JP5890342B2 - 二相系ステンレス鋼材および二相系ステンレス鋼管 - Google Patents

二相系ステンレス鋼材および二相系ステンレス鋼管 Download PDF

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Description

本発明は、塩化物、硫化水素(HS)、炭酸ガス(CO)などの腐食性物質を含有する環境(以下、腐食環境と称するすることがある)において使用される二相系ステンレス鋼材および二相系ステンレス鋼管に関するものである。
ステンレス鋼は、Cr酸化物を主体とする不働態皮膜を形成し、耐食性を発現する鋼種である。中でも二相系ステンレス鋼は、フェライト相とオーステナイト相の二相からなるステンレス鋼であり、Crを多量に含有し高耐食・高強度であることが特徴である。そのため、油井管、化学プラント、アンビリカルチューブなど、腐食性の高い環境で広く使用されている。
しかし、使用環境がより苛酷なものになってくるにつれて、二相系ステンレス鋼を使用していても、孔食などの局部腐食が発生することが出てきた。特に、多量の塩化物イオンを含む環境では、二相系ステンレス鋼材のすきまに塩化物イオンが濃縮し、すきまの内外での酸素濃淡電池の形成などの要因によって、すきま内での局部腐食が促進される、いわゆる、すきま腐食が発生する。さらに局部腐食は応力腐食割れ(SCC)の起点となる場合が多く、安全性の観点から耐食性のさらなる向上が求められている。
ステンレス鋼の耐食性は、Cr、Mo、Nの含有量で計算される下記のPRE値によって表わされる。
PRE=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]
ここで、Cr含有量(質量%)を[Cr]、Mo含有量(質量%)を[Mo]、N含有量(質量%)を[N]としている。
近年では、従来の二相系ステンレス鋼よりこれら元素の含有量を多くした、スーパー二相系ステンレス鋼(PRE値が40以上の二相系ステンレス鋼)が提案されている。また、Cr、Mo、Nの添加は、耐すきま腐食性の向上にも効果があるとされている。
特許文献1では、特にCrとNが耐すきま腐食性の向上に効果があるとして、コストを上昇させるNiを節減しながら、耐すきま腐食性と耐張り出し成形性に優れた二相系ステンレス鋼を開示している。特許文献2では、Cu、Alを添加し、O、S、Ca量を制御して、耐すきま腐食性を向上させた二相系ステンレス鋼が開示されている。
特開2006−200035号公報 特開昭63−157838号公報
しかしながら、特許文献1に開示された二相系ステンレス鋼では、自動車材料の使用を想定しており、PRE値は40以下であり、油井などの厳しい腐食環境では耐すきま腐食性が不十分である。また、特許文献2に開示された二相系ステンレス鋼では、耐すきま腐食性を30℃の人工海水中で評価しており、油井などの厳しい腐食環境では耐すきま腐食性が不十分である。
高深度の油井など、今後より苛酷な環境に二相系ステンレス鋼を適用していくためには、耐食性の更なる向上が必要である。しかし、二相系ステンレス鋼の耐食性を向上させるCrやMo等は、σ相析出を助長する効果もあるため、靭性や加工性を劣化させる可能性がある。
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、その課題は、塩化物や硫化水素などの腐食環境下で良好な耐食性を有する二相系ステンレス鋼材および二相系ステンレス鋼管を提供することである。
ステンレス鋼は主に、Cr酸化物を含有する不働態皮膜によって母材を保護し、耐食性を発現させている。この不働態皮膜は低pH環境や高濃度の塩化物環境では破壊され、保護性を失ってしまう。
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために二相系ステンレス鋼の不働態皮膜の安定性と保護性を強化することに着目し、耐食性を向上させるための技術検討を行った。
不働態皮膜を安定化させる手段として、本発明者らは不働態皮膜の再不働態化能の観点から検討を行った。Cr以外に耐食性を向上させる添加元素としてMoがあるが、これらは、局部腐食が発生して食孔内が酸性環境になると、イオンとして溶出し、不働態皮膜の修復(再不働態化)を促進する効果がある。そこで、本発明者らはこの効果に着目し、酸性環境でMoと同様のイオンを溶出する元素の抽出を行った。その結果、Geは、酸性領域での電気化学的特性がMoに近く、適度に添加することでステンレス鋼の再不働態化能を強化し、耐局部腐食性を向上させる機能を有することを見出した。
本発明は、上記の種々の検討による新たな知見を踏まえることによって、良好な耐食性を有する二相系ステンレス鋼材を得ることに成功したものである。
即ち、本発明の二相系ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相とからなる二相系ステンレス鋼材であって、前記二相系ステンレス鋼材の成分組成は、Si:0.1〜2.0質量%、Mn:0.1〜2.0質量%、Al:0.01〜0.05質量%、Cr:22.0〜28.0質量%、Ni:1.0〜10.0質量%、Mo:2.0〜6.0質量%、N:0.2〜0.5質量%、Ge:0.1〜1.0質量%を含有し、C:0.10質量%以下、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下に規制し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴としている。
