JP2005091274A - ガス濃度測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明はガス濃度測定装置に関し、断線による故障を空燃比の状態によることなく正確に検出することができ、しかも故障検出後は短い時間で通常のガス濃度測定に復帰できるようにする。
【解決手段】 固体電解質体と固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とからなり、一方の電極を被測定ガス室に面して配置され、電圧印加を受けた場合に被測定ガス室から酸素を排出しながらその排出量に応じた電流を流通させる第1セルについては、第1セルへの印加電圧を基準電圧から一時的に乖離させて再び基準電圧に戻し、そのとき第1セルが流通させる電流の変化に基づいて断線による故障を検出する。被測定ガス室内の酸素濃度に応じた信号を出力する第2セルについては、第1セルへの印加電圧を基準電圧から一時的に乖離させて再び基準電圧に戻したとき第2セルが出力する信号の変化に基づいて断線による故障を検出する。
【選択図】 図7

Description

本発明はガス濃度測定装置に関し、特に、ガス濃度測定装置の故障を検出する故障検出技術に関する。
従来、例えば特許文献1には、排気ガス中に含まれるNOx濃度を検出するNOx濃度センサが開示されている。このNOx濃度センサは、被測定ガス室の上流側にポンプセルが配置され、被測定ガス室の下流側にセンサセルが配置された構成になっている。ポンプセル、センサセルはともに、固体電解質体と固体電解質体の表面に設けられた一対の電極からなる。ポンプセルは、電極間に所定の電圧を印加されることにより被測定ガス室から酸素を排出(ポンピング)し、その排出量に応じた電流を流通させる。センサセルは、被測定ガス室に存在するNOxを窒素と酸素に分解し、さらに、電極間に所定の電圧を印加されることにより被測定ガス室中の酸素を排出し、その排出量に応じた電流を流通させる。
上記NOx濃度センサによれば、被測定ガス室に流入した排気ガスから、先ず、ポンプセルによってガス中に残存する酸素が除去される。酸素の除去された排気ガスがセンサセルに到達すると、ここでは、排気ガス中のNOxが窒素と酸素に分解される。そして、センサセルは、その結果生じた酸素の量、すなわち、排気ガス中のNOxの量に応じた電流を発生させる。このため、上記NOx濃度センサによれば、センサセルを流通する電流の値に基づいて、排気ガス中のNOx濃度を測定することができる。
ところで、今日、NOx濃度センサはその検出情報に基づき内燃機関を制御する上でも、内燃機関から排出されるエミッションを保証する上でも重要なセンサとなっている。このため、NOx濃度センサは常に適正に機能している必要があり、万が一、NOx濃度センサに何らかの故障が生じている場合には、その故障を正確に検出することが求められる。特に断線はセンサにおける基本的な故障であるため、早期の検出が求められる。
特開2000−214130号公報 特公平7−69288号公報 特許第2505152号公報
NOx濃度センサの故障検出方法としては、例えば、ポンプセルについては、空燃比が既知の所定の運転状態(正常時は必ず出力が出る状態)において、そのときの電流を計測して判定値と比較することが考えられる。しかしながら、車両の運転中に上記の所定の運転状態になっているか否かを判別することは難しく、判別できたとしても所定の運転状態にならない限りは故障検出を行うことができない。
また、一般的なセンサの故障検出方法として、出力電流がゼロに張付いている場合にはセンサが断線していると判定する方法がある。しかしながら、NOx濃度センサにおいては、ポンプセル、センサセルの何れについても、出力電流がゼロとなることは制御上あり得る。例えば、空燃比がストイキの場合には、ポンプセルの出力電流(ポンプセル電流)はゼロになる。さらに、断線している場合でも、周囲から拾うノイズ等によって見かけの出力電流は完全にはゼロには張付かない。このため、特にセンサセルについては、適正に機能している場合でもその出力電流(センサセル電流)は数百nAという極めて低電流であることから、出力電流がゼロに張付いているか否かによって断線を検出するのは難しい。
NOx濃度センサ以外のセンサに適用される故障検出方法をNOx濃度センサに適用することも考えられる。例えば、O2センサに関しては、特許文献2に開示されたような故障検出方法が知られており、空燃比センサに関しては、特許文献3に開示されたような故障検出方法が知られている。特許文献2に開示された故障検出方法では、センサの一端の電圧を上昇させ、その時に流れる直流電流の変化を見て断線検出を行っている。特許文献3に開示された故障検出方法では、排気ガスの空燃比が定常状態のときに、エアポンプによってセンサーハウジング内に大気を供給することによってポンプセル電流を強制的に変化させるようにしている。そして、そのときの実際のポンプセル電流の検出値からポンプセルの故障を判定し、センシングセルの出力電圧変化の検出値からセンシングセルの故障を判定している。
