JP2006018104A - 光学機能フィルムおよびこれを備えたディスプレイ - Google Patents

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Abstract

【課題】赤外線吸収層を始めとする種々の光学機能層を有する光学機能シートを長期間使用した場合に、光学機能層が経時的に劣化し、ヘイズの増加等の光学機能が低下することを解消することを課題とする。
【解決手段】シート状基材2、および光学機能を発現する材料を含有する透明樹脂からなる光学機能層3とを積層し、光学機能層3の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量を60個/m2以下、残留溶剤量を80mg/m2以下とすることにより課題を解決することができた。光学機能層3は例えば赤外線吸収層やネオン光遮蔽層であり、他の光学機能層が複合されていてもよい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、経時的に光学機能が低下して支障をきたすことを解消した光学機能フィルムおよびそのような光学機能フィルムを備えたディスプレイに関するものである。
光学機能フィルムとして、特定の波長域の光を透過させるか遮蔽する光学フィルタ、例えば、可視光のバンドパスフィルタ、紫外線遮蔽フィルタ、もしくは赤外線遮蔽フィルタ、NDフィルタ、特定波長域の電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽フィルタ、光の反射を防止する反射防止フィルタ、またはディスプレイや光源のまぶしさを解消する防眩フィルタ等、各種のものが知られている。
これらの光学機能フィルムは、液晶ディスプレイ、CRT、もしくはプラズマディスプレイ等のディスプレイや計器類の前面に適用する、建築物の窓ガラスに適用する、太陽電池の表面に適用する等、種々の用途に用いることができる。
光学機能フィルムを適用する一つの好ましい対象としてプラズマディスプレイを取り上げると、プラズマディスプレイからは、30MHz〜130MHzの周波数の電磁波が生じ、周囲にあるコンピュータ、もしくはコンピュータ利用機器に影響を与えるため、このような波長域の電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽フィルタが必要である。通常、この目的で金属メッシュを用いたフィルタが使用される。プラズマディスプレイはまた、放電ガスにネオンとキセノンの混合ガスを用いているため、波長800nm〜1100nmの近赤外線を放出し、近赤外線を利用した各種機器、例えば、家庭電気製品のリモートコントローラや、パソコンやコードレス電話等の近赤外線を利用した通信機器の誤作動を引き起こす恐れがあるため、近赤外線吸収物質を含有するフィルタが必要である。また、プラズマディスプレイの表示のカラーバランスを補正する目的で、色補正用のフィルタが必要である。
例示したこれらのフィルタのうち、電磁波遮蔽フィルタ以外のフィルタは、通常、適宜な透明基材に、透明樹脂からなるバインダ樹脂中に、特定の光学機能を発現する材料を含有する光学機能層を積層する等により光学機能フィルムとして構成することが多い。ここにおける光学機能層は、発現される光学機能そのものが優れていることが重要であるが、経時的に光学機能が低下しないことも重要である。光学機能の低下は、光学機能層を発現する材料もしくは透明樹脂の単独、またはそれらの間の相互作用によって引き起こされ得る。
光学機能の低下の一つの例として、光学機能フィルムを長期間使用する間に、光学機能層に経時的に微細なクラック(ひび割れ)が生じる点が挙げられる。このようなクラックが生じると、ヘイズが増加するため、このような光学機能フィルムを通して眺めると白っぽくぼやけて見える欠点が生じて好ましくない上、光学機能にもよるが、近赤外線の遮蔽性が低下したり、もしくは可視領域に特定の吸収が現れる等により、着色もしくは変色して見える等の問題も生じる。
光学機能層そのものではないが、赤外線吸収フィルターを透明高分子フィルムと赤外線吸収層の積層により構成する場合に、基材である透明高分子フィルムの光学的歪みを低減するため、透明高分子フィルム中には実質的に粒子を含有しておらず、さらに大きさ20μm以上の異物が10個/m2以下とすることが紹介されている。(特許文献1)。
また、基材と、近赤外線吸収色素をバインダー樹脂に分散した組成物の層との積層物で構成され、残留溶剤量を5.0重量%とした赤外線吸収フィルターが紹介されており、このような構成とすることにより、高温、高湿下に長時間放置しても分光特性を安定にできるとしている。(特許文献2)。
特許文献1における、上記の「透明高分子フィルム中には実質的に粒子を含有しておらず、」の点は、製膜時の延伸工程で遺物の周囲で分子配向が乱れる結果、光学的歪みが発生し、実際の異物の大きさよりもかなり大きな欠点として認識される点を回避するものとされており、赤外線吸収層を構成する高分子樹脂の耐久性についての言及はあるものの、バインダ樹脂の経時的劣化に関する具体的な改善策は示されていない。また、特許文献2においては、近赤外線吸収色素の分光特性が受ける影響およびその影響の回避について記載があるものの、近赤外線吸収色素をバインダー樹脂に分散した組成物の層におけるクラックの発生を回避する方策については、触れられていない。
特開2001−174627号公報。 特開2000−227515号公報。
従って、本発明においては、赤外線吸収層を始めとする種々の光学機能層を有する光学機能フィルムを長期間使用した場合に、光学機能層が経時的に劣化し、ヘイズの増加等の光学機能が低下することを解消することを課題とするものである。
発明者の検討の結果、経時的に微細なクラックが生じることに基づく光学機能層の劣化は、光学機能層中のごく小さい異物の存在によって引き起こされるか、もしくは助長されることが判明した。その後、さらに検討を進めたところ、クラックの発生は異物の存在のみによるものではなく、残留する溶剤との相乗作用によって、引き起こされ、もしくは助長されることが判明した。そこで、異物の含有量を一定限度以下とすることに加えて、残留溶剤を一定限度以下に規制することにより、クラックの発生が実質上解消されることが判明し、本発明に到達することができた。
課題を解決する第1の発明は、少なくともフィルム状基材、および光学機能を発現する材料を含有する透明樹脂からなる光学機能層とから構成された積層構造を有しており、前記光学機能層の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が60個/m2以下であること、および残留溶剤量が80mg/m2以下であることを特徴とする光学機能フィルムに関するものである。
また、第2の発明は、第1の発明において、前記光学機能層は、赤外線吸収機能、電磁波遮蔽機能、色調調整機能、ネオン光遮蔽機能、反射防止機能、もしくは防眩機能のいずれか一種もしくは二種以上の機能を有する一層もしくは二層以上からなることを特徴とする光学機能フィルムに関するものである。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記光学機能層は、少なくとも赤外線吸収機能を有する層であることを特徴とする光学機能フィルムに関するものである。
第4の発明は、第1〜第3いずれかの発明において、前記光学機能層は、少なくともネオン光遮蔽機能を有する層であることを特徴とする光学機能フィルムに関するものである。
第5の発明は、第1〜第4いずれかの発明において、さらに、対象物への貼り付け用の粘着剤層、または前記粘着剤層および前記粘着剤層保護用の剥離性フィルムを備えたことを特徴とする光学機能フィルムに関するものである。
第6の発明は、第1〜第5いずれかの発明の光学機能フィルムをディスプレイの前面に配置したことを特徴とするディスプレイに関するものである。
第1の発明によれば、光学機能層の単位面積あたりの最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量を60個/m2以下、および残留溶剤量を80mg/m2と規定したので、光学機能フィルムを長期間使用しても、光学機能層の経時的な劣化およびヘイズの増加が少なく、透明性が優れた光学機能フィルムを提供することができる。
