JP2005013949A - 塗装方法及び塗装装置 - Google Patents

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晋一 砂川
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Abstract

【課題】特定部位の洗浄性を高めて下塗り塗料の2次タレを防止できる塗装方法及び塗装装置を提供する。
【解決手段】電着塗料を洗浄するための洗浄液が満たされて自動車ボディBが浸漬される洗浄槽44と、洗浄槽の洗浄液に浸漬され自動車ボディの狭隘部に対して向かい合う位置に設けられた超音波発振子445.446とを備える。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、自動車ボディ等に適用して好ましい塗装方法及び塗装装置に関し、特に下塗り塗料の2次タレが防止できる塗装方法及び塗装装置に関する。
【0002】
【背景技術】
自動車ボディの塗装系は、エポキシ系樹脂を主剤とする電着塗料などが適用される下塗り塗装と、アクリルメラミン系樹脂を主剤とする中塗り塗料と、同じくアクリルメラミン系樹脂を主剤とする上塗り塗料の3種の塗料を用い、下塗り塗装を施したのちこれを焼き付け、硬化した下塗り塗膜の上に中塗り塗装を施したのちこれを焼き付け、硬化した中塗り塗膜の上に上塗り塗装を施したのちこれを焼き付けることで完成する、いわゆる3コート3ベーク系の塗装方法が採用されている。
【0003】
この種の塗装系において電着塗料の2次タレが従来より問題視されている。すなわち、電着塗装は自動車ボディを電着塗料に浸漬させることで行われ、これによりボディを構成する各種パネルの合わせ面など、狭隘部にも電着塗料が浸入して塗膜が形成される。
【0004】
ところが、パネルの合わせ面などの狭隘部に浸入した電着塗料は、電着水洗工程だけでは充分に除去されず、これが電着乾燥炉内で外板部に流れ出して硬化する。こうして生じる2次タレは、周囲の電着塗膜に比べて異常な塗膜であることから、塗装不良として中塗り塗装前に修正作業等が必要となる。
【0005】
特にドアパネルのヘミング部のような液溜まりが生じやすい構造で、かつ洗浄水がスプレーし難い狭隘部からの2次タレが問題となっていた。
【0006】
【発明の開示】
本発明は、特定部位の洗浄性を高めて下塗り塗料の2次タレを防止できる塗装方法及び塗装装置を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、被塗物を下塗り塗料に浸漬させて下塗り塗膜を形成したのちこれを焼き付け硬化させる前に、前記被塗物を洗浄液に浸漬させ、この浸漬中に前記被塗物の狭隘部に超音波を印加することを特徴とする塗装方法が提供される。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明によれば、下塗り塗料を洗浄するための洗浄液が満たされて被塗物が浸漬される洗浄槽と、前記洗浄槽の洗浄液に浸漬され前記被塗物の狭隘部に対して向かい合う位置に設けられた超音波発振子と、を備えたことを特徴とする塗装装置が提供される。
【0009】
本発明では、下塗り塗料を終えた被塗物を洗浄液に浸漬して余剰となった下塗り塗料を洗浄する際に、下塗り塗料が溜まり易い被塗物の狭隘部に超音波を印加するので、狭隘部に溜まった下塗り塗料が超音波の振動によって洗浄液内に流出する。これにより、スプレーでは洗浄できないような狭隘部でも充分に洗浄性を高めることができ、その結果2次タレを防止することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る塗装方法及び塗装装置が適用される前処理・電着塗装工程を示す工程図、図2は本発明の実施形態に係る塗装装置を示す側面図、図3は図2のIII−III線に沿う断面図、図4は本発明の実施形態に係る狭隘部の一例を説明するためのボディ全体図及び断面図である。
【0011】
図1の上図に本実施形態に係る前処理・電着工程の工程図を示す。被塗物である自動車ボディは車体組み立て工程から脱脂洗浄工程1に搬送され、ボディに付着した鉄粉などの各種塵埃やプレス油などの各種油類が除去される。清浄となったボディは化成処理工程2に搬送され、化成処理液に浸漬されることによりボディの表面に化成被膜が形成される。
【0012】
化成被膜が形成された自動車ボディは、電着塗装工程3に搬送され、電着塗料が満たされた電着槽に浸漬され、所定の電圧が印加されることにより電着塗膜が形成される。電着槽を出槽した自動車ボディには余剰となった電着塗料が付着しているので、次の電着水洗工程4にてこれを洗い流したのち、電着乾燥炉5に搬送して電着塗膜を焼き付ける。
