JP2005084474A - 光学フィルタおよびこれを用いたディスプレイ - Google Patents
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Abstract
【課題】 全体として明るく、青色及び赤色に対して緑色の光線透過率のバランスがよく、ディスプレイとの色マッチングが良く、コントラストにおいて優れた映像を得ることができる光学フィルタの提供、および高温下や加湿下で経時後でも安定した光学フィルタを提供する。
【解決手段】 少なくとも透明基材、および近赤外線を吸収する色素(近赤外線吸収色素)を透明バインダ樹脂中に含有する近赤外線吸収層とが積層された積層構造を有する光学フィルタである。光学フィルタの435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、且つ、545nmにおける光線透過率が60%以上とする。
【選択図】 なし
【解決手段】 少なくとも透明基材、および近赤外線を吸収する色素(近赤外線吸収色素)を透明バインダ樹脂中に含有する近赤外線吸収層とが積層された積層構造を有する光学フィルタである。光学フィルタの435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、且つ、545nmにおける光線透過率が60%以上とする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、近赤外線遮蔽性を備えた光学フィルタに関するものである。また、本発明はそのような光学フィルタを備えたディスプレイ、特にプラズマディスプレイに関するものである。
電気的、もしくは電子的な装置が発生した電磁波は、他の装置に悪影響を与えたり、また、人体や動物に対して影響を与えることがあると言われている。一例として、プラズマディスプレイ(以降、PDPと略記することがある。)からは、30MHz〜130MHzの周波数の電磁波が発生するため、周囲にあるコンピュータ、もしくはコンピュータ利用機器に影響を与えることがあり、発生する電磁波をできるだけ外部に洩らさないことが望まれている。
PDPはまた、放電ガスにネオンとキセノンの混合ガスを用いているため、波長800nm〜1100nmの近赤外線を放出し、この近赤外線は、近赤外線を利用した各種機器、例えば、家庭電気製品のリモートコントローラや、パソコンやコードレス電話等の近赤外線を利用した通信機器の誤動作を引き起こす恐れがあるとされており、この点でも改善が望まれている。
従来、上記のような改善を行うものとして、透明な基材フィルム上に、接着剤もしくは粘着剤、金属薄膜のメッシュ、およびメッシュの凹凸面を平坦化する平坦化層を順に積層し、これらの内の接着剤もしくは粘着剤、または平坦化層に、可視光及び/または近赤外線の特定の波長を吸収する吸収剤を含有させた電磁波遮蔽用部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電磁波遮蔽用部材は、金属薄膜のメッシュを有するので、電磁波遮蔽性を有し、また、可視光、および/または、近赤外線の特定の波長を吸収する吸収剤を含有するので、近赤外線遮蔽性も有しており、ディスプレイの色バランス、外光を吸収することによるコントラストの向上も可能としている。
また、近赤外線吸収能を有する色素を用い、コーティング法やキャスト法で得たフィルムも知られている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
しかしながら、上記のいずれの従来技術においても、色バランスを重視する各種ディスプレイに使用した際、ディスプレイとの色マッチングの良い光学フィルタは得られておらず、また、吸収剤を含有する層の樹脂によっては、高温下や加湿下で、近赤外線の遮蔽性が低下したり、可視領域に特定の吸収が現れ、着色もしくは変色して見える等の問題がある。さらに、これらの問題を解決しようとする場合、光学フィルターに本来的に備えなければならない点として、近赤外線吸収剤や近赤外線吸収色素を含む層、或いは金属メッシュが見えてはならないこと(非視認性)、透明性(ヘイズ)が高いこと、可視領域での透過率(視感透過率)が高いこと、および近赤外領域での遮蔽性(近赤外線透過率)等があることが挙げられる。
さらに特許文献3の光学フィルタでは、可視光領域における光線透過率、特に、緑色付近の545nmにおける光線透過率が低いため、該光学フィルタは暗く、青色に対する緑色の光線透過率が低く、及び赤色に対する緑色の光線透過率が低いため全体として色マッチングが悪く、コントラストにおいて満足のいくものではない。
特開2002−311843号公報
特開平11−116826号公報
特開2001−183523号公報
本発明は、全体として明るく、青色及び赤色に対して緑色の光線透過率のバランスがよく、ディスプレイとの色マッチングが良く、コントラストにおいて優れた映像を得ることができる光学フィルタの提供、および高温下や加湿下で経時後の近赤外線の遮蔽性が低下したり、可視領域に特定の吸収が現れ、着色もしくは変色して見える等の問題が解消された光学フィルタを提供することを課題とする。さらに本発明は、上記の課題が解消された光学フィルタに対してさらに種々の機能が付加された光学フィルタを提供することも課題とする。さらに本発明は、前記光学フィルタが適用されたディスプレイ、特にプラズマディスプレイを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、少なくとも透明基材、および近赤外線を吸収する色素(近赤外線吸収色素)を透明バインダ樹脂中に含有する近赤外線吸収層とが積層された積層構造を有する光学フィルタであって、光学フィルタの435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、且つ、545nmにおける光線透過率が60%以上とすることによって、全体として明るく、青色及び赤色に対して緑色の光線透過率のバランスがよく、ディスプレイとの色マッチングが良く、コントラストにおいて優れた映像を得ることができる光学フィルタを発明した。
前記本発明の光学フィルタの435〜455nmにおける最大光線透過率、610〜630nmにおける最大光線透過率、及び545nmにおける光線透過率の大きさを、この順とすることができるので、ブルーグレーで色バランスのよい光学フィルタを提供できる。
本発明の光学フィルタにおいて、近赤外線吸収層に含まれる近赤外線吸収色素は、次の一般式(1)で表される色素を使用することが好ましい。
(式中、Rはメチル基、エチル基、プロピル基及びブチルから選ばれたアルキル基、Xは1価陰イオン又は2価陰イオン、nは、Xが1価陰イオンである場合1であり、2価陰イオンである場合1/2である。)
前記一般式(1)において、Xが、一価のビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオンであることが特に好ましい。
前記一般式(1)において、Xが、一価のビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオンであることが特に好ましい。
耐久性において優れた光学フィルタを得るために、本発明の光学フィルタにおける近赤外線吸収層に用いられる透明バインダ樹脂の水酸基価が10以下であるものを使用することが好ましい。
耐久性において優れた光学フィルタを得るために、本発明の光学フィルタにおける近赤外線吸収層に用いられる透明バインダ樹脂の酸価が10以下であるものを使用することが好ましい。
耐熱性に優れた光学フィルタを得るために、本発明の光学フィルタにおける近赤外線吸収層に用いられる透明バインダ樹脂のガラス転移温度が80℃〜150℃であるものを採用することが好ましい。
