JP6771963B2 - 二相ステンレス鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、二相ステンレス鋼に関し、具体的には、耐粒界腐食性に優れるとともに、耐孔食性にも優れる二相ステンレス鋼に関するものである。なお、本発明における上記二相ステンレス鋼は、薄鋼板に限定されるものではなく、厚鋼板や形鋼、棒鋼、線材、鋼管等のいずれであってもよい。
二相ステンレス鋼は、強度と耐食性を兼備した優れた材料であり、海水などの高塩化物環境下や、化学プラントなどの厳しい粒界腐食性環境下で使用される耐食性材料として広く用いられている。
海水に代表される高塩化物環境において生じる腐食は、不働態皮膜が破壊されることによる孔食やすきま腐食が主であり、化学プラントなどでは、材料が薬液に接し高電位域に曝されることで粒界腐食が生じるケースが散見される。
二相ステンレス鋼はその利便性から年々、利用分野が広がり、耐孔食性と耐粒界腐食性ともに要求されるようになり、両耐食性を兼ね備えた二相ステンレス鋼が必要となってきている。例えば、粒界腐食環境のプラント配管を海水にて冷却するような状況では配管内側には耐粒界腐食性、外側には耐孔食性が求められる。
特許文献1には、質量%で、%P×%B≦12×10−5とすることで耐粒界腐食性を向上させ、Bが低減されることによる熱間加工性の低下を、Si×Al≧1×10−3とすることで抑制する二相ステンレス鋼が提案されている。しかしながら、特許文献1には、耐孔食性に関してはなんら記述されておらず、耐孔食性を考慮した鋼ではない。さらに耐粒界腐食性・耐孔食性に影響を与えるCuおよびWについて考慮しておらず、耐粒界腐食性においても十分でない。
特許文献2には、高強度、高靭性、高耐食性を同時に満たす二相ステンレス鋼が提案されている。本技術においてはB添加が耐孔食性向上に有効であり、また、Cr・Mo・W・Cu・Nからなる式で表される指標を特定値以上にし、Ti・Nb・Vを無添加にして窒化物を形成させないことで耐孔食性を向上させている。しかし本技術はCuが積極的に添加されおり、耐粒界性には優れない。Cuは粒界腐食環境、特に1V付近の高い電位域にて耐粒界腐食性を劣化させるためである。
特許文献3には、耐脆化性に優れる高耐食二相ステンレス鋼が提案されている。本鋼は、質量%で、%B≧0.001%Mn−0.00005とすることでσ相の析出を抑制して耐孔食性を確保している。しかしながら、特許文献3には、耐粒界腐食に関する記述がなく、また、P量を制限していない。さらにBを必須の添加元素としており耐粒界腐食性に優れない。
特許文献4には、Si量を規定してNの固溶度を高め、溶体化後の空冷時における粒界へのクロム窒化物の析出を抑制することで、鋭敏化による粒界腐食を防止した二相ステンレス鋼が開示されている。しかしながら、本技術においては、Mnが多量に添加されており、MnS介在物が形成されることが容易に想像され、耐孔食性に劣る。
特開2015−10248号公報 特開2002−339042号公報 特開2014−189825号公報 特開2006−233308号公報
本発明は、従来技術における上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた耐粒界腐食性と優れた耐孔食性を兼備する二相ステンレス鋼を提供することにある。
発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた。その結果、耐粒界腐食性を著しく劣化させるBはα/γ粒界に特に強く偏析することを見出し、P自体は粒界に偏析することで耐粒界腐食性を劣化させるものの、Pを積極添加することでBの粒界へ偏析を抑制できることを見出した。さらにB添加はσ相析出温度域で短時間加熱した際のσ相析出抑制に効果があることを見出し、P÷Bの値を制御すること、および、主要成分とBからなる式を制御することで耐粒界腐食性と耐孔食性を兼備した二相ステンレス鋼が作製できることが明らかとなった。
