JP2013217901A - 鋼材のhic感受性の評価方法および耐hic性に優れた厚鋼板の製造方法 - Google Patents

鋼材のhic感受性の評価方法および耐hic性に優れた厚鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼材のHIC感受性評価方法およびそれを利用した厚鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】予め、評価しようとする鋼材と同じ成分系、同じ製造条件の鋼材について、該鋼材の中心偏析部を含む領域内での微小硬さHVと該微小硬さの測定位置における偏析しやすい元素Xの濃度Cを測定し、HV=α×C+βの関係を求め、定数α、βを決定する。評価する鋼材の素材について、中心偏析部を含む所定範囲の領域内の複数点で、偏析しやすい元素Xの濃度を測定して、中心偏析部を含む領域内の元素Xの濃度分布を求め、該元素Xの濃度分布のうちの高い順に上位0.1%に入る濃度について、その平均値C0.1% を求め、中心偏析部の代表偏析濃度とし、予め決定しておいた定数α、βを用いた、HM=α×C0.1% +βの関係式から、当該鋼材の中心偏析部の推定最高微小硬さHMを算出し、得られたHMから、当該鋼材のHIC感受性を評価する。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼材の耐水素誘起割れ(Hydrogen Induced Cracking:HIC)性向上に係り、とくに、鋼材のHIC感受性の評価方法に関する。なお、ここでいう「鋼材」には、厚鋼板、熱延鋼板が含まれる。
連続鋳造鋳片(以下、単に「鋳片」ともいう)を素材とする鋼材では、連続鋳造時に鋳片中心部に形成される偏析(中心偏析)が、鋼材の品質に大きな悪影響を及ぼすことが知られている。特に、硫化水素が多く含まれる原油、天然ガス等の輸送用ラインパイプでは、表面から鋼中に水素が侵入しやすいため、水素誘起割れ(Hydrogen Induced Cracking:HIC)が多発して問題となった。鋼材の中心偏析部には、延伸したMnS、酸化物、炭化物等の介在物などが多数、存在しており、侵入した水素が集積しやすく、中心偏析部での水素誘起割れが多発しやすい。このため、従来から、中心偏析を軽減するために、数多くの技術開発が行われてきている。
当初は、中心部におけるMnの偏析を抑制したり、あるいはCaを利用してMnSの形態制御により、HICを抑制しようする技術が盛んに提案されてきたが、これだけでは、HICの発生を完全には防止できず、更なる検討が行われてきた。
例えば、特許文献1には、中心偏析が低減され、マクロ的な中央偏析が除かれたのちにも、Mnのスポット的な偏析部が存在し、ここを起点に水素誘起割れ(HIC)が発生する場合があることが記載されている。このようなMnのスポット的な偏析部は、群状のMnSが存在し、Pの偏析が認められ、Ca処理が有効に作用していない領域であり、Mnのスポット的な偏析部の大きさを400μm未満、偏析部のP濃度を0.035%未満、かつ有効Ca比を1.7以上とすれば、HICの発生が回避できるとしている。また、特許文献2には、連続鋳造時の2次冷却の比水量を適正量に制限し、中心偏析部のNb、Mn含有量を抑制し、Mn偏析度(偏析部の最大Mn含有量/平均Mn含有量)を1.4以下、かつNb偏析度(偏析部の最大Nb含有量/平均Nb含有量)を4.0以下に調整した熱延鋼板が提案されている。
しかし、特許文献1,2に記載された技術では、各元素の偏析度の測定方法についての記載がなく、また偏析部の形態やその判定方法についての記載もなく、具体的にHICの発生を回避するうえで、不明瞭のままであるという問題がある。
また、特許文献3には、連続鋳造における最終凝固時の軽圧下と、熱間圧延終了後の水冷を調整することにより、最大Mn偏析度:2.0以下、Nb偏析度:4.0以下、Ti偏析度:4.0以下に制限したうえで、S/Ca:0.5以下を満足するようにCa処理を施した耐水素誘起割れ性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板が提案されている。
しかし、特許文献3に記載された技術では、偏析部における各元素の偏析度は、EPMA(電子プローブマイクロアナライザー、Electron Probe Micro Analyzer)によって測定した値を用いるとしているが、偏析部の形態やその判定方法についてまでの言及はなく、不明瞭のままである。
従来から、中心偏析を測定する方法としては、例えば、スライス法、ドリル法、マクロ腐食法、Hプリント法など、いくつかの方法が開発され、使用されている。
スライス法では、鋳片や厚鋼板を厚さ方向に順次スライスしていき、そのスライスして採取した切粉の成分を分析し、厚さ方向の濃度分布を得る。また、ドリル法では、鋳片の縦断面からマクロプリントを採取して中心偏析領域を特定し、この中心偏析領域上の多数の分析点から、ドリルで切粉サンプルを採取し、この切粉を分析する。
また、マクロ腐食法は、鋳片の切断面を研磨して、偏析部をピクリン酸等の腐食液により腐食させてからインク等を染み込ませた後、一旦、表面のインクを拭き取り、腐食部に残ったインクをセロハン紙等に写し取り、偏析の発生状況を可視化する方法である。また、Hプリント法は、鋳片の切断面を研磨、腐食し、腐食後に写し取ったプリントから中心偏析部の最大偏析粒径等を測定する方法である。
一般に、鋳片の中心偏析は、鋳片のC断面全体、すなわち、鋳造方向に垂直な断面全体についてみると、厚さ方向および幅方向で均一であるとはいえない。そのため、鋳片や厚鋼板の偏析を調べるためには、C断面の広い領域に亘って評価することが必要となる。
このような観点から上記した各方法を検討すると、スライス法は、試料調整・分析に時間がかかるため、結果が出るまでに長時間を要するうえ、鋳片や厚鋼板等の中心偏析評価をC断面全体に亘って行うと、分析コストが高騰し、分析時間が長くなるという問題がある。また、この方法では、スライスした切粉を分析するため、厚さ方向の平均としての分析値しか得られない。そのため、スライス法は、従来から、一部領域の評価にのみ用いられる程度であった。
また、ドリル法は、スライス法に比較して、迅速性には優れるが、切粉の採取領域がスライス法に比較しさらに狭くなるため、全体的な評価ができにくいという問題があった。
また、マクロ腐食法は、迅速性の観点から上記した2つの方法と比較すると、優位であるといえる。しかし、マクロ腐食法は、目視による判定となるため、非定量的な評価しか得られないという問題がある。また、Hプリント法は、定量的ではあるが、評価に熟練を要し、しかも長時間を要するため、分析コストが高くなるという問題がある。
また、例えば、特許文献4には、連鋳鋳片中心偏析評価方法が記載されている。特許文献4に記載された方法は、連鋳鋳片の軸心部の硬度を測定し、その硬度の測定値の平均値、最大値、最大値と最小値との差の中の1種以上から連鋳鋳片の中心偏析度を把握する、簡便な方法である。
