JP2005084476A - 光学フィルタおよびこれを用いたディスプレイ - Google Patents

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Yuji Nakatsugawa
雄二 中津川
Isao Inoue
功 井上
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Abstract

【課題】 高温下や加湿下で、近赤外線の遮蔽性が低下したり、可視領域に特定の吸収が現れ、着色もしくは変色して見える等の問題が解消された光学フィルタを提供する。 【解決手段】 少なくとも透明基材、および近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素をアクリル樹脂中に含有する近赤外線吸収層が積層された積層構造を有する光学フィルタであって、前記透明アクリル樹脂が脂環基を含有し、該アクリル樹脂の水酸基価が10以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、近赤外線遮蔽性を備えた光学フィルタに関するものである。また、本発明はそのような光学フィルタを備えたディスプレイ、特にプラズマディスプレイに関するものである。
電気的、もしくは電子的な装置が発生した電磁波は、他の装置に悪影響を与えたり、また、人体や動物に対して影響を与えることがあると言われている。一例として、プラズマディスプレイ(以降、PDPと略記することがある。)からは、30MHz〜130MHzの周波数の電磁波が発生するため、周囲にあるコンピュータ、もしくはコンピュータ利用機器に影響を与えることがあり、発生する電磁波をできるだけ外部に洩らさないことが望まれている。
PDPはまた、放電ガスにネオンとキセノンの混合ガスを用いているため、波長800nm〜1100nmの近赤外線を放出し、この近赤外線は、近赤外線を利用した各種機器、例えば、家庭電気製品のリモートコントローラや、パソコンやコードレス電話等の近赤外線を利用した通信機器の誤動作を引き起こす恐れがあるとされており、この点でも改善が望まれている。
従来、上記のような改善を行うものとして、透明な基材フィルム上に、接着剤もしくは粘着剤、金属薄膜のメッシュ、およびメッシュの凹凸面を平坦化する平坦化層を順に積層し、これらの内の接着剤もしくは粘着剤、または平坦化層に、可視光および/または近赤外線の特定の波長を吸収する吸収剤を含有させた電磁波遮蔽用部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電磁波遮蔽用部材は、金属薄膜のメッシュを有するので、電磁波遮蔽性を有し、また、可視光、および/または、近赤外線の特定の波長を吸収する吸収剤を含有するので、近赤外線遮蔽性も有しており、ディスプレイの色バランス、外光を吸収することによるコントラストの向上も可能とされている。
また、近赤外線吸収能を有する色素を用い、コーティング法やキャスト法により、近赤外線遮蔽性を有するフィルムを得ることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献3には、アクリル樹脂と色素を含有するディスプレー用フィルターが示されている。しかしながら、アクリル樹脂は水と結びつき易く、水酸基が増加する傾向にあるため、アクリル樹脂層中に近赤外線吸収色素を含有させておくと、アクリル樹脂中の水酸基と色素が反応し、色素の劣化が起こり、近赤外線吸収が失われるという問題がある。
しかしながら、上記のいずれの従来技術においても、吸収剤を含有する層の樹脂によっては、高温下や加湿下で、近赤外線の遮蔽生が低下したり、可視領域に特定の吸収が現れ、着色もしくは変色して見える等の問題がある。また、これらの問題を解決しようとする場合、本来的に備えなければならない点として、近赤外線吸収層や金属メッシュが見えてはならないこと(非視認性)、透明性(ヘイズ)、可視領域での透過率(視感透過率)、および近赤外領域での遮蔽性(近赤外線透過率)等がある。
特開2002−311843号公報(第4頁、図7−9) 特開平11−116826号公報(第5頁、図1) 特開2003−167119号公報
本発明は、高温下や加湿下で、近赤外線の遮蔽性が低下したり、可視領域に特定の吸収が現れ、着色もしくは変色して見える等の問題が解消された光学フィルタを提供することを課題とする。さらに本発明は、上記の課題が解消された上で、種々の機能が付加された光学フィルタを提供することも課題とし、これらのカラーフィルタが適用されたディスプレイ、特にプラズマディスプレイを提供することも課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、近赤外線吸収性色素を含有する層の樹脂として、一定基準以下の水酸基価、酸価、もしくは所定の範囲のガラス転移温度を有するものを用いることによって、上記課題が解決できることが判明し、以下のような事項を内容とする本発明に到達することができた。
即ち、本発明の光学フィルタは、少なくとも透明基材、および近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素をアクリル樹脂中に含有する近赤外線吸収層が積層された積層構造を有する光学フィルタであって、前記透明アクリル樹脂が脂環基を含有し、該アクリル樹脂の水酸基価が10以下であることを特徴とする。
本発明の光学フィルタにおいては、前記アクリル樹脂が下記一般式(1)で表される構成単位を含有するアクリル樹脂であることが好ましい。
(式中、R1 は水素原子またはアルキル基を表し、R2 は脂環基を表す。)
さらに好ましくは、一般式(1)において、R2 が、トリシクロデシル、ノルボルネン環またはトリシクロデカン環から選ばれることが望ましく、最も好ましくは、R2 が、トリシクロデシルである。
前記本発明の光学フィルタにおいて、アクリル樹脂の酸価が10以下であることが望ましい。
前記本発明の光学フィルタにおいて、アクリル樹脂のガラス転移温度が80℃〜150℃であることが望ましい。
前記本発明の光学フィルタにおいて、近赤外線吸収層に含まれる近赤外線吸収色素が次の一般式(2)で表されるジインモニウム系化合物であることが望ましい。
(式中、Rは互いに同一もしくは相異なる水素、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、フェニル基、もしくはハロゲン化アルキル基であり、Xは1価または2価の陰イオン、nは1または1/2である。)
前記一般式(2)において、Xが一価のビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオンであることが特に好ましい。
防汚性に優れた光学フィルタを得るために、本発明の光学フィルタは光学フィルタの片面もしくは両面に防汚層が積層されていることが好ましい。
電磁波シールド性に優れた光学フィルタを得るために、本発明の光学フィルタは光学フィルタの片面もしくは両面に金属メッシュ層が積層されていることが好ましい。
反射防止性に優れた光学フィルムを得るために、本発明の光学フィルタは光学フィルタの片面もしくは両面に反射防止層が積層されていることが好ましい。
防眩性に優れた光学フィルタを得るために、本発明の光学フィルタは光学フィルタの片面もしくは両面に防眩層が積層されていることが好ましい。
適用面への貼り付けを容易とするために、本発明の光学フィルタは光学フィルタの片面もしくは両面に粘着剤層が積層されていることが好ましい。
