JP2005038995A - 積層基体および半導体デバイスおよび光半導体デバイスおよび光伝送システムおよび光電子融合デバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】SiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板と、該単結晶基板上にエピタキシャル成長された酸化物中間層と、該酸化物中間層上にエピタキシャル成長されたGaAs層とを有している積層基体において、前記酸化物中間層の少なくとも1層は、Li,Be,Mg,Ca,Ba,Sc,Y,La,Ce,Nd,Sm,Eu,Tm,Yb,Al,Th,Taの金属元素のうちの少なくとも1つを含み、該酸化物中間層の結晶格子の少なくとも1つの結晶面内において、構成元素のうちの1種の原子配置からなる四角形が下地の単結晶基板表面の原子配置と整合している。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層基体および半導体デバイスおよび光半導体デバイスおよび光伝送システムおよび光電子融合デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
高度情報化社会の急激な進展とともに、情報伝送の高速・大容量化と情報処理の高速化が益々必要とされている。
【0003】
Si−LSIと化合物半導体電子デバイスや光デバイスとを同一基板上に集積する光電子集積回路や光電子融合集積回路は、これらのニーズに応えるのに有望なデバイスとして、精力的に研究開発されている。
【0004】
このような集積回路を実現する最も主要な課題は、Si基板上に結晶品質の良い化合物半導体を大面積で安定したプロセスで設けることである。
【0005】
このため、Si基板上に化合物半導体膜をヘテロエピタキシャル成長させることが検討されてきている。
【0006】
具体的に、Si基板上に、まず低温GaAsを成長させる2段階成長法、あるいは、Si基板上に、GaP層、InGaAs/GaAs,GaAsP/GaAs歪超格子などの化合物半導体中間層を設ける方法、あるいは、SrTiO3などの酸化物中間層を設ける方法が検討されている。
【0007】
しかし、これらの方法のうち、Si基板上に直接GaAs層を成長させたものや、GaAs,InGaAs,GaAsPなどの中間層を用いたものは、大面積Si基板上では以下の問題が顕在化する。
【0008】
すなわち、Si上で大面積に完全に均一な清浄表面を得るのは難しい。Siは、Oとの親和性が強く、酸化性水溶液による処理とそれに続くHF処理では表面に酸化層が残る。この後、700〜1000℃程度で熱処理を行うが、この範囲の低い温度では酸化層の除去が不完全になり、完全にSiの酸化物を除去するため熱処理温度を高めにすると、意図しない原子ステップ,キンク構造が生成され、大面積で無欠陥の単結晶のエピタキシャル層を堆積させるのが難しくなる。このため、GaAs,GaPなどの化合物半導体層または化合物半導体中間層を直接この清浄化したSi表面に成長させても、大面積では良質のエピタキシャル膜は得にくい。
【0009】
また、Siの熱膨張係数は2.6×10−6 ℃−1であり、また、GaAsの熱膨張係数は5.9×10−6℃−1であり、その差が大きい。そのため、Si系基板とGaAs系膜とが直接に接する構成は、この界面で構成膜が剥離したり、構成膜にクラックが発生したりする。さらに、GaAs系デバイスを駆動させる場合に発生する熱によっても、同様な欠陥が発生しやすい。
【0010】
これらの問題を解決するため、例えば特許文献1には、SrTiO3を中間層し、この中間層とSi基板との間に非晶質SiO2層を設けたGaAs/SrTiO3/SiO2/Siの構成で、良好なGaAsエピタキシャル層が得られると記載されている。この構造では、中間層として、Siより酸素と親和性が強いSr,Tiを含み、Siと格子整合性のよいSrTiO3層を用いている。中間層形成過程の初期段階でSi上のSiOx層のO原子が容易に形成過程中の中間層側に移動するため、中間層の成長時に広い面積にわたりSi基板表面のSiOx層は消滅する。このため、下地Si基板の結晶構造を反映し、良好にSrTiO3層がエピタキシャル成長する。この後、過剰の酸化雰囲気の下、SrTiO3層と接するSi基板を酸化させて非晶質のSiO2層を形成し、この非晶質SiO2層に応力を緩和させる役割を持たせている。
【0011】
しかし、この特許文献1では、中間層として、SrTiO3、SrZrO3、SrHfO3、BaZrO3、BaHfO3、BaSnO3、SrxBa1−xTiO3だけを開示している。このため物性及び作製法が限定されるので、素子設計上の自由度が小さく、素子製造上の選択肢も小さいという問題がある。
【0012】
【特許文献1】
米国特許第6,392,257号
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、素子設計上の自由度が大きく、素子製造上の選択肢も大きくすることの可能な積層基体および半導体デバイスおよび光半導体デバイスおよび光伝送システムおよび光電子融合デバイスを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、SiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板と、該単結晶基板上にエピタキシャル成長された酸化物中間層と、該酸化物中間層上にエピタキシャル成長されたGaAs層とを有している積層基体において、
前記酸化物中間層の少なくとも1層は、
Li,Be,Mg,Ca,Ba,Sc,Y,La,Ce,Nd,Sm,Eu,Tm,Yb,Al,Th,Taの金属元素のうちの少なくとも1つを含み、該酸化物中間層の結晶格子の少なくとも1つの結晶面内において、構成元素のうちの1種の原子配置からなる四角形が下地の単結晶基板表面の原子配置と整合していることを特徴としている。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、SiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板と、該単結晶基板上にエピタキシャル成長された酸化物中間層と、該酸化物中間層上にエピタキシャル成長されたGaAs層とを有している積層基体において、
前記酸化物中間層の少なくとも1層は、
MgO、MgAl2O4、MgTi2O4、Mg2TiO4、CaTiO3、γ−Al2O3、TiO、TiO2、SrO、SrCeO3、BaO、BaCeO3、BaThO3、BaTiO3、LaAlO3、LaTiO3、CeO2、ThO2、Li0.5Al2.5O4、Li1.33Ti1.67O4、LiAlTiO4、または、LiTiO2からなることを特徴としている。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の積層基体において、前記単結晶基板と前記酸化物中間層との間に、非晶質SiO2層が設けられていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の積層基体のGaAs層上またはGaAs層中に、電子デバイスが構成されていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の積層基体のGaAs層上に、GaAs系デバイス構成体が直接接合されて構成されていることを特徴としている。
【0019】
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の半導体デバイスにおいて、
前記積層基体の前記酸化物中間層の少なくとも1層は、
Li,Be,Mg,Ca,Ba,Sc,Y,La,Ce,Nd,Sm,Eu,Tm,Yb,Al,Th,Ta,Sr,Ti,Zr,Hfの金属元素のうちの少なくとも1つを含み、該酸化物中間層の結晶格子の少なくとも1つの結晶面内において、構成元素のうちの1種の原子配置からなる四角形が下地の単結晶基板表面の原子配置と整合していることを特徴としている。
【0020】
また、請求項7記載の発明は、請求項6記載の半導体デバイスにおいて、
積層基体中の酸化物中間層の少なくとも1層は、
MgO、MgAl2O4、MgTi2O4、Mg2TiO4、CaTiO3、γ−Al2O3、TiO、TiO2、SrO、SrCeO3、BaO、BaCeO3、BaThO3、BaTiO3、LaAlO3、LaTiO3、CeO2、ThO2、Li0.5Al2.5O4、Li1.33Ti1.67O4、LiAlTiO4、LiTiO2、SrHfO3、SrTiO3、SrZrO3、BaZrO3、または、SrxBa1−xTiO3からなることを特徴としている。
【0021】
また、請求項8記載の発明は、請求項6または請求項7記載の半導体デバイスにおいて、前記積層基体中の単結晶基板と酸化物中間層との間に、非晶質SiO2層が設けられていることを特徴としている。
【0022】
また、請求項9記載の発明は、請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の半導体デバイスにおいて、該半導体デバイスはGaAs系光デバイスであることを特徴としている。
【0023】
また、請求項10記載の発明は、請求項9記載の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、端面発光レーザであることを特徴としている。
【0024】
また、請求項11記載の発明は、請求項9記載の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、面発光レーザ(VCSEL)であることを特徴としている。
【0025】
また、請求項12記載の発明は、請求項10記載の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、GaInNAsを活性層に含む端面発光デバイスであることを特徴としている。
【0026】
また、請求項13記載の発明は、請求項11記載の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、GaInNAsを活性層に含む面発光デバイスであることを特徴としている。
【0027】
また、請求項14記載の発明は、請求項9乃至請求項13のいずれか一項に記載の半導体デバイスの単結晶基板の表面,裏面,または内部において、GaAs系光デバイスが出力する光の光路上に、光学素子が設けられていることを特徴としている。
【0028】
また、請求項15記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の積層基体に、請求項9乃至請求項13のいずれか一項に記載の半導体デバイスが、直接接合されていることを特徴としている。
【0029】
また、請求項16記載の発明は、請求項9乃至請求項13のいずれか一項に記載の半導体デバイス、または、請求項14または請求項15記載の光半導体デバイスを備えていることを特徴としている。
【0030】
また、請求項17記載の発明は、請求項6乃至請求項13のいずれか一項に記載の半導体デバイス、または、請求項14または請求項15記載の光半導体デバイスの単結晶基板中または単結晶基板上に電子回路が設けられていることを特徴としている。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、図1に示すように、SiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板と、該単結晶基板上にエピタキシャル成長された酸化物中間層と、該酸化物中間層上にエピタキシャル成長されたGaAs層とを有している積層基体において、
前記酸化物中間層の少なくとも1層は、
Li,Be,Mg,Ca,Ba,Sc,Y,La,Ce,Nd,Sm,Eu,Tm,Yb,Al,Th,Taの金属元素のうちの少なくとも1つを含み、該酸化物中間層の結晶格子の少なくとも1つの結晶面内において、構成元素のうちの1種の原子配置からなる四角形が下地の単結晶基板表面の原子配置と整合していることを特徴としている。
【0033】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、図1に示すように、SiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板と、該単結晶基板上にエピタキシャル成長された酸化物中間層と、該酸化物中間層上にエピタキシャル成長されたGaAs層とを有している積層基体において、
前記酸化物中間層の少なくとも1層は、
MgO、MgAl2O4、MgTi2O4、Mg2TiO4、CaTiO3、γ−Al2O3、TiO、TiO2、SrO、SrCeO3、BaO、BaCeO3、BaThO3、BaTiO3、LaAlO3、LaTiO3、CeO2、ThO2、Li0.5Al2.5O4、Li1.33Ti1.67O4、LiAlTiO4、または、LiTiO2からなることを特徴としている。
【0034】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態は、第1または第2の実施形態の積層基体において、前記単結晶基板と前記酸化物中間層との間に、非晶質SiO2層が設けられていることを特徴としている。
