JP2005020152A - 高周波モジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】互いに対向して配設された一対のグランド電極6,7および一対のグランド電極6,7間を導通させるスルーホール8で囲まれた領域を有してその領域内をTEモードの電磁波が伝搬可能に構成されると共にその領域内に1波長共振器11が形成された導波管型導波路3と、グランド電極6における1波長共振器11の各1/2波長共振領域A,Bに対応する部位にそれぞれ接続されている一対の出力線路4a,4bとを備えている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波やミリ波などの電磁波(高周波信号)の伝搬に用いられる高周波モジュールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
移動体通信技術等の進歩により、通信に利用される電波の周波数帯域がGHz帯のような高周波域に拡がり、通信に利用される通信機器の小形化も進んでいる。このため、この種の通信機器において使用される導波管やフィルタ等の高周波モジュールに対しても、さらなる高周波化および小形化への対応が求められており、特開平6−53711号公報に開示されているような導波管線路や、特開平11−284409号公報に開示されているようなこの種の導波管線路を利用したフィルタが開発されている。また、この種の高周波モジュールを接続する接続構造としては、特開2000−216605号公報や特開2003−110307号公報に開示されているような接続構造が開発されている。
【0003】
この場合、特開平6−53711号公報に開示されている導波管線路は、同公報中の図1に示すように、導体層(2,3)を有する誘電体基板(1)と、各導体層(2,3)間を接続する2列に配設された複数の導通穴(4)とを備えて構成されている。この導波管線路は、一対の導体層(2,3)と複数の導通穴(4)による疑似的な導体壁とで誘電体材料の四方を囲むことによって導体内の領域を信号伝送用の線路とした疑似矩形導波管路で構成されている。この場合、このような構成の導波管線路は、誘電体導波管線路とも呼ばれている。
【0004】
また、特開平11−284409号公報に開示されているフィルタは、同公報中の図1に示すように、特開平6−53711号公報に開示された導波管線路と同様にして、誘電体基板(21)、一対の主導体層(22,23)および側壁用貫通導体群(24)によって構成された疑似矩形導波管路としての誘電体導波管線路(25)の内部に、一対の主導体層(22,23)間を電気的に接続(導通)して誘導性窓(結合窓)を形成する複数の貫通導体(26)を配設して構成されている。このフィルタによれば、配線基板等の誘電体基板内に作り込むことができるため、フィルタを容易に小形化することが可能となっている。
【0005】
また、特開2000−216605号公報に開示されている誘電体導波管線路(疑似矩形導波管路)と線路導体(マイクロストリップ線路)との接続構造は、同公報中の図1に示すように、誘電体導波管線路(16)の開口端に、線路導体(20)の端部を挿入すると共に、その端部と一方の主導体層(12)とを、接続用線路導体(18)と接続用貫通導体(17)とにより階段状を成すように電気的に接続する。また、この接続構造は、一対の主導体層(12,13)間の間隔を狭くしたいわゆるリッジ導波管構造を構成する。このため、線路導体(20)から誘電体導波管線路(16)への高周波信号(電磁波)の伝搬に際しては、線路導体(20)においてTEMモードで伝搬する電磁波を誘電体導波管線路(16)においてTEモード(TE10モード)で伝搬する電磁波にモード変換する。
【0006】
一方、特開2003−110307号公報に開示されている導波管線路(この例では導波管線路は誘電体導波管フィルタを構成している)と線路導体(マイクロストリップ線路)との接続構造は、同公報中の図1に示すように、誘電体導波管フィルタを構成する誘電体導波管共振器(11a,11d)の外側に、突出部(17a,17b)を形成すると共に、誘電体導波管共振器(11a,11d)の底面から突出部(17a,17b)に跨って入出力電極となる導体ストリップ線路(15a,15b)を形成し、この導体ストリップ線路(15a,15b)を配線基板(18)上に形成された線路導体としての導体パターン(19a,19b)に接続する。この接続構造では、各導体パターン(19a,19b)は、同じ幅に形成された導体ストリップ線路(15a,15b)を介して誘電体導波管共振器(11a,11d)の底面でそれぞれ終端される。これにより、誘電体導波管共振器(11a,11d)の底面に各導体パターン(19a,19b)を介してTEMモードの入出力信号が流れる。したがって、この入出力信号によって誘電体導波管共振器(11a,11d)の内部に引き起こされた磁界が誘電体導波管共振器(11a,11d)の基本共振モード(TEモード(TE10モード))の磁界と結合する結果、導体パターン(19a,19b)においてTEMモードで伝搬する電磁波を誘電体導波管線路としての誘電体導波管共振器(11a,11d)においてTEモード(TE10モード)で伝搬する電磁波にモード変換し、また誘電体導波管共振器(11a,11d)においてTEモード(TE10モード)で伝搬する電磁波を導体パターン(19a,19b)においてTEMモードで伝搬する電磁波にモード変換する。