前記構成において、Si、Mn、Alは、所定量の範囲とすることで脱酸のために効果がある。Cr、Mo、Nは、所定量の範囲とすることで耐孔食性の向上に効果がある。Niは、所定量の範囲とすることで耐食性とオーステナイト相安定化に効果がある。Geは、所定量の範囲とすることで不働態皮膜を安定化させ、耐すきま腐食性を向上させる。Cは、不要な炭化物を形成するため、一定量以下に制御する必要があり、少ない方が良い。P、Sは、不純物のため、少ない方が良い。特にSは耐食性、靱性を損なうMnSを形成する原因となる。
さらに、本発明の二相系ステンレス鋼材は、Cr含有量(質量%)を[Cr]、Mo含有量(質量%)を[Mo]、N含有量(質量%)を[N]とした際に、PRE=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]で表わされるPRE値が、40以上であることを特徴としている。前記PRE値に係る式を満足して、Cr、Mo、Nを適切な値にすることで高い耐孔食性を得ることが可能となる。
また、本発明の二相系ステンレス鋼材はさらに、Cu:0.1〜2.0質量%、V:0.01〜0.5質量%、Ta:0.01〜0.2質量%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴としている。
前記構成によれば、Cu、Taは、耐食性の向上とオーステナイト相の安定化に効果がある。Vは耐食性を向上させ、強度特性や加工性を向上させるのに効果がある。
また、本発明の二相系ステンレス鋼材はさらに、Ca:0.0005〜0.02質量%、Mg:0.0005〜0.02質量%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴としている。
前記構成によれば、Ca、Mgは、局部腐食の起点となりやすいMnSの形成を抑制して、耐局部腐食性を向上させる効果がある。
また、本発明の二相系ステンレス鋼管は、上記の二相系ステンレス鋼材からなるものであり、良好な耐食性を有している。
本発明の二相系ステンレス鋼材および二相系ステンレス鋼管は、塩化物や硫化水素などの腐食環境下で良好な耐食性を有するものである。
<二相系ステンレス鋼材>
本発明に係る二相系ステンレス鋼材の実施形態について詳細に説明する。
本発明の二相系ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相とからなる二相系ステンレス鋼材であって、前記二相系ステンレス鋼材の成分組成は、Si、Mn、Al、Cr、Ni、Mo、NおよびGeを所定量含有し、C、P、Sを所定量以下に規制し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
(鋼材組織)
本発明の二相系ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相の二相からなるものである。鋼材への添加元素のうち、Cr、Mo等のフェライト相生成元素は、フェライト相に、Ni、N等のオーステナイト相生成元素は、オーステナイト相に濃縮している。鋼材におけるフェライト相の面積率が30%未満、または70%より大きいとフェライト相とオーステナイト相の耐食性の差が大きくなりすぎるため、弱い相が選択的に腐食して、鋼材全体の耐食性が劣化する。したがって、耐すきま腐食性を向上させるためには各相の面積率も最適化する必要がある。フェライト相の面積率は、好ましくは30〜70%であり、より好ましくは40〜60%である。
また本発明の二相系ステンレス鋼材は、σ相やその他の金属間化合物などの異相も耐食性や機械的特性などの諸特性を害さない程度であれば許容できる。フェライト相とオーステナイト相の合計面積率は、好ましくは95%以上であり、より好ましくは97%以上である。
次に、本発明の二相系ステンレス鋼材を構成する成分組成の数値範囲とその限定理由について説明する。
(Si:0.1〜2.0質量%)
Siは、脱酸とフェライト相の安定化のために必要な元素である。このような効果を得るためには、0.1質量%以上、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上添加する。しかし過剰にSiを含有させると加工性が劣化することからその上限を2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下とする。
(Mn:0.1〜2.0質量%)
Mnは、Siと同様に脱酸効果があり、さらに強度確保のために必要な元素である。このような効果を得るためには、0.1質量%以上、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上添加する。しかし過剰にMnを含有させると粗大なMnSを形成して耐食性が劣化することからその上限を2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下とする。
(Al:0.01〜0.05質量%)
