JP2005036313A - 二相ステンレス鋼 - Google Patents

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和博 小川
Tomohiko Omura
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Abstract

【課題】 優れた耐孔食性と溶接性を有する二相ステンレス鋼、特に溶接熱影響部においても微細な金属間化合物が生成しない、二相ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】
C:0.03%以下、Si:1.0 %以下、Mn:1.5%以下、P:0.040 %以下、
S:0.008%以下、 sol.Al :0.040 %以下、Ni:5.0 〜9.0 %、
Cr:23.0〜27.0%、Mo:2.0 〜4.0 %、W:1.5 %を超え 5.0%まで、
N:0.24〜0.35%、Feおよび不純物:残部
なる化学組成を有し、PREW=Cr+3.3(Mo+0.5W) +16Nが40以上で
Mo+1.1 Ni≦12.5
Mo−0.8 Ni≦−1.6
なる関係を満たし、下記に定義される粗大介在物が断面観察で1平方mm当たり10個以下である。
ここで、粗大介在物は、Alを20%以上含み長い側の径が5μm 以上の介在物と定義とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、二相ステンレス鋼、特に優れた溶接性および耐孔食性を有する二相ステンレス鋼に関する。
二相ステンレス鋼は、強度および耐食性、特に耐海水腐食性に優れているため熱交換用鋼管等として古くから広範囲の技術分野で使用されている。従来にあっても、耐食性、強度、加工性等をさらに改善した二相ステンレス鋼についてはすでに多くの組成例が提案されている。
特にその中でも、特許文献1に開示されているWを1.5 %〜5質量%を含みPREW[PREW=Cr+3.3(Mo+0.5W) +16N]が40以上である耐食性に優れた高強度二相ステンレス鋼は、Wの多量添加により、耐食性が飛躍的に向上し、しかも金属間化合物 (シグマ相等) の析出による機械的性質、耐食性の劣化が小さいことが示されている。
特開平5−132741号公報
しかしながら、今日のように、各種溶接構造物が広く利用されるようになり、例えば、温度の高い海水環境で使用される熱交換器、ポンプ等へ溶接施行で二相ステンレス鋼が用いられる場合、溶接熱影響部に生成する微細なシグマ相が孔食の起点や金属疲労の起点となることが問題となっており、かかるシグマ相の生成防止の必要性が認識されてきた。二相ステンレス鋼においてそのような点はこれまで問題視されなかった。
このような微細なシグマ相の生成抑制には、まず、溶接入熱量を低減するなど溶接施工法を改善することが考えられる。しかし、溶接入熱量の低減は確かに有効であるが、入熱量を低減すると、溶接施工能率を低下させるため、今日のようにコスト低減が求められる状況下からは、好ましい解決手段とは言えない。
したがって、二相ステンレス鋼それ自体を改善することが求められる。
ここに、本発明の課題は、優れた耐孔食性および溶接性を有する二相ステンレス鋼、特に溶接熱影響部においても微細なシグマ相などの金属間化合物が生成しない、優れた耐孔食性および溶接性を有する二相ステンレス鋼を提供することにある。
本発明者は、上述のような課題を達成すべく、種々検討を重ねた結果、次のような知見を得た。
すなわち、溶接熱影響部においても優れた耐食性、特に耐孔食性を得るポイントは、次の2点にある。
1) 溶接熱影響部での粗大な析出物である窒化物の生成抑制、および
2) 溶接熱影響部でのシグマ相と呼ばれる金属間化合物の生成抑制。
