JP2015083713A - 耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 鋼材の耐水素誘起割れ特性を迅速且つ正確に評価することのできる、耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材を提供する。
【解決手段】 本発明の耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材は、C、Si、Mn、P、S、Caなどの所定の化学成分を所定量含有し、且つ、鋼材の鏡面研磨面の20mm2以上を走査型電子顕微鏡で観察した際に検出される粒径1μm以上の非金属介在物のうち、該非金属介在物をEDSによって組成分析してCaO分率(質量%)並びにAl23分率(質量%)を求め、求めたCaO分率及びAl23分率から算出される個々の非金属介在物のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上となる非金属介在物の粒子数が20個/mm2以下である。
【選択図】 図3

Description

本発明は、耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材及びその製造方法に関し、詳しくは、鋼材の組成と、鋼材中の非金属介在物の組成及び分布状態とを、或る特定範囲に規定し、これによってその鋼材の耐水素誘起割れ特性を迅速且つ正確に評価することのできる、耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材及びその製造方法に関する。
鋼製品には、脱酸生成物やスラグなどを起源とする酸化物系非金属介在物、鋼中のS(硫黄)がMn(マンガン)などと反応して析出・生成する硫化物系非金属介在物、鋼中のN(窒素)がAl(アルミニウム)などと反応して析出・生成する窒化物系非金属介在物など、種々の非金属介在物が存在する。ここでは、酸化物系非金属介在物、硫化物系非金属介在物、窒化物系非金属介在物などをまとめて非金属介在物と呼ぶ。
鋼中に存在する非金属介在物は鋼製品の特性を劣化させる。例えば、石油輸送用や天然ガス輸送用のラインパイプ材として使用されるUOE鋼管や電気抵抗溶接鋼管においては、サワーガスの作用により非金属介在物、特に、高延伸性で圧延時に変形する硫化物系非金属介在物を起点として水素誘起割れ(「HIC;Hydrogen Induced Cracking」ともいう)が発生する。
そこで、耐水素誘起割れ特性が要求される鋼製品では、水素誘起割れの原因となる、高延伸性の硫化物系非金属介在物であるMnS(マンガン−サルファイド)の生成を防止するために、溶鋼中にCa(カルシウム)を添加し、鋼中の硫化物系非金属介在物を非延伸性であるCaS(カルシウム−サルファイド)に形態制御することが行われている。
溶鋼にCaを添加することで、Caは、酸素(O)との親和力が強いことから脱酸生成物であるAl23(アルミナ)とも反応し、CaO−Al23系非金属介在物が生成される。溶鋼にCaを添加する際、Caが不足すると鋼中のSと反応しきれずMnSを生成してしまい、Caが過剰であると、高CaO濃度のCaO−Al23系非金属介在物が生成し、それぞれが耐水素誘起割れ特性の悪化の原因となる。そのため、鋼材の耐水素誘起割れ特性の向上には、溶鋼中の非金属介在物が適正な組成に形態制御されるように、Caを添加することが必要となる。
こうした知見に基づき、溶鋼組成のみならず、非金属介在物組成を制御するための方法が報告されている。
例えば、特許文献1には、一次精錬終了後の溶鋼に対して二次精錬を行い、更に、二次精錬終了後の溶鋼に、溶鋼中の酸素濃度に応じてCaを添加し、非金属介在物の形態制御を行うことによって、耐水素誘起割れ特性及び耐硫化物応力割れ特性に優れた高強度・高耐食性油井管用鋼材を溶製する方法が提案されている。
また、特許文献2には、鋼中の非金属介在物の主成分をCa、Al、酸素及びSとし、非金属介在物中のCaO含有率が30〜80質量%、非金属介在物中のCaS含有率が25質量%以下、且つ、鋼中の窒素含有率と非金属介在物中のCaO含有率との比を所定の範囲内とする、耐水素誘起割れ特性に優れた鋼管用鋼を溶製するにあたり、溶鋼中の窒素含有量とCa添加量とが所定の関係となる範囲でCaを添加する方法が提案されている。
特開2011−89180号公報 特開2009−120899号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
即ち、特許文献1及び特許文献2は、鋼中の非金属介在物を形態制御するために、適正と判断された量のCaを添加しているが、非金属介在物の組成が目的とする組成に形態制御されたかどうかを定量的に確認しておらず、必ずしも目的とする組成の非金属介在物に形態制御されていない場合が発生する。この場合には、耐水素誘起割れ特性の向上は期待できない。