防汚性に優れた光学フィルタを得るために、本発明の光学フィルタの片面もしくは両面に防汚層が積層されていることが好ましい。
電磁波の遮蔽可能な光学フィルタを得るために、本発明の光学フィルタの片面もしくは両面に金属メッシュ層が積層されていることが好ましい。
適用面への貼り付けを容易とするために、本発明の光学フィルタの片面もしくは両面に粘着剤層が積層されていることが好ましい。
反射防止性に優れた光学フィルタを得るために、本発明の光学フィルタの片面もしくは両面に反射防止層が積層されていることが好ましい。
防眩性に優れた光学フィルタを得るために、本発明の光学フィルタの片面もしくは両面に防眩層が積層されていることが好ましい。
また、本発明は、前記した各光学フィルタがディスプレイの観察側に配置されていることを特徴とするディスプレイである。
請求項1の発明によれば、次の効果が得られる。
1)光学フィルタの各色における光線透過率が総合的に高いため、視感透過率が高く、明るいフィルタを提供することができる。
2)緑色の光線透過率を60%以上確保し、青色及び赤色に対する緑色の光線透過率の比が、1.15(以内)〜1:1(1を超える)であり、緑色の光線透過率の、青色及び赤色の光線透過率に対する差が適切であるので、全体として明るく、青色及び赤色に対して緑色の光線透過率のバランスがよく、ディスプレイとの色マッチングが良く、コントラストにおいて優れた映像を得ることができる光学フィルタとなる。
1)光学フィルタの各色における光線透過率が総合的に高いため、視感透過率が高く、明るいフィルタを提供することができる。
2)緑色の光線透過率を60%以上確保し、青色及び赤色に対する緑色の光線透過率の比が、1.15(以内)〜1:1(1を超える)であり、緑色の光線透過率の、青色及び赤色の光線透過率に対する差が適切であるので、全体として明るく、青色及び赤色に対して緑色の光線透過率のバランスがよく、ディスプレイとの色マッチングが良く、コントラストにおいて優れた映像を得ることができる光学フィルタとなる。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、本発明の光学フィルタは、435〜455nmにおける最大光線透過率、610〜630nmにおける最大光線透過率、545nmにおける光線透過率の大きさがこの順に小さくなっているので、色調がブルーグレイとなり、ディスプレイ前面においた場合、ディスプレイから発せられる色とのマッチングが良い。
請求項3の発明によれば、請求項1及び2の発明の効果に加え、本発明の光学フィルタにおいて、近赤外線吸収層に含まれる近赤外線吸収色素を、前記一般式(1)で表される色素を使用するので、光学フィルタの435〜455nmにおける最大光線透過率、610〜630nmにおける最大光線透過率、及び545nmにおける光線透過率を請求項1及び請求項2に規定する発明のものとすることができる。
請求項4の発明によれば、請求項1〜3のいずれかの発明の効果に加え、請求項3の発明におけるより好ましい効果が発揮される。
請求項5の発明によれば、請求項1〜4のいずれかの発明の効果に加え、近赤外線吸収層を構成する透明バインダ樹脂として水酸基価が10以下のものを用いたので、近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素が、透明バインダ樹脂が有する水酸基と反応することを防止でき、高温高湿度下でも経時的に安定な近赤外線吸収機能を有し、長期にわたって安定な性能を発現する光学フィルタを提供することができる。
請求項6の発明によれば、請求項1〜5のいずれかの発明の効果に加え、透明バインダ樹脂として酸価が10以下のものを用いたので、近赤外線吸収色素が透明バインダ樹脂が有する酸と反応することを防止でき、高温高湿度下でも経時的に安定な近赤外線吸収機能を有し、長期にわたって安定な性能を発現する光学フィルタを提供することができる。
請求項7の発明によれば、請求項1〜6のいずれかの発明の効果に加え、透明バインダ樹脂のガラス転移温度の範囲を、通常の使用条件以上に規定したので、近赤外線吸収色素どうし、もしくは近赤外線吸収色素と周囲の透明バインダ樹脂との反応を制御することができ、実用上、十分な耐熱性を有する光学フィルタを提供することができる。
請求項8の発明によれば、請求項1〜7のいずれかの発明の効果に加え、防汚層が積層されたことにより、ごみや汚染物質が付着するのを防止でき、付着しても除去が容易な光学フィルタを提供することができる。
請求項9の発明によれば、請求項1〜8のいずれかの発明の効果に加え、金属メッシュ層が積層されているので、適用される対象の電気的装置、電子的装置から発生する電磁波を遮蔽可能な光学フィルタを提供することができ、特に、プラズマディスプレイに適用するのに最適である。
請求項10の発明によれば、請求項1〜9のいずれかの発明の効果に加え、粘着剤を有することにより、適用面への貼り付けが容易な光学フィルタを提供することができる。
請求項11の発明によれば、反射防止層が積層されたことにより、請求項1〜9のいずれかの発明の効果に加え、積層された面における不要な光の反射を防止でき、画像、映像のコントラストを向上させることが可能な光学フィルタを提供することができる。
請求項12の発明によれば、請求項1〜11のいずれかの発明の効果に加え、防眩層が積層されていることにより、ディスプレイ前面に配置した際に、ディスプレイの特定の位置、方向に生じるシンチレーションの緩和が可能な光学フィルタを提供することができる。
請求項13の発明によれば、請求項1〜12のいずれかの光学フィルタの持つ効果が発揮されたディスプレイを提供することができる。
図1(a)〜(d)は、本発明の光学フィルタの種々の形態の積層構造を例示する断面図である。本発明の光学フィルタは、最も基本的には、図1(a)に符号1Aで示すように、透明基材2上に近赤外線吸収層3が積層された積層構造を有する近赤外線吸収積層体4からなるものである。この透明基材2は、積層の際に行われ得る接着性向上のための処理が施されたものであってよい。この近赤外線吸収積層体4の435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、且つ、545nmにおける光線透過率が60%以上であることが必須であり、且つこの近赤外線吸収積層体4の435〜455nmにおける最大光線透過率、610〜630nmにおける最大光線透過率、545nmにおける光線透過率がこの順に高いことが望ましく、また、後に詳述するように、近赤外線吸収層3を構成する成分である透明バインダ樹脂としては、その水酸基価、酸価、もしくはガラス転移温度がある一定の範囲内のものであることが好ましい。
図1(a)に示す近赤外線吸収積層体4は、光学フィルタの分野で知られた様々な層を1種もしくは2種以上、付加して積層することにより、それらの層が加わることによりさらに機能が付与された光学フィルタを構成することができる。即ち、図1(b)に示すように、光学フィルタ1Bは、近赤外線吸収積層体4の近赤外線吸収層3側、即ち、図中の上側に使用時の汚染を防止するための防汚層5が積層されたものであってもよい。防汚層5は、図1(b)に示すように上側のみにではなく、下側のみに積層されていてもよく、上側および下側の両方に積層されていてもよい。
図1(c)に示すように、光学フィルタ1Cは、近赤外線吸収積層体4の上側に、反射防止層6が積層されたものであっても良い。反射防止層6もまた、図1(c)に示すように上側のみにではなく、下側のみに積層されていてもよく、上側および下側の両方に積層されていてもよい。反射防止層6の代わりに、防眩層が積層されていてもよく、やはり、上側もしくは下側の片方、または両方に積層されていてもよい。