Alは、脱酸元素であり、溶製時の酸素量低減に必要な元素である。このような効果を得るためには、0.01質量%以上である必要がある。しかし、Al量の過剰な添加によって、酸化物系介在物を生成し、耐孔食性に悪影響を及ぼすため、その上限を0.05質量%以下とする。好ましくは0.01〜0.02質量%である。
(Cr:22.0〜28.0質量%)
Crは、不働態皮膜の主要成分であり、ステンレス鋼材の耐食性発現の基本元素である。またフェライト相を安定化させる元素であるため、フェライトとオーステナイトの二相組織を維持して耐食性、強度を両立させるためには22.0質量%以上、好ましくは23.0質量%以上、より好ましくは24.0質量%以上添加する。しかし、過剰にCrを含有させると加工性を劣化させることから、その上限を28.0質量%以下、好ましくは27.5質量%以下、より好ましくは27.0質量%以下とする。
(Ni:1.0〜10.0質量%)
Niは、耐食性向上に必要な元素であり、特に、塩化物環境における局部腐食抑制に効果が大きい。また、Niは低温靱性を向上させるのにも有効であり、さらにオーステナイト相を安定化させるためにも必要な元素である。こうした効果を得るためには、Niは1.0質量%以上、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上添加する。しかし、過剰にNiを含有させるとオーステナイト相が多くなりすぎて、強度が低下することからその上限を10.0質量%以下、好ましくは9.5質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下とする。
(Mo:2.0〜6.0質量%)
Moは、溶解時にモリブデン酸を生成して、インヒビター作用により耐局部腐食性を向上させる効果を発揮し、耐食性を向上させる元素である。またフェライト相を安定化させる元素であり、鋼材の耐孔食性・耐割れ性を改善させる効果がある。このような効果を得るためには、2.0質量%以上、好ましくは2.2質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上添加する。しかし過剰にMoを含有させると、σ相等の金属間化合物の生成を助長し、耐食性および熱間加工性を低下させるため、その上限を6.0質量%以下、好ましくは5.5質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下とする。
(N:0.2〜0.5質量%)
Nは、強力なオーステナイト相を安定化させる元素であり、σ相の生成感受性を増加させずに、耐食性を向上させる効果がある。さらに鋼の高強度化にも有効な元素であるため、本発明では積極的に活用する。このような効果を得るためには、0.2質量%以上、好ましくは0.22質量%以上、より好ましくは0.25質量%以上添加する。しかし、過剰にNを含有させると、窒化物が形成され、靭性や耐食性が低下する。また、熱間加工性を劣化させ、鍛造・圧延時に耳割れや表面欠陥を生じさせるため、その上限を0.5質量%以下、好ましくは0.45質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下とする。
(Ge:0.1〜1.0質量%)
Geは、不働態皮膜内のCr濃度を増加させ安定化させることで、耐局部腐食性を向上させる効果を有する。このような効果を得るためには0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上添加する。一方、過剰な添加は熱間加工性を劣化させ、またコストの上昇ももたらすので、その上限を1.0%質量%以下、好ましくは0.9質量%以下とする。
(C:0.10質量%以下)
Cは、鋼材中でCr等との炭化物を形成して耐食性を低下させるため、有害な元素である。そのため、その上限値を0.10質量%とする。なおCの含有量はできる限り少ない方が良いため、好ましくは0.08質量%以下、より好ましくは0.06質量%以下とする。
(P:0.05質量%以下)
Pは、耐食性に有害な元素であり、溶接性や加工性も劣化させる元素であるため、その上限を0.05質量%以下とする。なおP含有量はできる限り少ない方が良く、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下とする。なお、Pは、鋼材中に含有されていない、すなわち、0質量%であっても良いが、P量の過度の低減は、製造コストの上昇をもたらすので、P量の実操業上の下限は0.010質量%程度である。
(S:0.01質量%以下)
Sは、Pと同様に溶製時に混入する不純物であり、Mn等と結合して硫化物系介在物を形成させると共に、耐食性や熱間加工性を劣化させる。したがって、S量は0.01質量%以下、好ましくは0.003質量%以下とする。
(残部Fe、不可避的不純物)
本発明で使用される二相系ステンレス鋼の基本成分は、上記の通りであり、残部成分は実質的にFeであるが、不可避的不純物(O等)の混入はもちろん許容される。たとえばOであればその含有量は0.1質量%以下、好ましくは0.09質量%以下に抑えることが好ましい。そのことによって、本発明の耐食性発現効果を極大化させることができる。さらに本発明の鋼材には、前記本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、更に他の元素を積極的に含有させても良い。