また、特許文献1及び特許文献2においては、鋳造後に水素誘起割れ試験を行い、その結果から鋳造した鋳片の耐水素誘起割れ特性を評価することはできるが、耐水素誘起割れ特性の評価法として知られるNACE(National Association of Corrosion Engineers)に規定される評価法は、試験片を試験溶液に96時間浸漬することが必要であり、鋳造直後に鋳片から切り出した試料を用いて評価試験しても、試験結果が得られるのは鋳造から4日以上経過した後となる。つまり、耐水素誘起割れ特性の評価には長時間を要する。水素誘起割れ試験で不合格の場合には、製造したものを不合格品として処分するしかなく、生産性の面から課題があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋼材の組成と、鋼材中の非金属介在物の組成及び分布状態とを、或る特定範囲に規定し、これによってその鋼材の耐水素誘起割れ特性を迅速且つ正確に評価することのできる、耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材を提供することであり、また、耐水素誘起割れ特性に優れた前記鋼材を製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するべく、Ca添加鋼の非金属介在物の存在状態を詳細に調査した。その結果、粒径が1μm以上の非金属介在物を対象とし、その組成及び分布状態を統計的に調べることにより、Ca添加鋼の耐水素誘起割れ特性を精度良く評価できることを知見した。
具体的には、多くの非金属介在物を対象とした測定・評価に好適に利用することのできる粒子解析機能を有する走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)を使用し、この走査型電子顕微鏡に備えられているEDS(エネルギー分散型X線分析装置;Energy Dispersive X-ray Spectrometer)を用いて、Ca添加鋼中の非金属介在物の組成及びサイズを調査した。そして、粒径1μm以上の大きさを有する非金属介在物を測定対象として個々の組成を調べ、非金属介在物のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上の個数を調べることで、Ca添加鋼の耐水素誘起割れ特性の迅速な評価ができることを知見した。これは、Ca添加鋼において、Caが過剰になると、高CaO濃度のCaO−Al23系非金属介在物が生成し、これが耐水素誘起割れ特性の悪化の原因となることに基づいている。
また、Ca添加鋼において、Ca添加後、直ちに非金属介在物の形態が変化することはなく、非金属介在物の形態制御には所定の時間が必要である。即ち、Caによる浮上性に優れる非金属介在物の球状化などは直ちに起こらず、溶鋼中のCaと非金属介在物とが反応することから、時間の経過に伴って非金属介在物中のCaO濃度が上昇する。非金属介在物の形態制御が十分に進行していない状態で溶鋼を鋳造すると、非金属介在物の浮上が進行しないうちに鋳造することになり、清浄性に優れた鋼材を製造できない虞がある。
これを防止するために、従来、Ca添加から連続鋳造設備での鋳造開始までに溶鋼を長時間にわたって取鍋内で保持しており、これは生産性の低下を招いていた。本発明者らは、溶鋼中の非金属介在物のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の変化を把握することで、非金属介在物の形態制御の完了を把握できることを見出し、これにより溶鋼の保持時間、つまり、Ca添加から連続鋳造設備での鋳造開始までの時間(「リードタイム」ともいう)の短縮が可能となり、生産性の向上が達成できるとの知見を得た。
本発明はこれらの知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]化学成分として、C:0.02〜0.08質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:0.5〜1.8質量%、P:0.01質量%以下、S:0.002質量%以下、Ca:0.0005〜0.005質量%、Nb:0.01〜0.15質量%、Al:0.01〜0.08質量%を含有し、更に、V:0.005〜0.15質量%、Ti:0.005〜0.04質量%の1種または2種を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、且つ、鋼中に存在する粒径1μm以上の非金属介在物について、下記の工程1〜5によって定まる非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上である粒子数が、20個/mm2以下であることを特徴とする、耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材。
工程1:Caの添加された溶鋼から採取された試料の鏡面研磨面、または、Ca添加鋼の鋳片、圧延鋼材若しくは圧延鋼材を造管した鋼管の鏡面研磨面の20mm2以上を測定対象領域として走査型電子顕微鏡で観察し、粒径が1μm以上の非金属介在物を検出し、検出された各非金属介在物をEDS(エネルギー分散型X線分析装置)によって組成分析する工程。
工程2:EDSによる組成分析結果に基づき、下記の(1)式、(2)式、(3)式によって個々の非金属介在物のCaO分率(質量%)を算出する工程。
MnSとしてのS分率(質量%)=[Mn]×[S原子量]/[Mn原子量]…(1)
CaSとしてのCa分率(質量%)=([S]-[MnSとしてのS分率])×[Ca原子量]/[S原子量]…(2)
CaO分率(質量%)=([Ca]-[CaSとしてのCa分率])×[CaO原子量]/[Ca原子量]…(3)
但し、(1)式における[Mn]は、EDSによる非金属介在物中のMn分析値(質量%)、(2)式における[S]は、EDSによる非金属介在物中のS分析値(質量%)、(3)式における[Ca]は、EDSによる非金属介在物中のCa分析値(質量%)である。
