JP2022175772A - Cu、Ni、Sn含有鋼の製造方法 - Google Patents

Cu、Ni、Sn含有鋼の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】CuやSnを含有する鋳片およびそれを熱間圧延して得られる鋼材の表面割れを簡便かつ安価に防止しうる、Cu、Ni、Sn含有鋼の製造方法を提供する。【解決手段】CuやSnを含有する鋼を連続鋳造およびそれに続く熱間圧延を行うに際し、少なくとも1回以上の溶鋼サンプリングを実施し、その濃度分析結果から下記の(1)式により求められるfLが0以下となるように溶鋼成分を調整する。fL=-5.75+27.3×Cu-19.8×Ni+14.1×Sn+2.86×Ni/Cu+0.30×Sn/Cu+171×Cu×Sn …(1)【選択図】なし

Description

本発明は、Cu、Ni、Sn含有鋼の製造方法に関する。
鋼は、Cuを含むと熱間加工性が著しく阻害され、通常の鋼の製造工程である連続鋳造、再加熱、熱間圧延において表面に割れを発生する。これは、連続鋳造もしくは再加熱、熱間圧延時に鋼が雰囲気中の酸素に晒されて酸化する際に、スケール(酸化鉄)と地鉄の間に液体のCuが生成、鋼の結晶粒界に侵入し、界面強度を低下させるため割れに至ることが、非特許文献1に開示されている。また、SnはCuの鋼中への溶解度を下げることにより、Cuによる割れの現象を促進してしまうことから、Sn単独では問題となりにくいが、Cuと併せて存在すると問題になることが非特許文献2に開示されている。
この現象は表面赤熱脆化と呼ばれ、CuやSnがFeと比較して酸化されづらいためにスケール成長の過程でCu、Snが金属状態のまま濃縮すること、およびFe中へのCuの固溶度が低いことが原因とされる。
一方、Cu、Snは鋼の精錬の工程においてきわめて除去しづらいことから、これらを含有する物質を鋼中に混入させないように精錬主原料としてCu、Snの少ないものに厳選するか、もしくはCuの鋼中への溶解度を上げる元素であるNiを添加する方法が知られている。特に、循環型社会となりCuを多く含むスクラップが多量に使用される現在では、Ni添加によりCuを無害化する必要性が高まってきている。しかしながら、Niは稀少で高価な元素であり、また機械的特性や焼入れ性などの鋼材特性を大きく変え得ることから、その添加量を少量に抑えたいというニーズは大きい。
このような背景のもと、CuやSnを含有する鋼の表面割れを防止する技術として、スラブの段階におけるCu濃度とSn濃度をCu+10Sn≦0.4重量%を満足させることによる、割れおよび表面疵のない熱延鋼板およびその製造方法が特許文献1に提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、鋼の表面割れを十分には防止できないことが判明した。
また、特許文献2には、溶鋼に含有されたCu、Ni、Snの各々の量を測定する段階と、Cu、Ni、Snの各々の測定された量を用いて銅当量値を算出する段階と、生産する熱延鋼板に対する厚さ値であって、前記熱延鋼板の表面欠陥発生割合を予測すべき厚さ値を決定する段階と、前記銅当量値および前記厚さ値を用いて、前記生産する熱延鋼板の前記表面欠陥発生割合を予測する予測段階と、前記予測段階において予測された表面欠陥発生割合が所定値以下であるか否かを判断する段階と、前記溶鋼を鋳造してスラブを得る段階と、前記予測された表面欠陥発生割合が前記所定値以下であると判断された場合、前記スラブを熱延して前記厚さ値の熱延鋼板を得る段階とを含むことを特徴とする熱延鋼板の製造方法が提案されている。
しかしながら、特許文献2ではCu、Sn、Ni濃度から熱延板の要求品質が低くなることが予測される場合には板厚を厚くして対応することとされており、求める製品を高品質かつ高精度に作り込むために適用されうる技術とはいえない。また、鋳片段階における割れについて何ら言及がない。
