JP2005062279A - 光学素子およびその製造方法 - Google Patents

光学素子およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005062279A
JP2005062279A JP2003207993A JP2003207993A JP2005062279A JP 2005062279 A JP2005062279 A JP 2005062279A JP 2003207993 A JP2003207993 A JP 2003207993A JP 2003207993 A JP2003207993 A JP 2003207993A JP 2005062279 A JP2005062279 A JP 2005062279A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymer gel
optical element
adhesive fixing
meth
fixing portion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003207993A
Other languages
English (en)
Inventor
Masahiro Moriyama
正洋 森山
Kazushirou Akashi
量磁郎 明石
Akimasa Komura
晃雅 小村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Business Innovation Corp
Original Assignee
Fuji Xerox Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Xerox Co Ltd filed Critical Fuji Xerox Co Ltd
Priority to JP2003207993A priority Critical patent/JP2005062279A/ja
Publication of JP2005062279A publication Critical patent/JP2005062279A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Optical Elements Other Than Lenses (AREA)
  • Electrochromic Elements, Electrophoresis, Or Variable Reflection Or Absorption Elements (AREA)

Abstract

【課題】高分子ゲルを膨張・収縮させる際に、十分に大きい体積変化量を得ることができる光学素子を提供すること。
【解決手段】対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を刺激の付与により吸収・放出して膨張・収縮する高分子ゲルと、を少なくとも含み、前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記一方の対向面に固定された光学素子において、前記接着固定部の面積が、前記高分子ゲルの最小収縮時の最大断面積と同等あるいは小さいことを特徴とする光学素子。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、外部刺激に応じて可逆的に光の透過率、吸収や光散乱性などを制御できる光学素子及びその製造方法に関する。詳しくは、調光素子、表示素子、記録素子、センサー、等に利用可能な光学素子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
pH変化、イオン強度変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成変化、あるいは熱、光、電気刺激などの付与によって可逆的に体積変化(膨潤・収縮)を起こす高分子ゲル(刺激応答性高分子ゲル)を利用して、光の透過性や散乱性を制御することで調光・発色を行う光学素子技術が知られている。一方で、上記光学素子の特性向上のための重要な技術の一つに、高分子ゲルの基板面への作製技術(固定技術)が提案されている。これらの技術を利用すれば、高分子ゲルを基板表面に固定させることで、素子を傾けた時の高分子ゲルの沈降や、体積変化に伴う高分子ゲル同士の凝集といった問題が防止できると期待される。
【0003】
たとえば、基板上に塗布した重合性モノマーを光重合し基板上にパターン形成する方法(特許文献1参照)、高分子成分を基板上に直接パターン印刷する方法(特許文献2参照)、などが提案されている。しかしながら、これらの方法では、1)色材を含む高分子ゲルを光重合によって生成することが難しい、2)高分子ゲルと基材との接着面積が大きいために高分子ゲルの膨潤・収縮による応力によって剥離する可能性がある、3)同様の原因によって高分子ゲルの体積変化量が抑制される可能性がある、4)プロセスコストが高い、などの課題が予測される。
【0004】
一方、本発明者らは、飽和吸収濃度以上の顔料あるいは飽和散乱濃度以上の光散乱部材を含有し、刺激の付与による液体の吸収・放出により膨潤・収縮する高分子ゲルを用い、この高分子ゲルを基板上に一粒子層状に高い占有率で固定した光学素子を提案している(特許文献3参照)。この光学素子では、色材を含む高分子ゲルが使用できること、可逆的な大きな色変化が得られることなどの大きな特徴を持っている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−13021号公報
【特許文献2】
特開平09−160081号公報
【特許文献3】
特開2001−350163号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような高分子ゲルを基板表面に固定した光学素子について、本発明者らが更に鋭意検討したところ、基板表面に固定される高分子ゲルが、基板表面と広い面積を介して固定されている場合には、このような固定部分の束縛を受けて高分子ゲルが十分に膨張・収縮できずに、十分に大きい体積変化量が得られないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、高分子ゲルを膨張・収縮させる際に、十分に大きい体積変化量を得ることができる光学素子およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために、高分子ゲルを用いた従来の光学素子において、十分な体積変化量が得られない原因について更に鋭意検討した。
その結果、従来の光学素子は、その作製に際し高分子ゲルを固定する基板表面全体にシランカップリング剤等の高分子ゲルを固定するための材料を付与し、この表面に高分子ゲルを固定していることが問題であることを見出した。
【0009】
すなわち、この場合、光学素子の作製時に基板全面が高分子ゲルを固定する能力を有しているため、基板表面に高分子ゲルを付与した際に高分子ゲルが大なり小なりより広い面積を介して基板表面に固定されてしまうことは避けがたい。
また、光学素子は、多数の高分子ゲルを基板表面に固定して用いられるのが一般的である。このような光学素子の作製に際しては、高分子ゲルを分散させた溶液を基板表面に塗布する等の方法を利用して、基板表面にランダムに高分子ゲルが固定される。このため、高分子ゲル同士が極めて近隣するように基板表面に固定された場合には、これらの高分子ゲルが膨張した場合には互いに押圧して変形し、膨張が阻害されてしまうことになる。
【0010】
従って、本発明者らは、高分子ゲルが基板表面に固定される面積を、基板表面に束縛されずに高分子ゲルが自由に膨張・収縮できるように限定した狭い面積にすることが体積変化量を大きくする上で極めて重要であると考え、以下の本発明を想到するに到った。
すなわち、本発明は、
【0011】
<1> 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を刺激の付与により吸収・放出して膨張・収縮する高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記一方の対向面に固定された光学素子において、
前記接着固定部の面積が、前記高分子ゲルの最小収縮時の最大断面積と同等あるいは小さいことを特徴とする光学素子である。
【0012】
<2> 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を刺激の付与により吸収・放出して膨張・収縮する2つ以上の高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記一方の対向面に固定された光学素子において、
前記接着固定部が、前記高分子ゲル毎に前記少なくとも一方の対向面に2つ以上形成されていることを特徴とする光学素子である。
【0013】
<3> 前記高分子ゲルが、水素結合、イオン結合、および、共有結合から選択される1種以上の化学結合により前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定されていることを特徴とする<1>または<2>に記載の光学素子である。
【0014】
<4> 前記接着固定部表面が、シランカップリング剤を用いて処理されていることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1つに記載の光学素子である。
【0015】
<5> 前記高分子ゲル粒子が、色材または光散乱部材を含むことを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1つに記載の光学素子である。
【0016】
<6> <1>〜<5>のいずれか1つに記載の光学素子を作製する光学素子製造方法であって、
前記少なくとも一方の対向面に、パターニングを利用して固定剤を選択的に付与することにより前記接着固定部を形成する工程を少なくとも含むことを特徴とする光学素子製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の光学素子は、対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を刺激の付与により吸収・放出して膨張・収縮する高分子ゲル(以下、「刺激応答性高分子ゲル」と称する場合がある)と、を少なくとも含み、前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記一方の対向面に固定された光学素子において、前記接着固定部の面積が、前記高分子ゲルの最小収縮時の最大断面積と同等あるいは小さいことを特徴とする。
【0018】
従って、本発明の光学素子は、接着固定部の面積が高分子ゲルの最小収縮時の最大断面積と同等あるいは小さいために、高分子ゲルが接着固定部分に余り束縛されずに自由に膨張・収縮でき、十分に大きい体積変化量を得ることができる。
【0019】
なお、本発明において、「最小収縮時」とは、高分子ゲルの膨潤・収縮に際し、何らの制限も受けない状態(溶媒中に分散した状態、あるいは、これに相当する状態で、基板等、なんらかの固体表面に固定されたり、接着されたりしていない状態)で最大限に収縮した状態を意味する。
