JP2004331443A - 単一分極化された改良型タンタル酸リチウム結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】タンタル酸リチウム結晶の導電率を還元処理にて増加させるという製造方法において、還元処理をおこなう温度と圧力を規定することでデバイス歩留まりがよく還元処理が速やかに実施でき、目的とする単一分域化された導電率が増加したタンタル酸リチウム結晶を製造する方法を提供するものである。
【解決手段】タンタル酸リチウム結晶をキュリー点以下の高温度で還元処理する時の還元雰囲気の圧力範囲を0.2MPa〜1.0MPaとすることでSAWデバイスとしたときに歩留まり低下をもたらすことなく単一分極構造を保ちつつタンタル酸リチウム結晶の導電率を増加させる改良されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法
【解決手段】タンタル酸リチウム結晶をキュリー点以下の高温度で還元処理する時の還元雰囲気の圧力範囲を0.2MPa〜1.0MPaとすることでSAWデバイスとしたときに歩留まり低下をもたらすことなく単一分極構造を保ちつつタンタル酸リチウム結晶の導電率を増加させる改良されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波素子などのウエハ上に金属電極でパターンを形成して電気信号を処理する用途に使用する単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の特性改善に関する方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
タンタル酸リチウムは、弾性表面波(SAW)の信号処理といった電気的特性を利用する用途に使用され、この用途ではタンタル酸リチウム結晶は単一分極化されたものが使われる。この用途に適したタンタル酸リチウム結晶は、その結晶構造に起因するSAWデバイスに必要とされる圧電気応答(圧電性)を示すが、通常の方法で入手できるタンタル酸リチウム結晶は圧電性に加えて焦電気応答(焦電性)を生じる。
【0003】
タンタル酸リチウム結晶の圧電性はタンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして利用する時に、不可欠となる特性であるが、一方、焦電性はタンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで結晶の外側表面に発生する表面電荷として観察され、結晶を帯電させるものである。この表面電荷は、タンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして使用するときに、タンタル酸リチウム結晶からなるウエハ上に形成された金属電極間で火花放電を起こし、SAWデバイスの著しい性能の欠陥を引き起こすとされている。このため、タンタル酸リチウム結晶を用いるSAWデバイスの設計では、表面電荷を発生させない工夫、発生した表面電荷を逃がす工夫、あるいは金属電極同士の間隔を広くするなどの工夫が必要とされ、これら工夫を取り入れるために、SAWデバイス自体の設計に制約が加わるといった不利益があった。
【0004】
また、タンタル酸リチウム結晶を用いたSAWデバイスの製造工程では金属膜の蒸着、レジストの除去といった工程でタンタル酸リチウム結晶に熱が加わる工程があり、これら工程で加熱あるいは降温といった温度変化がタンタル酸リチウム結晶に与えられるとタンタル酸リチウム結晶の焦電性により外側表面に電荷が発生する。この表面電荷により、金属電極間に火花放電が生じ、電極パターンの破壊となるため、SAWデバイスの製造工程では出来るだけ温度変化を与えないように工夫をしたり、温度変化を緩やかにするといった工夫をしており、これら工夫のために製造工程のスループットが低下したり、あるいはSAWデバイスの性能を保証するマージンが狭くなるといった不利益が生じている。
【0005】
通常の方法で製造された単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶では、焦電性により発生した外側表面の電荷は周囲環境からの遊離電荷により中和され、時間の経過とともに消失するが、この消失時間は数時間以上と長く、SAWデバイスの製造工程では、この自発的な焦電性の消失に期待できない。
【0006】
弾性表面波(SAW)デバイスのような用途に対してはデバイス特性を発揮するために必要とされる圧電性を維持した上で、上記背景により、結晶外側表面に電荷の発生が見られない圧電性結晶の要求が増大しており、このような用途に対して表面電荷の蓄積が見られない単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶が必要とされている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−92147号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記された問題の解決方法を提供するものであり、タンタル酸リチウムに温度変化を与えることで発生する表面電荷をタンタル酸リチウムの導電率を向上することで発生した表面電荷を蓄積させることなく消失させるという原理に基づいており、この導電性を向上させた単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法を提供するものである。