また、本発明は、前記した各光学フィルタがディスプレイの観察側に配置されていることを特徴とするディスプレイである。
請求項1の発明によれば、光学フィルタにおける赤外線吸収層は、近赤外線吸収色素を含有し、バインダー樹脂が脂環基を有するアクリル樹脂であり、水酸基価が10以下であるアクリル樹脂を選択しているので、透明性を有し、アクリル樹脂の吸水性を低下させることができ、近赤外線吸収色素が水と反応して劣化することを防ぎ、安定した近赤外線吸収能を有する効果がある。
さらに脂環基を導入したアクリル樹脂を用いることにより、孤立電子対のない炭素と水素が多く含まれる構造となり、大気中の水分がアクリル樹脂に吸着されるのを抑制するため、高温高湿度下でもアクリル樹脂の経時変化により水酸基価、酸価の増大を防ぐことができ、したがって、安定な近赤外線吸収機能を有する。しかも、脂環基を導入したアクリル樹脂を用いることにより、色素の分散性が向上し、且つ、ガラス転移温度が増大し、且つ、複屈折率が低減する効果がある。
請求項2乃至4の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、脂環式アクリル樹脂の構成単位としてそれぞれ、トリシクロデシル、ノルボルネン環、トリシクロデカン環から選ばれた脂環基を有するアクリル樹脂を用いたので、高温高湿度下における経時的安定性に極めて優れた近赤外線吸収機能を有する光学フィルタを提供することができる。
請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4のいずれかの発明の効果に加え、透明バインダ樹脂として酸価が10以下のものを用いたので、近赤外線吸収色素が、透明バインダ樹脂が有する酸と反応することを防止でき、高温高湿度下でも経時的に安定な近赤外線吸収機能を有する光学フィルタを提供することができる。
請求項6の発明によれば、請求項1〜請求項5のいずれかの発明の効果に加え、透明バインダ樹脂のガラス転移温度の範囲を、通常の使用条件以上に規定したので、近赤外線吸収色素どうし、もしくは近赤外線吸収色素と周囲の透明バインダ樹脂との反応を抑制することができ、実用上、十分な耐熱性を有する光学フィルタを提供することができる。
請求項7および8の発明によれば、請求項1〜請求項6のいずれかの発明の効果に加え、近赤外線吸収色素を特定のジインモニウム系化合物としたので、近赤外線領域での遮蔽性が高く、しかも、可視光透過率が高い光学フィルタを提供することができる。
請求項9の発明によれば、請求項1〜請求項8のいずれかの発明の効果に加え、防汚層が積層されたことにより、ごみや汚染物質が付着するのを防止でき、付着しても除去が容易な光学フィルタを提供することができる。
請求項10の発明によれば、請求項1〜請求項9のいずれかの発明の効果に加え、金属メッシュ層が積層されたことにより、適用される対象の電気的装置、電子的装置から発生する電磁波を遮蔽可能な光学フィルタを提供することができ、特に、プラズマディスプレイに適用するのに最適である。
請求項11の発明によれば、請求項1〜請求項10のいずれかの発明の効果に加え、粘着剤層を有することにより、適用面への貼り付けが容易な光学フィルタを提供することができる。
請求項12の発明によれば、請求項1〜請求項11のいずれかの発明の効果に加え、反射防止層が積層されたことにより、積層された面における不要な光の反射を防止でき、画像、映像のコントラストを向上させることが可能な光学フィルタを提供することができる。
請求項13の発明によれば、請求項1〜請求項12のいずれかの発明の効果に加え、防眩層が積層されたことにより、ディスプレイ前面に配置した際に、ディスプレイの特定の位置、方向に生じるシンチレーションの緩和が可能な光学フィルタを提供することができる。
請求項14の発明によれば、請求項1〜請求項13のいずれかの光学フィルタの持つ効果が発揮されたディスプレイを提供することができる。
図1(a)〜(d)は、本発明の光学フィルタの種々の形態の積層構造を例示する断面図である。本発明の光学フィルタは、最も基本的には、図1(a)に符号1Aで示すように、透明基材2上に近赤外線吸収層3が積層された積層構造を有する近赤外線吸収積層体4からなるものである。この透明基材2は、積層の際に行われ得る接着性向上のための処理が施されたものであってよい。
図1(a)に示す近赤外線吸収積層体4は、光学フィルタの分野で知られた様々な層を1種もしくは2種以上、付加して積層することにより、それらの層が加わることによりさらに機能が付与された光学フィルタを構成することができる。即ち、図1(b)に示すように、光学フィルタ1Bは、近赤外線吸収積層体4の近赤外線吸収層3側、即ち、図中の上側に使用時の汚染を防止するための防汚層5が積層されたものであってもよい。防汚層5は、図1(b)に示すように上側のみにではなく、下側のみに積層されていてもよく、上側および下側の両方に積層されていてもよい。
図1(c)に示すように、光学フィルタ1Cは、近赤外線吸収積層体4の上側に、反射防止層6が積層されたものであっても良い。反射防止層6もまた、図1(c)に示すように上側のみにではなく、下側のみに積層されていてもよく、上側および下側の両方に積層されていてもよい。反射防止層6の代わりに、防眩層が積層されていてもよく、やはり、上側もしくは下側の片方、または両方に積層されていてもよい。
図1(d)に示すように、光学フィルタ1Dは、近赤外線吸収積層体4の上側に、導電性金属等からなる金属メッシュ層7が積層されたものであってもよい。金属メッシュ層7もまた、図1(d)に示すように上側のみにではなく、下側のみに積層されていてもよく、上側および下側の両方に積層されていてもよい。
上記のような様々な層を伴うか、もしくは伴わない光学フィルタ1A〜1D(以降、特に断らない限り、符号1は、上記のような1A〜1Dのような様々な積層構造を含めて指すものとする。)は、いずれかの片面もしくは両面に粘着剤層を積層して、光学フィルタが適用されるべき被適用物面に貼り付けられるよう構成してもよい。粘着剤層はむき出しのままでは取り扱いにくいから、貼り付けの直前まで、剥離性を有するシートが積層されたものであることが好ましい。これらの様々な構造を採り得る光学フィルタ1は、種々のタイプのディスプレイに適用することができ、例えば、図2に示すように、プラズマディスプレイ8の前面(観察側の面)に配置して使用することができ、粘着剤層が積層された光学フィルタ1は、プラズマディスプレイ8の前面に直接貼り付けて使用することもできる。なお粘着剤層の積層は片面に対して行われることが多いが、両面に粘着剤を積層し、片面をディスプレイへの貼り付け用に他面を他の機能を有するフィルムとの貼り合わせに使用するような用途にも利用することができる。
本発明の光学フィルタ1を構成する透明基材2および近赤外線吸収層3、並びに上記したように、基本的な積層構造に付加され得る各層の素材や積層方法等につき、以降に詳細に説明する。
透明基材: 透明基材2は、近赤外線吸収層3や、付加的に積層される種々の層の積層対象となるか、もしくは光学フィルタ1の支持体となるものである。従って、透明基材2は、可視光に対して透明性を有し、近赤外線吸収層3や、その他の種々の層が積層可能であれば、その種類は特に限定されるものではない。
例えば、透明基材2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルホン、もしくはポリエーテルケトン等の樹脂からなるフィルムを挙げることができ、単独、または同種もしくは異種のものを積層して用いることができる。