【0020】
また、本発明において、「接着固定部」とは基板の対向面(以下、「基板表面」と略す場合がある)に設けられ、この部分に高分子ゲルが接触した際に恒久的に1つの高分子ゲルを固定することが可能な微小な領域を意味し、対向面に少なくとも1つ以上設けられるものである。
接着固定部の面積は、上記に説明したように高分子ゲルの最小収縮時の最大断面積と同等あるいは小さければよく、高分子ゲルの最小収縮時の最大断面積以下であることが好ましく、高分子ゲルの最小収縮時の最大断面積の1/2倍以下であることがより好ましい。
但し、接着固定部の面積が小さすぎる場合には、外部から何らかの力が加わった場合に狭い面積の接着固定部に力が集中するためにこの部分で剥離が発生し、高分子ゲルが基板表面から脱落してしまう場合がある。このため、接着固定部の面積は、高分子ゲルの最小収縮時の最大断面積の1/4倍以上であることが好ましい。なお、上記に説明した以外の接着固定部の詳細については後述する。
【0021】
次に、本発明の光学素子における高分子ゲルの固定状態について図面を用いて説明する。
図1は本発明の光学素子における高分子ゲルの固定状態の一例を説明するための概略斜視図である。図1中、30は(固体表面に束縛されないと仮定した状態の球状の)高分子ゲル、30aは高分子ゲル30の最小収縮時の状態(最小収縮時の高分子ゲル)、30bは高分子ゲル30の膨張時の状態(膨張時の高分子ゲル)、点線で囲まれた符号40で表される領域は基板表面(の一領域)、41は高分子ゲル30aの基板表面40への投影領域、42は接着固定部を表す。
【0022】
図1に示すように、接着固定部42の面積は、高分子ゲル30aの基板表面40への投影領域41の面積よりも小さくなるように設けられている。このため、高分子ゲル30は、膨張・収縮に際し、十分に大きい体積変化量を得ることができる。
なお、この高分子ゲル30aの基板表面40への投影領域41は、基板表面40に対して垂直な方向に設けられた平行光源から照射される光により高分子ゲル30aを基板表面40に投影した場合に形成される影に相当するもので、この影の面積は高分子ゲル30aの最大断面積に相当するものである。また、説明の都合上、図1に示される高分子ゲル30は、基板表面40から離れた位置に存在するものとして示しているが、実際には、接着固定部42を介して基板表面40に固定される。
【0023】
また、図2は本発明の光学素子における高分子ゲルの固定状態の他の例を説明するための模式断面図であり、図2(a)が、高分子ゲルの最大膨張時の状態を表し、図2(b)が高分子ゲルの収縮時の状態を表す。また、図2中、50〜54は高分子ゲル、60は基板表面、62は接着固定部を表す。
図2からわかるように高分子ゲル50、51、52、53、54はこの順に基板表面60に接着固定部62を介して、一定の間隔で配置されている。このため、高分子ゲル50〜54は、膨張・収縮に際し、十分に大きい体積変化量を得ることができる。
【0024】
なお、本発明において、「最大膨張時」とは、高分子ゲルが何らの固体表面に固定されないと仮定した際に最大限に膨張した状態を意味するものではなく、高分子ゲルが接着固定部を介して基板表面に固定された状態で最大限に膨張した状態を意味する。
なお、高分子ゲルは接着固定部へ固定する前の状態の方が、固定後よりもより大きく膨張できる傾向にあるため、接着固定部へ固定する前の何らの固体表面に束縛されない状態の最大膨張時の高分子ゲルの大きさを、本発明の光学素子の設計・作製時の目安として利用することができる。
【0025】
また、本発明の光学素子の接着固定部の面積は高分子ゲルの膨張・収縮が著しく阻害される程に大きなものでなければ特に限定されないものの、固定された高分子ゲルの基板表面への束縛をより小さくして、体積変化量をより大きくする観点からは、光学素子と同様に高分子ゲルの最小収縮時の最大断面積と同等あるいは小さいことが好ましい。
【0026】
次に、本発明の光学素子を構成する各種要件について説明する。
−接着固定部−
「接着固定部」は、上記に説明したように恒久的に1つの高分子ゲルを固定することができる微小な領域であれば特に限定されないが、具体的には、高分子ゲルと基板表面との間を化学結合(当該化学結合とは、水素結合、イオン結合、共有結合から選択される1種以上を意味する)を利用して化学的に接着・固定できるものであることが好ましい。また、化学結合としては、結合力が強く安定性に優れたイオン結合や共有結合であることがより好ましい。
このような化学結合を形成するためには、接着固定部表面が、例えば、高分子ゲル中の官能基と反応して化学結合の形成が可能な基を有する接着剤、多官能化合物、シランカップリング剤やチオール化合物、セレン化合物、無機物や高分子化合物等の固定剤により処理されていることが好ましい。
なお、接着固定部を介した高分子ゲルの基板表面への固定はこのような化学反応を伴わないものであっても、高分子ゲルを基板表面に恒久的に固定できるのであれば、例えば、微小なフックを接着固定部に形成して高分子ゲルを引っ掛けて固定する等の機械的固定など、他の方法を利用あるいは併用することも可能である。
【0027】
基板表面の接着固定部において、高分子ゲルとの間で化学結合を形成するために用いられる材料としては、多官能性化合物やシランカップリング剤等の各種反応性化学物を用いることができ、例えば、重合性不飽和基や反応性官能基などを2個以上有する化合物を挙げることができる。
【0028】
上記重合性不飽和基を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリンなどのポリオール類のジ(メタ)アクリル酸エステル類またはトリ(メタ)アクリル酸エステル類、前記ポリオール類とマレイン酸、フマル酸などの不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類、N、N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、トリレジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミン酸エステル類、アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、その他のテトラアリロキシエタン、ペンタンエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリアリルトリメチルエーテルなどの多価アリル系を挙げることができる。
【0029】
これらの中でも本発明においては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N、N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどが好ましく使用される。
【0030】
また、反応性官能基を2個以上有する化合物としては、ジグリシジルエーテル化合物、ハロエポキシ化合物、ジイソシアネート化合物およびトリイソシアネート化合物などを挙げることができる。
ジグリシジルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
その他、ハロエポキシ化合物の具体例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリンなどを挙げることができる。また、ジイソシアネート化合物の具体例としては、2、4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0031】
また、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系シランカップリング剤、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤など、各種シランカップリング剤なども適用できる。
【0032】
これらの中でも本発明には、特にN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系シランカップリング剤が好ましく使用される。
【0033】
基板表面に部分的に形成される接着固定部の形状は特に限定されないが、例えば円形、楕円形、三角形、多角形、長方形、正方形、不定形、ストライプ状などが適用できる。
【0034】
これらの形状の中でも特に接着固定部の形状が円形であることが、高分子ゲル粒子がより安定して固定できると共に、固定前の高分子ゲルと比較して固定後の高分子ゲルの体積変化特性の劣化が少ないという利点がある。また、接着固定部の形状が円形である場合、使用する高分子ゲルの大きさにもよるが、円形パターンの大きさはその直径が1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0035】
なお、基板表面に設けられる接着固定部の配置は規則的・周期的なものであっても、ランダムなものであっても構わない。
しかしながら、基板表面に高分子ゲルを出来るだけ高い密度で固定する場合には、基板表面に設けられる接着固定部の配置は千鳥配列や桝目配列等、規則的・周期的であることが好ましい。
また、基板表面の接着固定部の占める面積割合は、基板表面上において、高分子ゲルを(固定できるか否かは別として)配置可能な領域の全面積に対して5%〜50%の範囲内であることが望ましい。
【0036】
−接着固定部以外の領域−
基板表面の接着固定部以外の領域については、光学素子の作製に際し高分子ゲルを恒久的に固定できる能力を持たないものであれば特に限定されないが、高分子ゲルと接着性の低い性質をもつ材質から成り、高分子ゲルが膨潤・収縮を繰り返した際に粘着して貼り付き等を起こさない材料からなることが好ましい。例えば、接着固定部以外の領域は高分子ゲルとの化学結合(水素結合,イオン結合,共有結合)を殆ど形成せず、高分子ゲルとの相互作用や親和性の低い材料によって形成されていることが好ましい。このような場合、高分子ゲルが膨張・収縮を繰り返しても接着固定部の周囲の領域に粘着したり貼り付いたりすることにより、経時的に膨張・収縮の応答特性が低下したり、体積変化量が低下したりすることを確実に防ぐことができる。
【0037】
なお、基板表面の接着固定部以外の領域は、基板表面を構成する材料(例えば、ガラスや樹脂等の基板材料そのものや、ITO(Indium−Tin Oxide)等の基板上に設けられる電極材料等)そのものであってもよいが、上記に説明した点から具体的にはフッ化アルキル基,シロキサン基などを持つ重合体層が形成された領域,アルキル系シランカップリング剤,フッ素化アルキル系シランカップリング剤,アルキル系チオール,フッ素化アルキル系チオール等の固定阻害剤を用いて表面処理された領域であることが望ましい。
【0038】
フッ化アルキル基を持つ重合体としては,ポリフッ化ビニル,ポリフッ化ビニリデン,ポリ四フッ化エチレン,エチレン−四フッ化エチレン共重合体,四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂が挙げられる。シロキサン基などを持つ重合体としては,ジメチルシリコーン,メチルフェニルシリコーン,シリコーンのアミノ変性体,エポキシ変性体,カルボキシル変性体,メタクリル変性体,フェノール変性体,アルキル変性体等のシリコーン系樹脂が挙げられる。これらの重合体を溶媒に溶解または分散させ,基板を浸漬させるなどして基板表面の処理を行なう。