【0009】
この導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶の製造方法としては特開平11−92147があるが、ここでは、タンタル酸リチウム結晶を500℃以上の還元雰囲気にさらすという方法が開示されている。しかし、特開平11−92147で開示された方法でタンタル酸リチウム結晶を還元処理すると、還元雰囲気温度がキュリー点である610℃以上ではSAWデバイス用途で必要とされる単一分極化構造が失われ、また、キュリー点である610℃以下の温度では還元処理の速度が極めて遅くなり、結果として特開平11−92147で開示された方法では工業的に単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の導電率は向上できないことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を、キュリー温度以下で大気圧以上の還元雰囲気にさらすことで該タンタル酸リチウム結晶の導電率を高くでき(請求項1)、この結果タンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えた時に発生する焦電気を抑えることができるという方法を提供するものである。
【0011】
本発明で、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶としては速やかに処理を完了させるために、スライス処理がおこなわれたウェハ、あるいはラップ処理がおこなわれたウェハ、もしくは片面に鏡面処理がおこなわれたウェハを用いることが好ましい(請求項2)。
【0012】
本発明で、還元雰囲気にさらす温度としては速やかに処理を完了させるためにキュリー温度以下、500℃以上とすることが好ましい(請求項3)。
【0013】
本発明で、還元雰囲気の圧力として速やかに処理を終了させるために0.2MPa以上とすることが好ましく、また、この処理をおこなった単一分極化されたタンタル酸リチウムをSAWデバイスとして使用したときのデバイス歩留まりが低下しない範囲とするため圧力の上限値としては1.0MPaとすることが好ましい(請求項4)。これは、タンタル酸リチウム結晶の還元雰囲気での処理では雰囲気ガスの圧力を上げすぎて処理するとタンタル酸リチウムの結晶構造が破壊するためと考えられる。
【0014】
本発明で、還元雰囲気として水素、重水素、一酸化炭素あるいはNOx(x<2.5)のいずれか、あるいはこれら2以上よりなる混合気体とすることで還元処理ができ(請求項5)、あるいは還元雰囲気としては水素、重水素、一酸化炭素、NOx(x<2.5)あるいはこれらの混合ガスにヘリウム、ネオン、アルゴン、などの希ガス、窒素、二酸化炭素のいずれかあるいはこれらの混合ガスを添加した雰囲気とすることで還元処理ができる(請求項6)。
【0015】
本発明でタンタル酸リチウム結晶は、炭酸リチウムと五酸化タンタルとを秤量し、混合し、電気炉で1000℃以上に加熱することで得られた多結晶のタンタル酸リチウムをイリジウムなどの貴金属製のルツボに入れ、加熱、溶融後に種結晶を用いて回転引上げ(いわゆるチョクラルスキー法)にて育成することでたとえば直径が4インチの多分域状態のタンタル酸リチウム結晶が得られる。
【0016】
このようにして得られた多分域状態の4インチのタンタル酸リチウム結晶に貴金属電極を設置し、キュリー点以上の温度、たとえば650℃にて電圧を印加することで単一分域化処理ができ、この単一分域化処理がなされた結晶を、たとえばワイヤソーを用いてスライスすることで直径4インチ、厚さ0.5mmのスライス処理がおこなわれたウエハが得られ、さらにこのウエハをラップ機で処理することで直径4インチ、厚さ0.4mmラップウエハが得られる。
【0017】
本発明で目的とする単一分域化構造をもち、かつ、導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶を得る方法としては、たとえば、単一分域化処理がおこなわれたタンタル酸リチウム結晶ラップウエハを圧力計がついたステンレススチール製の容器に入れ、容器内を水素ガスで十分に置換して圧力0.2MPaで封じ、このステンレススチールの容器を管状の電気炉中に設置し、炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で昇温させ、タンタル酸リチウム結晶のキュリー点以下の温度、たとえば550℃に6時間保持後に炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、30℃以下となったところでウエハをステンレススチールの容器から取り出すことで得られる。
