JP6776469B1 - 二相ステンレス鋼とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】室温靭性に優れた二相ステンレス鋼を提供する。【解決手段】質量%にてC:0.001〜0.030%、Si:0.05〜0.5%、S:0.002%以下、Ni:6〜7.5%、Cr:23〜26%、Mo:2〜4.0%、N:0.20〜0.40、Al:0.005〜0.03%、Mn:0.3〜1.0%およびB:0.0001〜0.0050%、O:0.001〜0.01%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、100≦(10Mn−Ni+Cr−5Mo+10N+1000B)/10Al≦186に調整し、圧延方向に垂直な断面において任意選択した100μm間隔中にフェライト相が2〜30個で構成される組織を有する二相ステンレス鋼。この製造方法は、原料を溶解して二相ステンレス鋼塊を得、鋼塊を1200〜1270℃に加熱して圧下率80〜98%で熱間圧延を施し、1000〜1150℃かつ10〜20分間焼鈍を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、二相ステンレス鋼に関し、具体的には、室温の靭性に優れる二相ステンレス鋼に関するものである。なお、本発明における二相ステンレス鋼は、薄鋼鈑に限定されるものではなく、厚鋼鈑や形鋼、棒鋼、線材、鋼管等のいずれであってもよい。
二相ステンレス鋼は、鉄をベースとして、Cr、Mo、Ni、Nを含有する鋼種である。本合金の特徴として、重量に対する強度がオーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼よりも優れている。このため必要な強度を付与させる場合に薄肉とすることができ、製品の軽量化、小型化が容易に可能となる。また、靭性も高く材料強度が高い。さらに二相ステンレス鋼のNi含有量は8%以下程度と比較的低濃度なことから、比較的安価であり経済性に優れる。なおかつ溶接性も良好なため、海水環境、油井関連の構造物、海水淡水化装置の熱交換器などの、高い耐食性が求められる環境に用いる材料として広く使用される。
しかしながら、二相ステンレス鋼は、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼に比べて相安定性に劣ることより、Cr、Al、Nを主体とする硬く脆い窒化物が析出し易い特徴を持つ。これらのAlN、CrNに代表される窒化物が析出した場合、特に材料の靭性を低下させ、また窒化物の周囲で耐食性に寄与するCr、Mo、Nが欠乏するため耐食性を低下させる。この特徴はAl、Nの増加とともに耐食性を向上させるために添加する元素であるCr、Moなどの含有量が多くなるほど顕著となる。
これらの窒化物は、二相ステンレス鋼において有害な金属間化合物としてよく知られるσ相に比べても短時間で析出し、特に肉厚が厚い材料の中心部や水冷が難しい溶接後の組織においては、水冷に準ずる高い冷却速度でも避けるのが難しい場合があった。
従って、これまでに様々な合金成分の提案、熱処理条件、冷却条件の変更などを工夫し、組織制御をすることで、靭性を確保するための提案がなされている。
特許文献1では、Crの含有量を20〜25%にとどめ、かつ0.5〜2.0%のMnを含有させ、Nの溶解度を高めることによって低温靭性に優れる二相ステンレス鋼管を提供することが提案されている。しかしながら、Mnは硬くて脆い有害な金属間化合物であるσ相の析出を促進させる元素であるため、実用の製造工程あるいは加工、使用時においてはσ相の析出を完全に避けることが難しく、靭性を損なう、あるいは所定の耐食性を得られないリスクを有する問題がある。
特許文献2では、Mnの含有量を0.05〜0.3%にとどめて低温靭性に優れた二相ステンレス鋼が提案されている。しかしながら、特許文献2では室温の靭性に関してなんら記述がされておらず、室温の靭性に考慮した鋼ではない。
特開2016−3377号公報 特許第6510714号公報
実施例における金属組織写真図である。
本発明は、従来技術による上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は室温での靭性に優れた二相ステンレス鋼を提供することである。
