JP2005035916A - ハロゲン置換芳香族化合物の製造方法およびハロゲン化反応用溶媒 - Google Patents
ハロゲン置換芳香族化合物の製造方法およびハロゲン化反応用溶媒 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】環境適応性および安全性の高い、比較的安価な4級アンモニウム塩型イオン性液体からなるハロゲン化反応用溶媒を用いたハロゲン置換芳香族化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物をN−ハロコハク酸イミドによりハロゲン化し、ハロゲン置換芳香族化合物を製造する方法において、ハロゲン化反応を脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体中で行う。
【選択図】 なし
【解決手段】芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物をN−ハロコハク酸イミドによりハロゲン化し、ハロゲン置換芳香族化合物を製造する方法において、ハロゲン化反応を脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体中で行う。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン置換芳香族化合物の製造方法およびハロゲン化反応用溶媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子供与性基で置換されたベンゼン環などの芳香環上に、N−ブロモコハク酸イミドを用いて臭素原子を導入する反応は、有機合成化学の分野において、良く知られた反応である。
この臭素化により得られた種々のブロモ置換芳香族化合物は、芳香環上の臭素原子の反応性を利用し、医農薬分野等における種々の生理活性化合物の中間体へと変換し得る重要な化合物であり、このため、N−ブロモコハク酸イミドを用いた上記反応も汎用されている。
【0003】
この臭素化反応は、一般的に、極性の高い有機溶媒中で、例えば、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル中などで行われるものであるが、これらの有機溶媒は、揮発性を有することから、環境や作業者の健康に与える影響が懸念されるとともに、極性が高く水と相溶し易いことから、これらを回収し、再利用するのに手間がかかり、コスト増を招来するという問題がある。
【0004】
近年、イオン性液体は、揮発性がなく安全性および環境適応性に優れていることから、環境に優しいグリーンケミストリー用媒体として注目されている。非特許文献1では、上述した臭素化反応溶媒の有する問題点を解決すべく、かかるイオン性液体の1種である1,3−n−ジブチルイミダゾリウム塩を溶媒として、上記臭素化反応を行っている。
非特許文献1によれば、イミダゾリウム塩を溶媒として用いた結果、高い収率および位置選択性をもって、活性芳香族化合物の臭素化反応が進行することが、報告されている。
【0005】
しかしながら、イミダゾリウム塩型のイオン性液体は、それ自体が高価な化合物であり、いくら回収が可能であると言っても、100%回収することは不可能であるから、より安価なイオン性液体で反応を行うことが望まれている。
この点、比較的安価なピリジニウム塩型イオン性液体も知られているが、非特許文献1によれば、かかるイオン性液体では、臭素化反応に極めて長時間を要するため、実用的ではない。
【0006】
【非特許文献1】
テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters)、第44巻、2003年、p.1815−1817
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、環境適応性および安全性の高い、比較的安価な4級アンモニウム塩型イオン性液体からなるハロゲン化反応用溶媒およびこれを用いたハロゲン置換芳香族化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体、好ましくは分子内にアルコキシアルキル基を有する4級アンモニウム塩型イオン性液体が、活性芳香族化合物のハロゲン化反応用溶媒として好適に使用し得ること、およびこのイオン性液体を用いることで、ハロゲン化反応時の人体や環境に対する悪影響が少ない上、ハロゲン置換芳香族化合物を安価にかつ効率よく製造できることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. 芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物を、N−ハロコハク酸イミドによりハロゲン化してハロゲン置換芳香族化合物を製造する方法であって、前記ハロゲン化反応を脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体中で行うことを特徴とするハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
2. 前記脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体が、下記一般式(1)で示される化合物であることを特徴とする1のハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
【化7】
〔式中、R1〜R4は互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、またはR′−O−(CH2)n−で表されるアルコキシアルキル基(R′はメチル基またはエチル基を示し、nは1〜4の整数である。)を示し、これらR1、R2、R3およびR4のいずれか2個の基が環を形成していても構わない。ただし、R1〜R4の内少なくとも1つは上記アルコキシアルキル基である。Xは一価のアニオンを示す。〕
3. 前記脂肪族4級アンモニウム塩系イオン性液体が、下記一般式(2)で示される化合物であることを特徴とする2のハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
【化8】
〔式中、R1〜R4は互いに同一または異種の炭素数1〜5のアルキル基を、Xは一価のアニオンを示す。〕
4. 前記脂肪族4級アンモニウム塩系イオン性液体が、下記一般式(3)で示される化合物であることを特徴とする3のハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
【化9】
〔式中、Xは一価のアニオンを示す。Meはメチル基を、Etはエチル基を意味する。〕
5. 前記芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物が、下記一般式(4)で示される化合物であることを特徴とする1〜4のいずれかのハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
【化10】
〔式中、R5、R6およびR7は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、OR8(式中、R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、NH(CO)R9(式中、R9は炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、NR10R11基(式中、R10およびR11は互いに独立して水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)、NO2基、CHO基、またはCOOR12(式中、R12は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)基を示す。ただし、R5〜R7の少なくとも1つは、炭素数1〜6のアルキル基、OR8(式中、R8は上記と同じ。)基、またはNH(CO)R9(式中、R9は上記と同じ。)基、NR10R11基(式中、R10およびR11は上記と同じ。)である。〕
6. 前記芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物が、下記一般式(5)で示される化合物であることを特徴とする1〜4のいずれかのハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
【化11】
