この導電性を向上させたタンタル酸リチウム結晶の製造方法を提供するものである。
【0009】
この導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶の製造方法としては特開平11−92147があるが、ここでは、タンタル酸リチウム結晶を500℃以上の還元雰囲気に晒すという方法が開示されている。しかし、特開平11−92147で開示された方法でタンタル酸リチウム結晶を還元処理すると、還元雰囲気での処理温度がキュリー点である610℃以上ではSAWデバイス用途で必要とされる単分域化構造が失われ、また、キュリー点である610℃以下の温度では還元処理の速度が極めて遅くなり、結果として特開平11−92147で開示された方法では工業的にタンタル酸リチウム結晶の導電率の向上はできないことが分かった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、温度T1で還元処理した物質を温度T1より低い温度T2でタンタル酸リチウム結晶に接触させることで該タンタル酸リチウム結晶の導電率を高くでき(請求項1)、この結果タンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えた時に発生する焦電気を抑えることができるという方法を提供するものである。
【0011】
本発明で、物質を還元処理する温度T1は還元反応を速やかに行うために700℃以上とすることが好ましい(請求項2)。
【0012】
本発明で、物質を温度T1で還元処理する雰囲気としては通常知られている還元性のガス雰囲気とすればよく、たとえば、水素,一酸化炭素,NOx(x<2.5)、SOx(x<3)あるいはこれらの混合ガスからなる還元性のガス中で行うことで還元処理された物質を得ることができ(請求項3)、あるいは物質を温度T1で還元処理する雰囲気としては通常知られている還元性ガス雰囲気である水素,一酸化炭素,NOx(x<2.5)、SOx(x<3)あるいはこれらの混合ガスからなる還元性ガスにHe、Ne、Arなどの希ガス及び窒素、ニ酸化炭素あるいはこれらの混合ガスからなる不活性ガスを添加した雰囲気中で行うことで還元処理された物質を得ることができ(請求項4)、さらには該還元性ガスと該不活性ガスの割合が全ガス中の95%以上であれば上記した還元処理された物質を得ることができ(請求項5)、好ましくは、該還元ガスとして水素あるいは一酸化炭素ガスを用いることで還元処理が速やかに実施できる(請求項6)。なお、還元ガス雰囲気としてはできるだけ還元処理の対象となる物質を短時間で処理できるものが好ましい。
【0013】
本発明で、温度T1で還元処理した物質としては非化学量論組成をもつ複合酸化物からなるセラミックスを用いることで実施でき(請求項7)、これは非化学量論組成物では陽イオンの欠損があり、この欠損が還元処理と深く関係していると考えられる。この非化学量論組成をもつ複合酸化物としてはタンタル酸リチウムからなるセラミックス、あるいはニオブ酸リチウムからなるセラミックスが例示され(請求項8、11)、さらには、 タンタル酸リチウム結晶あるいはニオブ酸リチウム結晶を用いることもでき(請求項9、12)、タンタル酸リチウム結晶あるいはニオブ酸リチウム結晶を用いる時は陽イオンの欠損が少ない化学量論組成の結晶よりはたとえばコングルーエント組成といわれているような化学量論組成から外れている組成の結晶を用いることが好ましい(請求項10、13)。
【0014】
また、本発明で、温度T1で還元処理した物質としては温度T2でタンタル酸リチウム結晶を還元処理できればよく、これには上記の還元ガス雰囲気中で処理したセラミックス(請求項14)あるいは金属(請求項15)、好ましくは、水素貯蔵合金を用いることも可能である(請求項16)。
【0015】
本発明で温度T2で接触させるタンタル酸リチウム結晶としては単一分極化された結晶を用いることができ(請求項17)、このため、本発明で得られるタンタル酸リチウム結晶は温度T2での還元処理の後、単分域化処理を必要としない。
【0016】
なお、通常の単分域化処理は、タンタル酸リチウム結晶のキュリー点(約610℃)以上の高温でかつ、大気中で行う。また、本発明で得られた導電率を向上させたタンタル酸リチウムは大気中で400℃以上の温度にすることで向上した導電率が失われてしまい、この結果、本発明で開示した処理を行ったタンタル酸リチウム結晶は単分域化処理により処理前の状態に戻るという性質がある。しかし、本発明ではタンタル酸リチウムと還元処理された物質とを接触させる温度T2はタンタル酸リチウム結晶のキュリー点より低い温度であり(請求項20)、かつ還元雰囲気中であるため導電率が失われるといった問題は生じない。
単一分極化された結晶の形態としては、スライス前段階の結晶(請求項18)、あるいは、スライス処理が行われたウエハもしくはラップ処理が行われたウエハを用いることのできる(請求項19)。
【0017】
本発明で、温度T1で処理した物質と温度T1より低い温度T2でタンタル酸リチウム結晶を接触させる還元雰囲気としては通常知られている還元性のガス雰囲気とすればよく、たとえば、水素,一酸化炭素,NOx(x<2.5)、SOx(x<3)あるいはこれらの混合ガスからなる還元性のガス中で行うことで還元処理された物質を得ることができ(請求項21)、あるいは物質を温度T1で還元処理する雰囲気としては通常知られている還元性ガス雰囲気である水素,一酸化炭素,NOx(x<2.5)、SOx(x<3)あるいはこれらの混合ガスからなる還元性ガスにHe、Ne、Arなどの希ガス及び窒素、ニ酸化炭素あるいはこれらの混合ガスからなる不活性ガスを添加した雰囲気中で行うことで還元処理された物質を得ることができ(請求項22)、さらには該還元性ガスと該不活性ガスの割合が全ガス中の95%以上であれば上記した還元処理された物質を得ることができ(請求項23)、好ましくは、該還元ガスとして水素あるいは一酸化炭素ガスを用いることで還元処理が速やかに実施できる(請求項24)。