【0039】
なお、シランカップリング剤やアルキル系チオールのように反応性官能基を有する固定阻害剤を用いる場合には、分子中に含まれる反応性官能基は、1つであるか、あるいは分子の一方の端にのみ偏在しているものが、これら反応性官能基が基板表面との結合のみに確実に用いられ、これら分子中の高分子ゲルとの化学的親和性の低い部位(アルキル基やフッ素化アルキル基等)が基板表面側に配向することになるために好適である。
【0040】
一方、このような表面処理を行わなくても、基板を構成する材料自体が高分子ゲルとの接着性の低い性質をもつ材質の場合には、上記のような表面処理を行なう必要はない。このような高分子ゲルと接着性の低い性質をもつ材料としては、ウレア樹脂,エポキシ樹脂,ポリ塩化ビニル,ポリメタクリル酸エチル,ポリ酢酸ビニル,ナイロン,ポリエチレンテレフタレート,ポリビニルアルコール,ポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0041】
−光学素子の構成−
次に、本発明の光学素子の具体的な構成例を図面を用いて説明するが、本発明の光学素子は、以下に示す例のみに限定されるものではない。
図3は、本発明の光学素子の一例を示す模式断面図である。図3において、2は基板、4は透明基板、6は高分子ゲル(粒子)、8は液体、10、12は刺激付与手段、14はスペーサー、16は封止材を表す。
図3に示す光学素子は、対向配置された一対の基板(基板2および透明基板4)と、対向面間に封入された高分子ゲル6、液体8およびスペーサー14と、対向配置された一対の基板(基板2および透明基板4)の両端を封止するために、基板2の端部と透明基板4の端部との間を覆うように設けられた封止材16と、から構成される。
【0042】
基板2の対向面には刺激付与手段10が、また、透明基板4の対向面には刺激付与手段12がそれぞれ設けられている。また、2つの対向面の間隔を一定に維持するために、これら2つの対向面(刺激付与手段10および刺激付与手段12)と接してスペーサー14が配置されている。
なお、図3に示す高分子ゲル6は、刺激付与手段10、12に応じて選択されるが、例えば刺激付与手段10、12が電極からなる場合には、これらの電極間に発生する電界の変化に応答して膨潤・収縮するタイプの高分子ゲルが用いられる。
【0043】
高分子ゲル6は、基板2の対向面に設けられた刺激付与手段10表面に設けられた不図示の接着固定部を介して、基板2上に固定されている。
なお、図3に示す光学素子の接着固定部の面積は図1に例示したように(接着固定部に固定されていないと仮定した)高分子ゲル6の最大収縮時の最大断面積と同等あるいは小さくなるように設けられる。
【0044】
図4は、図3に示す光学素子の対向面(刺激付与手段10表面)に設けられた接着固定部の、平面方向(光学素子の厚み方向に対して垂直に交わる面)の形状および配列パターンの一例について示す模式図である。
図4において、点線で囲まれた符号10’で示される領域は刺激付与手段10表面の一領域を表し、20は接着固定部を表す。図4において、接着固定部20の形状は円形であり、刺激付与手段10表面には、高分子ゲル6が規則的に配置可能なように接着固定部20が千鳥配列で配置されている。なお、配列は、図4に示した例に限定されるものではなく、桝目配列等であってもよい。
【0045】
なお、図3に示した例では高分子ゲル6は、一方の基板(基板2)の対向面(刺激付与手段10表面)にのみ固定されているが、もう一方の基板(透明基板4)の対向面(刺激付与手段12表面)に固定されていてもよい。この場合、刺激付与手段12の表面に更に接着固定部が設けられる。また、刺激付与手段は一方の基板上のみに形成されていても構わない。また、高分子ゲル6が、図3に示す光学素子外部からの刺激に応答して膨潤・収縮ができる場合には、刺激付与手段を基板2や透明基板4の表面に設けなくてもよい。
【0046】
−光学素子の作製方法−
次に本発明の光学素子の作製方法について、接着固定部の形成を中心に説明する。
対向面への接着固定部の形成は、化学気相成長法、真空蒸着、イオンプレーティング法などにより気相中から接着固定部を形成する材料を成膜することにより対抗面に直接形成して行なうこともできるし、固定剤を含む溶液を用いて塗布法や、浸漬法、ゾルゲル法、バイロゾル法を利用して行なうこともできる。
なお、このような処理を行わなくても、対向面を元々構成する材料が、そのまま接着固定部として機能する場合には、対向面をそのまま接着固定部として利用することも可能である。
【0047】
また、接着固定部を対向面に選択的に形成するために、公知のパターニング方法、例えば、各種印刷法やリソグラフィー法、ソフトリソグラフィー法、また、マスキング等を利用することができる。また、インクジェット法を利用して固定剤を含む溶液を対抗面に噴射してパターン状に形成することも可能である。
【0048】
なお、本発明の光学素子を作製する場合には、各々の接着固定部は、その面積が、光学素子の作製に用いる高分子ゲルの最大収縮時の最大断面積と同等あるいはそれ以下となるように対向面に形成される。また、接着固定部以外の領域にも、上記と同様にパターニングを利用して高分子ゲルとの粘着や貼り付きが起こりにくい材料を成膜する形成することができる。
【0049】
次に、基板表面に接着固定部を形成する方法の具体例を図面を用いて以下に説明する。
図5は、基板表面に接着固定部を形成する方法の一例を示す模式断面図であり、具体的には穴の空いたマスクを利用して基板表面に接着固定部を形成する方法について示したものである。図5中、70は基板、71は接着固定部、80はマスク、81はマスク80をその厚み方向に貫通するように設けられた開口部を表す。
【0050】
図5に示す方法では、まず図5(a)に示すように最初に基板70表面にマスク80を設置し、次に、図5(b)に示すように、マスク80上から固定剤を含む溶液を塗布したり、蒸着法等の気相成膜法を利用して接着固定部を形成する材料を成膜した後にマスク80を基板70表面から除去することにより開口部81に対応して基板70表面に接着固定部71が形成される。
【0051】
なお、図5に示す方法により本発明の光学素子を作製する場合には、開口部80の面積は、光学素子の作製に用いられる高分子ゲルの最大収縮時の最大断面積と同等あるいは小さくなるように設けられる。
【0052】
なお、マスク80を用いずに、インクジェット法を利用して固定剤を含む溶液を直接基板70上に吐出することにより図5(b)に示すように、基板70表面に接着固定部71を形成してもよい。
【0053】
次に、図5に示した方法以外の方法について説明する。図6は、基板表面に接着固定部を形成する方法の他の例を示す模式断面図であり、具体的にはフォトリソグラフィー法を利用して基板表面に接着固定部を形成する方法について示したものである。図6中、70は基板、71は接着固定部、90はレジスト膜(ポジ型レジスト膜)、91は開口部(エッチングされた部分)、100はフォトマスク、101はUV光遮蔽部分、102はUV光透過部分、110はUV光を表す。
【0054】
図6に示す方法では、まず、図6(a)に示すように基板70表面にレジスト膜90を形成し、次いで、図6(b)に示すようにレジスト膜90が形成された基板70上にフォトマスク100を設置して、不図示の平行光源(露光機)から照射されるUV光110を介してレジスト膜90に照射し、さらに、露光後のレジスト膜90を現像することにより、図6(c)に示すように、現像剤を用いてレジスト膜90を現像して、開口部91(現像剤によりエッチングされた部分)を設ける。
【0055】
なお、図6に示す方法により本発明の光学素子を作製する場合には、フォトマスク100のUV光透過部分102の面積は、光学素子の作製に用いられる高分子ゲルの最大収縮時の最大断面積と同等あるいは小さくなるように設けられる。
【0056】
次に、開口部91が設けられたレジスト膜90上から、固定剤を含む溶液を塗布したり、蒸着法等の気相成膜法を利用して接着固定部を形成する材料を成膜することにより開口部91に対応した基板70表面のみに接着固定部71が形成される(図6(d))。最後に、図6(e)に示すように残りのレジスト膜90を除去することにより、基板70表面に接着固定部71が形成された基板を得ることができる。
【0057】
−刺激応答性高分子ゲル−
本発明の光学素子には以下に示す様々な刺激応答性高分子ゲルが使用できる。これらの高分子ゲルはそれ自身でも膨潤・収縮によって光散乱性が変化するが、必要に応じて色材または光散乱部材が含有されていても構わない。特に、本発明者らが見出した特開平11−236559号公報に開示されている発色材料と液体の組成物が好ましく使用できる。また光散乱部材を含有した高分子ゲル粒子としては、特開2000−231127に開示されている飽和散乱濃度以上の光散乱材料と液体の組成物が好ましく用いられる。
【0058】
刺激応答性高分子ゲルとしては、pH変化、イオン濃度変化、化学物質の吸着・脱離、溶媒組成変化、および光、熱、電気、磁界などのエネルギーの付与など、各種の刺激によって液体を吸収・放出し、可逆的に体積変化(膨潤・収縮)する刺激応答性高分子ゲルが好ましい。ただし、「可逆的」といっても、膨潤時と収縮時で同一刺激量に応じた体積変化量が異なる、いわゆるヒステリシスな性質を有するものであっても問題なく、本発明において、このような性質の場合も「可逆的」の概念に含まれる。このような高分子ゲルとして具体的には、次のようなものが適用できる。
【0059】