【0007】
ところで、例えば特開2000−216605号公報や特開2003−110307号公報に開示されているように、現在提案されている高周波モジュールの多くは、誘電体導波管線路(導波管型導波路)からTEMモードの電磁波を不平衡型の電磁波として出力するものであるが、導波管型導波路から平衡型のTEMモード高周波信号を出力する高周波モジュール(不平衡−平衡変換器。いわゆるバラン)の実現に対する要求もある。このため、この要求に対して、例えば、特許第3351351号公報に開示されているような高周波波モジュール(誘電体フィルタ)が提案されている。この誘電体フィルタでは、同公報中の図1に示すように、誘電体ブロック(1)の外面に、外部結合線路(25)の一方端から連続する外部端子(8)、共振線路(5a)との間で静電容量を形成する外部端子(6)を形成することによって不平衡−平衡変換回路を構成して、外部端子(6)から容量性結合によって出力される一方の出力信号と、外部端子(8)から誘導性結合によって出力される他方の出力信号との間の位相差を、各結合部分の容量値やインダクタンス値を調整することによって180度にしている。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−53711号公報(第2頁、第1図)
【特許文献2】
特開平11−284409号公報(第4頁、第1図)
【特許文献3】
特開2000−216605号公報(第3頁、第1図)
【特許文献4】
特開2003−110307号公報(第3頁、第1,5図)
【特許文献5】
特許3351351号公報(第2−3頁、第1図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この特許3351351号公報に開示されている不平衡−平衡変換回路には、以下の問題点がある。すなわち、この不平衡−平衡変換回路では、2つの出力信号間の位相差を180度にするためには、容量性結合の容量値と誘導性結合のインダクタンス値とを調整しなければならない。したがって、この不平衡−平衡変換回路には、調整作業に手間がかかると共に、共振器のほかに、共振器として動作させない信号経路を設ける必要があるために小形化するのが困難であるという問題点が存在する。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解決すべくなされたものであり、調整が不要で平衡型の電磁波を出力でき、しかも小形化の容易な高周波モジュールを提供することを主目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係る高周波モジュールは、互いに対向して配設された一対のグランド電極および当該一対のグランド電極間を導通させる導通体で囲まれた領域を有して当該領域内をTEモードの電磁波が伝搬可能に構成されると共に当該領域内に1波長共振器が形成された導波管型導波路と、前記一対のグランド電極の内の一方における前記1波長共振器の各1/2波長共振領域に対応する部位にそれぞれ接続されている一対の出力線路とを備えている。
【0012】
この場合、TEMモードの電磁波が伝搬可能に前記一対の出力線路を構成するのが好ましい。
【0013】
また、前記導波管型導波路の内部に形成されると共に前記1波長共振器に連結された1/2波長共振器と、前記一対のグランド電極の内の一方における前記1/2波長共振器に対応する部位に接続されてTEMモードの電磁波をTEモードの電磁波として当該1/2波長共振器に入力可能に構成された入力線路とを備えているのが好ましい。ここで、1/2波長共振器と1波長共振器とは、導波路などを介して、または直接に連結することができる。
【0014】
この場合、結合窓を介して前記1/2波長共振器および前記1波長共振器を互いに連結するのが好ましい。
【0015】
また、前記1/2波長共振器および前記1波長共振器の間に形成されると共に当該両共振器に結合窓を介して連結される少なくとも1つ以上の他の共振器を備えているのが好ましい。
【0016】
また、前記導波管型導波路の内部に形成されると共に前記1波長共振器に連結された他の1波長共振器と、前記一対のグランド電極の内の一方における前記他の1波長共振器の各1/2波長共振領域に対応する部位にそれぞれ接続されてTEMモードの電磁波をTEモードの電磁波として当該他の1波長共振器に入力可能に構成された一対の入力線路とを備えているのが好ましい。ここで、他の1波長共振器と1波長共振器とは、導波路などを介して、または直接に連結することができる。