しかしながら、特許文献2に開示された故障検出方法は、NOx濃度センサのようなポンプセルを用いたセンサには適用することは難しい。ポンプセルが示す電圧−電流特性には電圧に対して電流が略一定となる限界電流域が存在しており、ポンプセルは、ポンプセル電流が限界電流域に入るように印加電圧を制御されている。このため、特許文献2に開示された方法のように一端の電圧を上昇させたとしてもポンプセル電流は殆ど変化しない。逆にポンプセル電流が電圧に応じて上昇したときには、ポンプセル電流は限界電流を超えたことになり、この場合には固体電解質体内の酸素分子がポンピングされることによるブラックニングが発生し、ポンプセルが劣化してしまう虞がある。
一方、特許文献3に開示された方法は、NOx濃度センサと同じくポンプセルを用いた空燃比センサに適用されるものである。しかしながら、特許文献3に開示された方法には、以下のような不都合がある。特許文献3に開示された方法では、外部から大気を供給してポンプセル電流(限界電流)を強制的に変化させ、そのときのポンプセル等の出力値が所定範囲に入ることを故障の判定条件としている。このため、故障判定の前提として空燃比は定常状態になっている必要があり、故障判定の機会は制限される。内燃機関の運転状態によっては、空燃比が長期にわたって安定しないこともありえるので、センサの故障判定は空燃比の状態によらず実施できることが望ましい。また、特許文献3に開示された方法では、故障判定後は、センサーハウジングから大気が抜けて内部の空燃比が元の空燃比に戻るまでは通常の制御状態に復帰することができない。NOx濃度センサや空燃比センサの検出情報は内燃機関を制御する上で重要な情報であるので、故障検出に伴うセンサのガス濃度測定機能の停止期間は最小限に抑えたい。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、断線による故障を空燃比の状態によることなく正確に検出することができ、しかも故障検出後は短い時間で通常のガス濃度測定に復帰できるようにしたガス濃度測定装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、ガス濃度測定装置であって、
固体電解質体と前記固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とからなり、一方の電極を被測定ガス室に面して配置され、電圧印加を受けた場合に前記被測定ガス室から酸素を排出しながらその排出量に応じた電流を流通させるセルと、
前記セルに電圧を印加する電源と、
前記セルへの印加電圧を変化させる電圧可変手段と、
前記セルが流通させる電流を計測する電流計測手段と、
前記セルへの印加電圧を基準電圧から一時的に乖離させ再び前記基準電圧に戻したときの前記セルが流通させる電流の変化に基づいて前記セルの故障を検出する故障検出手段とを備えることを特徴としている。
第2の発明は、上記の目的を達成するため、ガス濃度測定装置であって、
固体電解質体と前記固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とからなり、一方の電極を被測定ガス室に面して配置され、電圧印加を受けた場合に前記被測定ガス室から酸素を排出しながらその排出量に応じた電流を流通させる第1セルと、
前記被測定ガス室内の酸素濃度に応じた信号を出力する第2セルと、
前記第1セルに電圧を印加する電源と、
前記第1セルへの印加電圧を変化させる電圧可変手段と、
前記第2セルが出力する信号を計測する第2セル出力信号計測手段と、
前記第1セルへの印加電圧を基準電圧から一時的に乖離させ再び前記基準電圧に戻したときの前記第2セルが出力する信号の変化に基づいて前記第2セルの故障を検出する第2セル故障検出手段とを備えることを特徴としている。
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記第1セルが流通させる電流を計測する第1セル電流計測手段と、
前記第1セルへの印加電圧を前記基準電圧から一時的に乖離させ再び前記基準電圧に戻したときの前記第1セルが流通させる電流の変化に基づいて前記第1セルの故障を検出する第1セル故障検出手段とをさらに備えることを特徴としている。
