JP2005017802A - 感光性平版印刷の製版用現像機の洗浄液 - Google Patents
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Abstract
【課題】フッ化水素酸を使用することなく、溶解性に優れ且つ洗浄廃液の処理も容易な洗浄液を提供する。
【解決手段】シュウ酸及び、クエン酸、酢酸、ギ酸からなる群より選ばれた、少なくとも一種の有機酸を、5重量%以上、15重量%以下含有する、感光性平版印刷の製版用現像機の現像槽洗浄液である。また、水酸化ナトリウム及び、水酸化カリウム、水酸化リチウムからなる群より選ばれた、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物を0.1重量%以上、10重量%以下含有する第一の洗浄液及び、塩酸及び、硫酸、硝酸、過塩素酸からなる群より選ばれた、少なくとも一種の無機酸を1重量%以上、10重量%以下含有する第二の洗浄液からなる、感光性平版印刷の製版用現像機の水洗槽洗浄液である。
【選択図】なし
【解決手段】シュウ酸及び、クエン酸、酢酸、ギ酸からなる群より選ばれた、少なくとも一種の有機酸を、5重量%以上、15重量%以下含有する、感光性平版印刷の製版用現像機の現像槽洗浄液である。また、水酸化ナトリウム及び、水酸化カリウム、水酸化リチウムからなる群より選ばれた、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物を0.1重量%以上、10重量%以下含有する第一の洗浄液及び、塩酸及び、硫酸、硝酸、過塩素酸からなる群より選ばれた、少なくとも一種の無機酸を1重量%以上、10重量%以下含有する第二の洗浄液からなる、感光性平版印刷の製版用現像機の水洗槽洗浄液である。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性平版印刷に使用される製版用現像機の、現像槽及び水洗槽の洗浄液に関するものである。更に詳しく述べると長年現像機を使用した場合、現像槽及び水洗槽に析出・固化して製版の現像ムラや、現像機のトラブルの原因となる沈殿物を、溶解除去するために使用される洗浄液である。
【0002】
【従来の技術】
感光性平版印刷機の製版用現像処理には自動現像機が広く用いられているが、長年使用すると不溶物が槽内及び、ローラー、配管内に析出し、現像ムラによる印刷不良や現像機の循環系統の詰まりが生じる等のトラブルの原因となる。このような場合には現像機を分解して、大掛かりな清掃を行なう必要がある。
【0003】
その際に用いる洗浄液としてフッ化水素酸を含む水溶液(例えば、特許文献1参照)や、各種界面活性剤やキレート剤、酸化剤、研磨剤を含む水溶液(例えば、特許文献2、3及び、4参照)が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特許第2533792 号公報(第3〜4頁)
【特許文献2】
特許第2630674 号公報(第2〜4頁)
【特許文献3】
特開平9 −151394号公報(第3〜4頁)
【特許文献4】
特開平10−3172号公報(第2〜4頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
感光性平版印刷には製版工程に写真技術を適用した、製版用現像機が使用されている。製版用現像機を長期間使用した場合には、現像槽及び水洗槽内に難溶性の析出物が生成して、製版工程のトラブルや印刷ムラの原因となる。これらの析出物を溶解・除去するため、従来からフッ化水素酸を含む溶解液が使用されていたが、フッ化水素酸は毒性、金属機器の腐食性及び使用後の排液処理が困難である等の問題がある。このためフッ化水素酸を使用することなく、溶解性に優れ且つ洗浄廃液の処理も容易な洗浄液を開発して、提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の洗浄液による溶解・除去の対象となる析出物は、感光性平版印刷の製版用現像機、すなわち、製版工程において感光・現像・水洗等の写真技術が適用された工程における、現像槽または水洗槽の内部に生成した、複雑な組成を有する難溶性の析出物である。特に水洗槽で生成する難溶性析出物は石質化しているため、界面活性剤或いは酸化剤、研磨剤等を単独で使用しても洗浄が困難である。このためこれら析出物を除去するために多大な労力と時間を要していた。
【0007】
感光性平版印刷の大部分はオフセット印刷であり、オフセット印刷には通常多色にわたる多数の製版が使用される。この製版はPS (Presensitized)版とも言われ、親油性の感光剤を塗布したアルミニウム基板の上に、画像フィルムを介して光を当て感光剤を感光させてつくられる。更に現像液によって感光済の感光剤或いは、未感光の感光剤を溶解・除去することによって印刷用製版が作成される。
【0008】
印刷製版には現像によって感光された部分が溶解・除去されて、未感光部分がアルミニウム基板上に残るポジ型と、未感光部分が溶解・除去され、感光された部分が残るネガ型がある。ポジ型の主要な感光剤は o− ナフトキノンジアジド系化合物であり、ネガ型の主要な感光剤はジアゾ樹脂が多く使用される。また、現像液の主成分はケイ酸カリウムの他、pH調整剤として水酸化カリウムが含まれている。
【0009】
このため現像槽を長期間使用した場合には、現像液に含まれるケイ酸カリウム、感光剤に含まれるo−ナフトキノンジアジド系化合物或いはジアゾ樹脂、アルミニウム基板から生成したアルミニウム成分、その他多くの化合物が長時間経過するうちに硬化して、難溶性の石質化した析出物として現像槽の底部及びローラー等に付着する。これらの析出物の主な成分はアルミニウム及びケイ酸化合物を主成分とする複雑な化合物である。
【0010】