【0017】
この場合、結合窓を介して前記他の1波長共振器および前記1波長共振器を互いに連結するのが好ましい。
【0018】
また、前記他の1波長共振器および前記1波長共振器の間に形成されると共に当該両共振器に結合窓を介して連結される少なくとも1つ以上の他の共振器を備えているのが好ましい。
【0019】
また、ストリップ線路、マイクロストリップ線路およびコプレーナ線路のいずれか1つで前記入力線路を構成することができる。
【0020】
さらに、ストリップ線路、マイクロストリップ線路およびコプレーナ線路のいずれか1つで前記出力線路を構成することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る高周波モジュールの好適な実施の形態について説明する。
【0022】
最初に、本発明に係る高周波モジュールの構成について、図面を参照して説明する。
【0023】
高周波モジュール1は、図1に示すように、TEMモードの電磁波を伝搬する入力線路2、入力線路2と結合してTEモード(具体的には、最低次のTE10モード)の電磁波を伝搬する導波管型導波路3、および導波管型導波路3と結合してTEMモードの電磁波を伝搬する一対の出力線路4a,4bを備えている。この場合、導波管型導波路3は、誘電体基板5を挟んで互いに対向して配設された一対のグランド電極6,7と、誘電体基板5を貫通することによって一対のグランド電極6,7間を導通させて本発明における導通体として機能する複数のスルーホール8,8,8・・とを備えて誘電体導波管(誘電体導波管路)を構成している。各スルーホール8は、その内面がメタライズされると共に、導波管型導波路3内を伝搬する電磁波の漏出を回避すべく、所定幅(例えば管内信号波長の1/4の幅)以下の間隔で設置されている。この構成により、導波管型導波路3は、一対のグランド電極6,7とスルーホール8とによって囲まれた領域内を、例えば図中のS方向に電磁波を漏れなく伝搬させることができる。なお、導波管型導波路3は、本実施の形態のように、その内部が誘電体で満たされた誘電体導波管で構成することもできるし、図示はしないが、内部を空洞にしたキャビティ導波管で構成することもできる。また、図1において、最上層については、その厚みを省略してハッチングを施して図示する。
【0024】
また、図1に示すように、導波管型導波路3の内部には、誘電体基板5を貫通することによって一対のグランド電極6,7間を導通させる他の複数のスルーホール9,9・・が一列に配設されている。この場合、スルーホール9は、前述したスルーホール8と同一の構造で構成されている。このため、図1,2に示すように、導波管型導波路3内には、各スルーホール9,9・・と各スルーホール8,8・・との隙間に結合窓12,12が形成されると共に、導波管型導波路3の入力側に1/2波長共振器10が形成され、かつ出力側に1波長共振器11が形成されている。また、1/2波長共振器10は、1波長共振器11における各1/2波長共振領域A,Bのうちの1/2波長共振領域Aと結合窓12を介して磁界結合している。したがって、高周波モジュール1は、フィルタ(具体的にはバンドパスフィルタ)として機能するように構成されている。なお、一例として、導波管型導波路3は、全体の平面視形状がL字状となるように1/2波長共振器10と1波長共振器11とを配置して構成されているが、1/2波長共振器10、1波長共振器11内の1/2波長共振領域A、および1波長共振器11内の1/2波長共振領域Bを一直線上に配置して全体の平面視形状がI字状となるように構成してもよい。さらに、導波管型導波路3の内部に、複数の1/2波長共振器10を多段で形成してもよい。
【0025】
入力線路2は、図1に示すように、誘電体基板5におけるグランド電極6の形成面上に、誘電体基板5を挟んでグランド電極7と対向するように配設されて、マイクロストリップ線路を構成する。また、入力線路2は、その一端側がグランド電極6における1/2波長共振器10に対応する部位(言い換えれば、1/2波長共振器10を構成する部位)に直接的に接続されてその部位と導通する。この構成により、入力線路2は、導波管型導波路3のE面(電界に平行な面)において導波管型導波路3と磁界結合する。この場合、導波管型導波路3の伝搬モードがTEモードであり、電磁波がS方向(Z方向でもある)に伝搬するため、導波管型導波路3のE面は図1中のXY平面に平行な面となる。
【0026】
図3〜図5は、入力線路2と導波管型導波路3との接続部およびその近傍におけるXY断面内での磁界分布をそれぞれ示している。この場合、接続部近傍の入力線路2における磁界H1は、電磁波の伝搬モードがTEMモードのため、図3に示すように、入力線路2の周囲において環状に分布する。一方、導波管型導波路3における磁界H2は、TEモード(TE10モード)のため、図4に示すように、その断面内において一方向の向きに分布する。したがって、図5に示すように、接続部における導波管型導波路3のE面内において、入力線路2における磁界H1の方向と導波管型導波路3における磁界H2の方向とが一致することにより、入力線路2と導波管型導波路3とが磁界結合してTEMモードからTEモードへの変換が行われる。つまり、入力線路2から伝搬したTEMモードの電磁波は、TEモードの電磁波として導波管型導波路3内に入力される。
