JP2005112940A - 不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物及びその製造方法 - Google Patents

不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 被着体に対する接着力に優れると共に、フィルム化した際にフィッシュアイ等が少なくフィルム外観にも優れる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体100重量部に対し、滑剤0.2〜10重量部からなる変性エチレン系重合体組成物、及び、グラフト反応するに際し、ラジカル開始剤、滑剤及びエチレン系重合体混合物をラジカル開始剤の1分間半減期温度以下、かつ、滑剤の融点以上の範囲にて押出機に供給し、グラフト化反応を行う変性エチレン系重合体組成物の製造方法
【選択図】 選択図なし。

Description

本発明は、不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは接着力に優れると共に、フィルムとした際のフィルム外観にも優れる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物及びその製造方法に関するものである。
従来から、エチレン系重合体等のオレフィン系重合体は、種々の成形方法により成形され、多方面の用途において使用されている。そして、オレフィン系重合体は金属、他の樹脂等と積層し積層体として用いられているが、金属等との接着性に劣りこのような用途での使用には制限がなされる傾向にあった。
そこで、オレフィン系重合体における接着力を改良する方法として、オレフィン系重合体に不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト共重合化した不飽和カルボン酸又はその無水物変性オレフィン系重合体が提案され、該変性オレフィン系重合体は、単独又はオレフィン系重合体とのブレンド物として用いられてきた。
該変性オレフィン系重合体を得る方法としては、オレフィン系重合体、不飽和カルボン酸又はその無水物、ラジカル開始剤を反応溶媒中において反応させて得る溶液法、オレフィン系重合体、不飽和カルボン酸又はその無水物、ラジカル開始剤を反応溶媒を使用せずに押出機中において反応させて得る溶融混錬法、等が知られている。しかし、いずれの方法により得られる変性オレフィン系重合体も、不飽和カルボン酸又はその無水物のグラフト量が少ないと接着力が不足する、ラジカル開始剤の添加量を多くすることにより不飽和カルボン酸又はその無水物のグラフト量を増加する事は可能ではあるが、フィルム化した際にオレフィン系重合体のゲル化に起因するフィッシュアイ等が増加する、等の課題があった。そして、オレフィン系重合体をフィルム化した際のフィッシュアイ等の発生は、フィルム化後のフィルム外観を悪化させるだけでなく、積層体の金属表面等に凹凸を発生させる為、市場では更なる低減が望まれており、金属等の被着体に対する接着力向上及びフィルム外観において、市場の要求を満足し得る不飽和カルボン酸又はその無水物変性オレフィン系重合体が切望されてきた。
接着性とフィルム外観等に優れた変性オレフィン系重合体を製造する方法として、前記溶融混練法において、例えば無水マレイン酸等の官能性モノマー及びラジカル発生剤を含む溶融状態のオレフィン系重合体に抗酸化剤を添加する方法(例えば特許文献1参照。)、無水マレイン酸等のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合開始剤のいずれか一方を含む溶液状態のオレフィン系重合体に他方を供給する方法(例えば特許文献2参照。)、溶融状態のオレフィン系重合体に、溶剤に溶解させた不飽和カルボン酸及びラジカル開始剤の溶液を供給する方法(例えば特許文献3参照。)等が提案されている。
特開平07−021632号公報
特開平07−316239号公報 特許第2887747号公報
しかし、上記のいずれの方法も、接着性、フィルム外観に対しある程度の改良効果は認められるものの、まだその接着性、特に金属との接着性とフィルム外観の向上は十分に満足できるものではなかった。
本発明は被着体に対する接着力に優れると共に、フィルム外観にも優れる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討した結果、不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体と特定量の滑剤からなる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物が、被着体に対する接着力に優れると共に、フィルム化した際のフィルム外観にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体100重量部に対し、滑剤0.2〜10重量部からなることを特徴とする不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物、及び、不飽和カルボン酸又はその無水物をラジカル開始剤の存在下にエチレン系重合体とグラフト反応するに際し、ラジカル開始剤、滑剤、及びエチレン系重合体をラジカル開始剤の1分間半減期温度以下、かつ、滑剤の融点以上の範囲にて押出機に供給し、グラフト化反応を行うことを特徴とする不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体の製造方法、を要旨とするものである。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物は、カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体100重量部に対し、滑剤0.2〜10重量部からなる樹脂組成物である。
ここで、本発明に用いられる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体とは、不飽和カルボン酸単位又はその無水物単位により変性されたエチレン系重合体であり、その範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、例えば不飽和カルボン酸又はその無水物をラジカル開始剤の存在下にエチレン系重合体とグラフト反応する方法、不飽和カルボン酸又はその無水物とエチレンとを共重合する方法、等により得ることができ、その中でも、より経済的により容易に不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体が得られることから、不飽和カルボン酸又はその無水物をラジカル開始剤の存在下にエチレン系重合体とグラフト反応する方法が好ましい。そして、本発明の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物を得る際には、特により経済的により容易に得られると共に得られる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物中における不飽和カルボン酸又はその無水物によるグラフト化が均一になり、接着性とフィルム化した際のフィルム外観に特に優れる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物が得られることから、不飽和カルボン酸又はその無水物をラジカル開始剤の存在下にエチレン系重合体とグラフト反応する際に、滑剤を添加する方法とすることが好ましい。