図1(d)に示すように、光学フィルタ1Dは、近赤外線吸収積層体4の上側に、導電性金属等からなる金属メッシュ層7が積層されたものであってもよい。金属メッシュ層7もまた、図1(d)に示すように上側のみにではなく、下側のみに積層されていてもよく、上側および下側の両方に積層されていてもよい。
上記のような様々な層を伴うか、もしくは伴わない光学フィルタ1A〜1D(以降、特に断らない限り、符号1は、上記のような1A〜1Dのような様々な積層構造を含めて指すものとする。)は、いずれかの片面もしくは両面に粘着剤層を積層して、光学フィルタが適用されるべき被適用面に貼り付けられるよう構成してもよい。粘着剤層はむき出しのままでは取り扱いにくいから、貼り付けの直前まで、剥離性を有するシートが積層されたものであることが好ましい。これらの様々な構造を採り得る光学フィルタ1は、種々のタイプのディスプレイに適用することができ、例えば、図2に示すように、プラズマディスプレイ8の前面(観察側の面)に配置して使用することができ、粘着剤層が積層された光学フィルタ1は、プラズマディスプレイ8の前面に直接貼り付けて使用することもできる。なお粘着剤層の積層は片面に対して行われることが多いが、両面に粘着剤層を積層し、片面をディスプレイへの貼り付け用に他面を他の機能を有するフィルムとの貼り合わせに使用するような用途にも利用することができる。
本発明の光学フィルタ1を構成する透明基材2および近赤外線吸収層3、並びに上記したように、基本的な積層構造に付加され得る各層の素材や積層方法等につき、以下に詳細に説明する。
近赤外線吸収層:近赤外線吸収層3は、基本的には、透明バインダ樹脂中に、近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素を有するものである。
近赤外線吸収色素としては、光学フィルタ1が代表的な用途であるプラズマディスプレイ8の前面に適用される場合、プラズマディスプレイ8はキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長域を吸収するものであることが好ましい。この波長域内での光線透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
同時に近赤外線吸収層3は、可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長域では、十分な光線透過率を有する必要がある。
上記の両方の波長域における光線透過率は、分光光度計((株)島津製作所、品番;「UV−310OPC」)を使用し求めたものである。
近赤外線吸収色素としては、具体的には、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン等の無機系近赤外線吸収色素、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、ジインモニウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類等の有機系近赤外線吸収色素を1種、または2種以上を併用することができる。これらのうち、無機系近赤外線吸収色素は、平均粒径が0.005μm〜1μmの微粒子であることが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.5μmの範囲内である。
本発明における近赤外線吸収色素としては、上記のうちでも、ジインモニウム系化合物を用いることが好ましい。その理由は、ジインモニウム系化合物は、近赤外線領域にモル吸光係数εが約10万程度の大きな吸収を有し、可視光領域内である波長400nm〜500nm付近に若干の光吸収があるものの、可視光透過率が他の近赤外線吸収色素よりも優れているからである。
ジインモニウム系化合物としては、前記の一般式(1)に示したものが好ましく、式中のRは前記した通りであるが、そのうちのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、もしくはブチル基等が好ましい。式中のXは1価または2価陰イオンである。1価陰イオンの場合nは1であり、2価陰イオンの場合nは1/2である。1価陰イオンとしては、例えば、有機酸の1価陰イオン、無機の1価陰イオン等が挙げられる。
有機酸の1価陰イオンとしては、例えば、酢酸イオン、乳酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、ステアリン酸イオン等の有機カルボン酸イオン、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ナフタレンモノスルホン酸イオン、クロロベンゼンスルホン酸イオン、ニトロベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等の有機スルホン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ブチルトリフェニルホウ酸イオン等の有機ホウ酸イオン等が挙げられ、好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等のハロゲノアルキルスルホン酸イオン、アルキルアリールスルホン酸イオン、若しくはビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオンが挙げられる。
無機の1価陰イオンとしては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン、チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、バナジン酸イオン、リン酸イオン、ホウ酸イオン等があげられ、これらの無機の陰イオンのうち、特に好ましいものとしては、例えば、過塩素酸イオン、ヨウ素イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン等があげられる。
2価陰イオンとしては、例えば、ナフタレン−1、5−ジスルホン酸、R酸、G酸、H酸、ベンゾイルH酸、p−クロルベンゾイルH酸、p−トルエンスルホニルH酸、クロルH酸、クロルアセチルH酸、メタニルγ酸、6−スルホナフチル−γ酸、C酸、ε酸、p−トルエンスルホニルR酸、ナフタリン−1,6−ジスルホン酸、1−ナフトール−4,8−ジスルホン酸、等のナフタレンジスルホン酸誘導体、カルボニルJ酸、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ジJ酸、ナフタル酸、ナフタリン−2,3−ジカルボン酸、ジフェン酸、スチルベン−4,4’−ジカルボン酸、6−スルホ−2−オキシ−3−ナフトエ酸、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸、1,6−ジアミノアントラキノン−2,7−ジスルホン酸、2−(4−スルホフェニル)−6−アミノベンゾトリアゾール−5−スルホン酸、6−(3−メチル−5−ピラゾロニル)ナフタレン−1,3−ジスルホン酸、1−ナフトール−6−(4−アミノ−3−スルホ)アニリノ−3−スルホン酸等の2価の有機酸のイオンが挙げられる。好ましいものとしては、例えば、ナフタレン−1、5−ジスルホン酸、R酸が挙げられる。
前記一般式(1)に示されるジインモニウム化合物は、例えば、特公昭43−25335号公報に記載された次の様な方法で得ることができる。即ち、p−フェニレンジアミンと1−クロロ−4−ニトロベンゼンをウルマン反応させて得られた生成物を還元することにより得られるアミノ体を有機溶媒中、好ましくはジメチルホルムアミド(DMF)等の水溶性極性溶媒中、30〜160℃、好ましくは50〜140℃で、一般式(1)における所望のRに対応するハロゲン化化合物(例えば、Rがn−C4 H9 のときはBrCH2 CH2 CH2 CH3 )と反応させて、全ての置換基(R)が同一である化合物(以下、全置換体と記す)を得ることができる。