本発明は、上記検討によってなされたものであり、質量%で、C:0.05%以下、Si:0.16〜1.0%、Mn:0.1〜1.3%、P:0.005〜0.040%以下、S:0.0002〜0.003%、Al:0.002〜0.050%、N:0.05〜0.400%、Ni:5〜8%、Cr:20〜27%、Mo:2〜5%、B:0.0001〜0.0020%、Ca:0.0001〜0.0020%、W:0.03〜0.20%、Cu:0.01〜0.30%、O:0.0002〜0.008%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する二相ステンレス鋼であって、PおよびBが(1)式を満たし、Si,Mn,Ni,Cr,Mo,NおよびBが(2)式を満たすことを特徴とする。
%P−10%B+0.005≧0 …(1)
5%Si+30%Mn+10%Ni+7%Cr+30%Mo−50%N−5000%B<345 …(2)
本発明においては、二相ステンレス鋼中のγ相量が40〜60%であることを好ましい態様とする。
実験1におけるP含有量とB含有量の関係を示すグラフである。 実験1における2次イオン質量分析法(SIMS)による金属組織中のBの分布を示す写真図である。 実験2におけるσ相析出量と孔食電位比の関係を示すグラフである。 実験2におけるσ相析出量と式(5%Si+30%Mn+10%Ni+7%Cr+30%Mo−50%N−5000%B)の値の関係を示すグラフである。 実施例および比較例におけるP含有量とB含有量の関係を示すグラフである。 実施例および比較例におけるσ相析出量と孔食電位比の関係を示すグラフである。 実施例および比較例におけるσ相析出量と式(5%Si+30%Mn+10%Ni+7%Cr+30%Mo−50%N−5000%B)の値の関係を示すグラフである。
以下、本発明の二相ステンレス鋼をより詳細に説明する。以下、%は質量%とする。
発明者らは、二相ステンレス鋼の耐粒界腐食性および耐孔食性を向上するべく、粒界に偏析したり、析出したりすることが知られているB,Pに着目し、以下に述べる<実験1>に記す粒界腐食試験を行った。また、製造時、溶接時に析出するσ相の析出耐性とそれに伴う耐孔食性を調査するため<実験2>を実施した。
<実験1>
Si,Mn,Ni,Cr,Mo,Nを含有し、さらに、P、B、を表1に示した組成で含有し、残部がFeからなる鋼を、高周波誘導炉を用いてマグネシア坩堝中で大気溶解し、CaO−SiO−Al−MgO−F系スラグを形成して脱硫した後、鋳型に鋳込んで20kg鋼塊(インゴット)とした。
次いで、上記インゴットを熱間圧延し、1000〜1200℃の範囲で焼鈍し、酸洗し、6〜10mmの熱延焼鈍板とした。さらにその一部を冷間圧延して板厚:2〜6mmの冷延板とし、その後、1000〜1200℃の範囲で焼鈍し、酸洗して冷延焼鈍板とした。上記の熱延焼鈍板と冷延焼鈍板を、切断し、鏡面研摩にて仕上げ、厚さ:1.5〜9mmの腐食試験片とした。
該試験片を70%の沸騰硝酸に48時間浸漬して粒界の浸食深さを測定した。また、該焼鈍版を電解研摩に仕上げ、2000倍にて観察し、後方散乱電子解析(EBSD)法にて相比を算出した。さらに、該焼鈍板の圧延方向垂直断面の組織に対して、シュウ酸エッチングを施した後にKOHエッチングを施して相と粒界を可視化して、板厚方向に100μmの線を引いた際に、線を横切ったα/γ粒界の数を数えた。該数をα/γ切断数と名づけた。
上記の結果を表1にまとめた。
Figure 0006771963
上記の表にある「耐粒界腐食」の評価方法は、70%沸騰硝酸に48時間浸漬した後の粒界侵食深さが1.2μm未満であるものを○、1.2〜1.4μmであるものを△、1.4μmより深いものを×とした。
図1に結果をまとめると、%P−10%B+0.005≧0を満たすようなP、B量であると粒界侵食深さが1.4μm以下になることがわかる。これは、Pの粒界への偏析が、耐粒界腐食性を著しく劣化させるBの粒界への偏析を低減させたことによると推測される。これは鋼8において、P=0.001%、B=0.0008%と、例えば鋼1や2等と比較してもともに耐粒界腐食性を劣化させる元素の添加量が少ないにも関わらず粒界侵食深さが1.4μmより大きくなっていることからも推測される。