また、特許文献5には、連続鋳造鋳片および厚鋼板の中心偏析を評価する方法が記載されている。特許文献5に記載された方法は、中心偏析部を含む領域の濃度マッピング分析を行って、指標元素の濃度が所定の閾値濃度以上である面積を求め、その面積をもって中心偏析を評価する方法である。特許文献5に記載された方法では、濃度マッピング分析を、EPMA(電子プローブマイクロアナライザー、Electron Probe Micro Analyzer)、発光分光分析およびSEM−EDXのいずれかを用いて行うことが好ましいとしている。
特開平06−271974号公報 特開2002−363689号公報 特開2010−209461号公報 特開平09−178733号公報 特開2009−236842号公報
特許文献4に記載された方法は、腐食によって中心偏析部の領域を特定し、その中心偏析部の硬さを測定して、連鋳鋳片の中心偏析度を把握する方法である。しかし、この方法で鋳片の全幅を評価する場合には、偏析部のすべての硬さを測定する必要があり、測定に非常に時間がかかり、さらに、硬さの最大値を求める場合には、その位置が最大値であることを担保するために、統計的にさらに多くの位置で硬さを測定する必要があり、測定に長時間を要するという問題がある。
また、特許文献5に記載された方法では、連続鋳造鋳片や厚板等の中心偏析を、定量的かつ高精度で、しかも広い領域を迅速に評価することができるという利点はあるが、HIC発生との相関が明瞭でないため、HIC発生に対する偏析度の影響について、過大もしくは過小評価する可能性があるという問題がある。また、特許文献5に記載された方法では、対象とする元素の濃度分布は明らかになるが、鋼材のHIC感受性を評価するまでに至っていないという問題がある。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、鋼材のHIC感受性の評価方法、および、その評価方法を利用した、耐HIC性に優れた厚鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、HICの発生に及ぼす各種要因について鋭意検討した。その結果、HICの発生は、偏析部における硬さだけで決まるものでもなく、また偏析部における偏析度およびその分布状態だけから決まるわけでもなく、偏析部における偏析度およびその分布状態、および当該箇所の微小硬さの相関関係が重要な因子となることに思い至り、HIC発生を考えるうえでは、偏析部における偏析元素の偏析度とその分布形態に加えて、偏析部の当該箇所の微小硬さを関連づけて考慮することが必要であることに想到した。
というのは、硬さはその箇所の組成と組織とに関連がある。そのため、同一鋳片で当該偏析元素の偏析度やその分布形態が同じであっても、その後の熱間圧延や熱処理が相違すれば、得られる鋼板組織が異なり、得られる硬さも当然、相違することになる。硬さは、鋳片(スラブ)における偏析元素の偏析度およびその分布形態のみからは推察できない。また、硬さが相違すれば、HIC発生の難易度、すなわちHICの感受性が変化することになる。
まず、本発明者らが行った、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.01〜0.8%、P:0.001〜0.02%、S:0.0001〜0.003%、Al:0.01〜0.1%、Nb:0.005〜0.08%、Ti:0.005〜0.04%、Ca:0.0005〜0.005%、N:0.001〜0.01%、Cu:0〜0.7%、Ni:0〜2%、Cr:0〜1%、V:0〜0.5%を含み、Mnを0.8〜1.5%の範囲で変化させた組成の厚鋼板を用意した。
そして、それら厚鋼板の板幅中央部から、硬さ測定用試験片(大きさ:全厚×幅100mm×長さ30mm)およびHIC試験片(大きさ:厚さ全厚又は30mm×幅20mm×長さ100mm)を採取した。
採取された硬さ測定用試験片の圧延方向に直交する断面(C断面)を研磨し、腐食液で中心偏析部を現出し、中心偏析部およびその近傍で、微小硬度計(試験力:490mN(荷重:50gf))を用いて偏析部を中心として±120μmの範囲を幅方向:0.1mmピッチで、微小硬さHVを計30点測定した。
また、採取されたHIC試験片を、NACE TM0284の規定に準拠して、A規格液中に96時間浸漬した。浸漬後のHIC試験片について、割れの有無を超音波スキャン法で調査した。そのうち、割れが発生したHIC試験片について、割れが発生した領域で、微小硬度計(試験力:490mN(荷重:50gf))を用いて微小硬さHVを、また、EPMA(ビーム径:10μm)を用いてMn量を、それぞれ詳細に調査した。
それらの結果から、
(1)微小硬さHVが275HV以上となる箇所が発現する試験片では、HICの発生の危険度が増加する傾向があること、
(2)HICが発生した箇所ではMn含有量は高い傾向を示すこと、
が確認された。そして、
(3)微小硬さHVが275HV以上となる箇所は、HIC試験後には確認できるが、HIC試験前には確認することが難しいこと、
がわかった。実際、HIC試験前には、微小硬さHVが275HV以上となる箇所が確認できなかった試験片について、HIC試験を実施したらHICが発生し、その割れ近傍では275HV超えの箇所が確認された。また、
(4)微小硬さHVが275HVを超える箇所においては、HICの発生は、中心偏析部でのMn濃度に加えてNb濃度にも関連することを見出した。
このようなことから、硬さ測定のみ、あるいは中心偏析部でのMn濃度のみから、HIC感受性を正確に推測することは困難であるという結論を得た。
そこで、本発明者らは、中心偏析部でのMn濃度と微小硬さとの関係を求めたところ、Mn濃度CMnと微小硬さHVとは、次(A)式
HV=α×CMn+β ‥‥(A)
(ここで、HV:微小硬さ、CMn:Mn濃度(質量%)、α、β:定数)
で表される比例関係(一次比例関係)があることを見出した。このような比例関係から、組成、製造条件が同様であれば、中心偏析部のMn濃度(CMn)から、当該偏析部の微小硬さHVを推定できることになる。このようなことから、本発明者らは、中心偏析部のMnの濃度分布を測定し、HIC発生に関連する中心偏析部におけるMn濃度を決定できれば、上記した(A)式の関係を用いて、HIC発生についての中心偏析部における微小硬さの推定最高硬さを算出できることに想到した。
そこで、本発明者らは、中心偏析部のMnの濃度分布を測定し、その分布の形態調査を行い、HIC発生との関連を調査した。その結果、中心偏析部のMnの濃度分布のうち、高いほうから順に並べて、上位0.1%に入る濃度の平均値(C0.1% Mn)が、HIC発生と強い相関があることを見出した。図1に中心偏析部のMnの濃度分布の1例を示す。そして、上記した(A)式で、中心偏析部のMn濃度として、中心偏析部のMnの濃度分布のうち、上位0.1%に入る濃度の平均値C0.1% Mnを用いれば、すなわち、次(B)式
HM=α×C0.1% Mn+β ‥‥(B)
で定義される中心偏析部近傍の微小硬さHMが、HIC発生と強く関連する硬さとなることを見出した。そして、このHMが275HVを超えると、HICの発生が顕著になることも知見した。すなわち、対象とする鋼材の中心偏析部のMnの濃度分布を測定し、C0.1% Mnを求めて、この(B)式に示される、偏析元素Mnの中心偏析部の平均濃度C0.1% Mnと硬さの関係を用いることにより、当該鋼材のHIC感受性を評価できることになることに想到した。
