JP2004361525A - 光学フィルタおよびこれを用いたディスプレイ - Google Patents
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Abstract
【課題】近赤外線吸収層と隣接する層との屈折率の差が大きく、不透明になることを解消し、また、高温下や加湿下で近赤外線の遮蔽性が低下したり、可視光の透過率が低下することがない光学フィルタ、および光学フィルタが適用されたディスプレイを提供することを課題とする。
【解決手段】透明基材2および近赤外線吸収層3およびその他の層から構成され、層間の屈折率の差、層3の透明バインダ樹脂のTg、水酸基価、酸価等を規定し、好ましくは近赤外線吸収色素としてジインモニウム系化合物を用い、対イオンを変更することにより、課題を解決することができた。
【選択図】 図1
【解決手段】透明基材2および近赤外線吸収層3およびその他の層から構成され、層間の屈折率の差、層3の透明バインダ樹脂のTg、水酸基価、酸価等を規定し、好ましくは近赤外線吸収色素としてジインモニウム系化合物を用い、対イオンを変更することにより、課題を解決することができた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、近赤外線遮蔽性を備えた光学フィルタに関するものである。また、本発明はそのような光学フィルタを備えたディスプレイ、特にプラズマディスプレイに関するものでもある。
【0002】
【従来の技術】
電気的、もしくは電子的な装置が発生した電磁波は、他の装置に悪影響を与えたり、また、人体や動物に対して影響を与えることがあると言われている。一例として、プラズマディスプレイ(以降、PDPと略記することがある。)からは、30MHz〜130MHzの周波数の電磁波が発生するため、周囲にあるコンピュータ、もしくはコンピュータ利用機器に影響を与えることがあり、発生する電磁波をできるだけ外部に洩らさないことが望まれている。
【0003】
PDPはまた、放電ガスにネオンとキセノンの混合ガスを用いているため、波長800nm〜1000nmの近赤外線を放出し、この近赤外線は、近赤外線を利用した各種機器、例えば、家庭電気製品のリモートコントローラや、パソコンやコードレス電話等の近赤外線を利用した通信機器の誤作動を引き起こす恐れがあるとされており、この点でも改善が望まれている。
【0004】
従来、上記のような改善を行なうものとして、透明な基材フィルム上に、接着剤もしくは粘着剤、金属薄膜のメッシュ、およびメッシュの凹凸面を平坦化する平坦化層を順に積層し、これらの内の接着剤もしくは粘着剤、または平坦化層に、可視光及び/又は近赤外の特定の波長を吸収する吸収剤を含有させた電磁波遮蔽用部材が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
また、近赤外線吸収能を有する色素を用い、コーティング法やキャスト法で得たフィルムも知られている。(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−311843号公報(第4頁、図7−9)
【特許文献2】
特開平11−116826号公報(第5頁、図1)
【0006】
特許文献1に記載された電磁波遮蔽用部材は、金属薄膜のメッシュを有するので、電磁波遮蔽性を有し、また、可視光及び/又は近赤外の特定の波長を吸収する吸収剤を含有するので、近赤外線遮蔽性も有しており、ディスプレイの色バランス、外光を吸収することによるコントラストの向上も可能とされている。また特許文献2に記載されたフィルムは、近赤外線吸収能を有する色素を用いて、コーティング法やキャスト法により、近赤外線遮蔽性を有するフィルムを得るものである。
【0007】
しかしながら、上記のいずれの従来技術においても、可視光及び/又は近赤外の特定の波長を吸収する吸収剤を用いることにより、吸収剤を含有する層の屈折率が変化するので、吸収剤を含有する層と隣接する層との屈折率の差が大きいと、全体が不透明となる問題がある。また、吸収剤を含有する層の樹脂によっては、高温下や加湿下で、近赤外線の遮蔽性が低下したり、可視領域に特定の吸収が現れ、着色もしくは変色して見える等の問題もある。さらに、これらの問題を解決しようとする場合、本来的に備えなければならない点として、近赤外線吸収層や金属メッシュが見えてはならないこと(非視認性)、透明性(ヘイズ)、可視領域での透過率(視感透過率)、および近赤外領域での遮蔽性(近赤外線透過率)等がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、近赤外線吸収性色素を用いる際に、近赤外線吸収性色素を含有する層の屈折率が変化し、隣接する層との屈折率の差が大きくなって全体が不透明になることが解消された光学フィルタを提供することを課題とする。また、本発明は、高温下や加湿下で、近赤外線の遮蔽性が低下したり、可視領域に特定の吸収が現れ、着色もしくは変色して見える等の問題が解消された光学フィルタを提供することを課題とする。さらに本発明は、上記の課題が解消された上で、種々の機能が付加された光学フィルタを提供することも課題とし、これらのカラーフィルタが適用されたディスプレイ、特にプラズマディスプレイを提供することも課題とする。
【0009】
【課題を解決する手段】
発明者は、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、近赤外線吸収性色素を含有する層の屈折率と隣接する層の屈折率との差を一定基準以内にすることによって、また、近赤外線吸収性色素を含有する層の樹脂として、一定基準以下の水酸基価、酸価、もしくは所定の範囲のガラス転移温度を有するものを用いることによって、上記課題が解決できることが判明し、以下のような事項を内容とする本発明に到達することができた。
【0010】
第1の発明は、少なくとも透明基材、および近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素を透明バインダ樹脂中に含有する近赤外線吸収層とが積層された積層構造を有し、前記近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収層と前記近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収層に隣接する層との屈折率の差が0.03〜0.14であることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記近赤外線吸収色素が次の一般式(1)で表されるジインモニウム系化合物であることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0012】
【化2】
【0013】
上記一般式(1)において、Rは互いに同一もしくは相異なる水素、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、フェニル基、もしくはハロゲン化アルキル基であり、Xは1価もしくは2価の陰イオンであり、nは1もしくは1/2である。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記透明バインダ樹脂の水酸基価が10以下であることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0015】
第4の発明は、第1〜第3いずれかの発明において、前記透明バインダ樹脂の酸価が10以下であることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0016】
第5の発明は、第1〜第4いずれかの発明において、前記透明バインダ樹脂のガラス転移温度が80℃〜150℃であることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0017】
第6の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、片面もしくは両面に防汚層が積層されていることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0018】
第7の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、片面もしくは両面に金属メッシュ層が積層されていることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0019】
第8の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、片面もしくは両面に粘着剤層が積層されていることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0020】
第9の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、片面もしくは両面に反射防止層が積層されていることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0021】
第10の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、片面もしくは両面に防眩層が積層されていることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0022】
第11の発明は、第1〜第10いずれかの発明の光学フィルタがディスプレイの観察側に配置されていることを特徴とするディスプレイに関するものである。。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1(a)〜(d)は、いずれの、本発明の光学フィルタの積層構造を例示する断面図である。本発明の光学フィルタは、最も基本的には、図1(a)に符号1Aで示すように、透明基材2上に近赤外線吸収層3が積層された積層構造を有する近赤外線吸収積層体4からなるものである。この透明基材2は、積層の際に行なわれ得る接着性向上のための処理が施されたものであってよい。この近赤外線吸収積層体4における近赤外線吸収層3の屈折率と、層2に隣接する透明基材2の屈折率との差は、0.03〜0.14であることが望ましく、また、後に詳述するように、近赤外線吸収層3を構成する成分である透明バインダ樹脂としては、その水酸基価、酸価、もしくはガラス転移温度がある一定の範囲内のものであることが好ましい。
【0024】
図1(a)に示す近赤外線吸収積層体4は、光学フィルタの分野で知られた様々な層を1種もしくは2種以上、付加して積層することにより、それらの層が加わることによりさらに機能が付与された光学フィルタを構成することができる。即ち、図1(b)に示すように、光学フィルタ1Bは、近赤外線吸収積層体4の近赤外線吸収層2側、即ち、図中の上側に使用時の汚染を防止するための防汚層3が積層されたものであってもよい。防汚層3は、図1(b)に示すように上側のみにではなく、下側のみに積層されていてもよく、上側および下側の両方に積層されていてもよい。
【0025】
図1(c)に示すように、光学フィルタ1Cは、近赤外線吸収積層体4の上側に、反射防止層6が積層されたものであってもよい。反射防止層6もまた、図1(c)に示すように上側のみにではなく、下側のみに積層されていてもよく、上側および下側の両方に積層されていてもよい。反射防止層6の代りに、防眩層が積層されていてもよく、やはり、上側もしくは下側の片方、または両方に積層されていてよい。
【0026】
図1(d)に示すように、光学フィルタ1Dは、近赤外線吸収積層体4の上側に、導電性金属等からなる金属メッシュ層7が積層されたものであってもよい。金属メッシュ層7もまた、図1(d)に示すように上側のみにではなく、下側のみに積層されていてもよく、上側および下側の両方に積層されていてもよい。
【0027】
上記のような様々な層を伴なうか、もしくは伴わない光学フィルター1A〜1D(以降、特に断らない限り、符号1は、上記のような1A〜1Dのような様々な積層構造を含めて指すものとする。)は、いずれかの片面もしくは両面に粘着剤層を積層して、光学フィルタが適用されるべき被適用面に貼り付けられるよう構成してもよい。粘着剤層はむき出しのままでは取扱いにくいから、貼り付けの直前まで、剥離性を有するシートが積層されたものであることが好ましい。これらの様々な構造を採り得る光学フィルタ1は、種々のタイプのディスプレイに適用することができ、例えば、図2に示すように、プラズマディスプレイ8の前面(観察側の面)に配置して使用することができ、粘着剤層が積層された光学フィルター1は、プラズマディスプレイ8の前面に直接に貼り付けて使用することもできる。なお粘着剤層の積層は片面に対して行なわれることが多いが、両面に粘着剤を積層し、片面をディスプレイへの貼り付け用に、他面を他の機能を有するフィルムとの貼りあわせに使用するというような用途にも利用することができる。