【0013】
ここで本実施形態の電着水洗工程の構成を同図の下図に示す。
電着槽31に続いて第1水洗用スプレー装置41が設けられ、スプレーによる水洗が行われる。この第1水洗用スプレー装置41に続いて第1水洗槽42が設けられ自動車ボディを浸漬することによりボディの袋構造部に溜まった電着塗料もここで洗浄される。さらに第1水洗槽42に続いて第2水洗用スプレー装置43が設けられ、さらにスプレーによる水洗が行われる。さらにこの第2水洗用スプレー装置43に続いて第2水洗槽44が設けられ、自動車ボディを浸漬させることにより袋構造部を含めた最終水洗が行われる。なお、第1水洗槽42及び第2水洗槽44へ自動車ボディを浸漬させる場合には、自動車ボディを全没させるフルディップ以外にも、自動車ボディのベルトラインまで半没させるハーフディップも含まれる。
【0014】
第2水洗槽44(本発明に係る洗浄槽に相当する。)を図2に示す。本例の第2水洗槽44には純水などの洗浄液が満たされており、ハンガHに搭載された自動車ボディBはオーバーヘッドコンベアCにより前工程から搬送され、この第2水洗槽の洗浄液に浸漬される。本例の第2水洗槽44はフルディップ槽であるが、ボディ上部(ベルトラインより上部)に電着塗料の溜まり易い狭隘部がない場合にはハーフディップであってもよい。
【0015】
本例の第2水洗槽44の長手方向(コンベアCによる搬送方向)のほぼ中央の両サイドのそれぞれに、長手方向に沿って第1レール441が架設され、この第1レール441に沿って第1枠体442が長手方向に対して移動自在に設けられている。第1枠体442は図外の駆動装置(本発明に係る第2の移動手段に相当する。)によりボディBの搬送方向に沿って前進及び後退する。
【0016】
第1枠体442には、第2水洗槽の長手方向に直角方向(幅方向)に延在する第2レール443が固定され、この第2レール443に沿って第2枠体444が幅方向に対して移動自在に設けられている。第2枠体444は図外の駆動装置(本発明に係る第1の移動手段に相当する。)によりボディBに対して接近及び離反する方向に移動する。
【0017】
第2枠体444には、第1超音波発振子445及び第2超音波発振子446が固定されている。
【0018】
自動車ボディBには電着塗料が溜まり易い部位が存在する。たとえば、図4に示すドアアウタパネルとドアインナパネルの合わせ部であるドアヘミング部(同図のA部)や、ルーフパネルアウタとウェザーストリップレインフォースとの合わせ部であるウェザーストリップレインフォース部(同図のB部)は、自動車ボディBを電着槽31から出槽した後も電着塗料が溜まり易い構造となっている。こうした狭隘部に対面するように超音波発振子445,446を設けることで電着塗料を狭隘部から排出する。本例では、第2枠体444の上部のウェザーストリップレインフォース部に対面する位置に第1超音波発振子445を設け、同じく第2枠体444の下部のドアヘミング部に対面する位置に第2超音波発振子446を設けている。ただし、本発明では超音波発振子の設置位置は何ら限定されず、車型仕様に応じて電着塗料が溜まり易い部位を検証し、その部位に対面する位置に超音波発振子を設けることが望ましい。したがって、本例のように上下にそれぞれ設ける以外にも、第2枠体444の前面に超音波発振子を配置してもよい。
【0019】
これら第1超音波発振子445及び第2超音波発振子446は、図2に示すように発信機447により駆動されるが、本例ではさらに以下の制御を行うように構成されている。
【0020】
まず、第1超音波発振子445及び第2超音波発振子446のそれぞれと、振動対象たるドアヘミング部及びウェザーストリップレインフォース部との対面距離は、50cm以下であることが好ましい。50cmを超えると超音波振動による電着塗料の排出効果が期待できないからである。
【0021】
また、振動対象たるドアヘミング部及びウェザーストリップレインフォース部に対する超音波振動の印加時間は、好ましくは10秒〜30秒、より好ましくは15秒〜25秒である。本発明者がパネル隙が50〜200μmの試料を用いて事前確認したところ、印加距離が50cm以上でも10秒以上超音波振動を印加しながら洗浄することで電着塗料を狭隘部から好適に排出できることが確認されている。また、30秒を超えた時間超音波振動を印加すると、超音波振動による洗浄効果により塗膜表面が肌荒れし、塗装品質上好ましくない。
【0022】