なお、(B)式では、評価対象の鋼材と、同一の成分系で、同一の製造条件の鋼材について、上記した(A)式を求め、定数α、βを予め決定しておく必要がある。また、中心偏析部における濃度分布の測定は、Mn以外でも、偏析しやすい元素である、Nb、Mo、C、P等としても、上記した評価と同様の評価が可能であることも知見した。また、腐食環境の変化に対応して、最適なHM値を選定することが大切であることも知見した。
また、本発明者らは、(B)式で定義される中心偏析部近傍の微小硬さHM が275HVを超えても300HV以下である場合には、HICが発生する場合と発生しない場合があることを知見した。
そこで、中心偏析部近傍の微小硬さHMが275HV超300HV以下である鋼材について、さらに、HICの発生と、偏析元素濃度との関係を調査した。その結果、中心偏析部のMnの濃度分布のうち上位0.1%に入る濃度の平均値C0.1% Mnと、鋼材の代表Mn濃度CMn、代表Nb濃度CNbとの関係式である、次(C)式
Q=CNb×(C0.1% Mn/CMn)5‥‥(C)
ここで、C0.1% Mn:中心偏析部のMnの濃度分布のうち上位0.1%に入る濃度の平均値(質 量%)
CMn:鋼材のMn濃度(質量%)、
CNb:鋼材のNb濃度(質量%)
で定義されるQ値が、所定値以下であれば、中心偏析部近傍の微小硬さHMが275HV超300HV以下である場合に限り、HICが発生しないことを見出した。なお、引張強さTSが550MPa以上である鋼材の場合は、Q値の所定値は0.10であることを知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)予め、評価しようとする鋼材と同じ成分系、同じ製造条件の鋼材について、該鋼材の中心偏析部を含む領域内での微小硬さHVと該微小硬さの測定位置における偏析しやすい元素Xの濃度Cとを測定し、次(1)式
HV=α×C+β …(1)
(ここで、HV:中心偏析部を含む領域内での微小硬さ(HV)、C:微小硬さの測定位置での元素Xの濃度(質量%)、α、β:定数)
に示す微小硬さHVと元素Xの濃度Cとの関係を求めて、定数α、βを決定しておき、前記評価しようとする鋼材または該鋼材の素材について、中心偏析部を含む所定範囲の領域内の複数点で、偏析しやすい元素Xの濃度を測定して、中心偏析部を含む所定範囲の領域内での元素Xの濃度分布を求め、該元素Xの濃度分布のうちの高い順に上位0.1%に入る濃度について、その平均値C0.1% を求め、該C0.1% を元素Xについての中心偏析部の代表偏析濃度とし、前記定数α、βを用いた次(2)式
HM=α×C0.1% +β …(2)
(ここで、HM:中心偏析部の推定最高微小硬さ(HV)、C0.1% :元素Xについての中心偏析部の代表偏析濃度(質量%)、α、β:予め、決定された定数)
と前記中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% とから、中心偏析部の推定最高微小硬さHMを算出し、得られたHMにより、当該鋼材のHIC感受性を評価することを特徴とする鋼材のHIC感受性の評価方法。
(2)(1)において、前記元素Xが、Mn、Nb、Mo、C、Pのうちのいずれかであることを特徴とする鋼材のHIC感受性の評価方法。
(3)鋼素材を、熱間圧延し、あるいはさらに急速冷却、あるいはさらに再加熱処理して、厚鋼板とするにあたり、予め、同じ成分系、同じ製造条件の厚鋼板について、該厚鋼板の中心偏析部を含む領域の複数箇所で、微小硬さHVとその微小硬さ測定位置における偏析しやすい元素Xの濃度Cとを測定し、微小硬さHVと元素Xの濃度Cとの関係を次(1)式
HV=α×C+β …(1)
(ここで、HV:中心偏析部近傍での微小硬さ(HV)、C:微小硬さ測定位置での元素Xの濃度(質量%)、α、β:定数)
で定義される関係式として求めて、定数α、βを決定しておき、前記評価しようとする厚鋼板について、該厚鋼板または該厚鋼板の素材の中心偏析部を含む所定範囲の領域内の複数点で、偏析しやすい元素Xの濃度を測定して、中心偏析部を含む所定範囲の領域内での元素Xの濃度分布を求め、該元素Xの濃度分布のうちの高い順に上位0.1%に入る濃度について、その平均値C0.1% を求め、該C0.1% を元素Xについての中心偏析部の代表偏析濃度とし、前記定数α、βを用いた次(2)式
HM=α×C0.1% +β …(2)
(ここで、HM:中心偏析部の推定最高微小硬さ(HV)、C0.1% :元素Xについての代表偏析濃度(質量%)、α、β:予め決定された定数)
と前記中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% とから、中心偏析部の推定最高微小硬さHMを算出し、該算出された推定最高微小硬さHMが所定値以下である厚鋼板を、耐HIC性に優れた厚鋼板であると判定することを特徴とする耐HIC性に優れた厚鋼板の製造方法。
(4)(3)において、前記元素Xが、Mn、Nb、Mo、C、Pのうちのいずれかであることを特徴とする厚鋼板の製造方法。
(5)(3)または(4)において、前記推定最高微小硬さHMの所定値が275HVであり、前記厚鋼板が、質量%で、C:0.03%以上0.07%未満、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.8〜1.5%、S:0.001%以下、P:0.008%以下、Al:0.07%以下、Ti:0.005〜0.02%、Nb:0.005〜0.07%、N:0.008%以下、Ca:0.0005〜0.005%、O:0.005%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、引張強さTS:550MPa以上で、ラインパイプ用であることを特徴とする厚鋼板の製造方法。
(6)(5)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする厚鋼板の製造方法。
(7)(5)または(6)において、元素Mnの濃度分布を用いて、算出された前記推定最高微小硬さHMが275超300以下である前記厚鋼板のうち、次(3)式
Q=CNb×(C0.1% Mn/CMn)5‥‥(3)
ここで、C0.1% Mn:中心偏析部のMnの濃度分布のうち上位0.1%に入る濃度の平均値 (質量%)
CMn:厚鋼板のMn濃度(質量%)、
CNb:厚鋼板のNb濃度(質量%)
で定義されるQ値が0.10以下である厚鋼板は、耐HIC性に優れると判定し、耐サワー向ラインパイプ用厚鋼板とすることを特徴とする厚鋼板の製造方法。
(8)(3)ないし(7)のいずれかに記載の製造方法により製造された厚鋼板を鋼管素材として、冷間成形、シーム溶接、拡管を施してなる溶接鋼管。
本発明によれば、鋼材のHIC感受性を、定量的かつ高精度に評価でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、ラインパイプ用として好適な、耐HIC性に優れた高強度厚鋼板を容易にしかも確実に製造できるという効果もある。
中央偏析部のMn濃度分布の1例を示すグラフである。