【0028】
本発明の光学フィルタを構成する透明基材2および近赤外線吸収層3、並びに上記したように、基本的な積層構造に付加され得る各層の素材や積層方法等につき、以降に詳細に説明する。
【0029】
透明基材2は、近赤外線吸収層3や、付加的に積層される種々の層の積層対象となるか、もしくは光学フィルタ1の支持体となるものである。従って、透明基材2は、可視光に対して透明性を有し、近赤外線吸収層3や、その他の種々の層が積層可能であれば、その種類は特に限定されるものではない。
【0030】
例えば、透明基材2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルホン、もしくはポリエーテルケトン等の樹脂からなるフィルムを挙げることができ、単独で、または同種もしくは異種のものを積層して用いることができる。
【0031】
上記のうちでも、透明性、耐熱性、および取扱い性の面等から、また、量産されていて比較的安価な点で、PETフィルムが最も好ましい。
【0032】
透明基材2の透明性としては、透明基材2が単層の場合、可視領域の光線透過率が80%以上であることが好ましい。また、透明性を有するとは、無色透明であることが好ましいけれども、必ずしも無色透明であることに限ることはなく、本発明の目的を妨げない程度であれば着色された着色透明であってもよい。可視領域の光線透過率は出来る限り高いことが好ましいが、最終製品としては50%以上の光線透過率が必要なことから最低2枚を積層する場合でも、それぞれの透明基材としては光線透過率が80%であれば、目的に適う。もちろん、光線透過率が高ければ高いほど、透明基材を複数枚を積層出来るため、透明基材2の単層の光線透過率はより好ましくは85%以上であり、最も好ましくは90%以上である。光線透過率を向上させるには厚みを薄くするもの有効な手段である。
【0033】
透明基材2の厚みは、透明性さえ満足すれば特に制限されないが、加工性の面からは、12μm程度〜300μm程度の範囲であることが好ましい。厚みが12μm未満の場合は透明基材2が柔軟過ぎて、加工する際の張力により伸張やシワが発生しやすい。また、厚みが300μmを超えるとフィルムの可撓性が減少し、各工程での連続巻き取りが困難になる上、透明基材2どうしを複数枚、積層する際の加工性が大幅に劣るといった問題もある。
【0034】
近赤外線吸収層3は、基本的には、透明バインダ樹脂中に、近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素を含有するものである。
【0035】
近赤外線吸収色素としては、光学フィルタ1が代表的な用途であるプラズマディスプレイの前面に適用される場合、プラズマディスプレイはキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1200nmの波長域を吸収するものであることが好ましく、この波長域内での光線透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0036】
同時に近赤外線吸収層3は、可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長域では、十分な光線透過率を有する必要がある。
【0037】
上記の両方の波長域における光線透過率は、分光光度計((株)島津製作所製、品番;「UV−3100PC」を使用し、JIS Z 8722「色の測定方法−反射及び透過物体色」に定める方法によって求めたものである。
【0038】
近赤外線吸収色素としては、具体的には、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス等の無機系近赤外線吸収色素、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、ジインモニウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類等の有機系近赤外線吸収色素を1種、または2種以上を併用することができる。これらのうち、無機系近赤外線吸収色素は、平均粒径が0.05μm〜1μmの微粒子であることが好ましく、平均粒径はより好ましくは0.01μm〜0.5μmの範囲内である。
【0039】
本発明における近赤外線吸収色素としては、上記のうちでも、ジインモニウム系化合物を用いることが好ましい。この理由は、ジインモニウム系化合物は、近赤外線領域にモル吸光係数εが約10万程度の大きな吸収を有し、可視光領域内である波長400nm〜500nm付近に若干の光吸収があるものの、可視光透過率が他の近赤外線吸収色素よりも優れているからである。
【0040】
ジインモニウム系化合物としては、式(1)により前記したものが好ましく、式中のRは前記した通りであるが、そのうちのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、もしくはブチル基等が好ましい。式(1)中のXは1価もしくは2価の陰イオンである。1価の陰イオンの場合nは1であり、2価の陰イオンの場合nは1/2である。1価の陰イオンとしては、例えば有機酸1価アニオン、無機1価アニオン等が挙げられる。有機酸1価アニオンとしては、例えば酢酸イオン、乳酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、ステアリン酸イオン等の有機カルボン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ナフタレンモノスルホン酸イオン、クロロベンゼンスルホン酸イオン、ニトロベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等の有機スルホン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ブチルトリフェニルホウ酸イオン等の有機ホウ酸イオン等が挙げられ、好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等のハロゲノアルキルスルホン酸イオンもしくはアルキルアリールスルホン酸イオンが挙げられる。これらの陰イオンのうち、好ましいものとしては、例えばトリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0041】
無機1価アニオンとしては、例えばフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、もしくはヨウ素イオン等のハロゲンイオン、チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、バナジン酸イオン、リン酸イオン、またはホウ酸イオン等が挙げられ、これらの無機1価イオンのうち、より好ましいものとしては、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、もしくはヘキサフルオロアンチモン酸イオン等が挙げられる。
【0042】
2価の陰イオンとしては、例えばナフタレン−1,5−ジスルホン酸、R酸、G酸、H酸、ベンゾイルH酸、p−クロルベンゾイルH酸、p−トルエンスルホニルH酸、クロルH酸、クロルアセチルH酸、メタニルγ酸、6−スルホナフチル−γ酸、C酸、ε酸、p−トルエンスルホニルR酸、ナフタリン−1,6−ジスルホン酸、もしくは1−ナフトール−4,8−ジスルホン酸、等のナフタレンジスルホン酸誘導体、カルボニルJ酸、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ジJ 酸、ナフタル酸、ナフタリン−2,3−ジカルボン酸、ジフェン酸、スチルベン−4,4’−ジカルボン酸、6−スルホ−2−オキシ−3−ナフトエ酸、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸、1,6−ジアミノアントラキノン−2,7−ジスルホン酸、2−(4−スルホフェニル)−6−アミノベンゾトリアゾール−5−スルホン酸、6−(3−メチル−5−ピラゾニル)−ナフタレン−1,3−ジスルホン酸、または1−ナフトール−6−(4−アミノ−3−スルホ)アニリノ−3−スルホン酸等の2価の有機酸のイオンが挙げられる。これらの中でも好ましいものとしては、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、もしくはR酸が挙げられる。
【0043】
ジインモニウム系化合物としては、市販品である日本化薬(株)製、品番;「IRG−022」(対イオンがヘキサフルオロアンチモン酸イオンであるもの、もしくは同社製、品番;「IRG−040」を用いることもできる。
【0044】
ところで、本発明における近赤外線吸収層3は、近赤外線吸収層3に隣接する層との可視光領域における屈折率の差が0.03〜0.14であることが望ましい。図1(a)に示すように、近赤外線吸収層3に隣接する層が透明基材2のみである場合は、近赤外吸収層3に隣接する層は透明基材2であるが、図1(b)〜(d)を引用して説明した例におけるように、近赤外線吸収層3の上下に該当する層がある場合は、近赤外線吸収層3との屈折率の差が大きい方の層との屈折率の差が0.03〜0.14であることが望ましい。言い換えれば、屈折率の差が大きくとも0.03〜0.14であるとも表現し得る。上記の屈折率の差が0.14を超えると、近赤外線吸収層3と該当する層との界面での光の反射が増加するので、可視光領域での光線透過率が低下し、好ましくないが、屈折率の差が0.14以下であると、界面での光の反射が低下し、光線透過率の低下が少なくなる。また、屈折率の差が0.03未満であると、近赤外線吸収層の近赤外線吸収色素の含有量が不十分で、近赤外線領域、即ち、800nm〜1200nmの波長域の光を充分に吸収できないことがある。
【0045】
屈折率の差を0.03〜0.14に制御するには、近赤外線吸収層3の屈折率または/および近赤外線吸収層3と隣接する層の屈折率を制御することにより行なえ、原則的には、各層を構成する素材を、それらの屈折率が、近赤外線吸収層3と隣接する層との間で所定の差以下になるように選択することにより行なえばよいが、近赤外線吸収層3中の近赤外線吸収色素としてジインモニウム系化合物を用い、その対イオンを変更することにより、好ましい屈折率の差を実現することができる。
【0046】
例えば、アンチモン等の重金属は炭素等の有機物と比較して電子密度が高いので、アンチモン等の重金属を含む対イオンを有するジインモニウム系化合物を近赤外線吸収色素として含む近赤外線吸収層3の屈折率は、アンチモン等の重金属を含まない近赤外線吸収層3の屈折率とくらべて大きくなるから、対イオンの種類を変えたジインモニウム系化合物を用いることによって、近赤外線吸収特性に影響を与えることなく、近赤外線吸収層3の可視領域における屈折率を容易に制御することが可能となる。
【0047】
近赤外線吸収層3中には、近赤外線吸収色素を1種、または2種以上混合して用いることは既に述べた通りであるが、本発明における好ましい近赤外線吸収色素であるジインモニウム系化合物を用いる場合、近赤外線吸収層の近赤外線吸収波長域を広げたり、近赤外線吸収層の色見(=外観的な色のこと。)を調製することを目的として、ジインモニウム系化合物以外の近赤外線吸収色素が配合されていてもよく、例えば、フタロシアニン系化合物、もしくはジチオール系金属錯体類等がジインモニウム系化合物と併用される。フタロシアニン系化合物、およびジチオール系金属錯体類は両方を用いてもよい。
【0048】
近赤外線吸収層3に用いられる透明バインダ樹脂としては、可視光領域での光線透過率の高い樹脂であることが好ましい。具体的な透明バインダ樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレンまたはプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂を挙げることができ、中でもアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。透明バインダ樹脂の平均分子量は500〜60万であることが好ましく、より好ましくは1万〜40万である。平均分子量をこれらの範囲とすることにより、上記のような性質を有するものとすることができるからである。