さらに、発信機447の駆動により第1超音波発振子445及び第2超音波発振子446から発せられる超音波の周波数帯は、28kHz±5kHzであることが好ましい。本例における洗浄水は水であり、この水の揺動が洗浄効果の前提となることから、超音波の周波数帯域28〜150kHzのうち最も波長が大きい28kHzとすることが好ましい。印加する超音波の周波数が28kHz±5kHzより低いと可聴領域となってエネルギー伝達ロスが大きくなり超音波振動による洗浄効果が低下する。また、印加する超音波の周波数が28kHz±5kHzより高いと超音波の直進性の影響が大きくなり、洗浄水が流動することによる影響を受けやすくなってエネルギー伝達ロスが大きくなる。
【0023】
このうち、印加する超音波の周波数は、第1超音波発振子445及び第2超音波発振子446の発振周波数が28kHz±5kHzとなるように発信機447の駆動が制御される。
【0024】
これに対し、第1超音波発振子445及び第2超音波発振子446とドアヘミング部及びウェザーストリップレインフォース部との距離は、この距離が50cm以下(好ましくは30cm前後)となるように第2枠体444を第2レール443に沿って移動させる。また、第1超音波発振子445及び第2超音波発振子446によるドアヘミング部及びウェザーストリップレインフォース部への超音波の印加時間は、これが10秒〜30秒(より好ましくは15秒〜25秒)となるように第1枠体442及びこれに固定された第2レール443及び第2枠体444を、第1レール441に沿って移動させ、自動車ボディBに追従させる。ただし、移動させなくとも上記の印加時間が確保できる場合には、第1枠体442及びこれに固定された第2レール443及び第2枠体444を停止させた状態で発信機447のON/OFFのみによって制御してもよい。
【0025】
以上の制御は、本例の電着塗装工程に搬入される自動車ボディの車型仕様(車種)に応じて行う。このために第2水洗槽44の入口付近に車型仕様を検出するためのセンサ448が設けられ、この車型仕様検出センサ448からの検出信号が制御部449に送出されるようになっている。
【0026】
次に作用を説明する。
図1に戻り、プレス工程及び車体組立工程(溶接工程)を終了した自動車ボディBは塗装工場の脱脂洗浄工程1に搬入される。ここでボディBに付着した鉄粉などの各種塵埃やプレス油などの各種油類が除去されたのち、清浄となったボディBは化成処理工程2に搬送され、化成処理液に浸漬されることによりボディの表面に化成被膜が形成される。
【0027】
次いで、化成被膜が形成された自動車ボディBは、電着塗装工程3に搬送され、電着塗料が満たされた電着槽に浸漬され、所定の電圧が印加されることにより電着塗膜が形成される。
【0028】
この電着槽を出槽した自動車ボディBは、その表面や狭隘部などに余剰となった電着塗料が付着しているので、これをまず第1水洗用スプレー装置41を用いて自動車ボディBに洗浄水を吹き付けて洗い流す。なお、洗い流された電着塗料は洗浄液と分離されて回収されることになる。
【0029】
この第1水洗用スプレー装置41では、自動車ボディBの袋構造部などのようにスプレーによっては洗浄できない部位を洗浄するために、次に自動車ボディBを第1水洗槽42に浸漬させる。さらに、第1水洗槽42を出槽した自動車ボディBに第2水洗用スプレー装置43を用いて洗浄水を吹き付ける。
【0030】
この第2水洗用スプレー装置43による洗浄を終了した自動車ボディBは、特定の狭隘部を除き、ほぼ余剰な電着塗料は洗浄された状態となっている。この状態で自動車ボディBを第2水洗槽44に浸漬させて最終段の洗浄を行う。
【0031】
ここで、自動車ボディBが第2水洗槽44に入槽する際に、車型仕様検出センサ448によってそのボディBの車型が制御部449に送出され、この制御部449では検出された車型仕様に基づいて、予め記憶されている車型仕様と超音波印加距離及び印加時間との関係マップを検索し、対応する印加距離と印加時間を抽出して、これを発信機447と、第1枠体442及び第2枠体444それぞれの駆動部(図示省略)に送出する。
【0032】
たとえば、車型仕様検出センサ448により検出された自動車ボディBが、車幅が狭い小型のボディBであるときは、第1及び第2超音波発振子445,446とドアヘミング部及びウェザーストリップレインフォース部との距離が50cm以下になるように、第2レール443を介して第2枠体444を、車幅が広い大型のボディBに比べてボディBに接近させる。
【0033】