本発明では、予めまず、評価しようとする鋼材と、同一成分系で同一製造条件の鋼材について、中心偏析部における微小硬さHVと、該微小硬さの測定位置での元素Xの濃度Cとを測定し、微小硬さHVと元素Xの濃度Cとの関係式、次(1)式
HV=α×C+β ‥‥(1)
(ここで、α、β:定数)
の定数α、βを決定する。
鋳片等の鋼素材または厚鋼板等の鋼材について、好ましくはC断面(鋳片であれば、鋳込み方向に直角方向断面、厚鋼板であれば、圧延方向に直角方向断面)を研磨し、好ましくは腐食して中心偏析部を現出させて、中心偏析部及びその近傍で少なくとも15点、マイクロビッカース硬度計を用いて、微小硬さHVを測定する。微小硬さの測定は、JIS Z 2244の規定に準拠して、試験荷重:50gf(試験力:490mN)で行うことが好ましい。
ついで、微小硬さを測定した箇所で、偏析元素Xの分析を行い、その濃度(元素Xの濃度)Cを測定する。分析領域は、圧痕を中心とする10〜15μmの領域とすることが好ましい。なお、その際、圧痕形状が定量分析へ影響することをできるだけ少なくするために、圧痕が小さくするまで研摩等を行うことが肝要となる。また、分析手段としては、簡便さの観点からEPMAとすることが好ましいが、これに限定されるものではない。10μm程度の領域を、0.1%程度の定量精度で実施可能な分析手段であれば、いずれも適用できる。また、分析元素Xは、とくに限定する必要はないが、HIC発生に影響する、Mn、Nb、Mo、C、P等とすることが好ましい。なお、EPMA分析では、分析精度の観点からMnとすることが好適である。
得られた微小硬さHVと、硬さ測定箇所における元素Xの濃度Cとの関係を(1)式
HV=α×C+β ‥‥(1)
(ここで、α、β:定数)
で近似し、最小自乗法で、直線の傾きα、切片βを決定する。
ついで、本発明では、評価しようとする鋼材または該鋼材の素材について、中心偏析部を含む所定範囲の領域内の複数点で、偏析しやすい元素Xの濃度を測定して、中心偏析部を含む所定範囲の領域内における、元素Xの濃度分布を求める。
中心偏析部を含む所定範囲の領域内における、元素Xの濃度分析は、鋼材では圧延方向と直角方向の断面(C断面)で、鋼材の素材(スラブ)では鋳込み方向と直角方向の断面(C断面)で、行う。なお、中心偏析部を含む所定範囲の領域としては、偏析スポットがランダムに存在しているため、中心偏析部を含み幅方向に100mm以上、厚み方向に、鋳片(スラブ)では±5mm以内、鋼材(鋼板)では±0.5mm以内とすることが好ましい。中心偏析部は、予め、腐食等により、その位置、厚み幅等の大きさを確認しておくことが好ましい。なお、腐食を行わない場合には、予め、中心偏析部が鋳片(鋼素材)、鋼材の厚み方向のどの位置に集まる傾向があるか等、を事前に把握しておくことが好ましい。
また、元素濃度の分析は、EPMAを用いて行うことが、簡便さ等の観点から好ましいが、それに限定されることはない。SEM(走査型電子顕微鏡)や蛍光X線によるマッピング等でも実施可能である。なお、分析時の、1点のスポットサイズ(分析領域の大きさ)は、鋳片であれば0.1mm×0.1mm、鋼材(鋼板)であれば0.01mm×0.01mm程度とすることが好ましい。
このような条件で、上記した中心偏析部を含む所定範囲内の領域で、少なくとも100,000点以上の測定点で、元素Xの濃度を測定し、元素Xの濃度分布を求める。この濃度分布は、マッピング像として表示することが好ましい。
そして、本発明では、測定された元素Xの濃度を、度数分布とし、高い順に上位0.1%に入る濃度について、その平均値C0.1% を求める。そして、C0.1% を元素Xについての中心偏析部の代表偏析濃度とする。C0.1% は、100点以上の値の平均値として求めたほうが、統計的な誤差を低減できる。このことから、測定点は100,000点以上とすることが好ましい。
元素Xとしては、偏析しやすいMn、Nb、Mo、C、P等のいずれでもよいが、精度の観点から、含有量が高いMnとすることが好ましい。
本発明では、上記したように中心偏析部を含む所定範囲内の領域で測定した濃度分布から求めた、元素Xについての中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% を利用して、対象とする鋼材のHIC感受性を評価する。
本発明では、上記した(1)式の関係から予め決定された定数α、βを使用した、次(2)式
HM=α×C0.1% +β …(2)
ここで、HM:中心偏析部の推定最高微小硬さ(HV)、
C0.1% :元素Xについての中心偏析部における代表偏析濃度(質量%)、
α、β:予め、決定された定数
で定義される関係式を用い、元素Xについての中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% に対応する、微小硬さHMを算出する。この微小硬さHMが、対象とする鋼材の中心偏析部の最高微小硬さであるとして、HICの危険度を判別し、対象とする鋼材のHIC感受性を評価する。
推定最高微小硬さHMが高ければ、HIC発生の危険度が高くなる。HIC発生の指標となるHMの所定値は、腐食環境や、材料強度で相違するが、材料強度(TS)が550MPa級の場合で、NACE TM0284の規定に準拠するA規格液に96時間浸漬する試験条件においては、275である。この場合、HMが275を超えると、HICが発生しやすくなり、耐HIC性に劣る鋼材であると評価する。
なお、引張強さTS:550MPa以上を有する厚鋼板では、HMが275を超える場合でも、300以下の範囲である場合には、次(3)式
Q=CNb×(C0.1% Mn/CMn)5‥‥(3)
(ここで、C0.1% Mn:中心偏析部のMnの濃度分布のうち上位0.1%に入る濃度の平均値(質量%)、CMn:厚鋼板のMn濃度(質量%)、CNb:厚鋼板のNb濃度(質量%))
で定義されるQ値が0.10以下である厚鋼板は、耐HIC性に優れると判定する。なお、Q値は、HMが275であれば、耐HIC性に影響することはない。
Q値が0.10以下であれば、耐HIC性に優れる厚鋼板となる理由については、現在のところ、明確になってはいないが、Nb濃度CNbの影響、すなわち耐HIC性の阻害要因であるNbCクラスターの影響が大きいと考えている。このようなことから、Mn偏析度を低減することによりC0.1% Mnが低減し、さらにNb濃度CNbを低減すれば、Q値を低減でき、厚鋼板の耐HIC性が向上することになる。したがって、耐HIC性の向上は、成分、偏析度の調整により可能となる。
なお、耐HIC性に優れた鋼材として、引張強さTS:550MPa以上を有し、ラインパイプ用として好適な高強度厚鋼板は、質量%で、C:0.03%以上0.07%未満、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.8〜1.5%、S:0.001%以下、P:0.008%以下、Al:0.07%以下、Ti:0.005〜0.02%、Nb:0.005〜0.07%、N:0.008%以下、Ca:0.0005〜0.005%、O:0.005%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することが好ましい。
このような高強度厚鋼板の組成限定理由について説明する。以下、質量%は単に%で記す。