ここに、溶接のような短時間での急速加熱・急速冷却を行って得た組織(以下、単に「急熱急冷組織」という)では、シグマ相の生成は、シグマ相の核生成と核の成長とにより左右される。本発明者らは核生成はWを2%程度添加することにより抑えられること、またその条件下ではNi、Mo量にも依存することを知見した。
さらに本発明者らは下記(1) 式に示すように各元素の影響度を考慮した核生成抑制条件を定量的に明らかにした。
Mo+1.1Ni ≦12.5 (1)
上記式(1) の冶金学的意味は以下の通りである。
すなわち、シグマ相はCrとFeがほぼ1:1の組成の金属間化合物であるため、溶接等の加熱でシグマ相の核が生じるには、Crの濃化が必要となる。Moは必ずしもシグマ相の主要構成元素ではない。しかし、Moが存在することで核生成のための活性化エネルギーが低くなり、より小さなエンブリオ(核の萌芽)であっても消滅することなく、安定な核となる。一方、Niはシグマ相析出温度では、フェライト相を不安定にするため、その結果として、フェライト相がシグマ相とオーステナイト相に分解する反応の駆動力を高める。
これらの理由により、Mo、Niはシグマ相の核生成ポテンシャルを高め、その寄与度は本発明者らの研究により、NiはMoの1.1 倍であり、(1) 式の左辺は、核生成頻度の相対的な大きさを記述するパラメータとなっている。
本発明によれば、このパラメータを12.5以下とすることで、シグマ相の生成を耐孔食性に影響しない程度まで抑えることができる。
シグマ相の核生成は、母材における酸化物系介在物の存在の影響を大きく受ける。シグマ相は、鋼の 融点より400℃以上低い温度範囲の700 ℃〜1000℃に加熱された低温HAZ(鋼の融点直下まで加熱される部分を高温HAZ と呼ぶことに対して相対的に低温に加熱されたHAZという意味)で析出しやすい。この温度域では、オーステナイト相の形態そのものは変化しないため、シグマ相の核生成は母材の介在物の影響を大きく受ける。すなわち、介在物と鋼マトリックスとの境界では自由エネルギーが高いため、析出によってエネルギーが下がる核生成は生じやすい。
これらを総合的に検討した結果、Al、Mg、Caを含む酸化物系介在物が特に界面エネルギーが高く、ある大きさ以上のそれらの粗大介在物がシグマ相析出を促す有害介在物であり、その密度を低減することがHAZ でのシグマ相の析出抑制に有効であることを知見した。
図1は、HAZ におけるAlを20%以上含み長い側の径が5μm 以上の粗大介在物の密度と孔食発生温度の関係を示したものである。ここで、孔食発生温度が高いものほど、通常の使用環境下の温度 (すなわち常温) との温度差があることを意味するため、高い孔食発生温度を有する鋼は高耐食性であるといえる。従来の二相ステンレス鋼では 、このようなアルミナ系粗大介在物は1平方mm当たり20個以上存在した。
図1に示す結果より、アルミナ系粗大介在物の密度が10個/mm以下の鋼は高い耐食性を示すが、10個/mm超えると孔食発生温度は急激に低下する。
一方、(1)式からはMo、Ni量を低減すれば、HAZ でのシグマ相の核生成が抑えられ良好な耐食性が得られるはずであるが、過度のNi量の低減は、融点直下まで加熱される高温HAZ において窒化物の生成を助長する。そのような窒化物の生成はシグマ相の生成と同様に孔食の発生をもたらす。
本発明によれば、これを抑える要件は(2) 式に示す定量式で示される。
Mo−0.8Ni ≦−1.6 (2)
窒化物の析出駆動力は、短時間で拡散しうる500 ℃以上の温度域でのNの固溶度と拡散速度とに左右される。Niの添加は、フェライト相のみとなる融点直下に加熱された状態から冷却される過程で析出するオーステナイト相の析出開始温度を高める。高温でオーステナイト相が析出することは、過飽和に存在するフェライト相中のNが、より短時間でNの固溶度の高いオーステナイト相側に移動することを意味する。このことはさらに、オーステナイト相の成長を促し、冷却の進行とともに高まるフェライト相中のNの過飽和度の緩和に、有効に寄与する。その結果として、窒化物の析出を抑制するのである。