上記のうちでも、透明性、耐熱性、および取扱い性の面等から、また、量産されていて比較的安価な点で、PETフィルムが最も好ましい。
透明基材2の透明性としては、透明基材2が単層の場合、可視領域の光線透過率が80%以上であることが好ましい。また、透明性を有するとは、無色透明であることが好ましいけれども、必ずしも無色透明であることに限ることはなく、本発明の目的を妨げない程度であれば着色された着色透明であってもよい。可視領域の光線透過率はできる限り高いことが好ましいが、最終製品としては50%以上の光線透過率が必要なことから最低2枚を積層する場合でも、それぞれの透明基材2としては光線透過率が80%であれば、目的に適う。もちろん、光線透過率が高ければ高いほど透明基材の複数枚を積層できるため、透明基材2の単層の光線透過率はより好ましくは85%以上であり、最も好ましくは90%以上である。光線透過率を向上させるには厚みを薄くするのも有効な手段である。
透明基材2の厚みは、透明性さえ満足すれば特に制限されるものではないが、加工性の面からは、12μm程度〜300μm程度の範囲であることが好ましい。厚みが12μm未満の場合は透明基材2が柔軟過ぎて、加工する際の張力により伸張やシワが発生しやすい。また、厚みが300μmを超えるとフィルムの可撓性が減少し、各工程での連続巻き取りが困難になる上、透明基材2どうし複数枚、積層する際の加工性が大幅に劣るといった問題もある。
近赤外線吸収層: 近赤外線吸収層3は、基本的には、透明バインダ樹脂中に、近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素を有するものである。
近赤外線吸収色素としては、光学フィルタ1が代表的な用途であるプラズマディスプレイ8の前面に適用される場合、プラズマディスプレイ8はキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長域を吸収するものであることが好ましい。この波長域内での光線透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
同時に近赤外線吸収層3は、可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長域で、十分な光線透過率を有する必要がある。
上記の両方の波長域における光線透過率は、分光光度計((株)島津製作所、品番;「UV−310OPC」)を使用し、求めたものである。
近赤外線吸収色素としては、具体的には、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン等の無機系近赤外線吸収色素、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、ジインモニウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類等の有機系近赤外線吸収色素を1種、または2種以上を併用することができる。これらのうち、無機系近赤外線吸収色素は、平均粒径が0.005μm〜1μmの微粒子であることが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.5μmの範囲内である。
本発明における近赤外線吸収色素としては、上記のうちでも、ジインモニウム系化合物を用いることが好ましい。その理由は、ジインモニウム系化合物は、近赤外線領域にモル吸光係数εが約10万程度の大きな吸収を有し、可視光領域内である波長400nm〜500nm付近に若干の光吸収があるものの、可視光透過率が他の近赤外線吸収色素よりも優れているからである。
ジインモニウム系化合物としては、前記の一般式(2)に示したものが好ましく、式中のRは前記した通りであるが、そのうちのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、もしくはブチル基等が好ましい。式中のXは1価または2価陰イオンである。1価陰イオンの場合nは1であり、2価陰イオンの場合nは1/2である。1価陰イオンとしては、例えば、有機酸の1価陰イオン、無機の1価陰イオン等が挙げられる。
有機酸の1価陰イオンとしては、例えば、酢酸イオン、乳酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、ステアリン酸イオン等の有機カルボン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ナフタレンモノスルホン酸イオン、クロロベンゼンスルホン酸イオン、ニトロベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等の有機スルホン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ブチルトリフェニルホウ酸イオン等の有機ホウ酸イオン、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオン等が挙げられ、好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等のハロゲノアルキルスルホン酸イオンもしくはアルキルアリールスルホン酸イオン、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオンが挙げられる。
無機の1価陰イオンとしては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン、チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、バナジン酸イオン、リン酸イオン、ホウ酸イオン等があげられ、これらの無機の陰イオンのうち、特に好ましいものとしては、例えば、過塩素酸イオン、ヨウ素イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン等があげられる。
2価陰イオンとしては、例えば、ナフタレン−1、5−ジスルホン酸、R酸、G酸、H酸、ベンゾイルH酸、p−クロルベンゾイルH酸、p−トルエンスルホニルH酸、クロルH酸、クロルアセチルH酸、メタニルγ酸、6−スルホナフチル−γ酸、C酸、ε酸、p−トルエンスルホニルR酸、ナフタリン−1,6−ジスルホン酸、1−ナフトール−4,8−ジスルホン酸、等のナフタレンジスルホン酸誘導体、カルボニルJ酸、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ジJ酸、ナフタル酸、ナフタリン−2,3−ジカルボン酸、ジフェン酸、スチルベン−4,4’−ジカルボン酸、6−スルホ−2−オキシ−3−ナフトエ酸、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸、1,6−ジアミノアントラキノン−2,7−ジスルホン酸、2−(4−スルホフェニル)−6−アミノベンゾトリアゾール−5−スルホン酸、6−(3−メチル−5−ピラゾロニル)ナフタレン−1,3−ジスルホン酸、1−ナフトール−6−(4−アミノ−3−スルホ)アニリノ−3−スルホン酸等の2価の有機酸のイオンが挙げられる。好ましいものとしては、例えば、ナフタレン−1、5−ジスルホン酸、R酸が挙げられる。