工程3:EDSによる組成分析結果に基づき、下記の(4)式によって個々の非金属介在物のAl23分率(質量%)を算出する工程。
Al2O3分率(質量%)=[Al]×[Al2O3原子量]/[2×Al原子量]…(4)
但し、(4)式における[Al]は、EDSによる非金属介在物中のAl分析値(質量%)である。
工程4:(1)式〜(3)式によって算出されるCaO分率と(4)式によって算出されるAl23分率とから、個々の非金属介在物のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))を求める工程。
工程5:比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上である非金属介在物の粒子数を計数する工程。
[2]上記[1]に記載の耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材の製造方法であって、取鍋に収容された溶鋼へのCa添加が終了した後、3分間以上の間隔で取鍋内の溶鋼から採取される2つの試料において、それぞれの試料での、前記工程1〜4によって定まる非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の代表値(平均値または中央値)が下記の(5)式を満足するようになった以降に、前記溶鋼の連続鋳造設備での鋳造を開始することを特徴とする、耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材の製造方法。
0.8<I(t1’)/I(t1)<1.2…(5)
但し、(5)式において、I(t1)は、Ca添加後t1時間経過した時点で溶鋼から採取される試料での非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の代表値(平均値または中央値)、I(t1’)は、t1時間から更に3分間以上経過した時点である、Ca添加後t1'時間経過した時点で溶鋼から採取される試料での非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の代表値(平均値または中央値)である。
本発明によれば、鋼中に存在する粒径1μm以上の非金属介在物において、非金属介在物の組成分析結果に基づく比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上の非金属介在物の粒子数は、耐水素誘起割れ特性と極めて強い相関関係を有することを確認し、この比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上の非金属介在物の鋼中での粒子数を20個/mm2以下に規定するので、高い耐水素誘起割れ特性を有する鋼材を安定して製造することができる。また、鋼材の耐水素誘起割れ特性を製造工程で直接把握することができるので、仮に耐水素誘起割れ特性を満足しない場合にも、適切な対応を迅速にとることが可能となる。
非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の平均値の推移の調査結果を示す図である。 3種類の試料(試料A、B、C)における比((質量%CaO)/(質量%Al23))の分布例を示す図である。 比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上となる非金属介在物の個数と水素誘起割れ試験でのCARとの関係を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本発明に係る耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材の化学組成について説明する。
C:0.02質量%以上0.08質量%以下
C(炭素)は、鋼材の強度を確保するために必要な元素であり、C含有量の最適範囲を0.02〜0.08質量%とした。望ましくは、0.02〜0.04質量%である。
Si:0.01質量%以上0.5質量%以下
Si(珪素)は、脱酸を目的に添加する。また、焼戻軟化抵抗を高めて強度上昇にも寄与する。脱酸の目的では0.01質量%以上含有させる必要がある。脱酸の目的ではSiを、0.5質量%を超えて含有させる必要はない。また、Siは鋼中のTiの活量に影響を与える元素であるため、後述するようにTiを0.005質量%以上含有させる場合には、Siの含有率が0.5質量%を超えて高くなると、Tiの活量を増加させすぎて、TiNの生成を抑制することができなくなる。これらから、Si含有量の範囲は、0.01〜0.5質量%である。
Mn:0.5質量%以上1.8質量%以下
Mn(マンガン)は、鋼の焼入性を増し、鋼材の強度確保に有効な元素である。0.5質量%未満では焼入性の不足によって強度、靱性ともに低下する。一方、1.8質量%を超えて含有させると偏析が増して靱性を低下させるので、上限を1.8質量%とした。
P:0.01質量%以下
P(燐)は、不純物として鋼中に不可避的に存在する。0.01質量%を超えると、粒界に偏析して靱性を低下させるので0.01質量%以下とする。
S:0.002質量%以下