また現像後の印刷用製版の水洗工程においても、残存現像液及び洗浄水に含まれた成分によって沈殿物が析出する。このため水洗槽を長期間使用した場合には、水洗槽の底部及びローラー等に、沈殿物が析出し長期間経過すると更に硬化して、石質化した難溶性の析出物が付着・蓄積する。この析出物には現像槽の場合と同様な成分の他更に、印刷製版の洗浄のため多量に使用される水道水から生成したカルシウム化合物も多量に含まれている。尚、水洗槽の析出物は新しい表層の析出物と、析出後長期間経過して石質化した内部の析出物とは、溶解性が著しく異なり、このため両者にはそれぞれ異なった組成の洗浄液を使用する必要がある。
【0011】
これらの難溶性析出物には主成分の一つとして、ケイ酸化合物が含まれているが、本発明者はフッ化水素酸系化合物の毒性、金属の腐食性及び洗浄後の廃液処理の困難性を考慮して、フッ化水素酸系化合物を使用することなく、析出物の溶解・除去性に優れ、且つ洗浄廃液の処理も容易な洗浄液の組成について研究した。その結果、現像槽の難溶性析出物には特定範囲の濃度を有する有機酸が有効であり、水洗槽の難溶性析出物には、特定範囲の濃度を有するアルカリ金属水酸化物及び、無機酸を使用することが有効であることを見出し、これに基づいて更に浸透性を高めるため界面活性剤の併用についても検討した結果、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、シュウ酸及び、クエン酸、酢酸、ギ酸からなる群より選ばれた、少なくとも一種の有機酸を、 5重量%以上、15重量%以下含有する、感光性平版印刷の製版用現像機の現像槽洗浄液である。
【0013】
また、水酸化ナトリウム及び、水酸化カリウム、水酸化リチウムからなる群より選ばれた、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物を 0.1重量%以上、10重量%以下含有する第一の洗浄液及び、塩酸及び、硫酸、硝酸、過塩素酸からなる群より選ばれた、少なくとも一種の無機酸を1重量%以上、10重量%以下含有する第二の洗浄液からなる、感光性平版印刷の製版用現像機の水洗槽洗浄液である。
【0014】
ここで感光性平版印刷の製版用現像機とは、製版工程において感光・現像・水洗等の写真技術が適用された現像機である。また、本発明の洗浄液による溶解・除去の対象となる析出物は、この感光性平版印刷の製版用現像機の、現像槽または水洗槽の内部に生成した、複雑な組成を有する難溶性の析出物である。以下、本発明について詳しく説明する。
【0015】
本発明における感光性平版印刷の製版用現像機の現像槽の洗浄液には、シュウ酸及び、クエン酸、酢酸、ギ酸からなる群より選ばれた、少なくとも一種の有機酸を、5〜15重量%含有させる必要がある。現像槽内の析出物の溶解・剥離には特定範囲の濃度のこれらの有機酸が必要である。これらの有機酸の中でもシュウ酸及びクエン酸が、その効果及び取扱いが容易な点で特に好ましい。
【0016】
本発明における現像槽の洗浄水溶液に含まれる有機酸の濃度は5〜15重量%であり、より好ましくは7〜13重量%である。5重量%よりも低い濃度では充分な洗浄効果が得られない。尚、市販の現像槽洗浄液には有機酸を2重量%程度含有した例があるが、これは本質的にはフッ化水素酸の分解洗浄力に依存した洗浄液であり、有機酸2重量%程度の溶液のみでは殆ど洗浄効果は認められない。
【0017】
このように2重量%と5重量%との間に臨界性が認められる詳細な理由は明らかでないが、この装置で用いられる現像液は多種類の化学薬品の混合物であり、それが使用中に現像槽に付着・残留したものが放置され、空気酸化及び経年変化が重なって固化された結果、難溶性の析出物が生成すると考えられる。それらの析出物が有機酸と反応することによって、洗浄液に可溶な物質に変化し析出物が溶解・除去される。しかしこの反応は可逆反応であり、有機酸がある特定の濃度、すなわち5重量%以上存在しないと逆方向の反応(可溶性物質から析出物が生成する反応)が主となるため、全く洗浄効果が認められないと考えられる。製版用現像機の現像槽の析出物の洗浄液として、今までに有機酸自体の洗浄効果に着目された例はなく、本発明で用いる有機酸を5重量%以上含有する現像洗浄液についても全く知られていなかった。
【0018】
また、有機酸の濃度が 15 重量%以上になると、析出物の溶解性は認められるが、ステンレス表面に腐食が発生するおそれがあり、機器を損傷させるので好ましくない。また高濃度になると洗浄作業時に強い有機酸特有の臭気が発生するため、換気設備が必要となる等の問題が起こるため、洗浄液としては好ましくない。
【0019】
本発明における、感光性平版印刷の製版用現像機の水洗槽の第一の洗浄液には、水酸化ナトリウム及び、水酸化カリウム、水酸化リチウムからなる群より選ばれた、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物を含有させる必要がある。これらのアルカリ金属水酸化物は、水洗槽内に厚く付着・固化した析出物のうち、付着して間もない表層部分を溶解・除去する効果が大きい。これらのアルカリ金属水酸化物の中、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムは水溶性も高く取扱いも容易で好ましい。
【0020】
本発明における水洗槽の洗浄液のうち、第一の洗浄液に含まれるアルカリ金属水酸化物の濃度は 0.1%以上であり、10重量%以下である必要がある。より好ましくは1〜5重量%である。0.1 重量%よりも低い場合には洗浄効果が殆ど認められない。表層部分の析出物が第一の洗浄液に溶解すると、液が無色透明から暗緑色透明に変化するが、アルカリ金属水酸化物を 0.05 重量%含有する溶液と、0.1 重量%含有する溶液を用いて洗浄試験を行ったところ、前者の液を用いた洗浄後の液は限りなく無色透明に近かったのに対し、後者の液を用いた洗浄後の液は暗緑色透明であった。
【0021】