【0018】
本発明で温度T1で還元処理した物質としての例として、タンタル酸リチウムからなるセラミックスがあげられるが、このものは炭酸リチウムと五酸化タンタルとを秤量し、混合し、電気炉で1000℃以上に加熱することで得られる。ニオブ酸リチウムからなるセラミックスについては五酸化タンタルの代わりに五酸化ニオブを使うことで得られる。このようにして得られたセラミックスをステンレススチールの容器または石英の容器中に入れ、封止された炉内に置き、表3の組成の混合ガスを毎分約1.5リットルの速度で封止炉に流通させ、炉温を室温から700℃まで昇温し、1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、容器を炉から取り出すことで還元処理した物質として得られる。
【0019】
また、本発明で温度T1で還元処理した物質としての例として、タンタル酸リチウム結晶があげられるが、このものは上記した還元処理前のタンタル酸リチウムからなるセラミックスを貴金属製のルツボに入れ、加熱、溶融後に種結晶を用いて回転引上げ(いわゆるチョクラルスキー法)にてタンタル酸リチウム結晶を育成することができる。
【0020】
このようにして得られたタンタル酸リチウム結晶を石英台に載せ、封止された炉内に置き、表1の組成の混合ガスを毎分約1.5リットルの速度で封止炉に流通させ、炉温度を室温から毎分約6.7℃の速度で表1の温度T1まで昇温し、1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところで石英台を炉から取り出すことで還元処理した物資として得られる
【0021】
上記した還元処理前のたとえば直径4インチのタンタル酸リチウム結晶に貴金属電極を設置し、キュリー点以上の温度、たとえば650℃にて電圧を印加することで単分域化処理ができ、この単分域化処理がなされた結晶を、たとえばワイヤソーを用いてスライスすることで直径4インチ、厚さ0.5mmのスライス処理がおこなわれたウエハが得られ、さらにこのウエハをラップ機で処理することで直径4インチ、厚さ0.4mmラップウエハが得られる。
【0022】
本発明で温度T1で還元処理した物質としての例として、タンタル酸リチウム結晶からなるラップウエハがあげられるが、このものは、、上記の工程で得られたタンタル酸リチウム結晶ラップウエハを、表1の組成の混合ガスを毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中で温度を室温から毎分約6.7℃の速度で表1の温度T1まで昇温し、1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出すことで得られる。この処理によりタンタル酸リチウムウエハの色は処理前の白色から黒く変色し、光吸収能を持つようになる。しかし、温度T1はタンタル酸リチウム結晶のキュリー点より高いため、この処理で得られるタンタル酸リチウムはSAWデバイス用としては不適な多分域構造をもつものである。
【0023】
本発明で目的とする単分域化構造をもち、かつ、導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶を得る方法としては、たとえば、単分域化処理がおこなわれたタ
ンタル酸リチウム結晶ラップウエハと
【0024】で示した処理を行った黒く変色したタンタル酸リチウムウエハを接触するように交互に積層し、炉中に設置し、水素ガスを毎分約1.5リットルの速度で流し、炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で昇温させ、表1の温度T2に1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出すことで得られる。
【0025】
本発明で得られたタンタル酸リチウム結晶に対する導電率は次のように測定した。導電率は体積抵抗率の逆数である。体積抵抗率はHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter及び16008A Resistivityを用いて測定した。体積抵抗率は次式により得ることができる。
ρ=(πd2/4t)・R
ρ: 体積抵抗率(Ω・cm)
π: 円周率
d: 中心電極直径(cm)
t: T2処理LTウエハ厚さ(cm)
R: 抵抗値(Ω)
500ボルトの電圧を印加し、電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定する。表面電位は温度差により表面に蓄積された焦電性による電荷量であり、これは静電気と同様に定量的な測定として表面電位測定として知られている。温度T2で還元処理したタンタル酸リチウムウエハをホットプレート上で30℃から70℃まで1分で昇温し、Ion Systems社製、SFM775を使用することにより、その間に変化する表面電位の差を測定することで表面電位がえられる。
【0026】
本発明で得られたタンタル酸リチウム結晶は、結晶の導電率が向上していることより、温度変化で生じる表面電荷の蓄積が実質的にみられないという特徴を持っている。このことにより、