【0027】
一対の出力線路4a,4bは、図1に示すように、誘電体基板5を挟んでグランド電極7と対向するようにして誘電体基板5におけるグランド電極6の形成面上にそれぞれ配設されて、入力線路2と同様にしてマイクロストリップ線路を構成する。また、各出力線路4a,4bは、一端側がグランド電極6における1波長共振器11の各1/2波長共振領域A,Bに対応する部位にそれぞれ直接的に接続されてその部位と導通する。具体的には、図2に示すように、1波長共振器11の各1/2波長共振領域A,Bの長さをそれぞれLとしたときに、各出力線路4a,4bは、対応する1/2波長共振領域A,Bの各中央部(各1/2波長共振領域A,Bの端部からL/2だけ離間した位置)にそれぞれ接続されている。このため、各出力線路4a,4bは、入力線路2と同様にして、1波長共振器11の1/2波長共振領域Aにおける磁界H3の方向と出力線路4aにおける磁界H5の方向とが一致し、かつ1波長共振器11の1/2波長共振領域Bにおける磁界H4の方向と出力線路4bにおける磁界H6の方向とが一致することにより、導波管型導波路3のE面(図1中のXY平面に平行な面)において導波管型導波路3と磁界結合する。したがって、一対の出力線路4a,4bと導波管型導波路3との接続部において、入力線路2のときとは逆にして、TEモードからTEMモードへの変換が行われる。
【0028】
次いで、高周波モジュール1の動作について説明する。
【0029】
この高周波モジュール1では、入力線路2に入力されたTEMモードの電磁波は、TEモードの電磁波として1/2波長共振器10に入力され、さらに1/2波長共振器10を経由して1波長共振器11に伝搬される。この場合、図2に模式的に示すように、1波長共振器11の各1/2波長共振領域A,B内におけるH面(磁界と平行な面、すなわちXZ平面に平行な面)内で生じる磁界H3,H4の向きは、1波長共振器11が電磁波に対して共振器として作用する周波数帯域(高周波モジュール1の信号通過帯域)内では常に互いに逆向きとなる。したがって、1波長共振器11の各1/2波長共振領域A,Bにそれぞれ接続された各出力線路4a,4bにおける各磁界H5,H6も、この信号通過帯域内において常に互いに逆向きとなる。この結果、1波長共振器11から各出力線路4a,4bに出力されるTEMモードの各電磁波の位相は、この信号通過帯域内において、互いにほぼ180度ずれた状態となる。シミュレーション結果によれば、この高周波モジュール1では、図6に示すように、信号通過帯域(約25GHz〜約25.4GHzの帯域)を含んでさらに広い周波数帯域(約24.5GHz〜約26.5GHzの帯域)において、各出力線路4a,4bから出力される各電磁波の位相差が180度〜190度の間でほぼ一定となる。したがって、一対の出力線路4a,4bからは、平衡型に変換されたTEMモードの電磁波が出力される。つまり、高周波モジュール1は、不平衡−平衡変換器としても機能する。
【0030】
一方、1/2波長共振領域Aにおける出力線路4aが接続されたE面内での磁界H3の強度分布は、図7に示すように、1/2波長共振領域Aの長さ方向(XまたはZ方向)に関しては、中央部で最も強く、端部に向かうに従って弱くなる(同図中では、磁界H3の強度を矢印の長さで表している)。また、1/2波長共振領域Aの厚み方向(Y方向)に関しては、E面内の磁界H3の強度分布は、同図に示すようにほぼ均一である。この点に関しては、1/2波長共振領域Bにおいても同様であり、しかも、各出力線路4a,4bは同一の1波長共振器11内における各1/2波長共振領域A,Bのおおよそ同じ位置(両1/2波長共振領域A,Bを連結する連結面を中心として互いにおおよそ対称となる部位:この例ではX方向におけるほぼ中央部)に接続されている。このため、出力線路4a,4bが接続された各E面内の磁界H3,H4の強度分布はおおよそ同一となる。したがって、各磁界H3,H4とそれぞれ磁界結合する各出力線路4a,4bの各磁界H5,H6も、1波長共振器11が電磁波に対して共振器として作用する信号通過帯域内において常にほぼ同じ強度となる。この結果、1波長共振器11を経由して各出力線路4a,4bから出力されるTEMモードの各電磁波は、その強度がおおよそ一致する。したがって、一対の出力線路4a,4bからは、マグニチュードバランスの取れた(磁界強度の同じ)平衡型のTEMモードの電磁波が出力される。シミュレーション結果によれば、この高周波モジュール1では、図8に示すように、一対の出力線路4a,4bから出力される各電磁波は、その強度(減衰量)が信号通過帯域内においてほぼ一致している。なお、一対の出力線路4a,4bから出力される平衡型のTEMモードの電磁波のマグニチュードバランスは、各出力線路4a,4bの各1/2波長共振領域A,Bへの接続位置を変更することによって調整することができる。