CrおよびMoは[Cr、Mo]Nの構成元素であるため、これらの過度な添加はCr窒化物の析出を促進し、靭性を低下させる。またフェライト相あるいはオーステナイト相中に固溶するNi量を増加させると、靭性を向上させることができるが、過度なNiの添加は、鋼中のフェライト相率を減少させる。フェライト相中のNの固溶限は小さいため、フェライト相中に過飽和となるCrと結びつきCr窒化物を析出させ、靭性を低下させる。MnはNの溶解度を高めるため、Cr窒化物の析出を抑制するが、σ相の析出を促進するため、これによる靭性低下のリスクを高める。また、Mo、Cr、NiはAl窒化物の析出を促進し、これも低温靭性を低下させる。しかしながら、Ni、Cr、Mo、Nの元素は耐食性を高める基本的な元素であるため、極力これらを高濃度で含有しつつ、Cr窒化物、Al窒化物を抑制するように化学組成の調和を取ることが望ましい。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた。まず、電解鉄、Cr、Mo、Niなどの原料を秤量して、高周波誘導炉で溶解した。坩堝はマグネシアであり、溶解量は20kgである。この際、Cr、Mo、Ni、N、Al、Mnの濃度を種々変化させて、測定に供することを目的とした。溶解後、鋳型に鋳込み、その後鍛造して15mm
の板厚に仕上げた。この鍛造板から鍛造方向に平行な断面が評価面となるように切り出した。サイズは10×10×240mmである。この試験片にJIS Z2242に従ってシャルピー衝撃試験を実施した。
その結果、質量%でNi:6〜7.5% 、Cr:23〜26%、Mo:2〜4 .0%、Mn:0.3〜1.0%の化学成分を基本とした。さらに、発明者らは研究を重ね、Al窒化物、Cr窒化物の析出抑制においてAl、N、Cr、Mo、Mnの関係が適切となる範囲およびこれらの元素の関係性を見出した。さらに微量添加されるその他の元素の含有量についてもその範囲を特定した。
本発明の高耐食二相ステンレス鋼は、上記の知見に基づいてなされたもので、以下質量
%にて、C:0.001〜0.030%、Si:0.05〜0.5%、S:0.002%以下、Ni:6〜7.5%、Cr:23〜26%、Mo:2〜3.32%、N:0.20〜0.40%、Al:0.005〜0.03%、Mn:0.3〜1.0%およびB:0.0001〜0.0050%、O:0.001〜0.01%を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、100≦(10[%Mn]−[%Ni]+[%Cr]−5[%Mo]+10[%N]+1000[%B])/10[%Al]≦186に調整し、圧延方向に垂直な断面において、任意に選択した100μmの間隔中に、500倍に拡大した場合において目視できるフェライト相が2〜30個で構成される組織を有することを特徴とする二相ステンレス鋼であることを特徴とする。
本発明においては、さらに、Wおよび/またはCuを合計で1%以下含有することを特徴とする。
本発明においては、JIS Z2242に規定されている衝撃値の値が室温において400J/cm以上を満たすことを特徴とする。
本発明においては、800±5℃×8〜12分の歪取焼鈍を加えた際のJIS Z2242に規定されている衝撃値の値を70J/cm以上を満たすことを特徴とする。
本発明においては、950℃±5℃×8〜12分の歪取焼鈍を加えた際のJIS Z2242に規定されている衝撃値の値を150J/cm以上を満たすことを特徴とする。
さらに、製造方法も提供する。つまり、原料を溶解して二相ステンレス鋼塊を得、二相ステンレス鋼塊を1200〜1270℃に加熱した後に圧下率80〜98%で熱間圧延を施した後、1000〜1150℃かつ10〜20分間焼鈍を行うことが必要である。
以下、本発明における各元素の成分組成と、Al窒化物、Cr窒化物の析出を抑制するためのMn、Ni、Cr、Mo、N、B、Alの関係式を説明する。
本発明の二相ステンレス鋼は、以下に記載する各元素を各々記載した範囲で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものである。不可避的不純物とは、二相ステンレス鋼を工業的に製造する際において、種々の要因により混入するもので、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。なお本発明において、特に断りのない限り「%」は「質量%」を表す。
C:0.001〜0.030%