また、全置換体以外の化合物を合成する場合、例えば8つのRのうち、7つがiso−C4 H9 、残り1つがn−C4 H9 の化合物を合成する場合には、先に所定のモル数(上記アミン体1モル当たり7モル)の試薬(BrCH2 CH(CH3 )2 )と反応させて8つのRのうち7つにiso−C4 H9 を導入した後、残りの置換基(n−C4 H9 )を導入するのに必要なモル数(上記のアミン体1モル当たり1モル)の対応する試薬(BrC4 H9 )と反応させる。例示したこの化合物の製造方法と同様の方法により、全置換体以外の任意の化合物を得ることができる。
その後、上記で合成した化合物を、有機溶媒中、好ましくはDMF等の水溶性極性溶媒中、0〜100℃、好ましくは5〜70℃で一般式(1)のXに対応する酸化剤(例えば銀塩)を添加して酸化反応を行う。酸化剤の当量を2当量にすれば本発明の一般式(1)で表されるジイモニウム塩化合物が得られ、当量を1当量にすれば、一価のアミニウム塩化合物(以下アミニウム体と記す)が得られる。また、上記で合成した化合物を硝酸銀、過塩素酸銀、塩化第二銅等の酸化剤で酸化した後、その反応液に、所望のアニオンの酸もしくは塩を添加して塩交換を行う方法によっても一般式(1)で表される化合物を合成することが出来る。
近赤外線吸収層3中には、近赤外線吸収色素を1種、または2種以上混合して用いことはすでに述べた通りであるが、本発明における好ましい近赤外線吸収色素であるジインモニウム系化合物を用いる場合、近赤外線吸収層の近赤外線吸収波長域を広げたり、近赤外線吸収層の色味(=外観的な色のこと)を調整することを目的として、ジインモニウム系化合物以外の近赤外線吸収色素が配合されていてもよく、例えば、フタロシアニン系化合物、もしくはジチオール系金属錯体類等がジインモニウム系化合物と併用される。フタロシアニン系化合物、およびジチオール系金属錯体類は両方を用いてもよい。
近赤外線吸収層3に用いられる透明バインダ樹脂としては、可視光領域での光線透過率の高い樹脂であれば尚良い。具体的な透明バインダ樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレンまたはプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂を挙げることができ、中でもアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
透明バインダ樹脂の平均分子量は500〜600,000であることが好ましく、より好ましくは1万〜40万である。平均分子量これらの範囲とすることにより、上記のような性質を有するものとすることができるからである。
本発明において、近赤外線吸収層3に近赤外線吸収色素として対イオンを有するものを含有させたときは、透明バインダ樹脂が水酸基、もしくは酸基を有するものであるか、または透明バインダ樹脂中に重合開始剤等が配合されている場合には、それらの水酸基、もしくは酸基、または重合開始剤等により近赤外線吸収色素の母骨格と対イオンの均衡状態が崩れ、近赤外線吸収の機能を果たすことが困難となる場合があるので、この解消の目的で、透明バインダ樹脂としては、水酸基価もしくは酸価の小さいものを用いることが好ましく、水酸基価および酸価のいずれもが小さいものを用いることがより好ましい。
上記の理由により、水酸基価としては10以下が好ましく、より好ましくは5以下であり、0であることが特に好ましい。水酸基価をこのように小さくすることにより、近赤外線吸収層3が含有する、例えば、対イオンを有する近赤外線吸収色素が、透明バインダ樹脂が有する水酸基により反応すること等を防ぐことができるため、近赤外線吸収機能が高温高湿度下でも経時的に安定な光学フィルタとすることができ、また近赤外線吸収色素の選択の幅を広げることが可能になる。ここで、水酸基価とは試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を指す。
同様に、酸価としては10以下が好ましく、より好ましくは5以下であり、0であることが特に好ましい。酸価をこのように小さくすることにより、透明バインダ樹脂が含有する酸により、近赤外線吸収色素が反応すること等を防ぐことができるため、近赤外線吸収機能が高温高湿度下でも経時的に安定な光学フィルタとすることができる。ここで酸価とは、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を指す。
また、透明バインダ樹脂としては、そのガラス転移温度(以降において、Tgと言うことがある。)が、光学フィルタ1が実際に使用されるときの温度以上であることが好ましい。ガラス転移温度が光学フィルタ1が実際に使用されるときの温度以下であると、言い換えれば、光学フィルタ1がガラス転移温度以上で使用されると透明バインダ樹脂中に含有される近赤外線吸収色素どうしが反応を起こしたり、透明バインダ樹脂が空気中の水分を吸収するため、近赤外線吸収色素の劣化や透明バインダ樹脂の劣化が起きやすくなるためである。
上記の観点から、透明バインダ樹脂のガラス転移温度は、光学フィルタ1が実際に使用されるときの温度の値にもよるが、例えば、80℃〜150℃であることが好ましい。ガラス転移温度が80℃未満の透明バインダ樹脂を用いると、近赤外線吸収色素と透明バインダ樹脂との相互作用、もしくは近赤外線吸収色素どうしの相互作用等が起こり、近赤外線吸収色素の変性が起こる。また、ガラス転移温度が150℃を超える透明バインダ樹脂を用いると、このような透明バインダ樹脂を溶剤に溶解して近赤外線吸収層形成用組成物を調製し、コーティングにより近赤外線吸収層3を形成する際に、十分な乾燥を行わせるには乾燥温度を高温にする必要が生じるから、近赤外線吸収色素として耐熱性の低いものを用いた場合に、近赤外線吸収色素の劣化を招きやすく、と言って、乾燥温度を低温にすると、長い乾燥時間が必要になるため、乾燥工程の効率が低下し、生産コストの上昇を起こし、あるいは、十分な乾燥が行えないために残留した溶剤が近赤外線吸収色素の劣化を招く原因ともなる。
近赤外線吸収層3中の近赤外線吸収色素と透明バインダ樹脂との好ましい配合割合は、透明バインダ樹脂100に対して近赤外線吸収色素0.001〜100であり、より好ましくは、近赤外線吸収色素0.01〜50であり、特に好ましくは、0.1〜10である。なお、配合比は質量基準である。
フタロシアニン系化合物としては、市販品である(株)日本触媒製、品番;「Excolor IR−1」、「同IR−3」、もしくは「同IR−4」、または「TXEX−805K」、「同−809K」、「同−810K」、「同−811K」、もしくは「同−812K」を用いることもできる。
また、ジチオール系金属錯体類としては、市販品である三井化学(株)製、品番;「SIR−128」、「SIR−130」、「SIR−132」、もしくは「SIR−159」を用いることもできる。
近赤外線吸収層3の形成は、近赤外線吸収色素および透明バインダ樹脂をその他の必要に応じて添加する添加剤と共に、溶剤、および/または、希釈剤を加えて混合し、各成分を溶解もしくは分散させて近赤外線吸収層形成用組成物を調製し、得られた近赤外線吸収層形成用組成物を塗布対象に塗布することにより行う。あるいは、近赤外線吸収色素および透明バインダ樹脂をその他の必要に応じて添加する添加剤と共に溶融混練した組成物を溶融押出ししながら塗布対象に塗布することにより行うこともできる。
上記の添加剤としては、近赤外線吸収層3の耐久性を向上させるために、酸化防止剤、もしくは紫外線吸収剤等用いることができ、酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、硫黄系、燐酸系、亜燐酸系、もしくは金属錯体系等のものを、また、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、もしくはベンゾトリアゾール系等のものを挙げることができる。