第1の発明において、セルが流通させる電流は、印加電圧の単なる上昇或いは下降に対しては通常の電圧−電流特性に従い限界電流から大きく変化しないのに対し、印加電圧を波状に変化させたとき、すなわち、印加電圧を基準電圧から一時的に乖離させ再び前記基準電圧に戻したときには、通常の電圧−電流特性から外れて印加電圧の変化に応答して波状に変化する特性を示す。したがって、第1の発明によれば、限界電流域を超えて電圧を上昇させずともセルが流通させる電流を変化させることができ、この電流変化に基づいてセルの故障を検出することができる。そして、印加電圧の変化に伴う電流の変化に基づいてセルの故障を検出することにより、空燃比の影響を受けることのない正確な故障検出が可能になる。さらに、セルが流通させる電流の変化に伴い被測定ガス室内の酸素濃度は変化するものの、その変化は外部から大気を供給する場合に比較して極めて微小であるので、故障判定の終了後は、短い時間で通常のガス濃度測定に復帰することができる。
また、第2の発明において、第1セルが流通させる電流は、印加電圧の単なる上昇或いは下降に対しては通常の電圧−電流特性に従い限界電流から大きく変化しないのに対し、印加電圧を波状に変化させたとき、すなわち、印加電圧を基準電圧から一時的に乖離させ再び前記基準電圧に戻したときには、通常の電圧−電流特性から外れて印加電圧の変化に応答して波状に変化する特性を示す。したがって、第2の発明によれば、限界電流域を超えて電圧を上昇させずとも第1セルが流通させる電流を変化させることができ、その電流変化に応じて被測定ガス室内の酸素濃度を変化させ、さらに酸素濃度の変化に応じて第2セルの出力信号を変化させることができ、この出力信号の変化に基づいて第2セルの故障を検出することができる。このように第1セルへの印加電圧の変化に伴う第2セルの出力信号の変化に基づいて第2セルの故障を検出することにより、空燃比の影響を受けることのない正確な故障検出が可能になる。さらに、第1セルが流通させる電流の変化に伴い被測定ガス室内の酸素濃度は変化するものの、その変化は外部から大気を供給する場合に比較して極めて微小であるので、故障判定の終了後は、短い時間で通常のガス濃度測定に復帰することができる。
さらに、第3の発明によれば、第2セルに加えて第1セルの故障も検出することができる。第1セルへの印加電圧を基準電圧から一時的に乖離させ再び前記基準電圧に戻したとき、第2セルが断線している場合だけでなく第1セルが断線している場合にも第2セルの出力信号は変化しないが、本発明のように第1セルの故障検出と第2セルの故障検出を併せて行うことで、何れのセルが故障しているか正確に判定することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態としてのガス濃度測定装置の構成を説明するための図である。図1に示すガス濃度測定装置10は、内燃機関の排気通路に配置され、内燃機関から排出される排気ガス中のNOx濃度を測定するための装置である。ガス濃度測定装置10は、固体電解質体であるジルコニア層12,14および絶縁層16を備えている。2つのジルコニア層12および14の間には、被測定ガス室18が設けられている。また、ジルコニア層12および14に隣接する位置には、それらの層により被測定ガス室18から隔絶された大気室20,22が形成されている。
ガス濃度測定装置10には、被測定ガス室18に通じる拡散孔24が設けられている。拡散孔24は、処理対象のガス、すなわち排気ガスを導くための通路であり、拡散抵抗層26を介して内燃機関の排気通路に連通している。拡散抵抗層26は、排気通路内の排気ガスが拡散する速度を律するための多孔質物質である。上記の構成によれば、排気通路内の排気ガスは、拡散孔24および拡散抵抗層26により律せられた速度で被測定ガス室18の内部に拡散する。
拡散孔24から流入した排気ガスは、所定の流通経路に沿って被測定ガス室18の内部を進行する。この流通経路には、第1セルとしてのポンプセル28が設けられている。ポンプセル28は、ジルコニア層12と、その両側に配置されたポンプ電極30および大気電極32とで構成されている。ポンプ電極30は、Pt−Au合金で構成された電極であり、被測定ガス室18に露出するように設けられている。また、大気電極32は、Ptで構成された電極であり、大気室20に露出するように設けられている。
ポンプセル28の下流には、第2セルとしてのセンサセル34が設けられている。センサセル34は、ジルコニア層14と、その両側に配置されたセンサ電極36および大気電極38とで構成されている。センサ電極36は、Pt−Rh合金で構成された電極であり被測定ガス室18に露出するように設けられている。一方、大気電極38は、Ptで構成された電極であり大気室22に露出するように設けられている。