【0035】
第1乃至第3の実施形態において、SiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板とは、少なくとも基板の表面がSiまたはSiGeまたはGeからなる単結晶構造のものであり、単結晶ウェハ、SOIのような膜、超格子構造多層膜の場合もある。
【0036】
第1乃至第3の実施形態において、酸化物中間層がSiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板上にエピタキシャル成長する第1の条件を述べる。
【0037】
酸化物が成長を開始する段階においては、SiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板上に付着する金属原子又は酸素不足の金属酸化物は、SiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板表面に残留するSiOx,GeOxのOを取り込み、Si,Geを還元する必要がある。
【0038】
これは、化1の反応におけるGibbsエネルギー(△G)が負である必要があることである。
【0039】
なお、以下の反応の式、及び、エネルギーの値は、エネルギーの比較を容易にするため、O原子1molあたりに統一する。また、以降の反応は、Si基板で検討する。SiGe,Geの場合は、SiよりもOとの親和性が弱く、その酸化物はSiの酸化物よりも容易に還元されるため、Siの酸化物が還元される条件ではGeの酸化物は確実に還元されるためである。
【0040】
【化1】
(1/2)SiO2+xM→MxO+Si ・・・ △G1
(Mは金属元素)
【0041】
この化1の反応式を分解すると、次式(化2,化3)のようになる。
【0042】
【化2】
(1/2)SiO2→(1/2)O2+(1/2)Si ・・・ −△Gf2
【0043】
【化3】
xM+(1/2)O2→MxO ・・・ △Gf3
【0044】
よって、△G1が負であるためには、(−△Gf2+△Gf3)<0、つまり、△Gf3<△Gf2である必要がある。これが第1の条件である。これらのエネルギーは酸化物の生成エネルギーとして既知であり、便覧,文献等により容易に得られる。
【0045】
次表(表1)には、標準状態におけるSiO2、及び、第1の実施形態で挙げた金属元素からなる酸化物の生成エネルギーを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
標準状態において、△Gf2は−428kJ/molであり、また、表1に挙げた酸化物の△Gf3は△Gf2より負であることがわかる。
【0048】
なお、一般的な半導体プロセス温度は、室温から1000℃程度の範囲である。この温度範囲においての△Gf2T 、△Gf3Tを、同様な既知情報源から標準状態の△Hf、△Sfを得、△Gf=△Hf−T△Sfより算出すると、やはり△Gf3T<△Gf2T の関係にあることがわかる。
【0049】
このように、まず、第1の実施形態に挙げた1種金属元素の酸化物はエピタキシャル成長の第1の条件を満たすことがわかる。
【0050】
酸化物中間層がSiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板上にエピタキシャル成長する第2の条件を述べる。
【0051】
下地となるSiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板上に直接に接して成長する酸化膜が下地のSiまたはSiGeまたはGeの結晶構造の影響を受けエピタキシャル成長するためには、下地のSiまたはSiGeまたはGeと格子整合することが必要である。これが、酸化物中間層がエピタキシャル成長する第2の条件である。
【0052】
格子整合の形態をSi集積回路及びGaAsデバイスで最も多く用いられる(100)基板の場合で説明する。
【0053】
格子整合の形態は、以下の2通り(A,B)が例として挙げられる。
【0054】
格子整合の形態A
格子整合の形態Aでは、図2に示すように、酸化物中間層の結晶単位格子の少なくとも1つの結晶面内において、構成元素のうちの1種の原子配置からなる四角形が下地であるSiまたはSiGeまたはGeの単位格子と重なる。
【0055】
格子整合率を次式(数1)で表す。
【0056】
【数1】
格子整合率(%)=(酸化物中間層での整合する原子配置の寸法)×100/(下地Si、SiGe、Ge基板での整合する原子配置の寸法)
【0057】
この格子整合率が90〜110%の場合に、酸化物中間層は良好にエピタキシャル成長する。Si,SiGe,Geは結晶構造がダイヤモンド構造で、格子定数が5.43〜5.65Åである。よって、前記酸化物中間層の整合する四角形の辺の長さは、4.89〜6.22Åであることが必要である。
【0058】
なお、この格子整合の形態Aの変形として、酸化物中間層の結晶単位格子の結晶面内において、構成元素のうちの1種の原子配置からなる四角形の寸法のm倍が下地であるSiまたはSiGeまたはGeの単位格子のn倍と重なることによって整合する場合が挙げられる。MgOの場合は、作製法により、この格子整合の形態Aの変形と下記格子整合の形態BでSi上に成長する。
【0059】
格子整合の形態B
格子整合の形態Bでは、図3に示すように、酸化物中間層の結晶単位格子の少なくとも1つの結晶面内において、構成元素のうち1種の原子配置からなる四角形が下地であるSiまたはSiGeまたはGeの単位格子と45°の角度をなす。
【0060】
よって、この場合、前記酸化物中間層の整合する四角形の辺の長さは、3.84〜4.40Åであることが必要である。
【0061】
なお、GaAsは、Siと結晶構造は異なるが、同じ立方晶系であり、類似した原子配置をもつ。たとえば(100)では、GaとAsの原子配置は同一で、Siとも同一である。また、格子定数も近い。(格子定数;Si:5.43Å、GaAs:5.65Å)
【0062】
よって、Si(100)に酸化物中間層が良好にエピタキシャル成長していれば、その上にGaAs膜を成長させれば、同様に良好にエピタキシャル成長する。よって、本発明の積層基体のGaAsも良好にエピタキシャル成長する。
【0063】
酸化物中間層がエピタキシャル成長する第1及び第2の両方の条件を満たす材料の例を挙げれば、次表(表2)に示すように、
MgO、MgAl2O4、MgTi2O4、Mg2TiO4、CaTiO3、γ−Al2O3、TiO、TiO2、SrO、SrCeO3、BaO、BaCeO3、BaThO3、BaTiO3、LaAlO3、LaTiO3、CeO2、ThO2、Li0.5Al2.5O4、Li1.33Ti1.67O4、LiAlTiO4、LiTiO2などの酸化物が挙げられる。
【0064】
【表2】
【0065】
なお、これらの酸化物のうち、LiTiO2などの複合酸化物も第1の条件を満たすことを以下で説明する。表2に挙げた複合酸化物のすべては、表1に挙げた複数の単一金属からなる酸化物を適切な組成比で混合し熱処理した場合、高収率で生成することができる。これは、その環境で化4の反応エネルギー△G4が負であることを示す。
【0066】
複合酸化物AxB(z×y)O(1+z)が単一金属元素A,Bからなる2種の酸化物AxO、ByOから生成される場合は、次式(化4)のような反応式になる。
【0067】
【化4】
AxO+zByO→AxB(z×y)O(1+z) ・・・ △G4
【0068】
この式(化4)をO元素1molあたりに書き換えると、次式(化5)のようになる。
【0069】
【化5】
(AxO+zByO)/(1+z)→Ax/(1+z)B(z×y)/(1+z)O・・・ △G3AB(=△G4/(1+z))
【0070】
酸化物AxO,ByOのO元素1molあたりの生成エネルギーは、次式(化6,化7)のようになる。
【0071】
【化6】
xA+O→AxO ・・・ △Gf3A
【0072】
【化7】
yB+O→ByO ・・・ △Gf3B
【0073】
よって、化5の(AxO+zByO)/(1+z)の生成エネルギーは、(△Gf3A+z×△Gf3B )/(1+z)となる。
【0074】
(△Gf3A+z×△Gf3B)/(1+z)=△Gf3S とすると、次式(化8)が成立する。
【0075】
【化8】
△Gf3S −△Gf2
=[(△Gf3A −△Gf2 )+z×(△Gf3B−△Gf2 )]/(1+z)
【0076】
表1より、(△G3A −△Gf2)<0、(△G3B−△Gf2 )<0である。
ゆえに、(△G3S −△Gf2)<0であり、次式(化9)の反応は右に進むことがわかる。
【0077】
【化9】
(1/2)SiO2 +x/(1+z)A+(z×y)/(1+z)B
→Ax/(1+z)B(z×y)/ (1+z)O+Si ・・・ △G5(=△G3S −△Gf2)
【0078】
表2に挙げた複合酸化物のO元素1molあたりの生成エネルギー(△Gf3S)は、SiO2のO元素1molあたりの生成エネルギー(△Gf2)より負であり、これらの複合酸化物中間層がエピタキシャル成長する第1の条件を満たすことがわかる。
【0079】
作製例1
本発明のGaAs/酸化物中間層/Si積層基体は、例えば次のようにして作製することができる。MBE法を用い、図4に示すように、GaAs/LaAlO3 /Si積層基体を作製する場合で説明する。
【0080】
作製例1では、まず、Si(100)基板の清浄化を行う。代表的な2つの方法を示す。
【0081】
第1の方法は、HF処理法である。HF処理法では、Si基板を、H2SO4/H2O2/H2O dip処理する。次に、HF水溶液中にdipし、表面酸化膜を除去し、同時に表面を水素化する。次に、この試料をMBE装置に入れ、超高真空中で700℃程度に加熱し、表面のHを脱離させ清浄化する。
【0082】
また、第2の方法は、高温フラッシュ法である。高温フラッシュ法では、Si基板を、HCl/H2O沸騰処理し、1nm程度の薄い酸化膜を形成する。次に、この試料をMBE装置に入れ、超高真空中で1000℃程度に加熱し、表面の酸化物を蒸発させ清浄化する。
【0083】
このような清浄化処理の後、連続して超高真空中,750℃程度で、Alを数原子層相当、基板に付着させる。この時点で、Si上のO原子は付着したAlに吸収され、Si基板表面は還元され清浄化される。
【0084】
この後、少量のO2ガス、N2Oガス、CO2ガス、H2OガスなどのOを含むガスを、分圧を制御しながら導入するとともに、La2O3を昇華させる。この時点で、Si基板上には、O原子が不足しているLaAlO3 (100)構造膜がエピタキシャル成長する。
【0085】
この後、Oを含むガスの分圧を増加させ、LaAlO3 (100)構造膜を化学量論的組成になるまで酸化する。
【0086】
このとき、Oを含むガスの分圧をSiが酸化するほどに高めにし、LaAlO3 /Si基板の間に応力緩衝層となるSiO2層を成長させるのが好ましい。
【0087】
次に、このLaAlO3/Si基板試料を、別のMBE成長室に搬送し、GaとAsの分子線を入射させ、GaAs層をエピタキシャル成長させる。
【0088】
このようなGaAs/酸化物中間層/Si積層基体を作製する場合、Si基板清浄化は低温プロセスであるHF処理法を用いれば、良好に、6インチウェハ程度の大面積Si基板上でも、ほほ全域で高結晶品質のGaAs膜を得ることができる。
【0089】
しかし、直接GaAs層や、InGaAs/GaAs歪超格子中間層を介しGaAs層を成長させると、大面積Si基板では、全域でエピタキシャル成長させることは難しい。
【0090】
この理由は次のように考えられる。まず、HF処理法などの低温プロセスの清浄化法は、Si表面のSiOxを完全には除去できない。化合物半導体はSiOxと接しても、これを還元できないが、本発明の酸化物中間層の構成材料はSiOxを還元できる。なお、高温フラッシュ清浄化法では、本発明の酸化物中間層を介しても、直接GaAs層や、InGaAs/GaAs歪超格子中間層を介しても、大面積では良好なGaAsエピタキシャル層は得にくい。これは、高温プロセスなので、Si表面が荒れるためと推察される。
【0091】
膜作製法は、MBE法に限らず、酸化条件及び基板に付着する原子,分子種を制御できる構成であれば、MOCVD法,CBE法,EB蒸着法などを用いることができる。
【0092】
なお、本発明の積層基体のGaAs層の組成は、GaAsのほか、AlxGayInzPuAsv(x+y+z=1, u+v=1)を含む。ただし、本発明では、便宜上、GaAs層と表記する。
【0093】
なお、本発明の積層基体のSi基板上又は基板中には、従来のSi−LSI製造技術により、以下のような回路部が、予め、又は、積層基体加工途中、又は、積層基体加工後に構築される場合もある。
・積層基体のGaAs膜を機能膜とするデバイス、積層基体上に設けられたGaAs系デバイスを駆動する駆動回路部
・論理演算部
・メモリー部
・I/Oインターフェース部
・センサー、アクチュエータ
【0094】
本発明の第1の実施形態の酸化物中間層の構成材料は、Si基板上のSiOxを消滅させることができるので、大面積で良好な結晶品質をもつエピタキシャル成長GaAs膜をもつGaAs/酸化物中間層/Si積層基体を得ることができる。