また、特許文献3には、溶鋼湯面近傍のモールド内面形状が、鋳片引き抜き方向下方に向かって広がる逆テーパー値が2~10%である逆テーパー形状で、前記逆テーパー部より下方のモールド内面形状が、鋳片引抜方向に向かって狭まる順テーパー形状であって、該順テーパー値が0~1%の範囲としたモールドを用いると共に、結晶化温度が900℃以下、もしくは結晶化しない特性を有するモールドフラックスとし、前記モールドフラックスと鋼の接触角が70度以下であることを特徴とする連続鋳造方法が提案されている。
しかしながら、特許文献3の方法で表面品位に優れた連続鋳造鋳片を製造することができたとしても、それを圧延する過程において新たにスケールが生成するため、圧延後製品の割れを抑制することはできない。
特開平8-73995号公報 国際公開WO2010/151071号 特開2004-202523号公報
「Materials Transactions」vol.43,(2002), No.3, pp.292-300 「ふぇらむ」vol.7,(2002), No.4, pp.18-22
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、特別な装置を設けることなく、CuやSnを含有する鋳片およびそれを熱間圧延して得られる鋼材の表面割れを簡便かつ安価に防止しうる、Cu、Ni、Sn含有鋼の製造方法を提供することを目的としている。
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
[1]質量%でCu:0.04%以上0.8%以下、Ni:0.01%以上0.8%以下、Sn:0.08%以下、かつ下記の(2)式を満たす成分を含有する鋼を連続鋳造およびそれに続く熱間圧延を行い、下記の(1)式により求められるfが0以下であることを特徴とする、Cu、Ni、Sn含有鋼の製造方法。
=-5.75+27.3×Cu-19.8×Ni+14.1×Sn+2.86×Ni/Cu+0.30×Sn/Cu+171×Cu×Sn …(1)
-5.75+27.3×Cu+14.1×Sn+0.30×Sn/Cu+171×Cu×Sn>0 …(2)
(1)式、(2)式において、元素記号は当該元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
[2]前記成分を含有し、かつ前記(2)式を満たす成分を含有する鋼を連続鋳造およびそれに続く熱間圧延を行うに際し、少なくとも1回以上の溶鋼サンプリングを実施し、その濃度分析結果から前記(1)式により求められるfが0以下となるように溶鋼成分を調整することを特徴とする、[1]に記載のCu、Ni、Sn含有鋼の製造方法。
[3]前記鋼は、質量%で、C:0.001%以上0.20%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Sol.Al:0.001%以上0.1%以下、Cu:0.04%以上0.8%以下、Ni:0.01%以上0.8%以下、Sn:0.08%以下、N:0.015%以下および残部がFeおよび不純物からなり、かつ前記(2)式を満たし、さらに各成分濃度で表される前記(1)式のfが0以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のCu、Ni、Sn含有鋼の製造方法。
[4]前記鋼は、前記Feの一部に替え、質量%で、さらにCr:0.8%以下、Mo:0.5%以下、Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下、Ca:0.01%以下、B:0.005%以下、REM:0.01%以下、の1種以上を含有することを特徴とする[3]に記載のCu、Ni、Sn含有鋼の製造方法。
本発明は、Cu、Ni、Sn含有鋼の製造方法において、前記(1)式により求められるfが0以下となるように溶鋼成分を調整することにより、CuやSnを含有する鋳片およびそれを熱間圧延して得られる鋼材の表面割れを簡便かつ安価に防止することができる。