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、光学機能として、赤外線吸収機能、電磁波遮蔽機能、色調調整機能、ネオン光遮蔽機能、反射防止機能、もしくは防眩機能のいずれか一種もしくは二種以上の機能を有する層を一層もしくは二層以上備えた光学機能フィルムを提供することができる。
第3の発明によれば、第1または第2の発明の効果に加えて、少なくとも赤外線吸収機能を備えた光学機能フィルムを提供することができる。
第4の発明によれば、第1〜第3いずれかの発明の効果に加えて、少なくともネオン光遮蔽機能を備えた光学機能フィルムを提供することができる。
第5の発明によれば、第1〜第4いずれかの発明の効果に加えて、粘着剤層、または粘着剤層および剥離性フィルムを備えたことにより、対象物への適用が容易な光学機能フィルムを提供することができる。
第6の発明によれば、第1〜第5いずれかの発明の効果を発揮し得る光学機能フィルムが前面に積層されたディスプレイを提供することができる。
図1は本発明の光学機能フィルムの基本的な積層構造を示す図である。また、図2および図3は、様々な光学機能層が積層された光学機能フィルムの積層構造を例示する図である。
図1に示すように、本発明の光学機能フィルム1は、最も基本的にはフィルム状基材2上に光学機能層3が積層された積層構造を有するものである。
フィルム状基材2は、光学機能層3を支持する支持体であり、通常は光学機能層3を積層形成する際の積層の対象物となるものである。従って、フィルム状基材2は、少なくとも可視光に対して透明性を有するものであることが好ましい。また、用途により、水蒸気バリア性を有するものであってもよい。
具体的にフィルム状基材2を構成する素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂類、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、もしくはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂類、ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルホン、もしくはポリエーテルケトン等の樹脂からなるフィルムが好ましい。例えば、これらのうちでも、透明性、耐熱性、および取扱い性の面等から、PETフィルムが好ましく選択される。PETフィルムは、引張強度等の機械的強度が優れており、また、量産されていて比較的安価でもある。
フィルム状基材2は透明性が高いことが好ましく、フィルム状基材2が単層の場合、可視領域の光線透過率が80%以上であるものが好ましい。ここで、フィルム状基材2の透明性としては、無色透明であることが好ましいが、必ずしも無色透明でなくてもよく、本発明の目的を妨げない程度であれば、着色された着色透明であってもよい。可視領域の光線透過率は出来る限り高いことが好ましいが、最終製品としては50%以上の光線透過率が必要なことから、フィルム状基材2が上記のような樹脂のフィルムを2枚を積層する場合でも、各々のフィルムの光線透過率が80%であれば、目的に適う。もちろん、光線透過率が高ければ高いほど、多数枚のフィルムを積層出来るため、各々のフィルムの光線透過率は、より好ましくは85%以上であり、最も好ましくは90%以上である。なお、光線透過率を向上させるには厚みを薄くするのが有効な手段である。
フィルム状基材2の厚みは、透明性が満足されれば特に制限されないが、加工性の面からは、12μm程度〜300μm程度の範囲であることが好ましい。厚みが12μm未満であると、フィルム状基材2が柔軟過ぎて、加工する際の張力により伸張やシワが発生しやすく、また、厚みが300μmを超えると、フィルムの可撓性が減少し、各工程での連続巻き取りが困難になる上、透明基材2どうしを複数枚、積層する際の加工性が大幅に劣るといった問題も生じるからである。
フィルム状基材2の表面の光学機能層3を積層する側、もしくはそのほかの層を積層する側は、接着性を向上させるための層の積層、もしくは接着性を向上させるための処理を行なったものであってもよい。
光学機能層3は、光学機能を発現する材料を含有する透明樹脂からなるもので、光学機能層3の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が、60個/m2以下であり、かつ、光学機能層の残留溶剤量が80mg/m2以下であることが好ましい。より好ましくは光学機能層3の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が1個/m2〜55個/m2であり、かつ、光学機能層3の残留溶剤量が0.1mg/m2〜75mg/m2であり、最も好ましくは光学機能層3の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が1個/m2〜50個/m2であり、かつ、光学機能層3の残留溶剤量が0.1mg/m2〜70mg/m2である。
ここで異物とは、光学機能層3の光学機能とは異なる機能を有するものであり、光学機能層3を透過する光、光学機能層3が遮蔽する光、もしくは光学機能層3が反射する光が不均一になる原因となるものである。異物は実際的には必要な倍率の光学顕微鏡を用いて観測した際に判別できるものであり、異物の多くは不定形の粒子状のものとして観測される。異物をその由来で分類すると、(1)大気中の塵や埃、(2)光学機能を発現するための色素が含有する原料の未反応物、多くは金属酸化物であり、溶剤には溶けないもの、もしくは(3)樹脂に添加されている各種添加剤、例えば、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、もしくは改質剤等である。また、異物の最大径とは、異物が真球状であれば直径を、ラグビーボール状のような形状であれば長径を、その他の形状のものであれば、寸法が最大になる部分の長さを指す。
残留溶剤は、光学機能層3を形成する際に用いられる光学機能層形成用組成物中に含まれる溶剤が、フィルム状基材2への塗布等による適用工程、および適用後の乾燥工程を経た後に、蒸発しきれずに残ったものである。光学機能層形成用組成物がフィルム状基材2上に適用されると、適用直後から塗膜中に対流が起こり、溶剤が蒸発して乾燥が進むが、塗膜中の溶剤が減少するにつれて塗膜の粘度が上昇し、溶剤の蒸発が妨げられるようになるから、最終的には溶剤の蒸発が高度に妨げられた状態となり、光学機能層中に溶剤が残留する。
本発明において、異物と残留溶剤の二つの要因が合わさって、光学機能層3のクラックの発生の原因となるのは、次のような理由によるものと考えられる。即ち、光学機能フィルム1を長期間保存したときに、光学機能層3中の残留溶剤は経時的に蒸発して、溶剤が無くなった箇所に微細な空隙を形成する。このように空隙が発生すると光学機能層3中の応力バランスが崩れるため、崩れた応力バランスを解消するためにクラックが発生する。このとき、異物がある箇所においては光学機能層3の均一性が損なわれているから、崩れた応力バランスを解消しようとする周囲の動きに追従しきれなくなり、クラックが一層発生しやすくなるものと考えられる。従って、形成された光学機能層3中の残留溶剤量は少ないほど好ましく、かつ、光学機能層3中の異物は、その最大径が小さいほど好ましく、また、異物の単位面積当たりの含有量が少ないほど好ましい。
ところで、光学機能層3の形成は、公知のコーティング方式によって行われることが普通であるから、光学機能層形成用組成物の粘度はコーティングに適した粘度に調整する必要がある。また、この光学機能層形成用組成物がコーティグの最中に乾燥が進みすぎることは好ましくないから、組成物中に配合される溶剤としては極端に乾燥速度の速いものを用いることは好ましくない。異物の最大径および単位面積当たりの含有量については、孔径のごく小さいフィルターを用いて光学機能層形成用組成物を濾過すれば、いずれも小さくすることができるが、濾過に要する時間が長くなる。そこで、光学機能層3の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が、60個/m2以下であり、かつ、光学機能層の残留溶剤量が80mg/m2以下とすることが好ましい。実用上、光学機能層3の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が1個/m2〜55個/m2以下であり、かつ、光学機能層の残留溶剤量が0.1mg/m2以上75mg/m2以下であることがより好ましく、さらには、光学機能層3の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が1個/m2以上50個/m2以下であり、かつ、光学機能層の残留溶剤量が0.1mg/m2以上70mg/m2以下とすることが最も好ましく、コーティングに関する問題および濾過に関する問題を解消して、しかも実用上支障の無い程度にクラックの発生を抑制することができる。