【0095】
また、本発明の第1の実施形態では、GaAs/酸化物中間層/Si積層基体の酸化物中間層を大面積で良好な結晶品質をもちエピタキシャル成長させる条件を提供しているので、容易に、適切な仕様,コストで、大面積で良好な結晶品質をもつGaAs/酸化物中間層/Si積層基体を得ることができる。
【0096】
また、本発明の第2の実施形態では、GaAs/酸化物中間層/Si積層基体の酸化物中間層をエピタキシャル成長させる酸化物を明示しているので、より容易に適切な仕様,コストで、大面積で良好な結晶品質をもつGaAs/酸化物中間層/Si積層基体を得ることができる。
【0097】
また、本発明の第3の実施形態では、Si基板と該酸化物中間層との間に非晶質SiO2層を設けることで、応力が緩和され、これにより、大面積で良好な結晶品質をもつGaAs/酸化物中間層/Si積層基体を得ることができる。
【0098】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態は、第1乃至第3のいずれかの実施形態の積層基体のGaAs層上またはGaAs層中に、電子デバイスが構成されていることを特徴とする半導体デバイスである。
【0099】
GaAs層上またはGaAs層中に構成される電子デバイスとしては、MESFET(Metal−Semiconductor FET)、HEMT(High Electron Mobility Transistor)、MISFET(Metal−Insulator FET)などが挙げられる。
【0100】
前述のように、GaAs/酸化物中間層/Si積層基体のGaAsの膜厚を数μm以上にすると、剥離やクラックが発生しやすくなる。GaAsの膜厚が薄いほど、このような欠陥は発生しにくくなる。従って、この積層基体のGaAsの膜厚は3μm以下が好ましい。
【0101】
前述のような電子デバイスの活性層の厚さは、0.5μm程度かそれ以下である。よって、3μm以下のGaAs膜厚をもつGaAs/酸化物中間層/Si積層基体上又は基体中に、このようなデバイスの構成膜を作製すれば、良好な特性をもつSi上GaAsデバイスが得られる。
【0102】
作製例2
作製例2では、前述した作製例1と同様に、ノンドープGaAs/LaAlO3 /Si構造膜を作製する。最上面のエピタキシャル成長ノンドープGaAs膜の厚さは、0.5μmである。連続して、同一MBE成長室でn−GaAsチャネル層を厚さ0.15μmで、n+−GaAsコンタクト層を厚さ0.04μmでエピタキシャル成長させ、n+−GaAs/n−GaAs/ノンドープGaAs/LaAlO3 /Si積層基体を作製する。
【0103】
この後、通常の化合物半導体加工技術により、図5のようなMESFET素子を作製する。このような素子は、良好なトランジスタ特性を示す。
【0104】
このように、構成膜が薄いデバイスをGaAs/酸化物中間層/Si積層基体のGaAs層中に作製することで、大面積のSiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板上に、剥離やクラックがない、高い品質の高速・高周波デバイスを形成することができる。
【0105】
よって、高価なGaAs基板を用いることなく、低コストでGaAs系電子デバイスを作製できる。
【0106】
また、この電子デバイスを駆動した際に発生する熱は、主にSi基板に流れる。GaAsよりもSiの方が熱伝導率が高いので(熱伝導率;Si 1.4W/cmK、GaAs 0.54W/cmK)、GaAs基板上に形成した電子デバイスよりも高いデバイス特性が得られる。
【0107】
このように、第4の実施形態では、低コストなGaAs系電子デバイスの提供、及び、GaAs系高速・高周波デバイスとSi系デバイスの集積化が可能な高性能な要素デバイスの提供が可能となる。
【0108】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態は、第1乃至第3のいずれかの実施形態の積層基体のGaAs層上に、GaAs系デバイス構成体が直接接合されて構成されていることを特徴とする半導体デバイス(例えばSi上GaAsデバイス)である。
【0109】
この場合、積層基体のGaAsの膜厚は、後述する理由により、3.0μmを超えないことが望ましい。
【0110】
また、直接接合とは、図6に示すように、平滑な基板又は膜同士を、金属や接着材を介さずに直接重ね合わせ、界面の原子間力で結合力を生じさせるものである。大気中,室温で重ね合わせただけでも、ある程度の接合強度が得られる。この後、界面の結合をより強固にするため、熱処理するのが一般的である。
【0111】
文献「Appl.Phys.Lett.,56(1990)pp.2419−2421」に示されているとおり、GaAs単結晶同士を直接接合させた場合は、接合界面にできる中間層の厚さが1nmから4nmと薄いが、SiO2/Siなどの異種材料とGaAs単結晶を直接接合する場合は10nm以上の厚さの中間層ができる。このことは、本発明のようなGaAs単結晶同士を直接接合する場合は、SiO2/Si基板とGaAsを直接接合する場合と比較し、より容易に強固な接合が得られることを示す。
【0112】
実際的には、GaAs/酸化物中間層/Si積層基体とGaAs系デバイス構成体とを直接接合する場合は、数十℃から500℃程度で十分な接合強度が得られる。
【0113】
一方、SiO2自然酸化膜を表面に有するSi基板とGaAs系デバイス構成体とを直接接合させる場合は、500℃以上の高い熱処理温度を必要する。この場合、熱応力が大きくなることと、あらゆるGaAs系膜からAs,P,In元素などのヌケ・拡散が見られ、好ましくない。
【0114】
なお、本発明の熱処理の温度は、直接接合法を用いず、使用する積層基体上にそのままGaAs系デバイス構成体の層構造を積層する場合のプロセス温度よりも低い温度とする。この温度以下であれば、熱応力が小さい素子を作製することができる。
【0115】
また、GaAs系デバイス構成体とは、別途GaAsウェハ上にエピタキシャル成長した多層膜から作製したもので、この状態でデバイスとして完成している構成をとる場合や、Si上GaAsデバイスの完成時点にデバイスとして動作する構成の場合もある。
【0116】
また、GaAs系デバイス構成体の接合される面のGaAs層の組成は、GaAsのほかAlxGayInzPuAsv(x+y+z=1,u+v=1)を含む。ただし、本発明では、便宜上、GaAs層と表記する。
【0117】
また、Si上GaAsデバイスとは、前記のGaAs/酸化物中間層/Si積層基体とその上に設けられるGaAs系デバイス構成体を加工し、作製し、独立してデバイスとして動作するものであるとする。
【0118】
前述のように、GaAs系エピタキシャル成長膜で作製される端面発光型レーザや導波路や光スイッチ等の構成膜の厚さは2〜3μmであるのに対し、面発光レーザ(VCSEL)の構成膜の厚さは8〜15μm程度と厚い。一般に、膜を高い基板温度(GaAsでは500〜700℃)で成長させる場合、成長温度では膜応力がほとんどない状態であっても、成長が終了し室温まで試料温度を下げた時、異種材料間の熱膨張係数差により熱応力が発生する。この応力は、膜厚が大きいほど大きい。そのため、このような厚い膜の場合、容易に剥離やクラックが発生することになる。
【0119】
しかし、本発明の第5の実施形態では、すべての構成膜をエピタキシャル成長で作製する場合と比較し、デバイス構成膜のGaAs面とGaAs膜が薄いGaAs/酸化物中間層/Si積層基体のGaAs表面とを直接接合してデバイスを構成するので、プロセス温度を低くでき、よって、熱応力が少ないため、欠陥の発生が少ないSi上GaAsデバイスが得られる。
【0120】
より詳細に、Si基板上にGaAs系デバイス構成膜を直接接合する場合と比較し、接合面がGaAs面同士なので、プロセス温度を低くでき、よって、熱応力が少ないため、欠陥の発生が少ないSi上GaAsデバイスが得られる。
【0121】
さらに、この積層基体側のGaAs層が大面積で良質のエピタキシャル層なので、より接合が容易になり、接合の信頼性も高くなり、よって、信頼性の高い低コストなSi上GaAsデバイスが得られる。
【0122】
Si上GaAsデバイスを駆動した際に発生する熱は、主にGaAsより熱伝導率が高いSi基板に流れる。よって、GaAs基板上に形成したデバイスより高いデバイス特性をもつSi上GaAsデバイスが得られる。
【0123】
このように、第5の実施形態では、厚膜のGaAs系デバイスでもSi系電子デバイスと融合化することが可能な、信頼性が高く、高性能な要素デバイスの提供が可能となる。
【0124】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態は、第5の実施形態の半導体デバイスにおいて、
前記積層基体の前記酸化物中間層の少なくとも1層は、
Li,Be,Mg,Ca,Ba,Sc,Y,La,Ce,Nd,Sm,Eu,Tm,Yb,Al,Th,Ta,Sr,Ti,Zr,Hfの金属元素のうちの少なくとも1つを含み、該酸化物中間層の結晶格子の少なくとも1つの結晶面内において、構成元素のうちの1種の原子配置からなる四角形が下地の単結晶基板表面の原子配置と整合していることを特徴とする半導体デバイス(例えば、Si上GaAsデバイス)である。
【0125】
これらの酸化物中間層中の金属元素は、第1の実施形態で示したものに、特許文献1で挙げられている酸化物中に含むSr,Ti,Zr,Hfを加えたものであるが(表1)、これらの酸化物中間層をもつこの第6の実施形態の積層基体の使用目的は、GaAs系デバイス構成体を直接接合するための基体であり、特許文献1の基体、及び第1の実施形態の積層基体とは同一ではない。また、作製されるデバイス構成積層体の構成は、特許文献1の構成では対応が難しい課題を解決できる構成であり、特許文献1のものとは異なる新規な構成である。
【0126】
この第6の実施形態においても、GaAs/酸化物中間層/Si積層基体の作製方法は、第1,第2,第3の実施形態のものと同一である。
【0127】
この第6の実施形態で挙げた酸化物からなる酸化物中間層は、大面積のSiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板上に、良好にエピタキシャル成長する第1,第2の条件を満たす。よって、酸化物中間層上のGaAs系膜が大面積で良好にエピタキシャル成長する。
【0128】
ゆえに、GaAs/酸化物中間層/Si積層基体のGaAs表面上に、GaAs系デバイス構成体を、直接接合で容易に信頼性良く接合することができる。よって、容易に、適切な仕様,コストで、大面積で欠陥の少ないSi上GaAsデバイスを得ることができる。
【0129】
また、直接接合用の積層基体に用いることができる酸化膜中間層材料を示したので、酸化膜中間層材料の選択の幅を拡げることができる。よって、より適切にデバイスの設計ができるようになり、より低コストなSi上GaAsデバイスが得られる。
【0130】
このように、第6の実施形態では、確実に、厚膜のGaAs系デバイスでもSi系電子デバイスと融合化が可能になる要素デバイスの提供が可能となる。
【0131】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態は、第6の実施形態の半導体デバイスにおいて、
積層基体中の酸化物中間層の少なくとも1層は、
MgO、MgAl2O4、MgTi2O4、Mg2TiO4、CaTiO3、γ−Al2O3、TiO、TiO2、SrO、SrCeO3、BaO、BaCeO3、BaThO3、BaTiO3、LaAlO3、LaTiO3、CeO2、ThO2、Li0.5Al2.5O4、Li1.33Ti1.67O4、LiAlTiO4、LiTiO2、SrHfO3、SrTiO3、SrZrO3、BaZrO3、または、SrxBa1−xTiO3からなることを特徴とする半導体デバイス(例えばSi上GaAsデバイス)である。
【0132】
これらの酸化物は、第2の実施形態で示したものに、特許文献1で挙げられている酸化物を加えたものであるが(表3を参照)、特許文献1の基体、及び第1,第2の実施形態の積層基体とは同一ではない。
【0133】
【表3】
【0134】
この第7の実施形態においても、GaAs/酸化物中間層/Si積層基体の作製方法は、第1,第2,第3の実施形態のものと同一である。
【0135】
この第7の実施形態では、GaAs/酸化物中間層/Si積層基体の酸化物中間層をエピタキシャル成長させる酸化物を明示しているので、より容易に適切な仕様,コストで、大面積で良好な結晶品質をもつ直接接合用GaAs/酸化物中間層/Si積層基体を得ることができる。よって、より容易に、適切な仕様,コストで、大面積で欠陥の少ないSi上GaAsデバイスを得ることができる。
【0136】
また、直接接合用の積層基体に用いることができる酸化膜中間層材料を明確に示したので、酸化膜中間層材料の選択の幅をひろげることができる。よって、より適切にデバイスの設計ができるようになり、より低コストなSi上GaAsデバイスが得られる。
【0137】
このように、第7の実施形態では、より確実に、厚膜のGaAs系デバイスでもSi系電子デバイスと融合化が可能になる要素デバイスの提供が可能となる。
【0138】
