JP2005055473A - ホログラム積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、ホログラム層と、上記ホログラム層上に形成された反射層とを有するホログラム積層体であって、上記ホログラム層が微粒子を含有しており、上記微粒子の屈折率が上記ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことを特徴とするホログラム積層体を提供する。
【選択図】 無し
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射層を有するホログラム積層体であって、明るいホログラムの再生像が得られるホログラム積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホログラムは、波長の等しい二つの光(物体光と参照光)を干渉させて物体光の波面を干渉縞として感光材料に記録したものである。このホログラムに元の参照光と同一条件の光を当てると干渉縞による回折現象が生じ、元の物体光と同一の波面が再生できる。ホログラムは、レーザー光またはコヒーレンス性の優れた光の干渉によって生じる干渉縞の記録形態により、いくつかの種類(表面レリーフ型ホログラム、体積型ホログラム等)に分類される。
【0003】
表面レリーフ型ホログラムは、ホログラム層の表面に微細な凹凸パターンが賦型されることによりホログラムが形成されるものである。一方、体積型ホログラムは、光の干渉によって生じる干渉縞を、屈折率の異なる縞として感光材料の厚み方向に三次元的に記録することによりホログラムが形成されるものである。
【0004】
ホログラムを被着体に付着させるには、例えば基材フィルム、ホログラム層、反射層、および感熱性接着剤層を順次積層したホログラム転写箔が用いられる。この場合、ホログラム転写箔を、その感光性接着剤層の面が被着体と接するように被着体に重ね合わせて、ホログラム転写箔の上から加熱・加圧(熱転写)することにより、ホログラムが被着体に付着される。
【0005】
また、ホログラムを実際に使用する際は明瞭な画像が得られることが重要であるが、ホログラムが体積型ホログラムである場合、ホログラム層に用いる感光材料によっては、ホログラムの回折効率が低く、ホログラムの再生像は限られた輝度しか持たないという問題がある。この場合、ホログラム層を厚くすることによりホログラムの回折効率が向上するため、ホログラムの再生像にある程度の輝度を持たせることも可能であるが、ホログラム層製造時に多量の感光材料を使用するためコストが高くなるという問題がある。
【0006】
ホログラムの回折効率を調整するために、特許文献1には、透明保護層、体積型ホログラム層、および感熱性接着剤層を順次積層した体積型ホログラム積層体において、透明保護層および感熱性接着剤層の少なくともいずれか一方の屈折率と体積型ホログラム層の屈折率とを異なるものとするという提案がなされている。しかしながら、この方法においては、体積型ホログラムを複製した際に複製ホログラムの回折効率が低下するというものであり、体積型ホログラム自体の回折効率を向上させるまでには至っていない。
【0007】
また、ホログラム層の下に反射層が設けられているタイプのホログラム積層体の場合、ホログラムの回折効率が向上するため、ホログラムの再生像はある程度の輝度を持つものではあるが、反射層には一般的に金属薄膜等が使用されており、不透明なホログラムであるため、再生像が暗く感じられるという問題がある。
【0008】
【特許文献1】
特開2003−58026号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、反射層を有するホログラム積層体であって、従来より明るいホログラムの再生像を得ることができるホログラム積層体を提供することを主目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、ホログラム層と、上記ホログラム層上に形成された反射層とを有するホログラム積層体であって、上記ホログラム層が微粒子を含有しており、上記微粒子の屈折率が上記ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことを特徴とするホログラム積層体を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記微粒子の屈折率が上記ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことにより、ホログラム層の屈折率が小さくなり、結果的にホログラム層と反射層との屈折率差が大きくなるため、ホログラムの回折効率が向上し、明るいホログラムの再生像を得ることが可能となる。また、ホログラム層の屈折率の調整は、ホログラム層の形成材料である樹脂を変更するのではなく、種々の屈折率を有する微粒子を選択して添加することにより行うものであるため、ホログラムの設計の自由度が高くなるという利点を有する。さらに、ホログラム層に微粒子を含有させることにより、ホログラム層に脆性が付与されるため、上記ホログラム積層体をホログラム転写箔に用いた場合、ホログラムを被着体に付着させる際の箔切れ性が向上する利点も有する。
【0012】
上記発明においては、上記微粒子の屈折率が、1.46以下であることが好ましい。上記微粒子の屈折率が、通常用いられているホログラム層の形成材料である樹脂と比較して小さいことにより、効果的にホログラム層の屈折率を小さくすることができ、ホログラム層と反射層との屈折率差も大きくなるため、ホログラムの回折効率が向上し、明るいホログラムの再生像を得ることが可能となるからである。
【0013】
また、本発明は、上記発明のホログラム積層体と、基材フィルムと、感熱性接着剤層とを有するホログラム転写箔であって、上記基材フィルム上にホログラム層が形成され、上記ホログラム層上に反射層が形成され、上記反射層上に上記感熱性接着剤層が形成されていることを特徴とするホログラム転写箔を提供する。
【0014】
本発明によれば、上記ホログラム積層体を有することから、ホログラムの再生像が明るく、箔切れが良好なホログラム転写箔とすることができ、様々な用途に用いることが可能なものとすることができるのである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、具体的に説明する。本発明は、ホログラム積層体、それを用いたホログラム転写箔を含むものである。以下、それぞれについて、項を分けて説明する。
【0016】
A.ホログラム積層体
まず、本発明のホログラム積層体について説明する。本発明のホログラム積層体は、ホログラム層と、上記ホログラム層上に形成された反射層とを有するホログラム積層体であって、上記ホログラム層が微粒子を含有しており、上記微粒子の屈折率が上記ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことを特徴とするものである。
【0017】
本発明によれば、上記微粒子の屈折率が上記ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことにより、ホログラム層の屈折率が小さくなり、結果的にホログラム層と反射層との屈折率差が大きくなるため、ホログラムの回折効率が向上し、明るいホログラムの再生像を得ることが可能となる。また、ホログラム層の屈折率の調整は、ホログラム層の形成材料である樹脂を変更するのではなく、種々の屈折率を有する微粒子を選択して添加することにより行うものであるため、ホログラムの設計の自由度が高くなるという利点を有する。さらに、ホログラム層に微粒子を含有させることにより、ホログラム層に脆性が付与されるため、上記ホログラム積層体をホログラム転写箔に用いた場合、ホログラムを被着体に付着させる際の箔切れ性が向上する利点も有する。
【0018】
本発明のホログラム積層体について図面を用いて説明する。図1は、本発明のホログラム積層体の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明のホログラム積層体は、ホログラム層1と、上記ホログラム層1上に形成された反射層2とを有するものである。
【0019】
以下、このようなホログラム積層体の各構成について説明する。
【0020】
1.ホログラム層
本発明において、ホログラム層は微粒子を含有しており、その微粒子の屈折率が上記ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことを特徴とするものである。
【0021】
本発明によれば、上記微粒子の屈折率が上記ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことにより、ホログラム層の屈折率が小さくなり、結果的にホログラム層と反射層との屈折率差が大きくなるため、ホログラムの回折効率が向上し、明るいホログラムの再生像を得ることが可能となる。また、ホログラム層の屈折率の調整は、ホログラム層の形成材料である樹脂を変更するのではなく、種々の屈折率を有する微粒子を選択して添加することにより行うものであるため、ホログラムの設計の自由度が高くなるという利点を有する。さらに、ホログラム層に微粒子を含有させることにより、ホログラム層に脆性が付与されるため、上記ホログラム積層体をホログラム転写箔に用いた場合、ホログラムを被着体に付着させる際の箔切れ性が向上する利点も有する。