S(硫黄)は、耐水素誘起割れ鋼材において問題となる硫化物系非金属介在物を生成させる元素であることから、その含有量は低いことが好ましい。S含有量が0.002質量%を超えて高くなると、Caの添加を行った場合には、非金属介在物中のCaSの含有量が高くなり、問題が生じる場合がある。従って、S含有量は0.002質量%以下とする必要がある。
Ca:0.0005質量%以上0.005質量%以下
Ca(カルシウム)は、硫化物系非金属介在物の改質及びAl23系非金属介在物の球状化に有効な作用を有する元素である。Ca含有量が0.0005質量%未満では、これらの効果を得ることができず、Al23のクラスター(群状介在物)やMnSに起因する水素誘起割れの発生を抑制することはできない。他方、Caの含有率が0.005質量%を超えて高くなると、CaSのクラスターが生成する場合がある。そこで、Ca含有量の範囲を0.0005質量%以上0.005質量%以下とした。
Nb:0.01質量%以上0.15質量%以下
Nb(ニオブ)は、オフライン熱処理プロセスでは、再加熱時に結晶粒の成長をピンニング効果で抑制して、オーステナイト粒の細粒化に有効である。Nb含有量が0.01質量%未満ではその効果が発現しないので、0.01質量%以上含有させることが必要である。他方、その含有量が0.15質量%を超えて高くなると、溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに溶接性が低下する。従って、Nb含有量は0.01質量%以上0.15質量%以下とする必要がある。
Al:0.01質量%以上0.08質量%以下
Al(アルミニウム)は、強い脱酸作用を有する元素であり、鋼の脱酸のために重要な元素である。その含有量が0.01質量%未満では、脱酸作用が不十分であり、酸化物系非金属介在物の量を十分に低減することはできない。他方、Al含有量が0.08質量%を超えて高くなると、脱酸効果が飽和することに加えて、硫化物系非金属介在物の生成を促進させる結果となる。即ち、Al含有量の範囲は、0.01〜0.08質量%である。
上記の元素は、本発明に係る鋼材の必須の構成成分及びその成分範囲であり、その残部はFe(鉄)及び不可避的不純物である。但し、鋼材の用途及び使用環境に応じて、V、Tiの1種または2種を下記の範囲で含有させることが必要である。
V:0.005質量%以上0.15質量%以下
V(バナジウム)は、耐水素誘起割れ特性を高めるのに有効な元素である。Vは、含有させると二次析出強化により強度を高める効果があり、所定の強度を得る場合には、より高温で焼戻すことができ、これが耐水素誘起割れ特性の向上に寄与する。また、オーステナイト領域でのVC(バナジウム炭化物)の溶解度が大きいために、インラインでの焼入れ時に全て固溶しており、強度バラツキの原因にはならない。Vの含有量が、0.005質量%未満ではその効果がなく、0.15質量%を超えて含有させると靱性が大きく劣化する。よって、含有させる場合には0.005質量%以上0.15質量%以下とする。
Ti:0.005質量%以上0.04質量%以下
Ti(チタン)は、鋼中においてTiNとして析出し、鋼の靭性を向上させる作用を有する元素である。従って、添加する場合には、靭性を確保する観点から、その含有量は0.005質量%以上とする。しかし、Tiの過度の添加は、析出するTiNの粗大化を招くので、これを防止するためには、0.04質量%以下とする必要がある。これらの理由から、Ti含有量は0.005質量%以上0.04質量%以下とする。
次いで、本発明に係る鋼材での非金属介在物の組成及び分布について説明する。
Ca添加鋼においては、Caの添加が過剰になると、高CaO濃度のCaO−Al23系非金属介在物が生成し、これが水素誘起割れの起点となる。そこで、本発明では、鋼中に存在する非金属介在物のなかで、非金属介在物のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上となる非金属介在物の分布状態からCa添加鋼の耐水素誘起割れ特性を推定する。
従って、本発明では、鋼中に存在する数多くの非金属介在物粒子のそれぞれの組成を調査することが必要となる。また、鋼中の非金属介在物は偏在することもある。このような場合には、粗大な非金属介在物のみに捉われず、粒径が1μm程度以上の小さな非金属介在物をも含めて統計精度が得られるのに充分な数の非金属介在物粒子を調査対象とすることが重要となる。また、同時に、耐水素誘起割れ特性を評価するのに充分な披検面積を確保することが必要となる。
これらを考慮すると、本発明においては、多くの非金属介在物を対象とした測定・評価に好適である、粒子解析機能を有する走査型電子顕微鏡を使用して鋼中の非金属介在物を調査することが最適である。この場合、非金属介在物の組成を定量分析することが必要であるので、EDS(エネルギー分散型X線分析装置)が備えられた走査型電子顕微鏡であることが最適である。EDSが備えられた、粒子解析機能を有する走査型電子顕微鏡を用いれば、比較的広い領域を測定対象とすることができ、数千個〜数万個という非金属介在物粒子の組成を自動的に調査することができる。検査対象試験片の前処理や走査型電子顕微鏡での観察・EDS分析の方法は、一般的な方法で構わない。
調査の対象とする非金属介在物の大きさは、測定領域や結果判明に必要とされる時間にも影響されるが、今回の調査では、粒径1μm以上が適切であることが確認された。余り小さい粒子を対象にすると、観察倍率を高くしなければならないことに加え、試料表面状態の僅かな違いを反映した非金属介在物以外の情報も抽出してしまう可能性があり、大幅な時間の増大や評価精度の劣化に繋がる。