本発明者は、CuやSnを含有する鋼材の表面脆化挙動およびNiによる表面脆化抑止挙動について鋭意検討し、これら3元素が含有濃度の10倍を超えて鋼材表面に濃縮した際の低融点液相の安定性に着目するに至った。より詳しく述べると、熱延温度(概ね1050~1200℃)におけるFeは8%程度のCuを固溶することができるが、鋼材表面の酸化に伴いCuが上記固溶限を超えて濃縮し、液相を呈する。Ni、Snは上に述べたFe中のCuの固溶度、液相の生成量、および液相が安定となる温度範囲を変化させることで、表面赤熱脆化に影響を及ぼす。
なお、本発明はSnを含有しないCu、Ni含有鋼に対しても問題なく適用することができる。本明細書中においては、Snを含有しないものも含めCu、Ni、Sn含有鋼と記載することとする。
本発明者は、液相の安定性に及ぼすCu、Ni、Sn各濃度の影響を定量的に記述するために、熱力学計算ソフトウェアThermo-Calc(登録商標)を用いてFe-Cu-Ni-Sn4元系において液相が安定となる条件を計算により求めた。その結果、平衡液相率とCu、Ni、Sn濃度の間に、以下の関係式を導出した。
=-5.75+0.91×Cu-0.66×Ni+0.47×Sn+2.86×Ni/Cu+0.30×Sn/Cu+0.19×Cu×Sn (1100℃) …(3)
=-5.90+0.86×Cu-0.69×Ni-0.79×Sn+3.26×Ni/Cu+3.73×Sn/Cu+0.28×Cu×Sn (1150℃) …(4)
=-6.53+0.86×Cu-0.71×Ni-1.60×Sn+3.65×Ni/Cu+7.09×Sn/Cu+0.32×Cu×Sn (1200℃) …(5)
ただし、f は正の値を取る際は平衡液相率を、0および負の値を取る際は液相が安定ではない、すなわち液相率が0であることを表す。
ここで、(3)~(5)式で用いられる濃度の値は鋼材中に含まれる各成分の濃度ではなく、鋼材表面の酸化に伴い濃縮した際の値である。この点を明確にするため、式の左辺を「f 」と右肩に「」を付して表示し、式中において、濃縮したCu、Ni、Snの含有量(質量%)を、Cu、Ni、Snと元素記号の右肩に「」を付して表示している。すなわち、鋼材成分を変数として割れ感受性を予測するためには、地鉄とスケールの界面近傍でどの程度の濃縮が起こるかを見積もる必要がある。
上記課題を解決するため、Cu、Ni、Snを含有する鋼の加熱圧延試験を行った。その方法は以下のとおりである。
表1に示す組成を有する厚さ40mm×幅50mm×長さ100mmの鋼材サンプルを大気雰囲気下で1100℃、1150℃および1200℃に加熱し、圧下率75%の条件で圧延を行った。圧延後の鋼材は染色浸透探傷により表面割れ発生の有無を調査するとともに、任意の箇所で切断し、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて断面の地鉄とスケールの界面における各元素の濃度を測定した。
Figure 2022175772000001
Figure 2022175772000002
まず、表面割れについて割れ検出個数を表2に記載する。1100℃および1150℃で加熱後圧延したサンプルからは割れが発生したが、1200℃で加熱後圧延したサンプルには割れの発生が見られなかった。
次に、各サンプルをEPMAで観察した。さらに、表層から約30μm位置(スケールは含まない)における地鉄相中にて20μm×100μmの領域5か所における各元素の平均濃度を測定した。結果を表2の「スケールと地鉄界面域の平均濃度」欄に示す。Cu、Sn、Ni濃度について、表1に示す鋼中濃度と表2に示すスケールと地鉄界面域の平均濃度とを対比すると、Cu、Sn、Ni濃度はいずれも概ね30倍程度に濃縮されていることがわかった。また、この濃縮度合いはサンプル加熱の温度に因らずほぼ一定であった。
地鉄とスケールの界面においてCu、Sn、Niが鋼材成分濃度の30倍に濃縮することを考慮すると、前述した(3)~(5)式は鋼材の成分を変数とする関係式として(6)~(8)式のように書き換えることができる。(6)~(8)式において、元素記号は当該元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