前記一般式(2)で表されるジインモニウム化合物は、例えば特公昭43−25335号公報に記載された次の様な方法で得ることができる。即ち、p−フェニレンジアミンと1−クロロ−4−ニトロベンゼンをウルマン反応させて得られた生成物を還元することにより得られるアミノ体を有機溶媒中、好ましくはジメチルホルムアミド(DMF)等の水溶性極性溶媒中、30〜160℃、好ましくは50〜140℃で、一般式(2)における所望のRに対応するハロゲン化化合物(例えば、Rがn−C4 9 のときはBrCH2 CH2 CH2 CH3 )と反応させて、全ての置換基(R)が同一である化合物(以下、全置換体と記す)を得ることができる。
また、全置換体以外の化合物を合成する場合、例えば8つのRのうち、7つがiso-C4 9 、残り1つがn−C4 9 の化合物を合成する場合には、先に所定のモル数(上記アミン体1モル当たり7モル)の試薬(BrCH2 CH(CH3 2 )と反応させて8つのRのうち7つにiso-C4 9 基を導入した後、残りの置換基(n−C4 9 )を導入するのに必要なモル数(上記のアミン体1モル当たり1モル)の対応する試薬(BrC4 9 )と反応させる。例示したこの化合物の製造方法と同様の方法により、全置換体以外の任意の化合物を得ることができる。
その後、上記で合成した化合物を、有機溶媒中、好ましくはDMF等の水溶性極性溶媒中、0〜100℃、好ましくは5〜70℃で式(2)のXに対応する酸化剤(例えば銀塩)を添加して酸化反応を行う。酸化剤の当量を2当量にすれば本発明の一般式(2)で表されるジイモニウム塩化合物が得られ、当量を1当量にすれば、一価のアミニウム塩化合物(以下アミニウム体と記す)が得られる。また、上記で合成した化合物を硝酸銀、過塩素酸銀、塩化第二銅等の酸化剤で酸化した後、その反応液に、所望のアニオンの酸もしくは塩を添加して塩交換を行う方法によっても一般式(2)で表される化合物を合成することが出来る。
近赤外線吸収層3中には、近赤外線吸収色素を1種、または2種以上混合して用いることは既に述べた通りであるが、本発明における好ましい近赤外線吸収色素であるジインモニウム系化合物を用いる場合、近赤外線吸収層の近赤外線吸収波長域を広げたり、近赤外線吸収層の色見(=外観的な色のこと。)を調製することを目的として、ジインモニウム系化合物以外の近赤外線吸収色素が配合されていてもよく、例えば、フタロシアニン系化合物、もしくはジチオール系金属錯体類等がジインモニウム系化合物と併用される。フタロシアニン系化合物、およびジチオール系金属錯体類は両方を用いてもよい。
フタロシアニン系化合物としては、市販品である(株)日本触媒製、品番;「Excolor IR−1」、「同IR−2」、「同IR−3」、もしくは「同IR−4」、または「TXEX−805K」、「同−809K」、「同−810K」、「同−811K」、もしくは「同−812K」を用いることもできる。
また、ジチオール系金属錯体類等としては、市販品である三井化学(株)製、品番;「SIR−128」、「SIR−130」、「SIR−132」、もしくは「SIR−159」を用いることもできる。
アクリル系樹脂
近赤外線吸収層3に用いられる樹脂としては、可視光領域での光線透過率の高い樹脂であることが好ましく、具体的な透明バインダ樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレンまたはプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂を挙げることができ、中でもアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましく、特に好ましいのはアクリル系樹脂である。これはアクリル系樹脂が上述の透明バインダ樹脂中で可視域における最高光線透過率を有すためだけでなく、耐候性や成形性、引っ張り強度などの力学特性に優れている為である。また、透明バインダ樹脂の平均分子量は500〜60万であることが好ましく、より好ましくは1万〜40万である。平均分子量をこれらの範囲とする事により、上記のような特性を有するものとする事が出来るからである。
ところで近赤外線吸収層3に用いられる透明バインダ樹脂としては、近赤外線吸収色素の高温下、高湿下における劣化抑制機能も必要である。近赤外線吸収色素は大気中の水分と反応し劣化するが、近赤外線吸収層3に用いられる透明バインダ樹脂として特に好ましいアクリル系樹脂は透明性が高い一方で、吸水性が高いものが多い。これはアクリル系樹脂が酸素原子を他の樹脂に比べて多く含む特徴がある為で、水分子は酸素原子などが有す孤立電子対があると分子間力もしくは水素結合により吸着される。それで一般的なアクリル樹脂は水蒸気バリア性が低く色素劣化が起こりやすい。したがって、アクリル系樹脂を用いる際は、高水蒸気バリア化のため、孤立電子対のない炭素と水素が多く含まれる置換基を有すアクリル樹脂を用いることが好ましい。
炭素と水素が多く含まれる置換基を有すアクリル樹脂としては、例えば、前記一般式(1)で表される構成単位を含有するアクリル樹脂が挙げられる。上記一般式(1)において、R1 は水素原子又はアルキル基を表し、R2 は脂環基を表す。上記アクリル樹脂の置換基R1 のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n- ブチル基などが挙げられるが、メチル基が最も好ましい。上記脂環式アクリル樹脂の構成単位として好ましい代表例としては、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ノルボルニルメチル、メタクリル酸シアノノルボルニル、メタクリル酸フェニルノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸メンチル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸トリシクロデシル、メタクリル酸トリシクロデシル−4−メチル、メタクリル酸シクロデシル、メタクリル酸ベンジル、などが挙げられる。
本発明で用いる脂環式アクリル樹脂は、上記構成単位が2つ以上共重合していてもよいし、上記構成単位が更にメタクリル酸メチルなどの共重合可能な単量体と共重合してもよい。このような共重合可能な単量体としては、光学用重合体の透明性、低複屈折性、耐熱性及び低吸水性を損なわないものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類や、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸エステル類や、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−フルオロスチレン、α−クロルスチレン、α−ブロモスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、スチレン等の芳香族ビニル化合物や、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、N−ジエチルアクリルアミド、N−ジメチルメタクリルアミド、N−ジエチルメタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類や、アクリル酸カルシウム、アクリル酸バリウム、アクリル酸鉛、アクリル酸錫、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸バリウム、メタクリル酸鉛、メタクリル酸錫、メタクリル酸亜鉛等の(メタ)アクリル酸金属塩や、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和脂肪酸や、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