Cはオーステナイト相を安定化させるために有効な元素であるが、炭化物を析出させ、耐孔食性を低下させる元素であるので、含有量の上限値は0.030%が好ましく、0.025%以下が特に好ましい。一方で、下限値は強度の低下を防止する点で0.001%以上が好ましい。
Si:0.05〜0.5%
Siは、脱酸剤、脱硫材として添加される元素である。またSiは湯の流動性を高めるため、溶接性を良好にする元素である。しかしSiを過剰に含有する場合σ相の析出を促進させる。従ってSiの含有量の上限値は、σ相などの金属間化合物の析出を抑える点から0.5%以下が好ましく、0.35%以下が特に好ましい。下限値は、脱酸剤としての効果を発揮する点で0.05%以上が好ましい。Siによる脱酸の効果を確実にし、また溶接時の湯の流動性を良好に保つため、より好ましい下限値は0.15%以上である。
S:0.002%以下
Sは、鋼中に不可避的に混入する不純物元素であり、鋼の熱間加工性を劣化させ、靭性を低下させる作用を有する。また硫化物を形成し、靭性の低下や孔食の起点となるため耐食性に有害に作用する。そのためS含有量は極力少ない方が良く、上限値は0.002%が望ましい。より好ましくは0.0015%以下である。但しSは僅かの含有でも溶融時の湯の流動性を大きく高めることから溶接性を良好にする元素でもある。これよりSは特に限定しないが、良好な溶接性を得る点から0.0001%以上含有することが好ましい。なおSはAl、Siの添加により脱硫を行うことで、本発明の範囲に調整する。
Ni:6〜7.5%
Niは、オーステナイト生成元素であり、二相ステンレス鋼のフェライト相とオーステナイト相の相比を良好に保つ為に不可欠である。またNiは活性態域の溶解を抑制し、さらに窒素の溶解度を高めるため、耐食性に有効な元素である。そのため下限値はオーステナイト相、フェライト相のバランスを保ち、所定の耐食性を得るため6%以上が好ましい。但しNiを過度に含有する場合、σ相の析出を促進させ、靭性を劣化させると共に、オーステナイト相の比率が70%を超えて、二相ステンレス鋼として良好な相のバランスを保てなくなり、耐食性を劣化させる。また、フェライト相中のNの固溶限は小さいため、フェライト相中に過飽和となるCrと結びつきCr窒化物を析出させ、靭性を低下させる。したがってNiの含有量の上限値は7.5%が好ましい。より好ましい上限は7%以下である。
Cr:23〜26%
Crはフェライト生成元素であり、また耐孔食性を向上させるために必須な元素である。しかし過度なCrの含有はCr窒化物の析出を促進し、靭性を低下させる。さらにCrはσ相の析出を促進し、これも靭性を大きく劣化させる。このためCrの含有量の上限値は26%が好ましく、フェライト相の過度の増加を防止して二相組織を維持する点から25.8%以下が特に好ましい。一方、Crの含有量の下限値は、所定の耐孔食性を得る点から23%以上が好ましい。より好ましいCr含有量の範囲は、Crの含有による耐食性を維持し、かつフェライト相、オーステナイト相のバランスを良好に保つ点で24〜25.8% であり、25.0〜25.8%の範囲が特に好ましい。
Mo:2〜4.0%
Moは、Cr、N等と同様に耐孔食性を向上させる元素である。但しMoを過度に含有する場合、[Cr、Mo]Nとして、窒化物の析出を促進させる。さらにσ 相の析出も促進し靭性を劣化させる。このためMoの含有量の上限値は4.0%が好ましく、下限値は必要な耐食性を得る点から2%以上が好ましい。さらに好ましいMoの範囲は2.2〜3.8%である。
N:0.20〜0.40%
Nは、強力なオーステナイト生成元素であり、フェライト相とオーステナイト相とのバランスを適正にするために必要な元素である。また耐孔食性を大きく向上させる効果を有する。一方で、Nの含有量が過剰になると、Al窒化物、Cr窒化物を生成させることにより靭性の低下、耐食性の劣化などを生じさせる。また溶接時にブローホールを生じさせ易くするなど溶接性を劣化させる。従ってNの下限値は0.20%以上が好ましく、所定の耐食性を得る点から0.22%以上がより好ましい。また上限値は窒化物の生成を抑制する点から0.40%以下が好ましい。
Al:0.005〜0.03%
AlはSiと同様に脱酸剤、脱硫材として添加される成分であり、Bの歩留を安定化させるために重要な元素である。しかしAlを過剰に含有する場合Al窒化物等を析出させ、低温靭性の劣化を引き起こす。また窒化物周囲のフェライト相、オーステナイト相のN含有量を欠乏させることで耐食性の低下を生じる。従ってAlの含有量の上限値は、Al窒化物の析出を抑え、靭性の低下を防止する点から0.03%以下が好ましく、下限値は、脱酸剤としての効果を発揮する点で0.005%以上が好ましい。