なお、光学機能層3とは、赤外線吸収層、電磁波遮蔽性層、色調調整層、ネオン光遮蔽層、反射防止層、もしくは防眩層等の種々の光学機能を有する層を総称的に指す意味で用い、本発明の光学機能フィルム1は、これら各層のうちの一種もしくは二種以上の機能を有する一層を有していても、もしくは二層以上を有していてもよい。まず、これらの層のうちの赤外線吸収層を例に取って説明する。
赤外線吸収層における光学機能を発現する材料は、赤外線吸収色素である。赤外線吸収層に要求される赤外線吸収性は、用途によって異なるので、必要な波長域および吸収率に合わせて、配合する赤外線吸収色素の種類およびその配合量を設定することが好ましい。一例として、赤外線吸収層がプラズマディスプレイの前面に配置されるものである場合、プラズマディスプレイがキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長域を吸収するよう、赤外線吸収色素の種類およびその配合量を選択することが好ましく、この波長域内での光線透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。従って、プラズマディスプレイに適用する場合の赤外線吸収層は、より正確には近赤外線吸収層であり、配合する赤外線吸収色素は、より正確には近赤外線吸収色素である。なお、赤外線吸収層、もしくは近赤外線吸収層は、通常の場合、可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長域では、十分な光線透過率を有するものであることが好ましく、特にディスプレイの前面に適用する場合には、可視光領域で十分な光線透過率を示すことは重要である。
近赤外線吸収色素としては、無機系近赤外線吸収色素、または有機系近赤外線吸収色素を用いることができ、具体的には、無機系近赤外線吸収色素としては、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、もしくは酸化ランタン等を用いることができ、有機系近赤外線吸収色素としては、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、ジインモニウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、もしくはジチオール系金属錯体類等を用いることができる。これらの近赤外線吸収色素は、1種類もしくは2種類以上を用いることができ、2種類以上を用いるときは、各々の近赤外線吸収色素の1種類が無機系近赤外線吸収色素であり、他の種類のものが有機系近赤外線吸収色素であってよい。これらのうち、無機系近赤外線吸収色素は、平均粒径が0.005μm〜1μmの微粒子であることが好ましく、平均粒径はより好ましくは0.01μm〜0.5μmの範囲内である。
近赤外線吸収色素としては、上記のうちでもジインモニウム系化合物を用いることがより好ましい。この理由は、ジインモニウム系化合物は、近赤外線領域にモル吸光係数εが約10万程度の大きな吸収を有し、可視光領域内である波長400nm〜500nm付近に若干の光吸収があるものの、可視光透過率が他の近赤外線吸収色素よりも優れているからである。
好ましいジインモニウム系化合物として、一般式(1)で表されるものを例示することができる。
Figure 2006018104
上記一般式(1)において、Rは互いに同一もしくは相異なる水素、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、フェニル基、もしくはハロゲン化アルキル基であり、Xは1価もしくは2価の陰イオンであり、nは1もしくは1/2である。好ましい陰イオンとしては、例えばトリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、もしくはビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオン等の有機酸1価アニオン、または過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、もしくはヘキサフルオロアンチモン酸イオン等の無機1価アニオンが挙げられる。
近赤外線吸収層中に近赤外線吸収色素を1種類もしくは2種類以上を混合して用い得ることは既に述べた通りであるが、例えば、好ましい近赤外線吸収色素であるジインモニウム系化合物を用いる場合、近赤外線吸収層の近赤外線吸収波長域を広げたり、近赤外線吸収層の外観上の色相を調整することを目的として、ジインモニウム系化合物以外の近赤外線吸収色素が併用されていてもよく、例えば、フタロシアニン系化合物もしくはジチオール系金属錯体類等が好ましく併用され、フタロシアニン系化合物およびジチオール系金属錯体類の両方を用いてもよい。フタロシアニン系化合物としては、市販品である(株)日本触媒製、品番;「Excolor IR−1」、「同IR−2」、「同IR−3」、もしくは「同IR−4」、または「TXEX−805K」、「同−809K」、「同−810K」、「同−811K」、もしくは「同−812K」を用いることもできる。また、ジチオール系金属錯体類等としては、市販品である三井化学(株)製、品番;「SIR−128」、「SIR−130」、「SIR−132」、もしくは「SIR−159」を用いることもできる。
赤外線吸収層に用いられる透明樹脂(バインダ樹脂)としては、可視光領域での光線透過率の高い樹脂であれば限定されるものではない。具体的な透明樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレンまたはプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂を挙げることができ、中でもアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。透明樹脂の平均分子量は500〜60万であることが好ましく、より好ましくは1万〜40万である。赤外線吸収層が近赤外線吸収層である場合も同様である。
赤外線吸収色素として、先に挙げたような陰イオンを有するジインモニウム系化合物を含有させたときは、バインダ樹脂が水酸基もしくは酸基を有する場合や、またはバインダ樹脂中に重合開始剤等が配合されている場合には、それら水酸基、酸基、または重合開始剤等により赤外線吸収色素の母骨格と対イオンの均衡状態が崩れ、赤外線吸収の機能が低下する場合があるので、その防止の意味で、バインダ樹脂としては、水酸基価もしくは酸価、好ましくはそれらの両方が小さいものを用いることがより好ましい。好ましい水酸基価としては10mg・KOH/g以下であり、5mg・KOH/g以下であることがより好ましく、0mg・KOH/gであることが特に好ましい。なお、水酸基価とは試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を指す。同様な意味で好ましい酸価は10mg・KOH/g以下であり、5mg・KOH/g以下であることがより好ましく、0mg・KOH/gであることが特に好ましい。なお、酸価とは、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を指す。
さらにバインダ樹脂のガラス転移温度は、光学機能フィルム1が実際に使用されるときの温度以上であることが好ましい。バインダ樹脂のガラス転移温度より高い温度で光学機能フィルム1が使用されると、バインダ樹脂中に含有される赤外線吸収色素どうしが反応を起こしたり、バインダ樹脂が空気中の水分を吸収するため、赤外線吸収色素の劣化や透明バインダ樹脂の劣化が起きやすくなるためである。この意味で、バインダ樹脂のガラス転移温度は、80℃〜150℃であることが好ましく、80℃未満であると、赤外線吸収色素とバインダ樹脂との相互作用や、赤外線吸収色素どうしの相互作用等が起こり、赤外線吸収色素の変性が起こる。また、150℃を超えるバインダ樹脂を用いると、調製した赤外線吸収層形成用組成物をコーティング後、乾燥させる際に高温を必要とし、赤外線吸収色素の劣化を招きやすい等の欠点を招くからである。