ただし、Moが存在すると逆に、Moがオーステナイト相の析出開始温度を低め、本発明者らの研究の結果、それに対するMoの寄与度は、Niの0.8 倍である。
(2) 式の左辺は、オーステナイト相生成温度の変化によるフェライト相中のN過飽和度の相対的な大きさを記述するパラメータとなっている。このパラメータを−1.6 以下とすることで、窒化物の生成を抑制すれば、それに起因する孔食の発生をほぼ完全に抑えることができる。
以上のような各知見に基づいて、上記(1) 、(2) 式を満たすように成分設計し、酸化物系介在物の制御をすることで、溶接能率を落とすことなくHAZ で微細シグマ相、窒化物が生じない、HAZ でも耐食性、特に耐孔食性の優れた二相ステンレス鋼が得られることを見出した。
母材における酸化物系介在物の制御には、従来とは異なる新しい方法が必要で、溶製の際のスラグの塩基度および脱硫回数、取鍋でのキリング温度と時間、鋳造後のトータルの加工度を最適に組み合わせることによりその制御が可能となる。
なお、本発明においてもPREWは40以上とする。
ここに本発明は次の通りである。
(1) 質量%で、
C:0.03%以下、Si:1.0 %以下、Mn:1.5 %以下、P:0.040 %以下、
S:0.008%以下、 sol.Al :0.040 %以下、Ni:5.0 〜9.0 %、
Cr:23.0〜27.0%、Mo:2.0 〜4.0 %、W:1.5 %超 5.0%以下、
N:0.24〜0.35%、Feおよび不純物:残部
かつ、PREW=Cr+3.3(Mo+0.5W) +16Nが40以上で
Mo+1.1 Ni≦12.5
Mo−0.8 Ni≦−1.6
なる関係を満たす化学組成を有し、Alを20%以上含み長い側の径が5μm 以上の介在物と定義される粗大介在物が断面観察で1平方mm当たり10個以下であることを特徴とする二相ステンレス鋼。
(2) 前記化学組成が、更に0.2 〜2.0 質量%のCuと0.05〜1.5 質量%のVの一方または両方を含む、上記(1) に記載の二相ステンレス鋼。
(3) 前記化学組成が、更に0.0005〜0.005 質量%のBおよび0.0005〜0.2 質量%の希土類元素の中の1種または2種以上を含む、上記(1) または(2) に記載の二相ステンレス鋼。
本発明によれば、溶接熱影響部におけるシグマ相の生成が防止できることから、また粗大介在物が生成量を大幅に低減できることから、得られる二相ステンレス鋼は、優れた耐孔食性を示すことになり、例えば今日その用途への適用が求められている優れた二相ステンレス鋼が提供される。
次に、本発明において二相ステンレス鋼の化学組成を上述のように限定した理由について説明するが、本明細書において、鋼の化学組成を示す「%」は、とくにことわりが無い限り、「質量%」を意味する。
本発明にかかる二相ステンレス鋼は、上記の多種類の合金成分の総合的な効果と組織形態の制御によって優れた溶接性(溶接能率を低下させずに耐孔食性確保)、その他の特性を発揮するが、最も大きな特徴は、Ni、Mo量の組み合わせの適正化と、アルミナ系粗大介在物の制御にある。
C:Cは、後述するNと同様にオーステナイト相を安定化するのに有効であるが、その含有量が0.03%を超えると炭化物が析出しやすくなり、耐食性が劣化するため0.03%以下とする。好ましくは0.02%以下である。
Si:Siは鋼の脱酸成分として有効であるが、金属間化合物 (シグマ相等) の生成を促進する元素であるから本発明では1.0 %以下に限定する。好ましくは 0.5%以下である。