逆に、例えば粒径10μm以上を対象とした場合には、測定対象となる粒子数が少なくなり過ぎることから、全体的な非金属介在物組成を反映しない可能性がある。また、走査型電子顕微鏡のEDS組成分析では、加速電圧が15kV程度であっても、せいぜい表層から1μm程度の深さの情報しか得られないので、粒径10μm以上を対象とした場合には、例えば中心部と周囲部とで組成が異なる複合非金属介在物では、中心部の組成を評価できない可能性がある。つまり、対象とする非金属介在物の大きさを大きくし過ぎると、非金属介在物の組成を正確に把握できなくなる虞がある。
測定面積が広いほど、測定対象粒子数が増えて評価精度は向上するが、測定に要する時間が長くなる。今回の調査結果では、およそ20mm2以上の鏡面研磨面を測定領域とすることで再現性の良い結果が得られた。実際には、必要とされる耐水素誘起割れ特性の推定精度や処理数などを考慮し、最適な条件を決定することが好ましい。
Ca添加鋼の耐水素誘起割れ特性を決定するのに重要な非金属介在物中の元素は、S、O(酸素)、Ca、Al、Mnなどであり、EDSによる非金属介在物の組成分析では、O(酸素)を除き、これら元素について定量分析する(工程1)。
尚、本発明者らは、Ca添加鋼に含有される非金属介在物においては、MnはMnSとして存在し、CaはCaS及びCaOとして存在し、AlはAl23として存在することを確認している。従って、この知見に基づく化学量論比を適用した計算方法により、EDSによる非金属介在物の組成分析結果を解析し、個々の非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))を求める。
具体的には、以下のようにして個々の非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))を求める。
先ず、EDSによる非金属介在物の組成分析結果に基づき、下記の(1)式、(2)式、(3)式を順に計算して、個々の非金属介在物のCaO分率(質量%)を算出する(工程2)。
MnSとしてのS分率(質量%)=[Mn]×[S原子量]/[Mn原子量]…(1)
CaSとしてのCa分率(質量%)=([S]-[MnSとしてのS分率])×[Ca原子量]/[S原子量]…(2)
CaO分率(質量%)=([Ca]-[CaSとしてのCa分率])×[CaO原子量]/[Ca原子量]…(3)
但し、(1)式における[Mn]は、EDSによる非金属介在物中のMn分析値(質量%)、(2)式における[S]は、EDSによる非金属介在物中のS分析値(質量%)、(3)式における[Ca]は、EDSによる非金属介在物中のCa分析値(質量%)である。
また、EDSによる非金属介在物の組成分析結果に基づき、下記の(4)式によって個々の非金属介在物のAl23分率(質量%)を算出する(工程3)。
Al2O3分率(質量%)=[Al]×[Al2O3原子量]/[2×Al原子量]…(4)
但し、(4)式における[Al]は、EDSによる非金属介在物中のAl分析値(質量%)である。
次いで、(1)式〜(3)式によって算出されるCaO分率と(4)式によって算出されるAl23分率とから、個々の非金属介在物のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))を求める(工程4)。
そして、比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上である非金属介在物の粒子数を計数する(工程5)。そして、比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上である非金属介在物の粒子数が20個/mm2以下である場合に、耐水素誘起割れ特性に優れていると判定する。本発明者らは、S濃度が0.002質量%以下で、且つ、Caを0.0005質量%以上0.005質量%以下含有するCa添加鋼においては、比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上である非金属介在物の粒子数が20個/mm2以下であれば、水素誘起割れ試験における割れ面積率(CAR)が5%以下になることを確認している。一方、比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上である非金属介在物が20個/mm2を超えた場合には、その鋼材は不合格と判定する。
本発明において、非金属介在物のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上である非金属介在物を計数対象としているが、これは、以下の理由に基づく。
CaO−Al23の2元状態図において、比((質量%CaO)/(質量%Al23))が1.0の近傍に、融点を約1455℃とする12CaO・7Al23(CaO=48.5質量%、Al23=51.5質量%、比((質量%CaO)/(質量%Al23))=0.94)の低融点化合物が存在する。この化合物が溶鋼中に形成された場合には、溶鋼中では液体状態であることから、溶鋼からの浮上分離が促進されてカルシウム添加鋼の清浄性は向上する。清浄性が向上することから、耐水素誘起割れ特性が向上する。