赤外線吸収層中における赤外線吸収色素の配合割合は、上記の近赤外線吸収色素を配合する場合であれば、800nm〜1100nmの波長域内での光線透過率が20%以下、より好ましくは10%以下となるよう、また、好ましくは、可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長域で十分な光線透過率を有するものであることが好ましいので、これらの点を優先的に考慮して決められるが、一例として、透明樹脂100に対して、赤外線吸収色素の割合(質量比)は0.001〜100であることが好ましく、0.01〜50であることがより好ましく、0.1〜10であることが最も好ましい。
赤外線吸収色素を含有する透明樹脂からなる赤外線吸収層は、その単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が、60個/m2以下であり、かつ、赤外線吸収層の残留溶剤量が80mg/m2以下とすることが好ましく、赤外線吸収層の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が1個/m2〜55個/m2以下であり、かつ、赤外線吸収層の残留溶剤量が0.1mg/m2〜75mg/m2であることがより好ましく、さらには、赤外線吸収層の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が1個/m2〜50個/m2以下であり、かつ、赤外線吸収層の残留溶剤量が0.1mg/m2〜70mg/m2以下であることが最も好ましい。
赤外線吸収層中の異物の数を制限する理由は、赤外線吸収層を光学機能層として有する光学機能フィルムを長期間使用する間に、赤外線吸収層に経時的に微細なクラック(ひび割れ)が発生してヘイズが増加する現象が、赤外線吸収層中の異物の存在に左右されるからで、微細なクラックのほとんどが、赤外線吸収層中の異物をきっかけとして発生するからである。
この異物は、小さければ小さいほど微細なクラックの発生を回避し得る点で好ましく、また、単位面積あたりの異物の含有量も、少なければ少ないほどよいが、実際の生産上、異物をごく小さいものとしたり、異物をほとんど取り除く等は、特別な方法を要する上、それらのために要する時間も長大になる。従って、最大径が0.2μm〜30μmの異物の単位面積あたりにおける含有量は60個/m2以下であることが好ましいが、実用性を維持して実質的に支障を生じない条件として、1個/m2〜55個/m2であることが好ましく、1個/m2〜50個/m2であることが最も好ましい。
最大径が0.2μm〜30μmの異物の単位面積あたりにおける含有量が60個/m2を超えると、赤外線吸収層に経時的に微細なクラック(ひび割れ)が発生しやすく、従って、ヘイズが増加しやすくなるのみならず、赤外線吸収層を形成した時点でのヘイズが高く、実用上好ましくない。また、異物の直径が0.2μm未満で、かつ異物の単位面積あたりにおける含有量を1個/m2未満とするには、赤外線吸収層を構成する素材を製造する時点から、極めて精密な製造条件の制御、および製造工程の管理が必要となるので、素材を準備するまでの効率が悪く、生産コストも高くなるので好ましくない。従って、最大径が0.2μm〜30μmの異物は0個/m2であることが好ましいが、これらの製造上の諸点を考慮すると1個/m2以上であることがより好ましい。
赤外線吸収層中の残留溶剤は、少なければ少ないほど微細なクラックの発生を回避し得る点で好ましいが、このために乾燥速度が過度に速い溶剤を用いると、コーティング上の支障を招く恐れがある。また、乾燥条件面から、残留溶剤を減らす方法も考えられるものの、乾燥手段の設定温度を上げる、乾燥のための風量を増やす、および乾燥時間を長くする等の乾燥条件の強化が必要となる。通常のコーティング装置には、用いられているコーティング方式に適した乾燥機が備えられているため、その乾燥機によって実現可能な範囲で乾燥条件を強化することが好ましいが、これに加えて、赤外線吸収層形成用組成物中の溶剤を選定して用いることが、赤外線吸収層の残留溶剤量を低減できる点で好ましい。従って、赤外線吸収層の残留溶剤量は80mg/m2以下であることが好ましいが、実用性を維持して実質的に支障を生じない条件として、0.1mg/m2〜75mg/m2以下であることがより好ましく、0.1mg/m2〜70mg/m2以下であることが最も好ましい。
赤外線吸収層の形成、および赤外線吸収層中の異物の直径および単位面積あたりにおける含有量、並びに残留溶剤量を所定の好ましい範囲とするには、次のようにして行なうことが好ましい。
赤外線吸収層の形成は、赤外線吸収色素およびバインダ樹脂、並びにその他の必要に応じて添加する添加剤と共に、溶剤および/または希釈剤を加えて混合し、各成分を溶解もしくは分散させて赤外線吸収層形成用組成物を調製した後、さらに異物を除去した赤外線吸収層形成用組成物を塗布対象、例えばフィルム状基材2に塗布し、乾燥させることにより行なう。あるいは、赤外線吸収色素および透明バインダ樹脂をその他の必要に応じて添加する添加剤と共に溶融混練した組成物を溶融押出ししながら塗布対象に塗布することにより行なうこともできる。
必要に応じて添加する添加剤としては、赤外線吸収層の耐久性を向上させるために酸化防止剤等を用いることができ、酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、硫黄系、燐酸系、亜燐酸系、もしくは金属錯体系等のもの挙げることができる。
必要に応じて添加する添加剤としては、紫外線吸収剤を挙げることができ、具体的な紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、もしくは2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、もしくは2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、もしくはp−オクチルフェニルサリシレート等のサリシレート系;ヘキサデシル−2,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、もしくは2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系等の有機系紫外線吸収剤や、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、もしくは硫酸バリウム等の無機系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収層の吸収性能としては波長380nm以下における紫外線の透過率を30%以下とすることが好ましく、波長380nm以下の紫外線の透過率を0%近くにすることがより好ましい。これにより紫外線による色素の劣化を抑制することが可能となり、赤外線遮蔽能や初期色味が長時間安定な赤外線吸収層を得ることができる。なお、これらの紫外線吸収剤はバインダ樹脂中に配合して、独立した紫外線吸収層とすることもでき、また、紫外線吸収層としては、市販の紫外線カットフィルタ、例えば、富士写真フィルム社製の「シャープカットフィルターSC−38」(商品名)、「同SC−39」、「同SC−40」、三菱レーヨン社製の「アクリプレン」(商品名)等を積層して利用してもよい。
赤外線吸収層形成用組成物調製用の溶剤としては、本発明で用いる光学機能を発現する材料および透明樹脂を均一に分散させるものであれば何でも良いが、光学機能を発現する材料および透明樹脂の溶解度が高く、更には残留溶剤量を低減する為に沸点が150℃未満のものが好ましい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、トリフルオロプロパノール、n−ヘキサン、もしくはn−ヘプタン、または水等が挙げられるが、これら以外のものであってもよい。逆に、沸点が150℃以上のものとしては例えばシクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられるが、残留溶剤量を低減する観点からは好ましくない。なお、以上に列挙した溶剤は、本発明において残留溶剤となり得るものであって、その役割が、赤外線吸収層形成用組成物中の他の成分を溶解するものであるか、もしくは分散させるものであるかを問わない。