【0031】
このように、この高周波モジュール1によれば、互いに対向して配設された一対のグランド電極6,7と一対のグランド電極6,7間を導通させる複数のスルーホール8とで囲まれた領域を有してこの領域内をTEモードの電磁波が伝搬可能に構成された導波管型導波路3内の出力側に1波長共振器11を形成すると共に、一対のグランド電極6,7の内の一方のグランド電極6における1波長共振器11の各1/2波長共振領域A,Bに対応する部位に出力線路4a,4bをそれぞれ接続したことにより、信号通過帯域内において、各出力線路4a,4bから出力される各電磁波の位相差を無調整でほぼ180度にすることができる。したがって、この高周波モジュール1によれば、簡易な構成でありながら、導波管型導波路3を伝搬するTEモードの電磁波を無調整で平衡型のTEMモードの電磁波に変換して出力することができる。
【0032】
また、この高周波モジュール1によれば、結合窓12,12を介して1波長共振器11に連結された1/2波長共振器10を導波管型導波路3の内部に形成すると共に一方のグランド電極6における1/2波長共振器10に対応する部位に入力線路2を接続したことにより、入力線路2から入力したTEMモードの電磁波を平衡型のTEMモードの電磁波に変換して一対の出力線路4a,4bから出力することができる。したがって、高周波モジュール1をいわゆるバランとして機能させることができる。
【0033】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されない。例えば、本発明の実施の形態では、入力線路2および一対の出力線路4a,4bをマイクロストリップ線路で形成した例を挙げて説明したが、図9に示す高周波モジュール21のように、入力線路22および一対の出力線路24a,24bをコプレーナ線路で形成することもできる。この高周波モジュール21の基本構成は、同図に示すように、高周波モジュール1とほぼ同一であり、入力線路2および出力線路4a,4bに代えて採用した入力線路22および一対の出力線路24a,24bのみが相違する。なお、同図では、高周波モジュール1と同じ構成については同じ符号を付し、最上層については、その厚みを省略してハッチングを施して図示する。
【0034】
この場合、入力線路22は、誘電体基板5におけるグランド電極6の形成面上において、誘電体基板5を挟んでグランド電極7と対向し、かつグランド電極6によって取り囲まれるようにして形成されている。また、入力線路22は、その一端側が、グランド電極6における1/2波長共振器10に対応する部位に直接的に接続されてその部位と導通する。また、入力線路22を取り囲むグランド電極6は、誘電体基板5を貫通すると共に入力線路22と平行で、かつ入力線路22の両側にそれぞれ1列ずつ配設された複数のスルーホール29(スルーホール8,9と同一構造)によってグランド電極7における対向部位に導通している。この構成により、入力線路22は、コプレーナ線路として機能する。また、一対の出力線路24a,24bも、それぞれ入力線路22と同様に形成されて、コプレーナ線路として機能する。
【0035】
また、上記した実施の形態では、入力線路2および一対の出力線路4a,4bや、入力線路22および一対の出力線路24a,24bを、誘電体基板5におけるグランド電極6の形成面上に配設してグランド電極6と直接的に接続する構成を例に挙げて説明したが、上下面にグランド電極6,7を有し、かつその中間部位に他の導体層を備えた誘電体基板を使用することにより、この中間部位の導体層で入力線路および一対の出力線路を形成して高周波モジュールを構成することもできる。具体的に、図10を参照しつつ、同図に示す高周波モジュール31の入力線路と導波管型導波路との接続部の構成について説明する。なお、図10では、接続部の構成の理解を容易にするため、後述するスルーホール38の手前側に位置するスルーホール8における一部の図示を省略し、1波長共振器11および一対の出力線路の図示を省略する。また、同図では、中間層としての導体層Dの厚みを省略してハッチングを施して図示する。
【0036】
この高周波モジュール31では、導体層Dを介して2枚の誘電体基板5が積層され、一方の誘電体基板5における表面(同図の上側の誘電体基板5の上面)にグランド電極6が形成されると共に、他方の誘電体基板5における表面(同図の下側の誘電体基板5の下面)に他のグランド電極7が形成されている。また、グランド電極6,7は、2枚の誘電体基板5および導体層Dを貫通する複数のスルーホール8によって互いに導通させられている。また、複数のスルーホール8で囲まれた導体層Dは、同図に示すように除去されている。これにより、グランド電極6,7およびスルーホール8によって導波管型導波路33が構成される。また、入力線路32は、導体層Dを利用してストリップ線路で形成されて、図10,11に示すように、その一端側が他のスルーホール38を介してグランド電極7にのみ導通している。また、入力線路32は、スルーホール8と同様してグランド電極6,7を導通させると共に入力線路32の両側にそれぞれ1列ずつ配設された複数のスルーホール39によって挟まれている。この構成により、入力線路32は、コプレーナ線路として機能する。