一方、生成される非金属介在物の比((質量%CaO)/(質量%Al23))が2.0(2元状態図でCaO=66.7質量%、Al23=33.3質量%)以上になると、生成される非金属介在物の融点は急激に上昇し、溶鋼中に固体で存在することから溶鋼からの浮上分離は滞り、清浄性が低下して耐水素誘起割れ特性は劣化する。特に、比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0(2元状態図でCaO=90.9質量%、Al23=9.1質量%)以上になると、清浄性が低下して耐水素誘起割れ特性が劣化する。
即ち、生成される非金属介在物のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))が1.0を境として、非金属介在物の溶鋼での浮上・分離の挙動が大きく異なり、特に、比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上の浮上性の悪い非金属介在物を把握することで、Ca添加鋼の耐水素誘起割れ特性を評価することができることによる。
但し、実際に得られるEDSによる組成分析結果は装置性能や分析条件などにも依存することから、同一条件での比較において耐水素誘起割れ特性と最も相関の高い比((質量%CaO)/(質量%Al23))を閾値として設定することが好ましい。
このように、本発明によれば、迅速に耐水素誘起割れ特性を評価することが可能となる。上記の測定条件であれば、24時間で約10個前後の試験片を測定することが可能であり、極めて迅速に耐耐水素誘起割れ特性を評価可能となる。
尚、本発明の目的の1つは耐水素誘起割れ特性を早期に把握することであり、この目的のためには、本発明における検査対象試料としては、連続鋳造機で製造された鋳片から採取した試料を対象とすることが好ましい。但し、鋳片を圧延して得た圧延鋼材やこの圧延鋼材を造管した鋼管から採取した試料を対象とすることも可能である。また、溶鋼から採取された試料であっても検査対象試料とすることができる。
本発明者らの調査結果では、連続鋳造機のタンディッシュ内溶鋼から採取した試料と、その溶鋼を連続鋳造した鋳片から採取した試料とで、非金属介在物の生成状況に大きな違いは見られなかった。尚、鋳片から採取した試料では、耐水素誘起割れ特性に及ぼす採取位置による影響が認められた。これは、連続鋳造鋳片では非金属介在物の分布が均一でないことによる。本発明を適用する場合には、連続鋳造鋳片の最も非金属介在物の多い位置を検査対象とすることが好ましい。また、Ca添加量の適正量の把握など、1チャージ毎の評価を行う場合には、溶鋼から採取した試料を検査対象とすることが好ましい。溶鋼から採取した試料の方が代表性の高い場合もある。
本発明において、今回の調査結果では、非金属介在物の大きさ別の影響を考慮せず、粒径1μm以上の非金属介在物の影響を同等とみなして、非金属介在物における比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上の個数を判定基準としているが、この判定方法に、更に、非金属介在物の大きさによって影響度を高くするなどの重みを加えて評価することも可能である。
以上説明したように、本発明によれば、鋼中の非金属介在物の組成分析結果に基づく比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上の非金属介在物の粒子数は、耐水素誘起割れ特性と極めて強い相関関係を有することを確認し、この比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上の非金属介在物の鋼中での粒子数を20個/mm2以下に規定するので、高い耐水素誘起割れ特性を有する鋼材を安定して製造することができる。また、鋼材の耐水素誘起割れ特性を製造工程で直接把握することができるので、仮に耐水素誘起割れ特性を満足しない場合にも、適切な対応が可能となる。
また、本発明において、耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材を製造するにあたり、取鍋に収容された溶鋼へのCa添加が終了した後、3分間以上の間隔で取鍋内の溶鋼から採取される2つの試料において、それぞれの試料での、前記工程1〜4によって定まる非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の代表値(平均値または中央値)が下記の(5)式を満足するようになった以降に、その溶鋼の連続鋳造設備での鋳造を開始することが好ましい。
0.8<I(t1’)/I(t1)<1.2…(5)
但し、(5)式において、I(t1)は、Ca添加後t1時間経過した時点で溶鋼から採取される試料での非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の代表値(平均値または中央値)、I(t1’)は、t1時間から更に3分間以上経過した時点である、Ca添加後t1'時間経過した時点で溶鋼から採取される試料での非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の代表値(平均値または中央値)である。