また、車型仕様検出センサ448により検出された自動車ボディBが、車長が長いボディBであって第1及び第2超音波発振子445,446を停止した状態では超音波の印加時間が10秒に満たない場合には、発信機447によるON/OFF制御に加えて、第1枠体442及びこれに固定された第2レール443及び第2枠体444を第1レール441に沿って移動させる。このとき、これら第1枠体442及びこれに固定された第2レール443及び第2枠体444を自動車ボディBに追従させるために、第1枠体の駆動部の制御部にコンベアパルス信号を取り込み、相対速度がゼロとなるように制御する。
【0034】
以上の第2水洗槽44における超音波振動を印加した浸漬洗浄により、ドアヘミング部やウェザーストリップレインフォース部などの狭隘部に残留した電着塗料は第2水洗槽44に流れ出すことになる。
【0035】
第2水洗槽44を出槽した自動車ボディBは所定のセッティングを経たのち電着乾燥炉に搬入され、ここで焼き付け硬化されるが、ドアヘミング部やウェザーストリップレインフォース部などの狭隘部に残留した電着塗料は第2水洗槽44にて排出されているので、電着乾燥炉にて流れ出して2次タレ不具合を生じることはない。
【0036】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0037】
たとえば、上述した実施形態では超音波発振子445,446を第2水洗槽44に設けたが、本発明の超音波発振子は電着水洗工程の第2段に設けなければならないという趣旨ではなく、また最終段に設けなければならないという趣旨でもない。要するに、狭隘部に溜まった電着塗料を好適に排出できるディッピング槽であれば何段目の水洗槽に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る塗装方法及び塗装装置が適用される前処理・電着塗装工程を示す工程図である。
【図2】本発明の実施形態に係る塗装装置を示す側面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る狭隘部の一例を説明するためのボディ全体図及び断面図である。
【符号の説明】
1…脱脂洗浄工程
2…化成処理工程
3…電着塗装工程
31…電着槽
4…電着水洗工程
41…第1スプレー装置
42…第1水洗槽
43…第2スプレー装置
44…第2水洗槽
441…第1レール
442…第1枠体
443…第2レール
444…第2枠体
445…第1超音波発振子
446…第2超音波発振子
447…発信機
448…車型仕様検出センサ
449…制御部
5…電着焼き付け工程
B…自動車ボディ
C…コンベア
H…塗装ハンガ

Claims (10)

  1. 被塗物を下塗り塗料に浸漬させて下塗り塗膜を形成したのちこれを焼き付け硬化させる前に、前記被塗物を洗浄液に浸漬させ、この浸漬中に前記被塗物の狭隘部に超音波を印加することを特徴とする塗装方法。
  2. 前記狭隘部が、自動車ボディのドアパネルヘミング部又はウェザーストリップレインフォース部であることを特徴とする請求項1記載の塗装方法。
  3. 前記超音波の印加時間が10秒〜30秒であることを特徴とする請求項1又は2記載の塗装方法。
  4. 前記超音波の周波数が28kHz±5kHzであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の塗装方法。
  5. 下塗り塗料を洗浄するための洗浄液が満たされて被塗物が浸漬される洗浄槽と、前記洗浄槽の洗浄液に浸漬され前記被塗物の狭隘部に対して向かい合う位置に設けられた超音波発振子と、を備えたことを特徴とする塗装装置。
  6. 前記狭隘部が、自動車ボディのドアパネルヘミング部又はウェザーストリップレインフォース部であることを特徴とする請求項5記載の塗装装置。
  7. 前記超音波発振子は、前記被塗物の狭隘部から50cm以下の距離に向かい合って設けられていることを特徴とする請求項5又は6記載の塗装装置。
  8. 前記超音波発振子を前記被塗物の狭隘部に対して接近離反移動させる第1の移動手段を有することを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の塗装装置。
  9. 前記超音波発振子を前記被塗物の搬送方向に追従させる第2の移動手段を有することを特徴とする請求項5〜8の何れかに記載の塗装装置。
  10. 前記被塗物の種類を検出する検出手段と、前記検出手段で検出された被塗物の種類に応じて前記第1の移動手段及び/又は第2の移動手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする請求項8又は9記載の塗装装置。
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