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態は、第6または第7の実施形態の半導体デバイスにおいて、前記積層基体中の単結晶基板と酸化物中間層との間に、非晶質SiO2層が設けられていることを特徴とする半導体デバイス(例えば、Si上GaAsデバイス)である。
【0139】
この第8の実施形態においても、GaAs/酸化物中間層/非晶質SiO2/Si積層基体の作製方法は、第1,第2,第3の実施形態のものと同一である。
【0140】
この第8の実施形態では、直接接合用GaAs/酸化物中間層/Si積層基体の酸化物中間層とSi基板との間に、SiO2層が設けられているので、デバイスの応力を緩和でき、直接接合法をとることで得られる効果(すなわち、応力を減少させる効果)をさらに高めることができる。よって、大面積でより欠陥の少ないSi上GaAsデバイスを得ることができる。
【0141】
このように、第8の実施形態では、厚膜のGaAs系デバイスでもSi系電子デバイスと融合化することが可能な、より信頼性が高く、より高性能な要素デバイスの提供が可能となる。
【0142】
(第9の実施形態)
本発明の第9の実施形態は、第6乃至第8のいずれかの実施形態の半導体デバイスにおいて、該半導体デバイスはGaAs系光デバイスであることを特徴とする半導体デバイス(例えば、Si上GaAsデバイス)である。
【0143】
ここで、GaAs系光デバイスとは、GaAs系半導体レーザ,GaAs系LEDなどの発光デバイス、GaAs系受光デバイス、GaAs系変調器、GaAs系光スイッチ、GaAs系導波路等を指す。
【0144】
この第9の実施形態では、半導体デバイスが光デバイスなので、構成膜の厚さが大きい。これらのデバイスを、直接接合を用いて作製することにより、デバイスの欠陥を少なくし、歩留まりを向上させる効果がより大きく現れる。よって、Si基板上に欠陥の発生が少ないSi上GaAs光デバイスが容易に得られる。
【0145】
また、他の接合法と比較し、高さの位置精度良く、強固に、Si基板上に構築することが可能になるので、発光デバイス、受光デバイス、光スイッチ、変調器、導波路などの光デバイス間や光デバイスとファイバーとの整合が容易になる。よって、GaAs系光デバイスとSi系電子デバイスの融合化集積化に適するSi上GaAsデバイスが得られる。
【0146】
このように、第9の実施形態では、GaAs系光デバイスとSi系電子デバイスの融合化が可能な要素デバイスの提供が可能となる。
【0147】
(第10の実施形態)
本発明の第10の実施形態は、第9の実施形態の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、端面発光レーザであることを特徴とする半導体デバイス(例えば、Si上GaAsデバイス)である。
【0148】
端面発光レーザの構成を、代表的なSCH(Separate Confinement Heterostructure)構造で説明する。SCH構造の端面発光レーザは、図7に示すように、GaAs基板上に、下部クラッド層、下部ガイド層、活性層、上部ガイド層、上部クラッド層膜、コンタクト層が設けられ、低い屈折率のクラッド層によりガイド層に光が閉じ込められ、バンドギャップが小さい活性層にキャリアが閉じ込められ発光するようになっている。なお、へき開面等からなる2枚ミラーにより膜面方向に光共振器が形成される。また、キャリアは、コンタクト層と基板から注入される構成をとる。
【0149】
GaAs基板上に作製できる端面発光レーザでの、活性層−クラッド層の組み合わせの例として、次の第1,第2の例のようなものが挙げられる。
【0150】
第1の例
Ga1−xAlxAs−Ga1−yAlyAs (x<y) (発振波長 0.7〜0.9μm)
【0151】
第2の例
InGaP−InGaAlP (発振波長 0.66〜0.69μm)
【0152】
このような半導体膜の成長法としては、例えば、MOCVD法,MBE法,CBE法などが挙げられる。
【0153】
第10の実施形態では、このような端面発光レーザのデバイス構成体ウェハ、または、このようなウェハをへき開等により分離した一個以上のデバイス構成体を含む基体と、第6,第7,第8の実施形態に示すGaAs/酸化物中間層/Si積層基体とを直接接合する。
【0154】
図8には、端面発光レーザデバイス構成体のGaAs基板の裏面と積層基体のGaAs面とを接合する場合が示されている。
【0155】
端面発光レーザデバイス構成体のGaAs基板の裏面と積層基体のGaAs面とを接合した後、通常の半導体プロセスでSi上GaAs端面発光レーザを形成することができる。なお、端面発光レーザのデバイス構成体ウェハとGaAs/酸化物中間層/Si積層基体とを直接接合する場合は、ドライエッチング等により共振器ミラー面を形成する。
【0156】
端面発光レーザは、光出力方向が膜面と平行であるため、Siウェハを基材とするGaAs/酸化物中間層/Si積層基体に直接接合した場合、端面発光レーザと、受光素子,光スイッチ,変調器,導波路,ファイバー等の他の機能素子との光軸の整合が容易となり、平面で配列,集積することが容易となる。よって、Si−LSIのチップ内,チップ間光伝送用光源、ボード内,ボード間光伝送用光源に特に適し、それらのデバイスを高集積化,高性能化できる。
【0157】
このように、第10の実施形態では、基板と平行な面での光接続に向き、GaAs系光デバイスとSi系電子デバイスの融合化が可能な要素デバイスの提供が可能となる。
【0158】
(第11の実施形態)
本発明の第11の実施形態は、第9の実施形態の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、面発光レーザ(VCSEL)であることを特徴とする半導体デバイス(例えば、Si上GaAsデバイス)である。
【0159】
面発光レーザは、図9に示すように、半導体基板と垂直方向にレーザ共振器を構成し、光を基板と垂直に出射する構成をとる。すなわち、基板と表面に1つづつミラーが設けられ、これらは、高反射率の半導体多層膜反射鏡(半導体DBR)や誘電体多層膜反射鏡(誘電体DBR)や金属反射鏡からなっている。そして、これらの反射鏡の間に活性層が設けられている。そして、活性層と2つの反射鏡との間に、上下2つのスペーサ層が設けられている。さらに、活性層近傍に電流と光を閉じ込める必要があるため、及び、高速変調では寄生容量を低減する必要があるため、レーザ構造としては半導体柱構造をとり、且つ、活性層近傍に電流狭窄する構造を設ける場合が一般的である。
【0160】
このように、面発光レーザ素子は、活性層体積を小さくできることから、低いしきい値電流,低い消費電力で駆動できる。また、共振器のモード体積が小さいため、数十GHzの変調が可能であり、高速伝送に向く。また、出射光の広がり角が小さく、光ファイバへの結合が容易である。さらに、面発光レーザは、作製にへき開を必要とせず、素子面積も小さいので、並列化及び2次元高密度アレイ化が可能である。
【0161】
面発光レーザは、これらの利点をもつため、近年、益々、伝送する情報が高速,大容量になっている光通信システムの分野、及び、コンピューター間,チップ間,チップ内の高速データ伝送が可能な光インターコネクションの分野において、キーデバイスになると考えられている。
【0162】
ここで、基板側のミラー層(下部ミラー層)は、基板上にエピタキシャル成長できるので、良質な膜が得られることから、半導体DBRが好ましく、GaAs基板上に、AlAs/GaAs,AlAs/AlGaAs,AlGaAs/GaAs,GaInP/GaAsなどの多層膜を設けて形成することができる。
【0163】
また、素子の表面側のミラー層(上部ミラー層)は、半導体DBRや誘電体DBRや金属反射鏡で形成することができる。
【0164】
半導体DBRの例としては、AlAs/GaAs,AlAs/AlGaAs,AlGaAs/GaAs,GaInP/GaAsなどが挙げられる。
【0165】
また、誘電体DBRの例としては、ZrO2/SiO2,MgO/SiO2,MgO/Si,Al2O3/MgF2などが挙げられる。
【0166】
また、金属反射鏡の例としては、Au,Al,Pt,Pd,Ag,Ni,Cr,Tiやそれらの合金などが挙げられる。
【0167】
誘電体膜と金属膜の成長法としては、例えば、電子ビーム蒸着法,スパッタリング法,抵抗加熱法,CVD法(chemical vapor deposition)などが挙げられる。
【0168】
また、面発光レーザの活性層と基板(活性層/基板)としては、GaInNAs/GaAs(1.3μm帯,1.55μm帯)、GaInAs/GaAs(0.98μm帯)、GaAlAs/GaAs(0.85μm帯)、AlGaInP/GaAs(0.65μm帯)などが挙げられる。
【0169】
また、2つのスペーサ層は、キャリアを活性層まで輸送して共振器長を調節する働きをし、発光する光に透明である必要があり、活性層材料により、GaAs,GaInAsP,AlGaInP,GaInPなどから選択される。
【0170】
第11の実施形態では、図10に示すように、このような面発光レーザのデバイス構成体ウェハ、または、このようなウェハをへき開等により分離した1個以上のデバイス構成体を含む基体と、第6,第7,第8の実施形態に示すGaAs/酸化物中間層/Si積層基体とを直接接合する。この場合、面発光レーザのGaAs基板の裏面と積層基体のGaAs表面同士を接合する場合もあり、両方又はどちらか一方をエッチング加工等で面発光レーザの構成膜中のGaAsと積層基体の内部のGaAs面を接合する場合もある。
【0171】
このように接合した後、通常の半導体プロセスでSi上GaAs面発光レーザを形成することができる。
【0172】
面発光レーザは、光出力方向が膜面に垂直であり、低電力で駆動でき、高周波特性がよく、光ファイバとの結合性がよいため、Si−LSIのチップ間,チップ内間光伝送用光源、ボード間,ボード内光伝送用光源に特に適し、それらのデバイスを高集積化,高性能化できる。
【0173】
また、面発光レーザは、共振器ミラーを形成するのにへき開を必要としないため、面発光レーザのデバイス構成体ウェハとGaAs/酸化物中間層/Si積層基体ウェハとを直接接合し、その後、通常の半導体プロセスで一括してウェハ上にSi上GaAs面発光レーザを形成することが可能になる。
【0174】
このように、第11の実施形態では、基板と垂直方向での光接続に向き、低コストで作製できる、GaAs系光デバイスとSi系電子デバイスの融合化が可能な要素デバイスの提供が可能となる。
【0175】
(第12の実施形態)
本発明の第12の実施形態は、第10の実施形態の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、GaInNAsを活性層に含む端面発光デバイスであることを特徴とする半導体デバイス(例えば、Si上GaAsデバイス)である。
【0176】
近年になり急速に注目され出した長波長帯(例えば、1.1μm以上の波長帯)のGaInNAs系材料を活性層に用いたレーザは、発振波長が長波長帯なので、石英系ファイバとの整合性が高い。
【0177】
さらに、GaAs基板上に形成できるので、スペーサ層等の活性層周りの層にワイドバンドギャップ材料を選択できて、キャリアの閉じ込めが良好になり、温度特性が高い。このため、InP基板上に形成するGaInAsPを活性層とする従来の長波長帯レーザの場合と異なり、冷却装置を必要としない。
【0178】
GaInNAs系材料は、NとAsを含むIII−V族混晶半導体で構成されており、具体的には、GaNAs、GaInNAs、GaInAsSb、GaInNP、GaNP、GaNAsSb、GaInNAsSb、InNAs、InNPAsなどで構成される。
【0179】
一般的なGaInNAs系発光デバイスを端面発光型レーザと面発光型レーザの例で説明する。
【0180】
先ず、GaInNAs膜を活性層するSCH型レーザー素子の場合で、端面発光型レーザの構成例を示す。この端面発光型レーザは、GaAs単結晶基板上に、n−AlGaAsやn−GaInPのクラッド層、GaAsやGaInPのガイド層、GaInNAs活性層、GaAsやGaInPのガイド層、p−AlGaAsやp−GaInPのクラッド層を順次設け、p−電極部、n−電極部を設け、へき開により膜面に平行な共振器を形成し、作製することができる。このような端面発光型レーザでは、p−クラッド層とn−クラッド層に、それぞれ正孔と電子を注入し、活性層で発光させる。
【0181】
また、第10の実施形態と同様な工程で、Si上GaInNAs系端面発光レーザを作製することができる。
【0182】
この第12の実施形態では、GaInNAs系材料を活性層に含む端面発光レーザの発振波長が長波長帯なので、レーザ光はSi中やGaAs中をほとんど吸収されずに透過できる。また、ファイバー中も吸収・散乱がほとんどなく伝播できる。また、GaInNAs系材料は温度特性が良好であり、さらに、基板がSiなので、放熱性が優れる。このため、第10の実施形態の作用効果に次の点が加えられる。
【0183】
すなわち、第12の実施形態では、平面内の実装精度が高くなり、また、Si基板を通した光接続が可能になるので、Si−LSI中のチップ内,チップ間,ボード内,ボード間の光接続がさらに容易になる。よって、それらのデバイスをさらに高速化,高集積化,高性能化できる。