上記の近赤外線吸収層形成用組成物を調製する際に、用いる溶剤としては、色素の溶解性の観点からアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、トリフルオロプロパノール、n−ヘキサン、もしくはn−ヘプタン、または水等が挙げられるが、これら以外のものであってもよい。
また、上記の近赤外線吸収層形成用組成物を塗布する方法としては、マイヤーバーコーティング、ドクターブレートコーティング、グラビアコーティング、グラビアリバースコーティング、キスリバースコーティング、3本ロールリバースコーティング、スリットリバースダイコーティング、ダイコーティング、もしくはコンマコーティング等の各種コーティングの方式を用いることができる。
透明基材:透明基材2は、近赤外線吸収層3や、付加的に積層される種々の層の積層対象となるか、もしくは光学フィルタ1の支持体となるものである。従って、透明基材2は、可視光に対して透明性を有し、近赤外線吸収層3や、その他の種々の層が積層可能であれば、その種類は特に限定されるものではない。
例えば、透明基材2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルホン、もしくはポリエーテルケトン等の樹脂からなるフィルムを用いることができる。
上記のうちでも、透明性、耐熱性、および取扱い性の面等から、また、量産されていて比較的安価な点で、PETフィルムが最も好ましい。
透明基材2の透明性としては、透明基材2が単層の場合、可視領域の光線透過率が80%以上であることが好ましい。また、透明性を有するとは、無色透明であることが好ましいけれども、必ずしも無色透明であることに限ることはなく、本発明の目的を妨げない程度であれば着色された着色透明であってもよい。可視領域の光線透過率はできる限り高いことが好ましいが、最終製品としては50%以上の光線透過率が必要なことから最低2枚を積層する場合でも、それぞれの透明基材2としては光線透過率が80%以上であれば、目的に適う。もちろん、光線透過率が高ければ高いほど、透明基材2を複数枚積層できるため、透明基材2の単層の光線透過率はより好ましくは85%以上であり、最も好ましくは90%以上である。光線透過率を向上させるには厚みを薄くするのも有効な手段である。
透明基材2の厚みは、透明性さえ満足すれば特に制限されないが、加工性の面からは、12μm程度〜300μm程度の範囲であることが好ましい。厚みが12μm未満の場合は透明基材2が柔軟過ぎて、加工する際の張力により伸張やシワが発生しやすい。また、厚みが300μmを超えるとフィルムの可燒性が減少し、各工程での連続巻き取りが困難になる上、透明基材2どうしを複数枚積層する際の加工性が大幅に劣るといった問題もある。
防汚層:近赤外線吸収積層体4に付加して積層し得る防汚層5は、光学フィルタ1を使用する際に、その表面に、不用意な接触や環境からの汚染が原因で、ごみや汚染物質が付着するのを防止し、あるいは付着しても除去しやすくするために形成される層である。例えば、フッ素系コート剤、シリコン系コート剤、シリコン・フッ素系コート剤等が使用され、なかでもシリコン・フッ素系コート剤が好ましく適用される。これらの防汚層の厚さは好ましくは100nm以下で、より好ましくは10nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下である。これらの防汚層の厚さが100nmを超えると防汚染性の初期値は優れているが、耐久性において劣るものとなる。防汚染性とその耐久性のバランスから5nm以下が最も好ましい。
反射防止層:近赤外線吸収積層体4に付加して積層し得る反射防止層6は、高屈折率層と低屈折率層が順に積層されたものが代表的であるが、これ以外の積層構造を持つものもある。高屈折率層は、例えば、ZnOやTiO2 の素材の薄膜、もしくはこれらの素材の微粒子が分散した透明樹脂膜である。また、低屈折率層は、SiO2 からなる薄膜、もしくはSiO2 ゲル膜、または、フッ素含有の、もしくはフッ素およびケイ素含有の透明樹脂膜である。反射防止層6が積層されたことにより、積層された側の外光等の不要な光の反射を低下させ、適用されるディスプレイの画像もしくは映像のコントラストを高めることができる。
防眩層:近赤外線吸収積層体4に付加して積層し得る防眩層6は、例えば、透明樹脂中に直径数μm程度のポリスチレン樹脂やアクリル樹脂等のビーズを分散させたものであり、層が持つ光拡散性により、ディスプレイ前面に配置した際に、ディスプレイの特定の位置、方向に生じるシンチレーションの防止を行なうためのものである。
金属メッシュ層:近赤外線吸収積層体4に付加して積層し得る金属メッシュ層7は、光学フィルタ1が適用される電気的もしくは電子的な装置、とりわけ、プラズマディスプレイから発生した電磁波を遮蔽するものである。金属メッシュ層7の代りに透明導電性薄膜も利用される。金属メッシュ層7は、電磁波遮蔽能を有するものであれば、その金属の種類は特に限定されるものではなく、例えば、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、金、銀、ステンレス、タングステン、クロム、チタン等を用いることができ、中でも銅が好ましく、銅箔の種類としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられるが、特に電解銅箔であることが好ましい。電解銅箔を選択することにより、厚さが10μm以下の均一性のよいものとすることができ、また黒化処理された際に、酸化クロム等との密着性を良好なものとすることができるからである。
ここで、本発明においては、上記金属メッシュ層7は、その一方の面または両面が黒化処理されていることが好ましい。黒化処理とは、酸化クロム等により金属メッシュの表面を黒化する処理であり、光学フィルタにおいて、この酸化処理面は、観察者側の面となるように配置される。この黒化処理により金属メッシュ層表面に形成された酸化クロム等により、光学フィルタ表面の外光が吸収されることから、光学フィルタ表面で光が散乱することを防止することができ、良好な透過性を得ることが可能な光学フィルタとすることができるのである。
金属メッシュ層7の開口率は、電磁波遮蔽能の観点からは、低いほどよいが、開口率が低くなると光線透過率が低下するので、開口率としては50%以上であることが好ましい。
金属メッシュ層7は、透明基材2上に金属箔を積層し、エッチングによってメッシュ状とするので、透明基材2〜金属メッシュ層7には、接着剤層が介在することが普通である。接着剤層は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール単独もしくはその部分ケン化品、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンエステル樹脂等の接着剤で構成する。
金属メッシュ層7が積層されている場合、金属メッシュ層7は開口部と非開口部とが凹凸をなしているので、金属メッシュ層7上に、透明樹脂が金属メッシュ層7の厚み以上の厚みに形成された平坦化層が積層されていてもよい。
粘着剤層:本発明において用いられる粘着剤層は、任意の透明な粘着剤からなる層である。可視域の光線透過率が高ければその種類等は特に限定されるものではないが、具体的には、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤等が挙げられる。
〔作用〕