その中でも、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、メタクリル酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、4−ビニルピリジン、アクリルアミド等が好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸i−プロピルがより好ましい。
また、上記構成単位のうちでも、メタクリル酸メチルとメタクリル酸イソボニルの共重合体、メタクリル酸メチルとメタクリル酸トリシクロデシルの共重合体、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ベンジルとメタクリル酸トリシクロデシルの共重合体、が特に好ましい。
本発明において、各モノマー成分を、モノマ成分全体量(100重量部)に対して、脂環基を有するアクリル樹脂成分5〜95重量部、脂環基を有するアクリル樹脂成分と共重合可能な単量体0〜95重量部(ただし、0重量部を除く)の配合量で共重合することが好ましい。
脂環基を有する(メタ)アクリル酸エステルの配合量をモノマ成分全体量100重量部に対して、5〜95重量部の範囲内の値とするのは、かかる配合量が5重量部未満となると、複屈折が大きくなったり、吸水性が高くなる場合があるためであり、一方、配合量が95重量部を超えると、曲げ破壊強度等の機械的強度が低下する場合があるためである。脂環基を有する(メタ)アクリル酸エステルの配合量を、モノマ成分全体量100重量部に対して、10〜70重量部の範囲内の値とするのが好ましく、20〜40重量部の範囲内の値とするのがより好ましい。
共重合可能な単量体の配合量をモノマ成分全体量100重量部に対して、0〜95重量部(ただし、0重量部を除く)の範囲内の値とするのは、かかる配合量が95重量部を超えると、耐熱性が低下したり、複屈折が大きくなる場合があるためであり、一方、共重合可能な単量体を全く配合しないと、耐熱性や吸水性の調整が困難となる場合があるためである。共重合可能な単量体の配合量を、モノマ成分全体量100重量部に対して、10〜80重量部の範囲内の値とするのが好ましく、20〜70重量部の範囲内の値とするのがより好ましい。
本発明において前記一般式(1)で表される脂環式アクリル樹脂の合成に用いられる重合方法としては、塊状重合、懸濁重合、溶液重合等の既存の方法をいずれも適用できる。特に、樹脂の透明性、取り扱い易さなどの点から懸濁重合法や塊状重合法を採用することが好ましい。
また、懸濁重合法を採用した場合、重合は水性媒体中で行われるため、懸濁剤及び必要に応じて懸濁助剤を添加して行うのが好ましい。このような懸濁剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子や、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機物質が挙げられる。また、懸濁剤の使用量については特に制限されるものではないが、具体的に、水溶性高分子を使用した場合には、モノマ成分全体量に対して0.03〜1重量%の範囲内の値とするのが好ましく、難溶性無機物質を使用した場合には、モノマ成分全体量に対して0.05〜0.5重量%の範囲内の値とするのが好ましい。また、懸濁剤として難溶性無機物質を使用する場合には、懸濁助剤を使用するのがより好ましい。このような懸濁助剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤が挙げられる。また、懸濁助剤の使用量についても特に制限されるものではないが、モノマ成分全体量に対して0.001〜0.02重量%の範囲内の値とするのが好ましい。
重合を行う際には、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。このようなラジカル重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物や、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒や、過酸化物あるいは過硫酸塩と還元剤の組み合わせによるレドックス触媒等、通常のラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。
また、重合開始剤の使用量についても特に制限されるものではないが、具体的に、モノマ成分全体量に対して0.01〜10重量%の範囲内の値とするのが好ましい。この理由は、重合開始剤の使用量が0.01重量%未満となると、反応性が低下したり、あるいは、得られる光学用重合体の分子量が過度に大きくなる場合があるためである。また、重合開始剤の使用量が10重量%を超えると、重合開始剤が残留して、光学特性を低下させる場合があるためである。
分子量調整剤として、メルカプタン系化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー等を、キノン系化合物やリン系化合物と併用することも好ましい。このように従来の分子量調整剤を添加することにより、分子量を所定範囲内の値に調整することがさらに容易となる。均一にモノマ成分の重合を行うことができるように、各種有機溶媒を使用することも好ましい。
重合条件に関しては、重合温度を0〜200℃の範囲内の値とするのが好ましい。この理由は、重合温度が0℃未満となると、反応性が著しく低下し、重合時間が長くなる場合があるためであり、一方、重合温度が200℃を超えると、反応を制御することが困難となる場合があるためである。重合温度は40〜150℃の範囲内の値とするのが好ましく、50〜100℃の範囲内の値とするのがより好ましい。また、重合時間については、重合温度に依存しており、重合温度を0〜200℃の範囲内の値とした場合、1〜48時間の範囲内とするのが好ましく、2〜24時間の範囲内とするのがより好ましく、3〜12時間の範囲内とするのがさらに好ましい。
脂環式構造を樹脂に導入することにより、色素分散性向上および樹脂のガラス転移温度上昇、複屈折率低減の効果も得られる。特に複屈折率低減に関しては、一般式(1)の構成単位を有するアクリル系樹脂において複屈折(He−Neレーザーのシングルパスの位相差を射出成型品のキャビティ部で測定した値、プラスチックエージ1999.Jan.134〜138頁参照)が1〜4nmと小さく、均一な透過光が得られるため、均一で高精細な画像が得られる。これに対し、構成単位に脂環基がないポリメチルメタクリレートのみからなるアクリル系樹脂の場合、−5nmと複屈折性が大きく、高精細の画像が得られない。
本発明において、近赤外線吸収層3に近赤外線吸収色素として、対イオンを有するものを含有させたときは、透明バインダ樹脂が水酸基、もしくは酸基を有するものであるか、または透明バインダ樹脂中に重合開始剤等が配合されている場合には、それらの水酸基、もしくは酸基、または重合開始剤等により近赤外線吸収色素の母骨格と対イオンの均衡状態が崩れ、近赤外線吸収の機能を果たすことが困難となる場合があるので、この解消の目的で、透明バインダ樹脂としては、水酸基価もしくは酸価の小さいものを用いることが好ましく、水酸基価および酸価のいずれもが小さいものを用いることがより好ましい。なお、対イオンを有する近赤外線吸収色素とは、前記したうち、ジインモニウム系化合物、ニッケル錯体類、ジチオール系錯体類、アミニウム系化合物、シアニン系化合物、もしくはピリリウム系化合物等である。