この方法を適用する場合、それぞれのチャージで取鍋内の溶鋼から試料を採取し、それぞれの試料の非金属介在物を調査し、上記(5)式を満足するようになった以降に、その溶鋼の連続鋳造設備での鋳造を開始することも実施可能であるが、非金属介在物の定量には時間を要することから、予め、実機において(5)式を満足するt1'時間を求めておき、これに基づいて、Ca添加から連続鋳造設備での鋳造開始までの時間(リードタイム)を決めることが望ましい。つまり、Ca添加が終了した後の取鍋内の溶鋼から複数の試料を経時的に採取し、これらの試料でのCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の代表値(平均値または中央値)を調査し、上記(5)式を満足するt1'時間を求めておくことが望ましい。この場合、Ca添加後の溶鋼中Ca濃度、溶鋼温度、溶鋼質量などを条件として、条件別にt1'時間を求めておくことが望ましい。
Ca添加後、非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))は徐々に大きくなるが、t1'時間を経過すると、非金属介在物中のCaO濃度の上昇は小さくなり、概ね定常状態となる。従って、非金属介在物形態制御のための静置時間をt1'時間以上に設定する必要がない。
図1に、S濃度が0.002質量%以下で、Caを0.0005〜0.005質量%の範囲で含有する250トンの3チャージの溶鋼から採取した試料において、前記工程1〜4によって定まる非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の代表値(ここでは平均値)の推移の調査結果を示す。図1は、横軸をCa添加後の経過時間とし、縦軸を比((質量%CaO)/(質量%Al23))の平均値としている。横軸の「経過時間=ゼロ」のデータは、Ca添加前の溶鋼での調査結果であり、この時点における比((質量%CaO)/(質量%Al23))の平均値を基準(=1.0)として、データを相対的に整理している。
図1に示すように、Ca添加後10分間程度経過すると、非金属介在物の組成はほぼ一定の組成になることがわかった。同様に、20チャージの溶鋼について、Ca添加後の溶鋼での非金属介在物の挙動を調査した結果、いずれのチャージでも同様の現象が起こっており、非金属介在物の形態制御の観点からは、Ca添加後に必要な静置時間は長くても20分程度であることがわかった。
従来、Ca添加から連続鋳造設備での鋳造開始までの時間を40分間以上確保しているが、上記の結果から、リードタイムを大幅に短縮できることが確認された。
即ち、Ca添加から連続鋳造設備での鋳造開始までの時間をこのようにして設定することで、Ca添加の効果を損なうことなく、生産性を向上させることが可能となる。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。
C:0.02〜0.08質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:0.5〜1.8質量%、P:0.01質量%以下、S:0.002質量%以下、Ca:0.0005〜0.005質量%、Nb:0.01〜0.15質量%、Al:0.01〜0.08質量%、V:0.005〜0.15質量%、Ti:0.005〜0.04質量%を含有する溶鋼を溶製し、この溶鋼を連続鋳造機で鋳造した鋳片から試料を採取し、採取した試料を用いて非金属介在物の調査を行った。
鋳片の各位置から試験用の試料を切り出した後に2分割し、一方はNACEに規定される水素誘起割れ試験用とし、他方は走査型電子顕微鏡による非金属介在物調査用試料とした。水素誘起割れ試験は、NACEに規定される方法に準拠して行った。水素誘起割れ試験(以下、「HIC試験」とも記す)の具体的な方法は、pH(水素イオン指数)が約3の硫化水素を飽和させた、5%NaClと0.5%CH3COOHとの水溶液(通常のNACE溶液)中に試験片を96時間浸漬した後、超音波探傷により試験片全面の割れの有無を調査し、割れ面積率(CAR)を求めた。
一方、走査型電子顕微鏡による非金属介在物の調査では、試料表面を鏡面研磨した後に、EDSが備えられた、粒子解析機能を有する走査型電子顕微鏡を用いて調査した。各試料とも、横10mm×縦10mmの領域中に存在する1μm以上の非金属介在物を調査の対象とし、各非金属介在物の大きさ・元素組成を調査した。その後、EDS組成分析結果に基づき、(1)式〜(4)式によって各非金属介在物中の比((質量%CaO)/(質量%Al23))を算出した。
図2に、HIC試験においてCARが異なる3種類の試料(試料A、B、C)における比((質量%CaO)/(質量%Al23))の分布例を示す。図2では横軸に比((質量%CaO)/(質量%Al23))を、縦軸に累積個数を示している。図2に示すように、HIC試験でCARの大きい試料ほど、非金属介在物の組成はCaOが富化される傾向であることが認められる。
これは、溶鋼の精錬段階において、溶鋼中に存在するAl23量に対して、Caの添加量が多すぎたために、適切な非金属介在物組成が得られず、耐水素誘起割れ特性が劣化したものと考えられる。実際に、HIC試験を行った試験片の破面(割れ面)にはCaO濃度の高い非金属介在物が観察されたことから、上記推定が妥当であることが確認されている。
EDSの調査結果に基づき、比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上となる非金属介在物の個数を計数し、この個数と、HIC試験によって測定されたCARとの関係を調査した。図3に調査結果を示す。図3の横軸は、比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上となる非金属介在物の単位面積あたりの個数である。図3に示すように、両者の間には良好な相関が見られ、鋼中に存在する粒径が1μm以上の非金属介在物のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上である非金属介在物の個数を20個/mm2以下とすることで、CARは5%以下となることがわかった。