〔式中、R13は、炭素数1〜6のアルキル基、OR8(式中、R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、NH(CO)R9(式中、R9は炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、またはNR10R11基(式中、R10およびR11は互いに独立して水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)を示す。〕
7. 前記N−ハロコハク酸イミドが、N−ブロモコハク酸イミドであることを特徴とする1〜6のいずれかのハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
8. 芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物をN−ハロコハク酸イミドによりハロゲン化する反応に用いられ、下記一般式(1)で示される脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体からなるハロゲン化反応用溶媒、
【化12】
〔式中、R1〜R4は互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、またはR′−O−(CH2)n−で表されるアルコキシアルキル基(R′はメチル基またはエチル基を示し、nは1〜4の整数である。)を示し、これらR1、R2、R3およびR4のいずれか2個の基が環を形成していても構わない。ただし、R1〜R4の内少なくとも1つは上記アルコキシアルキル基である。Xは一価のアニオンを示す。〕
を提供する。
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
なお、本明細書中において、「n」はノルマルを、「i」はイソを、「s」はセカンダリーを、「t」はターシャリーを、「c」はシクロを、「o」はオルトを、「m」はメタを、「p」はパラを意味する。
【0011】
本発明に係るハロゲン置換芳香族化合物の製造方法は、芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物を、N−ハロコハク酸イミドによりハロゲン化してハロゲン置換芳香族化合物を製造する方法であって、ハロゲン化反応を脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体中で行うものである。
【0012】
ここで、脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体としては、脂肪族4級アンモニウムカチオンを有するイオン性液体であれば、特に限定されるものではない。
例えば、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン等のテトラアルキルアンモニウムカチオンを有するイオン性液体を用いることもできるが、高いイオン性液体形成能を有するという点から、特に分子内にアルコキシアルキル基を有する下記式(1)で示されるイオン性液体を用いることが好ましい。
【0013】
【化13】
〔式中、R1〜R4は互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、またはR′−O−(CH2)n−で表されるアルコキシアルキル基(R′はメチル基またはエチル基を示し、nは1〜4の整数である。)を示し、これらR1、R2、R3およびR4のいずれか2個の基が環を形成していても構わない。ただし、R1〜R4の内少なくとも1つは上記アルコキシアルキル基である。Xは一価のアニオンを示す。〕
【0014】
式(1)において、炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基等が挙げられるが、分子量が大きいほどイオン性液体の粘性が増大する傾向にあり、粘度が高くなると反応基質を溶解させたり、反応溶液を攪拌したりすることが困難になるため、R1〜R4の少なくとも1つはメチル基、エチル基またはn−プロピル基、特に、メチル基またはエチル基であることが好ましい。
また、R′−O−(CH2)n−で表されるアルコキシアルキル基としては、メトキシまたはエトキシメチル基、メトキシまたはエトキシエチル基、メトキシまたはエトキシプロピル基、メトキシまたはエトキシブチル基が挙げられる。上記nは1〜4の整数であるが、1〜2が好ましく、特に、n=2が好ましい。
【0015】
R1〜R4のいずれか2個の基が環を形成しているカチオンとしては、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環等を有する4級アンモニウムイオンが挙げられる。
上記式(1)で示される4級アンモニウム型イオン性液体の中でも、イオン性液体形成能が高く、原料が安価で比較的簡便な方法で合成できることから、下記式(2)で示されるアルコキシエチル基を有する4級アンモニウムイオンを含んでなるイオン性液体が好ましく、特に、下記式(3)で示される4級アンモニウムイオンを含んでなるイオン性液体がより一層好ましい。
【0016】
【化14】
〔式中、R1〜R3およびXは、上記と同じ。〕
【0017】
【化15】
〔式中、Xは、上記と同じ。Meはメチル基を、Etはエチル基を示す。〕
【0018】
本発明において、使用可能なイオン性液体の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
【化16】
〔式中、Meはメチル基を、Etはエチル基を意味する。〕
【0020】
また、上記イオン性液体を構成するアニオンXとしては、特に限定されるものではなく、例えば、BF4 −、PF6 −、ClO4 −、CH3SO3 −、CH3C6H4SO3 −、CH3SO4 −、CH3CO2 −、CF3SO3 −、CF3SO4 −、CF3CO2 −、(C2F5SO2)2N−、(C2F5SO2)(CF3SO2)N−、(CF3SO2)2N−、Cl−、Br−、I−等から選ばれるアニオンを用いることができる。特に、上記式(3)の化合物において、XにBF4 −、(CF3SO2)2N−、CF3SO3 −、CF3SO4 −を用いたイオン性液体が好適に用いられる。
【0021】
上記4級アンモニウム塩の一般的な合成法は、次の通りである。まず、3級アミン類と、アルキルハライドまたはジアルキル硫酸等とを混合し、必要に応じて加熱を行うことで4級アンモニウムハライド塩とする。なお、アルコキシエチルハライド、アルコキシメチルハライド等の反応性の低い化合物を用いる場合、オートクレーブ等を用いて加圧下で反応させることが好適である。
このようにして得られた4級アンモニウムハライド塩を、水等の水性媒体中に溶解し、ホウフッ化水素酸や、テトラフルオロリン酸等の必要とするアニオン種を発生させる試薬と反応させてアニオン交換反応を行い、4級アンモニウム塩を得ることができる。
【0022】
上記イオン性液体の融点は、特に限定されるものではないが、低温下でも支障なく反応を行うためには、50℃以下、特に25℃以下であることが好ましい。
なお、本発明の製造法においては、反応溶媒として、上記イオン性液体を単独で使用してもよく、従来用いられていた極性溶媒と混合して用いることもできるが、環境適応性および安全性を低下させないために、従来の溶媒と混合して用いる場合でも、溶媒全量に対してイオン性液体を少なくとも50質量%以上、特に、75質量%以上で使用することが好ましい。
【0023】
本発明のハロゲン化反応の基質となる、芳香環上に少なくとも1つの電子供与基が直接導入された芳香族化合物としては、芳香環上に、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、アルキルカルボニルアミノ基などの電子供与性基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。なお、本発明における電子供与性基とは、置換基の奏する誘起効果および共鳴効果を勘案した場合に、全体として電子供与性基として作用する基をいう。
このような芳香族化合物としては、例えば、下記式(4)または式(5)で示されるような、置換ベンゼンや置換ナフタレンを好適に用いることができ、置換ナフタレンの場合は、特に2−置換ナフタレンが好適である。
【0024】
【化17】