1100=-5.75+27.3×Cu-19.8×Ni+14.1×Sn+2.86×Ni/Cu+0.30×Sn/Cu+171×Cu×Sn (1100℃) …(6)
1150=-5.90+25.8×Cu-20.7×Ni-23.7×Sn+3.26×Ni/Cu+3.73×Sn/Cu+252×Cu×Sn (1150℃) …(7)
1200=-6.53+25.8×Cu-21.3×Ni-48.0×Sn+3.65×Ni/Cu+7.09×Sn/Cu+288×Cu×Sn (1200℃) …(8)
これらの式を用いて計算されるfの値(f 1100、f 1150、f 1200)を表2に併せて示す。割れが見られた1100℃、1150℃加熱におけるfの値は0を超えており、加熱過程において地鉄とスケールの界面に液相が生成したことを示唆している。一方、1200℃加熱におけるfの値は0以下であり、液相が生成しなかったことを示唆している。この計算結果は割れの有無と一致している。
さらに、(7)式および(8)式で得られるfの値(f 1150、f 1200)は、一般的に用いられる鋼の組成においては(6)式で得られるf(f 1100)より小さい値となる。これは、地鉄とスケールの界面で液相が発生する場合、その量がより少なく、割れは比較的発生しづらいことを意味する。これは、温度の上昇に伴い地鉄のCu固溶度が大きくなることに起因する。すなわち、鋼材中のCu、Sn、Ni濃度から求められる(6)式におけるf 1100≦0を満たせば、1100℃以上に加熱した後に行う圧延により発生する脆化割れを抑制することができる。
Cuの融点(1083℃)近傍の温度におけるf(f 1100)が0以下であれば、それよりも高い温度におけるfも負の値となる。また、Cuの融点以下の温度であれば、Cuが液相化しないので割れの発生も起こらない。以上のことから、割れの発生有無を評価する目的でfを見積もるにあたっては(6)式を参照することにより幅広い加熱温度における割れ発生抑制を実現することが可能である。そこで、(6)式の右辺をそのままとして左辺を「f」として(1)式を導き、以下(1)式を用いて説明を行う。
=-5.75+27.3×Cu-19.8×Ni+14.1×Sn+2.86×Ni/Cu+0.30×Sn/Cu+171×Cu×Sn …(1)
なお、本発明で対象とするCu、Ni、Sn含有鋼は基本的に(1)式の関係を満たせば鋳片および熱延板の割れを大きく抑制することが可能であるが、一般的に用いられる鋼から大きく逸脱する成分系においては効果を十分に発現しえない。よって、鋼成分についてさらに以下のように規定し、その説明を述べる。
Cu: 0.04%以上0.8%以下
Cuが0.04%未満であれば、鋼材の酸化により生成する液相の量が十分少なくなり、脆化による割れは発生しない。よって下限を0.04%とする。一方、Cuが0.8%を超えると、脆化抑制のために必要となるNi添加量が極めて多くなり、また鋼の材質に悪影響を与えるので望ましくない。よって上限を0.8%とする。
Ni: 0.01%以上0.8%以下
Niが0.01%未満であれば、Cuの添加量にもよるが、鋼材前面における割れの抑制効果が十分でなくなるため望ましくない。よって下限を0.01%とする。一方、Niが0.8%を超えると、コストの増大のみならず鋼の材質に悪影響を与えるので望ましくない。よって上限を0.8%とする。
Sn: 0.08%以下
Snは液相安定化温度を大きく下げ、脆化温度域を広げるため極力混入させないことが望ましい。濃度が0.08%を超えると、割れ抑制のために必要となるNiを多量に要することになるため、望ましくない。よって上限を0.08%とする。下限は0%とする。
また、鋼中のCuとSnの含有量が、Ni=0であっても(1)式右辺が0以下の値となるような成分の場合には、そもそもNiを含有せずとも割れが発生しないので、本発明を適用する必要が生じない。そこで、(1)式右辺に「Ni=0」を代入して左辺とした下記(2)式を導入し、本発明範囲を(2)式の範囲内に限定することとした。