この事実から、アルカリ金属水酸化物 0.05 重量%水溶液と、0.1 重量%水溶液との間には大きな洗浄効果の差異があることが認められる。この様な洗浄効果の差異が現れる理由としては、pHの差等が考えられるが詳細は明らかでない。一方、10重量%を超える濃度でも表層の析出物は溶解されるが、析出物の溶解速度が飽和するため、これ以上高濃度とする必要がない。更に、洗浄の際には洗浄液を水洗槽に仕込んで循環させる方法も適用されるが、アルカリ金属水酸化物の濃度が高くなると液の粘性が上昇して、循環量が低下するため高濃度のアルカリ液は好ましくない。
【0022】
本発明における水洗槽の洗浄液のうち、第二の洗浄液を特徴づける無機酸、すなわち、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸は、水洗槽の析出物のうち第一の洗浄液では溶解しない内層部分の石質化した物質を剥離・除去するために効果的である。内層部分の析出物はケイ酸化合物やカルシウム化合物が数年〜 10 年程度の長期間をかけて石質化したものである。無機酸を加えるとその中のカルシウム化合物等が溶解するため、析出物の結晶構造が破壊されて剥離すると考えられる。前記の無機酸のうち、塩酸、硫酸、硝酸は特にカルシウム化合物を溶解し易く、安価であるため好ましい。
【0023】
本発明における水洗層の洗浄液のうち、第二の洗浄液に含まれる無機酸の濃度は1〜10重量%である必要がある。より好ましくは4〜8重量%である。1重量%よりも低い濃度では剥離効果が低く、洗浄に長時間を要するため不適当である。無機酸を 0.1重量%含む溶液を用いても、析出物は一部しか剥離せず、洗浄後残留した析出物をブラシでこすったが、析出物は硬いままで簡便な物理的方法ではこれ以上剥離させることが出来なかった。
【0024】
この様に、 0.1重量%と1重量%溶液との洗浄効果に大きな差異がある理由は明らかではないが、無機酸を加えると析出物の表面に存在するカルシウム化合物が溶解して、析出物の結晶構造に欠陥が生じる。その欠陥に無機酸が浸透して接触した部分のカルシウム化合物を溶解し、更に結晶構造の欠陥が浸透・拡大する。このくり返しによって無機酸は析出物の内部まで浸透して結晶を破壊し、その結果析出物を総て剥離・除去するというプロセスで洗浄が行われると考えられる。しかし、無機酸の濃度が低いとカルシウム化合物の溶解度も低下するため、結晶構造に欠陥が生じ難くなって無機酸も浸透しなくなり、析出物の一部しか剥離できないと考えられる。
【0025】
また無機酸の濃度を10重量%以上としても、カルシウム化合物の溶解速度が上昇しない上、却ってステンレスの腐食を起こすおそれがある。また高濃度の無機酸を使用する場合には、臭気を防ぐため、換気設備が必要となる場合もあるため、無機酸の濃度を10重量%以上とすることは不適当である。
【0026】
本発明では第一の水溶液と第二の水溶液との2つを組み合わせて、水洗槽の洗浄をする必要があり、第一の洗浄液または第二の洗浄液の、何れか一方だけでは洗浄効果が不十分である。アルカリ金属水酸化物を含有する第一の洗浄液のみで洗浄した場合には、表層部分の析出物は溶解したが、内層部分の析出物には全く変化が見られなかった。更に特許第2630674 号や特開平 9−151394 号を特徴づける、キレ−ト剤(エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム)を1〜2 重量%添加したが、効果は認められなかった。
【0027】
一方、第二の洗浄液の特徴である無機酸を含む水溶液のみで洗浄を試みたが、析出物は一部しか除去されなかっった。このことからも第一の洗浄液と第二の洗浄液を組み合わせることが必要であることが分かる。この様に2種類の水溶液を組み合わせる必要がある理由としては、先に述べたように水洗槽内の析出物中にはアルカリ金属水酸化物に可溶である、付着して間もない物質から成る表層部分と、アルカリ金属水酸化物には不溶だが無機酸に可溶である、カルシウム化合物を含んだ石質化した物質から成る内層部分の2層からなっているためである。
【0028】
更に本発明の洗浄液には、液の浸透性を向上させて洗浄力を高めるため、界面活性剤を添加することが好ましい。尚、界面活性剤は現像槽の洗浄液及び水洗槽の洗浄液(第一の水溶液、第二の水溶液)何れにも添加することができる。これに用いられる界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等のノニオン系界面活性剤や、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤がある。
【0029】
これらの界面活性剤のうち、ノニオン系界面活性剤は特に低濃度でも浸透性を高める効果が大きいため好ましい。特に好ましいのはポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テルである。これらの界面活性剤の洗浄水溶液への好ましい添加量は 0.001〜5重量%であり、さらに好ましくは 0.01 〜1重量%である。
【0030】
本発明の洗浄液にはその他更に、研磨剤、消泡剤、有機溶剤等を添加することができる。このうち研磨剤は洗浄力を高める上で有効であり、微粒子シリカ、酸化マグネシウム、珪藻土を併用することも好ましい。これら添加剤は現像槽の洗浄液、水洗槽の第一及び第二の洗浄液の何れにも、添加することができる。尚、これらの添加剤は総て、本発明の洗浄液の洗浄効果を更に高めるために使用されるものであり、添加剤を単独で用いても洗浄効果は認められない。例えば研磨剤の微粒子シリカを1重量%含有する水溶液で洗浄試験をしたが、現像槽、水洗槽ともに析出物はそのまま残留した。
【0031】
本発明の洗浄液を用いて、感光性平版印刷の製版用現像機の現像槽を洗浄する方法としては、現像液を排出した後必要に応じて水洗し、温度 10 〜50℃、好ましくは 20 〜45℃で本発明の有機酸を5〜15重量%含有する洗浄液を循環する。この方法によって手の届かない配管の内部迄洗浄することができ、労力が削減できる。
【0032】
