JP2005002238A - 航空機用遮熱塗料 - Google Patents

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Abstract

【目的】従来の高い耐候性、密着性、耐水・耐油性等の塗膜物性の一部たりともトレード・オフすることなく、遮熱効果を備えた航空機用塗料を開発する。
【構成】航空機用塗料であって、含有する着色顔料がJIS A5759−1998に規定される日射反射率が13%以上の着色顔料のみで構成される塗料であることを特徴とする航空機用遮熱塗料。
使用する着色顔料は、白系顔料としてチタンホワイト、酸化亜鉛系顔料、赤系顔料として酸化鉄系顔料、キナクリドン系顔料、黄色系顔料として酸化鉄系顔料、水酸化鉄系顔料、クロム酸鉛系顔料、アゾ系顔料、青系顔料としてフタロシアニンブルー、複合酸化物系顔料、緑系顔料としてクロムグリーン、フタロシアニングリーン系顔料から選ばれる少なくとも1種類以上であることを特徴とする航空機用遮熱塗料。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空機用塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
航空機、特に高高度を飛行するジェット機の場合には、地上にある時と、高高度を飛行中の時とで著しい温度差があり、これが短時間に繰り返されるため、その機体に塗装する塗料には、高い耐久性が要求される。
【0003】
このため、航空機用の塗料には、使用する樹脂に高耐候性が求められ、2液硬化型ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂等の、強靭であって同時に柔軟性を有する塗膜を形成し、なおかつ金属に密着性の高い樹脂が使用されている。
【0004】
しかしながら、地上での気温35℃〜高空での気温−20℃以下の温度変化サイクルが塗膜に与える影響は大きく、塗膜劣化の大きな要因となっている。この温度変化サイクルによる塗膜劣化を、樹脂自身の有する特性により防止することは極めて困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、塗料塗膜に遮熱性、すなわち太陽光の熱エネルギーを塗膜自身が反射することができれば、塗膜自身が受ける温度変化による劣化作用を軽減することができ、塗膜の耐久性を高めることが可能となる。
また、航空機に塗布された塗料が形成した塗膜が遮熱効果を有するとすれば、外気温が高温になった場合においても、機内温度の上昇を防止できるため、航空機の運行において省エネルギーに寄与できる。
このため本発明の課題は、従来の高い耐候性、密着性、耐水・耐油性等の塗膜物性の一部たりともトレード・オフすることなく、遮熱効果を備えた航空機用塗料を開発することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決せんとして、本発明者は鋭意研究の結果、主として使用する顔料を特定することにより、遮熱効果を発揮する航空機用塗料を開発したものであり、その要旨は以下に存する。
【0007】
航空機用塗料であって、含有する着色顔料がJIS A5759−1998に規定される日射反射率が13%以上の着色顔料のみで構成される塗料であることを特徴とする航空機用遮熱塗料。
使用する着色顔料は、白系顔料としてチタンホワイト、酸化亜鉛系顔料、赤系顔料として酸化鉄系顔料、キナクリドン系顔料、黄色系顔料として酸化鉄系顔料、水酸化鉄系顔料、クロム酸鉛系顔料、アゾ系顔料、青系顔料としてフタロシアニンブルー、複合酸化物系顔料、緑系顔料としてクロムグリーン、フタロシアニングリーン系顔料から選ばれる少なくとも1種類以上であることを特徴とする航空機用遮熱塗料。
使用する着色顔料以外の顔料は、シリカ、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種類以上であることを特徴とする航空機用遮熱塗料。
白系顔料を含むことを特徴とする航空機用下塗遮熱塗料。
以下に詳細に説明する。