また、上記の赤外線吸収層形成用組成物を塗布する方法としては、マイヤーバーコーティング、ドクターブレードコーティング、グラビアコーティング、グラビアリバースコーティング、キスリバースコーティング、3本ロールリバースコーティング、スリットリバースダイコーティング、ダイコーティング、もしくはコンマコーティング等の各種コーティングの方式を利用することができる。
赤外線吸収層中の異物の最大径および単位面積あたりにおける含有量を所定の好ましい範囲とするには、赤外線吸収層形成用組成物を調製する際に用いる素材である、赤外線吸収色素、バインダ樹脂、酸化防止剤等の添加剤、および溶剤等として、不純物の少ないものを用いることが好ましく、また、調製した赤外線吸収層形成用組成物を濾過して不純物を取り除いたり、赤外線吸収層形成用組成物を調製する工程、塗布工程、および乾燥工程を、クリーンルーム内で行なうことが好ましい。
調製した赤外線吸収層形成用組成物を濾過して不純物を取り除く方法は、最も現実的で効率がよく、赤外線吸収層における直径が0.2μm〜30μmの異物の含有量を、60個/m2以下とするには、濾過に用いるフィルタとして孔径ができるだけ小さいものを使用することが好ましいが、孔径が小さくなるに伴い、濾圧が増加して濾過に要する時間が長くなるため、この点に鑑みて、濾過に用いるフィルタとしては、孔径が25μm以下であるものが好ましく、より好ましくは10μm以下であり、もっと好ましくは5μm以下である。また、濾過に用いるフィルタとしては、孔径が上記の範囲のものであれば、特に限定されないが、タイプとしては、フィラメント型、フェルト型、メッシュ型、カートリッジ型、もしくはディスク型が好適であり、フィルタの材質としては、濾過性能があり、かつ赤外線吸収層形成用組成物に悪影響を及ぼすものでなければ、特に限定されず、例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、セルロースアセテート、セルロース、セルロース混合エステル、四フッ化エチレン(PTFE)、ポリエステル、もしくはポリカーボネートなどを素材とするものが好ましい。
赤外線吸収層中の残留溶剤量を所定の好ましい範囲とするには、赤外線吸収層形成用組成物調製用の溶剤として既に挙げたもののうちから、赤外線吸収層形成用組成物の調製や保存に適し、塗布が支障なく行えるもののうちから、沸点の低いものを選択して用いるとよい。また、赤外線吸収層中の残留溶剤量を所定の好ましい範囲とするには、塗布後に行なう乾燥をより強力な条件で行なうことが好ましく、具体的には、乾燥手段の設定温度を上げる、乾燥のための風量を増やす、もしくは乾燥時間を長くする等の乾燥条件の強化が必要となる。また、赤外線吸収層形成用組成物を用いて塗布する際の塗布厚みを薄くすることも好ましい。
ネオン光遮蔽層は、プラズマディスプレイ(PDP)において、ネオンガスの励起によって放出される595nm付近の不要な発光をカットする機能を持つ層である。ネオン光遮蔽層は、波長が560〜620nmの範囲(緑と赤の間)に吸収極大を持つことが好ましく、また、波長が560〜620nmの範囲の吸収極大付近の透過率が、5〜50%の範囲であることが好ましい。波長が560〜620nmの範囲の吸収極大は、ネオン光遮蔽以外にも赤色蛍光体の色純度を低下させているサブバンドを選択的にカットする効果も有る。緑の蛍光体が発光する光の色調への影響をさらに低下させるため、吸収スペクトルのピークをシャープにすることが好ましい。具体的には、波長が560〜620nmの範囲の吸収極大での半値幅は、15〜200nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましく、40〜100nmであることがさらに好ましく、50〜80nmであることが最も好ましい。
ネオン光遮蔽層の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量は60個/m2以下であり、かつ、光学機能層の残留溶剤量が80mg/m2以下であることが好ましい。ネオン光遮蔽層の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が1個/m2〜55個/m2以下であり、かつ、ネオン光遮蔽層の残留溶剤量が0.1mg/m2〜75mg/m2以下であることがより好ましく、さらにネオン光遮蔽層の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が1個/m2〜50個/m2以下であり、かつ、光学機能層の残留溶剤量が0.1mg/m2以上〜70mg/m2であることが最も好ましく、これらは赤外線吸収層の場合と同じである。ネオン光遮蔽層の形成は、ネオン光遮蔽色素およびバインダ樹脂、並びにその他の必要に応じて添加する添加剤等を用いて、上記した赤外線吸収層の形成と同様にして行なえばよい。上記したような波長が560〜620nmの範囲に吸収極大を持つネオン光遮蔽色素としては、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系、もしくはポルフィリン系の化合物が好ましく用いられるが、ポルフィリン系の化合物が耐久性の面で特に好ましい。
以上においては、光学機能層として赤外線吸収層、特に近赤外線吸収層とネオン光遮蔽層を中心に説明したが、光学機能層としては、赤外線吸収層もしくはネオン光遮蔽層以外にも、電磁波遮蔽性層、色調調整層、反射防止層、もしくは防眩層等の各層を始めとする種々の層があり得る。これらの各層は用途に応じて任意に組み合わせ、複数の光学機能が複合された光学機能フィルムを構成することができる。ここに挙げた例のうちで、電磁波遮蔽層において、直接、電磁波遮蔽機能をもたらす部分が、現在では銅箔をエッチング加工して得られるメッシュパターン状のものが主流となっている以外は、各層は各々の機能を発現する材料を含有する透明樹脂から構成されているので、基本的には、上記の赤外線吸収層(特に近赤外線吸収層)と同様にして構成することができ、また、異物の含有に伴なうクラックの発生や、それによって生じるヘイズの増加も同様に起こるので、上記したような異物の大きさおよび単位面積あたりの含有量を規制することによる効果も同様である。なお、光学機能層は、上記した光学機能のうちの一種もしくは二種以上を一つの層で兼ねることもでき、また、光学機能フィルムは、光学機能層を一層もしくは二層以上有していてもよい。
また、光学機能層ではないが、汚染防止のための防汚層や、光学機能フィルム1を適用対象に貼り付けるための粘着剤層、粘着剤層を保護する剥離性フィルム等も、必要に応じて複合することができる。また、プラズマディスプレイのようにディスプレイ本体の表面がガラス製であるものは強い衝撃により割れる恐れがあるが、このような衝撃を緩和するために、耐衝撃性層を設けることもある。
図2は、必要な種々の光学機能を併せ持った光学機能フィルム11を例示する図である。プラズマディスプレイは、前にも述べたように、その構造に由来して種々の特徴を有するので、光学機能フィルム11としても、種々の機能を併せ持ったものが必要となり、光学機能層として前に列挙したものは、いずれも、プラズマディスプレイの場合にあてはまる。
図2における例の光学機能フィルム11は、フィルム状基材12の図中の上側に反射防止層13を、フィルム状基材12の図中の下側に赤外線吸収層14が積層された積層構造を有するものであり、光学機能フィルム11は、プラズマディスプレイに貼り付ける前の状態としては、好ましくは、さらに、赤外線吸収層14の下面側に粘着剤層および剥離性フィルム(図示せず。)が積層されたものであってもよい。
図3は、種々の光学機能を併せ持った光学機能フィルム11の他の積層構造を例示する図である。図3における例の光学機能フィルム11は、フィルム状基材12の図中の上側に赤外線吸収層14を、フィルム状基材12の図中の下側に電磁波遮蔽層15が積層された積層構造を有するものであり、光学機能フィルム11は、プラズマディスプレイに貼り付ける前の状態としては、好ましくは、さらに、赤外線吸収層14の上面側もしくは電磁波遮蔽層15の下面側に粘着剤層および剥離性フィルム(図示せず。)が積層されたものであってもよい。なお、図2もしくは図3を引用して説明した例において、赤外線吸収層14とした部分を、先に説明したネオン光遮蔽層に変更してもよく、あるいは、これ以外の層に変更することもできる。