【0018】
本発明で得られた単一分域化されたタンタル酸リチウム結晶に対する導電率は次のように測定した。導電率は体積抵抗率の逆数である。体積抵抗率はHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter及び16008A Resistivityを用いて測定した。体積抵抗率は次式により得ることができる。
ρ=(πd2/4t)・R
ρ: 体積抵抗率(Ω・cm)
π: 円周率
d: 中心電極直径(cm)
t: タンタル酸リチウムウエハ厚さ(cm)
R: 抵抗値(Ω)
500ボルトの電圧を印加し、電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定した。
【0019】
本発明で得られた単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶は、結晶の導電率が向上している。このことにより、[0006]で示したように、本発明で得られる単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶は圧電性を維持した上で結晶表面に電荷の蓄積がみられないものとなっており、SAWデバイス製造上極めて有利な材料である。また、本発明の方法では上記したタンタル酸リチウム結晶は極めて短時間の処理で得ることができ工業的に有利な方法となっている。
【発明の実施の形態】
【0020】
実施例、比較例
タンタル酸リチウムウェハ作製は次の通り行った。y方向40゜回転の直径4インチ、長さ50mmのタンタル酸リチウム結晶を、チョクラルスキー法で育成し、単一分域化処理をおこなった。この単一分域化されたタンタル酸リチウム結晶をワイヤソーにて切断、ラップ加工を行い、厚さ0.4mmの両面ラップウエハを得た。この単一分域化されたタンタル酸リチウム結晶からなる両面ラップウェハ100枚を、外径150mm内径130mmの圧力計付ステンレススチール製オートクレーブ中に積み重ねるようにして置き、水素置換をおこなった後、水素圧力を0.2MPaとして封入した。このオートクレーブを発熱体がカンタル線である管状炉に円筒部分を挿入し、上部をアルミナシリケートからなるウールで保温し、炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で550℃まで昇温した。温度550℃にて6時間保持後、炉の電源を切り、放冷し、30℃以下となったところでオートクレーブからウェハを炉から取り出すことで褐色状の還元処理タンタル酸リチウム結晶からなる両面ラップウェハを得た。
このウエハをさらにラップ機で各々の面を片面15μ以上ラップした後、SAWデバイス用基板として標準的な仕様である片面鏡面とするため片面を15μ以上研磨機で研磨し、導電率が向上した単一分極化されたタンタル酸リチウム製品ウェハを得た。
この製品ウェハについて、導電率を次のように測定した。導電率は体積抵抗率の逆数である。体積抵抗率はHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter 及び16008A Resistivityを用いて測定した。体積抵抗率は次式により得ることができる。
ρ=(πd2/4t)・R
ρ: 体積抵抗率(Ω・cm)
π: 円周率
d: 中心電極直径(cm)
t: タンタル酸リチウムのウエハ厚さ(cm)
R: 抵抗値(Ω)
500ボルトの電圧を印加し、電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定した。なお、表において導電率の「1.1E−11」というような記載は、「1.1x10−11」という意味である。
表1 還元処理かつ単一分域化処理されたタンタル酸リチウム結晶の導電率
比較例3,4の単一分極化されたタンタル酸リチウムを用いてSAWデバイスを試作した結果、信号の損失が0.5dB増加することが分かり、このものはSAWデバイスを製造する上で不適であることが分かった。
また、上記表ではラップウェハを用いた結果を示しているが、スライス処理がおこなわれたウェハでも同じ結果が得られた。
次に、片面を鏡面としたウェハでも導電率測定の結果は同じ結果となった。しかし、片面鏡面のウェハでは鏡面部分に曇りが生じ、再度研磨機にて鏡面加工をする必要があった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波素子などのウエハ上に金属電極でパターンを形成して電気信号を処理する用途に使用する単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の特性改善に関する方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
タンタル酸リチウムは、弾性表面波(SAW)の信号処理といった電気的特性を利用する用途に使用され、この用途ではタンタル酸リチウム結晶は単一分極化されたものが使われる。この用途に適したタンタル酸リチウム結晶は、その結晶構造に起因するSAWデバイスに必要とされる圧電気応答(圧電性)を示すが、通常の方法で入手できるタンタル酸リチウム結晶は圧電性に加えて焦電気応答(焦電性)を生じる。