(PRE値)
本発明の二相系ステンレス鋼材は、さらに、Cr含有量(質量%)を[Cr]、Mo含有量(質量%)を[Mo]、N含有量(質量%)を[N]とした際に、下記式で表わされるPRE値が、40以上であることが必要である。
PRE=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]
この式は、鋼材の耐食性を表す指標として従来から知られている耐孔食性指数(PRE:Pitting Resistance Equivalent)である。本発明では、PRE値を40以上とすることによって、合金組織中のCr量、Mo量、N量のバランスが適切なものとなり、鋼材の耐食性および強度をさらに向上させることができる。
本発明の二相系ステンレス鋼材の成分組成は、上記記載の成分組成に加えて、さらにCu:0.1〜2.0質量%、V:0.01〜0.5質量%、Ta:0.01〜0.2質量%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
(Cu:0.1〜2.0質量%)
Cuは、耐食性の向上およびオーステナイト相を安定化させる元素である。そのため、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上添加する。一方、過剰な添加は熱間加工性を劣化させるため、その上限を2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下とする。
(V:0.01〜0.5質量%)
Vは、耐食性を向上させ、強度特性や加工性を向上させるのに効果がある。このような効果を得るためには、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上添加する必要がある。一方、過剰に添加すると粗大な炭化物や窒化物を形成し靱性を劣化させるため、その上限を0.5質量%以下、好ましくは0.4質量%以下とする。
(Ta:0.01〜0.2質量%)
Taは、不働態皮膜内のCr濃度を増加させ、耐局部腐食性を向上させる効果を有する。このような効果を得るためには0.01質量%以上、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上添加する。一方、過剰な添加は鋼中のNと結合することで窒化物として析出してしまい、靱性、熱間加工性およびNの有効濃度を低減させてしまうため、その上限を0.2質量%以下、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.12質量%以下とする。
本発明の二相系ステンレス鋼材の成分組成は、上記記載の成分組成に加えて、さらにCa:0.0005〜0.02質量%、Mg:0.0005〜0.02質量%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
(Ca、Mg:0.0005〜0.02質量%)
CaおよびMgは、鋼中に不純物として含まれるSと結合して、局部腐食の起点となりやすいMnSの形成を抑制して、耐局部腐食性を向上させる元素である。また鋼中のSやOと結合して、これらの介在物が粒界に偏析するのを抑制して、熱間加工性を向上させる効果がある。このような効果を得るためには、0.0005質量%以上添加することが好ましい。しかし過剰な添加は、酸化物系介在物の増加を招き、耐食性、加工性が劣化するため、その上限を0.02質量%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは0.002〜0.02質量%である。
以上述べてきたように、本発明の二相系ステンレス鋼材は、特定の元素を特定の含有量で有しているものである。このような特定の成分組成であることによって、塩化物や硫化水素などの腐食環境下で良好な耐食性を有したものとなる。
(二相系ステンレス鋼材の製造方法)
次に、本発明の二相系ステンレス鋼材の製造方法について説明する。
本発明の二相系ステンレス鋼材の製造方法では、以下に特に記載した以外の工程や条件については、常法により製造することが可能である。
本発明の二相系ステンレス鋼材は、通常のステンレス鋼の量産に用いられている製造設備および製造方法によって製造することができる。例えば、転炉あるいは電気炉にて溶解した溶鋼に対して、AOD法やVOD法などによる精錬を行って成分調整した後、連続鋳造法や造塊法などの鋳造方法で鋼塊とすることができる。得られた鋼塊を1000℃〜1200℃程度の温度域にて熱間加工を行い、次いで冷間加工を行って所望の寸法形状にすることができる。
本発明においては、機械特性に有害な析出物をなくすため、必要に応じて、固溶化熱処理を施して急冷することが好ましい。固溶化熱処理の温度は、1000℃〜1100℃が好ましく、保持時間は10分から30分が好ましく、急冷は10℃/秒以上の冷却速度で冷却することが好ましい。また、必要に応じてスケール除去などの表面調整のための酸洗を行うことができる。
<二相系ステンレス鋼管>