まず、電極反応などによるpH変化によって刺激応答する高分子ゲルとしては、電解質系高分子ゲルが好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋体やその塩;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、アルキル置換(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその4級化物や塩;マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、アルキル置換(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩;ポリビニルスルホン酸の架橋体やその塩。ビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、アルキル置換(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその4級化物やその塩;ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋体やその塩;ビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、アルキル置換(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその4級化物やその塩;ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋体やその塩;(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその4級化物やその塩;ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋体やその4級化物;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩や4級化物;ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドの架橋体やその4級化物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩や4級化物;ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの架橋体やその4級化物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩や4級化物;ポリジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの架橋体やその4級化物;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩や4級化物;ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋体やその4級化物;ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋体やその塩;ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋体の部分加水分解物やその塩などが挙げられる。
【0060】
電界による界面活性剤などの化学物質の吸脱着によって刺激応答する高分子ゲルとしては強イオン性高分子ゲルが好ましく、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物;ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどから選択される1種以上の化合物との共重合体の架橋物;ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やアクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどから選択される1種以上の化合物との共重合体の架橋物などが挙げられ、これらとn−ドデシルピリジニウムクロライドなどのアルキルピリジン塩;アルキルアンモニウム塩;フェニルアンモニウム塩;テトラフェニルホスフォニウムクロライドなどのホスホニウム塩などのカチオン性界面活性剤とを組み合わせることで使用される。
【0061】
電気による酸化・還元によって刺激応答する高分子ゲルとしては、カチオン性高分子ゲルが挙げられ、電子受容性化合物と組み合わせてCT錯体(電荷移動錯体)として好ましく使用される。
例えば、カチオン性高分子ゲルとしてポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどポリアミノ置換(メタ)アクリルアミドの架橋物;ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステルの架橋物;ポリスチレンの架橋物;ポリビニルピリジンの架橋物;ポリビニルカルバゾールの架橋物;ポリジメチルアミノスチレンの架橋物などが挙げられる。また、電子受容性化合物としてベンゾキノン、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラシアノエチレン、クロラニル、トリニトロベンゼン、無水マレイン酸やヨウ素などが挙げられる。
【0062】
熱の付与によって刺激応答する高分子ゲルとしては、LCST(下限臨界溶液温度)やUCST(上限臨界溶液温度)をもつ高分子の架橋体(前者を「LCSTゲル」、後者を「UCSTゲル」と称する。)、互いに水素結合する二成分の高分子ゲルのIPN体(相互侵入網目構造体)や結晶性などの凝集性の側鎖をもつ高分子ゲル(前者を「IPNゲル」、後者を「結晶性ゲル」と称する。)などが好ましいものとして例示される。なお、LCSTゲルは高温において収縮し、UCSTゲル、IPNゲルおよび結晶性ゲルは逆に高温において膨潤する特性を持っている。
【0063】
LCSTゲルの具体例としては、ポリ[N−イソプロピルアクリルアミド]などのポリ[N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド]の架橋体;N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩;ポリビニルメチルエーテルの架橋体;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのアルキル置換セルロース誘導体の架橋体;などが挙げられる。
【0064】
UCSTゲルの具体例としては、ポリ[3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルフォネート]などの、分子内にアニオンとカチオンの両成分を有する双性イオン高分子の架橋体が挙げられる。
一方、IPNゲルの代表的な例としては、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体およびその部分中和物(アクリル酸単位のカルボキシル基の一部を金属イオンなどの陽イオンで中和したもの)が挙げられる。その他、(メタ)アクリルアミドあるいはN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド誘導体を主成分とする共重合体の架橋体と(メタ)アクリル酸あるいはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸を主成分とする共重合体の架橋体からなるIPN体およびそれらの部分中和物;少なくとも(メタ)アクリルアミドあるいはN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド誘導体と(メタ)アクリル酸あるいはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸を含む共重合体の架橋体およびその部分中和物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを主成分とする共重合体の架橋体;少なくともステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと(メタ)アクリル酸あるいはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸を含む共重合体の架橋体およびその部分中和物;少なくともアクリロキシメチルウラシルなど側鎖に核酸塩基を導入した(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸あるいはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸を含む共重合体の架橋体およびその部分中和物などが挙げられる。
【0065】
また、結晶性ゲルとしてはオクチル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基などの長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体の架橋体やその塩;コレステリル系モノマあるいは芳香族系モノマと(メタ)アクリル酸との共重合体の架橋体やその塩が挙げられる。
【0066】
さらに、温度変化に応じて複数の相転移温度を示す高分子ゲルも好ましく使用できる。このような高分子ゲルとしては、例えば、ポリ[N−イソプロピルアクリルアミド]などのポリ[N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド]の架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とのIPN体などが挙げられる。かかる高分子ゲルは、温度上昇に伴い、膨潤−収縮−膨潤という二つの相転移温度を示すことが知られている。
【0067】
光の付与によって刺激応答する高分子ゲルとしては、トリアリールメタン誘導体やスピロベンゾピラン誘導体などの光によってイオン解離する基を有する親水性高分子化合物の架橋物が好ましく、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体とアクリルアミドとの共重合体の架橋物などが挙げられる。より好ましくは、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体とアクリルアミドとの共重合体の架橋体などが挙げられる。
【0068】
磁場の付与によって刺激応答する高分子ゲルとしては、強磁性体粒子や磁性流体等を含有するポリビニルアルコールの架橋物等が挙げられる。ただし、含有される高分子ゲルは、高分子ゲルの範疇であるものであれば限定されることなく適用できる。
【0069】
溶液の組成変化やイオン強度の変化によって応答するものとしては、特に大きな体積変化が得られるものとして好ましいものには、前記した電解質系高分子ゲルが挙げられる。
【0070】
本発明において特に好ましく用いられる高分子ゲルは、電気および熱の付与によって刺激応答する高分子ゲルである。
なお、上記の括弧を用いた記述は、括弧内の接頭語を含まない化合物および含む化合物の両方を示しており、例えば「(メタ)アクリル」という記述は、「アクリル」および「メタクリル」のいずれをも意味するものである。
【0071】
本発明において使用される高分子ゲルの体積変化量は、少なくとも体積比(最大膨張時の体積/最大収縮時の体積)が5以上、好ましくは10以上、より好ましくは15以上であることが望ましい(但し、当該最大膨張時および最大収縮時とは、高分子ゲルが、基板表面に固定されたり、固定されないまでも粘着性の表面と接触して体積変化挙動が制限されていない状態(すなわち、溶媒中に分散した状態、あるいは、これに等しい状態)での膨張・収縮を意味する)。
なお、体積比が5未満であると十分な調光コントラストが得られない可能性がある。
【0072】
上記した高分子ゲルはそれ自身でも、体積変化に伴い光散乱性が変化するという調光能を示すが、より大きな調光特性や色変化を発現するために、調光用材料が高分子ゲル内部に含有されていることが好ましい。
【0073】
使用可能な調光用材料としては、顔料および染料などの色材や光散乱材などが挙げられる。例えば、顔料としてはカーボンブラックなどの黒色顔料、ベンジジン系のイエロー顔料、キナクリドン系、ローダミン系のマゼンタ顔料、フタロシアニン系のシアン顔料などを挙げることができる。
より詳しくは、黒色顔料としてはチャネルブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラックおよびチタンブラックなどが挙げられる。
【0074】