【0022】
本発明においては、上記ホログラム層は、体積型ホログラム層であっても、表面レリーフ型ホログラム層であってもよい。以下、体積型ホログラム層および表面レリーフ型ホログラム層にわけて説明する。
【0023】
a.体積型ホログラム層
本発明において、体積型ホログラム層は微粒子を含有しており、その微粒子の屈折率が上記体積型ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことを特徴とするものである。本発明によれば、上記微粒子の屈折率が、上記体積型ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことにより、体積型ホログラム層の屈折率が小さくなり、結果的に体積型ホログラム層と反射層との屈折率差が大きくなるため、ホログラムの回折効率が向上し、明るいホログラムの再生像を得ることが可能となる。
【0024】
また、本発明においては、体積型ホログラム層は微粒子を含有し、さらに少なくとも1種の光重合性化合物と光重合開始剤とから形成される体積型ホログラム用樹脂を有することが好ましい。光重合性化合物と光重合開始剤とを含有することにより、体積型ホログラム層として像を形成したものとすることができるからである。
【0025】
ここで、体積型ホログラム層中に含まれる他の成分とは、体積型ホログラム用樹脂を示すものである。また、本発明において、他の成分の平均屈折率とは、微粒子以外の成分を混合し、乾燥した膜の状態でアッベ屈折率計を用いて測定した値とする。
【0026】
以下、このような体積型ホログラム層の各構成について説明する。
【0027】
(1)微粒子
本発明において、体積型ホログラム層は微粒子を含有しており、その微粒子の屈折率が体積型ホログラム用樹脂の屈折率より小さいことを特徴とするものである。
【0028】
本発明によれば、上記微粒子の屈折率が、体積型ホログラム用樹脂の屈折率より小さいことにより、このような微粒子を添加すると体積型ホログラム層の屈折率を低下させることができ、結果的に体積型ホログラム層と反射層との屈折率差を大きくすることができる。これにより、ホログラムの回折効率が向上し、明るいホログラムの再生像を得ることが可能となる。また、体積型ホログラム層の屈折率の調整は、体積型ホログラム層の形成材料である樹脂を変更するのではなく、種々の屈折率を有する微粒子を選択して添加することにより行うものであるため、ホログラムの設計の自由度が高くなるという利点を有する。さらに、体積型ホログラム層に微粒子を含有させることにより、体積型ホログラム層に脆性が付与されるため、上記ホログラム積層体をホログラム転写箔に用いた場合、ホログラムを被着体に付着させる際の箔切れ性が向上する利点も有する。
【0029】
上記微粒子としては、無機化合物からなるものでもよく、有機化合物からなるものでもよい。例えば、CaF2(1.26)、AlF3(1.33〜1.39)、MgF2(1.38)、SiO2(1.46)、LiF(1.36〜1.37)、NaF(1.32〜1.34)、ThF4(1.45〜1.5)、3NaF・AlF3(1.4)、Na3AlF6(1.33)、SiOX(シリカゾル、ただし1.50<X<2.0)(1.35〜1.48)、フッ素原子が導入された樹脂、有機ケイ素化合物等の微粒子を挙げることができる。また、上記微粒子は1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、括弧内の数字は各々の屈折率を示す。
【0030】
また、上記微粒子の中でも屈折率が1.46以下、好ましくは1.36以下であるものを使用することが好ましい。通常用いられている体積型ホログラム用樹脂の屈折率が約1.5であるのに比較して、上記微粒子の屈折率が上述した範囲であるように小さいことにより、効果的に体積型ホログラム層の屈折率を小さくすることができ、体積型ホログラム層と反射層との屈折率差も大きくなるため、ホログラムの回折効率が向上し、明るいホログラムの再生像を得ることが可能となるからである。なお、微粒子の屈折率の下限としては、低ければ低いほどよいが、一般的に1.25以上のものが用いられる。
【0031】
このとき、上記微粒子と反射層との屈折率差は、0.3以上が好ましく、より好ましくは0.5以上であり、0.8以上が最適である。微粒子と反射層との屈折率差が、上述した範囲よりも小さい場合には、ホログラムの回折効率を十分に向上させることができないため、明るい像を得ることが困難となるからである。
【0032】
また、上記微粒子の平均粒径としては、50nm〜600nmの範囲内、中でも100nm〜500nmの範囲内、特に200nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。上記微粒子の平均粒径が、上述した範囲より小さいものは製造が難しく、さらに体積型ホログラム層に脆性を付与することが困難となり、また微粒子の平均粒径が上述した範囲より大きい場合には、体積型ホログラム層の体積型ホログラムへの像形成に悪影響を及ぼす場合があるからである。
【0033】
本発明においては特に、上記微粒子の平均粒径が、体積型ホログラム層へ像を記録する際に用いられるレーザー光等の波長(記録波長)より小さいものであることが好ましい。上述したように、上記微粒子の平均粒径が記録波長より大きい場合には、ホログラム層のホログラムへの像形成に悪影響を及ぼす場合があるからである。ここで、例えばカラーホログラムを作製する際には、使用する記録波長の中で最も短い波長より小さい粒径の微粒子を選択することになる。よって、使用する記録波長により微粒子の粒径を適宜選択して用いればよいものである。
【0034】
ここで、平均粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、本発明においては、レーザー法により測定した値である。レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を細くし、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。上記平均粒径は、レーザー法による粒径測定機として、リーズ&ノースラップ(Leeds&Northrup)社製 粒度分析計 マイクロトラックUPA Model−9230を使用して測定した値である。
【0035】
上記微粒子は、体積型ホログラム層中に、1〜30重量%の範囲内、好ましくは5〜20重量%の範囲内で含有させるとよい。微粒子の含有量が上述した範囲未満である場合、体積型ホログラム層の屈折率を十分に調整することができず、また本発明のホログラム積層体をホログラム転写箔に用いた場合に十分な脆性を付与することができないからである。一方、微粒子の含有量が上述した範囲を超えて多い場合、体積型ホログラム層の強度や透明性を保つことが困難となるからである。
【0036】
(2)体積型ホログラム用樹脂
次に、本発明に用いられる体積型ホログラム層用樹脂について説明する。本発明に用いられる体積型ホログラム用樹脂は、少なくとも1種の光重合性化合物と光重合開始剤とから形成されていることが好ましい。光重合性化合物と光重合開始剤とを含有することにより、体積型ホログラム層として像を形成したものとすることができるからである。
【0037】
以下、このような体積型ホログラム用樹脂の各構成について説明する。
【0038】
(i)光重合性化合物
本発明に用いられる光重合性化合物としては、光ラジカル重合性化合物であってもよく、光カチオン重合性化合物であってもよい。以下、光ラジカル重合性化合物および光カチオン重合性化合物に分けて説明する。
【0039】
(光ラジカル重合性化合物)
本発明に用いられる光ラジカル重合性化合物としては、体積型ホログラム層を形成する際に、例えばレーザー照射等によって、後述する光ラジカル重合開始剤から発生した活性ラジカルの作用により重合する化合物であれば、特に限定されるものではないが、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ化合物を使用することができる。例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド結合物等を挙げることができる。上記不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステルのモノマーの具体例を以下に示す。
【0040】
アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、2−(p−クロロフェノキシ)エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、ビスフェノールAの(2−アクリルオキシエチル)エーテル、エトキシ化されたビスフェノールAジアクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)エチルアクリレート、o−ビフェニルアクリレート、9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシトリエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシジプロポキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジメチル)フルオレン等が例示される。