【0184】
また、整合性良く高密度に実装でき、且つ、冷却器が不要となるため、長中距離光伝送光源の高集積化・簡便化が可能になる。
【0185】
このように、第12の実施形態では、基板と平行な面での光接続と基板を通しての光接続に向き、GaAs系光デバイスとSi系電子デバイスの融合化が可能な要素デバイスの提供が可能となる。
【0186】
(第13の実施形態)
本発明の第13の実施形態は、第11の実施形態の半導体デバイス(例えば、Si上GaAsデバイス)において、GaAs系光デバイスは、GaInNAsを活性層に含む面発光デバイスであることを特徴としている。
【0187】
GaInNAs膜をウェル層としGaAsをバリア層とする量子井戸構造(QW)活性層の面発光型レーザの一般的な構成例は、GaAs単結晶基板上に、n−AlGaAs/n−GaAsなどの35ペア程度からなる半導体多層膜反射鏡、n−GaAs、n−GaInP、n−AlGaAsなどのスペーサ層、GaInNAs/GaAs 量子井戸(QW)活性層、p−GaAs、p−GaInP、p−AlGaAsなどのスペーサ層、p−GaInP/p−GaAsなどの30ペア程度からなる半導体多層膜反射鏡を順次設けたものとなっている。さらに、活性層近傍にAlAs膜を酸化して絶縁性のAlxOy膜を形成したり、この活性層近傍にプロトンや酸素イオンのインプランテーション等により絶縁領域を形成して、電流狭窄部を設ける場合もある。そして、p−電極部,n−電極部を形成して、膜面に垂直な共振器構造をもつ面発光型レーザを作製することができる。
【0188】
このような面発光型レーザでは、p−半導体多層膜反射鏡とn−半導体多層膜反射鏡に、それぞれ正孔と電子を注入し、活性層で発光させる。
【0189】
このようなSi上GaInNAs系面発光レーザは、第10の実施形態と同様な工程で作製することができる。
【0190】
この第13の実施形態では、前述のように、GaInNAs系材料を活性層に含む面発光レーザの発振波長が長波長帯なので、レーザ光はSi中やGaAs中をほとんど吸収されずに透過できる。また、基板と垂直方向に光が出力される。このため、第11の実施形態の作用効果に次の点が加えられる。
【0191】
すなわち、この第13の実施形態では、Si−LSI中のチップ間,チップ内,ボード間,ボード内の光接続がさらに容易になる。特に、それらの基板を通した光接続が容易になる。それらのデバイスの高速化,高集積化,高性能化できる。
【0192】
このように、第13の実施形態では、基板と垂直方向での光接続に向き、さらには基板を通しての光接続に向き、低コストで作製できるGaAs系光デバイスとSi系電子デバイスの融合化が可能な要素デバイスの提供が可能となる。
【0193】
(第14の実施形態)
本発明の第14の実施形態は、第9乃至第13のいずれかの実施形態の半導体デバイスの単結晶基板の表面,裏面,または内部において、GaAs系光デバイスが出力する光の光路上に、光学素子が設けられていることを特徴とする光半導体デバイス(例えば、Si上GaAs光デバイス)である。
【0194】
この第14の実施形態では、図11(a),(b),(c)に示すように、Si基板を加工して、又は、Si基板と一体で、マイクロレンズ、回折レンズ、ミラー及び導波路等の光学素子を設ける。これらの光学素子は、現状のマイクロマシニング技術により容易に作製できる。
【0195】
第14の実施形態では、Si基板にこれらの光学素子を設けることにより、Si−LSI中のチップ間,チップ内,ボード間,ボード内の光接続がさらに容易になり、それらのデバイスをさらに高集積化,高性能化,高機能化,多機能化することができる。
【0196】
このように、第14の実施形態では、基板を通しての光接続に向き、高機能化,多機能化が容易な光電融合要素デバイスの提供が可能となる。
【0197】
(第15の実施形態)
本発明の第15の実施形態は、図12に示すように、第1乃至第3のいずれかの実施形態の積層基体に、第9乃至第13のいずれかの実施形態の光半導体デバイス(例えば、複数のGaAs系光デバイス)が、直接接合されていることを特徴とする光半導体デバイス(例えば、集積化Si上GaAs光デバイス)である。
【0198】
すなわち、例えば、Si上GaAs系光デバイス構成体を形成したGaAsウェハ、または、複数のGaAs系光デバイス構成体を含む基板と、GaAs/酸化物中間層/Si積層基体を設けたウェハとを、直接接合し、その後、デバイス加工を行うことにより、複数のSi上GaAs系光デバイスを容易に形成できる。
【0199】
または、複数のGaAs系光デバイス構成体を含む基板を、一括して直接接合することが可能になる。また、この場合、他のGaAs系機能デバイスも同時に接合することができる。よって、容易に高性能多機能集積化Si上GaAs系光デバイスが得られる。
【0200】
この第15の実施形態では、低コストで高性能多機能集積化光電融合Si上GaAsデバイスを得ることができる。
【0201】
すなわち、従来のように、はんだバンプや樹脂接着剤により接合する方法は、これらの接合材の耐熱性と耐食性が低いため、接合後は、熱処理,エッチング等のプロセスを行うことができない。よって、これらの場合は、接合前にデバイス構成がほとんど完成している必要があり、デバイス構成と作製プロセスが限定される。また、位置精度に限界がある。
【0202】
これに対し、第15の実施形態では、積層基体に、直接接合でGaAs系光デバイスを接合する構成なので、容易に、一括して、複数のGaAs系光デバイスを積層基体上に位置精度良く搭載することができる。よって、低コストで高性能多機能集積化光電融合Si上GaAsデバイスを得ることができる。
【0203】
(第16の実施形態)
本発明の第16の実施形態は、第9乃至第13のいずれかの実施形態の半導体デバイス(例えば、Si上GaAsデバイス)、または、第14または第15の実施形態の光半導体デバイス(例えば、集積化Si上GaAsデバイス)を備えていることを特徴とする光伝送システムである。
【0204】
図13は、本発明のSi上GaAsデバイスまたは集積化Si上GaAsデバイスを用いた並列伝送方式光伝送システムの一例を示す図である。図13の並列伝送方式光伝送システムでは、GaAs系発光デバイスからの信号を複数のファイバを用いて同時に伝送することが可能となっている。
【0205】
また、図14は、本発明のSi上GaAsデバイスまたは集積化Si上GaAsデバイスを用いた多波長伝送方式光伝送システムの一例を示す図である。図14の多波長伝送方式光伝送システムでは、発振波長の異なる複数のGaAs系発光デバイスからの光信号が、それぞれ光ファイバを介して光合波器に導入される。この波長の異なる複数の光信号は合波器で合波され、1本の光ファイバ中に導入され伝送される。伝送された光信号は、伝送先の機器に接続されている光分波器を通って元の波長の異なる複数の光信号に分離され、それぞれファイバを介して複数の受光素子に達する。
【0206】
この第16の実施形態では、本発明のSi上GaAsデバイスまたは集積化Si上GaAsデバイスを搭載して光伝送システムを構成しているので、より低コストで、高速,高機能,高性能なデータ伝送システムを得ることができる。
【0207】
(第17の実施形態)
本発明の第17の実施形態は、第6乃至第13のいずれかの実施形態の半導体デバイス(例えば、Si上GaAsデバイス)、または、第14または第15の実施形態の光半導体デバイスの単結晶基板中または単結晶基板上(例えば、Si基板中又はSi基板上に)に電子回路(例えば、Si電子回路)が設けられていることを特徴とする光電子融合デバイス(例えば、光電子融合集積回路)である。
【0208】
図15には、光電子融合集積回路の構成例が示されている。
【0209】
Si電子回路は、集積回路であることが望ましく、図15の例では、GaAsデバイスを駆動する回路、論理演算回路、メモリー回路、信号処理回路、光検出器などからなり、従来のSi−LSI製造技術を主体にした技術で作製される。
【0210】
また、GaAsデバイスは、半導体レーザ,LEDのほか、光スイッチ,光変調器,導波路などからなる。
【0211】
この第15の実施形態では、Si基板に電子回路を設けているので、光電子融合集積回路が作製でき、高速、大容量のデータ処理・データ通信能力をもつ光電子融合デバイスが実現できるようになる。
【0212】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0213】
(実施例1)
実施例1は、図16に示すように、Si基板上にGaAs MESFETを作製する例である。
【0214】
実施例1では、先ず、6インチSi(100)基板を、H2SO4/H2O2/H2O dip処理する。次に、HF水溶液中にdipする。
【0215】
次に、この試料をMBE装置に入れ、2×10−8 Paの超高真空中で基板温度750℃に加熱し、Si基板表面を清浄化する。
【0216】
次いで、基板温度600℃でAlを数原子層相当、基板に付着させる。この時点で、Si上のO原子は、付着したAlに吸収され、Si基板表面は還元される。
【0217】
この後、La2O3とAlの分子線を入射させながら、N2Oガスを分圧が5×10−5 Paになるように導入する。この時点で、Si基板上には、O原子がやや不足しているLaAlO3 (100)構造膜が厚さ10nmでエピタキシャル成長する。
【0218】
この後、基板温度600℃でN2Oガスを分圧が2×10−4 Paになるように導入する。この時点で、LaAlO3 (100)構造膜は化学量論的組成になり、さらに、LaAlO3 /Si基板の間に応力緩衝層となるSiO2層が厚さ3nm成長する。
【0219】
次に、このLaAlO3/Si基板試料を、別のMBE成長室に搬送し、GaとAsの分子線を入射させ、non−dope GaAs層を厚さ1.5μmにエピタキシャル成長させる。
【0220】
続いて、基板温度550℃で、GaとAsとSiの分子線を入射させながら、厚さ15nmでドープ量7×1017cm−3のGaAs活性層と厚さ40nmでドープ量6×1018cm−3のGaAsコンタクト層をエピタキシャル成長させ、大面積で欠陥の少ないn+−GaAs/n−GaAs/ノンドープGaAs/LaAlO3 /SiO2緩衝膜/Si積層基体が得られる。
【0221】
続いて、通常の化合物半導体加工技術を用い、次の手順でMESFETを作製する。すなわち、H2SO4/H2O2/H2Oを用いてGaAs層をエッチングし、素子分離を行う。次いで、リフトオフ法により、AuGe/Ni/Au ソース、ドレイン電極を作製する。次いで、HBr/HNO3/H2Oを用いてリセスエッチングを行い、ゲート周辺のコンタクト層をエッチングする。次いで、リフトオフ法により、Ti/Pt/Auゲート電極を作製する。
【0222】
この各電極に電流,電圧を印加すると、MESFETは良好なトランジスタ特性を示す。
【0223】
この実施例1では、La,Alを含む酸化物からなり、Si格子整合性の良好なLaAlO3中間層を用いているので、大面積で、欠陥が少ない、良好な結晶品質をもつGaAs積層膜を有する積層基体が得られる。
【0224】
そのため、高価なGaAs基板を用いないで、良好なトランジスタ特性をもつGaAs MESFETが得られる。
【0225】
また、実施例1では、基板がSiなので、レーザ発振部からの熱は主にSi基板に流れる。GaAsよりもSiの方が熱伝導率が高いので、GaAs基板上に形成した素子よりも高いトランジスタ特性が得られる。
【0226】
また、実施例1では、高速・高周波特性の良いMESFETと、Si−LSIの集積が可能な要素デバイスが得られる。
【0227】
(実施例2)
実施例2は、Si基板上にGaInNAs系端面発光レーザを作製する例である。
【0228】
実施例2では、まず、MOCVD法により、図17に示すように、GaInNAs活性層のGaAs系デバイス構成体を形成する。
【0229】
すなわち、non−dope GaAs基板上に、non−dope GaAsバッファ層(厚さ100nm)、non−dope AlAs層(厚さ200nm)、non−dope GaAs直接接合層(厚さ100nm)、n−GaInPクラッド層(厚さ1.3μm)、non−dope GaAsガイド層(厚さ130nm)、non−dope GaAsをバリア層(厚さ8nm)とするGaInNAs2重量子井戸構造活性層(GaInNAs/GaAs DQW)、non−dope GaAsガイド層(厚さ130nm)、p−GaInPクラッド層(厚さ1.3μm)、p+−GaAs コンタクト層(厚さ300nm)を順次積層し、
p+−GaAs /p−GaInP/non−dope GaAs/[GaInNAs/GaAs DQW]/non−dope GaAs/n−GaInP/non−dope GaAs/non−dope AlAs/non−dopeGaAs/non−dope GaAs基板のレーザ構造積層膜を形成する。
【0230】
なお、ソース原料は次のとおりである。
Ga原料は、(CH3)3Ga:TMGである。
In原料は、(CH3)3In:TMIである。
P原料は、PH3:ホスフィンである。
As原料は、AsH3 :アルシンである。