またイエロー顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
【0075】
またマゼンタ顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0076】
そしてシアン顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15;3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0077】
また染料としては、黒色染料のニグロシン系染料および各種カラー染料であるアゾ染料をはじめとし、その他アントラキノン系染料、インジゴ系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム系染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが挙げられ、特に光吸収係数が高いものが好ましい。
【0078】
染料の好適な具体例としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、157、C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、19、23、25、29、38、44、79、127、144、245、C.I.ベイシックイエロー1、2、11、34、C.I.フードイエロー4、C.I.リアクティブイエロー37、C.I.ソルベントイエロー6、9、17、31、35、100、102、103、105、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、85、87、89、92、97、106、111、114、115、118、134、158、186、249、254、289、C.I.ベイシックレッド1、2、9、12、14、17、18、37、C.I.フードレッド14、C.I.リアクティブレッド23、180、C.I.ソルベントレッド5、16、17、18、19、22、23、143、145、146、149、150、151、157、158、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、78、86、87、90、98、163、165、199、202、C.I.アシッドブルー1、7、9、22、23、25、29、40、41、43、45、78、80、82、92、93、127、249、C.I.ベイシックブルー1、3、5、7、9、22、24、25、26、28、29、C.I.フードブルー2、C.I.ソルベントブルー22、63、78、83〜86、191、194、195、104、C.I.ダイレクトブラック2、7、19、22、24、32、38、51、56、63、71、74、75、77、108、154、168、171、C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、44、48、50、52、94、C.I.ベイシックブラック2、8、C.I.フードブラック1、2、C.I.リアクティブブラック31、C.I.フードバイオレット2、C.I.ソルベントバイオレット31、33、37、C.I.ソルベントグリーン24、25、C.I.ソルベントブラウン3、9等が挙げられる。
【0079】
これらの顔料及び染料は、単独で使用してもよく、さもなければ所望とする色を得るために混合して使用してもよい。ただし、耐候性の観点からは染料よりも顔料を用いるほうが好ましい。
【0080】
また、光散乱材としては、高分子ゲルの体積変化に用いられる液体の屈折率と異なる屈折率を有する材料が好ましいが、それ以外には特に制限はなく、各種の無機化合物および有機化合物が適用できる。
【0081】
無機材料の具体例としては、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンモチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の無機導電性材料などが挙げられる。
【0082】
また、有機材料の具体例としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等やこれら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子材料が挙げられる。
【0083】
使用する顔料や光散乱材の好ましい大きさは、一次粒子の平均粒子径で0.001μm〜1μmの範囲、より好ましくは0.01μm〜0.5μmの範囲である。これは、平均粒子径で0.01μm以下または0.5μm以上になると、顔料および光散乱材に求められる発色および光散乱効果が低くなるためである。さらに、平均粒子径0.01μm以下では、高分子ゲル内部からの外部への流出が起こりやすくなる場合がある。
【0084】
顔料および光散乱材の流出を防止するためには、使用する高分子ゲルの架橋密度を最適化して顔料や光散乱材を前記高分子ゲルの網目内部に物理的に閉じ込めたり、前記高分子ゲルとの電気的、イオン的、その他物理的な相互作用が高い顔料および光散乱材を用いること、表面を化学修飾した顔料および光散乱材を用いることなどが挙げられる。
【0085】
例えば、表面を化学修飾した顔料および光散乱材として例えば、表面にビニル基などの不飽和基や不対電子(ラジカル)などの高分子ゲルとの化学結合する基を導入したものや、高分子材料をグラフト結合したものなどが挙げられる。
高分子ゲル中に含有される顔料および光散乱材の濃度は、高分子ゲルが収縮した時に、少なくとも高分子ゲルの一部分で飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)の濃度に達することが望ましい。
【0086】
ここで、飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)とは、ひとつの指標として各々の顔料および光散乱材同士の平均間隔が十分に短くなることで、顔料および光散乱材の可視光線吸収および散乱の働きが1次粒子的なものから集合体的なものに変化し、可視光線吸収および散乱の効率が減少する濃度である。このような顔料および光散乱材が集合体的な可視光線吸収および散乱特性を示す状態を、顔料および光散乱材の濃度が飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)にある状態と呼ぶ。
【0087】
また、飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)という定義を別な特性で表現すれば、特定の光路長のもとにおける顔料および光散乱材濃度と可視光線吸収および散乱量の関係が1次直線の関係から大きく乖離するような顔料および光散乱材濃度である。すなわち、顔料および光散乱材濃度が飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)になると、顔料および光散乱材の1粒子あたりの可視光線吸収および散乱効率が下がることで、可視光線吸収および散乱量がそれぞれ顔料および光散乱材濃度に比例しなくなり、1次直線の関係から予想される可視光線吸収および散乱量と比べて低くなる。一方、飽和吸収濃度以下(あるいは飽和光散乱濃度以下)では、可視光線吸収および散乱量がそれぞれ顔料および光散乱材濃度に比例しており、顔料および光散乱材1粒子あたりの可視光線吸収および散乱効率は殆ど一定になる。
【0088】
なお、高分子ゲル中に顔料および光散乱材を飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)に含有させる理由は、次に示すとおりである。
すなわち、高分子ゲル中に顔料および光散乱材を飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)に含有させた場合、膨潤時に可視光線を効率よく吸収および散乱することができ、収縮時と比べて可視光線吸収および散乱量をより大きくすることができる。つまりこの場合、高分子ゲルが収縮した時に顔料および光散乱材を飽和吸収濃度以上に含有できるので、この高分子ゲルが膨潤すると、顔料および光散乱材の濃度が下がり、顔料および光散乱材1粒子あたりの可視光線の吸収および散乱効率を収縮時よりも上げることができる。その結果、膨潤時に可視光線の吸収および散乱量を大きく上げ、収縮時には可視光線の吸収および散乱量を大きく下げることができる。
【0089】
一方、含有させる顔料および光散乱材の濃度を飽和吸収濃度以下(あるいは飽和光散乱濃度以下)にすると、収縮時の顔料および光散乱材1粒子あたりの可視光線および赤外線の吸収効率が膨潤時の効率と同程度になる。その結果、膨潤時に可視光線の吸収および散乱量を大きく上げ、収縮時に可視光線の吸収および散乱量を大きく下げることができなくなる。
以上のことから、飽和吸収濃度(あるいは飽和光散乱濃度)とは膨潤・収縮による可視光線の吸収および散乱量変化をより大きくするために必要な濃度であり、顔料および光散乱材の濃度を飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)に設定することが好ましい。
【0090】
なお、高分子ゲルが収縮した時に、高分子ゲル中に含有されるこれらの調光用材料の濃度が、飽和濃度(飽和吸収濃度および飽和光散乱濃度)以上になる濃度となるのは、該高分子ゲルのうち少なくとも一部であればよい。ここで、「高分子ゲルのうち少なくとも一部」とは、その高分子ゲルの内部において、調光用材料が飽和濃度以上に濃縮されているところが、部分的あるいは全体的である場合、および、調光用材料が飽和濃度以上に濃縮されている高分子ゲルが、全高分子ゲルのうちの一部あるいは全部である場合の双方を意味するものとする。「高分子ゲルのうち少なくとも一部」が飽和濃度以上になる濃度となっていれば、調光作用を発揮することができるが、その高分子ゲルの内部のより多くの部分が、あるいは、より多くの高分子ゲルが、前記飽和濃度以上になる濃度であることが好ましい。
【0091】
このような特性を有するために必要な高分子ゲルに含有させる顔料および光散乱材の濃度は、一般に3重量%〜95重量%の範囲が好ましく、より好ましくは5重量〜80重量%の範囲である。顔料および光散乱材の濃度が3重量%未満であると、飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)とはならず、高分子ゲルの体積変化による調光特性が不充分となる場合がある。一方、顔料および光散乱材の濃度が95重量%を超える場合、高分子ゲルの刺激応答速度や体積変化量が低下してしまう恐れがある。
【0092】
一方、高分子ゲル中に含有させる染料の好ましい濃度は、3重量%から50重量%の範囲であり、特に好ましくは5重量%から30重量%の範囲である。染料濃度としては、顔料と同様に、少なくとも高分子ゲルの乾燥あるいは収縮状態において飽和吸収濃度以上であることが望ましい。また、染料を高分子ゲルに固定化するためには、不飽和二重結合基などの重合可能な官能基を有する構造の染料や、高分子ゲルと反応可能ないわゆる反応性染料などが好ましく使用される。
【0093】