【0041】
また、特開昭61−72748号公報に開示されている硫黄含有アクリル化合物を使用することもできる。例えば、4,4´−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン、4,4´−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトン、4,4´−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)3,3´,5,5´−テトラブロモジフェニルケトン、2,4−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトン等が挙げられる。
【0042】
さらに、メタクリル酸エステルとしては、上述したアクリル酸エステルに例示される化合物名のうち、「アクリレート」が「メタクリレート」に、「アクリロキシ」が「メタクリロキシ」に、および「アクリロイル」が「メタクリロイル」に変換された化合物が例示される。
【0043】
また、上記光ラジカル重合性化合物は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0044】
(光カチオン重合性化合物)
本発明に用いられる光カチオン重合性化合物は、エネルギー照射を受け、後述する光カチオン重合開始剤の分解により発生したブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合する化合物である。例えば、エポキシ環やオキセタン環等の環状エーテル類、チオエーテル類、ビニルエーテル類等を挙げることができる。
【0045】
上記エポキシ環を含有する化合物としては、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド等が例示される。
【0046】
また、上記光カチオン重合性化合物は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0047】
さらに、上記の光ラジカル重合性化合物および光カチオン重合性化合物は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0048】
ここで、体積型ホログラム層を形成する場合、例えば目的とする像の形状にレーザーを照射して、光ラジカル重合性化合物を重合させた後、全面にエネルギーを照射することにより、光カチオン重合性化合物等の未硬化の物質を重合させることによって行われる。なお、像を形成する際のレーザー等と、全面にエネルギー照射されるエネルギーとは、通常異なる波長のものが用いられ、本発明に用いられる光カチオン重合性化合物は、像を形成する例えばレーザー等によって重合しない化合物であることが好ましい。
【0049】
また、このような光カチオン重合性化合物は、上記光ラジカル重合性化合物の重合が、比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、常温で液状であることが好ましい。
【0050】
(その他)
光重合性化合物は、後述するバインダ樹脂100重量部に対して10〜1000重量部、好ましくは10〜100重量部の割合で使用するとよい。
【0051】
ここで、体積型ホログラム層は、例えばレーザー光またはコヒーレンス性の優れた光等によって光重合性化合物を重合させて干渉縞を形成し、像を形成するものである。したがって、体積型ホログラム層が光ラジカル重合性化合物および光カチオン重合性化合物を含有する場合は、それぞれにおける屈折率が異なるものが選択されて用いられるものであり、どちらの屈折率が大きいものであってもよい。本発明においては、中でも材料選択性の面から光ラジカル重合性化合物の平均の屈折率が光カチオン重合性化合物より大きいものであることが好ましく、具体的には、平均の屈折率が0.02以上大きいことが好ましい。これは、光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物との平均の屈折率の差が上記値より低い場合には、屈折率変調が不十分となり、高精細な像を形成することが困難となるからである。ここでいう平均の屈折率とは、光カチオン重合性化合物または光ラジカル重合性化合物を重合させた後の重合体について測定する屈折率の平均値をいう。また、本発明の屈折率は、アッベ屈折率計により測定された値である。
【0052】
(ii)光重合開始剤
次に、本発明に用いられる光重合開始剤について説明する。光重合開始剤としては、上述した光重合性化合物により種類が異なるものである。すなわち、光重合性化合物が光ラジカル重合性化合物である場合は、光重合開始剤は光ラジカル重合開始剤を選択し、光重合性化合物が光カチオン重合性化合物である場合は、光重合開始剤は光カチオン重合開始剤を選択する必要がある。
【0053】
以下、光ラジカル重合開始剤および光カチオン重合開始剤にわけて説明する。
【0054】
(光ラジカル重合開始剤)
本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤としては、体積型ホログラム層を形成する際に照射される例えばレーザー等によって、活性ラジカルを生成し、上記光ラジカル重合性化合物を重合させることが可能な開始剤であれば、特に限定されるものではない。例えば、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等を使用することができる。具体的には、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名イルガキュア369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(商品名イルガキュア784、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
【0055】
(光カチオン重合開始剤)
本発明に用いられる光カチオン重合開始剤としては、エネルギー照射によりブレンステッド酸やルイス酸を発生し、上記光カチオン重合性化合物を重合させるものであれば、特に限定されるものではない。体積型ホログラム層が光ラジカル重合性化合物および光カチオン重合性化合物を有する場合、光カチオン重合性化合物は、特に上記光ラジカル重合性化合物を重合させる例えばレーザーやコヒーレンス性の優れた光等に対しては反応せず、その後全面に照射されるエネルギーによって感光するものであることが好ましい。これにより、上記光ラジカル重合性化合物が重合する際、光カチオン重合性化合物がほとんど反応しないまま存在させることができ、体積型ホログラム層における大きな屈折率変調が得られるからである。
【0056】
具体的には、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η6−ベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示される。さらに、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等も使用することができる。
【0057】
(その他)
本発明において、光ラジカル重合開始剤としても、光カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示される。具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−t−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン化合物等が挙げられる。
【0058】
また、上記の光重合開始剤は1種または2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0059】
また、光重合開始剤は、後述するバインダ樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部の割合で使用するとよい。
【0060】
(iii)増感色素
本発明においては、体積型ホログラム用樹脂が増感色素を含有することが好ましい。上記光重合性化合物および光重合開始剤は、紫外線に活性であるものが多いが、増感色素を添加することにより可視光にも活性となり、可視レーザー光を用いて干渉縞を記録することが可能となるからである。
【0061】
このような増感色素としては、ホログラム用樹脂組成物に干渉縞を記録する際に使用するレーザー光波長を考慮して選択されるものであるが、特に限定されるものではない。例えば、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、クマリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、シクロペンタノン系色素、シクロヘキサノン系色素等を使用することができる。
【0062】