【0027】で示したように、本発明で得られるタンタル酸リチウム結晶は圧電性を維持した上で結晶外表面に電荷の蓄積が見られないものとなっており、SAWデバイス製造上極めて有利な材料である。また、本発明の方法では上記したタンタル酸リチウム結晶は極めて短時間の処理で得ることができ工業的に有利な製造方法となっている。
【発明の実施の形態】
【0028】
LTウエハ作製を次の通り行った。表面法線に対してy方向に36゜回転して配向された直径100mm、長さ50mmのタンタル酸リチウム結晶を、チョクラルスキー法および常用の二次加工法を使用することにより得た(以後、LT結晶と記す)。このLT結晶を切断、ラップ加工を行い、厚さ0.4mmの両面ラップウエハを得た(以後、このウエハをLTラップウエハと記す)。LTラップウエハの片面を研磨し、厚さ0.35mmのウエハを得た(以後、このウエハをLTポリッシュウエハと記す)。このウエハは、無色で半透明であった。
【0029】
実施例1
T1還元処理−タンタル酸リチウム結晶
LTラップウエハを、表1の混合ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。この炉は、水平方向の直径200mmのアルミナ処理管を備えた3つの帯域を有する管状炉から成り立っていた。ウエハを前記処理管の中心に置かれたアルミナ担体によって支持した。アルミナ処理管は、炉から延在しており、したがってこのアルミナ処理管の端部は、晒されかつ冷却されたままである。アルミナ処理管のOリングシールは、封止された炉空隙を提供した。ウエハを処理管中に入れ、次にこの処理管を端部キャップで封止した。ガス流を流し始め、炉の加熱を開始した。炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で表1の温度T1まで昇温した。温度T1にて1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出した(以後、T1処理LTウエハと記す)。LTラップウエハとT1処理LTウエハを接触するように交互に積層し、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。この炉は、温度T1還元処理と同一のものである。炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で昇温した。表1の温度T2に1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出した(以後、T2処理LTウエハと記す)。
導電率は次のように測定した。導電率は体積抵抗率の逆数である。体積抵抗率はHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter及び16008A Resistivityを用いて測定した。体積抵抗率は次式により得ることができる。
ρ=(πd2/4t)・R
ρ: 体積抵抗率(Ω・cm)
π: 円周率
d: 中心電極直径(cm)
t: T2処理LTウエハ厚さ(cm)
R: 抵抗値(Ω)
500ボルトの電圧を印加し、電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定した。表面電位は次のように測定した。焦電気は温度差が発生したときに表面に蓄積される電荷量である。これは静電気と同様であり、定量的な測定として表面電位測定が知られている。T2処理LTウエハをホットプレート上で30℃から70℃まで1分で昇温し、Ion Systems社製、SFM775を使用することにより、その間に変化する表面電位の差を測定値とした。導電率、表面電位を表1に示す。なお、すべての表において、導電率の、例えば「9.3E−14」というような記載は、「9.3−14」という意味です。
【0030】実施例2
温度T2還元処理−タンタル酸リチウム結晶
LTウエハを、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。表2の温度T1に1時間保持してT1処理LTウエハを得た。LTウエハとT1処理LTウエハを接触するように交互に積層し、表1の混合ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。表2の温度T2に1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出し、T2処理LTウエハを得た。導電率、表面電位を表2に示す。
【0031】
実施例3
タンタル酸リチウムセラミックス
表3のLi:Taモル比のタンタル酸リチウムセラミックスを、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。700℃で1時間保持後、炉を自然冷却させた。冷却後、タンタル酸リチウムセラミックスを炉から取り出した(以後、T1処理LTセラミックスと記す)。単一分極化されたLT結晶を接触するようにT1処理LTセラミックス中に埋め込み、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。600℃で1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでLT結晶を炉から取り出した(以後、T2処理LT結晶と記す)。T2処理LT結晶を常用の二次加工法およびこのウエハの片面を研磨し、T2処理LTウエハを得た。
導電率、表面電位を表3に示す。
【0032】
実施例4
還元処理物質