〔式中、R5、R6およびR7は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、OR8(式中、R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、NH(CO)R9(式中、R9は炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、NR10R11基(式中、R10およびR11は互いに独立して水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)、NO2基、CHO基、またはCOOR12(式中、R12は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)基を示す。ただし、R5〜R7の少なくとも1つは、炭素数1〜6のアルキル基、OR8(式中、R8は上記と同じ。)基、NH(CO)R9(式中、R9は上記と同じ。)基、またはNR10R11基(式中、R10およびR11は上記と同じ。)である。〕
【0025】
【化18】
〔式中、R13は、炭素数1〜6のアルキル基、OR8(式中、R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、NH(CO)R9(式中、R9は炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、またはNR10R11基(式中、R10およびR11は互いに独立して水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)を示す。〕
【0026】
上記式(4)および(5)において、炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖、分枝または環状アルキル基のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、c−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、c−ブチル、1−メチル−c−プロピル、2−メチル−c−プロピル、n−ペンチル、1−メチル−n−ブチル、2−メチル−n−ブチル、3−メチル−n−ブチル、1,1−ジメチル−n−プロピル、1,2−ジメチル−n−プロピル、2,2−ジメチル−n−プロピル、1−エチル−n−プロピル、c−ペンチル、1−メチル−c−ブチル、2−メチル−c−ブチル、3−メチル−c−ブチル、1,2−ジメチル−c−プロピル、2,3−ジメチル−c−プロピル、1−エチル−c−プロピル、2−エチル−c−プロピル、n−ヘキシル、1−メチル−n−ペンチル、2−メチル−n−ペンチル、3−メチル−n−ペンチル、4−メチル−n−ペンチル、1,1−ジメチル−n−ブチル、1,2−ジメチル−n−ブチル、1,3−ジメチル−n−ブチル、2,2−ジメチル−n−ブチル、2,3−ジメチル−n−ブチル、3,3−ジメチル−n−ブチル、1−エチル−n−ブチル、2−エチル−n−ブチル、1,1,2−トリメチル−n−プロピル、1,2,2−トリメチル−n−プロピル、1−エチル−1−メチル−n−プロピル、1−エチル−2−メチル−n−プロピル、c−ヘキシル、1−メチル−c−ペンチル、2−メチル−c−ペンチル、3−メチル−c−ペンチル、1−エチル−c−ブチル、2−エチル−c−ブチル、3−エチル−c−ブチル、1,2−ジメチル−c−ブチル、1,3−ジメチル−c−ブチル、2,2−ジメチル−c−ブチル、2,3−ジメチル−c−ブチル、2,4−ジメチル−c−ブチル、3,3−ジメチル−c−ブチル、1−n−プロピル−c−プロピル、2−n−プロピル−c−プロピル、1−i−プロピル−c−プロピル、2−i−プロピル−c−プロピル、1,2,2−トリメチル−c−プロピル、1,2,3−トリメチル−c−プロピル、2,2,3−トリメチル−c−プロピル、1−エチル−2−メチル−c−プロピル、2−エチル−1−メチル−c−プロピル、2−エチル−2−メチル−c−プロピル、2−エチル−3−メチル−c−プロピル等が挙げられる。
【0027】
上記OR8基としては、例えば、水酸基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、c−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、c−ブトキシ、1−メチル−c−プロポキシ、2−メチル−c−プロポキシ、ペントキシ、c−ペントキシ、ヘキソキシ、c−ヘキソキシ基等が挙げられる。
【0028】
上記NH(CO)R9基としては、例えば、アセトアミド(アセチルアミノ)、エチルカルボニルアミノ、n−プロピルカルボニルアミノ、i−プロピルカルボニルアミノ、n−ブチルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
上記NR10R11基としては、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジi−プロピルアミノ基等が挙げられる。
上記COOR12基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、i−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、ペントキシカルボニル、ヘキソキシカルボニル基等が挙げられる。
また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0029】
上記式(4)または(5)で示される芳香族化合物の具体例としては、例えば、カテコール、レゾルシノール、2−ニトロフェノール、サリチルアルデヒド、サリチル酸およびそのエステル、アニソール、1,4−ジメトキシベンゼン、2−または3−メトキシトルエン、2,6−ジメチルアニソール、アニリン、アセトアニリド、o−、m−またはp−キシレン、2−ナフトール、2−メトキシナフタレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
次に、本発明のハロゲン置換芳香族化合物の製造方法について説明する。
本発明では、ハロゲン化反応の基質である活性化芳香族化合物を、上述した脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体中で、N−ハロコハク酸イミドと反応させ、ハロゲン化することで、ハロゲン置換芳香族化合物を得るものである。
【0031】
この際、溶媒であるイオン性液体の使用量は、基質である芳香族化合物の物性等によって変動するものであり一概には規定できないが、通常、基質100質量部に対して、25〜2500質量部の範囲であり、特に、100〜1000質量部の範囲であることが好ましい。
本発明においては、基質である芳香族化合物に導入するハロゲン原子の数は、通常1個であるが、基質の物性等により複数個のハロゲン原子を導入することもできる。この際、N−ハロコハク酸イミドの使用量は、基質に導入するハロゲンの数に対して1〜10モル当量の範囲であるが、基質との副反応を避けることを考慮すると、1.0〜2.5モル当量の範囲であることが好ましい。
なお、N−ハロコハク酸イミドとしては、N−クロロコハク酸イミド、N−ブロモコハク酸イミド、N−ヨードコハク酸イミドが挙げられるが、N−ブロモコハク酸イミドを用いることが好ましい。
【0032】
添加順序は、芳香族化合物とイオン性液体とを混合した後、N−ハロコハク酸イミドを加える方法、N−ハロコハク酸イミドとイオン性液体とを混合した後、芳香族化合物を加える方法等があり、いずれを採用しても構わない。
反応温度は、特に制限はないが、好ましくは、0〜40℃の範囲である。また、反応時間は、通常、0.1〜2時間である。
反応終了後は、反応液を減圧濾過等により固形物を濾別した後、濾液を必要に応じて、蒸留、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の常法によって精製し、純粋なハロゲン置換芳香族化合物を単離することができる。
なお、溶媒として使用したイオン性液体は、生成物が蒸留により単離可能な場合には、反応溶液中に生じた固形物を濾別した後、生成物を蒸留し、残留したイオン性液体を再び反応に用いることが可能であり、また、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製、回収して再利用することもできる。
【0033】
【実施例】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0034】