-5.75+27.3×Cu+14.1×Sn+0.30×Sn/Cu+171×Cu×Sn>0 …(2)
本発明においては、表面脆化を抑制するために望ましいCu、Sn、Ni各成分について規定しているものであり、その他の成分を含有する一般的な鋼の製造において広く用いることができる。
即ち、Cu、Sn、Ni以外の鋼成分として、質量%にて、C:0.001%以上0.20%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Sol.Al:0.001%以上0.1%以下、N:0.015%以下であり、これに上述のようにCu、Sn、Niを含有し、残部がFeおよび不純物からなる。以下詳述する。
C:0.001%以上0.20%以下
Cは鋼の静的強度だけでなく、疲労強度、靭性、延性に影響する最も基本的な元素である。Cを0.001%未満としてもこれらの特性の著しい改善は見られず、脱炭のコスト増大を招くのみであり望ましくない。よって下限を0.001%とする。また、0.20%を超えると靭性が劣化する。よって上限を0.20%とする。
Si:0.5%以下
Siは適正な添加により鋼の強度を高めることができる元素である。しかし、0.5%を超えると靭性や加工性を著しく劣化させる。よって上限を0.5%とする。Siは含有しなくても良い。
Mn:0.1%以上2.0%以下
MnもSi同様、適正な添加により鋼の強度を高めることができる。Mnが0.1%未満では必要な強度が確保できない。よって下限を0.1%とする。また、2.0%を超えると靭性および加工性が劣化する。よって上限を2.0%とする。
P:0.03%以下
Pは鋳造時の割れ発生を促進する元素であり、その濃度が0.03%を超えると鋳片割れを抑制することが困難になる。よって上限を0.03%とする。下限は0%とする。
S:0.03%以下
SもP同様、鋳造時の割れ発生抑制を促進し、鋼板の曲げ加工性を劣化させる元素である。その濃度が0.03%を超えると上記悪影響が顕著になる。よって上限を0.03%とする。下限は0%とする。
Sol.Al:0.001%以上0.1%以下
Alは脱酸目的で用いられる必須元素である。Sol.Alが0.001%未満では脱酸の効果が得られにくく、本発明の効果を十分に得ることが困難になるため望ましくない。よって下限を0.001%とする。また、Sol.Alが0.1%を超えると、鋳造中にノズル詰まりが発生したり、鋼中に残存する酸化物系介在物が性能を劣化させたりするなどの不具合が生じやすい。よって上限を0.1%とする。
N:0.015%以下
Nは鋼材の機械的特性に影響する元素である。Nが0.015%を超えると、窒化物系介在物の粗大化を招き、疲労強度を低下させる原因となるため好ましくない。また、熱間延性を低下させ、鋳造時あるいは圧延時に表面疵の要因となる。よって上限を0.015%とするが、鋼材清浄性の観点から、上限を0.008%とすることが望ましい。下限は0%とする。
また、本発明においては、製品に求める特性を発現させるため、前記Feの一部に替え、質量%で、さらに、Cr:0.8%以下、Mo:0.5%以下、Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下、Ca:0.01%以下、B:0.005%以下、REM:0.01%以下の1種以上を含有することもできる。なお、下限はいずれも0%を超える濃度である。以下詳述する。
Cr:0.8%以下
Crは鋼の強度を高めるために有用な元素であるが、Cr含有量が0.8%を超えると効果がほぼ飽和するため、コストの増大を招いて好ましくない。よって上限を0.8%とする。
Mo:0.5%以下
Moはその炭窒化物を微細に析出させることにより、焼戻し時に鋼を硬化させる、いわゆる2次硬化を起こす元素であり、疲労強度の改善に有効である。しかし、Mo含有量が0.5%を超えると焼き入れ熱処理時に未溶解の炭化物が残存しやすくなり、靭性を劣化させる。よって上限を0.5%とする。
Ti:0.05%以下