上記シアニン系色素、メロシアニン系色素としては、3,3´−ジカルボキシエチル−2,2´−チオシアニンブロミド、1−カルボキシメチル−1´−カルボキシエチル−2,2´−キノシアニンブロミド、1,3´−ジエチル−2,2´−キノチアシアニンヨージド、3−エチル−5−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキサゾリジン等が挙げられる。
【0063】
また、上記クマリン系色素、ケトクマリン系色素としては、3−(2´−ベンゾイミダゾール)7−N,N−ジエチルアミノクマリン、3,3´−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3´−カルボニルビスクマリン、3,3´−カルボニルビス(5,7−ジメトキシクマリン)、3,3´−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)等が挙げられる。
【0064】
可視光領域に吸収波長を有する増感色素は、例えば本発明のホログラム積層体を光学素子に用いる際には高透明性が要求されるため、このような場合には、干渉縞記録後の後工程、加熱や紫外線照射により分解されるなどして無色になるものが好ましい。このような増感色素としては、上述したシアニン系色素が好適に用いられる。
【0065】
また、増感色素は、後述するバインダ樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜2重量部の割合で使用するとよい。
【0066】
(iv)バインダ樹脂
本発明においては、体積型ホログラム用樹脂がバインダ樹脂を含有することが好ましい。バインダ樹脂を含有することにより、成膜性、膜厚の均一性を向上させることができ、記録された干渉縞を安定に存在させることができるからである。
【0067】
このようなバインダ樹脂としては、ポリメタアクリル酸エステルまたはその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニルまたはその加水分解物、ポリビニルアルコールまたはその部分アセタール化物、トリアセチルセルロース、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾールまたはその誘導体、ポリ−N−ビニルピロリドンまたはその誘導体、スチレンと無水マレイン酸との共重合体またはその半エステル等を挙げることができる。また、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルニトリル、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、および酢酸ビニル等の共重合可能なモノマーからなる郡から選択される少なくとも1種のモノマーを重合させてなる共重合体を使用することもできる。さらに、1種または2種以上の混合物を用いることもできる。
【0068】
また、バインダ樹脂としては、オリゴマータイプの硬化性樹脂を使用することもできる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ノボラック、o−クレゾールノボラック、p−アルキルフェノールノボラック等の各種フェノール化合物とエピクロロヒドリンとの縮合反応により生成されるエポキシ化合物等が挙げられる。
【0069】
さらに、バインダ樹脂としては、ゾルゲル反応を利用した有機−無機ハイブリッドポリマーを使用することもできる。例えば、下記一般式(1)で表される重合性基を有する有機金属化合物とビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0070】
RmM(OR´)n (1)
(ここで、MはSi、Ti、Zr、Zn、In、Sn、Al、Se等の金属、Rは炭素数1〜10のビニル基または(メタ)アクリロイル基、R´は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+nは金属Mの価数である)。
【0071】
金属MとしてSiを使用する場合の有機金属化合物の例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリアリルオキシシラン、ビニルテトラエトキシシラン、ビニルテトラメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0072】
また、上記ビニルモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等を挙げることができる。
【0073】
ここで、体積型ホログラムは、干渉縞が屈折率変調または透過率変調として記録され形成されるものである。よって、バインダ樹脂と光重合性化合物との屈折率差が大きいことが好ましい。本発明においては、バインダ樹脂と光重合性化合物との屈折率差を大きくするために、下記一般式(2)で表される有機金属化合物を体積型ホログラム用樹脂中に添加することもできる。
【0074】
M´(OR´´)k (2)
(ここで、MはTi、Zr、Zn、In、Sn、Al、Se等の金属、R´´は炭素数1〜10のアルキル基を表し、kは金属Mの価数である)。
【0075】
上記(2)式で表される化合物を体積型ホログラム用樹脂中に添加すると、水、酸触媒の存在下でゾルゲル反応により、バインダ樹脂と網目構造を形成するため、バインダ樹脂の屈折率を高くするたけでなく、層の強靭性、耐熱性を向上させる効果がある。よって、光重合性化合物との屈折率差を大きくするには、金属M´は高い屈折率を有するものを使用することが好ましい。
【0076】
上記バインダ樹脂は、体積型ホログラム層中に、通常20〜50重量%の範囲内、好ましくは30〜40重量%の範囲内で用いられる。
【0077】
(3)体積型ホログラム層
本発明によれば、上記微粒子の屈折率が、体積型ホログラム用樹脂の屈折率より小さいことにより、このような微粒子を添加すると体積型ホログラム層の屈折率を低下させることができ、結果的に体積型ホログラム層と反射層との屈折率差を大きくすることができる。これにより、ホログラムの回折効率が向上し、明るいホログラムの再生像を得ることが可能となる。よって、体積型ホログラム層と反射層との屈折率差は0.5以上が好ましい。体積型ホログラム層と反射層との屈折率差を上述した範囲とすることにより、ホログラムの回折効率を十分に向上させることができ、明るい像を得ることできるからである。なお、本発明において、屈折率はアッベ屈折率計により測定された値である。
【0078】
また、上記ホログラムの回折効率としては、60%以上、中でも75%以上であることが好ましい。これにより、より明るい像を得ることができるからである。
【0079】
本発明において、体積型ホログラム層の形成は、まず上述したような光重合性化合物および光重合開始剤等から形成される体積型ホログラム用樹脂や微粒子を有する体積型ホログラム用樹脂組成物を、例えば目的とする基材フィルム上に、一般的なコーティング手段により塗布し、必要に応じて乾燥し、体積型ホログラム形成用層とする。また、体積型ホログラム形成用層は、例えば2枚のガラス板等の基材フィルムの間に体積型ホログラム用樹脂組成物を注入することによって形成されたものであってもよい。次に、上記体積型ホログラム形成用層に、通常ホログラフィー露光装置に用いられるレーザー光はコヒーレンス性の優れた光(たとえば波長300nm〜1200nmの光)による露光によって、上述した光重合性化合物を重合させて、目的とする像の干渉縞を記録する。これにより、体積型ホログラム層が形成される。
【0080】
体積型ホログラム用樹脂組成物は、塗布の際、必要に応じて溶媒を用いてもよい。このような溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を使用することができる。また、これらの溶媒を1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0081】
また、体積型ホログラム用樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコーター、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター等の方法を使用することができる。
【0082】
上記体積型ホログラム用樹脂組成物の塗布量は、体積型ホログラム層の用途や種類によって適宜選択されるものであるが、通常1g/m2〜100g/m2の範囲内とされ、体積型ホログラム形成用層の膜厚は、通常1μm〜100μm、中でも10μm〜40μmの範囲内とすることが好ましい。さらに、体積型ホログラム用樹脂組成物を硬化させて形成される体積型ホログラム層の膜厚としては、1〜100μm、中でも10〜40μmの範囲内とすることが好ましい。
【0083】
上記体積型ホログラム形成用層に、通常ホログラフィー露光装置に用いられるレーザー光はコヒーレンス性の優れた光(たとえば波長300nm〜1200nmの光)による露光によって、上述した光重合性化合物を重合させて、目的とする像の干渉縞を記録する。上記レーザー光としては、可視レーザー、例えばアルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、ヘリウム−ネオンレーザー(633nm)、YAGレーザー(532nm)等を使用することができる。
【0084】