[合成例1] ジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩の合成
ジエチルアミン(関東化学(株)製)100mlと2−メトキシエチルクロライド(関東化学(株)製)85mlとを混合し、得られた混合溶液をオートクレーブ中に入れ、100℃で24時間反応させた。この時、内圧は、0.127MPa(1.3kgf/cm2)であった。24時間後、析出した結晶と反応液との混合物に水酸化カリウム(片山化学工業(株)製)56gを溶解した水溶液200mlを加え、2層に別れた有機層を分液ロートで分液した。さらに、塩化メチレン(和光純薬工業(株)製)100mlを加え抽出する操作を2回行った。
【0035】
分液した有機層をまとめ、飽和食塩水で洗浄した後、炭酸カリウム(和光純薬工業(株)製)を加えて乾燥し、減圧濾過した。得られた有機層の溶媒をロータリーエバポレーターを用いて留去し、残留分について常圧蒸留を行い、沸点135℃付近の留分を18.9g得た。この化合物が2−メトキシエチルジエチルアミンであることを1H−核磁気共鳴スペクトルにより確認した。
【0036】
得られた2−メトキシエチルジエチルアミン8.24gをテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)10mlに溶解し、氷冷下、ヨウ化メチル(和光純薬工業(株)製)4.0mlを加えた。30分後、アイスバスを外し、室温にて一晩撹拌した。この反応溶液の溶媒を減圧留去し、得られた固形分をエタノール(和光純薬工業(株)製)−テトラヒドロフラン系で再結晶し、2−メトキシエチルジエチルメチルアンモニウムヨウ素塩を16g得た。
【0037】
続いて、2−メトキシエチルジエチルメチルアンモニウムヨウ素塩10.0gをアセトニトリル(関東化学(株)製)50mLに溶解した。これにトリフルオロメタン酸イミドリチウム(キシダ化学(株)製)9.5gを加え、これが完全に溶解した後、さらに15分間撹拌した。
アセトニトリルを減圧留去し、残留分に水を加え、2層に分離した有機層を分液し、水で5回洗浄し、有機層中の不純物を取り除いた。
洗浄後の有機層を真空ポンプにて減圧にし、水を十分に留去し、室温(25℃)で液体状のイオン性液体を6.8g得た。
【0038】
[合成例2] ジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート塩の合成
合成例1と同様にして得られた2−メトキシエチルジエチルメチルアンモニウムヨウ素塩15.0gを蒸留水100mlに溶解し、酸化銀(関東化学(株)製)6.37gを加え、3時間攪拌した。この反応混合物を減圧濾過し、沈殿物を除去した後、攪拌下、42%テトラフルオロホウ酸(関東化学(株)製)を、反応液のpHが5〜6付近になるまで少量ずつ加えた。この反応溶液を凍結乾燥し、さらに真空ポンプで水を充分留去し、室温(25℃)で液体状のイオン性液体を12.39g得た。
【0039】
[合成例3]
N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム ビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩の合成
ジエチルアミンの代わりにピロリジンを用い、オートクレーブでの反応温度を90℃とした以外は、合成例1と同様にしてN−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム ビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩を合成した。
【0040】
[実施例1]
アニソール(関東化学(株)製)1.08gに、合成例1で得られたジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩2.5mlを加え、室温で攪拌して均一溶液とした。この混合液に室温でN−ブロモコハク酸イミド(和光純薬工業(株)製)1.77gを加え室温で15分間攪拌した。
その後、反応液を減圧濾過して固形物を濾別後、濾液をそのまま、クロロホルム(和光純薬工業(株)製)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Daisogel、ダイソー(株)製使用)に通した。
最初に流出したUV吸収のあるフラクションを分取し、溶媒を留去して4−ブロモアニソール1.71g(収率91%)を得た。なお、生成物の構造は、1H−核磁気共鳴スペクトルにより確認した。
【0041】
[実施例2]
イオン性液体として、合成例2で得られたジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート塩を用いた以外は、実施例1と同様にして臭素化反応および精製を行い、4−ブロモアニソール1.57g(収率84%)を得た。
【0042】
[実施例3]
イオン性液体として、合成例3で得られたN−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム ビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩を用いた以外は、実施例1と同様にして臭素化反応および精製を行い、4−ブロモアニソール1.50g(収率80%)を得た。
【0043】
[比較例1]
実施例1のイオン性液体を、芳香族系イオン性液体である1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(シグマアルドリッチ社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして臭素化反応および精製を行い、1.36gの液体を得た。
この液体は、アニソール:4−ブロモアニソール=1:3.9の混合物であり、4−ブロモアニソールの収率は66%であった。
【0044】
上記実施例および比較例から明らかなように、脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体を溶媒として用いた実施例1〜3の方が、イミダゾリウム塩型のイオン性液体を溶媒として用いた場合よりも、臭素化反応の進行が速やかであり、反応効率が高いことがわかる。
【0045】
[実施例4]
アニリン(関東化学(株)製)0.93gに、合成例1で得られたジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩2.5mlを加え、室温で攪拌して均一溶液とした。この混合液に、室温でN−ブロモコハク酸イミド(和光純薬工業(株)製)5.34gを加え、室温で5分間攪拌した。
その後、反応液を減圧濾過して固形物を濾別し、濾液をそのまま、クロロホルム(和光純薬工業(株)製)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Daisogel、ダイソー(株)製使用)に通した。
最初に流出したUV吸収のあるフラクションを分取し、溶媒を留去して2,4,6−トリブロモアニリン3.03g(収率92%)を得た。なお、生成物の構造は1H−核磁気共鳴スペクトルにより確認した。
【0046】
[実施例5]
レゾルシン(国産化学(株)製)1.10gに、合成例3で得られたN−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム ビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩2.5mlを加え、室温で攪拌して均一溶液とした。この混合液に室温でN−ブロモコハク酸イミド(和光純薬工業(株)製)5.34gを加え室温で5分間攪拌した。
その後、反応液を減圧濾過して固形物を濾別後、濾液をそのまま、クロロホルム(和光純薬工業(株)製)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Daisogel、ダイソー(株)製使用)に通した。
最初に流出したUV吸収のあるフラクションを分取し、溶媒を留去して2,4,6−トリブロモレゾルシン3.29g(収率95%)を得た。なお、生成物の構造は、1H−核磁気共鳴スペクトルにより確認した。