【0003】
タンタル酸リチウム結晶の圧電性はタンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして利用する時に、不可欠となる特性であるが、一方、焦電性はタンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで結晶の外側表面に発生する表面電荷として観察され、結晶を帯電させるものである。この表面電荷は、タンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして使用するときに、タンタル酸リチウム結晶からなるウエハ上に形成された金属電極間で火花放電を起こし、SAWデバイスの著しい性能の欠陥を引き起こすとされている。このため、タンタル酸リチウム結晶を用いるSAWデバイスの設計では、表面電荷を発生させない工夫、発生した表面電荷を逃がす工夫、あるいは金属電極同士の間隔を広くするなどの工夫が必要とされ、これら工夫を取り入れるために、SAWデバイス自体の設計に制約が加わるといった不利益があった。
【0004】
また、タンタル酸リチウム結晶を用いたSAWデバイスの製造工程では金属膜の蒸着、レジストの除去といった工程でタンタル酸リチウム結晶に熱が加わる工程があり、これら工程で加熱あるいは降温といった温度変化がタンタル酸リチウム結晶に与えられるとタンタル酸リチウム結晶の焦電性により外側表面に電荷が発生する。この表面電荷により、金属電極間に火花放電が生じ、電極パターンの破壊となるため、SAWデバイスの製造工程では出来るだけ温度変化を与えないように工夫をしたり、温度変化を緩やかにするといった工夫をしており、これら工夫のために製造工程のスループットが低下したり、あるいはSAWデバイスの性能を保証するマージンが狭くなるといった不利益が生じている。
【0005】
通常の方法で製造された単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶では、焦電性により発生した外側表面の電荷は周囲環境からの遊離電荷により中和され、時間の経過とともに消失するが、この消失時間は数時間以上と長く、SAWデバイスの製造工程では、この自発的な焦電性の消失に期待できない。
【0006】
弾性表面波(SAW)デバイスのような用途に対してはデバイス特性を発揮するために必要とされる圧電性を維持した上で、上記背景により、結晶外側表面に電荷の発生が見られない圧電性結晶の要求が増大しており、このような用途に対して表面電荷の蓄積が見られない単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶が必要とされている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−92147号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記された問題の解決方法を提供するものであり、タンタル酸リチウムに温度変化を与えることで発生する表面電荷をタンタル酸リチウムの導電率を向上することで発生した表面電荷を蓄積させることなく消失させるという原理に基づいており、この導電性を向上させた単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法を提供するものである。
【0009】
この導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶の製造方法としては特開平11−92147があるが、ここでは、タンタル酸リチウム結晶を500℃以上の還元雰囲気にさらすという方法が開示されている。しかし、特開平11−92147で開示された方法でタンタル酸リチウム結晶を還元処理すると、還元雰囲気温度がキュリー点である610℃以上ではSAWデバイス用途で必要とされる単一分極化構造が失われ、また、キュリー点である610℃以下の温度では還元処理の速度が極めて遅くなり、結果として特開平11−92147で開示された方法では工業的に単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の導電率は向上できないことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を、キュリー温度以下で大気圧以上の還元雰囲気にさらすことで該タンタル酸リチウム結晶の導電率を高くでき(請求項1)、この結果タンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えた時に発生する焦電気を抑えることができるという方法を提供するものである。
【0011】
本発明で、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶としては速やかに処理を完了させるために、スライス処理がおこなわれたウェハ、あるいはラップ処理がおこなわれたウェハ、もしくは片面に鏡面処理がおこなわれたウェハを用いることが好ましい(請求項2)。
