JP2005001911A - セラミックグリーンシート成形用バインダおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】セラミック原料粉末の分散性や焼成時における熱分解性が優れ、1〜10μmの薄膜のセラミックグリーンシートとした際に十分な強度を発現するなど機械的物性が高く、さらに、積層体とした際の接着性が良好なセラミックグリーンシート成形用バインダを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体成分が、セルロース系樹脂にグラフト重合したグラフト共重合体を含むことを特徴とするセラミックグリーンシート成形用バインダ。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック多層配線基板などのセラミックパッケージの製造に用いられるセラミックグリーンシート用のバインダに関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミック多層配線基板などのセラミックパッケージには、セラミックグリーンシートが使用されている。
セラミックグリーンシートは、例えば、セラミック原料粉末と、バインダと、有機溶剤と、必要に応じて添加される可塑剤、分散剤、消泡剤などの添加剤とを、ボールミルなどで均一に混合してスラリーを調製し、ついで、このスラリーを離型処理されたPETフィルムなどの支持体に塗布後、有機溶剤を乾燥し、支持体を剥離することによって得られる。
このセラミックグリーンシート上に、内部電極を形成するための導電性組成物をスクリーン印刷法などで所定のパターンに印刷し、ついで、これを複数枚重ねて加熱圧縮して積層体とした後、この積層体を焼成することにより、セラミックグリーンシート中のバインダが熱分解、除去され、セラミック多層配線基板が得られる。
【0003】
このようなセラミックグリーンシートに使用されるバインダには、スラリー調製時のセラミック原料粉末の分散性、焼成時における熱分解性が優れ、セラミックグリーンシートとした際に十分な強度を発現するなど機械的物性が高く、さらに、上述のように積層体とした際の接着性が良好であることが求められている。
このようなバインダには、強度に優れた樹脂としてブチラール樹脂が、熱分解性に優れた樹脂としてアクリル系樹脂が使用されているが、これらの樹脂では上記の要求特性を同時に満足することができなかった。
従来、熱分解性および強度に優れたバインダとして、特許文献1には、アルキル(メタ)アクリレートがポリビニルブチラール樹脂にグラフト重合したグラフト共重合体からなるバインダが記載されている。
熱分解性とスラリーの安定性に優れたバインダとして、特許文献2には、メタクリル酸系共重合体よりなるバインダが記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−172553号公報
【特許文献2】
特開平10−167836号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載されているグラフト共重合体の製造方法は連鎖移動反応を利用した方法であるため、グラフト化の程度が低い。グラフト化の程度が低いと、得られた生成物は単なるブレンドの状態に近く白濁した状態であって、バインダとしての均質性に劣り、また、これをバインダとして使用して得られるセラミックグリーンシートは十分な強度、密度を発現せず、積層体とした際の接着性が悪くなるという問題があった。
特許文献2に記載されているバインダは、これを用いて成形したグリーンシートの強度が不十分であった。特に、1〜10μmの薄膜と成して用いる場合に、強度が不足する問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、セラミック原料粉末の分散性や焼成時における熱分解性が優れ、1〜10μmの薄膜のセラミックグリーンシートとした際に十分な強度を発現するなど機械的物性が高く、さらに、上述のように積層体とした際の接着性が良好なセラミックグリーンシート成形用バインダを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミックグリーンシート成形用バインダは、(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体成分が、セルロース系樹脂にグラフト重合したグラフト共重合体を含むことを特徴とする。
前記セルロース系樹脂は、イソシアネート基含有ビニルモノマーを有することが好ましい。
前記セルロース系樹脂は、セルロースアセテートブチレートおよび/またはセルロースアセテートプロピオネートであることが好ましい。
前記イソシアネート基含有ビニルモノマーは、2−イソシアナトエチルメタクリレートであることがさらに好ましい。
前記単量体成分は、親水性ビニルモノマーをさらに含有することが好ましい。
【0008】
本発明のセラミックグリーンシート成形用バインダの製造方法は、セルロース系樹脂にイソシアネート基含有ビニルモノマーを反応させてから、(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体成分をグラフト重合させる工程を有することを特徴とする。