本発明の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物を構成する不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体を誘導するエチレン系重合体としては、一般的にエチレン系重合体と称される範疇のものであれば如何なるものでもよく、例えばエチレン単独重合体、エチレンと炭素数3〜20程度のα−オレフィンからなるエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合体等があげられ、より具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体又は直鎖状高密度エチレン−α−オレフィン共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸−アクリル酸メチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体;エチレン−メタクリル酸共重合体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体;エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体等のエチレン系ゴム等が挙げられる。これらの中でもエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体が、特に接着強度に優れる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物となることから特に好ましい。
また、該エチレン系重合体としては、得られる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物が押出特性に優れたものとなることから、JIS K 6922−1に準拠して温度190℃、荷重21.18Nで測定したメルトマスフローレートが0.01〜200g/10minであることが好ましく、特に0.1〜100g/10minであることが好ましい。
本発明の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物を構成する不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体を誘導する不飽和カルボン酸又はその無水物としては、エチレン系重合体を不飽和カルボン酸又はその無水物変性する事が可能である不飽和カルボン酸又はその無水物であればよく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ(2,2,1)ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ(2,2,1)ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸又はその無水物のみならず、不飽和カルボン酸又はその無水物の誘導体(例えばハライド、アミド、イミド、エステル等)が挙げられる。該不飽和カルボン酸又はその無水物の誘導体の具体的な化合物の例としては、塩化マレニル、マレニルイミド、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ(2,2,1)ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチル、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピルなどを挙げることができる。これらの中でも、特に金属との接着強度に優れる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物となることからアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
また、不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体における不飽和カルボン酸又はその無水物による変性量は、エチレン系重合体100重量部に対して不飽和カルボン酸又はその無水物0.1〜20重量部であることが好ましく、特に金属との接着強度に優れる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物となることから0.5〜10重量部とすることが好ましい。
本発明の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物を構成する滑剤としては、通常一般的に滑剤と称される範疇のものであればよく、例えば脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸金属塩、脂肪酸、高級アルコール系、脂肪酸アマイド系、炭化水素系、エステル系が挙げられる。
そして、本発明においては特に金属との接着性に優れる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物となることから、滑剤として脂肪酸金属塩及び/又はオキシ脂肪酸金属塩が好ましく、そのような脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ベヘン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、塩基性ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、ベヘン酸マグネシウム、モンタン酸マグネシウム、塩基性ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸リチウム、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、ベヘン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸アルミニウムが挙げられる。その中でも、特にフィルム化した際にフィッシュアイの発生が極めて抑えられる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物となることから、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムが特に好ましい。