ポンプセル28は、そのポンプ電極30が所定の活性温度に達すると、排気ガス中の酸素をイオン化したり、排気ガス中のNOをNOに分解したりする特性を発揮する。センサセル34は、そのセンサ電極36が所定の活性温度に達すると、排気ガス中のNOを窒素と酸素イオンとに分解する特性を発揮する。ガス濃度測定装置10は、それらの電極を活性温度に昇温させるために、絶縁層16の内部にヒータ40を備えている。
本実施形態のガス濃度測定装置10は、ECU(Electronic Control Unit)50を備えている。ECU50は、ポンプセル28の駆動回路52を備えている。この駆動回路52には、ポンプ電極30と大気電極32との間に大気電極32からポンプ電極30へ向かう電圧を印加するための可変電源54、およびそれらの電極間を流れる電流を計測するための電流計(第1セル電流計測手段)56が含まれている。
ECU50は、更に、センサセル34の駆動回路58を備えている。この駆動回路58には、センサ電極36と大気電極38との間に、大気電極38からセンサ電極36へ向かう電圧を印加するための電源60、およびそれらの電極間を流れる電流を検出するための電流計(第2セル出力信号計測手段)62が含まれている。
本実施形態のECU50は、その制御モードとして、ガス濃度測定モードと断線検出モードとを有している。ガス濃度測定モードは、ガス濃度測定装置10の本来の機能である排気ガス中のNOx濃度を測定するための制御モードであり、これが基本の制御モードになっている。一方、断線検出モードは断線によるガス濃度測定装置10の故障を検出するための制御モードであり、所定の間隔で定期的に実施される。
まず、ガス濃度測定モードにおける制御内容について図2を用いて説明する。図2はポンプセル28の大気電極32とポンプ電極30との間に印加される電圧と、ポンプセル28を流通する電流(以下、「ポンプセル電流」と称す)との関係を、排気ガスの空燃比をパラメータとして表した図である。図2において、A/F16、またはA/F18の符号と共に描かれている曲線は、それぞれ、排気空燃比(A/F)が16、または18である場合の電圧−電流特性を示す。また、図2中にAirの記号と共に描かれている曲線は、被測定ガスが純粋な空気である場合の電圧−電流特性を示す。
ポンプセル電極30は、上述した活性温度に加熱されると、被測定ガス室18内のNOをNOと酸素とに分解する特性を示す。このため、ポンプ電極30が活性温度に達した状態では、ポンプ電極30の周辺に排気ガス中に元来含まれていた酸素と、NOの分解に伴って生じた酸素とが必然的に存在することになる。ポンプセル28は、可変電源52により電圧が印加されると、被測定ガス室18の内部に存在する酸素をポンピングして大気室20に排出する特性を示す。この際、ポンプセル28には、排出される酸素の量に応じた電流が流通する。
図2中の各曲線は、それぞれ、ポンプセル電流は、印加電圧の増加に対してある収束値を有することを示している。この収束値は、排気ガス中に存在する殆ど全ての酸素がイオン化して排出される際の電流値に相当している。従って、ポンプセル28に効率的に排気ガス中の酸素を除去させるためには、排気ガスの空燃比に応じて、ポンプセル電流が収束値に至るような電圧を適切に大気電極32に印加することが必要である。以下、このポンプセル電流の収束値を限界電流と称す。
また、図2中にNO分解領域として示した領域は、排気ガスに含まれるNO2のみならずNOまでもが窒素と酸素に分解されてしまう領域を示している。センサセル34がNOx濃度に応じた電流を流通させるためには、ポンプセル28がNO2だけを分解し、NOはそのままの状態でセンサセル34に到達することが必要である。従って、ポンプセル28の大気電極32に印加する電圧は、NO分解領域より低い電圧でなければならない。
つまり、ガス濃度測定装置10によって精度良くNOx濃度を測定するためには、ポンプセル28の大気電極32に印加する電圧を、排気ガスの空燃比に応じて、ポンプセル電流を限界電流に収束させることができ、かつ、NO分解領域に至らない適切な値に制御することが必要である。ガス濃度測定モードでは、ECU50は、上記の要求を満たすように大気電極32に印加する電圧を制御している。ガス濃度測定モードにおける具体的な印加電圧の制御方法としては、例えば次の2つの方法を挙げることができる。一つは、全ての空燃比で上記要求を略満たすことができる印加電圧を求め、その印加電圧をガス濃度測定モードでの印加電圧として固定して用いる方法である。もう一つは、図2中に制御中心として示すように上記要求を満たす空燃比毎の印加電圧の集合を求め、ガス濃度測定モードではこの制御中心直線に従い空燃比に応じて印加電圧を制御する方法である。なお、ポンプセル28には被測定ガス室18内の酸素濃度に応じたポンプセル電流が流れていることから、空燃比はポンプセル電流に基づいて検出することができる。