前記セルロース系樹脂と前記イソシアネート基含有ビニルモノマーとの合計量を100質量%とした際に、前記セルロース系樹脂94〜99.9質量%に対して、前記イソシアネート基含有ビニルモノマーを0.1〜6質量%反応させることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のセラミックグリーンシート成形用バインダ(以下、シート成形用バインダという。)は、(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体成分が、セルロース系樹脂にグラフト重合したグラフト共重合体を含む。
本発明のセラミックグリーンシート成形用バインダに用いられるセルロース系樹脂としては、例えばセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、セルロースアセテート等が挙げられる。
これらのうち、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが、グリーンシートを薄膜化した際に十分な塗膜強度を得られることより、好ましく用いられる。これらは単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0010】
前記セルロース系樹脂は、イソシアネート基含有ビニルモノマーを有することが好ましい。
イソシアネート基含有ビニルモノマーとしては、イソシアネート基とビニル基とを含有する単量体であれば制限なく使用でき、例えば、2−イソシアナトエチルメタクリレート、ジメチルメタ−イソプロペニルベンジルイソシアネート、香川ケミカル(有)製「V1−1」および「V1−2」などが挙げられ、これらを1種単独で、あるいは、2種以上混合して使用できるが、これらの中では2−イソシアナトエチルメタクリレートが入手容易であり好ましい。
【0011】
セルロース系樹脂にイソシアネート基含有ビニルモノマーを含有させる方法としては、例えば、セルロース系樹脂を酢酸ブチルなどの溶剤に溶解し、ついで、これにイソシアネート基含有ビニルモノマーと、塩基としてトリエチルアミンとを加え、例えば50〜80℃、6〜12時間、撹拌下で反応させる方法が挙げられる。
このようにして塩基の存在下でセルロース系樹脂にイソシアネート基含有ビニルモノマーを反応させると、セルロース系樹脂の水酸基とイソシアネート基含有ビニルモノマーのイソシアネート基がウレタン結合を形成し、その結果、セルロース系樹脂の側鎖にビニル基が導入される。
【0012】
セルロース系樹脂にイソシアネート基含有ビニルモノマーを反応させる比率は、これらの合計量を100質量%とした際に、セルロース系樹脂94〜99.9質量%に対して、前記イソシアネート基含有ビニルモノマーを0.1〜6質量%反応させることが好ましい。イソシアネート基含有ビニルモノマーが0.1質量%未満では、次に行う(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体成分とのグラフト化の程度が低く、ブレンド状態に近くなり、これをバインダとして使用して得られるセラミックグリーンシートは十分な強度、密度、接着性を発現しない場合がある。一方、6質量%を超えると、セルロース系樹脂とイソシアネート基含有ビニルモノマーの反応生成物がゲル化してしまう場合がある。
【0013】
セルロース系樹脂にイソシアネート基含有ビニルモノマーを反応させる方法において用いる塩基としては、トリエチルアミンの他に、例えばピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7などが使用でき、その使用量は、セルロース系樹脂100質量部に対して0.5〜5.0質量部の範囲が好ましい。
また、溶剤としては、酢酸ブチルの他、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサンなどの疎水性溶剤が好適であり、その使用量は、セルロース系樹脂100質量部に対して100〜900質量部の範囲が好ましい。
【0014】
本発明において、セルロース系樹脂にグラフト重合させる単量体成分は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含有する。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらを1種単独で、あるいは、2種以上混合して使用できる。
単量体成分に(メタ)アクリル酸エステルが含まれると、得られたグラフト共重合体をシート成形用バインダとして使用し、これにセラミック原料粉末を配合してスラリーとした際におけるセラミック原料粉末の分散性が良好でスラリーとしての経時的な安定性が優れる。また、このグラフト共重合体をシート成形用バインダとして使用して得られたセラミックグリーンシートは、積層体とした際の接着性が特に良好となる。
【0015】
単量体成分には、親水性ビニルモノマーがさらに含まれることが好ましい。親水性ビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、ジメチルアクリルアミドなどのアミド系単量体などが挙げられる。
単量体成分にこれら親水性ビニルモノマーが含まれると、得られたグラフト共重合体をシート成形用バインダとし、これにセラミック原料粉末を配合してスラリーとした際、セラミック原料粉末の分散性が良好でスラリーとしての経時的な安定性が優れる。また、このグラフト共重合体をシート成形用バインダとして使用して得られたセラミックグリーンシートは、十分な強度、密度を発現するなど機械的物性が高く、シート外観にも優れ、さらに、これを積層体とした際の接着性が良好となる。