反射防止層13としては、磨りガラスのように、光を散乱もしくは拡散させて像をボカすものを採用することができる。すなわち、光を散乱もしくは拡散させるためには、光の入射面を粗面化することが基本であり、この粗面化処理には、サンドブラスト法やエンボス法等により基体表面を直接粗面化する方法、基体表面に放射線、熱の何れかもしくは組み合わせにより硬化する樹脂中にシリカなどの無機フィラーや、樹脂粒子などの有機フィラーを含有させた粗面化層を設ける方法、および基体表面に海島構造による多孔質膜を形成する方法を挙げることができる。
反射防止層13を形成する他の方法としては、屈折率の高い材料と低い材料を交互に積層し、多層化(マルチコート)する方法を挙げることができ、表面の反射が抑えられ、良好な反射防止効果を得ることができる。通常、このような反射防止層は、SiO2 に代表される低屈折率材料と、TiO2 、もしくはZrO2 等の高屈折率材料とを、交互に蒸着等により成膜する気相法等によって形成される。
反射防止効果を向上させるためには、低屈折率層の屈折率は、1.45以下であることが好ましい。これらの特徴を有する材料としては、例えばLiF(屈折率n=1.4)、MgF2 (屈折率n=1.4)、3NaF・AlF3 (屈折率n=1.4)、AlF3 (屈折率n=1.4)、Na3 AlF6 (屈折率n=1.33)、SiO2 (屈折率n=1.45)等の無機材料を微粒子化し、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等に含有させた無機系低反射材料、フッ素系・シリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、放射線硬化型樹脂等の有機低反射材料を挙げることができる。
低屈折率層は、5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルとフッ素系の皮膜形成剤を混合した材料を使用して形成することもできる。このような粒径の5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルとしては、ケイ酸アルカリ塩中のアルカリ金属イオンをイオン交換等で脱アルカリする方法や、ケイ酸アルカリ塩を鉱酸で中和する方法等で知られた活性ケイ酸を縮合して得られる公知のシリカゾル、アルコキシシランを有機溶媒中で塩基性触媒の存在下に加水分解と縮合することにより得られる公知のシリカゾル、さらには上記の水性シリカゾル中の水を蒸留法等により有機溶剤に置換することにより得られる有機溶剤系のシリカゾル(オルガノシリカゾル)が用いられる。これらのシリカゾルは水系および有機溶剤系のどちらでも使用することができる。有機溶剤系シリカゾルの製造に際し、完全に水を有機溶剤に置換する必要はない。前記シリカゾルはSiO2として0.5〜50重量%濃度の固形分を含有する。シリカゾル中のシリカ超微粒子の構造は球状、針状、板状等様々なものが使用可能である。また、皮膜形成剤としては、アルコキシシラン、金属アルコキシドや金属塩の加水分解物や、ポリシロキサンをフッ素変性したものなどを用いることができる。
低屈折率層は、上記で述べた材料を例えば溶剤に希釈し、スピンコーティング、ロールコーティングや印刷等によるウェットコーティング法や、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、イオンプレーティング等による気相法で、高屈折率層上に設けて乾燥後、熱や放射線(紫外線の場合は上述の光重合開始剤を使用する)等により硬化させることによって得ることができる。
高屈折率層の形成は、屈折率を高くするために高屈折率のバインダ樹脂を使用するか、高い屈折率を有する超微粒子をバインダ樹脂に添加することによって行なうか、あるいはこれらを併用することによって行なう。高屈折率層の屈折率は1.55〜2.70の範囲にあることが好ましい。
高屈折率層に用いる樹脂については、透明なものであれば任意の樹脂が使用可能であり、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、放射線(紫外線を含む)硬化型樹脂などを用いることができる。熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、もしくはポリシロキサン樹脂等を用いることができ、これらの樹脂に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、もしくは粘度調整剤等を加えることができる。
高い屈折率を有する超微粒子としては、例えば、紫外線遮蔽の効果をも得ることができる、ZnO(屈折率n=1.9)、TiO2 (屈折率n=2.3〜2.7)、CeO2 (屈折率n=1.95)の微粒子、また、帯電防止効果が付与されて埃の付着を防止することもできる、アンチモンがドープされたSnO2 (屈折率n=1.95)またはITO(屈折率n=1.95)の微粒子が挙げられる。その他の微粒子としては、Al2 3(屈折率n=1.63)、La2 3(屈折率n=1.95)、ZrO2 (屈折率n=2.05)、Y2 3(屈折率n=1.87)等を挙げることができる。これらの微粒子は単独または混合して使用され、有機溶剤または水に分散したコロイド状になったものが分散性の点において良好であり、その粒径としては、1〜100nm、塗膜の透明性から好ましくは、5〜20nmであることが望ましい。
高屈折率層を設けるには、上記で述べた材料を例えば溶剤に希釈し、スピンコーティング、ロールコーティング、印刷等の方法で基体上に設けて乾燥後、熱や放射線(紫外線の場合は上述の光重合開始剤を使用する)等により硬化させればよい。
電磁波遮蔽層15は、基本的には金属メッシュ層からなるが、通常は、透明基材、接着剤層、および金属メッシュ層がこの順に積層された積層構造を有するものであり、電磁波遮蔽層15の透明基材は、図3を引用して説明したフィルム状基材と兼ねていてもよい。
金属メッシュ層は、電磁波遮蔽層15が上記の積層構造である場合の一つの層である。金属メッシュ層は、プラズマディスプレイ等から発生した電磁波を遮蔽する機能を有するものである。このような金属メッシュ層は、後述する透明基材上に、接着剤層により金属箔が貼り合わせられ、その金属箔がメッシュ状にエッチングされることにより形成される。
金属メッシュ層を構成する金属としては、電磁波遮蔽性を有するものであれば、その種類等は特に限定されるものではなく、例えば銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、金、銀、ステンレス、タングステン、もしくはチタン等を用いることができる。これらのうちでも銅が、電磁波のシールド性、エッチング処理適性や取扱い性の面から好ましい。また用いられる銅箔の種類としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられるが、特に、電解銅箔であることが好ましい。これにより、厚さが10μm以下の均一性のよい金属メッシュ層とすることができ、また、金属メッシュ層の表面に黒化処理が施された際に、酸化クロム等との密着性を良好なものとすることができるからである。
黒化処理は、金属箔の一方の面または両面に行なわれていることが好ましい。黒化処理は酸化クロム等により金属メッシュ層の表面を黒化する処理であり、電磁波遮蔽層において、この酸化処理面は、観察者側の面となるように配置される。黒化処理により金属メッシュ層表面に形成された酸化クロム等により、外光が吸収されることから、金属メッシュ層表面で光が散乱することを防止することができ、良好な透過性を得ることが可能な光学機能フィルムとすることができるのである。このような黒化処理は、上記金属箔に黒化処理液を塗布することにより行なうことができる。
黒化処理の方法としては、CrO2 水溶液や、無水クロム酸水溶液に酒石酸、マロン酸、クエン酸、乳酸等の異なるオキシカルボン酸化合物を添加して、6価クロムの一部を3価クロムに還元した溶液等を、ロールコート法、エアーカーテン法、静電霧化法、スクイズロールコート法、浸漬法等により塗布し、乾燥させることにより行なうことができる。なお、この黒化処理は、透明基材上に、接着剤層または粘着剤層により金属箔が貼り合わせられ、メッシュ状にエッチングされた後に行なわれるものであってもよい。
この黒化処理された金属箔の表面の黒濃度が0.6以上であることが好ましい。これにより、より非視認性を良好なものとすることができるからである。ここで、黒濃度は、COLOR CONTROL SYSTEMのGRETAG SPM100−11((株)KIMOTO製)を用いて、観測視野角10°、観測光源D50、照明タイプとして濃度標準ANSI Tに設定し、白色キャリブレイション後に測定した値である。