次に、本実施形態のガス濃度測定装置10の特徴部分である断線検出モードについて、図3(A)〜図7を用いて説明する。図3(A)は断線検出モードにおいて可変電源54からポンプセル28の大気電極32に印加される電圧の印加特性について示した図である。図3(A)に示すように、断線検出モードでは、大気電極32への印加電圧は基準電圧を中心にして上下に所定の振幅で掃引される。これは、基準電圧に所定の振幅で周期的に変化する交流成分を上乗せすることにより実現されている。基準電圧とは、上述のガス濃度測定モードにおいて設定される印加電圧を意味している。
図3(A)に示すように印加電圧を交流的に変化させる理由は、図4を用いて説明することができる。図4はポンプセル28やセンサセル34の等価回路を示す図である。ここでは、ポンプセル28の等価回路を示しているものとする。図4に示すようにポンプセル28は、その電解質部(ジルコニア層12)を示す回路と電極部(ポンプ電極30および大気電極32)を示す回路とが直列に接続された回路で表すことができる。電解質部は素子C2と素子R2の並列回路に素子R1が直列に接続された回路で表すことができる。素子R1は固体電解質体の粒子(バルク)の抵抗成分、素子R2は固体電解質体の粒界の抵抗成分、そして素子C2は粒界の容量成分である。電極部は素子C3と素子Zwの直列回路に素子R3が並列に接続された回路で表すことができる。素子R3は電極界面の抵抗成分、素子C3は電極界面の容量成分、そして素子Zwは交流成分の印加による分極が行われると周期的に界面濃度が変化するために生じるインピーダンス成分である。
前述のガス濃度測定モードでは、空燃比に応じた一定の直流電圧が回路に印加される。この場合、容量成分である素子C2,C3にも一定の電圧が印加されるため、素子C2,C3には電流は流れない。電流は、電解質部の並列回路では素子R2側を流れ、電極部では素子R3側を流れる。これにより、回路全体では素子R1,R2,R3を流れる定常的な電流が流れることになり、この電流が前述の空燃比に応じた限界電流に相当している。
図4の等価回路によれば、ガス濃度測定モードのように直流電圧が印加される場合でも、印加電圧の大きさに応じて電流の大きさが変化すると考えられる。しかしながら、前述のように印加電圧の設定範囲は、排気ガスの空燃比に応じて、ポンプセル電流を限界電流に収束させることができ、かつ、NO分解領域に至らない範囲に制約されている。したがって、直流電圧を単に上げたり或いは下げたりするだけでは、ポンプセル電流を限界電流から大きく変化させることができない。
一方、図3(A)に示すように印加電圧に交流成分を加えた場合には、素子C2,C3の両端に印加される電圧は交流的に変化する。このため、素子C2,C3には印加電圧の変化に応じた電流が流れることになる。この結果、回路全体を流れる電流は、素子C2,C3を流れる電流の変化に応じて大きく変化することになり、直流電圧を単に上げたり或いは下げたりする場合に比較して、少ない印加電圧の変化で大きく電流を変化させることができる。このときの電流の変化幅(振幅)は、印加電圧の交流成分の周波数が高いほど大きくなる。
図5は電流計56で計測されるポンプセル電流の変化を示した図である。ポンプセル28が断線しておらず正常に機能している場合には、図3(A)に示すように印加電圧を変化させると、ポンプセル電流はそのときの空燃比に応じた限界電流を中心に上下に交流的に変化し、図5の上段に示すように印加電圧の波形と同様の波形を示す。空燃比がストイキの場合であれば、ポンプセル電流は出力ゼロを中心にして上下に変化することになる。
ポンプセル28が何処かで断線している場合には、ポンプセル28には電流が流れない。このため、印加電圧の変化にかかわらず、電流計56で計測されるポンプセル電流の波形は図5の下段に示すように出力ゼロに張付いたままとなる。電流の大きさそのものは空燃比によって左右されるが、電流の変化の有無は空燃比に左右されず、ポンプセル28の断線の有無によって決まる。したがって、図3(A)に示すように印加電圧を変化させたときのポンプセル電流の変化の有無を検出することにより、ポンプセル28の断線による故障を正確に検出することができる。