【0012】
本発明で、還元雰囲気にさらす温度としては速やかに処理を完了させるためにキュリー温度以下、500℃以上とすることが好ましい(請求項3)。
【0013】
本発明で、還元雰囲気の圧力として速やかに処理を終了させるために0.2MPa以上とすることが好ましく、また、この処理をおこなった単一分極化されたタンタル酸リチウムをSAWデバイスとして使用したときのデバイス歩留まりが低下しない範囲とするため圧力の上限値としては1.0MPaとすることが好ましい(請求項4)。これは、タンタル酸リチウム結晶の還元雰囲気での処理では雰囲気ガスの圧力を上げすぎて処理するとタンタル酸リチウムの結晶構造が破壊するためと考えられる。
【0014】
本発明で、還元雰囲気として水素、重水素、一酸化炭素あるいはNOx(x<2.5)のいずれか、あるいはこれら2以上よりなる混合気体とすることで還元処理ができ(請求項5)、あるいは還元雰囲気としては水素、重水素、一酸化炭素、NOx(x<2.5)あるいはこれらの混合ガスにヘリウム、ネオン、アルゴン、などの希ガス、窒素、二酸化炭素のいずれかあるいはこれらの混合ガスを添加した雰囲気とすることで還元処理ができる(請求項6)。
【0015】
本発明でタンタル酸リチウム結晶は、炭酸リチウムと五酸化タンタルとを秤量し、混合し、電気炉で1000℃以上に加熱することで得られた多結晶のタンタル酸リチウムをイリジウムなどの貴金属製のルツボに入れ、加熱、溶融後に種結晶を用いて回転引上げ(いわゆるチョクラルスキー法)にて育成することでたとえば直径が4インチの多分域状態のタンタル酸リチウム結晶が得られる。
【0016】
このようにして得られた多分域状態の4インチのタンタル酸リチウム結晶に貴金属電極を設置し、キュリー点以上の温度、たとえば650℃にて電圧を印加することで単一分域化処理ができ、この単一分域化処理がなされた結晶を、たとえばワイヤソーを用いてスライスすることで直径4インチ、厚さ0.5mmのスライス処理がおこなわれたウエハが得られ、さらにこのウエハをラップ機で処理することで直径4インチ、厚さ0.4mmラップウエハが得られる。
【0017】
本発明で目的とする単一分域化構造をもち、かつ、導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶を得る方法としては、たとえば、単一分域化処理がおこなわれたタンタル酸リチウム結晶ラップウエハを圧力計がついたステンレススチール製の容器に入れ、容器内を水素ガスで十分に置換して圧力0.2MPaで封じ、このステンレススチールの容器を管状の電気炉中に設置し、炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で昇温させ、タンタル酸リチウム結晶のキュリー点以下の温度、たとえば550℃に6時間保持後に炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、30℃以下となったところでウエハをステンレススチールの容器から取り出すことで得られる。
【0018】
本発明で得られた単一分域化されたタンタル酸リチウム結晶に対する導電率は次のように測定した。導電率は体積抵抗率の逆数である。体積抵抗率はHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter及び16008A Resistivityを用いて測定した。体積抵抗率は次式により得ることができる。
ρ=(πd2/4t)・R
ρ: 体積抵抗率(Ω・cm)
π: 円周率
d: 中心電極直径(cm)
t: タンタル酸リチウムウエハ厚さ(cm)
R: 抵抗値(Ω)
500ボルトの電圧を印加し、電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定した。
【0019】
本発明で得られた単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶は、結晶の導電率が向上している。このことにより、[0006]で示したように、本発明で得られる単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶は圧電性を維持した上で結晶表面に電荷の蓄積がみられないものとなっており、SAWデバイス製造上極めて有利な材料である。また、本発明の方法では上記したタンタル酸リチウム結晶は極めて短時間の処理で得ることができ工業的に有利な方法となっている。
【発明の実施の形態】
【0020】
実施例、比較例
タンタル酸リチウムウェハ作製は次の通り行った。y方向40゜回転の直径4インチ、長さ50mmのタンタル酸リチウム結晶を、チョクラルスキー法で育成し、単一分域化処理をおこなった。この単一分域化されたタンタル酸リチウム結晶をワイヤソーにて切断、ラップ加工を行い、厚さ0.4mmの両面ラップウエハを得た。この単一分域化されたタンタル酸リチウム結晶からなる両面ラップウェハ100枚を、外径150mm内径130mmの圧力計付ステンレススチール製オートクレーブ中に積み重ねるようにして置き、水素置換をおこなった後、水素圧力を0.2MPaとして封入した。このオートクレーブを発熱体がカンタル線である管状炉に円筒部分を挿入し、上部をアルミナシリケートからなるウールで保温し、炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で550℃まで昇温した。温度550℃にて6時間保持後、炉の電源を切り、放冷し、30℃以下となったところでオートクレーブからウェハを炉から取り出すことで褐色状の還元処理タンタル酸リチウム結晶からなる両面ラップウェハを得た。
