JP2005095980A - 鋼板の打ち抜き用工具およびそれを用いた打ち抜き方法 - Google Patents
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Abstract
鋼板の打ち抜き穴での穴広げ性を簡便、容易に改善する技術を提供する。
【解決手段】
ポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に、凸状の形状を有する曲げ刃を有し、かつ、曲げ刃肩部の曲率半径が0.2mm以上であり、かつ/または曲げ刃肩部角度が100度以上170度以下であることを特徴とする打ち抜き用工具を用いる。
【選択図】 図9
Description
しかし、当該技術による打ち抜き用工具の凸上の突起の形状は、穴広げ性を大きく改善するために好ましいものではない。図3に当該技術を説明する公報で示されるポンチの形状を示すが、その先端部の凸状の突起は、その先端部の肩部が約90度である。この場合、特に高強度鋼板を打ち抜く場合、図4に示すように、突起自体により容易に鋼板が切断されるため、本来切断される部分へ十分な曲げ応力を与えることができない。このため、当該技術では、穴広げ性は大きくは改善しない。
中川威雄、吉田清太:削り抜き法−せん断面の伸び変形能向上策−、塑性と加工、Vol.10,No.10,No.104,P.665〜671(1696.9)
発明1は、 被加工材となる鋼板を少なくともダイおよびポンチを用いて剪断部および被剪断部に切断することにより被加工材を所定形状とするための打ち抜き用工具において、ポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に、凸状の形状を有する曲げ刃を有し、かつ、曲げ刃肩部の曲率半径が0.2mm以上であることを特徴とする打ち抜き用工具である。
発明2は、被加工材となる鋼板を少なくともダイおよびポンチを用いて剪断部および被剪断部に切断することにより被加工材を所定形状とするための打ち抜き用工具において、ポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に、凸状の形状を有する曲げ刃を有し、かつ、曲げ刃肩部角度が100度以上170度以下であることを特徴とする打ち抜き用工具である。
発明3は、被加工材となる鋼板を少なくともダイおよびポンチを用いて剪断部および被剪断部に切断することにより被加工材を所定形状とするための打ち抜き用工具において、ポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に、凸状の形状を有する曲げ刃を有し、かつ、曲げ刃肩部の曲率半径が0.2mm以上であり、かつ曲げ刃肩部角度が100度以上170度以下であることを特徴とする打ち抜き用工具である。
発明5は、被加工材となる鋼板を少なくともダイおよびポンチを用いて剪断部および被剪断部に切断することにより被加工材を所定形状とする打ち抜き用工程において、ポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に、凸状の形状を有する曲げ刃を有し、かつ、曲げ刃肩部角度が100度以上170度以下である打ち抜き用工具を用いることを特徴とする鋼板打ち抜き方法である。
発明6は、被加工材となる鋼板を少なくともダイおよびポンチを用いて剪断部および被剪断部に切断することにより被加工材を所定形状とする打ち抜き用工具において、ポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に、凸状の形状を有する曲げ刃を有し、かつ、曲げ刃肩部の曲率半径が0.2mm以上であり、かつ曲げ刃肩部角度が100度以上170度以下であることを特徴とする打ち抜き用工具を用いることを特徴とする鋼板打ち抜き方法である。
この理由については次のように考えられる。
通常のうち抜きでは、図1に示される、ポンチとダイによる変形が加わる部分(硬化層)に大きな引張りまたは圧縮の歪が加わり、このため、そこが著しく加工硬化するため、端面の延性が劣化し穴広げ性は劣化する。しかし、ポンチ形状を本発明(図5)に示すような切刃Bおよび曲げ刃Aからなる二段構造として、図6のように切刃Bで切断される部分(材料切断部M)に曲げ刃Aにより引張応力を与えた場合は、切刃Bおよびダイ肩より発生した亀裂の進展が引張応力により促進され、材料が圧縮されることなく切刃Bにより切断されるため、穴拡げ性は改善する。
即ち、曲げ刃Aの形状が所定形状でない場合、曲げ刃Aにより材料が切断されるため、切り刃Bで切断される部分Mに十分な曲げによる引張応力を与えることができず、良好な穴拡げ性は得られない。しかし、曲げ刃形状を、曲げ刃自体による材料の切断が行われない形状とすることにより良好な穴拡げ性を得ることができることを知見した。