また本発明の洗浄液を用いて、感光性平版印刷の製版用現像機の水洗槽を洗浄する方法としては、(1) 水洗液を排出した後必要に応じて水洗後、第一の洗浄液を水洗槽に仕込んで循環した後、(2) 第一の洗浄液を排出し槽内の水洗後、第二の洗浄液を仕込んで循環する方法によって洗浄することができる。先に述べたように、第一の洗浄液により表層部分の析出物を溶解し、第二の洗浄液により内層部分の石質化した析出物を剥離するため、第一の洗浄液、続いて第二の洗浄液という順序で用いる必要がある。
【0033】
また、第二の洗浄液は長い年月をかけて形成された、石質化した析出物を溶解・剥離するため、第一の洗浄液による洗浄時間と較べて長時間を要する。更に析出物が非常に厚く付着しており、上記の洗浄方法では充分に洗浄できない場合には、第一の水溶液及び第二の水溶液による洗浄を繰り返すことによって、洗浄が可能になる。
【0034】
本発明の洗浄液は感光性平版印刷の製版用現像機の現像槽及び水洗槽の洗浄の他、保護ガム槽、ローラー、配管等の現像機に関連した設備の洗浄にも使用できる。また、最近感光性平版印刷の製版用現像機には、殆ど自動現像機が採用されているが、本発明では特に自動現像機に限定せず、自動現像機も含めた広範囲の感光性平版印刷用の製版現像機に適用される。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0036】
(実施例1〜6、比較例1〜7)
以下の実施例及び比較例に挙げた、感光性平版印刷製版用の自動現像機は、現像処理に10年以上連続して使用されたものであり、現像槽には現像液から生成した析出物が、水洗槽には水道水に含まれるカルシウム化合物及び、現像液から生成した析出物が、それぞれ大量に析出して固化し石質化していた。
【0037】
尚、実施例及び比較例で用いた洗浄液に添加した、界面活性剤はノニオン系またはフッ素系で、それらの商品名、品番及びメーカー名等の詳細は表4に示した。尚、その他の界面活性剤を使用することも可能である。
【0038】
洗浄方法:(1) 自動現像機の現像槽(容量約 22.5L)から、残留していた現像液を排出し、流水約 10 L にて槽内を洗浄した。その後、表1に示す組成の洗浄液 20 L を仕込んで液温 35 ℃で表1に示す時間循環した。(2) 続いて洗浄液を排出し、流水約 10 L にて槽内を洗浄した。
【0039】
表1に実施例1〜6及び比較例1〜7において使用した、洗浄液の組成及び洗浄結果を示した。
【0040】
【表1】
(注1)ヘキサフルオロジルコン酸;H2ZrF6が 21 wt%及び、 HF 5.5 wt %含有。
(注2)界面活性剤1)〜4)の商品名、品番及びメーカー名を表4に示す。
【0041】
前記の表1において、実施例及び比較例で示した組成を有する洗浄液による、現像槽の洗浄試験の結果は、結果の欄に示した通りであるが、特定の濃度範囲の有機酸溶液を使用すれば、フッ化水素酸系化合物を含む洗浄液を使用することなく、現像槽内の析出物を充分に溶解・除去できることが分かる。また、実施例2、4、5及び、比較例1、2、4の結果を比較すると、本発明の洗浄液の有機酸濃度 5重量%以上、15重量%のうち、低濃度側の臨界性が特に顕著であることが示されている。更に、実施例1、2と実施例3、4、5の結果を比較すると、実施例1、2の洗浄時間が短いことを考慮すれば、前述の好ましい濃度の有機酸溶液が、それ以外の濃度の有機酸溶液と比較して、洗浄効果が高い結果が示されている。
【0042】
(実施例7〜11、比較例8〜16)
洗浄方法:(1) 自動現像機の水洗槽(容量約 6 L)から、残留していた水洗液を排出し、流水約3 Lにて槽内を洗浄後、表2に示す水洗槽の第一の洗浄液5 Lを仕込んで常温 (21℃) で表2に示す時間循環した。(2) 循環後、第一の洗浄液を排出し、流水約3L にて槽内を洗浄後、表2に示す第二の洗浄液を5L仕込んで、常温 (21℃) で表2に示す時間循環した。(3) 循環後、第二の洗浄液を排出し、流水約3L にて槽内を洗浄した。
【0043】
表2に実施例7〜11において使用した、第一及び第二の洗浄液の組成及び洗浄結果を示した。
【0044】
【表2】
(注1)界面活性剤1)〜3)の商品名、品番及びメーカー名を表4に示す。
【0045】
表3に比較例8〜16において使用した、第一及び第二の洗浄液の組成及び洗浄結果を示した。
【0046】
【表3】
(注1)界面活性剤1)〜3)の商品名、品番及びメーカー名を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
前記の表2に示した実施例及び、表3に示した比較例で示した組成を有する洗浄液による、水洗槽の洗浄試験の結果は、各表の結果の欄に示した通りであるが、これによって特定の濃度範囲のアルカリ金属水酸化物及び、無機酸の水溶液を使用すれば、長期間にわたって沈澱し石質化した析出物も、フッ化水素酸系化合物を含む洗浄液を使用することなく、充分に溶解・除去できることが示されている。また、実施例11と比較例10の対比及び、実施例8と比較例9の対比によって、本発明の洗浄液のアルカリ金属水酸化物及び無機酸の、低濃度側の臨界性が顕著であることも示されている。
【0049】
更に、アルカリ金属水酸化物の水溶液に関しては、実施例7、9と実施例8、10、11とを比較すると、実施例7、9の洗浄時間が短かいことを考慮すれば、前述の好ましい濃度のアルカリ金属水酸化物溶液が、それ以外の濃度のアルカリ金属水酸化物溶液と比較して洗浄効果が高いことが分かる。尚、実施例10では実施例7、9よりも高濃度のアルカリ金属水酸化物溶液を使用しているにも拘らず、洗浄時間が長い理由としては、先に述べた液の粘性増加による循環量の低下が考えられる。
【0050】
また、無機酸の水溶液に関しては、実施例7、11と実施例8、9、10とを比較すると、実施例7、11の洗浄時間が短かった上に刺激臭も感じられなかったことから、前に述べた好ましい濃度の無機酸溶液が、それ以外の濃度の無機酸水溶液と比較して洗浄効果が高いことが分かる。
【0051】
【発明の効果】