N原料は、H2(CH3)2N2 :ジメチルヒドラジンである。
Al原料は、(CH3)3Al:TMAである。
n型ドープ原料は、SeH2である。
p型ドープ原料は、CBr4である。
【0231】
このレーザ構造積層膜を共振器長(500μm)の幅で板状にへき開し、棒状レーザ構造積層膜を形成する。この棒状レーザ構造積層膜の積層膜表面を,セラミック板にワックスで貼りつける。
【0232】
これをBHFにdipして、non−dope AlAsを選択エッチングして、棒状GaAs系デバイス構成体からノンドープGaAsバッファ層/ノンドープGaAs基板を除去し、棒状GaAs系デバイス構成体を形成する。
【0233】
また、これとは別プロセスで、GaAs/酸化物中間層/SiO2緩衝膜/Si積層基体を作製する。
【0234】
すなわち、6インチSi(100)基板を、実施例1と同様にMBE装置に入れ、清浄化処理を行う。
【0235】
そして、基板温度600℃で、Tiを数原子層相当、基板に付着させる。この時点で、Si上のO原子は、付着したTiに吸収され、Si基板表面は還元される。
【0236】
この後、CaOとTiの分子線を入射させながら、O2ガスを分圧が1×10−4 Paになるように導入する。この時点で、Si基板上にはO原子がやや不足しているCaTiO3 (100)構造膜が厚さ10nmでエピタキシャル成長する。
【0237】
この後、基板温度600℃でO2ガスを分圧が1×10−4 Paになるように導入する。この時点で、CaTiO3 (100)構造膜は化学量論的組成になり、さらに、CaTiO3 /Si基板の間に応力緩衝層となるSiO2層が厚さ2nmで成長する。
【0238】
次に、このCaTiO3 /SiO2/Si基板を、別のMBE成長室に搬送し、GaとAsの分子線を入射させ、non−dope GaAs層を厚さ0.5μmにエピタキシャル成長させる。これにより、図18に示すようなnon−dope GaAs/CaTiO3 /SiO2/Si積層基体が得られる。
【0239】
次に、図19に示すように、室温で、積層基体と、前述の棒状GaAs系デバイス構成体のnon−dope GaAs面とを、直接接合で接続する。直接接合の前処理では、酸洗浄後、水洗する。このとき、これらの試料の表面は、僅かに水分が吸着しているようにする。接合時の荷重は3kg/cm2程度である。この後、ワックスを溶かしセラミックス板から分離し洗浄した後、荷重をかけながらH2雰囲気中で、250℃,3時間ほど熱処理を行う。
【0240】
この後、へき開面をレジストで被覆する。次に、GaAs層はH2SO4/H2O2/H2O液、GaInP層はHCl/H2O液を用いて、p−GaInPの上面までエッチングし、リッジストライプを形成する。
【0241】
HCl/H2O液とH2SO4/H2O2/H2O液を用いて素子間のGaInPとGaAs層をエッチングし素子分離する。へき開面を被覆していたレジストを有機溶剤で除去する。このようにして、図20に示すような構造の端面発光レーザを作製することができる。
【0242】
最後に、p側ZnAu/Au電極をp+−GaAsコンタクト層上に形成し、また、n側GeAu/Ni/Au電極をn−GaInP層上に形成し、光電子融合要素デバイスを作製する。このデバイスでは、各電極から電流を注入し、レーザ発振させることができる。ここで、レーザ光はSi基板と平行に出力される。
【0243】
この実施例2のデバイスでは、基板がSiなので、レーザ発振部からの熱は主にSi基板に流れる。GaAsよりもSiの方が熱伝導率が高いので、GaAs基板上に形成したレーザよりも高いレーザ特性が得られる。
【0244】
また、実施例2のデバイスでは、直接接合を用いるので、膜面に平行に光出力する端面発光レーザを容易に位置精度良く、特に発光部の高さを位置精度良く、高い接合強度でSi上に設けることができる。これにより、光デバイスの平面集積化に適用性の高い、特にチップ間伝送に適用性が高い、光電子融合要素デバイスが得られる。
【0245】
また、実施例2では、CaとTiを含む酸化物からなり、Si格子整合性の良好なCaTiO3 中間層を用いているので、大面積で、欠陥が少ない、良好な結晶品質をもつGaAs積層膜を有するGaAs/CaTiO3/SiO2/Si積層基体が得られる。よって、GaInNAs系端面発光レーザGaAs系デバイス構成体と低温で良好に直接接合できる。
【0246】
また、実施例2のデバイスは、GaInNAs系端面発光レーザなので、温度制御装置が不要になり、これによって、より集積度が高い光電子融合要素デバイスが得られる。
【0247】
また、実施例2のデバイスは、GaInNAs系レーザなので、光ファイバと整合性が良く、これにより、光インターコネクションに適用性の高い光電子融合要素デバイスが得られる。
【0248】
(実施例3)
実施例3は、Si基板上にGaInNAs系面発光レーザを作製する例である。
【0249】
実施例3では、まず、MOCVD法により、図21に示すように、GaInNAs活性層のGaAs系デバイス構成体を形成する。
【0250】
すなわち、MOCVD法により、non−dope GaAs(100)基板上に、non−dope GaAsバッファ層(厚さ100nm)/non−dope AlAs犠牲層(厚さ150nm)/n+−GaAs 直接接合層(厚さ96nm)/n−AlGaAs/n−GaAsの35.5ペアからなる下部DBR(全厚6.8μm)、non−dope GaAs下部スペーサ層(厚さ191nm)、GaInNAs/GaAs 2重量子井戸活性層、GaAs上部スペーサ層(厚さ191nm)、AlAs選択酸化層(厚さ30nm)、p−AlGaAs/p−GaAsの28.5ペアからなる上部DBR(全厚5.5μm)を順次成長させ、
[p−AlGaAs/p−GaAs DBR]/p−dope AlAs/non−dope GaAs/[GaInNAs/GaAs DQW]/non−dope GaAs/ /[n−AlGaAs/p−GaAsDBR]/non−dope AlAs/n+−GaAs/non−dope AlAs/non−dope GaAs/non−dope GaAs基板
からなるレーザ構造積層膜を形成する。
【0251】
なお、上部DBRの最上層のGaAs層に、Cを2.0×1018cm−3ドープし、上部コンタクト層を兼ねる構成にする。
【0252】
つづいて、図22に示すように、フォトリソ工程でフォトレジストマスクパターンを上記コンタクト層上に形成し、Cl2ガスを用いるドライエッチングを行い、半導体柱を形成する。半導体柱の低部は、下部DBR中になるようにする。
【0253】
次に、H2O蒸気により400℃で、上記AlAs選択酸化層を25μm2のAlAs層を残して酸化し、電流狭窄構造を作製する。
【0254】
次に、感光性ポリイミド前駆体を塗布し、ホトリソグラフィーにより半導体柱上面のコンタクト層の縁を残した領域のポリイミド前駆体を除去した後、キュアし、ポリイミド保護膜を形成する。
【0255】
次に、試料表面にp側Cr/AuZn/Au電極を蒸着した後、リフトオフ法により、半導体柱上面の光出力部を開口した電極部を形成し、N2雰囲気中で400℃でアロイングする。
【0256】
このウェハ試料を、必要な素子を含むようにへき開により分離する。この分割した板状試料をセラミック板にワックスで貼りつける。
【0257】
これをBHFにdipして、non−dope AlAs犠牲層を選択エッチングして、GaAs系デバイス構成体からnon−dope GaAsバッファ層/non−dope GaAs基板を除去し、GaAs系デバイス構成体を形成する。
【0258】
また、これとは別プロセスで、GaAs/SrTiO3/SiO2緩衝膜/Si積層基体を作製する。
【0259】
すなわち、6インチSi(100)基板を、実施例1と同様にMBE装置に入れ、清浄化処理を行う。
【0260】
そして、基板温度600℃でTiを数原子層相当、基板に付着させる。この時点で、Si上のO原子は、付着したTiに吸収され、Si基板表面は還元される。
【0261】
この後、SrとTiの分子線を入射させながら、O2ガスを分圧が2×10−4 Paになるように導入する。この時点で、Si基板上にはO原子がやや不足しているSrTiO3 (100)構造膜が厚さ10nmでエピタキシャル成長する。
【0262】
この後、基板温度600℃でO2ガスを分圧が4×10−4 Paになるように導入する。この時点で、SrTiO3 (100)構造膜は化学量論的組成になり、さらに、SrTiO3 /Si基板の間に応力緩衝層となるSiO2層が厚さ2nmで成長する。
【0263】
次に、このSrTiO3 /SiO2/Si基板を、別のMBE成長室に搬送し、GaとAsとSiの分子線を入射させ、n−GaAs層を厚さ0.5μmにエピタキシャル成長させる。これにより、図23に示すようなn−GaAs/SrTiO3/SiO2/Si積層基体が得られる。
【0264】
次に、図24に示すように、実施例2と同じ条件で、n−GaAs/SrTiO3/SiO2/Si積層基体のn−GaAs表面と前述のGaAs系デバイス構成体のn−GaAs表面とを、直接接合で接続する。
【0265】
この後、n−DBR層,2層のn−GaAs層を、H2SO4/H2O2/H2O液でエッチングして素子分離を行う。つづいて、同様に、n側電極部を形成するため、n−GaAs/SrTiO3/SiO2/Si積層基体のn−GaAs膜中までエッチングする。
【0266】
最後に、リフトオフ法によりn側 GeAu/Ni/Au電極を形成し、N2雰囲気中400℃でアロイングし、図25に示すようなSi上GaAs系光デバイスを作製することができる。
【0267】
この実施例3のデバイスでは、各電極から電流を注入し、レーザ発振させる。レーザ光は、Si基板と垂直で表面方向に出力される。
【0268】
なお、n側電極から注入される電流は、直接接合した界面を通るが、この界面では良好に電流が流れる。この理由は次のように考えられる。前述の文献「Appl.Phys.Lett.,56(1990)pp.2419−2421」では、GaAs/GaAs接合界面では1〜4nmの非晶質領域が生成し、それ以外の領域では単結晶構造のままであることが示されている。本実施例の場合も、同様の界面構造をもつと思われる。このため、キャリアは容易に通りぬけると考えられる。
【0269】
この実施例3のデバイスでは、基板がSiなので、レーザ発振部からの熱は主にSi基板に流れる。GaAsよりもSiの方が熱伝導率が高いので、GaAs基板上に形成したレーザよりも高いレーザ特性が得られる。
【0270】
また、実施例3のデバイスでは、SrとTiを含む酸化物からなり、Si格子整合性の良好なSrTiO3 中間層を用いているので、大面積で、欠陥が少ない、良好な結晶品質をもつGaAs積層膜を有するGaAs/SrTiO3/SiO2/Si積層基体が得られる。よって、GaInNAs系面発光レーザGaAs系デバイス構成体と低温で良好に直接接合できる。
【0271】
また、実施例3のデバイスでは、直接接合を用いるので、膜面に垂直に光出力する面発光レーザを、容易に位置精度良く、高い接合強度でSi上に設けることができる。これにより、光デバイスの平面集積化に適用性の高い光電子融合要素デバイスが得られる。
【0272】
また、実施例3のデバイスは、発振波長が1.1〜1.55μmであるGaInNAs系面発光レーザなので、組成を調整すれば、出力光はSi基板中を損失が少なく通過伝播する。よって、特にボード間インターコネクションにより、適用性が高い光電子融合要素デバイスが得られる。
【0273】
また、実施例3のデバイスは、GaInNAs系面発光レーザなので、温度制御装置が不要になり、これによって、より集積度が高い光電子融合要素デバイスが得られる。
【0274】
また、実施例3のデバイスは、GaInNAs系系面発光レーザなので、光ファイバと整合性が良く、これにより、光インターコネクションに適用性の高い光電子融合要素デバイスが得られる。
【0275】
(実施例4)
実施例4は、裏面にマイクロレンズを形成したSi基板上にGaInNAs系面発光レーザを作製する例である。
【0276】
実施例4では、まず、次に示す上下DBRの層数が異なる以外は全て実施例3と同一のGaAs系デバイス構成体を形成する。
【0277】
すなわち、実施例4では、下部DBRは、n−AlGaAs/n−GaAsの28.5ペア(全厚5.5μm)であり、上部DBRは、p−AlGaAs/p−GaAsの35.5ペア(全厚6.8μm)である。また、p側電極の形は、半導体柱上面に光出力用の開口を設けない形状である。
【0278】
また、これとは別プロセスで、裏面マイクロレンズ付n−GaAs/SrTiO3/SiO2緩衝膜/Si積層基体を作製する。
【0279】
すなわち、まず、両面研磨6インチSiウェハの一方の面に、レジストを塗布し、マイクロレンズを形成する領域を遮光度が異なるフォトマスクを用いて露光,現像し、エッチング用レジストマスクを作製する。これを、CF4を導入したドライエッチング法でマイクロレンズを形成する。マイクロレンズを設ける位置は、その光軸が以後作製する要素デバイスのレーザ光の光軸と同一になる位置にする。
【0280】
このウェハの他方の面に、実施例3と同一のGaAs/SrTiO3/SiO2緩衝膜/Si積層基体を作製する。後の工程は、マイクロレンズの光軸とレーザ光の光軸を一致させて直接接合する以外は同一の工程で、図26に示すようなSi上GaAs系光デバイスを作製することができる。