表4の還元処理物質を、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。表2の温度T1に1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところで還元処理物質を炉から取り出した(以後、還元処理物質と記す)。LTウエハと還元処理物質を接触するように交互に積層し、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。600℃で1時間保持してT2処理LTウエハを得た。導電率、表面電位を表4に示す。
【0033】
比較例1
LTウエハ
還元処理を全く施していないLTウエハの導電率、表面電位を表5に示す。
【0034】
比較例2
600℃以下の還元処理
LTウエハを、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。キュリー温度以下の表5に記載の温度、保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。30℃以下で炉内に大気を導入し、ウエハを炉から取り出し、還元処理LTウエハを得た。導電率、表面電位を表5に示す。目視での色の変化は見られなかった。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波素子などのウエハ上に金属電極でパターンを形成して電気信号を処理する用途に使用するタンタル酸リチウム結晶の特性改善に関する方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
タンタル酸リチウムは、弾性表面波(SAW)の信号処理といった電気的特性を利用する用途に使用されている。この用途に適したタンタル酸リチウム結晶は、その結晶構造に起因するSAWデバイスに必要とされる圧電気応答(圧電性)を示すが、通常の方法で入手できるタンタル酸リチウム結晶は圧電性に加えて焦電気応答(焦電性)を生じる。
【0003】
タンタル酸リチウム結晶の圧電性はタンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして利用する時に、不可欠となる特性であるが、一方、焦電性はタンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで結晶の外側表面に発生する表面電荷として観察され、結晶を帯電させるものである。この表面電荷は、タンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして使用するときに、タンタル酸リチウム結晶からなるウエハ上に形成された金属電極間で火花放電を起こし、SAWデバイスの著しい性能の欠陥を引き起こすとされている。このため、タンタル酸リチウム結晶を用いるSAWデバイスの設計では、表面電荷を発生させない工夫、発生した表面電荷を逃がす工夫、あるいは金属電極同士の間隔を広くするなどの工夫が必要とされ、これら工夫を取り入れるために、SAWデバイス自体の設計に制約が加わるといった不利益があった。
【0004】
また、タンタル酸リチウム結晶を用いたSAWデバイスの製造工程では金属膜の蒸着、レジストの除去といった工程でタンタル酸リチウム結晶に熱が加わる工程があり、これら工程で加熱あるいは降温といった温度変化がタンタル酸リチウム結晶に与えられるとタンタル酸リチウム結晶の焦電性により外側表面に電荷が発生する。この表面電荷により、金属電極間に火花放電が生じ、電極パターンの破壊となるため、SAWデバイスの製造工程では出来るだけ温度変化を与えないように工夫をしたり、温度変化を緩やかにするといった工夫をしており、これら工夫のために製造工程のスループットが低下したり、あるいはSAWデバイスの性能を保証するマージンが狭くなるといった不利益が生じている。
【0005】
通常の方法で製造されたタンタル酸リチウム結晶では、焦電性により発生した外側表面の電荷は周囲環境からの遊離電荷により中和され、時間の経過とともに消失するが、この消失時間は数時間以上と長く、SAWデバイスの製造工程では、この自発的な焦電性の消失に期待できない。。
【0006】
弾性表面波(SAW)デバイスのような用途に対してはデバイス特性を発揮するために必要とされる圧電性を維持した上で、上記背景により、結晶外側表面に電荷の発生が見られない圧電性結晶の要求が増大しており、このような用途に対して表面電荷の蓄積が見られないタンタル酸リチウム結晶が必要とされている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−92147号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記された問題の解決方法を提供するものであり、タンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで発生する表面電荷をタンタル酸リチウム結晶の導電性を向上することで発生した表面電荷を蓄積させることなく消失させるという原理に基づいており、この導電性を向上させたタンタル酸リチウム結晶の製造方法を提供するものである。
【0009】