TiはAl同様脱酸の効果を有するのみならず、熱的安定性が大きい窒化物を形成し、加熱炉内で組織の微細化を図ることができる。一方、Ti含有量が0.05%を超えると鋳造時に酸化物によるノズル詰まりが頻発するため好ましくない。よって上限を0.05%とする。
Nb:0.05%以下
NbはTi同様に窒化物等を形成する元素である。また、鋼材の強度を著しく高める効果がある。一方、Nb含有量が0.05%を超えると効果が飽和するだけでなく、鋳造時の割れ頻発の原因となる。よって上限を0.05%とする。
Ca:0.01%以下
CaはAlを改質し、酸化物系介在物粗大化を抑制する効果がある。一方、Caの0.010%を超える添加はコスト増大を招くだけでなく、CaO-Alを主成分とする粗大な酸化物系介在物が生成するようになるため、鋼の清浄性の観点から好ましくない。よって上限を0.01%とする。
B:0.005%以下
Bは焼き入れ性を高める元素であるが、B含有量が0.005%を超えると効果が飽和するだけでなく、固相線温度を大きく下げ、鋳造時の内部割れ感受性が著しく高まる。よって上限を0.005%とする。
REM:0.01%以下
REMは少量でも強い脱酸作用を有することから清浄鋼に多用される。一方、REM含有量が0.01%を超えると鋼の清浄性を低下させ、母材の靭性を劣化させる。よって上限を0.01%とする。ここでREMとは、LaやCe等の希土類元素を表すが、そのうちの任意の1種類、あるいは2種類以上のREMを用いることができ、それらの合計をREM濃度とする。なお、REMを含有することによる効果を得るためには、REM含有量は0.001%以上であることが望ましい。
本発明で述べた効果を得るための方法に関する典型的な例としては、溶鋼段階で少なくとも1回以上の溶鋼サンプリングを実施し、その濃度分析結果から前記(1)式により求められるfが0以下となるよう溶鋼成分を調整する。具体的には、(1)式のfが0以下を満たすようにNi添加量を算出した上でNiを添加することが挙げられる。また、耐食性向上などを目的として、本発明範囲内でCuやSnを添加し、その上で(1)式を満たすようにNi添加量を算出し、Niを添加することとしてもよい。さらに、Cu、Sn、Ni各成分の濃度を測定し、(1)式を満たすことを確認した後に鋳造以降の工程を行うことも本発明の範疇に含まれる。
本発明の範囲で製造される鋳片は鋳造の過程においても地鉄とスケールの界面にCuを主成分とする液相が生成しないため、表面脆化に起因する割れのない鋳片表面を得ることができる。
鋳造後の鋳片は室温近傍まで冷却することなく、鋳片を熱間ままで圧延前加熱炉に装入することができる。表面脆化以外に起因する割れを除去するため、室温近傍まで冷却し、表面の手入れを行った上で圧延前加熱炉に装入しても本発明の効果を問題なく得られることは言うまでもない。
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本実施例で示すデータは単に本発明を適用した事例の一例を示したものであり、これにより本発明の適用範囲が限定されるものではない。
転炉-RHプロセスにて溶鋼を溶製した。二次精錬のRHプロセスにおいて、Ni添加前に溶鋼サンプリングを行って成分を分析した。次いで、表3に示す鋼種A-2、B-1、C-1、D-1、E-1については、(1)式のfが0以下を満たすようにNi添加量を算出した上でNiを添加し、溶鋼成分を調整した。一方、表3に示す鋼種A-3、B-2、C-2、D-2、D-3、E-2については、(1)式のfが0を超えるように意図的にNi添加量を算出した上でNiを添加した。表3に示す鋼種A-1については、Ni添加前において(2)式から外れるので、Ni添加を行わなかった。このようにして表3に示す成分組成の溶鋼を溶製した上で、曲率半径8.0mの垂直曲げ連鋳機において厚さ250mm、幅1800mmのスラブ鋳片を鋳造した。鋳片は8500mm長さに切断し、1コイル単位とした。