【0049】
本発明において、近赤外線吸収層3に近赤外線吸収色素として、対イオンを有するものを含有させたときは、透明バインダ樹脂が水酸基、もしくは酸基を有するものであるか、または透明バインダ樹脂中に重合開始剤等が配合されている場合には、それらの水酸基、もしくは酸基、または重合開始剤等により近赤外線吸収色素の母骨格と対イオンの均衡状態が崩れ、近赤外線吸収の機能を果たすことが困難となる場合があるので、この解消の目的で、透明バインダ樹脂としては、水酸基価もしくは酸価の小さいものを用いることが好ましく、水酸基価および酸価のいずれもが小さいものを用いることがより好ましい。なお、対イオンを有する近赤外線吸収色素とは、前記したうち、ジインモニウム系化合物、ニッケル錯体類、ジチオール系錯体類、アミニウム系化合物、シアニン系化合物、もしくはピリリウム系化合物等である。
【0050】
上記の理由により、水酸基価としては10以下が好ましく、より好ましくは5以下であり、0であることが特に好ましい。水酸基価をこのように小さくすることにより、近赤外線吸収層が含有する、例えば対イオンを有する近赤外線吸収色素が、透明バインダ樹脂が有する水酸基により反応すること等を防ぐことができるため、近赤外線吸収機能が高温高湿度下でも経時的に安定な光学フィルタとすることができ、また近赤外線吸収色素の選択の幅を広げることが可能になる。ここで、水酸基価とは試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を指す。
【0051】
同様に、酸価としては10以下が好ましく、より好ましくは5以下であり、0であることが特に好ましい。酸価をこのように小さくすることにより、透明バインダ樹脂が含有する酸により、近赤外線吸収色素が反応すること等を防ぐことができるため、近赤外線吸収機能が高温高湿度下でも経時的に安定な光学フィルタとすることができる。ここで酸価とは、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を指す。
【0052】
また、透明バインダ樹脂としては、そのガラス転移温度(以降において、Tgと言うことがある。)が、光学フィルタ1が実際に使用されるときの温度以上であることが好ましい。ガラス転移温度が光学フィルタ1が実際に使用されるときの温度未満であると、言い換えれば、光学フィルタ1がガラス転移温度以上で使用されると、透明バインダ樹脂中に含有される近赤外線吸収色素どうしが反応を起こしたり、透明バインダ樹脂が空気中の水分を吸収するため、近赤外線吸収色素の劣化や透明バインダ樹脂の劣化が起きやすくなるためである。
【0053】
上記の観点から、透明バインダ樹脂のガラス転移温度は、光学フィルタ1が実際に使用されるときの温度の値にもよるが、例えば、80℃〜150℃であることが好ましい。ガラス転移温度が80℃未満の透明バインダ樹脂を用いると、近赤外線吸収色素と透明バインダ樹脂との相互作用、もしくは近赤外線吸収色素どうしの相互作用等が起こり、近赤外線吸収色素の変性が起こる。また、ガラス転移温度が150℃を超える透明バインダ樹脂を用いると、このような透明バインダ樹脂を溶剤に溶解して近赤外線吸収層形成用組成物を調製し、コーティングにより近赤外線吸収層3を形成する際に、十分な乾燥を行なわせるには乾燥温度を高温にする必要が生じるから、近赤外線吸収色素として耐熱性の低いものを用いた場合に、近赤外線吸収色素の劣化を招きやすく、と言って、乾燥温度を低温にすると、長い乾燥時間が必要になるため、乾燥工程の効率が低下し、生産コストの上昇を起こし、あるいは、十分な乾燥が行なえないために残留した溶剤が近赤外線吸収色素の劣化を招く原因ともなる。
【0054】
近赤外線吸収層3中の近赤外線吸収色素と透明バインダ樹脂との好ましい配合割合は、透明バインダ樹脂100に対して近赤外線吸収色素0.001〜100であり、より好ましくは、近赤外線吸収色素0.01〜50であり、特に好ましくは、0.1〜10である。なお、配合比は質量基準である。
【0055】
フタロシアニン系化合物としては、市販品である(株)日本触媒製、品番;「Excolor IR−1」、「同IR−2」、「同IR−3」、もしくは「同IR−4」、または「TXEX−805K」、「同−809K」、「同−810K」、「同−811K」、もしくは「同−812K」を用いることもできる。
【0056】
また、ジチオール系金属錯体類等としては、市販品である三井化学(株)製、品番;「SIR−128」、「SIR−130」、「SIR−132」、もしくは「SIR−159」を用いることもできる。
【0057】
近赤外線吸収層3の形成は、近赤外線吸収色素および透明バインダ樹脂をその他の必要に応じて添加する添加剤と共に、溶剤および/または希釈剤を加えて混合し、各成分を溶解もしくは分散させて近赤外線吸収層形成用組成物を調製し、得られた近赤外線吸収層形成用組成物を塗布対象に塗布することにより行なう。あるいは、近赤外線吸収色素および透明バインダ樹脂をその他の必要に応じて添加する添加剤と共に溶融混練した組成物を溶融押出ししながら塗布対象に塗布することにより行なうこともできる。
【0058】
上記の添加剤としては、近赤外線吸収層の耐久性を向上させるために、酸化防止剤、もしくは紫外線吸収剤等を用いることができ、酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、硫黄系、燐酸系、亜燐酸系、もしくは金属錯体系等のものを、また、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、もしくはベンゾトリアゾール系等のものを挙げることができる。
【0059】
上記の近赤外線吸収層形成用組成物を調製する際に用いる溶剤としては、色素の溶解性の観点からアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、トリフルオロプロパノール、n−ヘキサン、もしくはn−ヘプタン、または水等が挙げられるが、これら以外のものであってもよい。
【0060】
また、上記の近赤外線吸収層形成用組成物を塗布する方法としては、マイヤーバーコーティング、ドクターブレードコーティング、グラビアコーティング、グラビアリバースコーティング、キスリバースコーティング、3本ロールリバースコーティング、スリットリバースダイコーティング、ダイコーティング、もしくはコンマコーティング等の各種コーティングの方式を用いることができる。
【0061】
近赤外線吸収積層体4に付加して積層し得る防汚層5は、光学フィルタ1を使用する際に、その表面に、不用意な接触や環境からの汚染が原因で、ごみや汚染物質が付着するのを防止し、あるいは付着しても除去しやすくするために形成される層である。例えば、フッ素系コート剤、シリコーン系コート剤、フッ素系シリコーンコート剤等が使用され、なかでもフッ素系シリコーンコート剤が好ましく適用される。これらの防汚層の厚さは好ましくは100nm以下で、より好ましくは10nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下である。防汚層の厚さが100nmを超えると、汚染防止性が初期には優れているが、耐久性において劣るものとなる。汚染防止性とその耐久性のバランスから、防汚層の厚みは5nm以下が最も好ましい。
【0062】
近赤外線吸収積層体4に付加して積層し得る反射防止層6は、高屈折率層と低屈折率層が順に積層されたものが代表的であるが、これ以外の積層構造を持つものもある。高屈折率層は、例えば、ZnOやTiO2の素材の薄膜、もしくはこれらの素材の微粒子が分散した透明樹脂膜である。また、低屈折率層は、SiO2からなる薄膜、もしくはSiO2ゲル膜、または、フッ素含有の、もしくはフッ素およびケイ素含有の透明樹脂膜である。反射防止層6が積層されたことにより、積層された側の外光等の不要な光の反射を低下させ、適用されるディスプレイの画像もしくは映像のコントラストを高めることができる。
【0063】
近赤外線吸収積層体4に付加して積層し得る防眩層6は、例えば、透明樹脂中に直径数μm程度のポリスチレン樹脂やアクリル樹脂等のビーズを分散させたものであり、層が持つ光拡散性により、ディスプレイ前面に配置した際に、ディスプレイの特定の位置、方向に生じるシンチレーションの防止を行なうためのものである。
【0064】
近赤外線吸収積層体4に付加して積層し得る金属メッシュ層7は、光学フィルタ1が適用される電気的もしくは電子的な装置、とりわけ、プラズマディスプレイから発生した電磁波を遮蔽するものである。金属メッシュ層7の代りに透明導電性薄膜も利用される。金属メッシュ層7は、電磁波遮蔽能を有するものであれば、その金属の種類は特に限定されるものではなく、例えば、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、金、銀、ステンレス、タングステン、クロム、チタン等を用いることができ、中でも銅が好ましく、銅箔の種類としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられるが、特に電解銅箔であることが好ましい。電解銅箔を選択することにより、厚さが10μm以下の均一性のよいものとすることができ、また黒化処理された際に、酸化クロム等との密着性を良好なものとすることができるからである。
【0065】
ここで、本発明においては、上記金属メッシュ層7は、その一方の面または両面が黒化処理されていることが好ましい。黒化処理とは、酸化クロム等により金属メッシュの表面を黒化する処理であり、光学フィルタにおいて、この酸化処理面は、観察者側の面となるように配置される。この黒化処理により金属メッシュ層表面に形成された酸化クロム等により、光学フィルタ表面の外光が吸収されることから、光学フィルタ表面で光が散乱することを防止することができ、良好な透過性を得ることが可能な光学フィルタとすることができるのである。
【0066】
金属メッシュ層7の開口率は、電磁波遮蔽能の観点からは、低いほどよいが、開口率が低くなると光線透過率が低下するので、開口率としては50%以上であることが好ましい。
【0067】
金属メッシュ層7は、透明基材2上に金属箔を積層し、エッチングによってメッシュ状とするので、透明基材2〜金属メッシュ層7には、接着剤層が介在することが普通である。接着剤層は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール単独もしくはその部分ケン化品、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンエステル樹脂等の接着剤で構成する。
【0068】
金属メッシュ層7が積層されている場合、金属メッシュ層7は開口部と非開口部とが凹凸をなしているので、金属メッシュ層7上に、透明樹脂が金属メッシュ層7の厚み以上の厚みに形成された平坦化層が積層されていてもよい。
【0069】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0070】
(実施例1)
透明バインダ樹脂としての透明アクリル樹脂(Tg;100℃、平均分子量;25万、水酸基価;0、酸価;0)をメチルエチルケトン中に固形分比が20%(質量基準)となるよう溶解した樹脂溶液中に、ジインモニウム系近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製、品番;「IRG−022」、対イオン;SbF6 −)0.2mmol/m2、およびフタロシアニン系近赤外線吸収色素((株)日本触媒製、品番;「IR−1」)0.2mmol/m2の2種類の近赤外線吸収色素を添加して十分分散させて得た塗布用溶液を用い、厚みが100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(東洋紡績(株)製、品番;「A4300」、屈折率;1.65)上に、マイヤーバーにて乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、風速5m/secのドライエアーが当たるオーブンにて100℃で1分間乾燥して近赤外線吸収層を形成し、近赤外線吸収フィルタを得た。なお、近赤外線吸収色素の配合量は、上記の膜厚の近赤外線吸収層における単位面積当たりの近赤外線吸収色素の量で示す。
【0071】
(実施例2)