【0008】
本発明は、航空機用塗料に関する発明であるが、現在工業的に生産されているほとんどの航空機の機体材料は、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン合金等の金属であるため、特に機体が金属製である航空機を対象とする。更に、最近の材料工学の進展により、強度に優れ、なおかつ軽量な、C−FRP等のエンジニアリングプラスチックに代表される樹脂系複合材料を航空機に適用する動きがあるため、これらの樹脂系複合材料に対して密着性を有することも要する。
また、塗膜の硬化機構としては、常温(5〜25℃)において塗膜が硬化するタイプの樹脂による塗料を対象とする。
【0009】
上記の条件を満たす樹脂系の塗料として、2液硬化型ポリウレタン樹脂塗料、湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料、アクリル−ウレタン樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料等が例示できる。これらの樹脂は単独でも、必要に応じ混合しても使用することができる。これらの樹脂系のうち、特に2液硬化型ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂から選ばれる樹脂系塗料が好適に使用できる。これらの樹脂系は、溶剤系、エマルション系、水系を問わない。なお、近年の環境問題意識の高まりから、航空機用塗料においても溶剤系樹脂であれば、より溶剤使用量の少ないハイソリッド型塗料や、環境負荷問題の少ないエマルション系、水系樹脂が使用された塗料が望まれている。
一方で、金属への防錆性の付与という観点からは、現状では水系、エマルション系樹脂塗料より、溶剤系樹脂塗料が比較的安定した防錆性能を顕現する。
更に、航空機は大変高価な機材であるため、経済原則から稼働率を高めることが求められる。即ち、航空機の機体へ塗装するために必要な時間は、必要最短時間であることが要求される。このため、常温における塗装条件において塗装後に8〜12時間で指触乾燥(塗膜表面に指で軽く触れても、指紋が残らない程度)、22〜26時間で塗膜が完全乾燥するというのが、航空機用塗料に求められる塗膜形成乾燥条件である。
従って、航空機用塗料に使用する樹脂系としては、金属、複合樹脂系基材への密着性、防錆性、環境性、乾燥性等の諸物性を十分に検討の上、決定する必要がある。
【0010】
本発明の塗料においては、特定の顔料のみを使用することにより、形成される塗膜に遮熱性を付与しようとするものであるため、顔料の選定は必須である。すなわち、JIS A5759−1998 6.3.5 遮へい係数試験 b) 日射反射率 の項目においてρとして規定される日射反射率が13%以上の着色顔料のみを選択して使用することが必要である。ここで、塗装に必要な色を発色するために、上記、JIS A5759−1998において規定される日射反射率ρが13%未満の顔料を使用した場合、太陽光の反射率が著しく低下し、遮熱性が悪くなる。
【0011】
JIS A5759−1998に規定される日射反射率ρが13%以上の着色顔料としては、白系顔料としてチタンホワイト、酸化亜鉛系顔料、赤系顔料としてべんがら等の酸化鉄系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンダ、ジクロロキナクリドンマゼンダ、キナクリドンマルーン等のキナクリドン系顔料、黄色系顔料として酸化鉄系顔料、黄土等の水酸化鉄系顔料、黄鉛、クロムイエロー等のクロム酸鉛系顔料、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、パーマネントイエロー、縮合アゾ系等のアゾ系顔料、青系顔料としてコバルトブルー、コバルト・アルミ・クロムブルー等の複合酸化物系顔料、フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー等のフタロシアニンブルー、緑系顔料としてクロムグリーン、酸化クロムグリーン等のクロムグリーン、塩素化フタロシアニングリーン、臭塩素化フタロシアニングリーン等のフタロシアニングリーン系顔料を例示することができる。必要とする色が、上記着色顔料単独の使用によっては発色できない場合には、上記着色顔料を混色することにより発色させる必要がある。