Mn:Mnは二相ステンレス鋼の溶製時の脱硫および脱酸効果によって熱間加工性を向上させる。また、Nの溶解度を大きくする作用もある。これらの効果を狙って通常はその含有量を 2.0%までとすることが多い。しかし、Mnは耐食性を劣化させる元素でもあるため、本発明では 1.5%以下と定めた。好ましくは1.0%以下である。
P:Pは鋼中に不可避的に混入する不純物元素であるが、その含有量が 0.040%を超えると耐食性、靱性の劣化が著しくなるから0.040 %を上限とする。
S:Sも鋼中に不可避的に混入する不純物元素で、鋼の熱間加工性を劣化させる。また、硫化物は孔食の発生起点となり耐孔食性を損なう。これらの悪影響を避けるため、その含有量を 0.008%以下に抑える。これ以下でできるだけ少ない方がよく、特に 0.005%以下が望ましい。
Cr:Crは耐食性を維持するために有効な基本成分である。その含有量が23.0%未満では、いわゆるスーパ二相ステンレス鋼と言えるだけの耐食性が母材で得られない。一方、Crの含有量が27.0%を超えると金属間化合物 (シグマ相等) の析出が顕著になり、熱間加工性の低下および溶接性の劣化を招く。
Mo:MoはCrと同様にPREWの向上に寄与し、耐食性を向上させるのに非常に有効な成分ある。特に耐孔食性および耐隙間腐食性を高めるため、本発明ではその含有量を2.0 %以上とする。一方、Moの過剰添加は製造中の素材の脆化の原因になり、Crと同様に金属間化合物の析出を容易にする作用が強い。従って、Moの含有量は4.0 %までにとどめる。
Ni:Niはオーステナイトを安定化するために必須の成分であるが、その含有量が9.0 %を超えるとフェライト量の減少により二相ステンレス鋼の基本的な性質が確保しにくくなり、またシグマ相等の析出が容易になる。一方、Niの含有量が5.0 %より少ないとフェライト量が多くなり過ぎて同じく二相ステンレス鋼の特徴が失われる。また、フェライト中へのNの固溶度が小さいため窒化物が析出して耐食性が劣化する。
ただし、Ni、Moの範囲についてはこれらのみの規定では不十分で、前述の通り本発明の特徴である。下記式(1) 、(2) を満足するように制限される。
Mo+1.1 Ni≦12.5 (1)
Mo−0.8 Ni≦−1.6 (2)
ここに上記式における「Mo」および「Ni」はそれぞれの含有量 (質量%) を表わす。
(Mo +1.1 Ni) の値が12.5を超えると、低温HAZ での微量シグマ相析出が、そして (Mo−0.8Ni)の値が−1.6 を超えると高温HAZでの窒化物析出が、それぞれ生じるため、上記範囲内に抑えるのである。
二相ステンレスの耐食性、特に耐海水腐食性を表すパラメーターとして下記の耐孔食性指数(PREW)を40以上とする。
PREW (Pitting Resistance Equivalent After Welding)
=Cr+3.3(Mo+0.5W)+16N・・・(b)
一般には、このPREWが35以上となるようにCr、Mo、Nの含有量を調整するのであるが、本発明にかかるスーパ二相ステンレス鋼では、Cr、Mo、Nをさらに高めてPREWを40以上としたもので、著しく優れた耐海水腐食性を示す。Cr、Mo、Nの増加は鋼の高強度化にも寄与するから、元来、フェライトあるいはオーステナイト単相の鋼に比較して高強度である二相ステンレス鋼が、さらに高強度化されたスーパ二相ステンレスが得られる。
WはMoと同様に耐食性、特に孔食および隙間腐食への抵抗性を向上させる元素であり、就中、pHの低い環境で耐食性を向上させる安定な酸化物を形成する元素である。したがって、1.5 %を超えるWを含有させる。1.5 %以下では、PREWを40以上とするのに、Cr、Mo、N等の添加を増さなければならず、Wを利用する効果が小さくなる。W含有量を増すほどPREWを40以上とするためのCr、Moの含有量を少なくすることができ、これらの元素のシグマ相等の生成促進の害を小さくできる。望ましいWの含有量は、2.0 %を超える量である。しかし、5.0 %を超える量のWを添加してもそれに見合うだけの効果の増大はなく、徒にコストが嵩むだけであるから上限は 5.0%とする。