近赤外線吸収色素として、ジインモニウム系近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製、品番;「IRG−022」、対イオン;SbF6 −)0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0072】
(実施例3)
透明バインダ樹脂としてポリエステル系樹脂(Tg;80℃、平均分子量;23万、水酸基価;1、酸価;3)を、また、近赤外線吸収色素として、ジインモニウム系近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製、品番;「IRG−022」、対イオン;SbF6 −)0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0073】
(実施例4)
透明バインダ樹脂としてポリカーボネート系樹脂(Tg;130℃、平均分子量;5万、水酸基価;0、酸価;0)を、また、近赤外線吸収色素として、ジインモニウム系近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製、品番;「IRG−022」、対イオン;SbF6 −)0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0074】
(実施例5)
実施例2で得られた近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層側にフッ素系シリコーン汚染防止剤である、パーフルオロアルキル基含有シリコーン系化合物を、厚みが3.0nmになるよう塗布し、乾燥、硬化させて防汚層を形成し、防汚層付きの近赤外線吸収フィルタを得た。
【0075】
(実施例6)
ポリエチレン樹脂フィルムの離型面に、固形分が20%(質量比)になるよう溶剤で希釈したアクリル系粘着剤を乾燥膜厚が25μmとなるようにドクターブレードにて塗布し、風速5m/secのドライエアーが当たるオーブンにて100℃で1分間乾燥させて粘着層を形成して得た粘着フィルムを、実施例2で得られた近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層側に粘着層が接するようにして、ローラ温度;23℃、線圧;0.035kg/cmのラミネートローラを使用して貼りあわせ、粘着層付きの近赤外線吸収フィルタを得た。
【0076】
(実施例7)
実施例2で得られた近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層側に、いずれもスパッタリング法により、厚みが23nmのSiO1N1薄膜、厚みが60nmのITO(酸化インジウム・錫)薄膜、厚みが53nmのTa2O薄膜、および厚みが90nmのSiO2薄膜を、この順に成膜して、4層の薄膜からなる反射防止層を形成し、反射防止層付きの近赤外線吸収フィルタを得た。
【0077】
(実施例8)
実施例2で得られた近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層側に、アクリル樹脂微粒子(根上工業(株)製、商品名;「アートパール」)をジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに分散させた塗料をマイヤーバーにて、乾燥膜厚が4μmになるよう塗布し、乾燥、硬化させて防眩層を形成し、防眩層付きの近赤外線吸収フィルタを得た。
【0078】
(実施例9)
透明バインダ樹脂としてウレタン系樹脂(Tg;−20℃、平均分子量;500、水酸基価;15、酸価;20)を、また、近赤外線吸収色素として、ジインモニウム系近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製、品番;「IRG−022」、対イオン;SBF6 −)0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0079】
(比較例1)
近赤外線吸収色素として、N,N,N’,N’,−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン−ビス(インモニウム)・過塩素酸塩0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0080】
(比較例2)
近赤外線吸収色素として、N,N,N’,N’,−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン−ビス(インモニウム)・ヘキサフルオロ燐酸塩0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0081】
(比較例3)
透明バインダ樹脂としてウレタン系樹脂(Tg;−20℃、平均分子量;500、水酸基価;15、酸価;20)を、また、近赤外線吸収色素として、N,N,N’,N’,−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン−ビス(インモニウム)・ヘキサフルオロ燐酸塩0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0082】
(評価法)
上記実施例1〜実施例9、および比較例1〜比較例3で得られた各々の近赤外線吸収フィルタにつき、製造直後、および恒温恒湿槽中の60℃、90%の環境で1000時間さらす耐湿熱試験後における透明性、視感透過率、および近赤外線透過率の各項目について測定した結果を「表1」〜「表3」に示す。
【0083】
なお、上記の各項目および「表1」〜「表3」中のその他の項目の測定は、以下の各測定条件で行ったものである。
透明性(ヘイズ);カラーコンピューター(スガ試験機(株)製、品番;「SM−C」を用い、各々の近赤外線吸収フィルタから切り出した50mm×50mmの大きさの試験片について求めた。
屈折率;エリプソメーター(ジョバンイボン(Jobin Yvon)社製、商品名;「UVISEL」(登録商標))を用い、各々の近赤外線吸収フィルタから切り出した50mm×50mmの大きさの試験片について求めた。
視感透過率、近赤外線領域透過率;分光光度計((株)島津製作所製、品番;「UV−3100PC」を用い、各々の近赤外線吸収フィルタから切り出した50mm×50mmの大きさの試験片について、JIS Z 8701「色の表現方法」〜XYZ表色系及びX10Y10Z10表示系、およびJIS Z 8722「色の測定方法−反射及び透過物体色に記載される測定方法に従って測定した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
「表1」〜「表3」の項目中、NIR層の屈折率は近赤外線吸収層の屈折率」を指し、色素の添加量の単位はmmol/m2であり、実施例4の透明バインダ樹脂の樹脂系のPC系はポリカーボネート系であり、製造直後および耐湿熱試験後のNIR透過率は近赤外線領域(波長;850nm〜1100nm)における透過率を指す。また、近赤外線吸収層の上下に隣接する層がある場合の屈折率の差は、近赤外線吸収層との屈折率の差が大きい方の層との屈折率の差を指す。
【0088】
「表1」〜「表3」に示されるように、実施例1〜実施例9の近赤外線吸収フィルタは、製造直後のヘイズ、視感透過率、および近赤外線領域透過率のいずれの項目においても極めて優れており、特に実施例1〜実施例8の近赤外線フィルタの特性は、製造後、温度;60℃および湿度;90%の環境で1000時間さらした後においてもほとんど変らずに維持され、従って、実用上十分な耐湿熱性を有していることが分かる。これらに対して、比較例1〜比較例3の近赤外線吸収フィルタは、製造直後において、特に、視感透過率および近赤外線領域透過率が著しく悪く、特に比較例3の近赤外線吸収フィルタは、製造後、温度;60℃および湿度;90%の環境で1000時間さらした後に、視感透過率、および近赤外線領域透過率がさらに著しく悪化する。結局、比較例1〜比較例3の近赤外線吸収フィルタは、実用上問題を有するものであると言える。
【0089】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、近赤外線吸収層と隣接する層との屈折率の差を0.03〜0.14と規定したので、隣接する層との界面での光の反射を低下させることができ、可視領域における透過率の高い光学フィルタを提供することができる。
【0090】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、近赤外線吸収色素を特定のジインモニウム化合物としたので、近赤外線領域での遮蔽性が高く、しかも、可視光透過率が高い近赤外線吸収層を構成でき、また、その対イオンを変更することにより、近赤外線吸収層と隣接する層との好ましい屈折率の差を実現することが可能な光学フィルタを提供することができる。
【0091】
請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、近赤外線吸収層を構成する透明バインダ樹脂として水酸基価が10以下のものを用いたので、近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素が、透明バインダ樹脂が有する水酸基と反応することを防止でき、高温高湿度下でも経時的に安定な近赤外線吸収機能を有する光学フィルタを提供することができる。
【0092】
請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3いずれかの発明の効果に加え、透明バインダ樹脂として酸価が10以下のものを用いたので、近赤外線吸収色素が、透明バインダ樹脂が有する酸と反応することを防止でき、高温高湿度下でも経時的に安定な近赤外線吸収機能を有する光学フィルタを提供することができる。
【0093】
請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4いずれかの発明の効果に加え、透明バインダ樹脂のガラス転移温度の範囲を、通常の使用条件以上に規定したので、近赤外線吸色素どうし、もしくは近赤外線吸収色素と周囲の透明バインダ樹脂との反応を抑制することができ、実用上、十分な耐熱性を有する光学フィルタを提供することができる。
【0094】
請求項6の発明によれば、請求項1〜請求項5いずれかの発明の効果に加え、防汚層が積層されたことにより、ごみや汚染物質が付着するのを防止でき、付着しても除去が容易な光学フィルタを提供することができる。
【0095】
請求項7の発明によれば、請求項1〜請求項5いずれかの発明の効果に加え、金属メッシュ層が積層されたことにより、適用される対象の電気的装置、電子的装置から発生する電磁波を遮蔽可能な光学フィルターを提供することができ、特に、プラズマディスプレイに適用するのに最適である。
【0096】
請求項8の発明によれば、請求項1〜請求項5いずれかの発明の効果に加え、粘着剤を有することにより、適用面への貼り付けが容易な光学フィルタを提供することができる。
【0097】
請求項9の発明によれば、請求項1〜請求項5いずれかの発明の効果に加え、反射防止層が積層されたことにより、積層された面における不要な光の反射を防止でき、画像、映像のコントラストを向上させることが可能な光学フィルタを提供することができる。
【0098】
請求項10の発明によれば、請求項1〜請求項5いずれかの発明の効果に加え、防眩層が積層されたことにより、ディスプレイ前面に配置した際に、ディスプレイの特定の位置、方向に生じるシンチレーションの緩和が可能な光学フィルタを提供することができる。
【0099】
請求項11の発明によれば、請求項1〜請求項10いずれかの光学フィルタの持つ効果が発揮されたディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学フィルタの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の光学フィルタを前面に配置したプラズマディスプレイの図である。
【符号の説明】
1………光学フィルタ
2………透明基材
3………近赤外線吸収層
4………近赤外線吸収積層体
5………防汚層
6………反射防止層(又は防眩層)
7………金属メッシュ層
8………PDP
【発明の属する技術分野】
本発明は、近赤外線遮蔽性を備えた光学フィルタに関するものである。また、本発明はそのような光学フィルタを備えたディスプレイ、特にプラズマディスプレイに関するものでもある。
【0002】
【従来の技術】