B分布の観察からも、同様のことが言える。Bは軽元素であり、かつその添加量が極めて少ないため、検出が非常に難しい。さらに、二相ステンレス鋼は粒径が小さく、Bの偏析を観察するには高分解能が必要である。筆者らの鋭意な研究により、2次イオン質量分析法(SIMS)を用いることで、粒界へのBの偏析を捕らえられることが明らかとなった。図2はその観察結果であり、明るい箇所にBが存在していることを示している。本図からα/γ粒界にBが強く偏析しているとは明らかであり、上記の現象が生じていると推測される。
鋼1〜4のように、%P−10%B+0.005≧0を満たし、かつ、γ相量が40−60%からなり、かつα/γ切断数が25以上の鋼の粒界侵食深さは1.2μm未満となった。
鋼6,7のように、%P−10%B+0.005≧0を満たすも、γ相量が40−60%から外れる鋼の粒界侵食深さは1.2〜1.4μmであることが確認された。これは、相比の大きな偏りにともない両相の成分バランスがくずれ、両相の耐食性の差が大きくなったことによるものであり、なおかつその界面であるα/γ粒界にBが偏析しているためである。
鋼5,7のように、%P−10%B+0.005≧0を満たすも、α/γ切断数が25より小さい鋼の粒界侵食深さは1.2〜1.4μmであることが確認された。これは単位面積当たりのα/γ粒界長さが減少し、α/γ粒界に偏析するBやPの量が相対的に増大したため考えられる。
鋼13,14のように、%P−10%B+0.005≧0を満たすも、Alが0.005%を超え、かつS量、O量の極端に低いものは、粒界侵食深さが1.4μmより深くなり、図1において×となった。これは下記のメカニズムのためである。
Alを大量に添加すると、脱酸が進みかつCaO−SiO−Al−F系スラグ形成による脱硫が促進される。Sには界面活性効果があるため、Sが極端に少なくなるとNの制御が困難となり、Nが鋼中に多量に含有されてしまう。結果、多量のN添加はγ相過多を招き、α/γ粒界長さを短くすることにつながり、なおかつ粒界への窒化物析出を招くため、耐粒界腐食性を劣化させる。
鋼11は、%P−10%B+0.005≧0を満たしても、B=0.0020%以上含有する鋼は耐粒界腐食性に劣る。これは、含有するBの絶対量が多いため、一定量のPを含有させたとしても粒界に偏析するBの絶対量が多くなってしまうためである。
<実験2>
上記の通り、二相ステンレス鋼は耐孔食性も要求される。耐孔食性劣化因子としてσ相があり、σ相は熱処理後の冷却が緩慢である場合に析出する。そこで、焼鈍板製造時に曝される熱履歴や、溶接後放冷した際の溶接部の熱履歴などを想定して、<実験1>で作製した熱延焼鈍板および冷延焼鈍板を900℃30秒の熱処理に供した後に水冷した。
本材料をσ相析出処理材と名づけ、該σ相析出処理板と上記焼鈍板をJISG0577に準拠した孔食電位測定に供し、その孔食電位(Vc’100)の値の比をとることで耐孔食性を比較した。
さらに、σ相析出処理板を電解研摩にて仕上げ、EBSDを用いて、2000倍での観察条件にてσ相量を測定した。
上記の結果を表2にまとめ、σ相析出量と孔食電位比の関係を図3に記した。
Figure 0006771963
鋼1〜12において、σ相析出量が多いほど、その耐孔食性は劣化していき、σ相量が0.5%程度で耐孔食性は本来(σ=0%)の1/3程度、σ相量が1%を超えるとその孔食電位は本来の耐孔食性の1/4以下となり、その耐孔食性は大きく劣化することがわかる。
ここで、鋼13,14は多量のNを含有しているため、窒化物が形成され、もともとの耐孔食性に劣る。さらにその窒化物がσ相の析出サイトとなるため、σ相が析出した際の耐孔食性の劣化の程度が他の条件と比較して大きくなる。
ここで、孔食電位比が1/4=孔食発生臨界温度10℃低下分に見積もられ、実プラントなどでその材料が使用可能かどうかの決定的な違いとなる。従って、その比が0.25未満の鋼を耐孔食性×、0.25〜0.35の鋼を△、0.35より大きい鋼を○とした。