上記の像の干渉縞を記録する方法としては、従来の公知の方法を使用することができる。例えば、上記体積型ホログラム形成用層に原版を密着させ、基材フィルム側から可視光、あるいは紫外線や電子線等の電離放射線を用いて干渉露光を行うことにより像の干渉縞が記録される。
【0085】
また、屈折率変調の促進、光重合性化合物等の重合反応完結のために干渉露光後、紫外線による全面露光や加熱等の処理を適宜行うことができる。
【0086】
また、体積型ホログラム層のガラス転移点温度が100℃以上であることが好ましい。これにより、体積型ホログラム層に熱が加えられた場合であっても、安定なものとすることができ、体積型ホログラム層を例えば熱転写法等により転写することが可能となるからである。
【0087】
b.表面レリーフ型ホログラム層
次に、本発明に用いられる表面レリーフ型ホログラム層について説明する。
【0088】
本発明において、表面レリーフ型ホログラム層は微粒子を含有しており、その微粒子の屈折率が上記表面レリーフ型ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことを特徴とするものである。本発明によれば、上記微粒子の屈折率が、上記表面レリーフ型ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことにより、表面レリーフ型ホログラム層の屈折率が小さくなり、結果的に表面レリーフ型ホログラム層と反射層との屈折率差が大きくなるため、ホログラムの回折効率が向上し、明るいホログラムの再生像を得ることが可能となる。
【0089】
また、本発明においては、表面レリーフ型ホログラム層は微粒子を含有し、さらに樹脂材料を有することが好ましい。樹脂材料を含有することにより、表面レリーフ型ホログラム層として像を形成したものとすることができるからである。
【0090】
ここで、表面レリーフ型ホログラム層中に含まれる他の成分とは、樹脂材料を示すものである。また、本発明において、他の成分の平均屈折率とは、微粒子以外の成分を混合し、乾燥した膜の状態でアッベ屈折率計を用いて測定した値とする。
【0091】
以下、このような表面レリーフ型ホログラム層の各構成について説明する。
【0092】
(1)微粒子
本発明において、表面レリーフ型ホログラム層は微粒子を含有しており、その微粒子の屈折率が表面レリーフ型ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことを特徴とするものである。
【0093】
本発明によれば、上記微粒子の屈折率が、表面レリーフ型ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことにより、このような微粒子を添加すると表面レリーフ型ホログラム層の屈折率を低下させることができ、結果的に表面レリーフ型ホログラム層と反射層との屈折率差を大きくすることができる。これにより、ホログラムの回折効率が向上し、明るいホログラムの再生像を得ることが可能となる。また、表面レリーフ型ホログラム層の屈折率の調整は、樹脂材料を変更するのではなく、種々の屈折率を有する微粒子を選択して添加することにより行うものであるため、ホログラムの設計の自由度が高くなるという利点を有する。さらに、表面レリーフ型ホログラム層に微粒子を含有させることにより、表面レリーフ型ホログラム層に脆性が付与されるため、上記ホログラム積層体をホログラム転写箔に用いた場合、ホログラムを被着体に付着させる際の箔切れ性が向上する利点も有する。
【0094】
上記微粒子は、表面レリーフ型ホログラム層中に、1〜30重量%の範囲内、好ましくは5〜20重量%の範囲内で含有させるとよい。微粒子の含有量が上述した範囲未満である場合、表面レリーフ型ホログラム層の屈折率を十分に調整することができず、また本発明のホログラム積層体をホログラム転写箔に用いた場合に十分な脆性を付与することができないからである。一方、微粒子の含有量が上述した範囲を超えて多い場合、表面レリーフ型ホログラム層の強度や透明性を保つことが困難となるからである。
【0095】
なお、微粒子に関しては、上述した「a.体積型ホログラム層」の微粒子の欄に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
(2)樹脂材料
本発明においては、表面レリーフ型ホログラム層が上記微粒子を含有し、さらに樹脂材料を有することが好ましい。樹脂材料を含有することにより、表面レリーフ型ホログラム層として像を形成したものとすることができるからである。
【0097】
本発明に用いられる樹脂材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を使用することができる。
【0098】
上記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0099】
上記熱可塑性樹脂としては、アクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂等を挙げることができる。
【0100】
これらの樹脂材料は、単独重合体または2種以上の共重合体として使用してもよい。
【0101】
上記電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、特開2000−272295号公報に記載のウレタン変性アクリレート樹脂等を挙げることができる。
【0102】
上記樹脂材料は、表面レリーフ型ホログラム層中に、好ましくは10〜90重量%の範囲内、より好ましくは25〜85重量%の範囲内で含有させるとよい。
【0103】
(3)添加剤
本発明においては、上述した熱硬化性樹脂または電離放射線硬化性樹脂に、熱硬化剤あるいは紫外線硬化剤を配合することができる。熱硬化剤あるいは紫外線硬化剤としては、イソシアネート樹脂、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の金属石鹸ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルスルフィド等を挙げることができる。
【0104】
また本発明においては、上述した電離放射線硬化性樹脂に、架橋構造、粘度の調整等を目的として、以下に示すような単官能または多官能のモノマー、オリゴマーおよびポリマー等を包含させることができる。
【0105】
単官能のモノマーおよびオリゴマーとしては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等のモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0106】
また、多官能のモノマー、オリゴマーおよびポリマーとしては、骨格構造で分類するとポリオール(メタ)アクリレート(エポキシ変性ポリオール(メタ)アクリレート、ラクトン変性ポリオール(メタ)アクリレート等)、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン系、イソシアヌール酸系、ヒダントイン系、メラミン系、リン酸系、イミド系、フォスファゼン系等の骨格を有するポリ(メタ)アクリレートであり、紫外線、電子線硬化性である様々なモノマー、オリゴマー、ポリマーを使用することができる。
【0107】
具体的には、2官能のモノマーおよびオリゴマーとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。3官能のモノマーおよびオリゴマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、4官能のモノマーおよびオリゴマーとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。さらに、5官能以上のモノマーおよびオリゴマーとしては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、フォスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0108】
上記単官能または多官能のモノマーおよびオリゴマーの官能基数は特に限定されるものではないが、官能基数が3〜20のものが好ましい。官能基数が3より小さいと耐熱性が低下する傾向があり、官能基数が20を超えて大きいと柔軟性が低下する傾向があるからである。
【0109】
ところで、表面レリーフ型ホログラムを形成する際には、上記微粒子、樹脂材料および添加剤等を有する表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物に、表面に凹凸が形成されているプレスタンパーに圧着し、表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物の表面に凹凸を形成するものである。本発明においては、表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物がプレスタンパーから容易に剥離できるように、予め離型剤を添加させることができる。このような離型剤としては、従来公知の離型剤、例えばポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系の界面活性剤、シリコーン等を使用することができる。特に、離型剤として変性シリコーンを使用することが好ましい。