N (窒素):Nは強力なオーステナイト生成元素で、二相ステンレス鋼の熱的安定性と耐食性の向上に有効である。本発明鋼のようにフェライト生成元素であるCr、Moが多量に添加された場合には、フェライトとオーステナイトの二相のバランスを適正なものにするためにも0.24%以上のNを含有させる。
さらにNは、PREWの向上に寄与してCr、MoおよびWと同様に合金の耐食性を向上させる。しかし、本発明鋼のような25%Cr系の二相ステンレス鋼では、Nを0.35%を超えて含有させようとするとブローホールの発生による欠陥、あるいは溶接の際の熱影響による窒化物生成等により鋼の靱性、耐食性を劣化させる。そのためNの上限は0.35%とする。
sol.Al:Alは鋼の脱酸剤として有効であるが、鋼中のN量が高い場合にはAlN(窒化アルミニウム) として析出し、靱性および耐食性を劣化させる。さらには、酸化物を形成し、シグマ相の核生成サイトとなる。従って、本発明ではAl含有量をsol.Alとして 0.040%以下に抑えた。本発明鋼ではSiの多量添加は避けているので、脱酸剤としてAlを用いることが多いが、真空溶解を行う場合には必ずしもAlの添加を要しない。
本発明の二相ステンレス鋼は、以上のような成分に加えて、さらに下記の第1群および第2群の元素のうちの1種以上を必要に応じて含むことができる。
第1群元素(Cu、V):CuとVは、本発明の二相ステンレス鋼においては少なくとも1種含有され、耐食性、特に硫酸等の酸に対する耐酸性を向上させるという点で均等な作用効果をもつ。
Cuは、還元性の低pH環境、例えば HSOあるいは硫化水素環境での耐酸性向上に特に有効で、その効果を得るためには 0.2%以上の含有量とする。しかし、Cuの多量添加は鋼の熱間加工性を劣化させるから上限を 2.0%とする。
Vは、0.05%以上添加することで硫酸等の酸に対する耐酸性を向上させ、特にWと複合添加した場合、耐隙間腐食性をも向上させる。しかし、Vの添加が過多になるとフェライト量が過度に増加し、靱性および耐食性の低下が生じるからその上限を 1.5%とする。
第2群元素(Bおよび希土類元素):いずれもSあるいはO(酸素)を固定し熱間加工性を向上させる元素である。
本発明鋼ではSを低く抑えており、Wを多量添加しているとはいえ、これはシグマ相等の生成を促進しないから、元来熱間加工性は良好である。
また、本発明の二相ステンレス鋼は、鋳物として使用することが可能であり、更に、粉末にしてプレス、焼結等の粉末冶金法で管等の製品にすることも可能である。
このような製造方法をとる場合には、熱間加工性はさして問題にならない。従って、第2群元素の添加は必ずしも必要でない。しかし、鍛造、圧延、押出し等の工程を経て製品にする場合に熱間加工性が優れていることは望ましいので、このような場合、必要に応じて、B:0.0005%以上、希土類:それぞれ0.0005%以上1種または2種以上の添加を行えばよい。ただし、これらの元素も多量に添加されるとそれらの酸化物、硫化物の非金属介在物が増加し、シグマ相の析出核生成サイトとなったり、孔食の起点となり耐食性の劣化を招く。従って、含有量としてBは0.005 %以下、希土類 (主に、La、Ce) はそれぞれ 0.2%以下とするのがよい。
なお、これらBおよび希土類元素の下限値の合計量はいずれも不純物元素であるSとOの算術和(S+1/2・O)の値以上とすることが推奨される。
次に、本発明にあっては、下記に定義されるアルミナ系粗大介在物が断面観察で1平方mm当たり10個以下に制限される。