【0281】
この実施例4のデバイスでは、各電極から電流を注入し、レーザ発振させる。レーザ光は、Si基板と垂直で裏面方向に出力される。このレーザ光の広がりは、マイクロレンズがない場合と比較して、小さくなっている。
【0282】
この実施例4のデバイスでは、基板がSiなので、レーザ発振部からの熱は主にSi基板に流れる。GaAsよりもSiの方が熱伝導率が高いので、GaAs基板上に形成したレーザよりも高いレーザ特性が得られる。
【0283】
また、実施例4のデバイスでは、SrとTiを含む酸化物からなり、Si格子整合性の良好なSrTiO3 中間層を用いているので、大面積で、欠陥が少ない、良好な結晶品質をもつGaAs積層膜を有するGaAs/SrTiO3/SiO2/Si積層基体が得られる。よって、GaInNAs系面発光レーザGaAs系デバイス構成体と低温で良好に直接接合できる。
【0284】
また、実施例4のデバイスでは、直接接合を用いるので、膜面に垂直に光出力する面発光レーザを、容易に位置精度良く、高い接合強度でSi上に設けることができる。これにより、光デバイスの平面集積化に適用性の高い光電子融合要素デバイスが得られる。
【0285】
また、実施例4のデバイスは、発振波長が1.2〜1.55μmであるGaInNAs系面発光レーザなので、出力光はSi基板中を損失が少なく通過伝播する。よって、特にボード間インターコネクションにより、適用性が高い光電子融合要素デバイスが得られる。
【0286】
また、実施例4のデバイスは、GaInNAs系面発光レーザなので、温度制御装置が不要になり、これにより、より集積度が高い光電子融合要素デバイスが得られる。
【0287】
また、実施例4のデバイスは、GaInNAs系面発光レーザなので、光ファイバと整合性が良く、これにより、光インターコネクションに適用性の高い光電子融合要素デバイスが得られる。
【0288】
上述した各実施形態,各実施例では、基板(単結晶基板)がSiである場合を例にとって説明したが、基板(単結晶基板)は、Siのかわりに、SiGeまたはGeなどであっても良い。
【0289】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1記載の発明によれば、SiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板と、該単結晶基板上にエピタキシャル成長された酸化物中間層と、該酸化物中間層上にエピタキシャル成長されたGaAs層とを有している積層基体において、
前記酸化物中間層の少なくとも1層は、
Li,Be,Mg,Ca,Ba,Sc,Y,La,Ce,Nd,Sm,Eu,Tm,Yb,Al,Th,Taの金属元素のうちの少なくとも1つを含み、該酸化物中間層の結晶格子の少なくとも1つの結晶面内において、構成元素のうちの1種の原子配置からなる四角形が下地の単結晶基板表面の原子配置と整合しており、この請求項1の酸化物中間層の構成材料は、例えばSi基板上のSiOxを消滅させることができるので、大面積で良好な結晶品質をもつエピタキシャル成長GaAs膜をもつGaAs/酸化物中間層/積層基体(Si積層基体)を得ることができる。
【0290】
また、請求項1記載の発明によれば、GaAs/酸化物中間層/Si積層基体の酸化物中間層を大面積で良好な結晶品質をもちエピタキシャル成長させる条件を提供しているので、容易に、適切な仕様、コストで、大面積で良好な結晶品質をもつGaAs/酸化物中間層/積層基体(Si積層基体)を得ることができる。
【0291】
また、請求項2記載の発明によれば、SiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板と、該単結晶基板上にエピタキシャル成長された酸化物中間層と、該酸化物中間層上にエピタキシャル成長されたGaAs層とを有している積層基体において、
前記酸化物中間層の少なくとも1層は、
MgO、MgAl2O4、MgTi2O4、Mg2TiO4、CaTiO3、γ−Al2O3、TiO、TiO2、SrO、SrCeO3、BaO、BaCeO3、BaThO3、BaTiO3、LaAlO3、LaTiO3、CeO2、ThO2、Li0.5Al2.5O4、Li1.33Ti1.67O4、LiAlTiO4、または、LiTiO2からなり、GaAs/酸化物中間層/Si積層基体の酸化物中間層をエピタキシャル成長させる酸化物を明示しているので、より容易に適切な仕様,コストで、大面積で良好な結晶品質をもつGaAs/酸化物中間層/積層基体(Si積層基体)を得ることができる。
【0292】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の積層基体において、前記単結晶基板と前記酸化物中間層との間に、非晶質SiO2層が設けられているので、応力が緩和され、大面積で良好な結晶品質をもつGaAs/酸化物中間層/積層基体(Si積層基体)を得ることができる。
【0293】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の積層基体のGaAs層上またはGaAs層中に、電子デバイスが構成されているので(すなわち、例えば、構成膜が薄いデバイスをGaAs/酸化物中間層/Si積層基体のGaAs層中に作製するので)、大面積の単結晶基板上に、剥離やクラックがない、高い品質の高速・高周波デバイスを設けることができる。よって、高価なGaAs基板を用いないので、低コストでGaAs系電子デバイスを作製できる。
【0294】
また、この電子デバイスを駆動した際発生する熱は、GaAsよりも熱伝導率が高い基板(例えばSi基板)に流れるので、GaAs基板上に形成した電子デバイスよりも高いデバイス特性が得られる。
【0295】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の積層基体のGaAs層上に、GaAs系デバイス構成体が直接接合されて構成されているので(すなわち、すべての構成膜をエピタキシャル成長で作製する場合と比較し、デバイス構成膜のGaAs面と、GaAs膜が薄いGaAs/酸化物中間層/積層基体(Si積層基体)のGaAs表面とを、直接接合してデバイスを構成するので)、プロセス温度を低くでき、よって、熱応力が少なくなり、欠陥の発生が少ない半導体デバイス(例えばSi上GaAsデバイス)が得られる。
【0296】
すなわち、基板(例えば、Si基板)上にGaAs系デバイス構成膜を直接接合する場合と比較し、接合面がGaAs面同士なので、プロセス温度を低くでき、よって、熱応力が少ないため、欠陥の発生が少ない半導体デバイス(例えばSi上GaAsデバイス)が得られる。
【0297】
さらに、この積層基体側のGaAs層が大面積で良質のエピタキシャル層なので、より接合が容易になり、接合の信頼性も高くなり、よって、信頼性の高い低コストな半導体デバイス(例えばSi上GaAsデバイス)が得られる。
【0298】
また、半導体デバイス(例えばSi上GaAsデバイス)を駆動した際に発生する熱は、主にGaAsよりも熱伝導率が高いSi基板に流れる。よって、GaAs基板上に形成したデバイスよりも高いデバイス特性をもつ半導体デバイス(例えばSi上GaAsデバイス)が得られる。
【0299】
また、請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の半導体デバイスにおいて、
前記積層基体の前記酸化物中間層の少なくとも1層は、
Li,Be,Mg,Ca,Ba,Sc,Y,La,Ce,Nd,Sm,Eu,Tm,Yb,Al,Th,Ta,Sr,Ti,Zr,Hfの金属元素のうちの少なくとも1つを含み、該酸化物中間層の結晶格子の少なくとも1つの結晶面内において、構成元素のうちの1種の原子配置からなる四角形が下地の単結晶基板表面の原子配置と整合しており、この請求項6で挙げた酸化物からなる酸化物中間層は、大面積のSiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板上に、良好にエピタキシャル成長する第1,第2の条件を満たす。よって、酸化物中間層上のGaAs系膜が大面積で良好にエピタキシャル成長する。ゆえに、GaAs/酸化物中間層/積層基体(例えばSi積層基体)のGaAs表面上に、GaAs系デバイス構成体を、直接接合で容易に信頼性良く接合することができる。よって、容易に、適切な仕様,コストで、大面積で欠陥の少ない半導体デバイス(例えばSi上GaAsデバイス)を得ることができる。
【0300】
また、請求項6では、直接接合用の積層基体に用いることができる酸化膜中間層材料を示したので、酸化膜中間層材料の選択の幅がを拡げることができる。よって、より適切にデバイスの設計ができるようになり、より低コストな半導体デバイス(例えばSi上GaAsデバイス)が得られる。
【0301】
また、請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の半導体デバイスにおいて、積層基体中の酸化物中間層の少なくとも1層は、
MgO、MgAl2O4、MgTi2O4、Mg2TiO4、CaTiO3、γ−Al2O3、TiO、TiO2、SrO、SrCeO3、BaO、BaCeO3、BaThO3、BaTiO3、LaAlO3、LaTiO3、CeO2、ThO2、Li0.5Al2.5O4、Li1.33Ti1.67O4、LiAlTiO4、LiTiO2、SrHfO3、SrTiO3、SrZrO3、BaZrO3、または、SrxBa1−xTiO3からなり、GaAs/酸化物中間層/積層基体(例えばSi積層基体)の酸化物中間層をエピタキシャル成長させる酸化物を明示しているので、より容易に適切な仕様,コストで、大面積で良好な結晶品質をもつ直接接合用GaAs/酸化物中間層/積層基体(例えばSi積層基体)を得ることができる。よって、より容易に、適切な仕様,コストで、大面積で欠陥の少ない半導体デバイス(例えばSi上GaAsデバイス)を得ることができる。
【0302】
また、請求項7では、直接接合用の積層基体に用いることができる酸化膜中間層材料を明確に示しているので、酸化膜中間層材料の選択の幅を拡げることができる。よって、より適切にデバイスの設計ができるようになり、より低コストな半導体デバイス(例えばSi上GaAsデバイス)が得られる。
【0303】
また、請求項8記載の発明によれば、請求項6または請求項7記載の半導体デバイスにおいて、前記積層基体中の単結晶基板と酸化物中間層との間に、非晶質SiO2層が設けられているので(すなわち、例えば、直接接合用GaAs/酸化物中間層/Si積層基体の酸化物中間層とSi基板の間に、SiO2層を設けているので)、デバイスの応力を緩和することができる。よって、直接接合法工程をとることにより減少する熱応力の影響をさらに小さくすることができる。故に、大面積でより欠陥の少ない半導体デバイス(例えばSi上GaAsデバイス)を得ることができる。
【0304】
また、請求項9記載の発明によれば、請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の半導体デバイスにおいて、該半導体デバイスはGaAs系光デバイスであるので、欠陥の発生が少ない半導体デバイスが容易に得られる。すなわち、光デバイスは、構成膜の厚さが大きい。これらのデバイスを、低温プロセスの直接接合法を用いて作製することにより、デバイスの欠陥を少なくできる。よって、例えば、Si基板上に欠陥の発生が少ないSi上GaAs光デバイスが容易に得られる。
【0305】
また、本発明は、他の接合法と比較し、高さの位置精度良く、強固に、基板(例えばSi基板)上に光デバイスを構築することが可能になるので、光デバイス間や光デバイスとファイバーとのアライメントが容易になる。よって、例えば、GaAs系光デバイスとSi系電子デバイスの融合化集積化に適するSi上GaAs光デバイスが得られる。
【0306】
また、請求項10記載の発明によれば、請求項9記載の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、端面発光レーザであるので、デバイスを高集積化,高性能化できる。すなわち、端面発光レーザは、光出力方向が膜面と平行であるため、例えば、Siウェハを基材とするGaAs/酸化物中間層/Si積層基体に直接接合した場合、端面発光レーザと他の機能素子との光軸の整合が容易となり、平面で配列,集積することが容易となる。よって、Si−LSIのチップ内,チップ間光伝送用光源、ボード内,ボード間光伝送用光源に特に適し、デバイスを高集積化,高性能化できる。
【0307】
また、請求項11記載の発明によれば、請求項9記載の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、面発光レーザ(VCSEL)であるので、デバイスを高集積化,高性能化できる。すなわち、面発光レーザは、光出力方向が膜面に垂直であり、低電力で駆動でき、高周波特性がよく、光ファイバとの結合性がよいため、例えばSi−LSIのチップ間,チップ内間光伝送用光源、ボード間,ボード内光伝送用光源に特に適し、それらのデバイスを高集積化,高性能化できる。
【0308】