この後、スラブを2グループに分け、1つのグループ(HCRと称する)は、室温まで冷却することなく熱延前加熱炉に装入し、加熱温度1050~1200℃で2時間加熱した後に熱間圧延を行い、厚み5mm、幅1800mmコイルの熱延鋼板とした。また、もう1グループ(CCRと称する)は鋳片を室温近傍まで放冷し、鋳片表面の割れを目視で観察した後、手入れをせず熱延前加熱炉に装入し、加熱温度1070~1160℃で5時間加熱した後に熱間圧延を行い、厚み5mm、幅1800mmコイルの熱延鋼板とした。なお、鋼種E-1、E-2については後者のみを行った。加熱雰囲気はいずれも水蒸気濃度10~15vol.%、酸素は2~5vol%、残部窒素および燃焼ガス(CO)であった。鋼板表面品質については、熱間圧延後の検査ラインで目視観察を行い、表面欠陥の発生状況を評価した。
Figure 2022175772000003
Figure 2022175772000004
調査結果を表4に示す。水準1、2は(2)式を満たしておらず、本発明を適用するまでもなく割れが発生しない成分であった。水準3~17は本発明方法を満たしており、鋳片段階、熱延板段階ともに割れが発生しなかった。一方、比較例の水準18~26は本発明方法を満たしておらず、fの値が0を超えたものであり、熱延板あるいは鋳片と熱延板の両方に割れを呈した。
表4の結果から明らかなように、本発明方法を適用したとき、熱延板段階での割れ発生が防止できることに加え、鋳片段階でも割れ発生が防止できることも明らかとなった。

Claims (4)

  1. 質量%でCu:0.04%以上0.8%以下、Ni:0.01%以上0.8%以下、Sn:0.08%以下、かつ下記の(2)式を満たす成分を含有する鋼を連続鋳造およびそれに続く熱間圧延を行い、下記の(1)式により求められるfが0以下であることを特徴とする、Cu、Ni、Sn含有鋼の製造方法。
    =-5.75+27.3×Cu-19.8×Ni+14.1×Sn+2.86×Ni/Cu+0.30×Sn/Cu+171×Cu×Sn …(1)
    -5.75+27.3×Cu+14.1×Sn+0.30×Sn/Cu+171×Cu×Sn>0 …(2)
    (1)式、(2)式において、元素記号は当該元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
  2. 前記成分を含有し、かつ前記(2)式を満たす成分を含有する鋼を連続鋳造およびそれに続く熱間圧延を行うに際し、少なくとも1回以上の溶鋼サンプリングを実施し、その濃度分析結果から前記(1)式により求められるfが0以下となるように溶鋼成分を調整することを特徴とする、請求項1に記載のCu、Ni、Sn含有鋼の製造方法。
  3. 前記鋼は、質量%で、
    C:0.001%以上0.20%以下、
    Si:0.5%以下、
    Mn:0.1%以上2.0%以下、
    P:0.03%以下、
    S:0.03%以下、
    Sol.Al:0.001%以上0.1%以下、
    Cu:0.04%以上0.8%以下、
    Ni:0.01%以上0.8%以下、
    Sn:0.08%以下、
    N:0.015%以下
    および残部がFeおよび不純物からなり、かつ前記(2)式を満たし、さらに各成分濃度で表される前記(1)式のfが0以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のCu、Ni、Sn含有鋼の製造方法。
  4. 前記鋼は、前記Feの一部に替え、質量%で、さらに
    Cr:0.8%以下、
    Mo:0.5%以下、
    Ti:0.05%以下、
    Nb:0.05%以下、
    Ca:0.01%以下、
    B:0.005%以下、
    REM:0.01%以下、
    の1種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載のCu、Ni、Sn含有鋼の製造方法。
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