Mn:0.3〜1.0%
Mnはオーステナイト生成元素であるため、オーステナイト相とフェライト相の比率の調整に有効である。またMnはMnSの形成によりSを固着することで熱間加工性の向上に有効な元素である。さらにMnはNの溶解度を高める作用があるため、CrNの析出抑制に有効である。このためMnは0.3%以上含有させる。これらの効果を確実に得るためには0.5%以上含有させることがより好ましい。しかし前述のとおり過度なMnの固溶はσ相の析出を促進し、これによる靭性および耐食性を低下させる。さらにMnを過度に含有する場合、ごく微量のSであってもMnSを形成し、孔食の起点となることで耐食性を劣化させる。従ってMnの含有量の上限値は、σ相の析出を抑えて靭性の低下を抑制し、また耐孔食性の低下を防止する点から1.0%以下である必要がある。好ましくは0.9%以下であり、0.8%以下が特に好ましい。
B:0.0001〜0.005%
Bはσ相の析出を強力に抑制し、耐脆化性に対して有効に作用する。またBはSに先駆けて粒界に偏析し、Sの偏析による粒界強度の低下を抑制することで、熱間加工性を向上させる効果がある。このためBを0.0001%以上含有させることが好ましい。一方で過度なBの含有は硼化物を析出させ、靭性を低下させる。またBは溶接時において高温割れ感受性を高めるため、Bの上限値は0.005%が好ましい。
O:0.001〜0.01%
OはAl、Mn、Ca、Mgなどと反応して酸化物系介在物を生成する。この介在物が増加すると靭性の低下や熱間加工性が低下、また孔食の起点となり耐孔食性も劣化させる。従って、上限は0.01%が好ましい。一方、脱酸による極端なO濃度の低減は、Sの極端な低減を招き、N量の制御が困難となり、多量のN添加による窒化物生成などで、耐粒界腐食性低下を招く。従って下限は0.001%が好ましい。好ましくは0.002〜0.008%である。
Wおよび/またはCu:合計で1%以下
本願発明ではWおよび/またはCuを合計で1%以下の範囲で含有しても構わない。Wは耐孔食性を向上する元素であり、Cuは耐酸性を向上する元素である。そのため、1%以下の範囲で含有してもよい。
100≦(10[%Mn]−[%Ni]+[%Cr]−5[%Mo]+10[%N]+1000[%B])/10[%Al]≦186
上記に構成される各元素を所定の範囲で含有し、上記に示される関係を満たすことで後述する常温における衝撃値の値を満足する。好ましくは110〜180である。
任意の100μm間隔にフェライト相が2〜30個
本願発明の二相ステンレス鋼は圧延方向に垂直な断面において、任意に選択した100μmの間隔中にフェライト相が2〜30個で構成される組織を有することが必要である。その理由は2個未満だと本願発明の靭性値を満たすことができない。30個超だと硬すぎて機械加工ができなくなる。そのため、このように規定した。
上記の関係式を満たすことによってσ相やAl窒化物を制御できる。すなわち100未満ではAl窒化物が析出し、186超ではσ相が析出する。よって、上記の関係式を満たすことでJIS Z2242に規定されている衝撃値の値が室温において400J/cm以上を示すようになる。
上記の関係式を満たすことによってσ相やAl窒化物を制御できる。すなわち100未満ではAl窒化物が析出し、186超ではσ相が析出する。また、上記の関係式を満たすことによってσ相の析出を制御し、800±5℃×8〜12分の歪取焼鈍を加えた際のJIS Z2242に規定されている衝撃値の値を70J/cm以上を示すようになる。
そして、上記の関係式を満たすことによってσ相やAl窒化物を制御できる。すなわち100未満ではAl窒化物が析出し、186超ではσ相が析出する。上記の関係式を満たすことによってσ相の析出を制御し、950℃±5℃×8〜12分の歪取焼鈍を加えた際のJIS Z2242に規定されている衝撃値の値を150J/cm以上を示すようになる。
なお、本発明の二相ステンレス鋼が出荷先において、曲げ加工あるいは溶接などの処理がなされる場合がある。その場合、このような加工後に上記の歪取焼鈍を施すのが一般的である。つまり、二相ステンレス鋼の加工硬化やσ相の析出による硬化を元々の特性に回復するものである。本発明の二相ステンレス鋼は、そのような熱処理を施されてもなお、所定の靭性値を維持することができることを示す。