上記の理由により、水酸基価としては10以下が好ましく、より好ましくは5以下であり、0であることが特に好ましい。水酸基価をこのように小さくすることにより、近赤外線吸収層が含有する、例えば対イオンを有する近赤外線吸収色素が、透明バインダ樹脂が有する水酸基により反応すること等を防ぐことができるため、近赤外線吸収機能が高温高湿度下でも経時的に安定な光学フィルタとすることができ、また近赤外線吸収色素の選択の幅を広げることが可能になる。ここで、水酸基価とは試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を指す。
同様に、酸価としては10以下が好ましく、より好ましくは5以下であり、0であることが特に好ましい。酸価をこのように小さくすることにより、透明バインダ樹脂が含有する酸により、近赤外線吸収色素が反応すること等を防ぐことができるため、近赤外線吸収機能が高温高湿度下でも経時的に安定な光学フィルタとすることができる。ここで酸価とは、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を指す。
また、透明バインダ樹脂としては、そのガラス転移温度(以降において、Tgと言うことがある。)が、光学フィルタ1が実際に使用されるときの温度以上であることが好ましい。ガラス転移温度が光学フィルタ1が実際に使用されるときの温度以下であると、言い換えれば、光学フィルタ1がガラス転移温度以上で使用されると、透明バインダ樹脂中に含有される近赤外線吸収色素どうしが反応を起こしたり、透明バインダ樹脂が空気中の水分を吸収するため、近赤外線吸収色素の劣化や透明バインダ樹脂の劣化が起きやすくなるためである。
上記の観点から、透明バインダ樹脂のガラス転移温度は、光学フィルタ1が実際に使用されるときの温度の値にもよるが、例えば、80℃〜150℃であることが好ましい。ガラス転移温度が80℃未満の透明バインダ樹脂を用いると、近赤外線吸収色素と透明バインダ樹脂との相互作用、もしくは近赤外線吸収色素どうしの相互作用等が起こり、近赤外線吸収色素の変性が起こる。また、ガラス転移温度が150℃を超える透明バインダ樹脂を用いると、このような透明バインダ樹脂を溶剤に溶解して近赤外線吸収層形成用組成物を調製し、コーティングにより近赤外線吸収層3を形成する際に、十分な乾燥を行なわせるには乾燥温度を高温にする必要が生じるから、近赤外線吸収色素として耐熱性の低いものを用いた場合に、近赤外線吸収色素の劣化を招きやすく、と言って、乾燥温度を低温にすると、長い乾燥時間が必要になるため、乾燥工程の効率が低下し、生産コストの上昇を起こし、あるいは、十分な乾燥が行なえないために残留した溶剤が近赤外線吸収色素の劣化を招く原因ともなる。
近赤外線吸収層3中の近赤外線吸収色素と透明バインダ樹脂との好ましい配合割合は、透明バインダ樹脂100に対して近赤外線吸収色素0.001〜100であり、より好ましくは、近赤外線吸収色素0.01〜50であり、特に好ましくは、0.1〜10である。なお、配合比は質量基準である。
近赤外線吸収層3の形成は、近赤外線吸収色素および透明バインダ樹脂をその他の必要に応じて添加する添加剤と共に、溶剤および/または希釈剤を加えて混合し、各成分を溶解もしくは分散させて近赤外線吸収層形成用組成物を調製し、得られた近赤外線吸収層形成用組成物を塗布対象に塗布することにより行なう。あるいは、近赤外線吸収色素および透明バインダ樹脂をその他の必要に応じて添加する添加剤と共に溶融混練した組成物を溶融押出ししながら塗布対象に塗布することにより行なうこともできる。
上記の添加剤としては、近赤外線吸収層の耐久性を向上させるために、酸化防止剤、もしくは紫外線吸収剤等を用いることができ、酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、硫黄系、燐酸系、亜燐酸系、もしくは金属錯体系等のものを、また、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、もしくはベンゾトリアゾール系等のものを挙げることができる。
上記の近赤外線吸収層形成用組成物を調製する際に用いる溶剤としては、色素の溶解性の観点からアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、トリフルオロプロパノール、n−ヘキサン、もしくはn−ヘプタン、または水等が挙げられるが、これら以外のものであってもよい。
また、上記の近赤外線吸収層形成用組成物を塗布する方法としては、マイヤーバーコーティング、ドクターブレードコーティング、グラビアコーティング、グラビアリバースコーティング、キスリバースコーティング、3本ロールリバースコーティング、スリットリバースダイコーティング、ダイコーティング、もしくはコンマコーティング等の各種コーティングの方式を用いることができる。
金属メッシュ層
近赤外線吸収積層体に付加し得る電磁波遮蔽層(金属メッシュ層7)は、光学フィルタ1が適用される電気的もしくは電子的な装置、とりわけ、プラズマディスプレイから発生した電磁波を遮蔽するものである。金属メッシュ層7は、透明基材上に金属箔を積層し、エッチングによってメッシュ状とするので、透明基材2と金属メッシュ層7との間には、接着剤層が介在することが普通である。接着剤層は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール単独もしくはその部分ケン化品、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンエステル樹脂等の接着剤で構成する。金属メッシュ層7は、電磁波遮蔽能を有するものであれば、その金属の種類は特に限定されるものではなく、例えば、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、金、銀、ステンレス、タングステン、クロム、チタン等を用いることができ、中でも銅が好ましく、銅箔の種類としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられるが、特に電解銅箔であることが好ましい。電解銅箔を選択することにより、厚さが10μm以下の均一性のよいものとすることができ、また黒化処理された際に、酸化クロム等との密着性を良好なものとすることができるからである。
ここで、本発明においては、上記金属メッシュ層7は、その一方の面または両面が黒化処理されていることが好ましい。黒化処理とは、酸化クロム等により金属メッシュ層7の表面を黒化する処理であり、光学フィルタにおいて、この酸化処理面は、観察者側の面となるように配置される。この黒化処理により金属メッシュ層7表面に形成された酸化クロム等により、光学フィルタ表面の外光が吸収されることから、光学フィルタ表面で光が散乱することを防止することができ、良好な透過性を得ることが可能な光学フィルタとすることができるのである。
金属メッシュ層7の開口率は電磁波遮蔽能の観点からは低いほどよいが、開口率が低くなると光線透過率が低下するので、開口率としては50%以上であることが好ましい。
金属メッシュ層7が積層されている場合、金属メッシュ層7は開口部と非開口部とが凹凸をなしているので、金属メッシュ層7上に、透明樹脂が金属メッシュ層7の厚み以上の厚みに形成された平坦化層が積層されていてもよい。
防汚層