【0110】
上記変性シリコーンとしては、(1)変性シリコーンオイル側鎖型、(2)変性シリコーンオイル両末端型、(3)変性シリコーンオイル片末端型、(4)変性シリコーンオイル側鎖両末端型、(5)トリメチルシロキケイ酸を含有するメチルポリシロキサン(シリコーンレジンと呼ぶ)、(6)シリコーングラフトアクリル樹脂、(7)メチルフェニルシリコーンオイル等を挙げることができる。
【0111】
また、上記変性シリコーンオイルは、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル基変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。一方、非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性等が挙げられる。
【0112】
上述した変性シリコーンオイルの中でも、表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物と反応性である基を有する種類の反応性シリコーンオイルは、表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物の硬化とともにこの樹脂組成物と反応して結合するため、後に凹凸パターンが形成された表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物の表面にブリードアウトすることがなく、特徴的な性能を付与することができる。特に、蒸着法により形成された反射層等の蒸着層との密着性向上には有効である。
【0113】
(4)表面レリーフ型ホログラム層
本発明によれば、上記微粒子の屈折率が上記樹脂材料の屈折率より小さいことにより、このような微粒子を添加すると表面レリーフ型ホログラム層の屈折率を低下させることができ、結果的に表面レリーフ型ホログラム層と反射層との屈折率差を大きくすることができる。これにより、ホログラムの回折効率が向上し、明るいホログラムの再生像を得ることが可能となる。よって、表面レリーフ型ホログラム層と反射層との屈折率差は0.2以上が好ましく、より好ましくは0.3以上であり、0.5以上が最適である。表面レリーフ型ホログラム層と反射層との屈折率差が上述した範囲であることにより、ホログラムの回折効率を十分に向上させることができ、明るい像を得ることができるからである。なお、本発明において、屈折率はアッベ屈折率計により測定された値である。
【0114】
また、上記ホログラムの回折効率としては、40%以上、中でも50%以上であることが好ましい。これにより、より明るい像を得ることができるからである。
【0115】
本発明において、表面レリーフ型ホログラム層の形成は、まず上述したような樹脂材料や微粒子等を有する表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物を、例えば目的とする基材フィルム上に、一般的なコーティング手段により塗布し、必要に応じて乾燥して、表面レリーフ型ホログラム形成用層とする。また、表面レリーフ型ホログラム形成用層は、例えば2枚のガラス板等の基材フィルムの間に表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物を注入することによって形成されたものであってもよい。次に、例えば凹凸パターンが形成されているマスターホログラムから作製されたプレスタンパーを表面レリーフ型ホログラム形成用層に圧着し、凹凸パターンを表面レリーフ型ホログラム形成用層の表面に形成し、像を記録する。さらに、表面レリーフ型ホログラム形成用層を硬化させることにより、表面レリーフ型ホログラム層が形成される。
【0116】
表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物は、塗布の際、必要に応じて溶媒を用いてもよい。このような溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を使用することができる。また、これらの溶媒を1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0117】
また、表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコーター、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター等の方法を使用することができる。
【0118】
また、表面レリーフ型ホログラム層の用途や種類によって適宜選択されるものであるが、上記表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物の塗布量は、通常1g/m2〜100g/m2の範囲内とされ、表面レリーフ型ホログラム形成用層の膜厚は、通常0.2μm〜100μm、中でも1μm〜20μmの範囲内とすることが好ましい。さらに、表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物を硬化させて形成される表面レリーフ型ホログラム層の膜厚としては、0.2〜100μm、中でも1〜20μmの範囲内とすることが好ましい。
【0119】
ここで、上述したように表面レリーフ型ホログラムは、例えば凹凸パターンが形成されているマスターホログラムから作製されたプレスタンパーを表面レリーフ型ホログラム形成用層に圧着し、凹凸パターンを表面レリーフ型ホログラム形成用層の表面に形成し、像を記録するものである。このような像を記録する方法としては、従来の公知の方法を使用することができる。例えば、光学的な投影方式により、特定情報を有する微細な凹凸パターンからなる表面レリーフ型のマスター版を作製し、さらにマスター版から複製されたニッケル製のプレス版を使用する。このプレス版を加熱し、表面レリーフ型ホログラム形成用層に押し当てることにより、凹凸パターンを複製する、いわゆるエンボス法を用いることができる。
【0120】
上記マスター版を作製する際に、通常ホログラフィー露光装置に用いられるレーザー光はコヒーレンス性の優れた光(たとえば波長300nm〜1200nmの光)による露光によって、目的とする凹凸パターンを記録する。上記レーザー光としては、可視レーザー、例えばアルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、ヘリウム−ネオンレーザー(633nm)、YAGレーザー(532nm)等を使用することができる。
【0121】
また、表面レリーフ型ホログラム層が電離放射線硬化性樹脂を含有している場合は、凹凸形状を保持するため、エンボス時および/またはエンボス後に、紫外線等の電離放射線を照射し、硬化させる方法を用いることもできる。
【0122】
また、表面レリーフ型ホログラム層のガラス転移点温度が100℃以上であることが好ましい。これにより、表面レリーフ型ホログラム層に熱が加えられた場合であっても、安定なものとすることができ、表面レリーフ型ホログラム層を例えば熱転写法等により転写することが可能となるからである。
【0123】
2.反射層
次に、本発明に用いられる反射層について説明する。
【0124】
本発明において、反射層はその屈折率が上記ホログラム層の屈折率より大きいものである。本発明によれば、反射層の屈折率が上記ホログラム層の屈折率より大きいことにより、ホログラムの回折効率が向上するため、ホログラムの再生像を明るくさせることができる。
【0125】
上記反射層としては、光を反射する例えば金属薄膜等を用いると、不透明タイプのホログラムとなり、ホログラム層と屈折率差がある透明な物質を用いた場合には、透明タイプのホログラムとなるが、いずれも本発明に用いることが可能である。このような反射層は、昇華、真空蒸着、スパッタリング、反応性スパッタリング、イオンプレーティング、電気めっき等の公知の方法により形成することが可能である。
【0126】
また、不透明タイプのホログラムを形成する金属薄膜としては、例えば、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Al、Mg、Sb、Pb、Pd、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、Rb等の金属およびその酸化物、窒化物等を単独もしくは2種類以上組み合わせて形成される薄膜が挙げられる。上記金属薄膜の中でもAl、Cr、Ni、Ag、Au等が特に好ましく、その膜厚は1〜10,000nm、中でも20〜200nmの範囲であることが好ましい。
【0127】
一方、透明タイプのホログラムを形成する薄膜としては、ホログラム効果を発現できる光透過性のものであれば、いかなる材質のものも使用できる。例えば、ホログラム層に含まれる樹脂と、屈折率の異なる透明材料が挙げられる。また、上記以外では20nm以下の金属性反射膜が挙げられ、好適に使用される透明タイプ反射層としては、酸化チタン(TiO2 )、硫化亜鉛(ZnS)、Cu・Al複合金属酸化物等が挙げられる。
【0128】
B.ホログラム転写箔
次に、本発明のホログラム転写箔について説明する。
【0129】