さらに、σ相量と各元素の含有量を回帰分析すると、
5%Si+30%Mn+10%Ni+7%Cr+30%Mo−50%N−5000%B
でσ相析出量を整理できること見出し、
5%Si+30%Mn+10%Ni+7%Cr+30%Mo−50%N−5000%B<355
とすればσ相析出量を1%未満に抑制でき、
さらに上式右辺を345未満にすることでσ相析出量を0.5%未満に抑制でき、耐孔食性の著しい劣化を防止できることを見出した。この関係を示すのが図4のグラフである。
従って、孔食電位の比が0.25未満の鋼を耐孔食性×、0.25〜0.35の鋼を△、0.35より大きい鋼を○としたことは、上式の右辺が355以上を×、355〜345を△、345未満を○とすることも対応する。
本発明は、上記知見に、さらに検討を加えて開発したものである。
次に、本発明の二相ステンレス鋼が有すべき成分組成について説明する。
C:0.05%以下
Cは、オーステナイト安定化元素である。しかし、多量に添加すると、CrおよびMo等と結合して炭化物を形成し、母材中の固溶Crおよび固溶Moの量を低下し、耐食性を低下させる。そのため、Cは0.05%以下に制限する。好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。
Si:0.16〜1.0%
Siは、P化物の粒界への析出を促進し、粒界腐食感受性を増大させる元素であるので、上限を1.0%とする。しかし、Siは、脱酸元素でもあるため、0.16%以上の添加が好ましい。好ましくは0.20〜0.80%の範囲、より好ましくは0.30〜0.70%の範囲である。
Mn:0.1〜1.3%
Mnは、脱酸作用を有する元素である。また、オーステナイト形成元素でもあるので、オーステナイトとフェライトの相比を制御し、α/γ粒界長さを確保するためには、0.1%以上の添加が必要である。一方、1.3%を超える添加は、σ相やχ相を形成して脆化を促進する。さらにMnS介在物形成を促し、耐孔食性を低下させるとともにMnS介在物がσ相の析出サイトとなるため、σ相が析出した際の耐食性劣化が著しい。よって、Mnは0.1〜1.3%の範囲とする。好ましくは0.3〜1.2%、より好ましくは0.6〜1.0%の範囲である。
P:0.005〜0.040%以下
Pは耐粒界腐食性を劣化させる元素であるものの、Bと競合して粒界に偏析する。Bと比較して粒界腐食劣化特性は弱いため、Bの粒界への偏析低減のため一定量の添加が必要である。よって、本発明においては、Pは0.005%以上含有させる。一方、多量の添加はP化物として粒界に析出し耐粒界腐食性や熱間加工性を劣化させる。従って上限を0.040%とする。好ましくは0.010〜0.035%、より好ましくは0.015〜0.033%である。
N:0.05〜0.400
Nは、強力なオーステナイト生成元素であり、後述するCrやMoと同様、耐食性を向上させるとともに、金属間化合物の析出を抑制するのに有効な元素であるので、0.05%以上含有させる。一方、0.400%を超えて含有させると、熱間変形抵抗が上昇して熱間加工性を阻害するとともに、二相組織を維持することが困難となり耐粒界腐食性が劣化する。さらに窒化物の析出により耐孔食性も劣化する。よって、Nは0.05〜0.400%の範囲とする。好ましくは0.1〜0.35%、より好ましくは0.15〜0.32%の範囲である。
Ni:5〜8%
Niは、オーステナイト生成元素であり、オーステナイトとフェライトとの二相組織を維持するためには必須の元素である。5%未満では二相組織を維持することが困難となり、一方、8%を超えると、オーステナイト組織が過剰になるとともに、過不動態腐食の加速因子となり、耐食性が低下するようになるので、Niは5〜8%の範囲とする。好ましくは5.5〜7.5%、より好ましくは6.0〜7.0%の範囲である。
Cr:20〜27%
Crは、耐食性を向上させる元素であり、その効果を得るためには20%以上含有させる必要がある。しかし、27%を超えて添加すると、σ相やχ相などの金属間化合物の形成を助長し、却って耐食性を低下させる。また、Crは、フェライト生成元素であり、過剰な添加は二相組織を維持することを困難とする。よって、Crは20〜27%の範囲とする。好ましくは21〜26.5%、より好ましくは22〜26.0%の範囲である。