C:0.03%以上0.07%未満
Cは、強化に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.03%以上の含有を必要とする。Cが0.03%未満では十分な強度を確保できない。一方、0.07%以上含有すると、靭性が低下する。このため、Cは0.03%以上0.07%未満に限定した。
Si:0.01〜0.5%
Siは、脱酸剤として作用する元素である。このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。0.01%未満では脱酸効果が十分でない。一方、0.5%を超える含有は、靭性や溶接性を劣化させる。このため、Siは0.01〜0.5%の範囲に限定した。
Mn:0.8〜1.5%
Mnは、強度増加、靭性向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.8%以上含有する必要がある。一方、1.5%を超える含有は、偏析が顕著となり、中心偏析部の硬さを増加させ、耐HIC性を低下させる。このため、Mnは0.8〜1.5%の範囲に限定した。
S:0.001%以下
Sは、鋼中では延伸したMnSとして存在し、耐HIC性を低下させるため、できるだけ低減することが望ましいが、0.001%までは許容できる。このため、Sは0.001%以下に限定した。
P:0.008%以下
Pは、偏析傾向が強く、しかも中心偏析部の偏析度に対する硬さ増加率(上記した(2)式におけるα)を増大させる傾向を有し、耐HIC性向上のためにはできるだけ低減することが望ましいが、0.008%程度までは許容できる。このため、Pは0.008%以下に限定した。
Al:0.07%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましいが、0.07%を超えて含有すると、鋼の清浄度が低下し、HICの起点となる介在物が増加する。このため、Alは0.07%以下に限定した。
Ti:0.005〜0.02%
Tiは、窒化物TiNを形成し、ピンニング効果により、スラブ加熱時のオーステナイト粗大化を抑制し、母材靭性を向上させる作用を有する。このような効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.02%を超える含有は、粗大なTi系析出物が析出し、HICの起点になり、耐HIC性が低下する。このため、Tiは0.005〜0.02%の範囲に限定した。
Nb:0.005〜0.07%
Nbは、組織の微細粒化に寄与し、靭性を向上させる作用を有する。また、Nbは、析出物を形成し、析出強化による強度上昇に寄与する。このような効果を得るためには、0.005%以上含有する必要があるが、0.07%を超える含有は、粗大なNb系析出物の形成を促進する。粗大な析出物はHICの起点となるため、耐HIC性が低下する。このため、Nbは0.005〜0.07%の範囲に限定した。
Ca:0.0005〜0.005%
Caは、硫化物系介在物の形態を制御して、耐HIC性を向上させる元素である。このような効果を得るためには0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.005%を超えて含有すると、効果が飽和するとともに、逆に清浄度を低下させてHICの起点となる介在物を形成し、耐HIC性を低下させる。このため、Caは0.0005〜0.005%の範囲に限定した。
N:0.008%以下
Nは、不可避的不純物であるが、0.008%を超える多量の含有は、HICの起点となる粗大なTi−Nb系析出物を形成する。このため、Nは0.008%以下に限定した。
O:0.005%以下
Oは、不可避的不純物であり、粗大で耐HIC性に悪影響を与える介在物の生成を抑制するため、できるだけ低減することが望ましいが、0.005%までは許容できる。このため、Oは0.005%以下に限定した。
上記した成分に加えてさらに、Cu:0.5%以下、Ni:1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、Mo、Vはいずれも、強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上含有できる。
Cuは、鋼の焼入性向上を介して、強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.05%以上含有することが好ましい。一方、0.5%を超えて含有すると、靱性劣化が生じる。このため、含有する場合は、Cuは0.5%以下に限定することが好ましい。
Niは、鋼の焼入性向上を介して強度増加に寄与するとともに、多量に含有しても靱性劣化を生じないため、強靱化に有効に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.05%以上含有することが望ましい。一方、Niは高価な元素であるため、1%を超える多量の含有は、材料コストが高騰する。このため、含有する場合は、Niは1%以下に限定することが好ましい。
Crは、Mnと同様に、低C域で十分な強度を確保すために有効に作用する。このような効果を得るためには、0.1%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える過剰な含有は溶接性を低下させる。このため、含有する場合は、Crは0.5%以下に限定することが好ましい。
Moは、焼入性を向上させ、強度を増加させる元素であり、MA生成やベイナイト相を強化することで強度上昇に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上含有することが好ましい。一方、0.5%を超える含有は、溶接熱影響部靭性の低下を招く。このため、含有する場合は、Moは0.5%以下に限定することが好ましい。さらに好ましくは0.3%以下である。
Vは、焼入性向上を介し、強度上昇に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが好ましい。一方、0.1%を超える含有は、溶接熱影響部靭性を低下させる。このため、含有する場合は、Vは0.1%以下に限定することが好ましい。
なお、上記した選択元素以外に、強度向上、靱性改善の観点から、Mg:0.02%以下、および/または、REM(希土類金属):0.02%以下、および/または、B:0.003%以下を含有してもよい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
また、上記した高強度厚鋼板の好ましい製造方法はつぎのとおりである。
上記した組成の溶鋼を、転炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の鋳造方法でスラブ等の素材(鋼素材)としたのち、好ましくは1020〜1200℃に加熱し、930℃以下の温度域で累積圧下率:65%以上の熱間圧延を施し、800℃以上の温度で圧延を終了する制御圧延を施し、圧延終了後、平均冷却速度:20℃/s以上40℃/s以下で、550〜380℃の冷却停止温度まで冷却し、あるいはさらに誘導加熱装置で600〜680℃の温度範囲に再加熱する、製造方法とすることが好ましい。これにより、引張強さ:550MPa以上で、試験温度:−5℃でのシャルピー衝撃試験で210J以上の吸収エネルギーを確保できるラインパイプ用として好適な、高靭性高強度の厚鋼板とすることができる。上記した条件を外れる工程では、所望の高強度と高靭性を確保することができない。