本発明の感光性平版印刷に使用される製版用現像機の、現像槽及び水洗槽の洗浄液は析出物の主成分の一つとして、ケイ酸化合物が含まれているため、従来からフッ化水素酸系化合物を含む洗浄液が使用されていた。しかし、本発明の洗浄液は現像槽の難溶性析出物には、特定範囲の濃度を有する有機酸を使用し、水洗槽の難溶性析出物には、特定範囲の濃度を有するアルカリ金属水酸化物及び、無機酸を使用することによって、フッ化水素酸系化合物を含有させることなく、充分に製版用現像機の現像槽及び水洗槽等に析出・蓄積する難溶性析出物の溶解・除去を可能としたものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性平版印刷に使用される製版用現像機の、現像槽及び水洗槽の洗浄液に関するものである。更に詳しく述べると長年現像機を使用した場合、現像槽及び水洗槽に析出・固化して製版の現像ムラや、現像機のトラブルの原因となる沈殿物を、溶解除去するために使用される洗浄液である。
【0002】
【従来の技術】
感光性平版印刷機の製版用現像処理には自動現像機が広く用いられているが、長年使用すると不溶物が槽内及び、ローラー、配管内に析出し、現像ムラによる印刷不良や現像機の循環系統の詰まりが生じる等のトラブルの原因となる。このような場合には現像機を分解して、大掛かりな清掃を行なう必要がある。
【0003】
その際に用いる洗浄液としてフッ化水素酸を含む水溶液(例えば、特許文献1参照)や、各種界面活性剤やキレート剤、酸化剤、研磨剤を含む水溶液(例えば、特許文献2、3及び、4参照)が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特許第2533792 号公報(第3〜4頁)
【特許文献2】
特許第2630674 号公報(第2〜4頁)
【特許文献3】
特開平9 −151394号公報(第3〜4頁)
【特許文献4】
特開平10−3172号公報(第2〜4頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
感光性平版印刷には製版工程に写真技術を適用した、製版用現像機が使用されている。製版用現像機を長期間使用した場合には、現像槽及び水洗槽内に難溶性の析出物が生成して、製版工程のトラブルや印刷ムラの原因となる。これらの析出物を溶解・除去するため、従来からフッ化水素酸を含む溶解液が使用されていたが、フッ化水素酸は毒性、金属機器の腐食性及び使用後の排液処理が困難である等の問題がある。このためフッ化水素酸を使用することなく、溶解性に優れ且つ洗浄廃液の処理も容易な洗浄液を開発して、提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の洗浄液による溶解・除去の対象となる析出物は、感光性平版印刷の製版用現像機、すなわち、製版工程において感光・現像・水洗等の写真技術が適用された工程における、現像槽または水洗槽の内部に生成した、複雑な組成を有する難溶性の析出物である。特に水洗槽で生成する難溶性析出物は石質化しているため、界面活性剤或いは酸化剤、研磨剤等を単独で使用しても洗浄が困難である。このためこれら析出物を除去するために多大な労力と時間を要していた。
【0007】
感光性平版印刷の大部分はオフセット印刷であり、オフセット印刷には通常多色にわたる多数の製版が使用される。この製版はPS (Presensitized)版とも言われ、親油性の感光剤を塗布したアルミニウム基板の上に、画像フィルムを介して光を当て感光剤を感光させてつくられる。更に現像液によって感光済の感光剤或いは、未感光の感光剤を溶解・除去することによって印刷用製版が作成される。
【0008】
印刷製版には現像によって感光された部分が溶解・除去されて、未感光部分がアルミニウム基板上に残るポジ型と、未感光部分が溶解・除去され、感光された部分が残るネガ型がある。ポジ型の主要な感光剤は o− ナフトキノンジアジド系化合物であり、ネガ型の主要な感光剤はジアゾ樹脂が多く使用される。また、現像液の主成分はケイ酸カリウムの他、pH調整剤として水酸化カリウムが含まれている。
【0009】
このため現像槽を長期間使用した場合には、現像液に含まれるケイ酸カリウム、感光剤に含まれるo−ナフトキノンジアジド系化合物或いはジアゾ樹脂、アルミニウム基板から生成したアルミニウム成分、その他多くの化合物が長時間経過するうちに硬化して、難溶性の石質化した析出物として現像槽の底部及びローラー等に付着する。これらの析出物の主な成分はアルミニウム及びケイ酸化合物を主成分とする複雑な化合物である。
【0010】
また現像後の印刷用製版の水洗工程においても、残存現像液及び洗浄水に含まれた成分によって沈殿物が析出する。このため水洗槽を長期間使用した場合には、水洗槽の底部及びローラー等に、沈殿物が析出し長期間経過すると更に硬化して、石質化した難溶性の析出物が付着・蓄積する。この析出物には現像槽の場合と同様な成分の他更に、印刷製版の洗浄のため多量に使用される水道水から生成したカルシウム化合物も多量に含まれている。尚、水洗槽の析出物は新しい表層の析出物と、析出後長期間経過して石質化した内部の析出物とは、溶解性が著しく異なり、このため両者にはそれぞれ異なった組成の洗浄液を使用する必要がある。
【0011】
これらの難溶性析出物には主成分の一つとして、ケイ酸化合物が含まれているが、本発明者はフッ化水素酸系化合物の毒性、金属の腐食性及び洗浄後の廃液処理の困難性を考慮して、フッ化水素酸系化合物を使用することなく、析出物の溶解・除去性に優れ、且つ洗浄廃液の処理も容易な洗浄液の組成について研究した。その結果、現像槽の難溶性析出物には特定範囲の濃度を有する有機酸が有効であり、水洗槽の難溶性析出物には、特定範囲の濃度を有するアルカリ金属水酸化物及び、無機酸を使用することが有効であることを見出し、これに基づいて更に浸透性を高めるため界面活性剤の併用についても検討した結果、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、シュウ酸及び、クエン酸、酢酸、ギ酸からなる群より選ばれた、少なくとも一種の有機酸を、 5重量%以上、15重量%以下含有する、感光性平版印刷の製版用現像機の現像槽洗浄液である。