さらに、本願発明の二相ステンレス鋼は下記の通り、製造することで上記の組織を満足するとともに、上記靭性値を満足する。すなわち、常法に従い、本願発明の成分範囲をもつ二相ステンレス鋼塊を作製し、1200〜1270℃に加熱した後に圧下率80〜98%にて熱間圧延を施す。その後、1000〜1150℃かつ10〜20分間焼鈍を行う。
このように温度を設定した理由を説明する。熱間圧延温度が1200℃未満と低いと、σ相が析出し、圧延で割れてしまう。1270℃超だと熱間圧延前にスラブが変形してしまい圧延ができなる。そのため、熱間圧延は1200〜1270℃で行わなければならない。焼鈍温度が1000℃未満だとσ相が析出し、上記靭性値を満足できない。1150℃超だとフェライト相が肥大化してしまい、上記靭性を満たさない。焼鈍時間を10分未満だと再結晶が進まず、上記靭性値を満たさない。20分超だとフェライト相が肥大化し、上記靭性を満たさない。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
鉄屑、フェロクロム、フェロニッケル、ステンレス屑などを所定の比率に調整した原料を電気炉にて溶解し、AOD(Argon Oxygen Decarburization)炉または、VOD(Vacuum Oxygen Decarburization)炉で二次精錬して表1に示した種々の成分組成に調整した後、連続鋳造して200mm厚の鋼片(スラブ)とした。
なお表中に示したC、Sの組成は炭素・硫黄同時分析装置(酸素気流中燃焼−赤外線吸収法)を用いて、Nの組成は、酸素・窒素同時分析装置(不活性ガス−インパルス加熱溶融法)を用いて、また、上記以外の組成は蛍光X線分析を用いて分析した値である。
次いで、上記スラブに熱間圧延を施して板厚を5〜40mmとし、続いて焼鈍を施し、発明例および比較例の熱延焼鈍鋼板を得た。
Figure 0006776469
(フェライト相個数)
各発明例および比較例について、まず、二相ステンレス鋼板の圧延方向に垂直な断面を切り出し、鏡面研磨した後、10%蓚酸電解エッチングにおいて組織を検出した。光学顕微鏡を用いて500倍の倍率で組織写真を撮影し、厚み方向で100μmの間隔に存在するフェライト相の個数をカウントした。なお、写真は10枚撮影し、各写真でカウントを行い、その平均値を代表値とした。図1に、その一例である板厚22mmの発明例6の組織写真を示す。図の縦線が100μmの線であり、この線上に存在するフェライト相を数えている。
(靭性値の測定)
靭性の評価は板厚5〜40mmの鋼鈑より採取し、試験片の長さが鋼鈑の圧延方向に対して平行になるよう、2mmVノッチを有した試験片を作製した。これをJIS Z2242に従って常温における衝撃値を評価した。このとき衝撃値が400J/cm以上を満たすものを○、400J/cmを下回るものを×として評価し、表2に示した。
次いで上記板厚5〜40mmの熱延鋼板を採取して、800℃±5℃×8〜12分または950℃±5℃×8〜12分のいずれかの歪取焼鈍を行い、水冷を行った。その後、試験片の長さが圧延方向に対して平行になるよう、2mmVノッチを有した試験片を作製した。これをJIS Z 2242に従って常温における衝撃値を評価した。このとき、800℃±5℃×8〜12分の歪取焼鈍を行った試験片の衝撃値が70J/cm以上を満たすものを○、70J/cmを下回るものを×として、950℃±5℃×8〜12分の歪取焼鈍を行った試験片の衝撃値が150J/cm以上を満たすものを○、150J/cmを下回るものを×として評価し、表2に示した。
(評価)
総合的な評価として常温の靭性が○かつ800℃±5℃×8〜12分の歪取焼鈍を行った試験片の靭性が○かつ950℃±5℃×8〜12分の歪取焼鈍を行った試験片の靭性が○のものを「◎」、どれか1〜2つ×があるものを「○」、全て×のものを「×」として表に示した。また、製造できなかったものと耳割れが発生したものも総合評価として「×」として示した。
発明例1〜10(但し※3、6、9は参考例)は、いずれも化学成分および条件式1が本発明の範囲内であることから、任意の100μm間隔のフェライト相が2〜30個を満たした。その結果、室温での靭性および800℃や900℃での歪取焼鈍後の靭性のいずれかが良好であり、好ましい例においてはすべての靭性が良好であった。