なお、上記した(2)式
HM=α×C0.1% +β …(2)
で定義される最高微小硬さHMは、成分組成、鋳造方法、熱間圧延、再加熱等の製造工程により、C0.1% 、α、βの変化を介して、変化させることができる。
例えば、鋳造条件を変化させて、偏析度を小さくすれば、C0.1% Xが小さくなる。また、合金元素量を増減させるとαの値が変化する。具体的には、材料の硬さを上昇させる合金元素の含有量を低減させることで、αは小さくなる。また、βは、同一成分系の材料でも熱処理方法を変化させることで変化する。例えば、再加熱すると、硬さが低減するために、βの値は小さくなる。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について詳細に説明する。
(実施例1)
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブ(厚鋼板素材)(肉厚:250mm)とした。なお、鋼No.Cは、鋳造速度を、通常の約1.5倍(2.0m/min)にして、中心偏析部の偏析度を変化させた。
得られたスラブ(厚鋼板素材)を、ついで、1100℃に加熱し、圧延終了温度:850℃とする熱間圧延を施した。熱間圧延後、820℃から急速水冷却を施し、表2に示す冷却速度で、表2に示す冷却停止温度まで冷却し、表2に示す板厚の厚鋼板とした。一部の厚鋼板には、誘導加熱装置により、表2に示す温度に再加熱する再加熱処理を施した。なお、同一の成分系、同一の製造条件で複数枚の厚鋼板を製造した。
まず、同一の成分系、同一の製造条件で製造された複数枚の厚鋼板のうちの一枚について、中心偏析部の微小硬さHVとMn濃度との関係を調査した。
厚鋼板から、試験片を採取し、圧延方向に直角な断面(C断面)を研磨し、腐食して中心偏析部を現出させて、中心偏析部及びその近傍で少なくとも15点、マイクロビッカース硬度計を用いて、微小硬さHVを測定した。微小硬さの測定は、JIS Z 2244の規定に準拠して、試験荷重:50gf(試験力:490mN)で行った。ついで、微小硬さを測定した箇所で、EPMAを用いてMn濃度CMnを測定した。なお、Mn濃度の測定にあたっては、研磨して測定に影響のない程度に圧痕を小さくした。また、EPMAによる1点の分析範囲は、15μm角とした。
各厚鋼板について、得られた中心偏析部の微小硬さHVとMn濃度CMnの値から、最小自乗法で直線近似し、傾きαと切片βの値を予め決定した。その結果を表3に示す。
なお、得られたスラブ(厚鋼板素材)について、中心偏析部を含む所定範囲の領域内のMn濃度を測定した。
得られたスラブ(鋼板素材)から、分析用試験片を採取し、鋳込み方向に直角な断面(C断面)を研磨し、腐食して中心偏析部を現出させた。そして、中心偏析部を含み、厚さ方向±5mm、幅方向中心部を中心として幅方向±100mmの範囲で、EPMAを用いて、Mn濃度の分析(マッピング)を実施した。EPMAによる測定は、加速電圧:25kv、電子プローブ径:0.10mmで行った。測定点は、上記した範囲内で20万点とした。各スラブごとに、得られたMn濃度を度数分布とし、高い順に上位200点(測定点の0.1%)を選び、それらの平均値を求め、Mnについての中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% Mnとした。
得られた各スラブの中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% Mnと、予め、同一スラブを素材として得られた厚鋼板について決定された定数α、βを用いた次(2)式
HM=α×C0.1% +β …(2)
にしたがって、最高微小硬さHMを算出し、表3に示す。
なお、使用した組成範囲、強度範囲では、HIC発生に対するHMの所定値は275であることが、別途試験により、得られている。得られたHMが、このHMの所定値(=275)以下であれば、耐HIC性に優れる厚鋼板として、本発明例とし、それ以外の場合には、比較例とした。
得られた厚鋼板から、試験片を採取し、引張試験、シャルピー衝撃試験、HIC試験を実施し、各厚鋼板のHIC感受性を評価した。試験方法はつぎのとおりとした。
(1)引張試験
得られた厚鋼板から、API−5Lの規定に準拠して、全厚試験片を採取し、引張試験を実施し、引張特性(引張強さTS)を評価した。
(2)シャルピー衝撃試験
得られた厚鋼板の板厚方向1/4T位置から、長さ方向が圧延方向に直角方向となるようにVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して試験温度:−5℃で、シャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギーvE-5 (J)を求め、靭性を評価した。
(3)HIC試験
得られた厚鋼板の幅方向板中央位置(W/2部)で、板厚中央部を含むように3個ずつ、HIC試験片(大きさ;板厚全厚〜30mm×幅20mm×長さ100mm)を採取した。得られたHIC試験片を、NACE TM0284に準拠して、A規格液中に96h浸漬するHIC試験を実施した。浸漬後、試験片の割れ面積率(CAR%)を超音波スキャン法で測定した。
得られた結果を表3に併記する。
なお、得られた厚鋼板の強度は、560MPa〜660MPaの範囲であった。
Figure 2013217901
Figure 2013217901
Figure 2013217901
HMが、250以下である厚鋼板(厚鋼板No.7、No.12、No.13、No.15、No.16)はいずれも、HICが発生せず、良好な耐HIC性を有する厚鋼板といえる。また、HMの値が275以下の厚鋼板(厚鋼板No.1、No.4、No.6、No.9、No.10、No.11、No.14)では、割れが発生する場合もあるが、その割れ面積率は最大でも2%以下であり、良好な耐HIC性を有している厚鋼板であるといえる。
一方、厚鋼板No.2は、成分、代表偏析濃度はNo.1と同様であるが、熱延処理条件が異なるため、中心部の硬さが上昇し、βの値が大きくなり、HMが287と増加し、耐HIC性が低下している。また、厚鋼板No.3では、成分範囲が好適範囲外であるために、HMの値が310と大きくなり、耐HIC性が低下している。厚鋼板No.5では、成分、製造条件が厚鋼板No.4と同等であるが、代表偏析濃度C0.1% Mn が高く、HMの値が所定値以上と大きくなって、耐HIC性が低下している。また、厚鋼板No.8では、PおよびNbが好適範囲外であるために、αの値が大きくなりHMが所定値以上と高くなり、耐HIC性が低下している。
以上のように、本発明の評価方法を適用して、製造された厚鋼板のHIC感受性を評価して、耐HIC性に優れる厚鋼板と評価された本発明例は、実際に、厳しいHIC試験においても、割れが発生しないか、発生しても軽微であり、耐HIC性に優れ、かつ靭性にも優れ、ラインパイプ用として十分な特性を有する厚鋼板となっている。