また、上記金属箔の膜厚は、1μm〜100μmの範囲内、中でも5μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より膜厚が厚いと、エッチングによりパターン線幅を細かく高精細化することが困難となり、また上記範囲より膜厚が薄い場合には、十分な電磁波シールド性が得られないからである。
さらに、上記金属箔は、JIS B0601に準拠する十点平均粗さが0.5μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より小さい場合には、上記黒化処理をした場合であっても、光学フィルタ表面の外光が鏡面反射することから、視認性が劣化し、また上記範囲より大きい場合には、接着剤やレジスト等を塗布することが困難となるからである。
金属箔のエッチングは、後述する透明基材上に、接着剤層または粘着剤層を介して金属箔が貼り合わせられた後に行なわれるものである。このエッチングは、通常のフォトリソグラフィー法により行なうことができ、例えば金属箔の表面にレジストを塗布し、乾燥した後、レジストをパターン版で密着露光し、現像処理を行なうことにより得ることができる。
上述したような金属メッシュ層は、表面抵抗が10-6Ω/□〜5Ω/□の範囲内、中でも10-4Ω/□〜3Ω/□の範囲内であることが好ましい。一般的に、電磁波遮蔽性は、表面抵抗により測定することができ、この表面抵抗が低いほど、電磁波遮蔽性が良好なものということができる。ここで、上記表面抵抗の値は、表面抵抗測定装置ロレスターGP、(株)ダイヤインスツルメンツ製にてJIS K7194「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験法」に記載される方法にて測定された値である。
エッチング処理された後の金属メッシュ層は、50μm〜500μmの範囲内、中でも100μm〜400μmの範囲内、特に200μm〜300μmの範囲内であることが好ましく、またメッシュ線幅が5μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。メッシュ線幅が上記範囲より細かい場合には、断線が起こる場合があり、電磁波遮蔽性の面から好ましくなく、またメッシュ線幅が上記範囲より太い場合には、可視光の透過率が低く、例えばプラズマディスプレイの輝度が低くなる等という面から好ましくないからである。
また、開口部にはラミネート用接着剤層が、エッチング前に接していた金属箔の表面を反映した粗面を有して露出しているので、凹凸および粗面を解消するため、凹凸をならすのに必要な厚みの透明樹脂層を平坦化層として被覆しておくことが好ましい。このほか、透明導電性薄膜層も電磁波遮蔽層として使用できる。
防汚層は、表面にごみや汚れが付着するのを防止し、あるいは付着した場合に除去を容易にするよう設けるものであり、他の層の機能、例えば反射防止層の透明性や反射防止機能を低下させない範囲で、フッ素系界面活性剤等の界面活性剤、フッ素系樹脂を含む塗料、シリコーン系塗料、シリコーン・フッ素系塗料等の剥離剤、もしくはワックス等をごく薄く、光学性能を変えない程度に塗布し形成したものである。あるいは、恒久的な層として形成してもよい。
耐衝撃性層は、比較的せん断弾性率の低い樹脂で構成され、樹脂としては、アイオノマー樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレンアクリレート共重合体(EEA)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチラール樹脂、もしくはポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂等のほか、ポリウレタン樹脂等であってもよい。耐衝撃性層13は、ポリスチレン・ブタジエン系共重合体、もしくはポリスチレン・ビニルポリイソプレン系共重合体等のゴム弾性を示す熱可塑エラストマー、または、ポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのポリオレフィンに熱可塑エラストマーをブレンドしたもの等で構成することもできる。
本発明の光学機能フィルムは種々のディスプレイ、とりわけプラズマディスプレイに適用すると価値が高いが、この適用の際には例えば粘着剤を用いる。粘着剤は、光学機能フィルム11を適用対象に貼り付けるため、予め、光学機能フィルムに適用しておくことが好ましく、適宜な粘着剤を用いて構成するほか、市販の両面粘着テープを用いて構成することもできる。なお、プラズマディスプレイ19に適用する際、プラズマディスプレイの前面ガラスに直接に貼り付けてもよいが、ディスプレイパネルとは別体のガラス等に貼り付け、貼り付けたものをプラズマディスプレイの前面に配置してもよい。また、フィルム状基材12およびフィルム状基材12に積層すべき各層の間を粘着剤層で接着することもできる。また、光学機能フィルム11が図2もしくは図3中の下面等に粘着剤層を有する場合、光学機能フィルム11を保管する際には、粘着剤層を保護する剥離性フィルムを粘着剤層の露出面に積層しておくことが好ましい。
防眩層は、プラズマディスプレイ等のディスプレイの画像が画面の特定の位置で、高い輝度を持つ線状、帯状等の部分が生じる、シンチレーション現象(「ぎらつき」とも言う。)を緩和するためのもので、例えば、透明性樹脂中に透明性樹脂との屈折率差が0.01〜0.5程度である光拡散剤、例えば、直径数μm程度のポリスチレン樹脂やアクリル樹脂等のビーズが分散したもの等で構成され、必要に応じ、支持体としての薄いフィルムを伴なってもよい。
赤外線吸収層、ネオン光遮蔽層、および色調調整層は、別の層として設けてもよいが、粘着剤層や、他の各層を接着させるための粘着剤層等に赤外線吸収色素、ネオン光吸収色素、もしくは色調調整用色素を含有させることにより、粘着剤層や他の部位の粘着剤層と兼ねた層として構成することができる。粘着剤層を構成するための粘着剤としては、可視域の光線透過率が高ければ、その種類等は任意であるが、具体的には、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤等を用いることができる。
ジインモニウム系近赤外線吸収色素を次のように合成した。なお、部数は、特に断らない限り、質量基準である。まず、DMF30部中にN,N,N’,N’−テトラキス(アミノフェニル)−p−フェニレンジアミン3.8部、n−ブチルブロミド21部、および炭酸カリウム15部を加え、温度;80℃で1時間、90℃で7時間、および130℃で1時間順次反応させた。冷却後、濾過し、この反応液(濾液)にイソプロパノール30部を加え、5℃以下で1時間撹拌した。生成した結晶をメタノールで洗浄した後、乾燥し薄茶色の結晶2.5部を得た。
DMF10部中に上記で得られた薄茶色の結晶1部を加え、60℃に加熱溶解した後、DMF10部中に溶解したビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸銀0.78部を加え、30分反応させた。冷却後析出した銀を濾別した。この反応液(濾液)に水10部をゆっくりと滴下し、滴下後15分撹拌した。生成した黒色結晶を濾過し、50部の水で洗浄し、得られたケーキを乾燥し、前記一般式(1)で表され、対イオン(X-)が1価陰
イオンとして「ビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオン」である化合物(ジインモニウム系近赤外線吸収色素)0.5部を得た。得られた化合物は、赤外吸収におけるλmaxが1076nm(ジクロロメタン中)、分子吸光係数が101,000、および融点が186.5℃(DSCによる。)である。