ここでアルミナ系粗大介在物は、「当該介在物にもしAlとともにCaおよび/またはMgが不純物として含まれるときは、CaとMgを含めて質量%の和で20%以上含み長い側の径が5μm 以上の介在物」と定義とする。その理由は、AlとCaとMgを質量%の和で20%以上含む介在物は、結晶格子の母相(フェライト相)とのずれが 大きくなり界面エネルギーを高めるためである。なお、本明細書ではこのようなアルミナ系粗大介在物を便宜上「Alを20%以上含み長い側の径が5μm 以上の介在物」と記述する。
長い側の径が5μm 未満では、母相と介在物との界面の面積そのものが十分大きいため、界面がシグマ相の析出サイトとなる確率が小さくなる。
酸化物系介在物の長径とは、図2(a) 、(b) に示すように、母材と介在物との界面上の異なる二点を結んだ直線のうち、最も長くなる直線の長さ(図2(a) 、(b) ではそれぞれa1またはa2)を意味する。また、酸化物系介在物の組成は、介在物の中心部近傍(図2(a) 、(b) に示す例ではそれぞれb1およびb2)、即ち、介在物の断面形状の重心部近傍をEDX(エネルギー分散型X線分析)を用いて、O(酸素)以外の合金元素の含有量を求め、これにより決定する。よって、本明細書において、「Alを20%以上含み」とは、O以外の合金元素に占めるAl(+Ca+Mg)含有率を意味する。
実用上はこれらのアルミナ系粗大介在物の密度の影響が大きく、断面観察で1平方mm当たり10個超あると粗大介在物と母相との界面においてばかりでなく、自由エネルギーの高いフェライト/オーステナイト界面上にも粗大介在物が存在してシグマ相の析出を助長する確率が高くなる。そのためそのような粗大介在物の存在はHAZ 部でのシグマ相析出に有害であり、密度をこれ以下にすることがHAZ 部でのシグマ相析出抑制に有効となる。
本発明においてアルミナ系粗大介在物の密度を上述のように1平方mm当たり10個以下に限定する。そのような二相ステンレス鋼を製造するには、例えば真空精錬による二次精錬を行い、その際のスラグ塩基度を例えば0.3〜3.0に調整し、十分な溶鋼撹拌およびスラグ改質を行えばよい。
本発明にかかる鋼組成においては介在物としては主としてアルミナ系介在物が生成し、一部Ca、Mg等が不純物として混合しているときにはCaおよびMgを含む介在物が存在する可能性がある。
ここに、本発明においてアルミナ系粗大介在物のAl含有量を20%以上、Ca、Mg系介在物が混入しているときには、アルミナ系粗大介在物に加え、Ca系粗大介在物およびMg系粗大介在物の(Al+Ca+Mg)の合計量を20%以上に限定した理由は腐食環境での溶出を生じにくくすることで耐孔食性を確保するためである。
次に実施例によって本発明の作用効果についてさらに具体的に説明する。
表1に示す化学組成の鋼を電気炉にて溶解し、AOD 炉に移して二次精錬を実施した。ただし、代符B6 の場合は、二次精練を行わなかった。二次精練においては、スラグ中の (CaO+MgO)重量/スラグ中の(Al2O3+SiO2)重量で定義されるスラグ塩基度を−1から3の範囲の異なる値とすることで、介在物の組成、形態、密度の異なる溶鋼を作製した。鋳造後、1200℃に加熱して厚さ40mmまで鍛造した。
得られた板材を、1250℃に加熱し、圧延により、厚さ10mmとした。得られた鋼板の一部を切り出し、圧延面と直交する断面を上に樹脂中に埋め込んだ後、この断面を鏡面研磨した。その後、粗大介在物を200倍の倍率で5視野、SEM 観察を行って、そのサイズを評価した。
アルミナ系粗大介在物の長径は、図2の定義に従って測定し、粗大介在物の中心部近傍(図2のb1およびb2)をEPMAにより組成分析して、前述の粗大介在物を同定し、その密度を測定した。密度は1mm2 当たりの粗大介在物の個数の5視野の平均値をもって評価した。