電気的、もしくは電子的な装置が発生した電磁波は、他の装置に悪影響を与えたり、また、人体や動物に対して影響を与えることがあると言われている。一例として、プラズマディスプレイ(以降、PDPと略記することがある。)からは、30MHz〜130MHzの周波数の電磁波が発生するため、周囲にあるコンピュータ、もしくはコンピュータ利用機器に影響を与えることがあり、発生する電磁波をできるだけ外部に洩らさないことが望まれている。
【0003】
PDPはまた、放電ガスにネオンとキセノンの混合ガスを用いているため、波長800nm〜1000nmの近赤外線を放出し、この近赤外線は、近赤外線を利用した各種機器、例えば、家庭電気製品のリモートコントローラや、パソコンやコードレス電話等の近赤外線を利用した通信機器の誤作動を引き起こす恐れがあるとされており、この点でも改善が望まれている。
【0004】
従来、上記のような改善を行なうものとして、透明な基材フィルム上に、接着剤もしくは粘着剤、金属薄膜のメッシュ、およびメッシュの凹凸面を平坦化する平坦化層を順に積層し、これらの内の接着剤もしくは粘着剤、または平坦化層に、可視光及び/又は近赤外の特定の波長を吸収する吸収剤を含有させた電磁波遮蔽用部材が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
また、近赤外線吸収能を有する色素を用い、コーティング法やキャスト法で得たフィルムも知られている。(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−311843号公報(第4頁、図7−9)
【特許文献2】
特開平11−116826号公報(第5頁、図1)
【0006】
特許文献1に記載された電磁波遮蔽用部材は、金属薄膜のメッシュを有するので、電磁波遮蔽性を有し、また、可視光及び/又は近赤外の特定の波長を吸収する吸収剤を含有するので、近赤外線遮蔽性も有しており、ディスプレイの色バランス、外光を吸収することによるコントラストの向上も可能とされている。また特許文献2に記載されたフィルムは、近赤外線吸収能を有する色素を用いて、コーティング法やキャスト法により、近赤外線遮蔽性を有するフィルムを得るものである。
【0007】
しかしながら、上記のいずれの従来技術においても、可視光及び/又は近赤外の特定の波長を吸収する吸収剤を用いることにより、吸収剤を含有する層の屈折率が変化するので、吸収剤を含有する層と隣接する層との屈折率の差が大きいと、全体が不透明となる問題がある。また、吸収剤を含有する層の樹脂によっては、高温下や加湿下で、近赤外線の遮蔽性が低下したり、可視領域に特定の吸収が現れ、着色もしくは変色して見える等の問題もある。さらに、これらの問題を解決しようとする場合、本来的に備えなければならない点として、近赤外線吸収層や金属メッシュが見えてはならないこと(非視認性)、透明性(ヘイズ)、可視領域での透過率(視感透過率)、および近赤外領域での遮蔽性(近赤外線透過率)等がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、近赤外線吸収性色素を用いる際に、近赤外線吸収性色素を含有する層の屈折率が変化し、隣接する層との屈折率の差が大きくなって全体が不透明になることが解消された光学フィルタを提供することを課題とする。また、本発明は、高温下や加湿下で、近赤外線の遮蔽性が低下したり、可視領域に特定の吸収が現れ、着色もしくは変色して見える等の問題が解消された光学フィルタを提供することを課題とする。さらに本発明は、上記の課題が解消された上で、種々の機能が付加された光学フィルタを提供することも課題とし、これらのカラーフィルタが適用されたディスプレイ、特にプラズマディスプレイを提供することも課題とする。
【0009】
【課題を解決する手段】
発明者は、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、近赤外線吸収性色素を含有する層の屈折率と隣接する層の屈折率との差を一定基準以内にすることによって、また、近赤外線吸収性色素を含有する層の樹脂として、一定基準以下の水酸基価、酸価、もしくは所定の範囲のガラス転移温度を有するものを用いることによって、上記課題が解決できることが判明し、以下のような事項を内容とする本発明に到達することができた。
【0010】
第1の発明は、少なくとも透明基材、および近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素を透明バインダ樹脂中に含有する近赤外線吸収層とが積層された積層構造を有し、前記近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収層と前記近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収層に隣接する層との屈折率の差が0.03〜0.14であることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記近赤外線吸収色素が次の一般式(1)で表されるジインモニウム系化合物であることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0012】
【化2】
【0013】
上記一般式(1)において、Rは互いに同一もしくは相異なる水素、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、フェニル基、もしくはハロゲン化アルキル基であり、Xは1価もしくは2価の陰イオンであり、nは1もしくは1/2である。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記透明バインダ樹脂の水酸基価が10以下であることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0015】
第4の発明は、第1〜第3いずれかの発明において、前記透明バインダ樹脂の酸価が10以下であることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0016】
第5の発明は、第1〜第4いずれかの発明において、前記透明バインダ樹脂のガラス転移温度が80℃〜150℃であることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0017】
第6の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、片面もしくは両面に防汚層が積層されていることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0018】
第7の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、片面もしくは両面に金属メッシュ層が積層されていることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0019】
第8の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、片面もしくは両面に粘着剤層が積層されていることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0020】
第9の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、片面もしくは両面に反射防止層が積層されていることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0021】
第10の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、片面もしくは両面に防眩層が積層されていることを特徴とする光学フィルタに関するものである。
【0022】
第11の発明は、第1〜第10いずれかの発明の光学フィルタがディスプレイの観察側に配置されていることを特徴とするディスプレイに関するものである。。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1(a)〜(d)は、いずれの、本発明の光学フィルタの積層構造を例示する断面図である。本発明の光学フィルタは、最も基本的には、図1(a)に符号1Aで示すように、透明基材2上に近赤外線吸収層3が積層された積層構造を有する近赤外線吸収積層体4からなるものである。この透明基材2は、積層の際に行なわれ得る接着性向上のための処理が施されたものであってよい。この近赤外線吸収積層体4における近赤外線吸収層3の屈折率と、層2に隣接する透明基材2の屈折率との差は、0.03〜0.14であることが望ましく、また、後に詳述するように、近赤外線吸収層3を構成する成分である透明バインダ樹脂としては、その水酸基価、酸価、もしくはガラス転移温度がある一定の範囲内のものであることが好ましい。
【0024】
図1(a)に示す近赤外線吸収積層体4は、光学フィルタの分野で知られた様々な層を1種もしくは2種以上、付加して積層することにより、それらの層が加わることによりさらに機能が付与された光学フィルタを構成することができる。即ち、図1(b)に示すように、光学フィルタ1Bは、近赤外線吸収積層体4の近赤外線吸収層2側、即ち、図中の上側に使用時の汚染を防止するための防汚層3が積層されたものであってもよい。防汚層3は、図1(b)に示すように上側のみにではなく、下側のみに積層されていてもよく、上側および下側の両方に積層されていてもよい。
【0025】
図1(c)に示すように、光学フィルタ1Cは、近赤外線吸収積層体4の上側に、反射防止層6が積層されたものであってもよい。反射防止層6もまた、図1(c)に示すように上側のみにではなく、下側のみに積層されていてもよく、上側および下側の両方に積層されていてもよい。反射防止層6の代りに、防眩層が積層されていてもよく、やはり、上側もしくは下側の片方、または両方に積層されていてよい。
【0026】
図1(d)に示すように、光学フィルタ1Dは、近赤外線吸収積層体4の上側に、導電性金属等からなる金属メッシュ層7が積層されたものであってもよい。金属メッシュ層7もまた、図1(d)に示すように上側のみにではなく、下側のみに積層されていてもよく、上側および下側の両方に積層されていてもよい。
【0027】
上記のような様々な層を伴なうか、もしくは伴わない光学フィルター1A〜1D(以降、特に断らない限り、符号1は、上記のような1A〜1Dのような様々な積層構造を含めて指すものとする。)は、いずれかの片面もしくは両面に粘着剤層を積層して、光学フィルタが適用されるべき被適用面に貼り付けられるよう構成してもよい。粘着剤層はむき出しのままでは取扱いにくいから、貼り付けの直前まで、剥離性を有するシートが積層されたものであることが好ましい。これらの様々な構造を採り得る光学フィルタ1は、種々のタイプのディスプレイに適用することができ、例えば、図2に示すように、プラズマディスプレイ8の前面(観察側の面)に配置して使用することができ、粘着剤層が積層された光学フィルター1は、プラズマディスプレイ8の前面に直接に貼り付けて使用することもできる。なお粘着剤層の積層は片面に対して行なわれることが多いが、両面に粘着剤を積層し、片面をディスプレイへの貼り付け用に、他面を他の機能を有するフィルムとの貼りあわせに使用するというような用途にも利用することができる。
【0028】
本発明の光学フィルタを構成する透明基材2および近赤外線吸収層3、並びに上記したように、基本的な積層構造に付加され得る各層の素材や積層方法等につき、以降に詳細に説明する。
【0029】
透明基材2は、近赤外線吸収層3や、付加的に積層される種々の層の積層対象となるか、もしくは光学フィルタ1の支持体となるものである。従って、透明基材2は、可視光に対して透明性を有し、近赤外線吸収層3や、その他の種々の層が積層可能であれば、その種類は特に限定されるものではない。
【0030】
例えば、透明基材2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルホン、もしくはポリエーテルケトン等の樹脂からなるフィルムを挙げることができ、単独で、または同種もしくは異種のものを積層して用いることができる。
【0031】
上記のうちでも、透明性、耐熱性、および取扱い性の面等から、また、量産されていて比較的安価な点で、PETフィルムが最も好ましい。
【0032】