本発明のホログラム転写箔は、本発明のホログラム積層体と、基材フィルムと、感熱性接着剤層とを有しており、上記基材フィルム上にホログラム層が形成され、上記ホログラム層上に反射層が形成され、上記反射層上に上記感熱性接着剤層が形成されていることを特徴とするものである。本発明によれば、上記ホログラム積層体を有することから、ホログラムの再生像が明るく、箔切れが良好なホログラム転写箔とすることができ、様々な用途に用いることが可能なものとすることができるのである。
【0130】
本発明のホログラム転写箔について図面を用いて説明する。図2は、本発明のホログラム転写箔の一例を示す概略断面図である。図2に示すように、基材フィルム3と、上記基材フィルム3上に形成されたホログラム層1と、上記ホログラム層1上に形成された反射層2と、上記反射層2上に形成された感熱性接着剤層4とを有するものである。
【0131】
本発明のホログラム転写箔は、上記感熱性接着剤と被着体とを接触させて、基材フィルム側から熱をかけることにより、感熱性接着剤によりホログラム層と被着体とを接着することができ、被着体上にホログラム層を転写することができるのである。この際本発明によれば、上述した箔切れ性の良好な上記ホログラム層を有することから、目的とする部分のみ、ホログラム層を被着体に転写することが可能となり、様々な用途に用いることが可能なホログラム転写箔とすることができるのである。
【0132】
このような転写は、例えば図3に示すように、ホログラムを転写する被着体5の表面に、上記感熱性接着剤層4が接するように重ね合わせ、上記基材フィルム側からホログラムを転写する部分に、例えば加熱可能な金型6等で加熱・加圧して、上記感熱性接着剤層4を溶融接着させ、その後基材フィルム3を剥離することによって行うことができる。
【0133】
以下、このようなホログラム転写箔の各構成について説明する。なお、ホログラム層、および反射層に関しては、上述した「A.ホログラム積層体」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0134】
1.基材フィルム
本発明に用いられる基材フィルムは、ホログラム層が形成されるものであり、ホログラムを被着体に転写する際には、この基材フィルム側から熱転写が行われるものである。したがって、上記ホログラム層が形成可能であり、かつ熱転写の際に加わる熱や圧力に対して耐性を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の透明樹脂フィルムを用いることができる。
【0135】
また、このような基材フィルムの厚さとしては、ホログラム転写箔の用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、通常2μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmの範囲内とされる。
【0136】
2.感熱性接着剤層
次に、本発明に用いられる感熱性接着剤層について説明する。本発明に用いられる感熱性接着剤層は、ホログラム転写箔の基材フィルムと反対側の表面に形成される層であり、ホログラム層を熱転写により被着体上に転写する際に密着させて加熱等することにより、ホログラム層と被着体とを接着する層である。
【0137】
このような感熱性接着剤層としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその共重合体樹脂、セルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。上記の中でも、180℃以下の温度でヒートシール可能な層であることが好ましく、さらにエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)の酢酸含量25%以上のものを用いることが好ましい。また、上記樹脂に、必要に応じて感熱性接着剤層が着色されたものであってもよい。
【0138】
3.ホログラム転写箔
次に、本発明のホログラム転写箔について説明する。
【0139】
本発明のホログラム転写箔は、上記ホログラム積層体と、上記感熱性接着剤層とを有しており、基材フィルム上にホログラム層が形成され、上記ホログラム層上に反射層が形成され、上記反射層上に上記感熱性接着剤層が形成されているものであれば、その構成等は特に限定されるものではない。上記の層以外に例えば、図4に示すように、基材フィルム3と、その基材フィルム3上に形成された剥離層7と、その剥離層7上に形成されたホログラム層1と、そのホログラム層1上に形成された反射層2と、その反射層2上に形成された感熱性接着剤層4とを有するものであってもよい。
【0140】
上記剥離層とは、ホログラム転写箔を用いて、被着体上にホログラム層を転写する際に、上記基材フィルムと上記ホログラム層とを剥離を容易に行うことを可能とする層である。例えばアクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等から、1種または2種以上を混合したもの等を用いることができる。上記の中でも、分子量20000〜100000程度のアクリル系樹脂単独、またはアクリル系樹脂と分子量8000〜20000の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とからなり、さらに添加剤として分子量1000〜5000のポリエステル樹脂が1〜5重量%含有する組成物からなることが特に好ましい。
また、本発明においては特に、上記基材フィルムと上記ホログラム層との間の剥離力が1〜5g/インチ(90°剥離)となるようなものであることが好ましい。また、その厚みは剥離力、箔切れ等の面から、0.1μm〜2μmの範囲内であることが好ましい。
【0141】
さらに、本発明においては、上記剥離層とホログラム層との間にバリア層を設けることもできる。本発明に使用するホログラム層に用いる樹脂組成物および剥離層の組み合わせによっては、経時的に体積型ホログラム層から他の層への低分子量成分の移行が起こり、これに起因して記録されたホログラムのピーク波長が青側(短波長側)に移行したり、剥離層等にこれが移行した場合にはその剥離性を変化させたりする場合がある。上記のようなバリア層を設けることによって、これらの阻害要因を解消することができるのである。
【0142】
このようなバリア層として用いる材料としては、そのバリア性を発現する材料であれば、特に制限はないが、通常、透明性有機樹脂材料を用いることによってその目的を達成することができる。中でも、無溶剤系の3官能以上、好ましくは6官能以上の、紫外線や電子線等の電離放射線に反応する電離放射線硬化性エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等を用いることができる。特に、その中でもウレタン変性アクリレート樹脂がそのバリア性の高さから好ましく用いられる。
【0143】
また、これらの電離放射線硬化性樹脂としては、そのコーティング適正、最終的に得られるバリア層の硬度等を考慮すると、その分子量は500〜2000の範囲のものが好ましく用いられる。また、バリア層のコーティングは基本的に無溶剤系であるため、ホログラム層、剥離層、感熱性接着剤層のどの層にも積層形成することができる。
【0144】
また、各層の密着性が弱い場合には、密着向上層等が形成されたものであってもよい。
【0145】
上述したような本発明のホログラム転写箔は、上記基材フィルム、ホログラム層、反射層および感熱性接着剤層を、それぞれ順次積層して製造されるものであってもよいが、各部材をそれぞれ独立の工程によって準備し、これらを積層することによって製造されるものであってもよい。
【0146】
例えば、像を記録したホログラム層、剥離層を形成した基材フィルム、反射層および感熱性接着剤層を準備し、これらを積層する方法等が挙げられる。各部材をそれぞれ独立の工程によって準備する場合には、例えば基材フィルム上に剥離層等をドライプロセス等により形成することが可能となり、様々な材料を用いることや、製造効率等の面から好ましいものとすることができる。
【0147】
また例えば、上記基材フィルム(剥離層が形成されていてもよい)上に体積型ホログラム層を形成した後、体積型ホログラム層に像を記録した部材と、反射層と、感熱性接着剤層とを準備し、これらを積層するもの等であってもよい。この場合、上述した体積型ホログラム層を形成する組成物を支持体上に塗布し、例えばレーザー等を照射することにより、ラジカル重合性化合物を重合させて像を記録し、上記基材フィルムと積層する。その後、上記体積型ホログラム用樹脂組成物全面に照射することにより、像が記録された体積型ホログラム層と上記基材フィルムとが積層された部材を形成する。続いて、上記支持体を剥離して、感熱性接着剤を例えば100℃〜180℃に加熱しながら積層する方法等とすることができる。
【0148】
ここで、上述した積層することによって製造されたホログラム転写箔は、例えばプラスチックカード、携帯電話、金券、日用品またはCD−ROMのパッケージなどに適用可能である。
【0149】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0150】
【実施例】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
【0151】
[実施例1]
下記組成からなる平均屈折率1.52の体積型ホログラム用樹脂組成物に、屈折率1.36、平均粒径100nmのシリカゾルを30重量部配合した。