近赤外線吸収積層体に付加し得る防汚層5は、光学フィルタ1を使用する際に、その表面に、不用意な接触や環境からの汚染が原因で、ごみや汚染物質が付着するのを防止し、あるいは付着しても除去しやすくするために形成される層である。例えば、フッ素系コート剤、シリコン系コート剤、シリコン・フッ素系コート剤等が使用され、なかでもシリコン・フッ素系コート剤が好ましく適用される。これらの防汚層5の厚さは好ましくは100nm以下で、より好ましくは10nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下である。これらの防汚層5の厚さが100nmを超えると防汚染性の初期値は優れているが、耐久性において劣るものとなる。防汚染性とその耐久性のバランスから5nm以下が最も好ましい。
反射防止層
近赤外線吸収積層体に付加し得る反射防止層6は、高屈折率層と低屈折率層が順に積層されたものが代表的であるが、これ以外の積層構造を持つものもある。高屈折率層は、例えば、ZnOやTiO2 の素材の薄膜、もしくはこれらの素材の微粒子が分散した透明樹脂膜である。また、低屈折率層は、SiO2 からなる薄膜、もしくはSiO2 ゲル膜、または、フッ素含有の、もしくはフッ素およびケイ素含有の透明樹脂膜である。反射防止層6が積層されることにより、積層された側の外光等の不要な光の反射を低下させ、適用されるディスプレイの画像もしくは映像のコントラストを高めることができる。
防眩層
近赤外線吸収積層体に付加し得る防眩層は、例えば、透明樹脂中に直径数μm程度のポリスチレン樹脂やアクリル樹脂等のビーズを分散させたものであり、層が持つ光拡散性により、ディスプレイ前面に配置した際に、ディスプレイの特定の位置、方向に生じるシンチレーションの防止を行なうためのものである。
粘着剤層
本発明において用いられる粘着剤層は、任意の透明な粘着剤からなる層である。可視域の光線透過率が高ければその種類等は特に限定されるものではないが、具体的には、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤等が挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、これらの記載により本発明を制限するものではない。
前記一般式(2)で表され、対イオン(X- )が1価陰イオンとして「ビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオン」であるジインモニウム系近赤外線吸収色素を次のように合成した。尚、実施例中、部は特に特定しない限り重量部を表す。
DMF30部中にN,N,N’,N’−テトラキス(アミノフェニル)−p−フェニレンジアミン3.8部、n−ブチルブロミド21部、及び炭酸カリウム15部を加え、80℃で1時間、90℃で7時間、及び130℃で1時間反応させた。冷却後、濾過し、この反応液(濾液)にイソプロパノール30部を加え、5℃以下で1時間撹拌した。生成した結晶をメタノールで洗浄した後、乾燥し薄茶色の結晶2.5部を得た。
DMF10部中に上記で合成した化合物1部を加え、60℃に加熱溶解した後、DMF10部中に溶解したビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸銀0.78部を加え、30分反応させた。冷却後析出した銀を濾別した。この反応液(濾液)に水10部をゆっくりと滴下し、滴下後15分撹拌した。生成した黒色結晶を濾過し、50部の水で洗浄し、得られたケーキを乾燥し、一般式(2)の化合物0.5部を得た。得られた化合物の理化学的性質を次に示す。
λmax 1076nm(ジクロロメタン)
分子吸光係数 101,000
融点 186.5℃(DSC)
透明バインダ樹脂として前記一般式(1)で表される構成単位を有し、メタクリル酸イソボニルとメタクリル酸メチルとの共重合体である脂環式アクリル樹脂(Tg:130℃、水酸基価:0、酸価:0)を次のように合成した。
200mlのビーカー内に、メタクリル酸メチル70gと、メタクリル酸イソボニル30gと、重合開始剤である過酸化ラウロイル0.4gと、分子量調整剤であるトリフェニルフォスフィン0.05gとを収容した。窒素でバブリングを行いながら、マグネティックスターラーを用いて、回転数100rpm、30分の条件で撹拌し、均一組成のモノマ混合物とした。次いで、得られたモノマ混合物を70℃、7時間の条件で加熱重合することにより、メタクリル酸イソボニルとメタクリル酸メチルとの共重合体を得た。
この共重合した脂環式アクリル樹脂をメチルエチルケトン中に固形分比が20%(質量基準)となるよう溶解した樹脂溶液中に、前記工程で作製した対イオン(x- )がビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオンであるジインモニウム系近赤外線吸収色素0.2mmol/m2 、およびフタロシアニン系近赤外線吸収色素((株)日本触媒製、品番:「IR−1」)0.2mmol/m2 の2種類の近赤外線吸収色素を添加して十分分散させて得た塗布用溶液を用い、厚みが100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(東洋紡績(株)製、品番:「A4300」)上に、マイヤーバーにて乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、風速5m/secのドライエアーが当たるオーブンにて100℃で1分間乾燥して近赤外線吸収層を形成し、近赤外線吸収フィルタを得た。
近赤外線吸収色素として、前記実施例1で合成したジインモニウム系近赤外線吸収色素0.2mmol/m2 のみを用いた以外は、前記実施例1と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
透明バインダ樹脂としてメタクリル酸トリシクロデシルとメタクリル酸メチルとの共重合体である脂環式アクリル樹脂((日立化成(株)製、品番:「オプトレッツOZ−1000」、Tg:115℃、水酸基価:0、酸価:0)を用いた以外は、前記実施例2と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
透明バインダ樹脂としてメタクリル酸トリシクロデシルとメタクリル酸ベンジルとメタクリル酸メチルとの共重合体である脂環式アクリル樹脂((日立化成(株)製、品番:「オプトレッツOZ−1330」、Tg:110℃、水酸基価:0、酸価:0)を用いた以外は、前記実施例2と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
前記実施例4で得られた近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層側にシリコン・フッ素系防汚染剤であるフッ素系のシラン化合物(商品名「KP801M」,製造会社名「信越化学(株)」)を、厚さ3.0nmとなるように塗布乾燥硬化せしめて防汚層を形成し、防汚層付きの近赤外線吸収フィルムを得た。
離型フィルム(商品名「E7002」,製造会社名「東洋紡績(株)」)の離型面に、固形分が20%になるよう溶剤で希釈したアクリル系粘着剤(商品名「AS2140」,製造会社名「一方社油脂工業(株)」)を乾燥膜厚が25μmとなるようにドクターブレードにて塗布し、風速5m/secのドライエアーが当たるオーブンにて100℃で1分間乾燥させて粘着層を形成して得た粘着フィルムを、前記実施例4で得られた近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層側に粘着層が接するようにして、ローラ温度:23℃、線圧:0.035kg/cmのラミネートローラを使用して貼りあわせ、粘着層付きの近赤外線吸収フィルタを得た。