透明基材2の透明性としては、透明基材2が単層の場合、可視領域の光線透過率が80%以上であることが好ましい。また、透明性を有するとは、無色透明であることが好ましいけれども、必ずしも無色透明であることに限ることはなく、本発明の目的を妨げない程度であれば着色された着色透明であってもよい。可視領域の光線透過率は出来る限り高いことが好ましいが、最終製品としては50%以上の光線透過率が必要なことから最低2枚を積層する場合でも、それぞれの透明基材としては光線透過率が80%であれば、目的に適う。もちろん、光線透過率が高ければ高いほど、透明基材を複数枚を積層出来るため、透明基材2の単層の光線透過率はより好ましくは85%以上であり、最も好ましくは90%以上である。光線透過率を向上させるには厚みを薄くするもの有効な手段である。
【0033】
透明基材2の厚みは、透明性さえ満足すれば特に制限されないが、加工性の面からは、12μm程度〜300μm程度の範囲であることが好ましい。厚みが12μm未満の場合は透明基材2が柔軟過ぎて、加工する際の張力により伸張やシワが発生しやすい。また、厚みが300μmを超えるとフィルムの可撓性が減少し、各工程での連続巻き取りが困難になる上、透明基材2どうしを複数枚、積層する際の加工性が大幅に劣るといった問題もある。
【0034】
近赤外線吸収層3は、基本的には、透明バインダ樹脂中に、近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素を含有するものである。
【0035】
近赤外線吸収色素としては、光学フィルタ1が代表的な用途であるプラズマディスプレイの前面に適用される場合、プラズマディスプレイはキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1200nmの波長域を吸収するものであることが好ましく、この波長域内での光線透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0036】
同時に近赤外線吸収層3は、可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長域では、十分な光線透過率を有する必要がある。
【0037】
上記の両方の波長域における光線透過率は、分光光度計((株)島津製作所製、品番;「UV−3100PC」を使用し、JIS Z 8722「色の測定方法−反射及び透過物体色」に定める方法によって求めたものである。
【0038】
近赤外線吸収色素としては、具体的には、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス等の無機系近赤外線吸収色素、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、ジインモニウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類等の有機系近赤外線吸収色素を1種、または2種以上を併用することができる。これらのうち、無機系近赤外線吸収色素は、平均粒径が0.05μm〜1μmの微粒子であることが好ましく、平均粒径はより好ましくは0.01μm〜0.5μmの範囲内である。
【0039】
本発明における近赤外線吸収色素としては、上記のうちでも、ジインモニウム系化合物を用いることが好ましい。この理由は、ジインモニウム系化合物は、近赤外線領域にモル吸光係数εが約10万程度の大きな吸収を有し、可視光領域内である波長400nm〜500nm付近に若干の光吸収があるものの、可視光透過率が他の近赤外線吸収色素よりも優れているからである。
【0040】
ジインモニウム系化合物としては、式(1)により前記したものが好ましく、式中のRは前記した通りであるが、そのうちのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、もしくはブチル基等が好ましい。式(1)中のXは1価もしくは2価の陰イオンである。1価の陰イオンの場合nは1であり、2価の陰イオンの場合nは1/2である。1価の陰イオンとしては、例えば有機酸1価アニオン、無機1価アニオン等が挙げられる。有機酸1価アニオンとしては、例えば酢酸イオン、乳酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、ステアリン酸イオン等の有機カルボン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ナフタレンモノスルホン酸イオン、クロロベンゼンスルホン酸イオン、ニトロベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等の有機スルホン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ブチルトリフェニルホウ酸イオン等の有機ホウ酸イオン等が挙げられ、好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等のハロゲノアルキルスルホン酸イオンもしくはアルキルアリールスルホン酸イオンが挙げられる。これらの陰イオンのうち、好ましいものとしては、例えばトリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0041】
無機1価アニオンとしては、例えばフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、もしくはヨウ素イオン等のハロゲンイオン、チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、バナジン酸イオン、リン酸イオン、またはホウ酸イオン等が挙げられ、これらの無機1価イオンのうち、より好ましいものとしては、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、もしくはヘキサフルオロアンチモン酸イオン等が挙げられる。
【0042】
2価の陰イオンとしては、例えばナフタレン−1,5−ジスルホン酸、R酸、G酸、H酸、ベンゾイルH酸、p−クロルベンゾイルH酸、p−トルエンスルホニルH酸、クロルH酸、クロルアセチルH酸、メタニルγ酸、6−スルホナフチル−γ酸、C酸、ε酸、p−トルエンスルホニルR酸、ナフタリン−1,6−ジスルホン酸、もしくは1−ナフトール−4,8−ジスルホン酸、等のナフタレンジスルホン酸誘導体、カルボニルJ酸、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ジJ 酸、ナフタル酸、ナフタリン−2,3−ジカルボン酸、ジフェン酸、スチルベン−4,4’−ジカルボン酸、6−スルホ−2−オキシ−3−ナフトエ酸、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸、1,6−ジアミノアントラキノン−2,7−ジスルホン酸、2−(4−スルホフェニル)−6−アミノベンゾトリアゾール−5−スルホン酸、6−(3−メチル−5−ピラゾニル)−ナフタレン−1,3−ジスルホン酸、または1−ナフトール−6−(4−アミノ−3−スルホ)アニリノ−3−スルホン酸等の2価の有機酸のイオンが挙げられる。これらの中でも好ましいものとしては、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、もしくはR酸が挙げられる。
【0043】
ジインモニウム系化合物としては、市販品である日本化薬(株)製、品番;「IRG−022」(対イオンがヘキサフルオロアンチモン酸イオンであるもの、もしくは同社製、品番;「IRG−040」を用いることもできる。
【0044】
ところで、本発明における近赤外線吸収層3は、近赤外線吸収層3に隣接する層との可視光領域における屈折率の差が0.03〜0.14であることが望ましい。図1(a)に示すように、近赤外線吸収層3に隣接する層が透明基材2のみである場合は、近赤外吸収層3に隣接する層は透明基材2であるが、図1(b)〜(d)を引用して説明した例におけるように、近赤外線吸収層3の上下に該当する層がある場合は、近赤外線吸収層3との屈折率の差が大きい方の層との屈折率の差が0.03〜0.14であることが望ましい。言い換えれば、屈折率の差が大きくとも0.03〜0.14であるとも表現し得る。上記の屈折率の差が0.14を超えると、近赤外線吸収層3と該当する層との界面での光の反射が増加するので、可視光領域での光線透過率が低下し、好ましくないが、屈折率の差が0.14以下であると、界面での光の反射が低下し、光線透過率の低下が少なくなる。また、屈折率の差が0.03未満であると、近赤外線吸収層の近赤外線吸収色素の含有量が不十分で、近赤外線領域、即ち、800nm〜1200nmの波長域の光を充分に吸収できないことがある。
【0045】
屈折率の差を0.03〜0.14に制御するには、近赤外線吸収層3の屈折率または/および近赤外線吸収層3と隣接する層の屈折率を制御することにより行なえ、原則的には、各層を構成する素材を、それらの屈折率が、近赤外線吸収層3と隣接する層との間で所定の差以下になるように選択することにより行なえばよいが、近赤外線吸収層3中の近赤外線吸収色素としてジインモニウム系化合物を用い、その対イオンを変更することにより、好ましい屈折率の差を実現することができる。
【0046】
例えば、アンチモン等の重金属は炭素等の有機物と比較して電子密度が高いので、アンチモン等の重金属を含む対イオンを有するジインモニウム系化合物を近赤外線吸収色素として含む近赤外線吸収層3の屈折率は、アンチモン等の重金属を含まない近赤外線吸収層3の屈折率とくらべて大きくなるから、対イオンの種類を変えたジインモニウム系化合物を用いることによって、近赤外線吸収特性に影響を与えることなく、近赤外線吸収層3の可視領域における屈折率を容易に制御することが可能となる。
【0047】
近赤外線吸収層3中には、近赤外線吸収色素を1種、または2種以上混合して用いることは既に述べた通りであるが、本発明における好ましい近赤外線吸収色素であるジインモニウム系化合物を用いる場合、近赤外線吸収層の近赤外線吸収波長域を広げたり、近赤外線吸収層の色見(=外観的な色のこと。)を調製することを目的として、ジインモニウム系化合物以外の近赤外線吸収色素が配合されていてもよく、例えば、フタロシアニン系化合物、もしくはジチオール系金属錯体類等がジインモニウム系化合物と併用される。フタロシアニン系化合物、およびジチオール系金属錯体類は両方を用いてもよい。
【0048】
近赤外線吸収層3に用いられる透明バインダ樹脂としては、可視光領域での光線透過率の高い樹脂であることが好ましい。具体的な透明バインダ樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレンまたはプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂を挙げることができ、中でもアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。透明バインダ樹脂の平均分子量は500〜60万であることが好ましく、より好ましくは1万〜40万である。平均分子量をこれらの範囲とすることにより、上記のような性質を有するものとすることができるからである。
【0049】
本発明において、近赤外線吸収層3に近赤外線吸収色素として、対イオンを有するものを含有させたときは、透明バインダ樹脂が水酸基、もしくは酸基を有するものであるか、または透明バインダ樹脂中に重合開始剤等が配合されている場合には、それらの水酸基、もしくは酸基、または重合開始剤等により近赤外線吸収色素の母骨格と対イオンの均衡状態が崩れ、近赤外線吸収の機能を果たすことが困難となる場合があるので、この解消の目的で、透明バインダ樹脂としては、水酸基価もしくは酸価の小さいものを用いることが好ましく、水酸基価および酸価のいずれもが小さいものを用いることがより好ましい。なお、対イオンを有する近赤外線吸収色素とは、前記したうち、ジインモニウム系化合物、ニッケル錯体類、ジチオール系錯体類、アミニウム系化合物、シアニン系化合物、もしくはピリリウム系化合物等である。
【0050】
上記の理由により、水酸基価としては10以下が好ましく、より好ましくは5以下であり、0であることが特に好ましい。水酸基価をこのように小さくすることにより、近赤外線吸収層が含有する、例えば対イオンを有する近赤外線吸収色素が、透明バインダ樹脂が有する水酸基により反応すること等を防ぐことができるため、近赤外線吸収機能が高温高湿度下でも経時的に安定な光学フィルタとすることができ、また近赤外線吸収色素の選択の幅を広げることが可能になる。ここで、水酸基価とは試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を指す。
【0051】