Mo:2〜5%
Moは、全面腐食や孔食に対する耐食性を向上させるのに有効な元素であるので、2%以上の含有を必要とする。しかし、Moの過剰な添加は、σ相やχ相などの金属間化合物の形成を助長し、耐粒界腐食性を低下させる。よって、Moは2〜5%の範囲とする。好ましくは2.5〜4.5%、より好ましくは3.0〜4.0%の範囲である。
B:0.0001〜0.0020%
Bは耐粒界腐食性を極めて劣化させる。そのため添加量は上限を0.0020%とする。一方で、Bは短時間の熱処理をした際のσ相の析出を抑制する効果がある。この効果を有効にするためには0.0001%以上の添加が必要である。従って範囲は、0.0001〜0.0020%である。好ましくは0.0001〜0.0018%、より好ましくは0.0001〜0.0015%である。
Ca:0.0001〜0.0020%
Caは、熱間加工性に有害なSと結合してCaSを形成することで、熱間加工性を改善するのに有効な元素であり、その効果を得るためには、0.0001%以上含有させる必要がある。しかし、0.0020%超の添加は、CaOを含有する介在物を形成し孔食の起点となるとともに、σ相が析出する際のサイトとなるため、却って耐孔食性を低下させる。よって、Caは0.0001%〜0.0020%の範囲で添加する。
W:0.03〜0.20%
Wは耐孔食性、耐粒界腐食性をともに向上させる元素である。その効果を有効に働かせるためには0.03%以上の添加が必要である。一方でWは高価であるため、必要以上の添加は好ましくない。そのため上限を0.20%とする。好ましくは0.04〜0.19%、より好ましくは0.05〜0.18%の範囲である。さらに好ましくは0.10〜0.18%の範囲である。
Cu:0.01〜0.30%
Cuの少量添加は耐孔食性向上に有効である一方で、特に高い電位域での粒界腐食環境においてはかえって腐食を進行させる元素である。さらに、Cuはオーステナイト形成元素でもあるため、相比制御の観点と耐食性の観点から適切な範囲での添加を要する。耐孔食性向上および相比の観点から0.01%以上の添加とし、耐粒界腐食性および相比の観点から0.30%以下の添加とする。好ましくは0.03〜0.27%で、より好ましくは0.05〜0.25%である。さらに好ましくは0.10〜0.25%の範囲である。
Al:0.002〜0.050
Alは有効な脱酸元素であり、脱酸によって脱硫を促進してSを低減し、熱間加工性や耐食性の向上に有効な元素である。その効果は0.002%以上の添加により得られる。しかし、過剰な添加は過剰な脱酸、それに伴う脱硫を引き起こし、界面活性元素である硫黄の極端な低減を招き、窒素添加量の制御が困難となる。従ってその上限を0.050%とする。好ましくは0.003〜0.04%、より好ましくは0.004〜0.03%の範囲である。
S:0.0002〜0.003%
Sは、熱間加工性、耐食性に有害な元素であり、0.003%以下に低減する必要がある。一方、Sは界面活性元素であり、極端なS低減は、N添加の制御が困難になり過剰なNの含有を招く。従って下限は0.0002%とする。好ましくは0.0003〜0.0020%、より好ましくは0.0004〜0.0015%の範囲である。
O:0.0002〜0.008%
OはAl,Mn,Ca,Mgなどと反応して酸化物系介在物を生成する。この介在物が増加すると熱間加工性が低下し、また孔食の起点となり耐孔食性も劣化させる。従って上限は0.008%とした。一方、脱酸による極端なO濃度の低減は、Sの極端な低減を招き、N量の制御が困難となり、多量のN添加による窒化物生成などで耐粒界腐食性低下を招く。従って、下限は0.0002%とする。好ましくは、0.0003〜0.006%である。
%P−10%B+0.005≧0