この導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶の製造方法としては特開平11−92147があるが、ここでは、タンタル酸リチウム結晶を500℃以上の還元雰囲気に晒すという方法が開示されている。しかし、特開平11−92147で開示された方法でタンタル酸リチウム結晶を還元処理すると、還元雰囲気での処理温度がキュリー点である610℃以上ではSAWデバイス用途で必要とされる単分域化構造が失われ、また、キュリー点である610℃以下の温度では還元処理の速度が極めて遅くなり、結果として特開平11−92147で開示された方法では工業的にタンタル酸リチウム結晶の導電率の向上はできないことが分かった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、温度T1で還元処理した物質を温度T1より低い温度T2でタンタル酸リチウム結晶に接触させることで該タンタル酸リチウム結晶の導電率を高くでき(請求項1)、この結果タンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えた時に発生する焦電気を抑えることができるという方法を提供するものである。
【0011】
本発明で、物質を還元処理する温度T1は還元反応を速やかに行うために700℃以上とすることが好ましい(請求項2)。
【0012】
本発明で、物質を温度T1で還元処理する雰囲気としては通常知られている還元性のガス雰囲気とすればよく、たとえば、水素,一酸化炭素,NOx(x<2.5)、SOx(x<3)あるいはこれらの混合ガスからなる還元性のガス中で行うことで還元処理された物質を得ることができ(請求項3)、あるいは物質を温度T1で還元処理する雰囲気としては通常知られている還元性ガス雰囲気である水素,一酸化炭素,NOx(x<2.5)、SOx(x<3)あるいはこれらの混合ガスからなる還元性ガスにHe、Ne、Arなどの希ガス及び窒素、ニ酸化炭素あるいはこれらの混合ガスからなる不活性ガスを添加した雰囲気中で行うことで還元処理された物質を得ることができ(請求項4)、さらには該還元性ガスと該不活性ガスの割合が全ガス中の95%以上であれば上記した還元処理された物質を得ることができ(請求項5)、好ましくは、該還元ガスとして水素あるいは一酸化炭素ガスを用いることで還元処理が速やかに実施できる(請求項6)。なお、還元ガス雰囲気としてはできるだけ還元処理の対象となる物質を短時間で処理できるものが好ましい。
【0013】
本発明で、温度T1で還元処理した物質としては非化学量論組成をもつ複合酸化物からなるセラミックスを用いることで実施でき(請求項7)、これは非化学量論組成物では陽イオンの欠損があり、この欠損が還元処理と深く関係していると考えられる。この非化学量論組成をもつ複合酸化物としてはタンタル酸リチウムからなるセラミックス、あるいはニオブ酸リチウムからなるセラミックスが例示され(請求項8、11)、さらには、 タンタル酸リチウム結晶あるいはニオブ酸リチウム結晶を用いることもでき(請求項9、12)、タンタル酸リチウム結晶あるいはニオブ酸リチウム結晶を用いる時は陽イオンの欠損が少ない化学量論組成の結晶よりはたとえばコングルーエント組成といわれているような化学量論組成から外れている組成の結晶を用いることが好ましい(請求項10、13)。
【0014】
また、本発明で、温度T1で還元処理した物質としては温度T2でタンタル酸リチウム結晶を還元処理できればよく、これには上記の還元ガス雰囲気中で処理したセラミックス(請求項14)あるいは金属(請求項15)、好ましくは、水素貯蔵合金を用いることも可能である(請求項16)。
【0015】
本発明で温度T2で接触させるタンタル酸リチウム結晶としては単一分極化された結晶を用いることができ(請求項17)、このため、本発明で得られるタンタル酸リチウム結晶は温度T2での還元処理の後、単分域化処理を必要としない。
【0016】
なお、通常の単分域化処理は、タンタル酸リチウム結晶のキュリー点(約610℃)以上の高温でかつ、大気中で行う。また、本発明で得られた導電率を向上させたタンタル酸リチウムは大気中で400℃以上の温度にすることで向上した導電率が失われてしまい、この結果、本発明で開示した処理を行ったタンタル酸リチウム結晶は単分域化処理により処理前の状態に戻るという性質がある。しかし、本発明ではタンタル酸リチウムと還元処理された物質とを接触させる温度T2はタンタル酸リチウム結晶のキュリー点より低い温度であり(請求項20)、かつ還元雰囲気中であるため導電率が失われるといった問題は生じない。
単一分極化された結晶の形態としては、スライス前段階の結晶(請求項18)、あるいは、スライス処理が行われたウエハもしくはラップ処理が行われたウエハを用いることのできる(請求項19)。
【0017】
本発明で、温度T1で処理した物質と温度T1より低い温度T2でタンタル酸リチウム結晶を接触させる還元雰囲気としては通常知られている還元性のガス雰囲気とすればよく、たとえば、水素,一酸化炭素,NOx(x<2.5)、SOx(x<3)あるいはこれらの混合ガスからなる還元性のガス中で行うことで還元処理された物質を得ることができ(請求項21)、あるいは物質を温度T1で還元処理する雰囲気としては通常知られている還元性ガス雰囲気である水素,一酸化炭素,NOx(x<2.5)、SOx(x<3)あるいはこれらの混合ガスからなる還元性ガスにHe、Ne、Arなどの希ガス及び窒素、ニ酸化炭素あるいはこれらの混合ガスからなる不活性ガスを添加した雰囲気中で行うことで還元処理された物質を得ることができ(請求項22)、さらには該還元性ガスと該不活性ガスの割合が全ガス中の95%以上であれば上記した還元処理された物質を得ることができ(請求項23)、好ましくは、該還元ガスとして水素あるいは一酸化炭素ガスを用いることで還元処理が速やかに実施できる(請求項24)。
【0018】