単量体成分中における親水性ビニルモノマーの割合は、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
また、単量体成分中には、さらに特性を損なわない範囲で、例えばスチレン、酢酸ビニルなどを加えることができる。
【0016】
また、単量体成分としては、その単量体成分だけを重合させた重合物の理論ガラス転移温度が、−30〜70℃の範囲となるように、(メタ)アクリル酸エステル、さらには親水性ビニルモノマーの種類、組み合わせ、使用量などを設定することが好ましい。このようにして単量体成分を選択すると、セラミックグリーンシート作製時に任意な量の可塑剤を含有させることができ、セラミックグリーンシートを積層した時の強度、密度、接着性をさらに良好とすることができる。なお、理論ガラス転移温度は、下記のFOXの式より求めることができる。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
(ただし、Wiは各単量体の質量分率であり、Tgiは、各単量体のガラス転移温度(K)である。)
【0017】
セルロース系樹脂に単量体成分をグラフト重合させる方法としては、セルロース系樹脂に単量体成分を加え、重合開始剤の存在下において、例えば60〜90℃、6〜15時間の条件で溶液重合する方法が挙げられる。
このとき、セルロース系樹脂にイソシアネート基含有ビニルモノマーを反応させてから、引き続き、反応液中に単量体成分を加えると、セルロース系樹脂に導入されたビニル基が重合開始点となり、これに単量体成分がグラフト重合することで、グラフト化の程度の高いグラフト共重合体を得ることができる。
【0018】
セルロース系樹脂に、(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体成分をグラフト重合させる質量比率には特に制限はないが、例えば、イソシアネート基含有ビニルモノマーを有するセルロース系樹脂100質量部に対して、単量体成分を20〜900質量部の範囲で反応させることが好ましい。20質量部未満では、焼成時の熱分解性と積層体とした際の接着性が低下する場合があり、900質量部を超えると得られるセラミックグリーンシートが脆くなり、十分な強度が発現しなくなる場合がある。
また、重合開始剤としては、2,2−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが適量使用できる。
【0019】
グラフト共重合体の分子量としては特に制限はないが、数平均分子量(Mn)が10,000〜200,000で、質量平均分子量(Mw)が20,000〜400,000で、これらの比(Mw/Mn)が2.0〜40であることが好ましい。Mn、Mw、Mw/Mnがこのような範囲であると、このグラフト共重合体をシート成形用バインダとして使用した際のセラミック原料粉末の分散性が良好となるのでスラリーの経時的安定性が優れ、セラミックグリーンシートは十分な強度、密度、接着性を発現するため好ましい。
【0020】
以上のようにして得られたグラフト共重合体を使用してシート成形用バインダを調製し、さらにそれを使用してセラミックグリーンシートを成形する方法としては、特に制限はなく、公知の方法が挙げられる。例えば、得られたグラフト共重合体に、必要に応じて添加される可塑剤、分散剤、消泡剤などの添加剤を配合し、さらに、酢酸ブチル、n−ブタノール、トルエン、メチルエチルケトン、キシレン、メチルシクロヘキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの有機溶剤およびセラミック原料粉末を、ボールミルなどの混合装置で均一に混合してスラリーを調製し、ついで、このスラリーを離型処理されたPETフィルムなどの支持体にドクターブレードなどで塗布後、有機溶剤を乾燥し、支持体を剥離する方法がある。なお、有機溶剤は1種単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。その他には、スラリーをスプレードライヤーなどで造粒した後、その粒子を乾式プレス法などで成形する方法が挙げられる。
こうして得られたセラミックグリーンシートには、打ち抜き加工などの各種加工が必要に応じて施され、各種セラミックパッケージの製造に使用される。例えば、各種加工後のセラミックグリーンシートに、内部電極を形成するための導電性組成物をスクリーン印刷法などで所定のパターンで印刷し、ついで、これを複数枚重ね加熱圧縮して積層体とし、この積層体を焼成することにより、セラミックグリーンシート中のシート成形用バインダが熱分解、除去され、セラミック多層配線基板が得られる。
【0021】
以上説明したように、このようなシート成形用バインダは、(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体成分がセルロース系樹脂にグラフト重合したグラフト共重合体を含有するので、セラミック原料粉末の分散性や焼成時における熱分解性が優れ、セラミックグリーンシートとした際に十分な強度を発現するなど機械的物性が高く、さらに、積層体とした際の接着性も良好である。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