また、面発光レーザは、共振器ミラーを形成するのにへき開を必要としないため、面発光レーザのデバイス構成体ウェハと、GaAs/酸化物中間層/積層基体ウェハ(例えばSi積層基体ウェハ)とを直接接合し、その後、通常の半導体プロセスで一括してウェハ上に例えばSi上GaAs面発光レーザを一括で形成することが可能になる。
【0309】
また、請求項12記載の発明によれば、請求項10記載の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、GaInNAsを活性層に含む端面発光デバイスであるので、デバイスをさらに高速化,高集積化,高性能化できる。すなわち、GaInNAs系材料を活性層に含む端面発光レーザの発振波長は長波長帯なので、レーザ光はSi中やGaAs中をほとんど吸収されずに透過できる。また、ファイバー中も吸収・散乱がほとんどなく伝播できる。また、GaInNAs系材料は温度特性が良好であり、さらに、基板が例えばSiなので放熱性が優れる。このため、請求項10の作用効果に次の点が加えられる。すなわち、平面内の実装精度が高くなり、また、例えば、Si基板を通した光接続が可能になるので、例えばSi−LSI中のチップ内,チップ間,ボード内,ボード間の光接続がさらに容易になる。よって、デバイスをさらに高速化,高集積化,高性能化できる。
【0310】
また、請求項12では、GaInNAsを活性層に含む端面発光デバイスを整合性良く高密度に実装でき、冷却器が不要となるため、長中距離光伝送光源の高集積化・簡便化が可能になる。
【0311】
また、請求項13記載の発明によれば、請求項11記載の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、GaInNAsを活性層に含む面発光デバイスであるので、デバイスを高速化,高集積化,高性能化できる。すなわち、前述のように、GaInNAs系材料を活性層に含む面発光レーザの発振波長は長波長帯なので、レーザ光はSi中やGaAs中をほとんど吸収されずに透過できる。また、基板と垂直方向に光が出力される。このため、請求光11の作用効果に次の点が加えられる。すなわち、例えばSi−LSI中のチップ間,チップ内,ボード間,ボード内の光接続がさらに容易になる。特に、それらの基板を通した光接続が容易になる。よって、デバイスを高速化,高集積化,高性能化できる。
【0312】
また、請求項14記載の発明によれば、請求項9乃至請求項13のいずれか一項に記載の半導体デバイスの単結晶基板の表面,裏面,または内部において、GaAs系光デバイスが出力する光の光路上に、光学素子が設けられているので、例えばSi−LSI中のチップ間,チップ内,ボード間,ボード内の光接続がさらに容易になる。よって、デバイスをさらに高速化,高集積化,高性能化,高機能化,多機能化することができる。
【0313】
また、請求項15記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の積層基体に、請求項9乃至請求項13のいずれか一項に記載の半導体デバイスが、直接接合されているので、低コストで高性能多機能集積化半導体デバイス(例えばSi上GaAs光デバイス)を得ることができる。すなわち、従来のようにはんだバンプや樹脂接着剤により接合する方法は、接合後は、熱処理,エッチング等のプロセスを行うことができない。よって、これらの場合はデバイス構成と作製プロセスが限定される。また、位置精度に限界がある。これに対して、本発明の構成は、積層基体に、直接接合でGaAs系光デバイスを接合する構成なので、容易に、一括して、複数のGaAs系光デバイスを積層基体上に位置精度良く搭載することができる。よって、低コストで高性能多機能集積化半導体デバイス(例えばSi上GaAs光デバイス)を得ることができる。
【0314】
また、請求項16記載の発明によれば、請求項9乃至請求項13のいずれか一項に記載の半導体デバイス、または、請求項14または請求項15記載の光半導体デバイスを備えていることを特徴とする光伝送システムであるので(すなわち、本発明の半導体デバイス(例えば、Si上GaAsデバイスまたは集積化Si上GaAsデバイス)を搭載して光伝送システムを構成しているので)、より高速,高機能,高性能なデータ伝送システムを得ることができる。
【0315】
また、請求項17記載の発明によれば、請求項6乃至請求項13のいずれか一項に記載の半導体デバイス、または、請求項14または請求項15記載の光半導体デバイスの単結晶基板中または単結晶基板上に電子回路が設けられているので(例えば、Si基板に電子回路を設けているので)、光電子融合集積回路が作製でき、高速,大容量のデータ処理・データ通信能力をもつデバイスが実現できるようになる。
【0316】
以上のように、本発明は、素子設計上の自由度が大きく、素子製造上の選択肢も大きくすることができる。
【0317】
前述した特許文献1に示されているGaAs/酸化物中間層/Siの構成では、結晶品質のよいGaAs膜が得られるので、この膜を利用しFETなどの薄膜デバイスを作製すれば、Si基板上に大面積のGaAs系高速・高周波電子デバイスが得られるが、端面発光型レーザや面発光レーザ(VCSEL)等の光デバイスは、全膜厚が、それぞれ1.5〜3μm、8〜15μm程度と厚い。GaAs/酸化物中間層/Si基板上にこれらの素子構成の膜をエピタキシャル成長させると、成長後室温まで降温するとき、各材料の熱膨張係数の差からGaAs/酸化物中間層/Siのいずれかの界面で剥離が発生したり、エピタキシャル成長膜にクラックが発生したりする。この欠陥の発生は、GaAs/酸化物中間層/SiO2応力緩衝層/Si基板を用いても防ぐことは難しい。
【0318】
これに対し、本発明では、GaAs/酸化物中間層/単結晶基板(例えばSi基板)上に厚い構成膜をもつGaAs系光デバイスを欠陥なく構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る積層基体の構成例を示す図である。
【図2】格子整合の形態Aを示す図である。
【図3】格子整合の形態Bを示す図である。
【図4】作製例1の積層基体を示す図である。
【図5】作製例2のMESFET素子を示す図である。
【図6】直接接合過程を説明するための図である。
【図7】一般的な端面発光レーザの構成例を示す図である。
【図8】端面発光レーザデバイス構成体のGaAs基板の裏面と積層基体のGaAs面とを接合する場合を示す図である。
【図9】一般的な面発光レーザの構成例を示す図である。
【図10】第11の実施形態を説明するための図である。
【図11】第14の実施形態を説明するための図である。
【図12】第15の実施形態を説明するための図である。
【図13】本発明のSi上GaAsデバイスまたは集積化Si上GaAsデバイスを用いた並列伝送方式光伝送システムの一例を示す図である。
【図14】本発明のSi上GaAsデバイスまたは集積化Si上GaAsデバイスを用いた多波長伝送方式光伝送システムの一例を示す図である。
【図15】光電子融合集積回路の構成例を示す図である。
【図16】実施例1のGaAs MESFETを示す図である。
【図17】実施例2のGaInNAs系端面発光レーザを示す図である。
【図18】実施例2の積層基体を示す図である。
【図19】実施例2での直接接合を説明するための図である。
【図20】実施例2の端面発光レーザを示す図である。
【図21】実施例3の面発光レーザ構造積層膜を示す図である。
【図22】実施例3の面発光レーザGaAs系デバイス構成体を示す図である。
【図23】実施例3の積層基体を示す図である。
【図24】実施例3の直接接合過程を説明するための図である。
【図25】実施例3のSi上GaAs系光デバイスを示す図である。
【図26】実施例4のSi上GaAs系光デバイスを示す図である。
Claims (17)
- SiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板と、該単結晶基板上にエピタキシャル成長された酸化物中間層と、該酸化物中間層上にエピタキシャル成長されたGaAs層とを有している積層基体において、
前記酸化物中間層の少なくとも1層は、
Li,Be,Mg,Ca,Ba,Sc,Y,La,Ce,Nd,Sm,Eu,Tm,Yb,Al,Th,Taの金属元素のうちの少なくとも1つを含み、該酸化物中間層の結晶格子の少なくとも1つの結晶面内において、構成元素のうちの1種の原子配置からなる四角形が下地の単結晶基板表面の原子配置と整合していることを特徴とする積層基体。 - SiまたはSiGeまたはGeの単結晶基板と、該単結晶基板上にエピタキシャル成長された酸化物中間層と、該酸化物中間層上にエピタキシャル成長されたGaAs層とを有している積層基体において、
前記酸化物中間層の少なくとも1層は、
MgO、MgAl2O4、MgTi2O4、Mg2TiO4、CaTiO3、γ−Al2O3、TiO、TiO2、SrO、SrCeO3、BaO、BaCeO3、BaThO3、BaTiO3、LaAlO3、LaTiO3、CeO2、ThO2、Li0.5Al2.5O4、Li1.33Ti1.67O4、LiAlTiO4、または、LiTiO2からなることを特徴とする積層基体。 - 請求項1または請求項2記載の積層基体において、前記単結晶基板と前記酸化物中間層との間に、非晶質SiO2層が設けられていることを特徴とする積層基体。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の積層基体のGaAs層上またはGaAs層中に、電子デバイスが構成されていることを特徴とする半導体デバイス。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の積層基体のGaAs層上に、GaAs系デバイス構成体が直接接合されて構成されていることを特徴とする半導体デバイス。
- 請求項5記載の半導体デバイスにおいて、
前記積層基体の前記酸化物中間層の少なくとも1層は、
Li,Be,Mg,Ca,Ba,Sc,Y,La,Ce,Nd,Sm,Eu,Tm,Yb,Al,Th,Ta,Sr,Ti,Zr,Hfの金属元素のうちの少なくとも1つを含み、該酸化物中間層の結晶格子の少なくとも1つの結晶面内において、構成元素のうちの1種の原子配置からなる四角形が下地の単結晶基板表面の原子配置と整合していることを特徴とする半導体デバイス。 - 請求項6記載の半導体デバイスにおいて、
積層基体中の酸化物中間層の少なくとも1層は、
MgO、MgAl2O4、MgTi2O4、Mg2TiO4、CaTiO3、γ−Al2O3、TiO、TiO2、SrO、SrCeO3、BaO、BaCeO3、BaThO3、BaTiO3、LaAlO3、LaTiO3、CeO2、ThO2、Li0.5Al2.5O4、Li1.33Ti1.67O4、LiAlTiO4、LiTiO2、SrHfO3、SrTiO3、SrZrO3、BaZrO3、または、SrxBa1−xTiO3からなることを特徴とする半導体デバイス。 - 請求項6または請求項7記載の半導体デバイスにおいて、前記積層基体中の単結晶基板と酸化物中間層との間に、非晶質SiO2層が設けられていることを特徴とする半導体デバイス。
- 請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の半導体デバイスにおいて、該半導体デバイスはGaAs系光デバイスであることを特徴とする半導体デバイス。
- 請求項9記載の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、端面発光レーザであることを特徴とする半導体デバイス。
- 請求項9記載の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、面発光レーザ(VCSEL)であることを特徴とする半導体デバイス。
- 請求項10記載の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、GaInNAsを活性層に含む端面発光デバイスであることを特徴とする半導体デバイス。
- 請求項11記載の半導体デバイスにおいて、GaAs系光デバイスは、GaInNAsを活性層に含む面発光デバイスであることを特徴とする半導体デバイス。
- 請求項9乃至請求項13のいずれか一項に記載の半導体デバイスの単結晶基板の表面,裏面,または内部において、GaAs系光デバイスが出力する光の光路上に、光学素子が設けられていることを特徴とする光半導体デバイス。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の積層基体に、請求項9乃至請求項13のいずれか一項に記載の半導体デバイスが、直接接合されていることを特徴とする光半導体デバイス。
- 請求項9乃至請求項13のいずれか一項に記載の半導体デバイス、または、請求項14または請求項15記載の光半導体デバイスを備えていることを特徴とする光伝送システム。
- 請求項6乃至請求項13のいずれか一項に記載の半導体デバイス、または、請求項14または請求項15記載の光半導体デバイスの単結晶基板中または単結晶基板上に電子回路が設けられていることを特徴とする光電子融合デバイス。
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