このウエハをさらにラップ機で各々の面を片面15μ以上ラップした後、SAWデバイス用基板として標準的な仕様である片面鏡面とするため片面を15μ以上研磨機で研磨し、導電率が向上した単一分極化されたタンタル酸リチウム製品ウェハを得た。
この製品ウェハについて、導電率を次のように測定した。導電率は体積抵抗率の逆数である。体積抵抗率はHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter 及び16008A Resistivityを用いて測定した。体積抵抗率は次式により得ることができる。
ρ=(πd2/4t)・R
ρ: 体積抵抗率(Ω・cm)
π: 円周率
d: 中心電極直径(cm)
t: タンタル酸リチウムのウエハ厚さ(cm)
R: 抵抗値(Ω)
500ボルトの電圧を印加し、電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定した。なお、表において導電率の「1.1E−11」というような記載は、「1.1x10−11」という意味である。
表1 還元処理かつ単一分域化処理されたタンタル酸リチウム結晶の導電率
比較例3,4の単一分極化されたタンタル酸リチウムを用いてSAWデバイスを試作した結果、信号の損失が0.5dB増加することが分かり、このものはSAWデバイスを製造する上で不適であることが分かった。
また、上記表ではラップウェハを用いた結果を示しているが、スライス処理がおこなわれたウェハでも同じ結果が得られた。
次に、片面を鏡面としたウェハでも導電率測定の結果は同じ結果となった。しかし、片面鏡面のウェハでは鏡面部分に曇りが生じ、再度研磨機にて鏡面加工をする必要があった。
Claims (6)
- 単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を、キュリー温度以下で大気圧以上の圧力の還元雰囲気にさらすことで導電率が増加された単一分域化された改良型タンタル酸リチウム結晶を製造する方法。
- 単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶として、スライス処理がおこなわれたウェハ、あるいはラップ処理がおこなわれたウェハ、もしくは片面に鏡面処理がおこなわれたウェハを用いることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 還元雰囲気にさらす温度として500℃以上であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 還元雰囲気の圧力として0.2MPa〜1.0MPaであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 前記還元雰囲気が水素、重水素、一酸化炭素あるいはNOX(X<2.5)のいずれか、あるいはこれら2以上よりなる混合気体からなることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 前記還元雰囲気にさらに、ヘリウム、ネオン、アルゴン、などの希ガス、窒素、二酸化炭素のいずれかあるいはこれらのうち2以上よりなる混合ガスを添加することを特徴とする請求項5記載の製造方法。
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JP2003128528A JP2004331443A (ja) | 2003-05-07 | 2003-05-07 | 単一分極化された改良型タンタル酸リチウム結晶の製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7527755B2 (en) | 2002-06-28 | 2009-05-05 | Silicon Light Machines Corporation | Method for increasing bulk conductivity of a ferroelectric material such as lithium tantalate |
JP2020105046A (ja) * | 2018-12-27 | 2020-07-09 | 住友金属鉱山株式会社 | 単結晶ウエハの製造方法 |
-
2003
- 2003-05-07 JP JP2003128528A patent/JP2004331443A/ja active Pending
Cited By (3)
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