本発明の光学フィルタは、435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、且つ、545nmにおける光線透過率が60%以上であるので、全体として明るく、青色及び赤色に対して緑色の光線透過率のバランスがよく、ディスプレイとの色マッチングが良く、コントラストにおいて優れた映像を得ることができる光学フィルタとなる。
本発明の光学フィルタは、435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、且つ、545nmにおける光線透過率が60%以上であるので、全体として明るく、青色及び赤色に対して緑色の光線透過率のバランスがよく、ディスプレイとの色マッチングが良く、コントラストにおいて優れた映像を得ることができる光学フィルタとなる。
本発明の光学フィルタは、435〜455nmにおける最大光線透過率、610〜630nmにおける最大光線透過率、545nmにおける光線透過率がこの順に高いことを特徴とするものである。光学フィルタの分光特性が前記範囲内にある場合は、色調がブルーグレイとなり、ディスプレイ前面においた場合、ディスプレイから発せられる色とのマッチングが良い。人間の明所における分光感度は545nm付近が最も高いため、545nmにおける光線透過率を他の波長領域よりも最も低く設定することで、緑色がかった光学フィルタになるのを防ぐことができる。また、プラズマディスプレイの場合、青色の発光強度が緑や赤色に比べて弱いため、それを補正するためにも、青光である波長435〜455nmにおける光線透過率を最も高くする必要がある。
また、波長545nmでの光線透過率が60%以上であることが好ましく、さらに好ましくは62%以上、最も好ましくは65%以上である。この波長域での光線透過率が60%未満であると、ディスプレイ前面に前記分光特性を有するフィルタを設置した場合、暗いディスプレイとなり好ましくない。
前記一般式(1)で表され、対イオン(X- )が1価陰イオンとして「ビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオン」であるジインモニウム系近赤外線吸収色素を次のようにして合成した。実施例中、「部」は特に特定しない限り重量部を表す。
DMF30部中にN,N,N' ,N' −テトラキス(アミノフェニル)−p−フェニレンジアミン3.8部、n−ブチルブロミド21部、及び炭酸カリウム15部を加え、80℃で1時間、90℃で7時間、及び130℃で1時間反応させた。冷却後、濾過し、この反応液(濾液)にイソプロパノール30部を加え、5℃以下で1時間撹拌した。生成した結晶をメタノールで洗浄した後、乾燥し薄茶色の結晶2.5部を得た。
DMF10部中に上記で合成した化合物1部を加え、60℃に加熱溶解した後、DMF10部中に溶解したビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸銀0.78部を加え、30分反応させた。冷却後析出した銀を濾別した。この反応液(濾液)に水10部をゆっくりと滴下し、滴下後15分撹拌した。生成した黒色結晶を濾過し、50部の水で洗浄し、得られたケーキを乾燥し、前記一般式(1)の化合物0.5部を得た。得られた化合物は次の物性を示した。
λmax 1076nm(ジクロロメタン)
分子吸光係数 101,000
融点 186.5℃(DSC)
透明バインダ樹脂として透明アクリル樹脂であるダイヤナールBR−80(商品名、三菱レイヨン社製、Tg:105℃、水酸基価:0、酸価:0)をメチルエチルケトン中に固形分比が20%(質量基準)となるよう溶解して樹脂溶液とした。得られた樹脂溶液中に、前記工程で作製した対イオン(X- )が1価陰イオンとして「ビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオン」であるジインモニウム系近赤外線吸収色素0.2mmol/m2 、およびフタロシアニン系近赤外線吸収色素((株)日本触媒製、品番:「IR−1」)0.2mmol/m2 の2種類の近赤外線吸収色素を添加して十分分散させて塗布溶液とした。得られた塗布溶液を、厚みが100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(東洋紡績(株)製、品番:「A4300」)上に、マイヤーバーにて乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、風速5m/secのドライエアーが当たるオーブンにて100℃で1分間乾燥して近赤外線吸収層を形成し、光学フィルタを得た。
λmax 1076nm(ジクロロメタン)
分子吸光係数 101,000
融点 186.5℃(DSC)
透明バインダ樹脂として透明アクリル樹脂であるダイヤナールBR−80(商品名、三菱レイヨン社製、Tg:105℃、水酸基価:0、酸価:0)をメチルエチルケトン中に固形分比が20%(質量基準)となるよう溶解して樹脂溶液とした。得られた樹脂溶液中に、前記工程で作製した対イオン(X- )が1価陰イオンとして「ビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオン」であるジインモニウム系近赤外線吸収色素0.2mmol/m2 、およびフタロシアニン系近赤外線吸収色素((株)日本触媒製、品番:「IR−1」)0.2mmol/m2 の2種類の近赤外線吸収色素を添加して十分分散させて塗布溶液とした。得られた塗布溶液を、厚みが100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(東洋紡績(株)製、品番:「A4300」)上に、マイヤーバーにて乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、風速5m/secのドライエアーが当たるオーブンにて100℃で1分間乾燥して近赤外線吸収層を形成し、光学フィルタを得た。
得られた本実施例1の光学フィルタの製造直後のヘイズ、視感透過率、近赤外線領域である波長800〜1100nmにおける光線透過率(以降、NIR透過率と略記することがある。)、プラズマディスプレイの表示面に配置した時の色目変化、プラズマディスプレイの表示面に配置した時のコントラスト変化を測定し、その結果を下記の表1に示す。また、本実施例1の光学フィルタの耐湿熱負荷後(60℃、湿度90%の環境で1000時間さらした後)に前記製造直後と同じ試験をおこなった結果を下記の表1に示す。
また、435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比、及び610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比について、耐湿熱処理を行う前(初期)と後の変化量を求めた。その結果を下記の表2に示す。
透明バインダ樹脂としてポリエステル系樹脂(「バイロンUR1400」:商品名、東洋紡績(株)製、Tg:80℃、水酸基価:1、酸価:3)を用いた以外は、前記実施例1と同様に行って光学フィルタを得た。
得られた本実施例2の光学フィルタの製造直後のヘイズ、視感透過率、NIR透過率、プラズマディスプレイの表示面に配置した時の色目変化、プラズマディスプレイの表示面に配置した時のコントラスト変化を測定し、その結果を下記の表1に示す。また、本実施例2の光学フィルタの耐湿熱負荷後(60℃、湿度90%の環境で1000時間さらした後)に前記製造直後と同じ試験をおこなった結果を下記の表1に示す。
また、435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比、及び610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比について、耐湿熱処理を行う前(初期)と後の変化量を求めた。その結果を下記の表2に示す。