【0152】
ポリメチルメタクリレート(屈折率1.5、平均重量分子量20万):100重量部
9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン(屈折率1.59):80重量部
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(屈折率1.46):70重量部
ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート:5重量部
3,9−ジエチル−3´−カルボキシメチル−2,2´−チアカルボシアニンヨードニウム塩:1重量部
1−ブタノール:30重量部
メチルエチルケトン:30重量部
このシリカゾル配合液を50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製ルミラー60T)上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布し、体積型ホログラム形成用層を得た。この体積型ホログラム形成用層にアルゴンイオンレーザー光(波長514.5nm)をPETフィルム側より2方向入射し、体積型ホログラムを記録した。さらに、加熱、紫外線定着露光により固定化された透過型ホログラムを得た。得られたホログラム層の片方の面にジルコニア(屈折率2.1)を蒸着した。
【0153】
得られたホログラムの分光反射率曲線を分光光度計(島津製作所製UV−PC3100)により測定し、回折効率を計算したところ、76%となった。
【0154】
[実施例2]
実施例1において、シリカゾルの代わりにシリカ微粒子(屈折率1.46、平均粒径200nm)を使用した以外は、同様にして体積型ホログラムを作製した。得られたホログラムの回折効率は65%であった。
【0155】
[実施例3]
下記組成からなる平均屈折率1.5の表面レリーフ型ホログラム用樹脂組成物に、屈折率1.36、平均粒径100nmのシリカゾルを30重量部配合した。
【0156】
ウレタン変性アクリレート樹脂(特開2000−272295号公報記載、屈折率1.5):100重量部
トリメチルシロキケイ酸含有メチルポリシロキサン:1重量部
トリメチロールプロパントリアクリレート:10重量部
ポリエステルアクリレート:10重量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン:5重量部
トルエン:30重量部
メチルエチルケトン:30重量部
このシリカゾル配合液を50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製ルミラー60T)上に、乾燥後の膜厚が3μmとなるように塗布し、表面レリーフ型ホログラム形成用層を得た。凹凸スタンパーに上記表面レリーフ型ホログラム形成用層を圧着し、スタンパーから剥離した後、紫外線定着露光を行った。得られたホログラム層の片方の面にジルコニア(屈折率2.1)を蒸着した。
【0157】
得られたホログラムの分光反射率曲線を分光光度計(島津製作所製UV−PC3100)により測定し、回折効率を計算したところ、53%となった。
【0158】
[実施例4]
実施例3において、シリカゾルの代わりにシリカ微粒子(屈折率1.46、平均粒径200nm)を使用した以外は、同様にして表面レリーフ型ホログラムを作製した。得られたホログラムの回折効率は43%であった。
【0159】
[比較例1]
実施例1において、シリカゾルを含有させなかった以外は、同様にして体積型ホログラムを作製した。得られたホログラムの回折効率は49%であった。
【0160】
[比較例2]
実施例3において、シリカゾルを含有させなかった以外は、同様にして表面レリーフ型ホログラムを作製した。得られたホログラムの回折効率は37%であった。
【0161】
[比較例3]
実施例1において、シリカゾルの代わりにアクリル微粒子(屈折率1.5、平均粒径300nm)を使用した以外は、同様にして体積型ホログラムを作製した。得られたホログラムの回折効率は47%であった。
【0162】
[比較例4]
実施例3において、シリカゾルの代わりにアクリル微粒子(屈折率1.5、平均粒径300nm)を使用した以外は、同様にして表面レリーフ型ホログラムを作製した。得られたホログラムの回折効率は31%であった。
【0163】
[実施例5〜8]
実施例1〜4のホログラム積層体を使用し、下記方法によりホログラム転写箔を作製した。
【0164】
(剥離層/PETの作製)
下記組成からなる剥離層形成材料を、25μm厚のPETフィルム(東レ製ルミラー60T)上に、乾燥後の膜厚が1μmとなるように塗布し、剥離層/PETを作製した。
【0165】
ポリメチルメタクリレート(平均重量分子量3万5千):97重量部
ポリエチレンワックス(平均重量分子量1万):3重量部
ポリエステル(平均重量分子量1500):0.3重量部
メチルエチルケトン:200重量部
トルエン:200重量部
【0166】
(感熱性接着剤層/離型処理PETの作製)
下記材料からなる感熱性接着剤層形成材料を、38μm厚の離型処理PETフィルム(東セロ製SP−PET)上に、乾燥後の膜厚が3μmとなるように塗布し、感熱性接着剤層/離型処理PETを作製した。
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂溶液(東洋モートン製AD1790−15)
【0167】
(ホログラム転写箔の作製)
ミラー原版もしくは凹凸スタンパーから剥がしたホログラム面に、剥離層/PETの剥離層面を80℃でラミネートし、PET/剥離層/ホログラム層/PETからなる積層体を得た。次いで、ホログラム層に積層されているPETを剥がし、ホログラム面に、ジルコニア(屈折率2.1)を蒸着し、PET/剥離層/ホログラム層/反射層からなる積層体を得た。この反射層面に感熱性接着剤層/離型処理PETの感熱性接着剤層面を130℃でラミネートし、さらに離型処理PETを剥がすことにより、PET/剥離層/ホログラム層/反射層/感熱性接着剤層からなるホログラム転写箔を得た。
【0168】
(転写性評価)
被着体とした塩化ビニルカードに、得られたホログラム転写箔の感熱性接着剤層面を合わせ、PET側から、150℃に加熱した金型を押し当て、ホログラムを転写した結果、いずれも良好な転写性を示した。
【0169】
[比較例5、6]
比較例1、2のホログラム積層体(微粒子添加なし)を使用し、実施例5〜8と同様にしてホログラム転写箔を作製した。転写性の評価を行ったところ、箔切れが悪くバリが発生し、良好に転写することができなかった。
【0170】
【発明の効果】
本発明においては、ホログラム積層体が、ホログラム層と、上記ホログラム層上に形成された反射層とを有するホログラム積層体であって、上記ホログラム層が微粒子を含有しており、上記微粒子の屈折率が上記ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことにより、ホログラム層の屈折率が小さくなり、結果的にホログラム層と反射層との屈折率差が大きくなるため、ホログラムの回折効率が向上し、明るいホログラムの再生像を得ることが可能となる。また、ホログラム層の屈折率の調整は、ホログラム層の形成材料である樹脂を変更するのではなく、種々の屈折率を有する微粒子を選択して添加することにより行うものであるため、ホログラムの設計の自由度が高くなるという利点を有する。さらに、ホログラム層に微粒子を含有させることにより、ホログラム層に脆性が付与されるため、上記ホログラム積層体をホログラム転写箔に用いた場合、ホログラムを被着体に付着させる際の箔切れ性が向上する利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のホログラム積層体の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のホログラム転写箔の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のホログラム転写箔の転写の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のホログラム転写箔の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … ホログラム層
2 … 反射層
3 … 基材フィルム
4 … 感熱性接着剤層
5 … 被着体
6 … 金型
7 … 剥離層
Claims (3)
- ホログラム層と、前記ホログラム層上に形成された反射層とを有するホログラム積層体であって、前記ホログラム層が微粒子を含有しており、前記微粒子の屈折率が前記ホログラム層中に含まれる他の成分の平均屈折率より小さいことを特徴とするホログラム積層体。
- 前記微粒子の屈折率が、1.46以下であることを特徴とする請求項1に記載のホログラム積層体。
- 請求項1または請求項2に記載のホログラム積層体と、基材フィルムと、感熱性接着剤層とを有するホログラム転写箔であって、前記基材フィルム上にホログラム層が形成され、前記ホログラム層上に反射層が形成され、前記反射層上に前記感熱性接着剤層が形成されていることを特徴とするホログラム転写箔。
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