これら実施例4,5では、1つ以上の臭素原子をごく単時間で芳香族化合物に導入できていることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、環境適応性および安全性の高い、比較的安価な4級アンモニウム塩型イオン性液体からなるハロゲン化反応用溶媒を用いて活性芳香族化合物のハロゲン化を行っているから、ハロゲン置換芳香族化合物を、安価かつ安全に、しかも効率よく製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン置換芳香族化合物の製造方法およびハロゲン化反応用溶媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子供与性基で置換されたベンゼン環などの芳香環上に、N−ブロモコハク酸イミドを用いて臭素原子を導入する反応は、有機合成化学の分野において、良く知られた反応である。
この臭素化により得られた種々のブロモ置換芳香族化合物は、芳香環上の臭素原子の反応性を利用し、医農薬分野等における種々の生理活性化合物の中間体へと変換し得る重要な化合物であり、このため、N−ブロモコハク酸イミドを用いた上記反応も汎用されている。
【0003】
この臭素化反応は、一般的に、極性の高い有機溶媒中で、例えば、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル中などで行われるものであるが、これらの有機溶媒は、揮発性を有することから、環境や作業者の健康に与える影響が懸念されるとともに、極性が高く水と相溶し易いことから、これらを回収し、再利用するのに手間がかかり、コスト増を招来するという問題がある。
【0004】
近年、イオン性液体は、揮発性がなく安全性および環境適応性に優れていることから、環境に優しいグリーンケミストリー用媒体として注目されている。非特許文献1では、上述した臭素化反応溶媒の有する問題点を解決すべく、かかるイオン性液体の1種である1,3−n−ジブチルイミダゾリウム塩を溶媒として、上記臭素化反応を行っている。
非特許文献1によれば、イミダゾリウム塩を溶媒として用いた結果、高い収率および位置選択性をもって、活性芳香族化合物の臭素化反応が進行することが、報告されている。
【0005】
しかしながら、イミダゾリウム塩型のイオン性液体は、それ自体が高価な化合物であり、いくら回収が可能であると言っても、100%回収することは不可能であるから、より安価なイオン性液体で反応を行うことが望まれている。
この点、比較的安価なピリジニウム塩型イオン性液体も知られているが、非特許文献1によれば、かかるイオン性液体では、臭素化反応に極めて長時間を要するため、実用的ではない。
【0006】
【非特許文献1】
テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters)、第44巻、2003年、p.1815−1817
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、環境適応性および安全性の高い、比較的安価な4級アンモニウム塩型イオン性液体からなるハロゲン化反応用溶媒およびこれを用いたハロゲン置換芳香族化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体、好ましくは分子内にアルコキシアルキル基を有する4級アンモニウム塩型イオン性液体が、活性芳香族化合物のハロゲン化反応用溶媒として好適に使用し得ること、およびこのイオン性液体を用いることで、ハロゲン化反応時の人体や環境に対する悪影響が少ない上、ハロゲン置換芳香族化合物を安価にかつ効率よく製造できることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. 芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物を、N−ハロコハク酸イミドによりハロゲン化してハロゲン置換芳香族化合物を製造する方法であって、前記ハロゲン化反応を脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体中で行うことを特徴とするハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
2. 前記脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体が、下記一般式(1)で示される化合物であることを特徴とする1のハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
【化7】
〔式中、R1〜R4は互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、またはR′−O−(CH2)n−で表されるアルコキシアルキル基(R′はメチル基またはエチル基を示し、nは1〜4の整数である。)を示し、これらR1、R2、R3およびR4のいずれか2個の基が環を形成していても構わない。ただし、R1〜R4の内少なくとも1つは上記アルコキシアルキル基である。Xは一価のアニオンを示す。〕
3. 前記脂肪族4級アンモニウム塩系イオン性液体が、下記一般式(2)で示される化合物であることを特徴とする2のハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
【化8】
〔式中、R1〜R4は互いに同一または異種の炭素数1〜5のアルキル基を、Xは一価のアニオンを示す。〕
4. 前記脂肪族4級アンモニウム塩系イオン性液体が、下記一般式(3)で示される化合物であることを特徴とする3のハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
【化9】
〔式中、Xは一価のアニオンを示す。Meはメチル基を、Etはエチル基を意味する。〕
5. 前記芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物が、下記一般式(4)で示される化合物であることを特徴とする1〜4のいずれかのハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
【化10】
〔式中、R5、R6およびR7は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、OR8(式中、R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、NH(CO)R9(式中、R9は炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、NR10R11基(式中、R10およびR11は互いに独立して水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)、NO2基、CHO基、またはCOOR12(式中、R12は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)基を示す。ただし、R5〜R7の少なくとも1つは、炭素数1〜6のアルキル基、OR8(式中、R8は上記と同じ。)基、またはNH(CO)R9(式中、R9は上記と同じ。)基、NR10R11基(式中、R10およびR11は上記と同じ。)である。〕
6. 前記芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物が、下記一般式(5)で示される化合物であることを特徴とする1〜4のいずれかのハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
【化11】
〔式中、R13は、炭素数1〜6のアルキル基、OR8(式中、R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、NH(CO)R9(式中、R9は炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、またはNR10R11基(式中、R10およびR11は互いに独立して水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)を示す。〕
7. 前記N−ハロコハク酸イミドが、N−ブロモコハク酸イミドであることを特徴とする1〜6のいずれかのハロゲン置換芳香族化合物の製造方法、
8. 芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物をN−ハロコハク酸イミドによりハロゲン化する反応に用いられ、下記一般式(1)で示される脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体からなるハロゲン化反応用溶媒、
【化12】