断線検出モードでは、センサセル34の断線による故障の検出も行われる。センサセル34は、排気ガス中のNOを窒素と酸素イオンに分解すると同時に、排気ガス中の酸素をイオン化する機能も有している。このため、センサセル電流は、被測定ガス室18内のNOx濃度に応じて変化するとともに、酸素濃度に応じても変化する。前述のように印加電圧を交流的に変化させたとき、ポンプセル28が正常であればポンプセル電流も交流的に変化するが、このときポンプセル28により被測定ガス室18内からポンピングされる酸素イオン量もポンプセル電流の変化に応じて変化している。すなわち、印加電圧が上昇し、その結果、ポンプセル電流が上昇したときにはポンピングされる酸素イオン量も増大し、印加電圧が低下し、その結果、ポンプセル電流が低下したときにはポンピングされる酸素イオン量も減少している。このため、被測定ガス室18内の酸素濃度は印加電圧の波形と逆の波形で変化することになる。なお、限界電流は被測定ガス室18内に存在する殆ど全ての酸素がイオン化してポンピングされる際の電流値であるので、被測定ガス室18内の酸素濃度は理論上はゼロになっている。このため、ポンプセル電流が限界電流よりも上昇したときには被測定ガス室18内の酸素濃度はマイナスになってしまうが、この場合は、酸素の代わりに排気ガスに含まれる水分子が酸素イオンと水素イオンに分解され、その酸素イオンがポンプセル28によってポンピングされることになる。
図6は電流計62で計測されるセンサセル電流の変化を示した図である。上述のようにセンサセル電流は被測定ガス室18内の酸素濃度によっても変化する。したがって、センサセル電流は、センサセル34が断線しておらず正常に機能している場合には、通常はNOx濃度に応じた値になっているが、図3(A)に示すように印加電圧を変化させると、図6の上段に示すように印加電圧の波形と逆の波形で変化する。なお、ポンプセル電流が限界電流より上昇したときには、水分子の分解によって被測定ガス室18内の水素イオン濃度が上昇する。センサ電極36付近に水素イオンが存在する場合、センサセル34には電源60とは逆方向の起電力が生じてマイナス方向のセンサセル電流が流れ、大気電極38側からセンサ電極36側に酸素イオンがポンピングされる。このマイナス方向のセンサセル電流の大きさは水素イオン濃度に応じて大きくなり、水素イオン濃度は印加電圧に応じて大きくなるので、結果、図6に示すような波形が得られることになる。
センサセル34が何処かで断線している場合には、センサセル34には電流が流れない。このため、被測定ガス室18内の酸素濃度(或いは水素イオン濃度)の変化にかかわらず、電流計62で計測されるセンサセル電流の波形は図6の下段に示すように出力ゼロに張付いたままとなる。したがって、図3(A)に示すように印加電圧を変化させたときのセンサセル電流の変化の有無を検出することにより、センサセル34の断線による故障を正確に検出することができる。
なお、各セル28,34の故障は、印加電圧を変化させたときの電流の変化の有無によって検出することができるので、図3(A)に示すように上下両方向に印加電圧を変化させずとも、図3(B)に示すように一方向に印加電圧を変化させるだけでもよい。すなわち、本発明においては、印加電圧は必ずしも正弦波等を描いて交流的に変化させる必要はなく、基準電圧から一時的に乖離させ再び前記基準電圧に戻せばよい。ただし、図3(B)のように一方向へ印加電圧を変化させた場合、印加電圧を基準電圧に戻してから被測定ガス室18内の酸素濃度が元の酸素濃度に戻るまでに時間がかかる。この点、図3(A)のように印加電圧を一方向へ変化させた後さらに逆方向にも変化させる場合には、酸素濃度を逆方向に強制的に変化させることによって早期に元の濃度に戻すことができ、その結果、通常のガス濃度測定モードでの制御に早期に復帰することができる。
以上説明した断線検出モードにおける制御は、ECU50により図7のフローチャートで示されるルーチンに従い実行される。図7に示すルーチンでは、先ず、断線検出タイミングが到来したか否かが判定される(ステップ100)。断線検出モードの実行中はガス濃度測定装置10の本来の機能であるNOx濃度の測定が行えないので、断線検出モードは頻繁に実行されるのではなく、ある最適な間隔で定期的に実行される。ECU50は、前回の断線検出モードの実行時からの運転時間等を計測し、所定時間が経過したら断線検出タイミングが到来したと判定する。
断線検出タイミングが到来した場合には、可変電源54によってポンプセル28への印加電圧が図3(A)や図3(B)に示すように掃引される(ステップ102)。このときのポンプセル電流の変化は電流計56によって計測され、ステップ104では、ポンプセル電流の所定のサンプリングタイミングにおける変化量が所定値以上か否か判定される。ポンプセル電流の変化の有無ではなく、その変化量によって断線判定を行っているのは、ノイズによる電流の変化を印加電圧の変化に伴う電流の変化と誤判定することを防止するためである。なお、ここでは所定のサンプリングタイミングにおける変化量を所定値と比較しているが、ポンプセル電流の最大変化量、或いは、最大値と最小値との差を所定値と比較するようにしてもよい。