【0012】
更に、本発明における塗料においては、着色顔料の他に、いわゆる体質顔料と言われる、塗膜物性に寄与する顔料を使用することがあるが、これらの体質顔料も、遮熱性を考慮して選択される。すなわち、シリカ、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種類以上であることを必要とする。
【0013】
また、本発明による航空機用塗料は、前記したように、金属、若しくは樹脂系複合材料の機体に塗装するものであるが、これらの材料表面には容易に付着しない場合があり、付着を容易にさせるため、また、塗布される材料が金属の場合には、塗装による防錆力を向上させるため、機体表面に予め密着性に優れた薄膜の塗料を塗布しておき、この塗膜の上から塗装する、という場合も多い。こうした密着性を向上させるための塗料を、下塗り塗料、あるいはプライマー等と呼ぶ。通常、下塗り塗料、あるいはプライマーには、その塗膜が必要とされる性能が、上層塗膜の付着性の向上、塗膜防錆力の向上という点にあるため、塗膜着色のための顔料は用いられることはないが、本発明において下塗り塗料、あるいはプライマーを使用する場合には、これに白系顔料としてチタンホワイト、酸化亜鉛系顔料を含むことにより、上層の塗膜の遮熱効果との相乗効果により、両塗膜全体として一層の遮熱効果を発揮させることができるものである。
【0014】
本発明になる航空機用遮熱塗料は、使用する樹脂により、水系であっても、溶剤系であっても、樹脂エマルションであっても使用できる。
本発明になる航空機用遮熱塗料には、遮熱効果を低減あるいは無効にしない限りにおいて、従来公知の塗料用の各種添加剤を使用することができる。分散剤、消泡剤、沈降防止剤、レオロジーコントロール剤等が例示できる。更に前記したように乾燥性を高める目的で、硬化触媒等を必要量使用することができる。
【0015】
本発明になる航空機用遮熱塗料は、従来公知の方法、分散機により製造することができ、特に制限はない。すなわち、ロールミル、ボールミル、高速攪拌機、オープンニーダー、加圧ニーダー、プラネタリーミキサー、アトライター、グレンミル等である。また、バッチ式製造設備であっても、連続式製造設備であっても問題無く製造できる。
【0016】
本発明になる航空機用塗料を、機体に塗装する場合には、従来公知の各種塗装方法が使用できる。すなわち、刷毛塗り、ローラー塗装、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、エアアシストエアレススプレー塗装、ロールコーター、カーテンフローコーター、静電塗装等が例示できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の理解を助けるために具体的な実施例を説明する。言うまでもないが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0018】
【実施例1】
ポリエステルポリオール樹脂50質量%、チタンホワイト(日射反射率88%)30質量%、分散剤5質量%、キシレン15質量%をロールミルにて混合分散し、脱泡、濾過を経て航空機用塗料1主剤を得た。このポリエステルポリオール樹脂の反応当量比のイソシアネート(HDI)を混合し、航空機用塗料1(ホワイト)を得た。
【0019】
【実施例2】
ポリエステルポリオール樹脂50質量%、チタンホワイト(日射反射率88%)23質量%、キナクリドンレッド(日射反射率30%)2質量%、ベンツイミダゾロンイエロー(日射反射率70%)4質量%、フタロシアニンブルー1質量%、分散剤5質量%、キシレン15質量%をロールミルにて混合分散し、脱泡、濾過を経て航空機用塗料2主剤を得た。このポリアミン樹脂の反応当量比のイソシアネート(HDI)を混合し、航空機用塗料2(グレー)を得た。
【0020】