〔式中、R1〜R4は互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、またはR′−O−(CH2)n−で表されるアルコキシアルキル基(R′はメチル基またはエチル基を示し、nは1〜4の整数である。)を示し、これらR1、R2、R3およびR4のいずれか2個の基が環を形成していても構わない。ただし、R1〜R4の内少なくとも1つは上記アルコキシアルキル基である。Xは一価のアニオンを示す。〕
を提供する。
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
なお、本明細書中において、「n」はノルマルを、「i」はイソを、「s」はセカンダリーを、「t」はターシャリーを、「c」はシクロを、「o」はオルトを、「m」はメタを、「p」はパラを意味する。
【0011】
本発明に係るハロゲン置換芳香族化合物の製造方法は、芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物を、N−ハロコハク酸イミドによりハロゲン化してハロゲン置換芳香族化合物を製造する方法であって、ハロゲン化反応を脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体中で行うものである。
【0012】
ここで、脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体としては、脂肪族4級アンモニウムカチオンを有するイオン性液体であれば、特に限定されるものではない。
例えば、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン等のテトラアルキルアンモニウムカチオンを有するイオン性液体を用いることもできるが、高いイオン性液体形成能を有するという点から、特に分子内にアルコキシアルキル基を有する下記式(1)で示されるイオン性液体を用いることが好ましい。
【0013】
【化13】
〔式中、R1〜R4は互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、またはR′−O−(CH2)n−で表されるアルコキシアルキル基(R′はメチル基またはエチル基を示し、nは1〜4の整数である。)を示し、これらR1、R2、R3およびR4のいずれか2個の基が環を形成していても構わない。ただし、R1〜R4の内少なくとも1つは上記アルコキシアルキル基である。Xは一価のアニオンを示す。〕
【0014】
式(1)において、炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基等が挙げられるが、分子量が大きいほどイオン性液体の粘性が増大する傾向にあり、粘度が高くなると反応基質を溶解させたり、反応溶液を攪拌したりすることが困難になるため、R1〜R4の少なくとも1つはメチル基、エチル基またはn−プロピル基、特に、メチル基またはエチル基であることが好ましい。
また、R′−O−(CH2)n−で表されるアルコキシアルキル基としては、メトキシまたはエトキシメチル基、メトキシまたはエトキシエチル基、メトキシまたはエトキシプロピル基、メトキシまたはエトキシブチル基が挙げられる。上記nは1〜4の整数であるが、1〜2が好ましく、特に、n=2が好ましい。
【0015】
R1〜R4のいずれか2個の基が環を形成しているカチオンとしては、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環等を有する4級アンモニウムイオンが挙げられる。
上記式(1)で示される4級アンモニウム型イオン性液体の中でも、イオン性液体形成能が高く、原料が安価で比較的簡便な方法で合成できることから、下記式(2)で示されるアルコキシエチル基を有する4級アンモニウムイオンを含んでなるイオン性液体が好ましく、特に、下記式(3)で示される4級アンモニウムイオンを含んでなるイオン性液体がより一層好ましい。
【0016】
【化14】
〔式中、R1〜R3およびXは、上記と同じ。〕
【0017】
【化15】
〔式中、Xは、上記と同じ。Meはメチル基を、Etはエチル基を示す。〕
【0018】
本発明において、使用可能なイオン性液体の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
【化16】
〔式中、Meはメチル基を、Etはエチル基を意味する。〕
【0020】
また、上記イオン性液体を構成するアニオンXとしては、特に限定されるものではなく、例えば、BF4 −、PF6 −、ClO4 −、CH3SO3 −、CH3C6H4SO3 −、CH3SO4 −、CH3CO2 −、CF3SO3 −、CF3SO4 −、CF3CO2 −、(C2F5SO2)2N−、(C2F5SO2)(CF3SO2)N−、(CF3SO2)2N−、Cl−、Br−、I−等から選ばれるアニオンを用いることができる。特に、上記式(3)の化合物において、XにBF4 −、(CF3SO2)2N−、CF3SO3 −、CF3SO4 −を用いたイオン性液体が好適に用いられる。
【0021】
上記4級アンモニウム塩の一般的な合成法は、次の通りである。まず、3級アミン類と、アルキルハライドまたはジアルキル硫酸等とを混合し、必要に応じて加熱を行うことで4級アンモニウムハライド塩とする。なお、アルコキシエチルハライド、アルコキシメチルハライド等の反応性の低い化合物を用いる場合、オートクレーブ等を用いて加圧下で反応させることが好適である。
このようにして得られた4級アンモニウムハライド塩を、水等の水性媒体中に溶解し、ホウフッ化水素酸や、テトラフルオロリン酸等の必要とするアニオン種を発生させる試薬と反応させてアニオン交換反応を行い、4級アンモニウム塩を得ることができる。
【0022】
上記イオン性液体の融点は、特に限定されるものではないが、低温下でも支障なく反応を行うためには、50℃以下、特に25℃以下であることが好ましい。
なお、本発明の製造法においては、反応溶媒として、上記イオン性液体を単独で使用してもよく、従来用いられていた極性溶媒と混合して用いることもできるが、環境適応性および安全性を低下させないために、従来の溶媒と混合して用いる場合でも、溶媒全量に対してイオン性液体を少なくとも50質量%以上、特に、75質量%以上で使用することが好ましい。
【0023】
本発明のハロゲン化反応の基質となる、芳香環上に少なくとも1つの電子供与基が直接導入された芳香族化合物としては、芳香環上に、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、アルキルカルボニルアミノ基などの電子供与性基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。なお、本発明における電子供与性基とは、置換基の奏する誘起効果および共鳴効果を勘案した場合に、全体として電子供与性基として作用する基をいう。
このような芳香族化合物としては、例えば、下記式(4)または式(5)で示されるような、置換ベンゼンや置換ナフタレンを好適に用いることができ、置換ナフタレンの場合は、特に2−置換ナフタレンが好適である。
【0024】
【化17】
〔式中、R5、R6およびR7は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、OR8(式中、R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、NH(CO)R9(式中、R9は炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、NR10R11基(式中、R10およびR11は互いに独立して水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)、NO2基、CHO基、またはCOOR12(式中、R12は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)基を示す。ただし、R5〜R7の少なくとも1つは、炭素数1〜6のアルキル基、OR8(式中、R8は上記と同じ。)基、NH(CO)R9(式中、R9は上記と同じ。)基、またはNR10R11基(式中、R10およびR11は上記と同じ。)である。〕
【0025】
【化18】
〔式中、R13は、炭素数1〜6のアルキル基、OR8(式中、R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、NH(CO)R9(式中、R9は炭素数1〜6のアルキル基を示す)基、またはNR10R11基(式中、R10およびR11は互いに独立して水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)を示す。〕