試料番号11はMo含有量が下限を下回り、それ以上にMn含有量が上限を超えたため、σ相の析出を促進し、さらに、焼鈍温度が低くフェライト相の個数が多かった。これにより靭性を悪化させた。さらに機械加工もできなかった。
試料番号12はCr含有量が下限を下回り、それ以上にN含有量が下限を下回ったのと同時に焼鈍温度が高かったため、フェライト個数が少なくなり靭性を悪化させた。
試料番号13はCr含有量が上限を超え、Mo含有量が上限を超えたため、σ相およびCr窒化物の析出を促進した。さらに、焼鈍時間が長かったためフェライト個数が少なくなり靭性を悪化させた。
試料番号14はMn含有量が下限を下回り、それ以上にNi含有量が上限を超えたため、σ相の析出を促進した。さらに焼鈍温度が低く、焼鈍時間が短かったためフェライト個数が多くなり靭性を悪化させた。さらに機械加工もできなかった。
試料番号15はN含有量が上限を超え、Al含有量が上限を超えたため、Al窒化物が多く析出した。さらに、焼鈍温度が高く、焼鈍時間が高かったためフェライト個数が少なくなり靭性を悪化させた。
試料番号16はAl含有量が下限を下回り、それ以上にS含有量が上限を超えたと同時に熱間圧延温度が高くなった。そのため熱間圧延前の加熱時にスラブが変形してしまい、圧延することができなかった。そのため、靭性値の評価が不可能であった。
試料番号17はAl含有量が下限を下回り、O含有量が上限を超えたため、介在物が増加するとともに熱間圧延温度も低く、耳割れが発生した。さらに、焼鈍温度が高く、焼鈍時間も長かったのでフェライト相個数が少なく、靭性値を悪化させた。
試料番号18はB含有量が下限を下回ったとともに熱間圧延温度が低かったため熱間圧延工程で耳割れが発生した。さらに、Al含有量が上限を超えたためAl窒化物が生成した。また、焼鈍温度が低く、焼鈍時間が短かったためフェライト相個数が多くて靭性を悪化させた。さらに機械加工もできなかった。
Figure 0006776469

Claims (6)

  1. 以下、質量%にて、C:0.001〜0.030%、Si:0.05〜0.5%、S:0.002%以下、Ni:6〜7.5%、Cr:23〜26%、Mo:2〜3.32%、N:0.20〜0.40、Al:0.005〜0.03%、Mn:0.3〜1.0%およびB:0.0001〜0.0050%、O:0.001〜0.01%を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、100≦(10[%Mn]−[%Ni]+[%Cr]−5[%Mo]+10[%N]+1000[%B])/10[%Al]≦186に調整し、圧延方向に垂直な断面において、任意に選択した100μmの間隔中に、500倍に拡大した場合において目視できるフェライト相が2〜30個で構成される組織を有することを特徴とする二相ステンレス鋼。
  2. さらに、Wおよび/またはCuを合計で1%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の二相ステンレス鋼。
  3. JIS Z2242に規定されている衝撃値の値が室温において400J/cm以上を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の二相ステンレス鋼。
  4. 800±5℃×8〜12分の歪取焼鈍を加えた際のJIS Z2242に規定されている衝撃値の値70J/cm以上を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二相ステンレス鋼。
  5. 950℃±5℃×8〜12分の歪取焼鈍を加えた際のJIS Z2242に規定されている衝撃値の値を150J/cm以上を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二相ステンレス鋼。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の二相ステンレス鋼の製造方法であって、
    原料を溶解して二相ステンレス鋼塊を得、
    前記二相ステンレス鋼塊を1200〜1270℃に加熱した後に圧下率80〜98%で熱間圧延を施した後、1000〜1150℃かつ10〜20分間焼鈍を行うことを特徴とする二相ステンレス鋼の製造方法。
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