この場合は、曲げ刃高さHpを高くしても穴広げ値は大きくは改善しない。これは、この場合、図4のように曲げ刃自体による鋼板の切断が行われるため、本来切断される部分へ十分な曲げ応力を与えることができないためである。
図8に、同じ材料を用い、曲げ刃の高さHpを0.3〜3mmとして、曲げ刃Aの肩部に所定の曲率半径Rpを付けた場合の曲率半径Rpと穴広げ率の関係、図9に曲げ刃Aの縦壁部に所定の角度θpを付けた場合の角度θpと穴広げ率の関係を示すが、これより、曲げ刃肩曲率半径Rpを0.2mm以上とする、または、曲げ刃縦壁部角度θpを100度以上170度以下とすることにより著しく穴広げ率が改善することが分かる。
本発明に用いる打ち抜きポンチまたはダイは、曲げ刃部Aおよび切刃部Bの二段構造とする必要がある。これは、切刃Bにて被加工材を剪断する前に曲げ刃Aにて被加工材の切断部Mに引張応力を与え、切断後の被加工材の切断端面の歪を低減するためである。
曲げ肩曲率半径Rpは、0.2mm以上とする必要がある。これは、曲げ肩曲率半径Rpが0.2mm以下であると被加工材が曲げ刃Aにより剪断され、切刃Bにより剪断される部分Mに十分な引張応力を与えることができないためである。
曲げ刃肩角度θpを100度以上、170度以下とする必要がある。これは、曲げ刃肩角度θpが100度以下であると、曲げ刃Aにより材料が剪断されるため切刃Bにより剪断される部分Mに十分な引張応力を与えることができず、また、曲げ刃肩角度θpが170度以上であると、切刃Bにより剪断される部分に十分な引張応力を与えることができないためである。
本技術による打ち抜きでは端面延性に対する打ち抜きクリアランス(図5中の間隔C/板厚t×100(%))の影響は従来技術と比べて同じであり、従来の打ち抜き方法と比べて特段の注意を払う必要はない。
ポンチ速度も打ち抜き穴拡げ性には大きな影響は与えないのでいかなる値でも良い。
多くの場合、打ち抜き工程では金型の磨耗を抑制するため、金型または材料に潤滑油が塗布されるが、本発明においても、そのために適宜潤滑油を用いてもよい。
また、曲げ刃Aにより十分な引張応力を与えるためには、曲げ刃高さHpは、被加工材の板厚の10%以上とすることが好ましい。
また、切刃端部Pと曲げ刃の立ち上がり位置Qの間隔Dpは0.1mm以上とすることが好ましい。これは、この間隔がこれ以下の場合、切刃Bによる被加工材の剪断の際、通常切刃肩部近傍より発生する亀裂が発生しにくくなり切刃による切断位置に歪が加わるためである。
また、本発明のポンチにおいて、切刃端部Pと曲げ刃の立ち上がり位置Qの間の部分や曲げ刃Aの底面部分や曲げ刃Aの縦壁部分は、ポンチの製作上平坦形状が好ましいが、若干の凹凸があっても上述の要件を満たしていれば効果は同じである。
本発明において、曲げ刃肩部曲率半径Rpに特に上限はないが、ポンチのサイズによっては曲率半径Rpが大きすぎると曲げ刃高さHpを大きくすることが困難となるので、5mm以下が好ましい。
穴拡げ試験は、頂角60度円錐ポンチを用い、「バリ外」の条件、即ち打ち抜き時にダイに接していた鋼板の表面が穴拡げ試験時にポンチの反対側となるよう試験片をセットし、行った。ポンチを打ち抜き穴に押し込み、打ち抜き端面上に割れが貫通するまでポンチを移動し、その時点での穴径Dを測定し、下式より穴拡げ値を求めた。
穴拡げ値(%)=(D(mm)−D0(mm))/D0(mm)×100 (%)
但し、初期穴径D0=10〜50mm(表2記載「ポンチ径Ap」)。
水準(1)、(11)、(19)、(38)、(39)については、表2中に示される材料および条件で2000回の打ち抜きを行い、その後に、ポンチ切り刃端部、およびポンチ曲げ刃肩部の磨耗状況を調べた。磨耗状況は、図11に示すように、試験後のポンチを、ポンチの中心軸を含む断面が分かるように加工・埋め込み・研磨し、その断面の形状と磨耗前の推定の形状とを比較し、図11中に示される、ポンチ切り刃端部磨耗量F1(mm)、ポンチ曲げ刃肩部の磨耗量F2(mm)を求めた。
試験により得られた穴拡げ値を表2に示している。打ち抜き・穴拡げ試験共にn=5での試験を行った。穴拡げ値はその平均値を表している。
水準(7)〜(37)は本発明による打ち抜きによる試験結果であり、従来法と比べ良好な穴広げ値が得られている。
水準(3)、(4)は、曲げ刃肩部の角度θpが大きく、かつ曲げ刃肩曲率半径Rpが小さい。このため、このため、この打ち抜きにより得られる穴拡げ値は従来法と比べ改善されていない。
水準(5)、(6)は、曲げ刃肩部θpの角度が小さく、かつ曲げ刃肩曲率半径Rpが小さい。このため、この打ち抜きにより得られる穴拡げ値は従来法と比べ改善されていない。