このような顔料や染料などの色材および光散乱材などの調光用材料を含む高分子ゲルは、架橋前の高分子に該調光用材料を均一に分散、混合した後に架橋する方法や、重合時に高分子前駆体組成物に該調光用材料を添加して重合する方法によって製造することができる。重合時において調光用材料を添加する場合には、前記したように重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ調光用材料を使用し、高分子ゲルに化学結合させることも好ましく実施される。
【0094】
また、調光用材料は高分子ゲル中に極力均一に分散されていることが望ましい。特に、架橋前の高分子への分散や、高分子前駆体モノマ組成物への添加に際して、機械的混練法、攪拌法やあるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。
【0095】
本発明で使用可能な高分子ゲルの形状としては、特に限定されるものではないが、応答速度や加工の容易性などの観点からは、粒子状であることが好ましい。粒子状の高分子ゲルの具体的な形状としては、球体、楕円体、紡錘体、立方体、多面体、多孔質体、繊維状、星状、針状、中空状などが挙げられるが、その他不定形のものであってもよい。粒子状の高分子ゲルの好ましい大きさは、膨潤・収縮用液体を含まない状態において、体積平均粒子径で0.1μm〜1mmの範囲、より好ましくは1μm〜0.5mmの範囲である。体積平均粒子径が0.1μm未満であると、粒子の扱いが困難になる、優れた光学特性が得られないなどの問題を生じる場合がある。一方、体積平均粒子径が0.5mmよりも大きくなると、体積変化に要する応答時間が大幅に長くなってしまうなどの問題が生じる場合がある。
【0096】
粒子状の高分子ゲルは、バルク状の高分子ゲルを物理的粉砕方法によって粉砕する方法や、架橋前の高分子を物理的粉砕方法や化学的粉砕方法によって粒子化した後に架橋して高分子ゲルとする方法、あるいは乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法など、一般的な方法によって作製することができる。
【0097】
本発明に用いられる高分子ゲルを形成するために適用される架橋剤としては、例えば分子内に重合性不飽和基、反応性官能基などを2個以上有する化合物を挙げることができる。上記重合性不飽和基を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリンなどのポリオール類のジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類、前記ポリオール類とマレイン酸、フマル酸などの不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、トリレジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミン酸エステル類、アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、その他のテトラアリロキシエタン、ペンタンエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリアリルトリメチルエーテルなどの多価アリル系を挙げることができる。これらの中でも本発明には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、 N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどが好ましく使用される。
【0098】
また、反応性官能基を2個以上有する化合物としては、ジグリシジルエーテル化合物、ハロエポキシ化合物、ジおよびトリイソシアネート化合物などを挙げることができる。ジグリシジルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。その他、ハロエポキシ化合物の具体例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリンなどを挙げることができる。また、ジイソシアネート化合物の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどを挙げることができる。これらの中でも本発明には、特にエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが好ましく使用される。
【0099】
これらのうち特に好ましいのはN,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。架橋剤の使用量は、前記モノマーの仕込み量に対して一般に0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。
本発明で用いられる重合開始剤は、前記モノマー溶液に溶解し得るものであればよい。具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキシドやクメンハイドロパーオキシド等のパーオキシド類、アゾイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物などが用いられる。これらの重合開始剤の中でも、特に、過硫酸塩、ハイドロパーオキシド類等の様な酸化性を示す開始剤は、例えば亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、第一鉄塩等の様な還元性物質、あるいはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類との組合せによるレドックス開始剤としても用いることができる。これらの開始剤の使用量は、一般には主モノマーに対して0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。
なおその他、高分子に電子線やガンマ線などの放射線を照射する、加熱するなどの一般的な方法により高分子ゲルを作製することもできる。
【0100】
また、高分子ゲルの刺激応答による体積変化速度をより高速にするために、高分子ゲルの従来技術と同様に材料を多孔質化して液体の出入り易さを向上させることも好ましい。一般的には膨潤した高分子ゲルを凍結乾燥する方法等で多孔質化することができる。
【0101】
−液体−
高分子ゲルが膨張・収縮する際に高分子ゲル内に取り込んだり、排出したりする液体(吸脱液体)としては、特に制限はないが、好ましくは、水、電解質水溶液、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、プロピレンカーボネートなどや、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶媒およびそれらの混合物が使用できる。また、液体には高分子ゲルに吸脱する界面活性剤、液体のpH変化を促進するためのビオロゲン誘導体などの酸化還元剤、酸、アルカリ、塩、および界面活性剤等の分散安定剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤などを添加しても構わない。
【0102】
刺激応答性高分子ゲルを構成する高分子が架橋されていない場合、この高分子が溶解可能な液体も好ましく適用できる。なお、本発明の光学素子においては、前記刺激応答性高分子ゲルと上記吸脱液体との好ましい混合比の範囲は、重量比で1:2000〜1:1(刺激応答性高分子ゲル:吸脱液体)である。
【0103】
−基板−
本発明の光学素子に使用可能な基板としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等のフィルムや板状基板、ガラス基板、金属、セラミックス等が使用可能である。前記基板の厚みは10μm〜2mmが好ましいが、この大きさは目的によって種々選択可能で、特に限定はされない。
【0104】
−刺激付与手段−
本発明に用いる刺激付与手段は、光学素子の基板表面に固定される刺激応答性高分子ゲルに適した刺激を付与し得るものが選ばれる。従って、たとえば電気応答性の高分子ゲルを用いる場合は、光学素子には電極が具備されており、熱応答性の高分子ゲルを用いる場合は、光学素子には発熱抵抗体が具備されている。本発明において好ましく用いられる刺激付与手段は、主に電気刺激を付与するための電極である。電極の構成は、単純マトリクス電極型あるいは画素別分割電極型のいずれも適用できる。
【0105】
具体的には、電気刺激を付与する場合は、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、プラチナなどに代表される金属膜からなる電極、酸化スズ−酸化インジウム(ITO)に代表される金属酸化物、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアセチレン類などに代表される導電性高分子からなる電極、高分子と前述の金属や金属酸化物の粒子との複合材料からなる電極などが好ましく用いられる。またこれらの電極構成は、単純マトリクス駆動用に配線されていてもよいが、薄膜トランジスタ(TFT)素子あるいは、MIM素子やバリスタなどの二端子素子などのスイッチング素子を設けることもできる。
【0106】
また、刺激として熱を付与する場合には、前記電極とNi−Cr化合物などに代表される金属、酸化タンタルやITOなどの金属酸化物、あるいはカーボンなどの発熱抵抗体を組み合わせた物が好ましく用いられる。なお、上記以外にも、刺激付与手段として光や磁界、電磁場などを付与する層を設けることもできる。
【0107】
−封止材−
封止材としては、調光材料からの溶媒の蒸発または揮発を抑制する能力を有し、基板に対する接着性を有し、調光材料の特性に悪影響を与えず、実使用条件においてこれらの条件を長期間満たすものであれば、どのような材料を用いてもよい。また複数の封止材を組み合わせて構成することも可能である。
封止材および封止方法は、カラー表示素子の開口部面積の確保、工程簡略化による加工コスト等を考慮すると、1層の封止が好ましい。1層で封止を行うときの封止材として末端に反応基を有するイソブチレンオリゴマーを主体とした熱硬化型弾性シーリング材や、アクリル系紫外線硬化樹脂等の使用が例示できる。また、2層で封止するときには、調光材料と接触する1次封止にポリイソブチレン系シーラント等、2次封止としてアクリル樹脂等が例示できる。本発明の封止材および封止方法は上記例示に限定されるものではなく、多種多様なものが選択でき、かつ、それらを組み合わせて使用してもよい。
【0108】
−スペーサー−
本発明の光学素子の内部は、刺激応答性高分子ゲルやこの刺激応答性高分子ゲルに吸脱される液体を挟持するために十分に均一な間隙が確保されていればよく、必要に応じて画像欠陥が生じないように出来るだけ少ない量のスペーサを使用することができる。
スペーサーによる基板間の間隔(2つの対向面の間隔)は1μm〜5mm程度の範囲内で調整されることが好ましく、小型光学素子においては10μm〜200μmの範囲がより好ましい。厚みが1μmよりも小さいと調光量が小さくなり、5mm以上では光学素子の応答特性が低下するなどの問題がある。
【0109】