本発明に係る二相系ステンレス鋼管の実施形態について説明する。本発明の二相系ステンレス鋼管は、前記二相系ステンレス鋼材からなるものであり、通常のステンレス鋼管の量産に用いられる製造設備および製造方法によって製造することができる。前記の特定の成分組成を有した二相系ステンレス鋼材を用いて、常法にて鋼管を製造することによって、腐食環境下で良好な耐食性を有した二相系ステンレス鋼管を得ることができる。例えば、丸棒を素材とした押出製管やマンネスマン製管、板材を素材として成形後に継ぎ目を溶接する溶接製管などによって、所望の寸法にすることができる。また、二相系ステンレス鋼管の寸法は、鋼管が使用される油井管、化学プラント、アンビリカルチューブ等に応じて適宜設定することができる。なお、二相系ステンレス鋼管は、海水淡水化プラント、LNG気化器等にも使用できる。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で、適当に変更して実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
(試験材No.1〜18の作製)
電極アーク加熱機能を備える溶鋼処理設備によって、表1に示す成分組成のステンレス鋼(残部はFeおよび不可避的不純物)をそれぞれ溶製し、50kgの角鋳型(本体:約□120×450mm)を用いて鋳造した。また、各鋼の組織についてPRE値を算出した結果も表1に示す。なお、表1において、空欄は該当成分が含有されていないことを示す。凝固した鋼塊を1200℃まで加熱し、同温度で熱間鍛造を施し、600×120×60mmの鍛鋼品に仕上げた。その後、切断し、熱処理として1100℃で30分間保持して、水冷した。
(試験材No.1〜18の採取)
次に、前記鍛鋼品から加工方向に平行に採取した試料(20mm×30mm×2mmt)を用いて、以下に示す手順で耐すきま腐食性を評価した。
(耐すきま腐食性の評価)
耐すきま腐食性の評価は、ASTM G48のMethod Fに従い、すきまを付与した試験片を6%FeCl+0.05N HCl中で24時間浸漬し、試験後の最大すきま腐食深さを測定して、評価した。試験温度は60℃とした。耐すきま腐食性の評価としては、最大すきま腐食深さが、200μm未満のとき優良、次いで200μm以上で400μm未満のとき良、400μm以上のとき劣、として判定を行った。その結果を表1に示した。
(成分組成)
成分組成は、以下の方法で測定した。C、S;赤外線吸収法、Si、Mn、P、Ni、Cr;蛍光X線分析法;Mo、Sn、Ge、Ta;ICP分析法、S、N;不活性ガス融解法。試験材の測定部位は、測定が可能であれば特に限定されない。表1中、本発明の規定を満足しない組成は、数値に下線を引いて示した。
Figure 0005890342
本発明の要件である成分組成を満たす組成記号A1〜A12のステンレス鋼材(試験材No.1〜12)については、いずれも良好な耐すきま腐食性を有していることが分かる。
それに対して組成記号B1〜B6(試験材No.13〜18)については、以下の不具合を有している。
B1は、Geが多量に添加されており、σ相が増大し耐すきま腐食性が劣化していた。B2は、Geが添加されていないため、不働態皮膜が不安定であり、耐すきま腐食性が劣化していた。B3とB5は、それぞれSとMnを多量に含有するため、多数のMn硫化物が析出し、耐すきま腐食性が劣化していた。B4は、PRE値が40以下であり、耐すきま腐食性が劣っていた。B6は、N量が少量であり、耐すきま腐食性が劣化していた。

Claims (4)

  1. フェライト相とオーステナイト相とからなる二相系ステンレス鋼材であって、
    前記二相系ステンレス鋼材の成分組成は、Si:0.1〜2.0質量%、Mn:0.1〜2.0質量%、Al:0.01〜0.05質量%、Cr:22.0〜28.0質量%、Ni:1.0〜10.0質量%、Mo:2.0〜6.0質量%、N:0.2〜0.5質量%、Ge:0.1〜1.0質量%を含有し、C:0.10質量%以下、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下に規制し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    Cr含有量(質量%)を[Cr]、Mo含有量(質量%)を[Mo]、N含有量(質量%)を[N]とした際に、下記式で表わされるPRE値が、40以上であること、
    PRE=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]
    を特徴とする二相系ステンレス鋼材。
  2. 前記成分組成は、さらにCu:0.1〜2.0質量%、V:0.01〜0.5質量%、Ta:0.01〜0.2質量%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の二相系ステンレス鋼材。
  3. 前記成分組成は、さらにCa:0.0005〜0.02質量%、Mg:0.0005〜0.02質量%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二相系ステンレス鋼材。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の二相系ステンレス鋼材からなることを特徴とする二相系ステンレス鋼管。
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