水準(1)、(19)、(39)のポンチ切り刃端部磨耗量F1(mm)を比較した場合、曲げ刃高さが高いほど切り刃端部の磨耗量F1が小さく磨耗が抑制されていることが分かる。
以上から、より高い曲げ刃を付けることにより切り刃端部磨耗が抑制され、また、曲げ刃肩の曲率半径Rpと曲げ刃肩の角度θpの両方を同時に所定条件とすることにより、曲げ刃肩部の磨耗が抑制されることが確認された。
穴拡げ試験は、頂角60度円錐ポンチを用い、「バリ外」の条件、即ち打ち抜き時にダイに接していた鋼板の表面が穴拡げ試験時にポンチの反対側となるよう試験片をセットし、行った。ポンチを打ち抜き穴に押し込み、打ち抜き端面上に割れが貫通するまでポンチを移動し、その時点での穴径Dを測定し、下式より穴拡げ値を求めた。
穴拡げ値(%)=(D(mm)−D0(mm))/D0(mm)×100 (%)
但し、初期穴径D0=20mm(表3記載「ポンチ径Ap」)。
試験結果を表3に示す。
水準(1)は、ポンチ・ダイ共に従来の形状の場合の供試鋼の穴拡げ値を示しているが、その場合は穴拡げ率は40%と低い値である。
水準(2)は、ポンチが通常のポンチであり、かつダイの突起の肩部角度θd、肩部曲率半径Rdが所定の条件を満たしていない。即ち、ポンチ、ダイ共に所定条件を満たしておらず、穴拡げ値は改善されていない。
水準(9)は、ポンチの突起の肩部角度θp、肩部曲率半径Rp、ダイの突起の肩部角度θd、肩部曲率半径Rdが所定の条件を満たいない。即ち、ポンチ、ダイ共に所定条件を満たしておらず、穴拡げ値は改善されていない。
水準(3)〜(8)、および(10)〜(15)は、ダイ形状が所定形状となっているか、もしくは、ポンチ形状、ダイ形状共に所定形状となっており、本発明の効果が得られ、比較例の水準(1)、(2)、(9)と比べ良好な穴拡げ値が得られている。
Claims (6)
- 被加工材となる鋼板を少なくともダイおよびポンチを用いて剪断部および被剪断部に切断することにより被加工材を所定形状とするための打ち抜き用工具において、ポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に、凸状の形状を有する曲げ刃を有し、かつ、曲げ刃肩部の曲率半径が0.2mm以上であることを特徴とする打ち抜き用工具。
- 被加工材となる鋼板を少なくともダイおよびポンチを用いて剪断部および被剪断部に切断することにより被加工材を所定形状とするための打ち抜き用工具において、ポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に、凸状の形状を有する曲げ刃を有し、かつ、曲げ刃肩部角度が100度以上170度以下であることを特徴とする打ち抜き用工具。
- 被加工材となる鋼板を少なくともダイおよびポンチを用いて剪断部および被剪断部に切断することにより被加工材を所定形状とするための打ち抜き用工具において、ポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に、凸状の形状を有する曲げ刃を有し、かつ、曲げ刃肩部の曲率半径が0.2mm以上であり、かつ曲げ刃肩部角度が100度以上170度以下であることを特徴とする打ち抜き用工具。
- 被加工材となる鋼板を少なくともダイおよびポンチを用いて剪断部および被剪断部に切断することにより被加工材を所定形状とする打ち抜き用工程において、ポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に、凸状の形状を有する曲げ刃を有し、かつ、曲げ刃肩部の曲率半径が0.2mm以上である打ち抜き用工具を用いることを特徴とする打ち抜き方法。
- 被加工材となる鋼板を少なくともダイおよびポンチを用いて剪断部および被剪断部に切断することにより被加工材を所定形状とする打ち抜き用工程において、ポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に、凸状の形状を有する曲げ刃を有し、かつ、曲げ刃肩部角度が100度以上170度以下である打ち抜き用工具を用いることを特徴とする鋼板打ち抜き方法。
- 被加工材となる鋼板を少なくともダイおよびポンチを用いて剪断部および被剪断部に切断することにより被加工材を所定形状とする打ち抜き用工具において、ポンチかつ/またはダイの切刃部の先端部に、凸状の形状を有する曲げ刃を有し、かつ、曲げ刃肩部の曲率半径が0.2mm以上であり、かつ曲げ刃肩部角度が100度以上170度以下であることを特徴とする打ち抜き用工具を用いることを特徴とする鋼板打ち抜き方法。
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