また、本発明の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物を構成する滑剤は、その取扱性に優れ、該不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物を製造する際の生産効率に優れることから、融点が30〜260℃の範囲にある滑剤が好ましく、特に80〜200℃の範囲であることが好ましい。
本発明の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物は、不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体100重量部に対し、滑剤0.2〜10重量部からなるものである。ここで、滑剤が0.2重量部より少ない場合、得られる重合体組成物をフィルム化した際のフィッシュアイの発生量が多く、フィルム外観の劣るものとなる。一方、滑剤が10重量部を越える場合、得られる重合体組成物から滑剤がブリードし、製品外観を悪化させる。
本発明の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物の製造方法は、上記したように特に制限されることはなく如何なる方法を用いてもよく、その中でも不飽和カルボン酸又はその無水物をラジカル開始剤の存在下にエチレン系重合体とグラフト反応する方法が好ましく、その中でも、特に接着性に優れ、フィルム化した際のフィッシュアイの発生を抑制した不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物を生産効率良く製造出来ることから、不飽和カルボン酸又はその無水物をラジカル開始剤の存在下にエチレン系重合体とグラフト反応するに際し、ラジカル開始剤、滑剤及びエチレン系重合体混合物をラジカル開始剤の1分間半減期温度以下、かつ、滑剤の融点以上の範囲にて押出機に供給し、グラフト化反応を行う製造方法が好ましい。
この際のラジカル開始剤としては、特に限定されるものではなく、有機過酸化物又はアゾ化合物等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、例えばジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5,−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド等を挙げることができる。また、アゾ化合物としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。これらは2種以上を併用しても良い。そして、これらの中でも有機過酸化物が好ましく、特に反応効率に優れることからジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましい。
該ラジカル開始剤の融点は、特に制限はなく、得られる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物をフィルム化した際のフィッシュアイ低減化に優れることから80〜260℃のものが好ましく、特に140℃〜200℃のものが好ましい。また、ラジカル開始剤の使用量にも制限はなく、反応効率に優れ、得られる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物をフィルム化した際のフィッシュアイ低減化に優れることからエチレン系重合体100重量部に対して0.001〜1重量部であることが好ましく、特に0.005〜0.5重量部とすることが好ましい。
また、滑剤の存在下でエチレン系重合体のグラフト化を行う際の滑剤とラジカル開始剤の割合としては、滑剤とラジカル開始剤の均一な混合が可能となり、得られる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物におけるグラフト化が均一となり、フィルム化した際のフィッシュアイ低減化に優れた効果が見られることから、滑剤/ラジカル開始剤(重量比)=99.99/0.01〜60/40とすることが好ましい。
この際の滑剤とラジカル開始剤の混合方法は、特に限定されるものではなく、例えばドライブレンド法、メルトブレンド法、溶剤中においてブレンドする方法、ラジカル開始剤を溶剤に溶解した後に滑剤とブレンドする方法等が挙げられる。
本発明の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物を溶融反応法において製造する際に、エチレン系重合体、ラジカル開始剤、滑剤、及び、不飽和カルボン酸又はその無水物の押出機等の溶融反応機に供給する方法としては、例えばエチレン系重合体、ラジカル開始剤と滑剤の混合物、及び、不飽和カルボン酸又はその無水物をドライブレンドし原料供給口から供給する方法;ラジカル開始剤/滑剤の混合物とエチレン系重合体をドライブレンドした後、原料供給口から供給し、不飽和カルボン酸又はその無水物を流体状にて他の原料供給口から供給する方法;エチレン系重合体、ラジカル開始剤と滑剤の混合物、及び、不飽和カルボン酸又はその無水物をバンバリーミキサー等の混合機にて予め混合し、溶融反応機の原料供給口から供給する方法、等が挙げられる。
また、不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物を溶融反応法において製造する際のエチレン系重合体、ラジカル開始剤、滑剤、及び、不飽和カルボン酸又はその無水物の押出機等の溶融反応機に供給する温度としては、得られる不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物におけるグラフト化が均一となり、フィルム化した際のフィッシュアイ低減化に優れた効果が見られることから、ラジカル開始剤の1分間半減期温度以下、かつ、滑剤の融点以上の範囲とすることが好ましい。
この際の溶融反応機としては、押出機等でよく、例えば単軸押出機、2軸押出機が挙げられる。
本発明の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂やゴム;光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、着色剤、無機系中和剤、塩酸吸収剤、充填剤等が用いられても良い。
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例により得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物について以下に示す方法にて、メルトマスフローレイト、無水マレイン酸付加量、フィッシュアイ量、ブリード性及び接着強度を測定した。
〜メルトマスフローレイトの測定〜
JIS K 6922−1に準拠して温度190℃、荷重21.18Nにて測定した。