【0037】
この高周波モジュール31では、図11に示すように、TEMモードの電磁波を伝搬する入力線路32の磁界H1が、入力線路32の周囲において環状に分布している。この場合、入力線路32の一端側にはグランド電極7との間で導通するスルーホール38が存在しているため、スルーホール38の存在しない領域(同図中の上側の領域)が結合窓12として機能する。したがって、導波管型導波路33のE面において入力線路32における磁界H1の方向と導波管型導波路33における磁界H2の方向とが一致することにより、入力線路32と導波管型導波路33とが磁界結合してTEMモードからTEモードへの変換が行われる。また、図示はしないが、一対の出力線路も入力線路32と同様に構成されて、導波管型導波路33内に形成された1波長共振器(図示せず)のTEモードの電磁波を平衡型のTEMモードの電磁波に変換して出力する。
【0038】
また、上記した各実施の形態では、導波管型導波路3,33の出力側に1波長共振器11を形成すると共に、入力側に1/2波長共振器10を形成することにより、1個の入力線路2(または22,32)から入力したTEMモードの電磁波を平衡型のTEMモードの電磁波に変換して一対の出力線路4a,4b(または24a,24b)から出力する高周波モジュール1,21,31について説明したが、図12に模式的に示す高周波モジュール41のように、導波管型導波路44の入力側および出力側の両方に1波長共振器42,43を形成することにより、平衡入力−平衡出力型の高周波モジュール(例えばフィルタ)を構成することもできる。この場合、入力側に配設した1波長共振器42の1/2波長共振領域Eに一方の入力線路44aを配設する共に1/2波長共振領域Fに他方の入力線路44bを配設する。また、出力側に配設した1波長共振器43の1/2波長共振領域Gに一方の出力線路45aを配設すると共に1/2波長共振領域Hに他方の出力線路45bを配設する。また、1波長共振器42の1/2波長共振領域Eと1波長共振器43の1/2波長共振領域Gとの間に、両領域E,Gを結合させるための結合窓46aを配設し、1波長共振器42の1/2波長共振領域Fと1波長共振器43の1/2波長共振領域Hとの間には、両領域F,Hを結合させるための結合窓46bを配設する。
【0039】
この高周波モジュール41では、1波長共振器42の一方の入力線路44aに入力されて平衡型のTEMモードの電磁波を形成する一方の電磁波(磁界H41)は、1波長共振器42の1/2波長共振領域E(この領域内の磁界H43)、結合窓46aおよび1波長共振器43の1/2波長共振領域G(この領域内の磁界H45)を介して出力線路45aにTEMモードの電磁波(磁界H47)として出力される。一方、1波長共振器42の入力線路44bに入力されてTEMモードの電磁波を形成する他方の電磁波(磁界H42)は、1波長共振器42の1/2波長共振領域F(この領域内の磁界H44)、結合窓46bおよび1波長共振器43の1/2波長共振領域H(この領域内の磁界H46)を介して出力線路45bにTEMモードの電磁波(磁界H48)として出力される。したがって、この高周波モジュール41は、平衡入力−平衡出力側のフィルタとして機能する。
【0040】
また、高周波モジュール1では、導波管型導波路3の入力側に1/2波長共振器10を形成すると共に出力側に1波長共振器11を形成し、かつ結合窓12,12を介して1/2波長共振器10および1波長共振器11を連結する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図13に示すように、高周波モジュール1Aは、1/2波長共振器10および1波長共振器11の間に形成されると共に両共振器10,11に結合窓12,12を介して連結される少なくとも1つ以上(同図では、一例として1つ)の他の共振器(同図では、一例として、1/2波長共振器10と基本動作が同一の1/2波長共振器10A)を備えて構成されている。また、上記した他の高周波モジュール21においても、同様にして、1/2波長共振器10および1波長共振器11の間に、他の共振器(1波長共振器や1/2波長共振器)を結合窓を介して配設して構成することができる。これらの構成を採用することにより、高周波モジュールを様々な周波数特性のフィルタとして機能させることができる。
【0041】