なお、スペーサの形状は安定して間隙を維持できる物であれば特に限定されないが、スペーサは例えば球、立方体、柱状のものなどの独立した形状のものが好ましく用いられる。また、連続した形状を有するスペーサを使用することも出来る。この場合スペーサは、間隙を保持することと同時に、網目状にすることで調光層の内部をセグメント化する働きを持たせてもよい。そうすることにより、隣接画素の誤動作を抑制する効果が得られ、より表示画質が向上させることができる。
【0110】
連続した形状からなるスペーサーは、安定して間隙を維持できる物であれば特に限定されず、主に格子状、ハニカム状などの多角形を始めとして、様々な形状のものを利用することが出来る。なお、スペーサーを利用して光学素子の内部をセグメント化する場合、画素の形状や刺激付与手段の形状を考慮すると、中でも格子状が最も好ましい。これらのスペーサは、調光組成物を構成する液体に安定な材料であれば特に限定されず、例えば、樹脂、金属、金属酸化物、ガラスなどが適用できる。
【0111】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0112】
(実施例1)
−光学素子の作製−
[刺激応答性高分子ゲルの作製]
光散乱部材を含有した高分子ゲルの粒子を以下に示すように逆相懸濁重合によって製造した。
主モノマーとしてアクリル酸20.0gをビーカーにとり、冷却して攪拌しつつ25重量%の水酸化ナトリウム水溶液33gを滴下して、アクリル酸の約74%の中和を行った後、過硫酸アンモニウム0.4gを純水2gに溶解した溶液と、架橋剤であるメチレンビスアクリルアミド0.1gと、光散乱部材として1次粒子の平均粒子径が約0.2μmの酸化チタン(屈折率:2.7)10.0gとを加え、十分に攪拌後にエマルゲン909(花王(株)製)1gを添加し、均一な溶液を調製した。
【0113】
得られた溶液を、ビーカー中でシクロヘキサン500gに分散安定剤であるソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)5.0gを溶解して窒素置換した溶液に添加し、回転式攪拌羽根を用いて10000回転で10分間高速攪拌して乳化させた。
【0114】
次に、ビーカー内の溶液の温度を25℃に調節し、溶液を攪拌しながらN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを50重量%含むシクロヘキサン溶液を添加し、重合を行なった。重合後、生成した高分子ゲル粒子を回収し、水酸化ナトリウム水溶液で中和反応を行なった後に、純水で繰り返し洗浄を行ない乾燥させた。得られた高分子ゲル粒子の乾燥時の平均粒子径は約3μm、潤湿時の平均最小粒子径(A1)はpH3の塩酸水溶液中に浸した状態で8.7μm、潤湿時の平均最大粒子径(A2)はpH7の純水中に浸した状態で19μmであった。従って、これらの値から固定前の高分子ゲル粒子の体積比は10.4であることがわかった。
また、この高分子ゲル粒子の純水吸水量は約250g/gであった。なお、基板表面へ固定する前の高分子ゲルの平均粒子径は、光学顕微鏡により50個の高分子ゲルの粒子径を測定した時の平均値から求めた。
【0115】
[基板の表面処理]
次に、透明基板として青板ガラス(旭硝子社製、厚さ3mm、縦横10×10cm)を使用し、アセトン、2NのNaOH水溶液で表面洗浄を行った。その後、直径が約3μmの大きさの空孔が桝目状に規則的に配列したパターン型を透明基板上にのせ、その上からエタノールを95重量%を含む水溶液にγ−アミノプロピルトリエトキシシランを攪拌下に加えてその含有量を25重量%となるように調整した溶液をスプレー吹き付けた。乾燥させた後、パターン型を取り除くことによって、青板ガラスの片面に桝目状に直径3μmの接着固定部(固定剤が直径3μmの領域内に表面処理された部分)が、接着固定部の中心と中心との最短距離が17μmとなるように形成された基板を得た。
【0116】
次に得られた乾燥高分子ゲル粒子3.0gを0.5重量%の塩化ナトリウム水溶液200gに膨潤させた。このときの高分子ゲルの平均粒子径は、12μmであった。
次に、上記分散液を攪拌しながら1−エチル−3−[−3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド・塩酸塩(EDC・HCl)0.1gを添加したのち、この溶液中に上記の円状の接着固定部を桝目状にパターン形成した基板を約10時間浸漬させることにより、高分子ゲルを接着固定部に固定する固定化処理を行った。
【0117】
得られた高分子ゲルが固定化処理された基板を用いて、固定化処理された面にpH7の純水を適用した際の高分子ゲルの状態を光学顕微鏡により観察した。その結果、高分子ゲルは膨潤状態で、安定して固定されていた。なお、純水中における透過率は、約5%以下の不透明な状態であり、高い光散乱効率を示していた。
【0118】
次に、固定化処理された面にpH3の塩酸水溶液を適用し、同様に光学顕微鏡による観察を行なったところ、塩酸水溶液に接触すると高分子ゲル粒子は瞬時に収縮した。また、収縮時の高分子ゲルの中心は、基板表面に桝目状に設けられた直径3μmの接着固定部のほぼ中心に位置しており、収縮時の高分子ゲルはこの接着固定部を完全に覆っていたことから、接着固定部全面が高分子ゲルの固定に寄与していることがわかった。なお、塩酸水溶液中における透過率は約80%であった。
さらに、固定後の基板表面を光学顕微鏡を用いて撮影し、PC上にて基板上の高分子ゲルの占有面積を求めた。その結果、占有面積は、膨潤、収縮状態でそれぞれ95%、20%であり、面積変化から体積比を計算すると10.4倍であった。
【0119】
次に、固定化処理された面を水酸化ナトリウム水溶液により塩酸水溶液を洗浄して弱アルカリ性にしたところ、再び高分子ゲルが膨張して不透明な状態となり、可視光透過・散乱状態の変化が可逆的に安定に何度も起こることが確認された。
【0120】
(実施例2)
[刺激応答性高分子ゲルの作製]
顔料を含有した高分子ゲルの粒子を以下に示すように逆相懸濁重合によって製造した。
主モノマーとしてアクリル酸20.0gをビーカーにとり、冷却して攪拌しつつ25重量%の水酸化ナトリウム水溶液33gを滴下して、アクリル酸の約74%の中和を行った後、過硫酸アンモニウム0.1gを2gの純水に溶解した溶液と、ゲル着色用の顔料としてフタロシアニン系青色顔料10.0gと、架橋剤であるメチレンビスアクリルアミド0.1gとを加え、十分に攪拌してエマルゲン909(花王(株)製)1gを添加し、均一な溶液を調製した。
【0121】
得られた溶液を、ビーカー中でシクロヘキサン500gに分散安定剤であるソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)5.0gを溶解して窒素置換した溶液に添加し、回転式攪拌羽根を用いて10000回転で10分間高速攪拌して乳化させた。
【0122】
次に、ビーカー内の温度を25℃に調節し、溶液を攪拌しながらN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの50%シクロヘキサン溶液を添加し、重合を行なった。重合後、生成した着色高分子ゲル粒子を回収し、水酸化ナトリウム水溶液で中和反応を行なった後に、純水で繰り返し洗浄を行ない乾燥させた。得られた粒子の乾燥時の平均粒子径は約4μm、潤湿時の平均最小粒子径(A1)は水−アセトン混合溶液(体積比1:4)中に浸した状態で13.6μm、潤湿時の平均最大粒子径(A2)はpH7の純水中に浸した状態で29μmであった。従って、これらの値から固定前の高分子ゲル粒子の体積比は9.7であることがわかった。また、この着色粒子の純水吸水量は約200g/gであった。
【0123】
[基板の表面処理]
次に、透明基板として片面にITO(インジウム−スズ酸化物)電極が設けられたガラス板(厚さ0.9mm、縦横10×10cm)を4NのHCl水溶液で30分間洗浄した後、この透明基板のITO電極面にフォトレジストをコートした。その後、スタンプ法により高分子ゲルを固定する領域に対して直径4μmの円形マスクを桝目状に規則的に配置した。紫外線露光および現像を行い、高分子ゲルを固定する領域に対応する部分のフォトレジスト膜を除去した。その後、トルエンにγ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシランを攪拌下に加え、その含有量を25重量%に調整した溶液を塗布し、30分間反応させた。乾燥後、エッチング処理により残りのフォトレジスト膜を全て除去し、ガラス板のITO電極が設けられた側の面に桝目状に直径13μmの接着固定部(固定剤が直径13μmの領域内に表面処理された部分)が、接着固定部の中心と中心との最短距離が27μmとなるように形成された基板を得た。
【0124】
上記の乾燥高分子ゲル粒子3.0gを200gの蒸留水にて膨潤させた後、この溶液を、上記の円状の接着固定部を桝目状にパターン形成した基板のITO電極側の面に均一に塗布し、その後、外温70℃で約10時間静置することにより高分子ゲルを接着固定部に固定する固定化処理を行った。
【0125】
得られた高分子ゲルが固定化処理された基板を用いて、固定化処理された面にpH7の純水を適用した際の高分子ゲルの状態を550倍の倍率で光学顕微鏡により観察した。その結果、高分子ゲルは膨潤状態で、安定して固定されていた。また、光学顕微鏡で捉えた画像を画像解析ソフト(三谷商事株式会社:WinROOF)により解析処理したところ基板表面に固定されている高分子ゲルの占有率は膨潤状態で90%という高い値を示した。さらに、純水中での高分子ゲルの膨潤状態を、光学濃度測定装置(X−Rite社製:X−Rite404)のCyanモードで測定したところ、光学濃度は2.0という高い値を示した。
【0126】
次に、固定化処理された面に、水−アセトン混合溶液(体積比1:4)を塗布して上記と同様に観察・評価したところ、高分子ゲル粒子が瞬時に収縮すると共に光学濃度が0.3まで減少し、溶媒組成変化による光学濃度の大きな変化が素早く起こることを確認した。また、収縮時の高分子ゲルの中心は、基板表面に桝目状に設けられた直径13μmの接着固定部のほぼ中心に位置しており、収縮時の高分子ゲルはこの接着固定部を完全に覆っていたことから、接着固定部全面が高分子ゲルの固定に寄与していることがわかった。
さらに、固定後の基板表面を光学顕微鏡を用いて撮影し、PC上にて基板上の高分子ゲルの占有面積を求めた。その結果、占有面積は、膨潤、収縮状態でそれぞれ90%、20%であり、面積変化から体積比を計算すると9.5倍であった。
【0127】
(比較例1)
実施例1と同様な方法で乾燥状態の光散乱部材を含有する高分子ゲル粒子を作製した。その後、この乾燥状態の高分子ゲル3.0gを200gの0.5重量%の塩化ナトリウム水溶液で膨潤させた高分子ゲル分散溶液を得た。
次に、透明基板として青板ガラス(旭硝子社製、厚さ3mm、縦横10×10cm)を使用し、アセトン、2NのNaOH水溶液で表面洗浄を行った。その後、エタノール95重量%を含む水溶液200mlにγ‐アミノプロピルトリエトキシシラン4mlを攪拌下に加え調整した溶液中に、上記の透明基板を30分間浸漬させた。次に、溶液から基板を取り出し、その表面をエタノールで軽く洗浄した後、110℃のオーブン中にて30分放置して、基板全面に接着固定部を形成した。
次に、この接着固定部が全面に形成された基板の全面に、高分子ゲル分散液を均一に塗布した後、約10時間浸漬させることにより高分子ゲルを接着固定部に固定する固定化処理を行った。