【0013】
また、水酸化ナトリウム及び、水酸化カリウム、水酸化リチウムからなる群より選ばれた、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物を 0.1重量%以上、10重量%以下含有する第一の洗浄液及び、塩酸及び、硫酸、硝酸、過塩素酸からなる群より選ばれた、少なくとも一種の無機酸を1重量%以上、10重量%以下含有する第二の洗浄液からなる、感光性平版印刷の製版用現像機の水洗槽洗浄液である。
【0014】
ここで感光性平版印刷の製版用現像機とは、製版工程において感光・現像・水洗等の写真技術が適用された現像機である。また、本発明の洗浄液による溶解・除去の対象となる析出物は、この感光性平版印刷の製版用現像機の、現像槽または水洗槽の内部に生成した、複雑な組成を有する難溶性の析出物である。以下、本発明について詳しく説明する。
【0015】
本発明における感光性平版印刷の製版用現像機の現像槽の洗浄液には、シュウ酸及び、クエン酸、酢酸、ギ酸からなる群より選ばれた、少なくとも一種の有機酸を、5〜15重量%含有させる必要がある。現像槽内の析出物の溶解・剥離には特定範囲の濃度のこれらの有機酸が必要である。これらの有機酸の中でもシュウ酸及びクエン酸が、その効果及び取扱いが容易な点で特に好ましい。
【0016】
本発明における現像槽の洗浄水溶液に含まれる有機酸の濃度は5〜15重量%であり、より好ましくは7〜13重量%である。5重量%よりも低い濃度では充分な洗浄効果が得られない。尚、市販の現像槽洗浄液には有機酸を2重量%程度含有した例があるが、これは本質的にはフッ化水素酸の分解洗浄力に依存した洗浄液であり、有機酸2重量%程度の溶液のみでは殆ど洗浄効果は認められない。
【0017】
このように2重量%と5重量%との間に臨界性が認められる詳細な理由は明らかでないが、この装置で用いられる現像液は多種類の化学薬品の混合物であり、それが使用中に現像槽に付着・残留したものが放置され、空気酸化及び経年変化が重なって固化された結果、難溶性の析出物が生成すると考えられる。それらの析出物が有機酸と反応することによって、洗浄液に可溶な物質に変化し析出物が溶解・除去される。しかしこの反応は可逆反応であり、有機酸がある特定の濃度、すなわち5重量%以上存在しないと逆方向の反応(可溶性物質から析出物が生成する反応)が主となるため、全く洗浄効果が認められないと考えられる。製版用現像機の現像槽の析出物の洗浄液として、今までに有機酸自体の洗浄効果に着目された例はなく、本発明で用いる有機酸を5重量%以上含有する現像洗浄液についても全く知られていなかった。
【0018】
また、有機酸の濃度が 15 重量%以上になると、析出物の溶解性は認められるが、ステンレス表面に腐食が発生するおそれがあり、機器を損傷させるので好ましくない。また高濃度になると洗浄作業時に強い有機酸特有の臭気が発生するため、換気設備が必要となる等の問題が起こるため、洗浄液としては好ましくない。
【0019】
本発明における、感光性平版印刷の製版用現像機の水洗槽の第一の洗浄液には、水酸化ナトリウム及び、水酸化カリウム、水酸化リチウムからなる群より選ばれた、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物を含有させる必要がある。これらのアルカリ金属水酸化物は、水洗槽内に厚く付着・固化した析出物のうち、付着して間もない表層部分を溶解・除去する効果が大きい。これらのアルカリ金属水酸化物の中、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムは水溶性も高く取扱いも容易で好ましい。
【0020】
本発明における水洗槽の洗浄液のうち、第一の洗浄液に含まれるアルカリ金属水酸化物の濃度は 0.1%以上であり、10重量%以下である必要がある。より好ましくは1〜5重量%である。0.1 重量%よりも低い場合には洗浄効果が殆ど認められない。表層部分の析出物が第一の洗浄液に溶解すると、液が無色透明から暗緑色透明に変化するが、アルカリ金属水酸化物を 0.05 重量%含有する溶液と、0.1 重量%含有する溶液を用いて洗浄試験を行ったところ、前者の液を用いた洗浄後の液は限りなく無色透明に近かったのに対し、後者の液を用いた洗浄後の液は暗緑色透明であった。
【0021】
この事実から、アルカリ金属水酸化物 0.05 重量%水溶液と、0.1 重量%水溶液との間には大きな洗浄効果の差異があることが認められる。この様な洗浄効果の差異が現れる理由としては、pHの差等が考えられるが詳細は明らかでない。一方、10重量%を超える濃度でも表層の析出物は溶解されるが、析出物の溶解速度が飽和するため、これ以上高濃度とする必要がない。更に、洗浄の際には洗浄液を水洗槽に仕込んで循環させる方法も適用されるが、アルカリ金属水酸化物の濃度が高くなると液の粘性が上昇して、循環量が低下するため高濃度のアルカリ液は好ましくない。
【0022】
本発明における水洗槽の洗浄液のうち、第二の洗浄液を特徴づける無機酸、すなわち、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸は、水洗槽の析出物のうち第一の洗浄液では溶解しない内層部分の石質化した物質を剥離・除去するために効果的である。内層部分の析出物はケイ酸化合物やカルシウム化合物が数年〜 10 年程度の長期間をかけて石質化したものである。無機酸を加えるとその中のカルシウム化合物等が溶解するため、析出物の結晶構造が破壊されて剥離すると考えられる。前記の無機酸のうち、塩酸、硫酸、硝酸は特にカルシウム化合物を溶解し易く、安価であるため好ましい。
【0023】
本発明における水洗層の洗浄液のうち、第二の洗浄液に含まれる無機酸の濃度は1〜10重量%である必要がある。より好ましくは4〜8重量%である。1重量%よりも低い濃度では剥離効果が低く、洗浄に長時間を要するため不適当である。無機酸を 0.1重量%含む溶液を用いても、析出物は一部しか剥離せず、洗浄後残留した析出物をブラシでこすったが、析出物は硬いままで簡便な物理的方法ではこれ以上剥離させることが出来なかった。