また、連続鋳造鋳片を熱間圧延して厚鋼板を製造し、この厚鋼板を造管して製造したUOE鋼管においても、HIC試験を行った。その結果、本発明を満足する鋳片から製造されたUOE鋼管では、全数がHIC試験を合格した(合格基準:CAR5%以下)。これに対して、化学成分は本発明を満足するものの、鋼中の非金属介在物の組成及び分布が本発明を満足しない鋳片から製造されたUOE鋼管では、約3/4がHIC試験で不合格であった。
このように、本発明によって、耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材を安定して製造可能であることが確認された。

Claims (2)

  1. 化学成分として、C:0.02〜0.08質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:0.5〜1.8質量%、P:0.01質量%以下、S:0.002質量%以下、Ca:0.0005〜0.005質量%、Nb:0.01〜0.15質量%、Al:0.01〜0.08質量%を含有し、更に、V:0.005〜0.15質量%、Ti:0.005〜0.04質量%の1種または2種を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、且つ、鋼中に存在する粒径1μm以上の非金属介在物について、下記の工程1〜5によって定まる非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上である粒子数が、20個/mm2以下であることを特徴とする、耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材。
    工程1:Caの添加された溶鋼から採取された試料の鏡面研磨面、または、Ca添加鋼の鋳片、圧延鋼材若しくは圧延鋼材を造管した鋼管の鏡面研磨面の20mm2以上を測定対象領域として走査型電子顕微鏡で観察し、粒径が1μm以上の非金属介在物を検出し、検出された各非金属介在物をEDS(エネルギー分散型X線分析装置)によって組成分析する工程。
    工程2:EDSによる組成分析結果に基づき、下記の(1)式、(2)式、(3)式によって個々の非金属介在物のCaO分率(質量%)を算出する工程。
    MnSとしてのS分率(質量%)=[Mn]×[S原子量]/[Mn原子量]…(1)
    CaSとしてのCa分率(質量%)=([S]-[MnSとしてのS分率])×[Ca原子量]/[S原子量]…(2)
    CaO分率(質量%)=([Ca]-[CaSとしてのCa分率])×[CaO原子量]/[Ca原子量]…(3)
    但し、(1)式における[Mn]は、EDSによる非金属介在物中のMn分析値(質量%)、(2)式における[S]は、EDSによる非金属介在物中のS分析値(質量%)、(3)式における[Ca]は、EDSによる非金属介在物中のCa分析値(質量%)である。
    工程3:EDSによる組成分析結果に基づき、下記の(4)式によって個々の非金属介在物のAl23分率(質量%)を算出する工程。
    Al2O3分率(質量%)=[Al]×[Al2O3原子量]/[2×Al原子量]…(4)
    但し、(4)式における[Al]は、EDSによる非金属介在物中のAl分析値(質量%)である。
    工程4:(1)式〜(3)式によって算出されるCaO分率と(4)式によって算出されるAl23分率とから、個々の非金属介在物のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))を求める工程。
    工程5:比((質量%CaO)/(質量%Al23))が10.0以上である非金属介在物の粒子数を計数する工程。
  2. 請求項1に記載の耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材の製造方法であって、取鍋に収容された溶鋼へのCa添加が終了した後、3分間以上の間隔で取鍋内の溶鋼から採取される2つの試料において、それぞれの試料での、前記工程1〜4によって定まる非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の代表値(平均値または中央値)が下記の(5)式を満足するようになった以降に、前記溶鋼の連続鋳造設備での鋳造を開始することを特徴とする、耐水素誘起割れ特性に優れた鋼材の製造方法。
    0.8<I(t1’)/I(t1)<1.2…(5)
    但し、(5)式において、I(t1)は、Ca添加後t1時間経過した時点で溶鋼から採取される試料での非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の代表値(平均値または中央値)、I(t1’)は、t1時間から更に3分間以上経過した時点である、Ca添加後t1'時間経過した時点で溶鋼から採取される試料での非金属介在物中のCaOとAl23との比((質量%CaO)/(質量%Al23))の代表値(平均値または中央値)である。
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