ステップ104の所定値は、大きく設定されるほどノイズの影響を抑制することができ。一方で、印加電圧の変化に伴う電流変化が小さかった場合には、逆に断線していると誤判定されてしまう虞がある。そこで、ステップ104でポンプセル電流の変化量が所定値未満の場合には、直ちにポンプセル28が断線していると判定されるのではなく、ステップ106,108の処理が実施される。すなわち、ステップ104の判定の成立回数を示すポンプセル断線カウンタがインクリメントされ(ステップ106)、ポンプセル断線カウンタが所定値以上になったか否かが判定される(ステップ108)。そして、ポンプセル断線カウンタが所定値以上になったら、ステップ110でポンプセル断線フラグがオンにされ、ポンプセル28が断線していると判定される。この判定結果は、例えばインパネに設けられた表示装置等に表示される。
ステップ104の判定の結果、ポンプセル電流の変化量が所定値以上の場合や、ステップ108の判定の結果、ポンプセル断線カウンタが所定値未満の場合には、ポンプセル28は正常に機能していると判定される。この場合、ステップ112でポンプセル断線フラグはオフにされ、続いてステップ114以降の処理によりセンサセル34の断線判定が実行される。先ず、ステップ114では、センサセル電流の所定のサンプリングタイミングにおける変化量が所定値以上か否か判定される。センサセル電流は、ステップ102においてポンプセル28への印加電圧が掃引されるときに電流計62によって計測されたものである。ここでも、ノイズによる電流の変化が印加電圧の変化に伴う電流の変化と誤判定されるのを防止するため、センサセル電流の変化量に基づいた判定が行われる。また、ここでは所定のサンプリングタイミングにおける変化量を所定値と比較しているが、センサセル電流の最大変化量、或いは、最大値と最小値との差を所定値と比較するようにしてもよい。
ステップ114でセンサセル電流の変化量が所定値未満の場合には、直ちにセンサセル34が断線していると判定されるのではなく、ステップ114の判定の成立回数を示すセンサセル断線カウンタがインクリメントされ(ステップ116)、続いて、センサセル断線カウンタが所定値以上になったか否かが判定される(ステップ118)。そして、センサセル断線カウンタが所定値以上になったら、ステップ120でセンサセル断線フラグがオンにされ、センサセル34が断線していると判定される。この判定結果は、例えばインパネに設けられた表示装置等に表示される。一方、ステップ114の判定の結果、センサセル電流の変化量が所定値以上の場合や、ステップ118の判定の結果、センサセル断線カウンタが所定値未満の場合には、センサセル34は正常に機能していると判定される。この場合、ステップ122でセンサセル断線フラグはオフにされる。
以上説明した断線検出モードがECU50によって実行されることにより、ポンプセル28やセンサセル34の断線による故障が正確に検出される。断線検出モードの実行後は通常のガス濃度測定モードに戻るが、このとき、被測定ガス室18内の酸素濃度は、引加電圧の掃引によるポンプセル電流の変化に伴い、断線検出モード実行前の酸素濃度から変化していると考えられる。しかしながら、その酸素濃度の変化は、特許文献3に開示される従来技術のように外部から大気を供給する場合に比較して極めて微小であるので、断線検出モードの終了後は、極短い時間でNOx濃度の測定を再開することができる。特に、図3(A)に示すように印加電圧を上下に掃引する場合には、被測定ガス室18内の酸素濃度をより早期に元の濃度に戻すことができる。
ところで、上述した実施の形態においては、ポンプセルとセンサセルとからなる2セル型の限界電流式センサに本発明を適用しているが、本発明はより多セルの限界電流式センサにも適用することができる。例えば、ポンプセルの下流にセンサセルとともにモニタセルを備えた限界電流式センサにも適用することができる。モニタセルは被測定ガス室内の酸素濃度を測定するセンサであるので、上述のセンサセルと同様の方法で断線を検出することができる。
さらに、本発明は特開2000−180411号公報に開示されるような起電力タイプ(混成電位式)のセンサにも適用することができる。この起電力タイプのセンサにおいては、初段に酸素濃度調節機能(ポンプセル)が配置され、その下流にNOx濃度に応じた起電力を発生する検出部(センサセル)が配置されている。この場合は、ポンプセルへの印加電圧を変化させたときのセンサセルの出力起電力の変化に基づいて、センサセルの断線を検出することができる。また、本発明は実施の形態のようなNOxセンサのみならず、特許文献3に開示されるような空燃比センサにも適用することができる。