本発明で温度T1で還元処理した物質としての例として、タンタル酸リチウムからなるセラミックスがあげられるが、このものは炭酸リチウムと五酸化タンタルとを秤量し、混合し、電気炉で1000℃以上に加熱することで得られる。ニオブ酸リチウムからなるセラミックスについては五酸化タンタルの代わりに五酸化ニオブを使うことで得られる。このようにして得られたセラミックスをステンレススチールの容器または石英の容器中に入れ、封止された炉内に置き、表3の組成の混合ガスを毎分約1.5リットルの速度で封止炉に流通させ、炉温を室温から700℃まで昇温し、1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、容器を炉から取り出すことで還元処理した物質として得られる。
【0019】
また、本発明で温度T1で還元処理した物質としての例として、タンタル酸リチウム結晶があげられるが、このものは上記した還元処理前のタンタル酸リチウムからなるセラミックスを貴金属製のルツボに入れ、加熱、溶融後に種結晶を用いて回転引上げ(いわゆるチョクラルスキー法)にてタンタル酸リチウム結晶を育成することができる。
【0020】
このようにして得られたタンタル酸リチウム結晶を石英台に載せ、封止された炉内に置き、表1の組成の混合ガスを毎分約1.5リットルの速度で封止炉に流通させ、炉温度を室温から毎分約6.7℃の速度で表1の温度T1まで昇温し、1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところで石英台を炉から取り出すことで還元処理した物資として得られる
【0021】
上記した還元処理前のたとえば直径4インチのタンタル酸リチウム結晶に貴金属電極を設置し、キュリー点以上の温度、たとえば650℃にて電圧を印加することで単分域化処理ができ、この単分域化処理がなされた結晶を、たとえばワイヤソーを用いてスライスすることで直径4インチ、厚さ0.5mmのスライス処理がおこなわれたウエハが得られ、さらにこのウエハをラップ機で処理することで直径4インチ、厚さ0.4mmラップウエハが得られる。
【0022】
本発明で温度T1で還元処理した物質としての例として、タンタル酸リチウム結晶からなるラップウエハがあげられるが、このものは、、上記の工程で得られたタンタル酸リチウム結晶ラップウエハを、表1の組成の混合ガスを毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中で温度を室温から毎分約6.7℃の速度で表1の温度T1まで昇温し、1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出すことで得られる。この処理によりタンタル酸リチウムウエハの色は処理前の白色から黒く変色し、光吸収能を持つようになる。しかし、温度T1はタンタル酸リチウム結晶のキュリー点より高いため、この処理で得られるタンタル酸リチウムはSAWデバイス用としては不適な多分域構造をもつものである。
【0023】
本発明で目的とする単分域化構造をもち、かつ、導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶を得る方法としては、たとえば、単分域化処理がおこなわれたタ
ンタル酸リチウム結晶ラップウエハと
【0024】で示した処理を行った黒く変色したタンタル酸リチウムウエハを接触するように交互に積層し、炉中に設置し、水素ガスを毎分約1.5リットルの速度で流し、炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で昇温させ、表1の温度T2に1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出すことで得られる。
【0025】
本発明で得られたタンタル酸リチウム結晶に対する導電率は次のように測定した。導電率は体積抵抗率の逆数である。体積抵抗率はHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter及び16008A Resistivityを用いて測定した。体積抵抗率は次式により得ることができる。
ρ=(πd2/4t)・R
ρ: 体積抵抗率(Ω・cm)
π: 円周率
d: 中心電極直径(cm)
t: T2処理LTウエハ厚さ(cm)
R: 抵抗値(Ω)
500ボルトの電圧を印加し、電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定する。表面電位は温度差により表面に蓄積された焦電性による電荷量であり、これは静電気と同様に定量的な測定として表面電位測定として知られている。温度T2で還元処理したタンタル酸リチウムウエハをホットプレート上で30℃から70℃まで1分で昇温し、Ion Systems社製、SFM775を使用することにより、その間に変化する表面電位の差を測定することで表面電位がえられる。
【0026】
本発明で得られたタンタル酸リチウム結晶は、結晶の導電率が向上していることより、温度変化で生じる表面電荷の蓄積が実質的にみられないという特徴を持っている。このことにより、
【0027】で示したように、本発明で得られるタンタル酸リチウム結晶は圧電性を維持した上で結晶外表面に電荷の蓄積が見られないものとなっており、SAWデバイス製造上極めて有利な材料である。また、本発明の方法では上記したタンタル酸リチウム結晶は極めて短時間の処理で得ることができ工業的に有利な製造方法となっている。
【発明の実施の形態】
【0028】
LTウエハ作製を次の通り行った。表面法線に対してy方向に36゜回転して配向された直径100mm、長さ50mmのタンタル酸リチウム結晶を、チョクラルスキー法および常用の二次加工法を使用することにより得た(以後、LT結晶と記す)。このLT結晶を切断、ラップ加工を行い、厚さ0.4mmの両面ラップウエハを得た(以後、このウエハをLTラップウエハと記す)。LTラップウエハの片面を研磨し、厚さ0.35mmのウエハを得た(以後、このウエハをLTポリッシュウエハと記す)。このウエハは、無色で半透明であった。