また、高周波モジュール41では、導波管型導波路44の入力側と出力側とに、1波長共振器42,43を1個ずつ形成して結合窓46a,46bを介して両1波長共振器42,43を直接結合させる例について説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、1波長共振器42,43は少なくとも導波管型導波路44の入力側と出力側とに配設されていればよく、図14に示すように、高周波モジュール41Aは、1波長共振器42(他の1波長共振器)および1波長共振器43の間に形成されると共に両共振器42,43に結合窓46a,46bを介して連結される少なくとも1つ以上(同図では、一例として1つ)の他の共振器(同図では、一例として、1/2波長共振器10と基本動作が同一の1/2波長共振器42A)を備えて構成されている。この構成を採用しても、高周波モジュールを様々な周波数特性のフィルタとして機能させることができる。
【0042】
また、上記した高周波モジュール1(または21)では、入力線路2(または22)および一対の出力線路4a,4b(または24a,24b)が共に誘電体基板5におけるグランド電極6の形成面上に形成されているが、入力線路2(または22)および一対の出力線路4a,4b(または24a,24b)は必ずしも誘電体基板5における同一面上に形成する必要はなく、図示はしないが、例えば、入力線路2(または22)を誘電体基板5におけるグランド電極6側に形成すると共に一対の出力線路4a,4b(または24a,24b)をグランド電極7側に形成する構成を採用することもできるし、またその逆の構成を採用することもできる。さらに、上記した各実施の形態では、入力線路および出力線路を、ストリップ線路、マイクロストリップ線路およびコプレーナ線路の内の1種類の線路で統一して構成した例について説明したが、入力線路および出力線路が個々に統一されていればよく、入力線路および出力線路を互いに異なる種類の線路で構成することもできる。例えば、入力線路をマイクロストリップ線路で構成すると共に一対の出力線路をコプレーナ線路で構成することもできる。
【0043】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る高周波モジュールによれば、互いに対向して配設された一対のグランド電極および一対のグランド電極間を導通させる導通体で囲まれた領域を有してその領域内をTEモードの電磁波が伝搬可能に構成されると共にその領域内に1波長共振器が形成された導波管型導波路と、一対のグランド電極の内の一方における1波長共振器の各1/2波長共振領域に対応する部位にそれぞれ接続されている一対の出力線路とを備えたことにより、信号通過帯域内において、各出力線路から出力される各電磁波の位相差を無調整でほぼ180度にすることができる。この結果、この高周波モジュールによれば、従来の高周波モジュールと比較して、簡易な構成でありながら、容量性結合の容量値と誘導性結合のインダクタンス値とを調整する必要がないため、調整作業を不要にすることができると共に、共振器の他に、共振器として動作させない信号経路を設ける必要がなくなるために十分に小形化することができる。また、TEMモードの電磁波が伝搬可能に一対の出力線路を構成することにより、調整が不要で平衡型のTEMモードの電磁波を一対の出力線路から出力させることができる。
【0044】
また、本発明に係る高周波モジュールによれば、導波管型導波路の内部に形成されると共に1波長共振器に連結された1/2波長共振器と、一対のグランド電極の内の一方における1/2波長共振器に対応する部位に接続されてTEMモードの電磁波をTEモードの電磁波として1/2波長共振器に入力可能に構成された入力線路とを備えたことにより、入力線路から入力したTEMモードの電磁波を平衡型のTEMモードの電磁波に変換して一対の出力線路から出力させることができる。つまり、高周波モジュールをいわゆるバランとして機能させることができる。この場合、結合窓を介して1/2波長共振器および1波長共振器を互いに連結することができる。
【0045】
また、本発明に係る高周波モジュールによれば、1/2波長共振器および1波長共振器の間に両共振器に結合窓を介して連結される少なくとも1つ以上の他の共振器を備えたことにより、様々な周波数特性のフィルタとして機能させ得る高周波モジュールを提供することができる。
【0046】
また、本発明に係る高周波モジュールによれば、導波管型導波路の内部に形成されると共に1波長共振器に連結された他の1波長共振器と、一対のグランド電極の内の一方における他の1波長共振器の各1/2波長共振領域に対応する部位にそれぞれ接続されてTEMモードの電磁波をTEモードの電磁波として他の1波長共振器に入力可能に構成された一対の入力線路とを備えたことにより、入力した平衡型のTEMモードの電磁波を平衡型のTEMモードの電磁波として出力させることができる。この場合、結合窓を介して他の1波長共振器および1波長共振器を互いに連結することができる。
【0047】
また、本発明に係る高周波モジュールによれば、他の1波長共振器および1波長共振器の間に両共振器に結合窓を介して連結される少なくとも1つ以上の他の共振器を備えたことにより、様々な周波数特性のフィルタとして機能させ得る高周波モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る高周波モジュール1の構成を示す斜視図である。