透明バインダ樹脂としてのポリメタクリル酸メチル樹脂(三菱レイヨン(株)製、品番;BR−80、Tg;105℃、水酸基価;0、酸価;0)を混合溶剤(メチルエチルケトン/トルエン=1/1(質量比))を用いて固形分比が20%(質量基準)となるよう溶解した樹脂溶液25g中に、前記工程で作製したジインモニウム系近赤外線吸収色素0.2g、およびフタロシアニン系近赤外線吸収色素((株)日本触媒製、品番;「IR−1」)0.1gの2種類の近赤外線吸収色素を添加して十分分散させた後、孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルタに通して得られた近赤外線吸収層形成用塗料組成物を、厚みが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製、品番;「A4300」)上に、マイヤーバーにて乾燥後の塗布量が5g/m2になるように塗布し、風速5m/secのドライエアーが当たるオーブンにて、設定温度;130℃で5分間乾燥させて近赤外線吸収層を形成し、近赤外線吸収フィルムを得た。
(実施例2〜11、比較例1〜7)
実施例2〜11,比較例1〜7においては、実施例1におけるものと同様にして行ない、近赤外線吸収フィルムを得た。ただし、近赤外線吸収層形成用塗料組成物を調製する際に用いる濾過用フィルタの孔径(孔径、単位;μm)、乾燥手段の設定温度(単位;℃)、および乾燥時間(単位;分)を変更した。上記フィルタの孔径、乾燥手段の設定温度、乾燥時間は表1中に記載してある。なお、実施例4においては、塗布対象のPETフィルムとして、反射防止フィルムを用い、また実施例5においては、塗布対象のPETフィルムとして、電磁波遮蔽層が既に積層された電磁波遮蔽フィルムを用い、その他の実施例および比較例においては、実施例1におけるのと同様の単体のPETフィルムを用いた。反射防止フィルムおよび電磁波遮蔽フィルムの詳細については、次段落および次々段落に示す。
(反射防止フィルム)
反射防止フィルムとしては、TACフィルムにハードコート層(厚み;3μm)および反射防止・帯電防止層(厚み;0.2μm)を重ねて設けたTACフィルムを基材とする市販の反射防止フィルム(日本油脂(株)製、商品名;「リアルック8200UV」)を用い、そのTACフィルムの露出面を塗布面とした。
(電磁波遮蔽フィルム)
厚みが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム(東洋紡績(株)製、品番;「A4300」)に、片面がクロメート処理により黒化処理されている銅箔(古河サーキットフォイル(株)製、EXP−WS、厚さ9μ)を、ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートした後、銅箔上にレジストを塗布して、露光および現像を行なうことにより、不要な銅箔部分をエッチング除去し、300μm□、線幅10μmの銅メッシュからなる電磁波遮蔽層を形成して電磁波遮蔽フィルムとした。この電磁波遮蔽フィルムのPET樹脂フィルムの露出面側を塗布面とした。
(実施例12)
近赤外線吸収色素の代わりに、ネオン光遮蔽色素であるポルフィリン化合物(山田化学工業(株)製、商品名;「TAP14」)0.08gを用いた以外は実施例1におけるのと同様に行ない、近赤外線吸収層に代えてネオン光遮蔽層を形成して、ネオン光遮蔽フィルムを得た。
(実施例13)
近赤外線吸収色素の代わりに、ネオン光遮蔽色素であるシアニン化合物(旭電化工業(株)製、商品名;「TY102」0.03gを用いた以外は実施例1におけるのと同様に行ない、近赤外線吸収層に代えてネオン光遮蔽層を形成して、ネオン光遮蔽フィルムを得た。
(評価法)
異物数;各々の近赤外線吸収フィルムから切り出した250mm×250mmの大きさの試験片について、スケール付き光学顕微鏡((株)キーエンス製、マイクロスコープVH−7000C(レンズ;VH−Z450))で近赤外線吸収フィルムに対し垂直方向から観察したときの大きさ及び個数を観測し、1m2当たりの最大径0.2μmから30μmの異物数を算出した。
残留溶剤量;各々の近赤外線吸収フィルムから切り出した100mm×100mmの大きさの試験片について、ガスクロマトグラフ((株)島津製作所製、GC−9A)の注入口で、温度;120℃で10分間加熱トラップした後、検出されたメチルエチルケトンとトルエンの質量の合計値を求めた。
ヘイズ変化;各々の近赤外線吸収フィルムから切り出した50mm×50mmの大きさの試験片について、製造直後のヘイズ(ヘイズ(初期))、および恒温恒湿槽中で60℃、90%の環境で1000時間さらす耐湿熱試験を行なった後におけるヘイズ(ヘイズ(試験後))を、カラーコンピューター(スガ試験機(株)製、品番;「SM−C」を用いて求めた。
次表1に、各実施例および比較例における、濾過用フィルタの孔径(表では孔径、単位;μm)、乾燥手段の設定温度(表では温度、単位;℃)、乾燥時間(表では時間、単位;分)、およびヘイズ変化(ヘイズ(初期)およびヘイズ(試験後))を示す。
Figure 2006018104
また次表2に、上記の各実施例および各比較例で得られた近赤外線吸収フィルムのヘイズ変化、異物数N、および残留溶剤量Sを示す。表2中の実1、実2、……は実施例1、実施例2、……を、また、比1、比2、……は比較例1、比較例2、……を指す。評価結果の○はクラックがなく、加速試験でヘイズ上昇が全くあるいは殆どなかったことを、また、評価結果の×はクラックがあり、加速試験でヘイズ上昇があったことを、それぞれ示す。
Figure 2006018104
「表1」に示すように、実施例1〜実施例13の近赤外線吸収フィルムは、いずれもヘイズ変化が全くあるいは殆ど無く、実用上十分な耐湿熱性を有していることが分かる。これらに対して、比較例1〜比較例7の近赤外線吸収フィルムは、いずれもヘイズ変化がかなりあり、耐湿熱性が十分でないことが分かる。また、濾過に用いたフィルタの孔径が20μm以下で、乾燥手段の設定温度が130℃の場合には、乾燥時間にかかわらず、十分な耐湿熱性を有する近赤外線吸収フィルムが得られている。
また、「表2」に示すように、実施例1〜実施例13の近赤外線吸収フィルムは、クラックおよびヘイズ変化が全くあるいは殆どなく、残留溶剤量;80mg/m2以下、かつ異物数N;60個/m2以下であった。これに対し、比較例1、2、および3の各比較例の近赤外線吸収フィルムは、クラックおよびヘイズ変化があり、残留溶剤量;99〜102mg/m2と高かったが、異物数は5〜50個/m2であった。比較例4、5、および6の各比較例の近赤外線吸収フィルムも、クラックおよびヘイズ変化があり、異物数;76〜74個/m2と多かったが、残留溶剤量は、4〜71mg/m2であった。また、比較例7の近赤外線吸収フィルムは、クラックおよびヘイズ変化があり、異物数も75個/m2と多く、残留溶剤量も99mg/m2と高かった。
図1は本発明の光学機能フィルムの基本的な積層構造を示す図である。 種々の光学機能層を有する光学機能フィルムの積層構造を示す図である。 様々な光学機能層を有する光学機能フィルムの他の積層構造を示す図である。
符号の説明
1、11……光学機能フィルム
2、12……フィルム状基材
3……光学機能層
13……反射防止層
14……赤外線吸収層
15……電磁波遮蔽層

Claims (6)

  1. 少なくともフィルム状基材、および光学機能を発現する材料を含有する透明樹脂からなる光学機能層とから構成された積層構造を有しており、前記光学機能層の単位面積あたりにおける最大径が0.2μm〜30μmの異物の含有量が60個/m2以下であること、および残留溶剤量が80mg/m2以下であることを特徴とする光学機能フィルム。
  2. 前記光学機能層は、赤外線吸収機能、電磁波遮蔽機能、色調調整機能、ネオン光遮蔽機能、反射防止機能、もしくは防眩機能のいずれか一種もしくは二種以上の機能を有する一層もしくは二層以上からなることを特徴とする請求項1記載の光学機能フィルム。
  3. 前記光学機能層は、少なくとも赤外線吸収機能を有する層であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光学機能フィルム。
  4. 前記光学機能層は、少なくともネオン光遮蔽機能を有する層であることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれか記載の光学機能フィルム。
  5. さらに、対象物への貼り付け用の粘着剤層、または前記粘着剤層および前記粘着剤層保護用の剥離性フィルムを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれか記載の光学機能フィルム。
  6. 請求項1〜請求項5いずれか記載の光学機能フィルムをディスプレイの前面に配置したことを特徴とするディスプレイ。
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