前述したように、P、Bは粒界に偏析することで粒界腐食性を劣化させる元素である。PとBは競合して偏析し、かつPの粒界腐食劣化特性はBと比較して弱いため、Bの含有量に対してPがある割合で添加されることで、Bの粒界への偏析が低減され、結果として耐粒界腐食性は向上する。
5%Si+30%Mn+10%Ni+7%Cr+30%Mo−50%N−5000%B<355
現地溶接等を考えた場合に曝される温度履歴を考慮してσ相析出感受性を調査すると、上記式の右辺が355未満となるような成分範囲で制御することで900度30秒の熱処理に供したときのσ相量を1%以下に抑制でき、耐孔食性の劣化を抑制できるため、上記式を定めた。好ましくは上式右辺が345未満である。
γ相量:40〜60%
相比が大きくくずれると各元素の分配が変動し、両相の耐食性に差異が生じる。かつ両相の界面であるα/γ粒界にBが偏析するため、相比の大きな偏りはα/γ粒界長さを短くすることにつながり耐粒界腐食性劣化を招く。そのため、γ相量を40〜60%とした。好ましくは45〜55%である。
圧延方向垂直断面のミクロ組織に対し、板厚方向に100μmの直線を引いたときに、α相とγ相の界面を横切る回数が25回以上
耐粒界腐食性を著しく劣化させるBはα/γ粒界に特に強く偏析する。そのため、面積当たりのα/γ粒界長さを長くすることでのα/γ粒界へのBの偏析量を相対的に緩和できるため、耐粒界腐食性が向上する。特に、上記の作業に供した際に横切った回数が25回以上である場合に耐粒界腐食性に優れるため、上記回数を25回以上とした。好ましくは30回以上である。
鉄屑、フェロクロム、フェロニッケル、ステンレス屑などを所定の比率に調整した原料を、電気炉にて溶解し、AOD(Argon Oxygen Decarburization)炉、またはVOD(Vacuum Oxygen Decarburization)炉で二次精錬して表3に示した主々の成分組成に調整した後、連続鋳造して鋼片(スラブ)とした。なお、表3中に示したC,Sの組成は、炭素・硫黄同時分析装置(酸素気流中燃焼−赤外線吸収法)を用いて、Nの組成は、酸素・窒素同時分析装置(不活性ガス−インパルス加熱溶融法)を用いて、また、上記以外の組成は蛍光X線分析を用いて、分析した値である。
次いで、上記スラブを熱間圧延、焼鈍、酸洗し、10〜6mmの熱延焼鈍板とし、その内の一部を冷間圧延と熱処理を繰り返して板厚6〜2mmの冷延コイルとした。
次いで<実験1>と同様に、上記熱延焼鈍板および冷延コイルから、幅20mm×長さ25mm×板厚2〜10mmの腐食試験片を採取し、70%沸騰硝酸溶液に48時間浸漬して粒界の浸食深さを測定することで耐粒界腐食性を評価した。さらに上記熱延焼鈍板および冷延コイルから試験片を採取して、EBSDにて相比を測定した。さらに上記熱延焼鈍板および冷延コイルの圧延方向垂直断面のミクロ組織をシュウ酸エッチング、その後KOHエッチングを施すことによりα/γ粒界を確認できるようにし、<実験1>と同様にα/γ切断数を数えた。
続いて、上記熱延焼鈍板および冷延コイルの一部を採取して、900℃30秒の熱処理に供した後に水冷した。本材料をσ相析出処理材と名づけ、該σ相析出処理板と上記熱延焼鈍板および冷延コイルをJISG0577に準拠した孔食電位測定に供し、その孔食電位(Vc’100)の値の比をとることで耐孔食性を比較した。さらにσ相析出処理材のσ相量をEBSDにて測定した。
表3に化学成分を記し、PとBに関する関係式の右辺の結果、σ相析出に関する関係式の右辺の結果を併記した。
表4にγ相量およびα/γ切断数を記し、耐粒界腐食性の判定結果を記した。さらに、σ相量および孔食電位の比を記し、耐孔食性の判定結果を記し、最後に総合的な耐食性の判定結果を記した。
耐粒界腐食性に関しては、70%沸騰硝酸に48時間浸漬した後の粒界侵食深さが1.2μm未満であるものを○、1.2〜1.4μmであるものを△、1.4μmより深いものを×とした。
耐孔食性に関しては、上記の孔食電位の比が0.25未満の鋼を耐孔食性×、0.25〜0.35の鋼を△、0.35より大きい鋼を○とした。