【実施例3】
ポリエステルポリオール樹脂65質量%、チタンホワイト(日射反射率88%)18質量%、分散剤5質量%、キシレン12質量%をロールミルにて混合分散し、脱泡、濾過を経て航空機用下塗塗料主剤を得た。このポリアミド樹脂の反応当量比のイソシアネート(HDI)を混合し、航空機用下塗塗料(ホワイト)を得た。
【0021】
【比較例】
ポリエステルポリオール樹脂50質量%、チタンホワイト(日射反射率88%)30質量%、カーボンブラック(日射反射率0.5%)1質量%、分散剤5質量%、キシレン質量14%をロールミルにて混合分散し、脱泡、濾過を経て航空機用塗料3主剤を得た。このポリアミド樹脂の反応当量比のイソシアネート(HDI)を混合し、航空機用塗料3(グレー)を得た。
【0022】
【試験方法】
1.冷熱サイクル試験
航空機用ジュラルミン板に、上記の航空機用塗料1〜3、及び上記航空機用下塗塗料を塗布し、乾燥させた後、上記航空機用塗料1〜2を、エアスプレー塗装により塗装し、常温(22℃)にて乾燥硬化させ、7日間置き、航空機用塗膜板1、2、(下塗無し)1´、2´(下塗有り)、及び3を得た。
これら塗膜板を冷熱サイクル試験機に入れ、40℃×3H・−30℃×3Hを1サイクルとして、100サイクル600時間試験を実施し、塗膜の劣化状態を拡散昼光の元で目視観察し、◎、○、△、×で評価した。各記号の評価は次の通り。
◎:塗膜の全域にわたり割れ、剥がれ、膨れ、白化を認めず、色調に変化無し。
○:塗膜の全域にわたり割れ、剥がれ、膨れ、白化を認めず、色調に変化無し。
(色差計による測定で変化を認める)
△:塗膜の全域にわたり割れ、剥がれ、膨れ、白化を認めず。
×:塗膜に割れ、剥がれ、膨れ、白化のいずれかを認める。
【0023】
2.遮熱効果試験
上記航空機用塗膜板1、2、(下塗無し)1´、2´(下塗有り)、及び3を水平に設置し、各塗膜板裏面(非塗装面)中央に熱電対による温度センサーを固定し、温度センサーを外気と遮断するため、箱状の発泡樹脂製断熱箱で覆い、各塗膜板の塗装面中央直上30cmの距離より500W白熱灯を点灯、照射し、塗膜板裏面の温度変化を測定した。10分経過しても温度上昇が見られず、飽和状態となった時点を、最高到達温度とした。
【0024】
【結果】
1.冷熱サイクル試験
航空機用塗膜1 ○
航空機用塗膜2 ○
航空機用塗膜1´ ◎
航空機用塗膜2´ ◎
航空機用塗膜3 △
2.遮熱効果試験
航空機用塗膜1 最高到達温度57℃
航空機用塗膜2 最高到達温度57℃
航空機用塗膜1´ 最高到達温度54℃
航空機用塗膜2´ 最高到達温度54℃
航空機用塗膜3 最高到達温度79℃
【0025】
【発明の効果】
本発明になる航空機用塗料は、航空機が運行される非常に厳しい温度変化による塗膜劣化を防止し、なおかつ遮熱効果を有するため、航空機に使用されている金属や複合樹脂系といった材料の、冷熱繰り返しによる強度劣化への影響を低減し、合わせて機内温度の上昇を抑制することができる画期的な航空機用塗料である。

Claims (4)

  1. 航空機用塗料であって、含有する着色顔料がJIS A5759−1998に規定される日射反射率が13%以上の着色顔料のみで構成される塗料であることを特徴とする航空機用遮熱塗料。
  2. 使用する着色顔料は、白系顔料としてチタンホワイト、酸化亜鉛系顔料、赤系顔料として酸化鉄系顔料、キナクリドン系顔料、黄色系顔料として酸化鉄系顔料、水酸化鉄系顔料、クロム酸鉛系顔料、アゾ系顔料、青系顔料としてフタロシアニンブルー、複合酸化物系顔料、緑系顔料としてクロムグリーン、フタロシアニングリーン系顔料から選ばれる少なくとも1種類以上であることを特徴とする航空機用遮熱塗料。
  3. 使用する着色顔料以外の顔料は、シリカ、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種類以上であることを特徴とする航空機用遮熱塗料。
  4. 白系顔料を含むことを特徴とする航空機用下塗遮熱塗料。
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