供試鋼板を機械加工により、厚さ8mm×幅100mm ×長さ200mm 、長辺の端部に開先角度30度のV開先を設け試験材とした。代符Alの鋼から作成した外径2mmの溶接材料を共通に用いて、供試材同志を突き合わせて、一般のステンレス鋼よりも高グレードの高耐食ステンレス鋼で用いられる入熱量10kJ/cm(溶接条件1) および一般的なステンレス鋼の溶接施工としては特に能率に問題が生じない入熱量である20kJ/cm(溶接条件2) の条件にて片側からTIG 溶接にて多層溶接して二種類の溶接継手を作製した。得られた溶接継手から、溶接線に直交方向が40mmの辺で3×10mmの面が圧延面と平行となるように厚さ3mm、幅10mm、長さ40mmの腐食試験片を採取し、10%FeCl・6HO(65℃) の溶液に24時間浸漬し、500 倍の視野にてHAZ 部での孔食発生の有無を評価した。
また、溶接線と圧延面に直交する断面を検鏡エッチングして、 500倍の視野で、画像解析を行いHAZ 部での微細シグマ相の面積率を測定した。シグマ相の面積率が、1%あれば微量のシグマ相あり、と判定した。
これらの結果を表2にまとめて示す。表2に示す結果から明らかなように、化学組成と粗大介在物の密度が本発明の範囲を満足している試験体では、一般的なステンレス鋼の溶接施工としては特に能率に問題が生じない高入熱量での評価にもかかわらず、微量のシグマ相の析出も認められず、優れた耐孔食性を示している。一方、代符B1、B2のように、ここの元素が化学組成範囲を満たしてもNi、Moの組み合わせ範囲が本発明要件を満たさなければ、代符B1のように微量のシグマ相が生じたり、代符B2のようにシグマ相が生じなくて窒化物が生じ、耐孔食性が劣化していた。また、代符B3〜B5のように鋼組成そのものはそれぞれ代符A1、A3と同一であっても、粗大介在物の密度が本発明の範囲内のものでないものでは、微量のシグマ相が生じたり、耐孔食性が劣化していた。
Figure 2005036313
Figure 2005036313
Al 20 %以上長径5μm以上の介在物密度と孔食発生温度との関係を示すグラフである。 酸化物系介在物の長径および組成の測定箇所を定義する酸化物系介在物の模式図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.03%以下、Si:1.0 %以下、Mn:1.5%以下、P:0.040 %以下、S:0.008 %以下、 sol.Al :0.040 %以下、Ni:5.0 〜9.0 %、 Cr:23.0〜27.0%、Mo:2.0 〜4.0 %、W:1.5 %超 5.0%以下、N:0.24〜0.35%、Feおよび不純物:残部
    かつ、PREW=Cr+3.3(Mo+0.5W) +16Nが40以上で
    Mo+1.1 Ni≦12.5
    Mo−0.8 Ni≦−1.6
    なる関係を満たす化学組成を有し、Alを20%以上含み長い側の径が5μm 以上の介在物と定義される粗大介在物が断面観察で1平方mm当たり10個以下であることを特徴とする二相ステンレス鋼。
  2. 前記化学組成が、更に0.2 〜2.0 質量%のCuと0.05〜1.5 質量%のVの一方または両方を含む、請求項1に記載の二相ステンレス鋼。
  3. 前記化学組成が、更に0.0005〜0.005 質量%のBおよび0.0005〜0.2 質量%の希土類元素の中の1種または2種以上を含む請求項1または2に記載の二相ステンレス鋼。
JP2004148060A 2003-06-30 2004-05-18 二相ステンレス鋼 Withdrawn JP2005036313A (ja)

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