〜無水マレイン酸付加量の測定〜
得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物のペレットを、ホットプレスにより厚み0.1mmのフィルムとし、赤外線吸収スペクトルによりカルボニル基による吸収を測定し、別途作成した検量線から無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物中の無水マレイン酸付加量を求めた。
〜フィッシュアイ量の測定〜
得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物5重量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、商品名UE515;MFR2.5)95重量%とを混合し、2軸押出機(東洋精機製作所製、20mmφ、L/D=25)を使用して、190℃の温度にて溶融混練を実施した。得られた溶融混練ペレットを、設定温度150℃の条件に設定したTダイス付単軸押出機(東洋精機製作所製、20mmφ、L/D=25)を用いフィルム化成形を実施し、厚さ50μmフィルムを得た。該フィルムを10cm×10cmのサイズに切り取り、目視評価にて0.2mm以上のフィッシュアイ数を確認した。
〜ブリード性の測定〜
得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物5重量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、商品名UE515;MFR2.5)95重量%とを混合し、2軸押出機(東洋精機製作所製、20mmφ、L/D=25)を使用して、190℃の温度にて溶融混練を実施した。得られた溶融混練ペレットを、設定温度150℃の条件に設定したTダイス付単軸押出機(東洋精機製作所製、20mmφ、L/D=25)を用いフィルム化成形を実施し、厚さ50μmフィルムを得た。このフィルムを23℃×50%RHの条件下に1ヶ月保管し、フィルム表面への滑剤のブリード状態を目視確認した。
〜接着強度の測定〜
得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物5重量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、商品名UE515;MFR2.5)95重量%とを混合し、反応押出と同じ2軸押出機を使用して、190℃の温度にて溶融混練を実施し溶融混合ペレットを得た。
プレス板上にポリエチレンテレフタレート製シート、厚さ0.1mmアルミ製シート、及び中央を15cm×15cm角に切り取った厚さ0.2mmのアルミ製シートをこの順におき、この切り取られた部分に上記溶融混合ペレット5gをおき、次いで厚さ0.1mmアルミ製シート、ポリエチレンテレフタレート製シート、プレス板をこの順に更に重ねた。上記プレス板ではさまれた試料を180℃のホットプレスの中に入れ約3分間の余熱後に脱気作業を実施し、180℃、3分、15MPaにて加熱圧着した。脱圧後、プレス板をプレス器から取り出し、23℃にて圧着部が保たれた別のプレス器に移し、10MPaで3分間加圧冷却を行った後、脱圧し、試料を取り出した。得られた積層体を25mm幅の短冊に切り、試料上下のアルミシートをT字剥離し、接着強度を測定した。
合成例1(エチレン−α−オレフィン共重合体の製造例)
(固体重合触媒成分の調製)
直径4mmのステンレスボール1.2kgを入れた内容積420mlのステンレス製ポットに、400℃、2時間真空乾燥した後の無水塩化マグネシウム15.0g、及び四塩化チタンを金属アルミニウムで還元して得られた三塩化チタン(TiCl・1/3AlCl)4.0gを窒素雰囲気下で封入し、振動ミルで12時間共粉砕し、三塩化チタンが担持された固体重合触媒成分を得た。
次いで、得られた固体重合触媒成分0.5gをイソパラフィンを主成分とする溶媒(出光石油化学製、商品名IP−1620)200mlに分散して固体重合触媒成分スラリーを調製した。
(エチレン−α−オレフィン共重合体の調製)
攪拌機付き縦型円筒状重合反応器に重合触媒の成分として上記により得られた固体重合触媒成分スラリー及びトリエチルアルミニウム、さらにエチレン及び1−ヘキセンを連続的に供給し、該重合反応器内の温度を180℃、圧力を80MPaに保ちながら重合反応を実施した。重合反応器内平均滞留時間50秒、エチレン/1−ヘキセン(モル比)=65/35、重合触媒として上記固体重合触媒成分を0.387g/h、トリエチルアルミニウムを1.11mmol/hで供給し、8時間重合反応を行うことにより23.8kg/hでエチレン−1−ヘキセン共重合体を得た。
該エチレン−1−ヘキセン共重合体は、メルトマスフローレート2g/10min、密度920kg/mであった。
実施例1
ラジカル開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日本油脂社製、商品名パーヘキシン25B;1分間半減期温度195℃)0.6gをn−ヘキサン5gに溶解した後、この溶液に滑剤としてステアリン酸亜鉛(日東化成工業社製、商品名Zn−St;融点120℃)19.4gを混合し12時間乾燥し、ラジカル開始剤/滑剤のブレンドパウダーを得た。
合成例1により得られたエチレン−1−ヘキセン共重合体100重量部に対し、上記のラジカル開始剤/滑剤のブレンドパウダー0.2505重量部(2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3;0.0075重量部、ステアリン酸亜鉛;0.243重量部に相当。)及び無水マレイン酸(日本油脂社製、商品名CRYSTALMAN AB)1重量部をヘンシェルミキサーにより混合し、該混合物を異方向2軸押出機((株)東洋精機製作所製、商品名ラボプラストミル30C150;スクリュー径20mm、L/D=25)を用い、供給部温度160℃、反応温度220℃、平均滞留時間3分の条件にて反応押出を実施し、無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物を得た。
得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物について、メルトマスフローレイト、無水マレイン酸付加量、フィッシュアイ量、ブリード性及び接着強度を測定し、その結果を表1に示す。
実施例2
ラジカル開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日本油脂社製、商品名パーヘキシン25B;1分間半減期温度195℃)0.0075重量部相当の代わりに2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日本油脂社製、商品名パーヘキシン25B;1分間半減期温度195℃)0.0125重量部相当とし、滑剤としてステアリン酸亜鉛(日東化成工業社製、商品名Zn−St;融点120℃)0.243重量部相当の代わりにステアリン酸亜鉛(日東化成工業社製、商品名Zn−St;融点120℃)0.486重量部相当とした以外は、実施例1と同様にして無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物を得た。