さらに、上述の実施形態におけるセンサセルのように、ポンプセルと同じく印加電圧に応じて流通させる電流を変化させることができるセルについては、ポンプセルと同様の方法で断線を検出することもできる。すなわち、センサセルへの印加電圧を基準電圧から一時的に乖離させて再び基準電圧に戻し、そのときの電流の変化に基づいてセンサセルの断線を検出する。上述の実施の形態では、センサセルの故障検出はポンプセルが正常に機能していることがその前提となるが、この場合は、新たにセンサセルにも可変電源を設ける必要が生じるものの、ポンプセルの状態に関係なくセンサセル単体で故障検出を行うことができる利点がある。
なお、上述した実施の形態においては、可変電源54と上記ステップ102の処理を実行するECU50により、第1の発明及び第2の発明の「電圧可変手段」が実現されている。また、ECU50による上記ステップ104,106,108,110の処理の実行により、第1の発明の「故障検出手段」及び第3の発明の「第1故障検出手段」が実現されている。また、ECU50による上記ステップ114,116,118,120の処理の実行により、第2の発明の「第2故障検出手段」が実現されている。
本発明の実施の形態としてのガス濃度測定装置の構成を説明するための図である。 図1の装置が備えるポンプセルの電圧−電流特性を説明するための図である。 断線検出モードにおいてポンプセルへ印加される電圧の波形の一例を示した図である 断線検出モードにおいてポンプセルへ印加される電圧の波形の一例を示した図である ポンプセルの等価回路を示す図である。 印加電圧を図3(A)のように変化させたときのポンプセル電流の変化を示した図である。 印加電圧を図3(A)のように変化させたときのセンサセル電流の変化を示した図である。 本発明の実施の形態において実行される断線検出ルーチンのフローチャートである。
符号の説明
10 ガス濃度測定装置
12,14 ジルコニア層
16 絶縁層
18 被測定ガス室
20,22 大気室
28 ポンプセル
30 ポンプ電極
32,38 大気電極
34 センサセル
36 センサ電極
50 ECU
54 可変電源
60 電源
56,62 電流計
R1 固体電解質体の粒子の抵抗成分
R2 固体電解質体の粒界の抵抗成分
C2 固体電解質体の粒界の容量成分
R3 電極界面の抵抗成分
C3 電極界面の容量成分
ZW 交流成分の印加に伴うインピーダンス成分

Claims (3)

  1. 固体電解質体と前記固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とからなり、一方の電極を被測定ガス室に面して配置され、電圧印加を受けた場合に前記被測定ガス室から酸素を排出しながらその排出量に応じた電流を流通させるセルと、
    前記セルに電圧を印加する電源と、
    前記セルへの印加電圧を変化させる電圧可変手段と、
    前記セルが流通させる電流を計測する電流計測手段と、
    前記セルへの印加電圧を基準電圧から一時的に乖離させ再び前記基準電圧に戻したときの前記セルが流通させる電流の変化に基づいて前記セルの故障を検出する故障検出手段と、
    を備えることを特徴とするガス濃度測定装置。
  2. 固体電解質体と前記固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とからなり、一方の電極を被測定ガス室に面して配置され、電圧印加を受けた場合に前記被測定ガス室から酸素を排出しながらその排出量に応じた電流を流通させる第1セルと、
    前記被測定ガス室内の酸素濃度に応じた信号を出力する第2セルと、
    前記第1セルに電圧を印加する電源と、
    前記第1セルへの印加電圧を変化させる電圧可変手段と、
    前記第2セルが出力する信号を計測する第2セル出力信号計測手段と、
    前記第1セルへの印加電圧を基準電圧から一時的に乖離させ再び前記基準電圧に戻したときの前記第2セルが出力する信号の変化に基づいて前記第2セルの故障を検出する第2セル故障検出手段と、
    を備えることを特徴とするガス濃度測定装置。
  3. 前記第1セルが流通させる電流を計測する第1セル電流計測手段と、
    前記第1セルへの印加電圧を前記基準電圧から一時的に乖離させ再び前記基準電圧に戻したときの前記第1セルが流通させる電流の変化に基づいて前記第1セルの故障を検出する第1セル故障検出手段と、
    をさらに備えることを特徴とする請求項2記載のガス濃度測定装置。
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