透明バインダ樹脂としてポリカーボネート系樹脂(「FPC2136」:商品名、三菱ガス化学(株)製、Tg:130℃、水酸基価:0、酸価:0)を用いた以外は、前記実施例1と同様に行って光学フィルタを得た。
得られた本実施例3の光学フィルタの製造直後のヘイズ、視感透過率、NIR透過率、プラズマディスプレイの表示面に配置した時の色目変化、プラズマディスプレイの表示面に配置した時のコントラスト変化を測定し、その結果を下記の表1に示す。また、本実施例3の光学フィルタの耐湿熱負荷後(60℃、湿度90%の環境で1000時間さらした後)に前記製造直後と同じ試験をおこなった結果を下記の表1に示す。
また、435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比、及び610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比について、耐湿熱処理を行う前(初期)と後の変化量を求めた。その結果を下記の表2に示す。
前記実施例1で得られた光学フィルタの近赤外線吸収層側にシリコーン・フッ素系防汚染剤である、フッ素系のシラン化合物(「KP801M」:商品名、信越化学(株)製)を、厚さ3.0nmとなるように塗布乾燥硬化せしめて防汚層を形成し、防汚層付きの光学フィルタを得た。
得られた本実施例4の光学フィルタの製造直後のヘイズ、視感透過率、NIR透過率、プラズマディスプレイの表示面に配置した時の色目変化、プラズマディスプレイの表示面に配置した時のコントラスト変化を測定し、その結果を下記の表1に示す。また、本実施例4の光学フィルタの耐湿熱負荷後(60℃、湿度90%の環境で1000時間さらした後)に前記製造直後と同じ試験をおこなった結果を下記の表1に示す。
また、435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比、及び610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比について、耐湿熱処理を行う前(初期)と後の変化量を求めた。その結果を下記の表2に示す。
離型フィルム(「E7002」:商品名、東洋紡績(株)製)の離型面に、固形分が20%になるよう溶剤で希釈したアクリル系粘着剤(「AS2140」:商品名、一方社油脂工業(株)製)を乾燥膜厚が25μmとなるようにドクターブレートにて塗布し、風速5m/secのドライエアーが当たるオーブンにて100℃で1分間乾燥させて粘着層を形成して粘着フィルムを得た。該粘着フィルムに前記実施例1で得られた光学フィルタの近赤外線吸収層側に粘着層が接するようにして、ローラ温度:23℃、線圧:0.035kg/cmのラミネートローラを使用して貼り合わせ、粘着層付きの光学フィルタを得た。
得られた本実施例5の光学フィルタの製造直後のヘイズ、視感透過率、NIR透過率、プラズマディスプレイの表示面に配置した時の色目変化、プラズマディスプレイの表示面に配置した時のコントラスト変化を測定し、その結果を下記の表1に示す。また、本実施例5の光学フィルタの耐湿熱負荷後(60℃、湿度90%の環境で1000時間さらした後)に前記製造直後と同じ試験をおこなった結果を下記の表1に示す。
また、435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比、及び610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比について、耐湿熱処理を行う前(初期)と後の変化量を求めた。その結果を下記の表2に示す。
前記実施例1で得られた光学フィルタの近赤外線吸収層側に、最初の無機光学薄膜としてSiO1 N1 の膜を、2番目の無機光学薄膜として酸化インジウム・錫系化合物(ITO)の薄膜を、3番目の無機光学薄膜としてTa2 O5 の薄膜を、最外層の無機光学薄膜としてSiO2 の薄膜をスパッタリングで、それぞれの膜厚が、SiO1 N1 の膜で23nm、ITOの薄膜で60nm、Ta2 O5 の膜で53nm、SiO2 膜で90nmとなるように成膜し、反射防止層を形成して、反射防止層付きの光学フィルタを得た。
得られた本実施例6の光学フィルタの製造直後のヘイズ、視感透過率、NIR透過率、プラズマディスプレイの表示面に配置した時の色目変化、プラズマディスプレイの表示面に配置した時のコントラスト変化を測定し、その結果を下記の表1に示す。また、本実施例6の光学フィルタの耐湿熱負荷後(60℃、湿度90%の環境で1000時間さらした後)に前記製造直後と同じ試験をおこなった結果を下記の表1に示す。
また、435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比、及び610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比について、耐湿熱処理を行う前(初期)と後の変化量を求めた。その結果を下記の表2に示す。
前記実施例1で得られた光学フィルタの近赤外線吸収層側に、アクリル樹脂粒子(根山工業(株)製、品番:「アートパール」をジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに分散させた混合液をマイヤーバーにて乾燥膜厚が4μmになるように塗布乾燥硬化せしめて防眩層を形成し、防眩層付きの光学フィルタを得た。
得られた本実施例7の光学フィルタの製造直後のヘイズ、視感透過率、NIR透過率、プラズマディスプレイの表示面に配置した時の色目変化、プラズマディスプレイの表示面に配置した時のコントラスト変化を測定し、その結果を下記の表1に示す。また、本実施例7の光学フィルタの耐湿熱負荷後(60℃、湿度90%の環境で1000時間さらした後)に前記製造直後と同じ試験をおこなった結果を下記の表1に示す。
また、435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比、及び610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比について、耐湿熱処理を行う前(初期)と後の変化量を求めた。その結果を下記の表2に示す。
透明バインダ樹脂としてウレタン系樹脂(Tg:−20℃、水酸基価:15、酸価:20)を用いた以外は、前記実施例1と同様に行なって光学フィルタを得た。
得られた本実施例8の光学フィルタの製造直後のヘイズ、視感透過率、NIR透過率、プラズマディスプレイの表示面に配置した時の色目変化、プラズマディスプレイの表示面に配置した時のコントラスト変化を測定し、その結果を下記の表1に示す。また、本実施例8の光学フィルタの耐湿熱負荷後(60℃、湿度90%の環境で1000時間さらした後)に前記製造直後と同じ試験をおこなった結果を下記の表1に示す。
また、435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比、及び610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比について、耐湿熱処理を行う前(初期)と後の変化量を求めた。その結果を下記の表2に示す。
[比較例1]
近赤外線吸収色素にジインモニウム系近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製、品番:「IRG−022」)0.1mmol/m2 のみを用いた以外は、前記実施例1と同様に行なって光学フィルタを得た。
[比較例1]
近赤外線吸収色素にジインモニウム系近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製、品番:「IRG−022」)0.1mmol/m2 のみを用いた以外は、前記実施例1と同様に行なって光学フィルタを得た。