同様に、酸価としては10以下が好ましく、より好ましくは5以下であり、0であることが特に好ましい。酸価をこのように小さくすることにより、透明バインダ樹脂が含有する酸により、近赤外線吸収色素が反応すること等を防ぐことができるため、近赤外線吸収機能が高温高湿度下でも経時的に安定な光学フィルタとすることができる。ここで酸価とは、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を指す。
【0052】
また、透明バインダ樹脂としては、そのガラス転移温度(以降において、Tgと言うことがある。)が、光学フィルタ1が実際に使用されるときの温度以上であることが好ましい。ガラス転移温度が光学フィルタ1が実際に使用されるときの温度未満であると、言い換えれば、光学フィルタ1がガラス転移温度以上で使用されると、透明バインダ樹脂中に含有される近赤外線吸収色素どうしが反応を起こしたり、透明バインダ樹脂が空気中の水分を吸収するため、近赤外線吸収色素の劣化や透明バインダ樹脂の劣化が起きやすくなるためである。
【0053】
上記の観点から、透明バインダ樹脂のガラス転移温度は、光学フィルタ1が実際に使用されるときの温度の値にもよるが、例えば、80℃〜150℃であることが好ましい。ガラス転移温度が80℃未満の透明バインダ樹脂を用いると、近赤外線吸収色素と透明バインダ樹脂との相互作用、もしくは近赤外線吸収色素どうしの相互作用等が起こり、近赤外線吸収色素の変性が起こる。また、ガラス転移温度が150℃を超える透明バインダ樹脂を用いると、このような透明バインダ樹脂を溶剤に溶解して近赤外線吸収層形成用組成物を調製し、コーティングにより近赤外線吸収層3を形成する際に、十分な乾燥を行なわせるには乾燥温度を高温にする必要が生じるから、近赤外線吸収色素として耐熱性の低いものを用いた場合に、近赤外線吸収色素の劣化を招きやすく、と言って、乾燥温度を低温にすると、長い乾燥時間が必要になるため、乾燥工程の効率が低下し、生産コストの上昇を起こし、あるいは、十分な乾燥が行なえないために残留した溶剤が近赤外線吸収色素の劣化を招く原因ともなる。
【0054】
近赤外線吸収層3中の近赤外線吸収色素と透明バインダ樹脂との好ましい配合割合は、透明バインダ樹脂100に対して近赤外線吸収色素0.001〜100であり、より好ましくは、近赤外線吸収色素0.01〜50であり、特に好ましくは、0.1〜10である。なお、配合比は質量基準である。
【0055】
フタロシアニン系化合物としては、市販品である(株)日本触媒製、品番;「Excolor IR−1」、「同IR−2」、「同IR−3」、もしくは「同IR−4」、または「TXEX−805K」、「同−809K」、「同−810K」、「同−811K」、もしくは「同−812K」を用いることもできる。
【0056】
また、ジチオール系金属錯体類等としては、市販品である三井化学(株)製、品番;「SIR−128」、「SIR−130」、「SIR−132」、もしくは「SIR−159」を用いることもできる。
【0057】
近赤外線吸収層3の形成は、近赤外線吸収色素および透明バインダ樹脂をその他の必要に応じて添加する添加剤と共に、溶剤および/または希釈剤を加えて混合し、各成分を溶解もしくは分散させて近赤外線吸収層形成用組成物を調製し、得られた近赤外線吸収層形成用組成物を塗布対象に塗布することにより行なう。あるいは、近赤外線吸収色素および透明バインダ樹脂をその他の必要に応じて添加する添加剤と共に溶融混練した組成物を溶融押出ししながら塗布対象に塗布することにより行なうこともできる。
【0058】
上記の添加剤としては、近赤外線吸収層の耐久性を向上させるために、酸化防止剤、もしくは紫外線吸収剤等を用いることができ、酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、硫黄系、燐酸系、亜燐酸系、もしくは金属錯体系等のものを、また、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、もしくはベンゾトリアゾール系等のものを挙げることができる。
【0059】
上記の近赤外線吸収層形成用組成物を調製する際に用いる溶剤としては、色素の溶解性の観点からアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、トリフルオロプロパノール、n−ヘキサン、もしくはn−ヘプタン、または水等が挙げられるが、これら以外のものであってもよい。
【0060】
また、上記の近赤外線吸収層形成用組成物を塗布する方法としては、マイヤーバーコーティング、ドクターブレードコーティング、グラビアコーティング、グラビアリバースコーティング、キスリバースコーティング、3本ロールリバースコーティング、スリットリバースダイコーティング、ダイコーティング、もしくはコンマコーティング等の各種コーティングの方式を用いることができる。
【0061】
近赤外線吸収積層体4に付加して積層し得る防汚層5は、光学フィルタ1を使用する際に、その表面に、不用意な接触や環境からの汚染が原因で、ごみや汚染物質が付着するのを防止し、あるいは付着しても除去しやすくするために形成される層である。例えば、フッ素系コート剤、シリコーン系コート剤、フッ素系シリコーンコート剤等が使用され、なかでもフッ素系シリコーンコート剤が好ましく適用される。これらの防汚層の厚さは好ましくは100nm以下で、より好ましくは10nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下である。防汚層の厚さが100nmを超えると、汚染防止性が初期には優れているが、耐久性において劣るものとなる。汚染防止性とその耐久性のバランスから、防汚層の厚みは5nm以下が最も好ましい。
【0062】
近赤外線吸収積層体4に付加して積層し得る反射防止層6は、高屈折率層と低屈折率層が順に積層されたものが代表的であるが、これ以外の積層構造を持つものもある。高屈折率層は、例えば、ZnOやTiO2の素材の薄膜、もしくはこれらの素材の微粒子が分散した透明樹脂膜である。また、低屈折率層は、SiO2からなる薄膜、もしくはSiO2ゲル膜、または、フッ素含有の、もしくはフッ素およびケイ素含有の透明樹脂膜である。反射防止層6が積層されたことにより、積層された側の外光等の不要な光の反射を低下させ、適用されるディスプレイの画像もしくは映像のコントラストを高めることができる。
【0063】
近赤外線吸収積層体4に付加して積層し得る防眩層6は、例えば、透明樹脂中に直径数μm程度のポリスチレン樹脂やアクリル樹脂等のビーズを分散させたものであり、層が持つ光拡散性により、ディスプレイ前面に配置した際に、ディスプレイの特定の位置、方向に生じるシンチレーションの防止を行なうためのものである。
【0064】
近赤外線吸収積層体4に付加して積層し得る金属メッシュ層7は、光学フィルタ1が適用される電気的もしくは電子的な装置、とりわけ、プラズマディスプレイから発生した電磁波を遮蔽するものである。金属メッシュ層7の代りに透明導電性薄膜も利用される。金属メッシュ層7は、電磁波遮蔽能を有するものであれば、その金属の種類は特に限定されるものではなく、例えば、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、金、銀、ステンレス、タングステン、クロム、チタン等を用いることができ、中でも銅が好ましく、銅箔の種類としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられるが、特に電解銅箔であることが好ましい。電解銅箔を選択することにより、厚さが10μm以下の均一性のよいものとすることができ、また黒化処理された際に、酸化クロム等との密着性を良好なものとすることができるからである。
【0065】
ここで、本発明においては、上記金属メッシュ層7は、その一方の面または両面が黒化処理されていることが好ましい。黒化処理とは、酸化クロム等により金属メッシュの表面を黒化する処理であり、光学フィルタにおいて、この酸化処理面は、観察者側の面となるように配置される。この黒化処理により金属メッシュ層表面に形成された酸化クロム等により、光学フィルタ表面の外光が吸収されることから、光学フィルタ表面で光が散乱することを防止することができ、良好な透過性を得ることが可能な光学フィルタとすることができるのである。
【0066】
金属メッシュ層7の開口率は、電磁波遮蔽能の観点からは、低いほどよいが、開口率が低くなると光線透過率が低下するので、開口率としては50%以上であることが好ましい。
【0067】
金属メッシュ層7は、透明基材2上に金属箔を積層し、エッチングによってメッシュ状とするので、透明基材2〜金属メッシュ層7には、接着剤層が介在することが普通である。接着剤層は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール単独もしくはその部分ケン化品、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンエステル樹脂等の接着剤で構成する。
【0068】
金属メッシュ層7が積層されている場合、金属メッシュ層7は開口部と非開口部とが凹凸をなしているので、金属メッシュ層7上に、透明樹脂が金属メッシュ層7の厚み以上の厚みに形成された平坦化層が積層されていてもよい。
【0069】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0070】
(実施例1)
透明バインダ樹脂としての透明アクリル樹脂(Tg;100℃、平均分子量;25万、水酸基価;0、酸価;0)をメチルエチルケトン中に固形分比が20%(質量基準)となるよう溶解した樹脂溶液中に、ジインモニウム系近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製、品番;「IRG−022」、対イオン;SbF6 −)0.2mmol/m2、およびフタロシアニン系近赤外線吸収色素((株)日本触媒製、品番;「IR−1」)0.2mmol/m2の2種類の近赤外線吸収色素を添加して十分分散させて得た塗布用溶液を用い、厚みが100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(東洋紡績(株)製、品番;「A4300」、屈折率;1.65)上に、マイヤーバーにて乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、風速5m/secのドライエアーが当たるオーブンにて100℃で1分間乾燥して近赤外線吸収層を形成し、近赤外線吸収フィルタを得た。なお、近赤外線吸収色素の配合量は、上記の膜厚の近赤外線吸収層における単位面積当たりの近赤外線吸収色素の量で示す。
【0071】
(実施例2)
近赤外線吸収色素として、ジインモニウム系近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製、品番;「IRG−022」、対イオン;SbF6 −)0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0072】
(実施例3)
透明バインダ樹脂としてポリエステル系樹脂(Tg;80℃、平均分子量;23万、水酸基価;1、酸価;3)を、また、近赤外線吸収色素として、ジインモニウム系近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製、品番;「IRG−022」、対イオン;SbF6 −)0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0073】
(実施例4)
透明バインダ樹脂としてポリカーボネート系樹脂(Tg;130℃、平均分子量;5万、水酸基価;0、酸価;0)を、また、近赤外線吸収色素として、ジインモニウム系近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製、品番;「IRG−022」、対イオン;SbF6 −)0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0074】
(実施例5)
実施例2で得られた近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層側にフッ素系シリコーン汚染防止剤である、パーフルオロアルキル基含有シリコーン系化合物を、厚みが3.0nmになるよう塗布し、乾燥、硬化させて防汚層を形成し、防汚層付きの近赤外線吸収フィルタを得た。
【0075】
(実施例6)