【0128】
得られた高分子ゲルが固定化処理された基板を用いて、固定化処理された面にpH7の純水を適用した際の高分子ゲルの状態を光学顕微鏡により観察した。その結果、高分子ゲルは膨潤状態で、安定して固定されていた。しかし、高分子ゲルは基板表面にランダムに固定されており、互いに近隣する位置に固定された高分子ゲル同士が、お互いに押圧しながら変形し十分に膨張しきれていない高分子ゲルも観察された。
【0129】
次に、固定化処理された面にpH3の塩酸水溶液を適用した際の高分子ゲルの状態を倍率550倍にて光学顕微鏡により観察した。その結果、基板上に固定された高分子ゲルは収縮していたが、固定前の高分子ゲルの収縮状態と比べて、基板表面の広い範囲で高分子ゲルが固定されているために十分に収縮しきれていない部分が観察された。
また、光学顕微鏡で捉えた画像を画像解析ソフト(三谷商事株式会社:WinROOF)により解析処理したところ基板表面に固定されている高分子ゲルの占有率は収縮状態で35%であり、透過率は75%以下であった。さらに、膨潤、収縮時の高分子ゲルの占有率をそれぞれ求めたところ、それぞれ95%、35%であり、面積変化から体積比を計算すると4.5倍であった。
【0130】
【表1】
Figure 2005062279
【0131】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば高分子ゲルを膨張・収縮させる際に、十分に大きい体積変化量を得ることができる光学素子およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学素子における高分子ゲルの固定状態の一例を説明するための概略斜視図である。
【図2】本発明の光学素子における高分子ゲルの固定状態の他の例を説明するための模式断面図である。
【図3】本発明の光学素子の一例を示す模式断面図である。
【図4】図3に示す光学素子の対向面(刺激付与手段10表面)に設けられた接着固定部の、平面方向(光学素子の厚み方向に対して垂直に交わる面)の形状および配列パターンの一例について示す模式図である。
【図5】基板表面に接着固定部を形成する方法の一例を示す模式断面図である。
【図6】基板表面に接着固定部を形成する方法の他の例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
2 基板
4 透明基板
6 高分子ゲル
8 液体
10 刺激付与手段
10’ 刺激付与手段10表面の一領域
12 刺激付与手段
14 スペーサー
16 封止材
20 接着固定部
30 (固体表面に束縛されないと仮定した状態の球状の)高分子ゲル
30a 高分子ゲル30の最小収縮時の状態(最小収縮時の高分子ゲル)
30b 高分子ゲル30の膨張時の状態(膨張時の高分子ゲル)
40 基板表面(の一領域)
41 高分子ゲル30aの基板表面40への投影領域
42 接着固定部
50 51,52,53、54 高分子ゲル
60 基板表面
62 接着固定部
70 基板
71 接着固定部
80 マスク
81 開口部
90 レジスト膜(ポジ型レジスト膜)
91 開口部(エッチングされた部分)
100 フォトマスク
101 UV光遮蔽部分
102 UV光透過部分
110 UV光

Claims (6)

  1. 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を刺激の付与により吸収・放出して膨張・収縮する高分子ゲルと、を少なくとも含み、
    前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記一方の対向面に固定された光学素子において、
    前記接着固定部の面積が、前記高分子ゲルの最小収縮時の最大断面積と同等あるいは小さいことを特徴とする光学素子。
  2. 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を刺激の付与により吸収・放出して膨張・収縮する2つ以上の高分子ゲルと、を少なくとも含み、
    前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記一方の対向面に固定された光学素子において、
    前記接着固定部が、前記高分子ゲル毎に前記少なくとも一方の対向面に2つ以上形成されていることを特徴とする光学素子。
  3. 前記高分子ゲルが、水素結合、イオン結合、および、共有結合から選択される1種以上の化学結合により前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
  4. 前記接着固定部表面が、シランカップリング剤を用いて処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光学素子。
  5. 前記高分子ゲル粒子が、色材または光散乱部材を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光学素子。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の光学素子を作製する光学素子製造方法であって、
    前記少なくとも一方の対向面に、パターニングを利用して固定剤を選択的に付与することにより前記接着固定部を形成する工程を少なくとも含むことを特徴とする光学素子製造方法。
JP2003207993A 2003-08-20 2003-08-20 光学素子およびその製造方法 Pending JP2005062279A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003207993A JP2005062279A (ja) 2003-08-20 2003-08-20 光学素子およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003207993A JP2005062279A (ja) 2003-08-20 2003-08-20 光学素子およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005062279A true JP2005062279A (ja) 2005-03-10

Family

ID=34364261

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003207993A Pending JP2005062279A (ja) 2003-08-20 2003-08-20 光学素子およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005062279A (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6313021A (ja) * 1986-07-04 1988-01-20 Ricoh Co Ltd 表示方法
JP2000258806A (ja) * 1999-03-05 2000-09-22 Fuji Xerox Co Ltd カラー表示素子
JP2001281711A (ja) * 2000-04-03 2001-10-10 Fuji Xerox Co Ltd 光学素子
JP2002156665A (ja) * 2000-11-21 2002-05-31 Ricoh Co Ltd 化学ゲル、その作製方法、並びにゲルを用いた表示方法及び表示装置
JP2002296625A (ja) * 2001-03-29 2002-10-09 Ricoh Co Ltd 表示素子、及びその製造方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6313021A (ja) * 1986-07-04 1988-01-20 Ricoh Co Ltd 表示方法
JP2000258806A (ja) * 1999-03-05 2000-09-22 Fuji Xerox Co Ltd カラー表示素子
JP2001281711A (ja) * 2000-04-03 2001-10-10 Fuji Xerox Co Ltd 光学素子
JP2002156665A (ja) * 2000-11-21 2002-05-31 Ricoh Co Ltd 化学ゲル、その作製方法、並びにゲルを用いた表示方法及び表示装置
JP2002296625A (ja) * 2001-03-29 2002-10-09 Ricoh Co Ltd 表示素子、及びその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3584722B2 (ja) 高分子ゲル組成物、その製造方法及びそれを用いた光学素子
JP4720079B2 (ja) 調光素子の製造方法
US6295167B1 (en) Optical material and optical device
JP2006162673A (ja) 光学材料およびそれを用いた光学素子
JP2005003943A (ja) 光学素子およびその製造方法
JP4155016B2 (ja) 高分子ゲル組成物、並びに、それを用いた光学素子、樹脂組成物、及び光学フィルム
JP4378886B2 (ja) 高分子ゲル組成物及びその製造方法、並びに、前記高分子ゲル組成物を用いた光学素子
JP4604484B2 (ja) 光学素子
JP4134426B2 (ja) カラー表示素子
JP3921984B2 (ja) 光学素子
JP2001350163A (ja) 光学素子及びその製造方法
JP4228738B2 (ja) 高分子ゲル組成物及びその製造方法、並びに高分子ゲル組成物を用いた光学素子
JP2005062279A (ja) 光学素子およびその製造方法
JP3879303B2 (ja) 体積変調型調光材料、体積変調型調光組成物および光学素子
JP2004198883A (ja) 調光素子
JP4474923B2 (ja) 光学素子
JP2006011000A (ja) 光学素子
JP2005031302A (ja) 光学素子
JP2006259391A (ja) 調光素子
JP2001281711A (ja) 光学素子
JP2005200577A (ja) 高分子ゲル組成物及びそれを用いた光学素子
JP2002265805A (ja) 高分子ゲル組成物、およびその製造方法、樹脂組成物、並びに光学素子
JP2005062749A (ja) 光学素子
JP4400074B2 (ja) 光学素子
JP2005060448A (ja) 高分子ゲル組成物並びにそれを用いた光学素子、樹脂組成物及び光学フィルム

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060724

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091110

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100112

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100330