【0029】
実施例1
T1還元処理−タンタル酸リチウム結晶
LTラップウエハを、表1の混合ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。この炉は、水平方向の直径200mmのアルミナ処理管を備えた3つの帯域を有する管状炉から成り立っていた。ウエハを前記処理管の中心に置かれたアルミナ担体によって支持した。アルミナ処理管は、炉から延在しており、したがってこのアルミナ処理管の端部は、晒されかつ冷却されたままである。アルミナ処理管のOリングシールは、封止された炉空隙を提供した。ウエハを処理管中に入れ、次にこの処理管を端部キャップで封止した。ガス流を流し始め、炉の加熱を開始した。炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で表1の温度T1まで昇温した。温度T1にて1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出した(以後、T1処理LTウエハと記す)。LTラップウエハとT1処理LTウエハを接触するように交互に積層し、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。この炉は、温度T1還元処理と同一のものである。炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で昇温した。表1の温度T2に1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出した(以後、T2処理LTウエハと記す)。
導電率は次のように測定した。導電率は体積抵抗率の逆数である。体積抵抗率はHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter及び16008A Resistivityを用いて測定した。体積抵抗率は次式により得ることができる。
ρ=(πd2/4t)・R
ρ: 体積抵抗率(Ω・cm)
π: 円周率
d: 中心電極直径(cm)
t: T2処理LTウエハ厚さ(cm)
R: 抵抗値(Ω)
500ボルトの電圧を印加し、電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定した。表面電位は次のように測定した。焦電気は温度差が発生したときに表面に蓄積される電荷量である。これは静電気と同様であり、定量的な測定として表面電位測定が知られている。T2処理LTウエハをホットプレート上で30℃から70℃まで1分で昇温し、Ion Systems社製、SFM775を使用することにより、その間に変化する表面電位の差を測定値とした。導電率、表面電位を表1に示す。なお、すべての表において、導電率の、例えば「9.3E−14」というような記載は、「9.3−14」という意味です。
【0030】実施例2
温度T2還元処理−タンタル酸リチウム結晶
LTウエハを、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。表2の温度T1に1時間保持してT1処理LTウエハを得た。LTウエハとT1処理LTウエハを接触するように交互に積層し、表1の混合ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。表2の温度T2に1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出し、T2処理LTウエハを得た。導電率、表面電位を表2に示す。
【0031】
実施例3
タンタル酸リチウムセラミックス
表3のLi:Taモル比のタンタル酸リチウムセラミックスを、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。700℃で1時間保持後、炉を自然冷却させた。冷却後、タンタル酸リチウムセラミックスを炉から取り出した(以後、T1処理LTセラミックスと記す)。単一分極化されたLT結晶を接触するようにT1処理LTセラミックス中に埋め込み、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。600℃で1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでLT結晶を炉から取り出した(以後、T2処理LT結晶と記す)。T2処理LT結晶を常用の二次加工法およびこのウエハの片面を研磨し、T2処理LTウエハを得た。
導電率、表面電位を表3に示す。
【0032】
実施例4
還元処理物質
表4の還元処理物質を、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。表2の温度T1に1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところで還元処理物質を炉から取り出した(以後、還元処理物質と記す)。LTウエハと還元処理物質を接触するように交互に積層し、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。600℃で1時間保持してT2処理LTウエハを得た。導電率、表面電位を表4に示す。
【0033】
比較例1
LTウエハ
還元処理を全く施していないLTウエハの導電率、表面電位を表5に示す。