【0026】
上記式(4)および(5)において、炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖、分枝または環状アルキル基のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、c−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、c−ブチル、1−メチル−c−プロピル、2−メチル−c−プロピル、n−ペンチル、1−メチル−n−ブチル、2−メチル−n−ブチル、3−メチル−n−ブチル、1,1−ジメチル−n−プロピル、1,2−ジメチル−n−プロピル、2,2−ジメチル−n−プロピル、1−エチル−n−プロピル、c−ペンチル、1−メチル−c−ブチル、2−メチル−c−ブチル、3−メチル−c−ブチル、1,2−ジメチル−c−プロピル、2,3−ジメチル−c−プロピル、1−エチル−c−プロピル、2−エチル−c−プロピル、n−ヘキシル、1−メチル−n−ペンチル、2−メチル−n−ペンチル、3−メチル−n−ペンチル、4−メチル−n−ペンチル、1,1−ジメチル−n−ブチル、1,2−ジメチル−n−ブチル、1,3−ジメチル−n−ブチル、2,2−ジメチル−n−ブチル、2,3−ジメチル−n−ブチル、3,3−ジメチル−n−ブチル、1−エチル−n−ブチル、2−エチル−n−ブチル、1,1,2−トリメチル−n−プロピル、1,2,2−トリメチル−n−プロピル、1−エチル−1−メチル−n−プロピル、1−エチル−2−メチル−n−プロピル、c−ヘキシル、1−メチル−c−ペンチル、2−メチル−c−ペンチル、3−メチル−c−ペンチル、1−エチル−c−ブチル、2−エチル−c−ブチル、3−エチル−c−ブチル、1,2−ジメチル−c−ブチル、1,3−ジメチル−c−ブチル、2,2−ジメチル−c−ブチル、2,3−ジメチル−c−ブチル、2,4−ジメチル−c−ブチル、3,3−ジメチル−c−ブチル、1−n−プロピル−c−プロピル、2−n−プロピル−c−プロピル、1−i−プロピル−c−プロピル、2−i−プロピル−c−プロピル、1,2,2−トリメチル−c−プロピル、1,2,3−トリメチル−c−プロピル、2,2,3−トリメチル−c−プロピル、1−エチル−2−メチル−c−プロピル、2−エチル−1−メチル−c−プロピル、2−エチル−2−メチル−c−プロピル、2−エチル−3−メチル−c−プロピル等が挙げられる。
【0027】
上記OR8基としては、例えば、水酸基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、c−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、c−ブトキシ、1−メチル−c−プロポキシ、2−メチル−c−プロポキシ、ペントキシ、c−ペントキシ、ヘキソキシ、c−ヘキソキシ基等が挙げられる。
【0028】
上記NH(CO)R9基としては、例えば、アセトアミド(アセチルアミノ)、エチルカルボニルアミノ、n−プロピルカルボニルアミノ、i−プロピルカルボニルアミノ、n−ブチルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
上記NR10R11基としては、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジi−プロピルアミノ基等が挙げられる。
上記COOR12基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、i−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、ペントキシカルボニル、ヘキソキシカルボニル基等が挙げられる。
また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0029】
上記式(4)または(5)で示される芳香族化合物の具体例としては、例えば、カテコール、レゾルシノール、2−ニトロフェノール、サリチルアルデヒド、サリチル酸およびそのエステル、アニソール、1,4−ジメトキシベンゼン、2−または3−メトキシトルエン、2,6−ジメチルアニソール、アニリン、アセトアニリド、o−、m−またはp−キシレン、2−ナフトール、2−メトキシナフタレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
次に、本発明のハロゲン置換芳香族化合物の製造方法について説明する。
本発明では、ハロゲン化反応の基質である活性化芳香族化合物を、上述した脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体中で、N−ハロコハク酸イミドと反応させ、ハロゲン化することで、ハロゲン置換芳香族化合物を得るものである。
【0031】
この際、溶媒であるイオン性液体の使用量は、基質である芳香族化合物の物性等によって変動するものであり一概には規定できないが、通常、基質100質量部に対して、25〜2500質量部の範囲であり、特に、100〜1000質量部の範囲であることが好ましい。
本発明においては、基質である芳香族化合物に導入するハロゲン原子の数は、通常1個であるが、基質の物性等により複数個のハロゲン原子を導入することもできる。この際、N−ハロコハク酸イミドの使用量は、基質に導入するハロゲンの数に対して1〜10モル当量の範囲であるが、基質との副反応を避けることを考慮すると、1.0〜2.5モル当量の範囲であることが好ましい。
なお、N−ハロコハク酸イミドとしては、N−クロロコハク酸イミド、N−ブロモコハク酸イミド、N−ヨードコハク酸イミドが挙げられるが、N−ブロモコハク酸イミドを用いることが好ましい。
【0032】
添加順序は、芳香族化合物とイオン性液体とを混合した後、N−ハロコハク酸イミドを加える方法、N−ハロコハク酸イミドとイオン性液体とを混合した後、芳香族化合物を加える方法等があり、いずれを採用しても構わない。
反応温度は、特に制限はないが、好ましくは、0〜40℃の範囲である。また、反応時間は、通常、0.1〜2時間である。
反応終了後は、反応液を減圧濾過等により固形物を濾別した後、濾液を必要に応じて、蒸留、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の常法によって精製し、純粋なハロゲン置換芳香族化合物を単離することができる。
なお、溶媒として使用したイオン性液体は、生成物が蒸留により単離可能な場合には、反応溶液中に生じた固形物を濾別した後、生成物を蒸留し、残留したイオン性液体を再び反応に用いることが可能であり、また、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製、回収して再利用することもできる。
【0033】
【実施例】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0034】
[合成例1] ジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩の合成
ジエチルアミン(関東化学(株)製)100mlと2−メトキシエチルクロライド(関東化学(株)製)85mlとを混合し、得られた混合溶液をオートクレーブ中に入れ、100℃で24時間反応させた。この時、内圧は、0.127MPa(1.3kgf/cm2)であった。24時間後、析出した結晶と反応液との混合物に水酸化カリウム(片山化学工業(株)製)56gを溶解した水溶液200mlを加え、2層に別れた有機層を分液ロートで分液した。さらに、塩化メチレン(和光純薬工業(株)製)100mlを加え抽出する操作を2回行った。
【0035】
分液した有機層をまとめ、飽和食塩水で洗浄した後、炭酸カリウム(和光純薬工業(株)製)を加えて乾燥し、減圧濾過した。得られた有機層の溶媒をロータリーエバポレーターを用いて留去し、残留分について常圧蒸留を行い、沸点135℃付近の留分を18.9g得た。この化合物が2−メトキシエチルジエチルアミンであることを1H−核磁気共鳴スペクトルにより確認した。
【0036】
得られた2−メトキシエチルジエチルアミン8.24gをテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)10mlに溶解し、氷冷下、ヨウ化メチル(和光純薬工業(株)製)4.0mlを加えた。30分後、アイスバスを外し、室温にて一晩撹拌した。この反応溶液の溶媒を減圧留去し、得られた固形分をエタノール(和光純薬工業(株)製)−テトラヒドロフラン系で再結晶し、2−メトキシエチルジエチルメチルアンモニウムヨウ素塩を16g得た。