さらに、総合的な耐食性として、耐粒界腐食性が○かつ耐孔食性が○のものを「◎」、耐粒界腐食性または耐孔食性のどちらか、または両方が△のものを「○」、耐粒界腐食性か耐孔食性のどちらかが、または両方が×のものを「×」とした。
以上の結果を、<実験1>と<実験2>と同様にして、図5〜7のグラフにまとめた。
Figure 0006771963
Figure 0006771963
鋼15−27は本発明鋼であり、耐粒界腐食性と耐孔食性ともに優れる。
鋼28−32は耐粒界腐食性にやや劣るも、耐孔食性に優れるため、本発明鋼である。
鋼33−36は耐孔食性にやや劣るも、耐粒界腐食性に優れるため、参考例の鋼である。
鋼37−39は耐粒界腐食性・耐孔食性にやや劣るも、両耐食性ともに著しい劣化が認められないため、参考例の鋼である。
鋼40−43はPとBに関する式(%P−10%B+0.005≧0)か、P量か、B量かが外れるため耐粒界腐食性に劣る。
鋼44はσ相析出に関する式(5%Si+30%Mn+10%Ni+7%Cr+30%Mo−50%N−5000%B<355)を満足せず、耐孔食性に劣る。
鋼45はMnが高く、MnS介在物が多量に生成し、かつ該介在物がσ析出のサイトとなり耐孔食性に劣る。そのため、図7にて、式は満たすにもかかわらず×となっている。
鋼46はBが少なく、σ相が多量に析出するため耐孔食性に劣る。Bが少ないため耐粒界腐食性が高く、図5にて、範囲外にもかかわらず○になっている。
鋼47はPとBに関する式を満足せず、かつσ相析出に関する式も満足しないため、耐粒界腐食性・耐孔食性ともに劣る。
鋼48はW量が少なく、耐粒界腐食性に劣る。そのため、図5にて、PとBに関する式は満たすにもかかわらず×となっている。
鋼49はCa量が多く、介在物が多いため、もともとの耐孔食性に劣る。介在物がσ相析出サイトとなり、熱処理後の耐孔食性劣化にも劣る。
鋼50はCu量が多く、耐粒界腐食性に劣る。そのため、図5にて、PとBに関する式は満たすにもかかわらず×となっている。
鋼51はAl添加量が多く、脱酸および脱硫が強力であり、界面活性効果を有するS量が少ない。その結果、N制御が困難となり、多量のNが添加されてしまっている。そのため窒化物が析出し耐粒界腐食性に劣る。そのため、図5にて、PとBに関する式は満たすにもかかわらず×となっている。
鋼52は粒界偏析成分であるP量B量ともに少ないため、粒界にSが著しく偏析し、熱間加工性に著しく劣り、製造できなかった。
本発明の二相ステンレス鋼は、優れた耐孔食性と優れた耐粒界腐食性を兼備しているため、孔食が腐食原因となる海水環境や、粒界腐食が腐食原因となる化学プラントなどに適用できるだけでなく、両耐食性がともに要求されるような環境にも好適に利用できる。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.05%以下、
    Si:0.16〜1.0%、
    Mn:0.1〜1.3%、
    P:0.005〜0.040%以下、
    S:0.0002〜0.003%、
    Al:0.002〜0.050%、
    N:0.05〜0.400%、
    Ni:5〜8%、
    Cr:20〜27%、
    Mo:2〜5%、
    B:0.0001〜0.0020%、
    Ca:0.0001〜0.0020%、
    W:0.03〜0.20%、
    Cu:0.01〜0.30%、
    O:0.0002〜0.008%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する二相ステンレス鋼であって、
    上記PおよびBが(1)式を満たし、
    上記Si,Mn,Ni,Cr,Mo,NおよびBが(2)式を満たすことを特徴とする二相ステンレス鋼。
    %P−10%B+0.005≧0 …(1)
    5%Si+30%Mn+10%Ni+7%Cr+30%Mo−50%N−5000%B<345 …(2)
  2. γ相量が40〜60%であることを特徴とする請求項1に記載の二相ステンレス鋼。
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