【図2】高周波モジュール1の平面図である。
【図3】高周波モジュール1の入力線路2における導波管型導波路3との接続部近傍での磁界H1の磁界分布を示す説明図である。
【図4】高周波モジュール1の導波管型導波路3における入力線路2との接続部近傍での磁界H2の磁界分布を示す説明図である。
【図5】高周波モジュール1における入力線路2と導波管型導波路3との接続部での各磁界H1,H2の磁界分布(結合状態)を示す説明図である。
【図6】高周波モジュール1における周波数と位相差との関係を示す特性図である。
【図7】高周波モジュール1の導波管型導波路3における出力線路4aとの接続部近傍での磁界H3の強度分布を示す説明図である。
【図8】高周波モジュール1における周波数と減衰率との関係を示す特性図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る高周波モジュール21の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る高周波モジュール31における入力線路32、および入力線路32と導波管型導波路33との接続部の構成を示す斜視図である。
【図11】高周波モジュール31における入力線路32と導波管型導波路33との磁界分布(結合状態)を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る高周波モジュール41の構成を示す模式図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る高周波モジュール1Aの構成を示す模式図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る高周波モジュール41Aの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1,1A,21,31,41,41A 高周波モジュール
2,22,32,44a,44b 入力線路
3,33,44 導波管型導波路
4a,4b,24a,24b,45a,45b 出力線路
5 誘電体基板
6,7 グランド電極
8,9,29,38,39 スルーホール
10,10A,42A 1/2波長共振器
11,42,43 1波長共振器
12,46a 結合窓
Claims (10)
- 互いに対向して配設された一対のグランド電極および当該一対のグランド電極間を導通させる導通体で囲まれた領域を有して当該領域内をTEモードの電磁波が伝搬可能に構成されると共に当該領域内に1波長共振器が形成された導波管型導波路と、
前記一対のグランド電極の内の一方における前記1波長共振器の各1/2波長共振領域に対応する部位にそれぞれ接続されている一対の出力線路とを備えている高周波モジュール。 - 前記一対の出力線路は、TEMモードの電磁波が伝搬可能に構成されている請求項1記載の高周波モジュール。
- 前記導波管型導波路の内部に形成されると共に前記1波長共振器に連結された1/2波長共振器と、
前記一対のグランド電極の内の一方における前記1/2波長共振器に対応する部位に接続されてTEMモードの電磁波をTEモードの電磁波として当該1/2波長共振器に入力可能に構成された入力線路とを備えている請求項1または2記載の高周波モジュール。 - 前記1/2波長共振器および前記1波長共振器は、結合窓を介して互いに連結されている請求項3記載の高周波モジュール。
- 前記1/2波長共振器および前記1波長共振器の間に形成されると共に当該両共振器に結合窓を介して連結される少なくとも1つ以上の他の共振器を備えている請求項3記載の高周波モジュール。
- 前記導波管型導波路の内部に形成されると共に前記1波長共振器に連結された他の1波長共振器と、
前記一対のグランド電極の内の一方における前記他の1波長共振器の各1/2波長共振領域に対応する部位にそれぞれ接続されてTEMモードの電磁波をTEモードの電磁波として当該他の1波長共振器に入力可能に構成された一対の入力線路とを備えている請求項1または2記載の高周波モジュール。 - 前記他の1波長共振器および前記1波長共振器は、結合窓を介して互いに連結されている請求項6記載の高周波モジュール。
- 前記他の1波長共振器および前記1波長共振器の間に形成されると共に当該両共振器に結合窓を介して連結される少なくとも1つ以上の他の共振器を備えている請求項6記載の高周波モジュール。
- 前記入力線路は、ストリップ線路、マイクロストリップ線路およびコプレーナ線路のいずれか1つである請求項2から8のいずれかに記載の高周波モジュール。
- 前記出力線路は、ストリップ線路、マイクロストリップ線路およびコプレーナ線路のいずれか1つである請求項1から9のいずれかに記載の高周波モジュール。
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