(実施例2)
表4に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブ(厚鋼板の素材)(肉厚:250mm)とした。なお、鋼No.3については、鋳型に流す冷却水の流量を通常の85%に制限し、採集凝固位置を変化させた。また、鋼No.4では、凝固時に磁場を印加して鋳片の偏析度を調整した。
これら鋳片(スラブ)(素材)を、1150℃に加熱し、熱間圧延を施して、板厚:30 mmの厚鋼板とした。なお、熱間圧延の終了温度は850℃とし、熱間圧延終了後、840℃から、平均冷却速度:20℃/sで急冷(水冷)し、冷却停止温度:450℃で冷却を停止した。冷却終了後、誘導加熱装置を使用して、620℃まで加熱する再加熱処理を施した。
実施例1と同様に、まず、同一の成分系、同一の製造条件で製造する複数枚の厚鋼板のうち、一枚の厚鋼板について、中心偏析部の微小硬さHVと、元素iの濃度との関係を調査した。元素iとしては、Nb、Mo、C、Pのいずれかを採用した。
実施例1と同様に、得られた厚鋼板から、試験片を採取し、圧延方向に直角な断面(C断面)を研磨し、腐食して中心偏析部を現出させて、中心偏析部及びその近傍で少なくとも15点、マイクロビッカース硬度計を用いて、微小硬さHVを測定した。微小硬さの測定は、JIS Z 2244の規定に準拠して、試験荷重:50gf(試験力:490mN)で行った。ついで、微小硬さを測定した箇所で、EPMAを用いて元素iの濃度Cを測定した。なお、元素iの濃度の測定にあたっては、研磨して測定に影響のない程度に圧痕を小さくした。また、EPMAによる1点の分析範囲は、15μm角とした。
各厚鋼板について、得られた中心偏析部の微小硬さHVと元素iの濃度Cの値から、最小自乗法で直線近似し、傾きαiと切片βiの値を決定した。その結果を表5に示す。
それに先立ち、実施例1と同様に、得られたスラブ(厚鋼板素材)について、中心偏析部を含む所定範囲の領域内の元素iの濃度を測定した。
得られたスラブ(鋼板素材)から、分析用試験片を採取し、鋳込み方向に直角な断面(C断面)を研磨し、腐食して中心偏析部を現出させた。そして、中心偏析部を含み、厚さ方向±5mm、幅方向中心部を中心として幅方向±100mmの範囲で、EPMAを用いて、元素iの濃度の分析(マッピング)を実施した。EPMAによる測定は、加速電圧:25kv、電子プローブ径:0.10mmで行った。測定点は、上記した範囲内で20万点とした。各スラブごとに、得られた元素iの濃度を度数分布とし、高い順に上位200点(測定点の0.1%)を選び、それらの平均値を求め、元素iについての中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% とした。元素iとしては、Nb、Mo、C、Pのいずれかを用いた。
得られた各スラブの中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% と、予め、同一成分系のスラブを素材として同じ製造条件で製造された厚鋼板を用いて決定された定数αi、βiを用いた次(2)式
HM=αi×C0.1% +βi …(2)
にしたがって、最高微小硬さHMを算出し、表6に示す。
なお、使用した組成範囲、強度範囲では、HIC発生に対するHMの所定値は275である。得られたHMが、このHMの所定値(=275)以下であれば、耐HIC性に優れる厚鋼板として本発明例とし、それ以外の場合には、比較例とした。
また、得られた厚鋼板から、試験片を採取し、引張試験、シャルピー衝撃試験、HIC試験を実施し、各厚鋼板の強度、靭性、HIC感受性を評価した。試験方法は実施例1と同様とした。
得られた結果を表6に併記する。
なお、得られた厚鋼板の強度は、560MPa〜660MPaの範囲であった。
Figure 2013217901
Figure 2013217901
Figure 2013217901
分析元素をMn以外の偏析しやすい元素に変更しても、HMが275以下である本発明例はいずれも、良好な耐HIC性を保持し、さらに優れた靭性をも保持する高強度厚鋼板となっている。一方、HMが275を超える比較例は、HIC試験で割れが発生し、耐HIC性が低下している。
(実施例3)
表7に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブ(厚鋼板の素材)(肉厚:300mm)とした。
得られたスラブ(厚鋼板素材)について、中心偏析部を含む所定範囲の領域内のMn濃度を測定した。
得られたスラブ(鋼板素材)から、分析用試験片を採取し、鋳込み方向に直角な断面(C断面)を研磨し、腐食して中心偏析部を現出させた。そして、中心偏析部を含み、厚さ方向±5mm、幅方向中心部を中心として幅方向±100mmの範囲で、EPMAを用いて、Mn濃度の分析(マッピング)を実施した。EPMAによる測定は、加速電圧:25kv、電子プローブ径:0.10mmで行った。測定点は、上記した範囲内で20万点とした。各スラブごとに、得られたMn濃度を度数分布とし、高い順に上位200点(測定点の0.1%)を選び、それらの平均値を求め、Mnについての中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% Mnとした。
これら鋳片(スラブ)(素材)を、1080℃に加熱し、熱間圧延を施して、板厚:25〜37 mmの厚鋼板とした。なお、熱間圧延の終了温度は850℃とし、熱間圧延終了後、840℃から、平均冷却速度:20〜35℃/sで急冷(水冷)し、冷却停止温度:450℃で冷却を停止した。冷却停止後、一部については、引続き、誘導加熱装置を使用して、620℃まで加熱する再加熱処理を施した。製造条件を表8に示す。
得られた厚鋼板から、試験片を採取し、実施例1と同様に、引張試験を実施し、各厚鋼板の強度を評価した。得られた結果は表9に示す。得られた厚鋼板の強度は、570MPa〜640MPaの範囲であった。
また、得られた各厚鋼板から、分析試験片を採取し、実施例1と同様に、圧延方向に直角な断面(C断面)を研磨し、腐食して中心偏析部を現出させて、中心偏析部及びその近傍で少なくとも15点、マイクロビッカース硬度計を用いて、微小硬さHVを測定した。微小硬さの測定は、JIS Z 2244の規定に準拠して、試験荷重:50gf(試験力:490mN)で行った。ついで、微小硬さを測定した箇所で、EPMAを用いて元素Mnの濃度CMnを測定した。なお、EPMAによる1点の分析範囲は、15μm角とした。各厚鋼板について、得られた中心偏析部の微小硬さHVと元素Mnの濃度CMnの値から、最小自乗法で直線近似し、傾きαと切片βの値を決定した。得られた結果は表9に示す。
ついで、得られた各スラブの中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% Mnと、同一スラブを素材として得られた厚鋼板について決定された定数α、βを用いた次(2)式
HM=α×C0.1% Mn+β …(2)
にしたがって、最高微小硬さHMを算出した。得られた結果は表9に示す。
さらに、各鋼板について、中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% Mnと、厚鋼板の代表Mn濃度CMn、代表Nb濃度CNbとから、次(3)式