得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物について、メルトマスフローレイト、無水マレイン酸付加量、フィッシュアイ量、ブリード性及び接着強度を測定し、その結果を表1に示す。
実施例3
ラジカル開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日本油脂社製、商品名パーヘキシン25B;1分間半減期温度195℃)の代わりに1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂社製、商品名パーブチルP;1分間半減期温度175℃)、滑剤としてステアリン酸亜鉛(日東化成工業社製、商品名Zn−St;融点120℃)の代わりにステアリン酸カルシウム(日本油脂社製;商品名カルシウムステアレートS;融点150℃)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物を得た。
得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物について、メルトマスフローレイト、無水マレイン酸付加量、フィッシュアイ量、ブリード性及び接着強度を測定し、その結果を表1に示す。
実施例4
無水マレイン酸(日本油脂社製、商品名CRYSTALMAN AB)1重量部の代わりに無水マレイン酸(日本油脂社製、商品名CRYSTALMAN AB)2重量部を用いたこと以外は、実施例3と同様にして無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物を得た。
得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物について、メルトマスフローレイト、無水マレイン酸付加量、フィッシュアイ量、ブリード性及び接着強度を測定し、その結果を表1に示す。
比較例1
滑剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂社製;商品名カルシウムステアレートS;融点150℃)を用いなかった以外は、実施例3と同様にして無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物を得た。
得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物について、メルトマスフローレイト、無水マレイン酸付加量、フィッシュアイ量、ブリード性及び接着強度を測定し、その結果を表1に示す。
無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物より得られたフィルムは、フィッシュアイの多いものであった。
比較例2
滑剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂社製;商品名カルシウムステアレートS;融点150℃)0.486重量部相当の代わりにステアリン酸カルシウム(日本油脂社製;商品名カルシウムステアレートS;融点150℃)0.139重量部相当とした以外は、実施例3と同様にして無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物を得た。
得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物について、メルトマスフローレイト、無水マレイン酸付加量、フィッシュアイ量、ブリード性及び接着強度を測定し、その結果を表1に示す。
無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物より得られたフィルムは、フィッシュアイの多いものであった。
比較例3
滑剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂社製;商品名カルシウムステアレートS;融点150℃)0.486重量部相当の代わりにステアリン酸カルシウム(日本油脂社製;商品名カルシウムステアレートS;融点150℃)13.9重量部相当とした以外は、実施例3と同様にして無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物を得た。
得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物について、メルトマスフローレイト、無水マレイン酸付加量、フィッシュアイ量、ブリード性及び接着強度を測定し、その結果を表1に示す。
得られた無水マレイン酸変性エチレン系重合体組成物はブリード性に劣り、接着強度も低いものであった。
Figure 2005112940

Claims (6)

  1. 不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体100重量部に対し、滑剤0.2〜10重量部からなることを特徴とする不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物。
  2. 滑剤が、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸金属塩、脂肪酸、高級アルコール系、脂肪酸アマイド系、炭化水素系、エステル系からなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物。
  3. 滑剤が、脂肪酸金属塩及び/又はオキシ脂肪酸金属塩であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物。
  4. 滑剤が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物。
  5. 不飽和カルボン酸又はその無水物をラジカル開始剤の存在下にエチレン系重合体とグラフト反応するに際し、ラジカル開始剤、滑剤及びエチレン系重合体をラジカル開始剤の1分間半減期温度以下、かつ、滑剤の融点以上の範囲にて押出機に供給し、グラフト化反応を行うことを特徴とする不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物の製造方法。
  6. 滑剤/ラジカル開始剤(重量比)=99.99/0.01〜60/40の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載の不飽和カルボン酸又はその無水物変性エチレン系重合体組成物の製造方法。
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