ポリエチレン樹脂フィルムの離型面に、固形分が20%(質量比)になるよう溶剤で希釈したアクリル系粘着剤を乾燥膜厚が25μmとなるようにドクターブレードにて塗布し、風速5m/secのドライエアーが当たるオーブンにて100℃で1分間乾燥させて粘着層を形成して得た粘着フィルムを、実施例2で得られた近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層側に粘着層が接するようにして、ローラ温度;23℃、線圧;0.035kg/cmのラミネートローラを使用して貼りあわせ、粘着層付きの近赤外線吸収フィルタを得た。
【0076】
(実施例7)
実施例2で得られた近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層側に、いずれもスパッタリング法により、厚みが23nmのSiO1N1薄膜、厚みが60nmのITO(酸化インジウム・錫)薄膜、厚みが53nmのTa2O薄膜、および厚みが90nmのSiO2薄膜を、この順に成膜して、4層の薄膜からなる反射防止層を形成し、反射防止層付きの近赤外線吸収フィルタを得た。
【0077】
(実施例8)
実施例2で得られた近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層側に、アクリル樹脂微粒子(根上工業(株)製、商品名;「アートパール」)をジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに分散させた塗料をマイヤーバーにて、乾燥膜厚が4μmになるよう塗布し、乾燥、硬化させて防眩層を形成し、防眩層付きの近赤外線吸収フィルタを得た。
【0078】
(実施例9)
透明バインダ樹脂としてウレタン系樹脂(Tg;−20℃、平均分子量;500、水酸基価;15、酸価;20)を、また、近赤外線吸収色素として、ジインモニウム系近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製、品番;「IRG−022」、対イオン;SBF6 −)0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0079】
(比較例1)
近赤外線吸収色素として、N,N,N’,N’,−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン−ビス(インモニウム)・過塩素酸塩0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0080】
(比較例2)
近赤外線吸収色素として、N,N,N’,N’,−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン−ビス(インモニウム)・ヘキサフルオロ燐酸塩0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0081】
(比較例3)
透明バインダ樹脂としてウレタン系樹脂(Tg;−20℃、平均分子量;500、水酸基価;15、酸価;20)を、また、近赤外線吸収色素として、N,N,N’,N’,−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン−ビス(インモニウム)・ヘキサフルオロ燐酸塩0.2mmol/m2のみを用いた以外は、実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
【0082】
(評価法)
上記実施例1〜実施例9、および比較例1〜比較例3で得られた各々の近赤外線吸収フィルタにつき、製造直後、および恒温恒湿槽中の60℃、90%の環境で1000時間さらす耐湿熱試験後における透明性、視感透過率、および近赤外線透過率の各項目について測定した結果を「表1」〜「表3」に示す。
【0083】
なお、上記の各項目および「表1」〜「表3」中のその他の項目の測定は、以下の各測定条件で行ったものである。
透明性(ヘイズ);カラーコンピューター(スガ試験機(株)製、品番;「SM−C」を用い、各々の近赤外線吸収フィルタから切り出した50mm×50mmの大きさの試験片について求めた。
屈折率;エリプソメーター(ジョバンイボン(Jobin Yvon)社製、商品名;「UVISEL」(登録商標))を用い、各々の近赤外線吸収フィルタから切り出した50mm×50mmの大きさの試験片について求めた。
視感透過率、近赤外線領域透過率;分光光度計((株)島津製作所製、品番;「UV−3100PC」を用い、各々の近赤外線吸収フィルタから切り出した50mm×50mmの大きさの試験片について、JIS Z 8701「色の表現方法」〜XYZ表色系及びX10Y10Z10表示系、およびJIS Z 8722「色の測定方法−反射及び透過物体色に記載される測定方法に従って測定した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
「表1」〜「表3」の項目中、NIR層の屈折率は近赤外線吸収層の屈折率」を指し、色素の添加量の単位はmmol/m2であり、実施例4の透明バインダ樹脂の樹脂系のPC系はポリカーボネート系であり、製造直後および耐湿熱試験後のNIR透過率は近赤外線領域(波長;850nm〜1100nm)における透過率を指す。また、近赤外線吸収層の上下に隣接する層がある場合の屈折率の差は、近赤外線吸収層との屈折率の差が大きい方の層との屈折率の差を指す。
【0088】
「表1」〜「表3」に示されるように、実施例1〜実施例9の近赤外線吸収フィルタは、製造直後のヘイズ、視感透過率、および近赤外線領域透過率のいずれの項目においても極めて優れており、特に実施例1〜実施例8の近赤外線フィルタの特性は、製造後、温度;60℃および湿度;90%の環境で1000時間さらした後においてもほとんど変らずに維持され、従って、実用上十分な耐湿熱性を有していることが分かる。これらに対して、比較例1〜比較例3の近赤外線吸収フィルタは、製造直後において、特に、視感透過率および近赤外線領域透過率が著しく悪く、特に比較例3の近赤外線吸収フィルタは、製造後、温度;60℃および湿度;90%の環境で1000時間さらした後に、視感透過率、および近赤外線領域透過率がさらに著しく悪化する。結局、比較例1〜比較例3の近赤外線吸収フィルタは、実用上問題を有するものであると言える。
【0089】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、近赤外線吸収層と隣接する層との屈折率の差を0.03〜0.14と規定したので、隣接する層との界面での光の反射を低下させることができ、可視領域における透過率の高い光学フィルタを提供することができる。
【0090】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、近赤外線吸収色素を特定のジインモニウム化合物としたので、近赤外線領域での遮蔽性が高く、しかも、可視光透過率が高い近赤外線吸収層を構成でき、また、その対イオンを変更することにより、近赤外線吸収層と隣接する層との好ましい屈折率の差を実現することが可能な光学フィルタを提供することができる。
【0091】
請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、近赤外線吸収層を構成する透明バインダ樹脂として水酸基価が10以下のものを用いたので、近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素が、透明バインダ樹脂が有する水酸基と反応することを防止でき、高温高湿度下でも経時的に安定な近赤外線吸収機能を有する光学フィルタを提供することができる。
【0092】
請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3いずれかの発明の効果に加え、透明バインダ樹脂として酸価が10以下のものを用いたので、近赤外線吸収色素が、透明バインダ樹脂が有する酸と反応することを防止でき、高温高湿度下でも経時的に安定な近赤外線吸収機能を有する光学フィルタを提供することができる。
【0093】
請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4いずれかの発明の効果に加え、透明バインダ樹脂のガラス転移温度の範囲を、通常の使用条件以上に規定したので、近赤外線吸色素どうし、もしくは近赤外線吸収色素と周囲の透明バインダ樹脂との反応を抑制することができ、実用上、十分な耐熱性を有する光学フィルタを提供することができる。
【0094】
請求項6の発明によれば、請求項1〜請求項5いずれかの発明の効果に加え、防汚層が積層されたことにより、ごみや汚染物質が付着するのを防止でき、付着しても除去が容易な光学フィルタを提供することができる。
【0095】
請求項7の発明によれば、請求項1〜請求項5いずれかの発明の効果に加え、金属メッシュ層が積層されたことにより、適用される対象の電気的装置、電子的装置から発生する電磁波を遮蔽可能な光学フィルターを提供することができ、特に、プラズマディスプレイに適用するのに最適である。
【0096】
請求項8の発明によれば、請求項1〜請求項5いずれかの発明の効果に加え、粘着剤を有することにより、適用面への貼り付けが容易な光学フィルタを提供することができる。
【0097】
請求項9の発明によれば、請求項1〜請求項5いずれかの発明の効果に加え、反射防止層が積層されたことにより、積層された面における不要な光の反射を防止でき、画像、映像のコントラストを向上させることが可能な光学フィルタを提供することができる。
【0098】
請求項10の発明によれば、請求項1〜請求項5いずれかの発明の効果に加え、防眩層が積層されたことにより、ディスプレイ前面に配置した際に、ディスプレイの特定の位置、方向に生じるシンチレーションの緩和が可能な光学フィルタを提供することができる。
【0099】
請求項11の発明によれば、請求項1〜請求項10いずれかの光学フィルタの持つ効果が発揮されたディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学フィルタの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の光学フィルタを前面に配置したプラズマディスプレイの図である。
【符号の説明】
1………光学フィルタ
2………透明基材
3………近赤外線吸収層
4………近赤外線吸収積層体
5………防汚層
6………反射防止層(又は防眩層)
7………金属メッシュ層
8………PDP
Claims (11)
- 少なくとも透明基材、および近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素を透明バインダ樹脂中に含有する近赤外線吸収層とが積層された積層構造を有し、前記近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収層と前記近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収層に隣接する層との屈折率の差が0.03〜0.14であることを特徴とする光学フィルタ。
- 前記透明バインダ樹脂の水酸基価が10以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光学フィルタ。
- 前記透明バインダ樹脂の酸価が10以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれか記載の光学フィルタ。
- 前記透明バインダ樹脂のガラス転移温度が80℃〜150℃であることを特徴とする請求項1〜請求項4いずれか記載の光学フィルタ。
- 片面もしくは両面に防汚層が積層されていることを特徴とする請求項1〜請求項5いずれか記載の光学フィルタ。
- 片面もしくは両面に金属メッシュ層が積層されていることを特徴とする請求項1〜請求項5いずれか記載の光学フィルタ。
- 片面もしくは両面に粘着剤層が積層されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の光学フィルタ。
- 片面もしくは両面に反射防止層が積層されていることを特徴とする請求項1〜請求項5いずれか記載の光学フィルタ。
- 片面もしくは両面に防眩層が積層されていることを特徴とする請求項1〜請求項5いずれか記載の光学フィルタ。
- 請求項1〜請求項10いずれかの光学フィルタがディスプレイの観察側に配置されていることを特徴とするディスプレイ。
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