【0037】
続いて、2−メトキシエチルジエチルメチルアンモニウムヨウ素塩10.0gをアセトニトリル(関東化学(株)製)50mLに溶解した。これにトリフルオロメタン酸イミドリチウム(キシダ化学(株)製)9.5gを加え、これが完全に溶解した後、さらに15分間撹拌した。
アセトニトリルを減圧留去し、残留分に水を加え、2層に分離した有機層を分液し、水で5回洗浄し、有機層中の不純物を取り除いた。
洗浄後の有機層を真空ポンプにて減圧にし、水を十分に留去し、室温(25℃)で液体状のイオン性液体を6.8g得た。
【0038】
[合成例2] ジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート塩の合成
合成例1と同様にして得られた2−メトキシエチルジエチルメチルアンモニウムヨウ素塩15.0gを蒸留水100mlに溶解し、酸化銀(関東化学(株)製)6.37gを加え、3時間攪拌した。この反応混合物を減圧濾過し、沈殿物を除去した後、攪拌下、42%テトラフルオロホウ酸(関東化学(株)製)を、反応液のpHが5〜6付近になるまで少量ずつ加えた。この反応溶液を凍結乾燥し、さらに真空ポンプで水を充分留去し、室温(25℃)で液体状のイオン性液体を12.39g得た。
【0039】
[合成例3]
N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム ビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩の合成
ジエチルアミンの代わりにピロリジンを用い、オートクレーブでの反応温度を90℃とした以外は、合成例1と同様にしてN−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム ビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩を合成した。
【0040】
[実施例1]
アニソール(関東化学(株)製)1.08gに、合成例1で得られたジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩2.5mlを加え、室温で攪拌して均一溶液とした。この混合液に室温でN−ブロモコハク酸イミド(和光純薬工業(株)製)1.77gを加え室温で15分間攪拌した。
その後、反応液を減圧濾過して固形物を濾別後、濾液をそのまま、クロロホルム(和光純薬工業(株)製)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Daisogel、ダイソー(株)製使用)に通した。
最初に流出したUV吸収のあるフラクションを分取し、溶媒を留去して4−ブロモアニソール1.71g(収率91%)を得た。なお、生成物の構造は、1H−核磁気共鳴スペクトルにより確認した。
【0041】
[実施例2]
イオン性液体として、合成例2で得られたジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート塩を用いた以外は、実施例1と同様にして臭素化反応および精製を行い、4−ブロモアニソール1.57g(収率84%)を得た。
【0042】
[実施例3]
イオン性液体として、合成例3で得られたN−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム ビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩を用いた以外は、実施例1と同様にして臭素化反応および精製を行い、4−ブロモアニソール1.50g(収率80%)を得た。
【0043】
[比較例1]
実施例1のイオン性液体を、芳香族系イオン性液体である1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(シグマアルドリッチ社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして臭素化反応および精製を行い、1.36gの液体を得た。
この液体は、アニソール:4−ブロモアニソール=1:3.9の混合物であり、4−ブロモアニソールの収率は66%であった。
【0044】
上記実施例および比較例から明らかなように、脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体を溶媒として用いた実施例1〜3の方が、イミダゾリウム塩型のイオン性液体を溶媒として用いた場合よりも、臭素化反応の進行が速やかであり、反応効率が高いことがわかる。
【0045】
[実施例4]
アニリン(関東化学(株)製)0.93gに、合成例1で得られたジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩2.5mlを加え、室温で攪拌して均一溶液とした。この混合液に、室温でN−ブロモコハク酸イミド(和光純薬工業(株)製)5.34gを加え、室温で5分間攪拌した。
その後、反応液を減圧濾過して固形物を濾別し、濾液をそのまま、クロロホルム(和光純薬工業(株)製)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Daisogel、ダイソー(株)製使用)に通した。
最初に流出したUV吸収のあるフラクションを分取し、溶媒を留去して2,4,6−トリブロモアニリン3.03g(収率92%)を得た。なお、生成物の構造は1H−核磁気共鳴スペクトルにより確認した。
【0046】
[実施例5]
レゾルシン(国産化学(株)製)1.10gに、合成例3で得られたN−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム ビストリフルオロメタンスルホニルイミド塩2.5mlを加え、室温で攪拌して均一溶液とした。この混合液に室温でN−ブロモコハク酸イミド(和光純薬工業(株)製)5.34gを加え室温で5分間攪拌した。
その後、反応液を減圧濾過して固形物を濾別後、濾液をそのまま、クロロホルム(和光純薬工業(株)製)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Daisogel、ダイソー(株)製使用)に通した。
最初に流出したUV吸収のあるフラクションを分取し、溶媒を留去して2,4,6−トリブロモレゾルシン3.29g(収率95%)を得た。なお、生成物の構造は、1H−核磁気共鳴スペクトルにより確認した。
これら実施例4,5では、1つ以上の臭素原子をごく単時間で芳香族化合物に導入できていることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、環境適応性および安全性の高い、比較的安価な4級アンモニウム塩型イオン性液体からなるハロゲン化反応用溶媒を用いて活性芳香族化合物のハロゲン化を行っているから、ハロゲン置換芳香族化合物を、安価かつ安全に、しかも効率よく製造することができる。
Claims (8)
- 芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物を、N−ハロコハク酸イミドによりハロゲン化してハロゲン置換芳香族化合物を製造する方法であって、
前記ハロゲン化反応を脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体中で行うことを特徴とするハロゲン置換芳香族化合物の製造方法。 - 前記芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物が、下記一般式(4)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン置換芳香族化合物の製造方法。
- 前記N−ハロコハク酸イミドが、N−ブロモコハク酸イミドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン置換芳香族化合物の製造方法。
- 芳香環上に少なくとも1つの電子供与性基が直接導入された芳香族化合物をN−ハロコハク酸イミドによりハロゲン化する反応に用いられ、
下記一般式(1)で示される脂肪族4級アンモニウム塩型イオン性液体からなるハロゲン化反応用溶媒。
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