【0024】
この様に、 0.1重量%と1重量%溶液との洗浄効果に大きな差異がある理由は明らかではないが、無機酸を加えると析出物の表面に存在するカルシウム化合物が溶解して、析出物の結晶構造に欠陥が生じる。その欠陥に無機酸が浸透して接触した部分のカルシウム化合物を溶解し、更に結晶構造の欠陥が浸透・拡大する。このくり返しによって無機酸は析出物の内部まで浸透して結晶を破壊し、その結果析出物を総て剥離・除去するというプロセスで洗浄が行われると考えられる。しかし、無機酸の濃度が低いとカルシウム化合物の溶解度も低下するため、結晶構造に欠陥が生じ難くなって無機酸も浸透しなくなり、析出物の一部しか剥離できないと考えられる。
【0025】
また無機酸の濃度を10重量%以上としても、カルシウム化合物の溶解速度が上昇しない上、却ってステンレスの腐食を起こすおそれがある。また高濃度の無機酸を使用する場合には、臭気を防ぐため、換気設備が必要となる場合もあるため、無機酸の濃度を10重量%以上とすることは不適当である。
【0026】
本発明では第一の水溶液と第二の水溶液との2つを組み合わせて、水洗槽の洗浄をする必要があり、第一の洗浄液または第二の洗浄液の、何れか一方だけでは洗浄効果が不十分である。アルカリ金属水酸化物を含有する第一の洗浄液のみで洗浄した場合には、表層部分の析出物は溶解したが、内層部分の析出物には全く変化が見られなかった。更に特許第2630674 号や特開平 9−151394 号を特徴づける、キレ−ト剤(エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム)を1〜2 重量%添加したが、効果は認められなかった。
【0027】
一方、第二の洗浄液の特徴である無機酸を含む水溶液のみで洗浄を試みたが、析出物は一部しか除去されなかっった。このことからも第一の洗浄液と第二の洗浄液を組み合わせることが必要であることが分かる。この様に2種類の水溶液を組み合わせる必要がある理由としては、先に述べたように水洗槽内の析出物中にはアルカリ金属水酸化物に可溶である、付着して間もない物質から成る表層部分と、アルカリ金属水酸化物には不溶だが無機酸に可溶である、カルシウム化合物を含んだ石質化した物質から成る内層部分の2層からなっているためである。
【0028】
更に本発明の洗浄液には、液の浸透性を向上させて洗浄力を高めるため、界面活性剤を添加することが好ましい。尚、界面活性剤は現像槽の洗浄液及び水洗槽の洗浄液(第一の水溶液、第二の水溶液)何れにも添加することができる。これに用いられる界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等のノニオン系界面活性剤や、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤がある。
【0029】
これらの界面活性剤のうち、ノニオン系界面活性剤は特に低濃度でも浸透性を高める効果が大きいため好ましい。特に好ましいのはポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テルである。これらの界面活性剤の洗浄水溶液への好ましい添加量は 0.001〜5重量%であり、さらに好ましくは 0.01 〜1重量%である。
【0030】
本発明の洗浄液にはその他更に、研磨剤、消泡剤、有機溶剤等を添加することができる。このうち研磨剤は洗浄力を高める上で有効であり、微粒子シリカ、酸化マグネシウム、珪藻土を併用することも好ましい。これら添加剤は現像槽の洗浄液、水洗槽の第一及び第二の洗浄液の何れにも、添加することができる。尚、これらの添加剤は総て、本発明の洗浄液の洗浄効果を更に高めるために使用されるものであり、添加剤を単独で用いても洗浄効果は認められない。例えば研磨剤の微粒子シリカを1重量%含有する水溶液で洗浄試験をしたが、現像槽、水洗槽ともに析出物はそのまま残留した。
【0031】
本発明の洗浄液を用いて、感光性平版印刷の製版用現像機の現像槽を洗浄する方法としては、現像液を排出した後必要に応じて水洗し、温度 10 〜50℃、好ましくは 20 〜45℃で本発明の有機酸を5〜15重量%含有する洗浄液を循環する。この方法によって手の届かない配管の内部迄洗浄することができ、労力が削減できる。
【0032】
また本発明の洗浄液を用いて、感光性平版印刷の製版用現像機の水洗槽を洗浄する方法としては、(1) 水洗液を排出した後必要に応じて水洗後、第一の洗浄液を水洗槽に仕込んで循環した後、(2) 第一の洗浄液を排出し槽内の水洗後、第二の洗浄液を仕込んで循環する方法によって洗浄することができる。先に述べたように、第一の洗浄液により表層部分の析出物を溶解し、第二の洗浄液により内層部分の石質化した析出物を剥離するため、第一の洗浄液、続いて第二の洗浄液という順序で用いる必要がある。
【0033】
また、第二の洗浄液は長い年月をかけて形成された、石質化した析出物を溶解・剥離するため、第一の洗浄液による洗浄時間と較べて長時間を要する。更に析出物が非常に厚く付着しており、上記の洗浄方法では充分に洗浄できない場合には、第一の水溶液及び第二の水溶液による洗浄を繰り返すことによって、洗浄が可能になる。
【0034】
本発明の洗浄液は感光性平版印刷の製版用現像機の現像槽及び水洗槽の洗浄の他、保護ガム槽、ローラー、配管等の現像機に関連した設備の洗浄にも使用できる。また、最近感光性平版印刷の製版用現像機には、殆ど自動現像機が採用されているが、本発明では特に自動現像機に限定せず、自動現像機も含めた広範囲の感光性平版印刷用の製版現像機に適用される。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0036】
(実施例1〜6、比較例1〜7)