得られた比較例1の光学フィルタの製造直後のヘイズ、視感透過率、NIR透過率、プラズマディスプレイの表示面に配置した時の色目変化、プラズマディスプレイの表示面に配置した時のコントラスト変化を測定し、その結果を下記の表1に示す。また、本比較例1の光学フィルタの耐湿熱負荷後(60℃、湿度90%の環境で1000時間さらした後)に前記製造直後と同じ試験をおこなった結果を下記の表1に示す。
また、435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比、及び610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比について、耐湿熱処理を行う前(初期)と後の変化量を求めた。その結果を下記の表2に示す。
[比較例2]
透明バインダ樹脂としてアクリル系樹脂(Tg:20℃、水酸基価:1、酸価:15)を用いた以外は、前記実施例1と同様に行なって光学フィルタを得た。
[比較例2]
透明バインダ樹脂としてアクリル系樹脂(Tg:20℃、水酸基価:1、酸価:15)を用いた以外は、前記実施例1と同様に行なって光学フィルタを得た。
得られた比較例2の光学フィルタの製造直後のヘイズ、視感透過率、NIR透過率、プラズマディスプレイの表示面に配置した時の色目変化、プラズマディスプレイの表示面に配置した時のコントラスト変化を測定し、その結果を下記の表1に示す。また、本比較例2の光学フィルタの耐湿熱負荷後(60℃、湿度90%の環境で1000時間さらした後)に前記製造直後と同じ試験をおこなった結果を下記の表1に示す。
また、435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比、及び610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比について、耐湿熱処理を行う前(初期)と後の変化量を求めた。その結果を下記の表2に示す。
〔評価法〕
透明性(ヘイズ):カラーコンピューター(スガ試験機(株)製、品番:「SM−C」を用い、各々の近赤外線吸収フィルタから切り出した50mm×50mmの大きさの試験片について求めた。
〔評価法〕
透明性(ヘイズ):カラーコンピューター(スガ試験機(株)製、品番:「SM−C」を用い、各々の近赤外線吸収フィルタから切り出した50mm×50mmの大きさの試験片について求めた。
視感透過率、近赤外線領域透過率:分光光度計(株)島津製作所製、品番:「UV−3100PC」を用い、各々の近赤外線吸収フィルムから切り出した50mm×50mmの大きさの試験片について測定した。
色目およびコントラスト変化:目視により判断した。
表1の項目中、酸価、水酸基価の単位はmgKOH/gであり、実施例3の透明バインダ樹脂の樹脂系のPC系はポリカーボネート系であり、製造直後および耐湿熱試験後のNIR透過率は近赤外線領域(波長:800nm〜1100nm)における最大光線透過率を指す。
表1に示されるように、実施例1〜実施例8の光学フィルタは、製造直後のヘイズ、視感透過率、近赤外線領域透過率、PDP前面に配置した際の色目およびコントラスト、いずれの項目においても極めて優れており、特に実施例1〜実施例7の光学フィルタの特性は温度;60℃および湿度;90%の環境で1000時間さらした後においても殆ど変わらずに維持され、従って、実用上十分な耐湿熱性を有していることが分かる。
これらに対して、比較例1および比較例2の光学フィルタは、製造直後においてヘイズ、視感透過率、近赤外線領域透過率、PDP前面に配置した際の色目およびコントラスト、いずれの項目も悪く、これら特性は温度;60℃および湿度;90%の環境で1000時間さらした後には更に悪化する。その為、比較例1および比較例2の光学フィルタは実用上問題を有するものであると言える。
表2によれば、本発明の光学フィルタは、耐湿熱環境に曝した後でも可視光線における光線透過率の変化量は少なく、光学的に安定した光学フィルタであることがわかる。
本発明の光学フィルタは、近赤外線遮蔽性を備え、可視光線の透過率が高く、全体として明るく、青色及び赤色に対して緑色の光線透過率のバランスがよいので、ディスプレイ、特にプラズマディスプレイの前面に配置した場合には、ディスプレイとの色マッチングが良く、明るく、コントラストにおいても優れた映像を得る。
1 光学フィルタ
2 透明基材
3 近赤外線吸収層
4 近赤外線吸収積層体
5 防汚層
6 反射防止層(又は防眩層)
7 金属メッシュ層
8 プラズマディスプレイ
2 透明基材
3 近赤外線吸収層
4 近赤外線吸収積層体
5 防汚層
6 反射防止層(又は防眩層)
7 金属メッシュ層
8 プラズマディスプレイ
Claims (13)
- 少なくとも透明基材、および近赤外線を吸収する色素を透明バインダ樹脂中に含有する近赤外線吸収層とが積層された積層構造を有する光学フィルタであって、該光学フィルタの435〜455nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、610〜630nmにおける最大光線透過率に対する545nmにおける光線透過率の比が、1.15〜1:1であり、且つ、545nmにおける光線透過率が60%以上であることを特徴とする光学フィルタ。
- 前記光学フィルタの435〜455nmにおける最大光線透過率、610〜630nmにおける最大光線透過率、及び545nmにおける光線透過率の大きさが、この順である請求項1記載の光学フィルタ。
- 前記近赤外線吸収色素は、次の一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1又は2記載の光学フィルタ。
- 前記一般式(1)におけるXが、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオンである請求項3記載の光学フィルタ。
- 前記透明バインダ樹脂の水酸基価が10以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の光学フィルタ。
- 前記透明バインダ樹脂の酸価が10以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の光学フィルタ。
- 前記透明バインダ樹脂のガラス転移温度が80℃〜150℃であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の光学フィルタ。
- 片面もしくは両面に防汚層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の光学フィルタ。
- 片面もしくは両面に金属メッシュ層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の光学フィルタ。
- 片面もしくは両面に粘着剤層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の光学フィルタ。
- 片面もしくは両面に反射防止層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項記載の光学フィルタ。
- 片面もしくは両面に防眩層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載の光学フィルタ。
- 請求項1乃至12の何れか1項記載の光学フィルタがディスプレイの観察側に配置されていることを特徴とするディスプレイ。
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-
2003
- 2003-09-10 JP JP2003317986A patent/JP2005084474A/ja active Pending
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