前記実施例4で得られた近赤外線吸収フィルタの近赤外線吸収層側に、最初の無機光学薄膜としてSiO1 1 の膜を、ついで酸化インジウム・錫系化合物(ITO)からの薄膜を、ついでTa2 5 の膜を、最外層の膜としてSiO2 膜をスパッタリングで、それぞれの膜厚が、SiO1 1 の膜で23nm、ITOの薄膜で60nm、Ta2 5 の膜で53nm、SiO2 の膜で90nmとなるように成膜し、反射防止層を形成して、反射防止層付きの近赤外線吸収フィルタを得た。
前記実施例4で得られた近赤外線吸収フィルタの近赤外線吸収層側に、アクリル樹脂粒子(根元工業(株)製、品番:「アートパール」)をジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに分散させた混合液をマイヤーバーにて乾燥膜厚が4μmになるように塗布乾燥硬化せしめて防眩層を形成し、防眩層付きの近赤外線吸収フィルタを得た。
前記実施例4で得られた近赤外線吸収フィルタの近赤外線吸収層側に、片面がクロメート処理により黒化処理されている、銅箔(古川サーキットフォイール(株)製、EXP−WS、厚さ9μm)をウレタン系接着剤にてドライラミネーション加工し貼り合わせた後、上記銅箔上にレジストを塗布後、露光および現像を行うことにより、不要な銅箔部分をエッチング除去し、300μm□、線幅10μmの金属メッシュを形成し、金属メッシュ層付きの近赤外線吸収フィルタを得た。
〔比較例1〕
透明バインダ樹脂としてポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、品番:BR−60、Tg:75℃、水酸基価:0、酸価:1 )を用いた以外は、前記実施例2と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
〔比較例2〕
透明バインダ樹脂としてポリエステル樹脂(バイロンUR1700:商品名、東洋紡績(株)製、Tg:110℃、酸価26、水酸基価19)を用いた以外は、前記実施例2と同様に行なって近赤外線吸収フィルタを得た。
〔評価法〕
前記実施例1〜実施例9、および前記比較例1〜比較例2で得られた各々の近赤外線吸収フィルタにつき、製造直後、および恒温恒湿槽中の60℃、90%の環境で1000時間さらした後における透明性、視感透過率、および近赤外線透過率の各項目について測定した結果を下記の表1および表2に示す。
なお、上記の各項目および表1、表2中のその他の項目の測定は、以下の各測定条件で行ったものである。
透明性(ヘイズ):カラーコンピューター(スガ試験機(株)製、品番:「SM−C」を用い、各々の光学フィルタから切り出した50mm×50mmの大きさの試験片について求めた。
視感透過率、近赤外線領域透過率:分光光度計((株)島津製作所製、品番:「UV−3100PC」を用い、各々の光学フィルタから切り出した50mm×50mmの大きさの試験片について測定した。
表1 および表2に示されるように、実施例1〜実施例9の近赤外線吸収フィルタは、製造直後のヘイズ、視感透過率、および近赤外線領域透過率のいずれの項目においても極めて優れており、製造後、温度:60℃および湿度:90%の環境で1000時間さらした後においてもほとんど変らずに維持され、従って、実用上十分な耐湿熱性を有していることが分かる。これらに対して、比較例1および比較例2の近赤外線吸収フィルタは、製造直後においてヘイズ、視感透過率および近赤外線領域透過率温度が悪く、60℃および湿度90%の環境で1000時間さらした後では、更にこれら特性が著しく悪化する。したがって、比較例1および比較例2の近赤外線吸収フィルタは、実用上問題を有するものであると言える。
本発明の光学フィルタは、透明性を有し、アクリル樹脂の吸水性を低下させることができ、近赤外線吸収色素が水と反応して劣化することを防ぎ、安定した近赤外線吸収能を有する効果がある。したがって、本発明の光学フィルタは、ディスプレイ、特に、プラズマディスプレイに適用するのに最適である。
本発明の光学フィルタの種々の形態の積層構造を例示する断面図である。 プラズマディスプレイの前面に本発明の光学フィルタを配置した図である。
符号の説明
1 光学フィルタ
2 透明基材
3 近赤外線吸収層
4 近赤外線吸収積層体
5 防汚層
6 反射防止層(又は防眩層)
7 金属メッシュ層
8 プラズマディスプレイ

Claims (14)

  1. 少なくとも透明基材、および近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素をアクリル樹脂中に含有する近赤外線吸収層が積層された積層構造を有する光学フィルタであって、前記透明アクリル樹脂が脂環基を含有し、該アクリル樹脂の水酸基価が10以下であることを特徴とする光学フィルタ。
  2. 前記アクリル樹脂が下記一般式(1)で表される構成単位を含有するアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
    (式中、R1 は水素原子またはアルキル基を表し、R2 は脂環基を表す。)
  3. 前記アクリル樹脂の脂環基がノルボルネン環またはトリシクロデカン環から選ばれたことを特徴とする請求項1または2記載の光学フィルタ。
  4. 前記アクリル樹脂の脂環基がトリシクロデシルであることを特徴とする請求項1または2記載の光学フィルタ。
  5. 前記アクリル樹脂の酸価が10以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の光学フィルタ。
  6. 前記アクリル樹脂のガラス転移温度が80℃〜150℃であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の光学フィルタ。
  7. 前記近赤外線吸収色素が次の一般式(2)で表されるジインモニウム系化合物であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の光学フィルタ。
    (式中、Rは互いに同一もしくは相異なる水素、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、フェニル基、もしくはハロゲン化アルキル基であり、Xは1価または2価の陰イオン、nは1または1/2である。)
  8. 前記一般式(2)におけるXが、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸イオンである請求項7記載の光学フィルタ。
  9. 片面もしくは両面に防汚層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の光学フィルタ。
  10. 片面もしくは両面に金属メッシュ層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の光学フィルタ。
  11. 片面もしくは両面に反射防止層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項記載の光学フィルタ。
  12. 片面もしくは両面に防眩層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載の光学フィルタ。
  13. 片面もしくは両面に粘着剤層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項記載の光学フィルタ。
  14. 請求項1乃至13の何れか1項記載の光学フィルタがディスプレイの観察側に配置されていることを特徴とするディスプレイ。
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