以下の実施例及び比較例に挙げた、感光性平版印刷製版用の自動現像機は、現像処理に10年以上連続して使用されたものであり、現像槽には現像液から生成した析出物が、水洗槽には水道水に含まれるカルシウム化合物及び、現像液から生成した析出物が、それぞれ大量に析出して固化し石質化していた。
【0037】
尚、実施例及び比較例で用いた洗浄液に添加した、界面活性剤はノニオン系またはフッ素系で、それらの商品名、品番及びメーカー名等の詳細は表4に示した。尚、その他の界面活性剤を使用することも可能である。
【0038】
洗浄方法:(1) 自動現像機の現像槽(容量約 22.5L)から、残留していた現像液を排出し、流水約 10 L にて槽内を洗浄した。その後、表1に示す組成の洗浄液 20 L を仕込んで液温 35 ℃で表1に示す時間循環した。(2) 続いて洗浄液を排出し、流水約 10 L にて槽内を洗浄した。
【0039】
表1に実施例1〜6及び比較例1〜7において使用した、洗浄液の組成及び洗浄結果を示した。
【0040】
【表1】
(注1)ヘキサフルオロジルコン酸;H2ZrF6が 21 wt%及び、 HF 5.5 wt %含有。
(注2)界面活性剤1)〜4)の商品名、品番及びメーカー名を表4に示す。
【0041】
前記の表1において、実施例及び比較例で示した組成を有する洗浄液による、現像槽の洗浄試験の結果は、結果の欄に示した通りであるが、特定の濃度範囲の有機酸溶液を使用すれば、フッ化水素酸系化合物を含む洗浄液を使用することなく、現像槽内の析出物を充分に溶解・除去できることが分かる。また、実施例2、4、5及び、比較例1、2、4の結果を比較すると、本発明の洗浄液の有機酸濃度 5重量%以上、15重量%のうち、低濃度側の臨界性が特に顕著であることが示されている。更に、実施例1、2と実施例3、4、5の結果を比較すると、実施例1、2の洗浄時間が短いことを考慮すれば、前述の好ましい濃度の有機酸溶液が、それ以外の濃度の有機酸溶液と比較して、洗浄効果が高い結果が示されている。
【0042】
(実施例7〜11、比較例8〜16)
洗浄方法:(1) 自動現像機の水洗槽(容量約 6 L)から、残留していた水洗液を排出し、流水約3 Lにて槽内を洗浄後、表2に示す水洗槽の第一の洗浄液5 Lを仕込んで常温 (21℃) で表2に示す時間循環した。(2) 循環後、第一の洗浄液を排出し、流水約3L にて槽内を洗浄後、表2に示す第二の洗浄液を5L仕込んで、常温 (21℃) で表2に示す時間循環した。(3) 循環後、第二の洗浄液を排出し、流水約3L にて槽内を洗浄した。
【0043】
表2に実施例7〜11において使用した、第一及び第二の洗浄液の組成及び洗浄結果を示した。
【0044】
【表2】
(注1)界面活性剤1)〜3)の商品名、品番及びメーカー名を表4に示す。
【0045】
表3に比較例8〜16において使用した、第一及び第二の洗浄液の組成及び洗浄結果を示した。
【0046】
【表3】
(注1)界面活性剤1)〜3)の商品名、品番及びメーカー名を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
前記の表2に示した実施例及び、表3に示した比較例で示した組成を有する洗浄液による、水洗槽の洗浄試験の結果は、各表の結果の欄に示した通りであるが、これによって特定の濃度範囲のアルカリ金属水酸化物及び、無機酸の水溶液を使用すれば、長期間にわたって沈澱し石質化した析出物も、フッ化水素酸系化合物を含む洗浄液を使用することなく、充分に溶解・除去できることが示されている。また、実施例11と比較例10の対比及び、実施例8と比較例9の対比によって、本発明の洗浄液のアルカリ金属水酸化物及び無機酸の、低濃度側の臨界性が顕著であることも示されている。
【0049】
更に、アルカリ金属水酸化物の水溶液に関しては、実施例7、9と実施例8、10、11とを比較すると、実施例7、9の洗浄時間が短かいことを考慮すれば、前述の好ましい濃度のアルカリ金属水酸化物溶液が、それ以外の濃度のアルカリ金属水酸化物溶液と比較して洗浄効果が高いことが分かる。尚、実施例10では実施例7、9よりも高濃度のアルカリ金属水酸化物溶液を使用しているにも拘らず、洗浄時間が長い理由としては、先に述べた液の粘性増加による循環量の低下が考えられる。
【0050】
また、無機酸の水溶液に関しては、実施例7、11と実施例8、9、10とを比較すると、実施例7、11の洗浄時間が短かった上に刺激臭も感じられなかったことから、前に述べた好ましい濃度の無機酸溶液が、それ以外の濃度の無機酸水溶液と比較して洗浄効果が高いことが分かる。
【0051】
【発明の効果】
本発明の感光性平版印刷に使用される製版用現像機の、現像槽及び水洗槽の洗浄液は析出物の主成分の一つとして、ケイ酸化合物が含まれているため、従来からフッ化水素酸系化合物を含む洗浄液が使用されていた。しかし、本発明の洗浄液は現像槽の難溶性析出物には、特定範囲の濃度を有する有機酸を使用し、水洗槽の難溶性析出物には、特定範囲の濃度を有するアルカリ金属水酸化物及び、無機酸を使用することによって、フッ化水素酸系化合物を含有させることなく、充分に製版用現像機の現像槽及び水洗槽等に析出・蓄積する難溶性析出物の溶解・除去を可能としたものである。
Claims (2)
- シュウ酸及び、クエン酸、酢酸、ギ酸からなる群より選ばれた、少なくとも一種の有機酸を、 5重量%以上、15重量%以下含有する、感光性平版印刷の製版用現像機の現像槽洗浄液。
- 水酸化ナトリウム及び、水酸化カリウム、水酸化リチウムからなる群より選ばれた、少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物を 0.1重量%以上、10重量%以下含有する第一の洗浄液及び、塩酸及び、硫酸、硝酸、過塩素酸からなる群より選ばれた、少なくとも一種の無機酸を1重量%以上、10重量%以下含有する第二の洗浄液からなる、感光性平版印刷の製版用現像機の水洗槽洗浄液。
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