Q=CNb×(C0.1% Mn/CMn)5‥‥(3)
(ここで、C0.1% Mn:中心偏析部のMnの濃度分布のうち上位0.1%に入る濃度の平均値(質量%)、CMn:厚鋼板のMn濃度(質量%)、CNb:厚鋼板のNb濃度(質量%))
で定義されるQ値を算出した。得られた結果は表9に示す。
得られた厚鋼板の幅方向板中央位置(W/2部)で、板厚中央部を含むように3個ずつ、HIC試験片を採取し、実施例1と同様に、HIC試験を実施し、試験後、試験片の割れ面積率(CAR%)を測定し超音波スキャン法で測定し、各厚鋼板のHIC感受性を評価した。得られた結果は表9に示す。
なお、使用した組成範囲、強度範囲では、HIC発生に対するHMの所定値は275であることが、別途試験により、得られている。
Figure 2013217901
Figure 2013217901
Figure 2013217901
HMが275以下である本発明例はいずれも、割れ面積率(CAR%)が2.0%以下で、Q値によらず良好な耐HIC性を保持する高強度厚鋼板(厚鋼板No.B1、No.B4)となっている。一方、HMが275を超えても300以下で、Q値が0.10以下を満足する厚鋼板(厚鋼板No.B2、No.B5)は、割れ面積率(CAR%)が2.0%以下で良好な耐HIC性を保持している。HMが275を超え300以下でも、Q値が0.10を超える厚鋼板(厚鋼板No.B3、No.B6)は、割れ面積率(CAR%)が2.0%を超えて耐HIC性が低下している。

Claims (8)

  1. 予め、評価しようとする鋼材と同じ成分系、同じ製造条件の鋼材について、該鋼材の中心偏析部を含む領域での微小硬さHVと該微小硬さの測定位置における偏析しやすい元素Xの濃度Cとを測定し、下記(1)式に示す微小硬さHVと元素Xの濃度Cとの関係を求めて、定数α、βを決定しておき、
    前記評価しようとする鋼材または該鋼材の素材の中心偏析部を含む所定範囲の領域内の複数点で、偏析しやすい元素Xの濃度を測定して、前記中心偏析部を含む所定範囲の領域内の元素Xの濃度分布を求め、該元素Xの濃度分布のうちの高い順に上位0.1%に入る濃度について、その平均値C0.1% を求め、該C0.1% を元素Xについての中心偏析部の代表偏析濃度とし、
    前記定数α、βを用いた下記(2)式と前記元素Xについての中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% とから、中心偏析部の推定最高微小硬さHMを算出し、得られたHMにより、当該鋼材のHIC感受性を評価することを特徴とする鋼材のHIC感受性の評価方法。

    HV=α×C+β …(1)
    ここで、HV:中心偏析部を含む所定範囲の領域内での微小硬さ(HV)
    C:微小硬さの測定位置での元素Xの濃度(質量%)
    α、β:定数
    HM=α×C0.1% +β …(2)
    ここで、HM:中心偏析部の推定最高微小硬さ(HV)
    C0.1% :元素Xについての中心偏析部の代表偏析濃度(質量%)、
    α、β:予め決定された定数
  2. 前記元素Xが、Mn、Nb、Mo、C、Pのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の鋼材のHIC感受性の評価方法。
  3. 鋼素材を、熱間圧延し、あるいはさらに急速冷却、あるいはさらに再加熱処理して、厚鋼板とするにあたり、
    予め、評価しようとする厚鋼板と、同じ成分系、同じ製造条件の厚鋼板について、該厚鋼板の中心偏析部を含む領域の複数箇所で、微小硬さHVと該微小硬さの測定位置における偏析しやすい元素Xの濃度Cとを測定し、微小硬さHVと元素Xの濃度Cとの関係を下記(1)式で定義される関係式として求めて、定数α、βを決定しておき、
    前記評価しようとする厚鋼板または該厚鋼板の素材の中心偏析部を含む所定範囲の領域内の複数点で、偏析しやすい元素Xの濃度を測定して、前記中心偏析部を含む所定範囲の領域内での元素Xの濃度分布を求め、該元素Xの濃度分布のうちの高い順に上位0.1%に入る濃度について、その平均値C0.1% を求め、該C0.1% を元素Xについての中心偏析部の代表偏析濃度とし、
    前記定数α、βを用いた下記(2)式と前記中心偏析部の代表偏析濃度C0.1% とから、中心偏析部の推定最高微小硬さHMを算出し、
    該算出された推定最高微小硬さHMが所定値以下である厚鋼板を、耐HIC性に優れた厚鋼板であると判定することを特徴とする耐HIC性に優れた厚鋼板の製造方法。

    HV=α×C+β …(1)
    ここで、HV:中心偏析部を含む所定範囲の領域内での微小硬さ(HV)
    C:微小硬さの測定位置での元素Xの濃度(質量%)
    α、β:定数
    HM=α×C0.1% +β …(2)
    ここで、HM:中心偏析部の推定最高微小硬さ(HV)
    C0.1% :元素Xについての中心偏析部の代表偏析濃度(質量%)、
    α、β:予め決定された定数
  4. 前記元素Xが、Mn、Nb、Mo、C、Pのうちのいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の厚鋼板の製造方法。
  5. 前記推定最高微小硬さHMの所定値が275HVであり、前記厚鋼板が、質量%で、
    C :0.03%以上0.07%未満、 Si:0.01〜0.5%、
    Mn:0.8〜1.5%、 S :0.001%以下、
    P :0.008%以下、 Al:0.07%以下、
    Ti:0.005〜0.02%、 Nb:0.005〜0.07%、
    N :0.008%以下、 Ca:0.0005〜0.005%、
    O :0.005%以下
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、引張強さTS:550MPa以上で、ラインパイプ用であることを特徴とする請求項3または4に記載の厚鋼板の製造方法。
  6. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載の厚鋼板の製造方法。
  7. 元素Mnの濃度分布を用いて、算出された前記推定最高微小硬さHMが275超300以下である前記厚鋼板のうち、下記(3)式で定義されるQ値が0.10以下である厚鋼板は、耐HIC性に優れると判定し、耐サワー向ラインパイプ用厚鋼板とすることを特徴とする請求項5または6に記載の厚鋼板の製造方法。

    Q=CNb×(C0.1% Mn/CMn)5‥‥(3)
    ここで、C0.1% Mn:中心偏析部のMnの濃度分布のうち上位0.1%に入る濃度の 平均値(質量%)
    CMn:厚鋼板のMn濃度(質量%)、
    CNb:厚鋼板のNb濃度(質量%)
  8. 請求項3ないし8のいずれかに記載の厚鋼板の製造方法により製造された厚鋼板を鋼管素材として、冷間成形、シーム溶接、拡管を施してなる溶接鋼管。
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