【0034】
比較例2
600℃以下の還元処理
LTウエハを、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。キュリー温度以下の表5に記載の温度、保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。30℃以下で炉内に大気を導入し、ウエハを炉から取り出し、還元処理LTウエハを得た。導電率、表面電位を表5に示す。目視での色の変化は見られなかった。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
Claims (25)
- 温度T1で還元処理した物質を、温度T1より低い温度T2でかつ還元雰囲気中でタンタル酸リチウム結晶に接触することを特徴とする、導電率が増加されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
- 温度T1が700℃以上であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 温度T1での還元処理を水素,一酸化炭素,NOx(x<2.5)、SOx(x<3)のいずれか、あるいはこれらのうち2以上よりなる混合ガス、を含む還元性ガス中で行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 前記還元性ガスにさらに、He、Ne、Arなどの希ガス、窒素、ニ酸化炭素のいずれか、あるいはこれらのうち2以上よりなる混合ガス、を添加した雰囲気中で行うことを特徴とする請求項3記載の製造方法。
- 前記還元性ガスと前記添加ガスの割合が全ガス中の95%以上であることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
- 前記還元ガスとして水素あるいは一酸化炭素ガスを用いることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
- 温度T1で還元処理した物質として非化学量論組成をもつ複合酸化物からなるセラミックスを用いることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 前記非化学量論組成をもつ複合酸化物がタンタル酸リチウムであることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
- 前記タンタル酸リチウムからなるセラミックスとしてタンタル酸リチウム結晶を用いることを特徴とする請求項8記載の製造方法。
- 該タンタル酸リチウムからなるセラミックスとして化学量論比から外れている組成物を用いることを特徴とする請求項8及び9記載の製造方法。
- 前記非化学量論組成をもつ複合酸化物がニオブ酸リチウムであることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
- 前記ニオブ酸リチウムからなるセラミックスとしてニオブ゛酸リチウム結晶を用いることを特徴とする請求項11記載の製造方法。
- 該ニオブ酸リチウムからなるセラミックスとして化学量論比から外れている組成物を用いることを特徴とする請求項11及び12記載の製造方法。
- 温度T1で還元処理した物質として請求項3、4、5、6記載のガス雰囲気中で処理したセラミックスを用いることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 温度T1で還元処理した物質として請求項3、4、5、6記載のガス雰囲気中で処理した金属を用いることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 該金属として水素貯蔵合金を用いることを特徴とする請求項15記載の製造方法。
- 温度T2で接触させるタンタル酸リチウム結晶として単一分極化された結晶を用いることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 該単一分極化された結晶として、スライス前段階の結晶を用いることを特徴とする請求項17記載の製造方法。
- 該単一分極化された結晶として、スライス処理が行われたウエハ、あるいはラップ処理が行われたウエハを用いることを特徴とする請求項17記載の製造方法。
- 温度T2が400℃から600℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 温度T2で処理した後に温度が250℃以下で大気を導入することを特徴とする請求項20記載の製造方法。。
- 温度T2での還元処理を水素,一酸化炭素,NOx(x<2.5)、SOx(x<3)あるいはこれらの混合ガスからなる還元性のガス中で行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 温度T2での還元処理を水素,一酸化炭素,NOx(x<2.5)、SOx(x<3)あるいはこれらの混合ガスからなる還元性ガスにHe、Ne、Arなどの希ガス及び、窒素、ニ酸化炭素あるいはこれらの混合ガスからなる不活性ガスを添加した雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 該還元性ガスと不活性ガスの割合が全ガス中の95%以上であることを特徴とする請求項22記載の製造方法。
- 該還元ガスとして水素あるいは一酸化炭素ガスを用いることを特徴とする請求項23記載の製造方法。
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