(グラフト共重合体の調製)
攪拌機、還流冷却器、温度計を備えたガラス製反応容器内に、セルロース系樹脂としてセルロースアセテートブチレート(イーストマンケミカルジャパン(株)製「CAB−533−0.4」、ガラス転移温度:136℃、以下CABと称する)100質量部を、疎水性溶剤として酢酸ブチル400質量部に溶解させた後、塩基としてトリエチルアミン1質量部と、イソシアネート基含有ビニルモノマーとして2−イソシアナトエチルメタクリレート0.5質量部とを加え、反応容器内を撹拌しながら70℃で10時間反応させた。
ついで、この反応液に単量体成分としてエチルメタクリレート235質量部と、重合開始剤としてAIBN1質量部との混合物を加え、反応容器内を撹拌しながら75℃で8時間反応させた。
その後、反応液を室温程度まで冷却し、酢酸ブチルで希釈して、固形分30質量%のグラフト共重合体溶液を得た。
【0023】
得られたグラフト共重合体のMnおよびMw、単量体成分からなる重合物の理論ガラス転移温度(Tg)を以下のようにして求めた。結果を表1に示す。
1)グラフト共重合体のMnおよびMw
ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した。
2)単量体成分からなる重合物の理論ガラス転移温度(Tg)
下記FOXの式より求めた。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
(ただし、Wiは各単量体の質量分率であり、Tgiは、各単量体のガラス転移温度(K)である。)
【0024】
(セラミックグリーンシートの成形)
セラミック原料粉末としてチタン酸バリウム粉末(堺化学工業製、粒子径0.3μm、比表面積4.3m/g、比重6.02)30質量部と、シート成形用バインダとして上記で得られたグラフト共重合体溶液10.6質量部および可塑剤(フタル酸ブチルベンジル)0.92質量部と、分散剤(楠本化成製ED−212)0.3質量部とを配合し、さらに溶剤として酢酸ブチルとn−ブタノールの混合溶剤(酢酸ブチル:n−ブタノール=80:20)を、セラミック原料粉末とシート成形用バインダとの合計(固形分)が60質量%となるように配合して、ボールミルで20時間撹拌混合し、セラミックグリーンシート成形用のスラリーを得た。なお、撹拌メディアとしてはジルコニアビーズを使用した。
ついで、このスラリーを離型処理されたパナック製PETフィルム上にドクターブレードを使用して塗布し、100℃で30分間乾燥し、その後フィルムを剥離して、膜厚20μmのセラミックグリーンシートを得た。
【0025】
なお、得られたセラミックグリーンシート成形用のスラリーを、別途室温にて3日間放置し、粘度が2倍以上に増加したものについてはスラリー安定性が不良と判断し、表5中×で表記した。それ以外のものについては良好とし、○で表記した。
また、得られたセラミックグリーンシートについて、以下の評価、測定を行った。結果を表5に示す。
1)破断強度、伸度
破断強度および伸度は、引張り試験機を用いて測定環境23℃、相対湿度65%において、シート形状を幅20mm、長さ30mm、厚さ20μmとし、引張り速度10mm/分で測定した。
2)密度
アルキメデス法によって測定した。
【0026】
3)熱分解性
得られたセラミックグリーンシートを試料とし、これを熱重量分析(TGA)を使用して窒素雰囲気下、10℃/minで500℃まで昇温し、その際の質量変化から減量率(%)を求めた。
減量率(%)=(試料質量−昇温後の試料質量)×100/試料質量
減量率が11.5%以下のものを熱分解性が不良と判断し、表5において×で表記した。減量率が11.5%を超えるものを熱分解性が良好とし、○で表記した。
4)薄膜での剥離試験
上記のセラミックグリーンシートと同様の方法でPETフィルム上に膜厚5μmの薄膜を形成したものを、幅15mmに切断し、その端部にセロハンテープ(登録商標)を貼り付け、セロハンテープを180°の角度で引いて、PETフィルムから薄膜の剥がれる距離を測定した。
○:10cm以上剥離した
×:10cm未満しか剥離しない
5)接着性
得られたセラミックグリーンシートを20枚積層し、60℃、1MPa、1min.の条件で加熱・加圧して、シート同士を接着させた後、この積層体をシートの面に対して垂直に切断し、その切断面を観察した。
○:シートの接着部が認められず、切断面が均一である。
×:シートの接着部が認められ、切断面が不均一である。
【0027】
[実施例2〜15、比較例1〜3]
(グラフト共重合体の調製)
セルロース系樹脂としてCABと、イソシアネート基含有ビニルモノマーとして2−イソシアナトエチルメタクリレートとの配合部数(質量部数)と、単量体成分の種類および配合量を表1〜4に記載のようにした以外は、実施例1と同様にしてグラフト共重合体溶液を得た。
また、別に比較例1では、CABを酢酸ブチルに溶解し、固形分30質量%とした溶液(以下、CAB溶液と称する)を作製した。比較例2では、単量体成分のみを共重合した固形分30質量%の共重合体溶液(以下、アクリル樹脂溶液と称する)を作製した。比較例3では、比較例1で作製したCAB溶液と、比較例2で作製したアクリル樹脂溶液を混合したのみの溶液(以下、CAB/アクリル樹脂ブレンドと称する)を作製した。
ついで、得られたグラフト共重合体(ただし、比較例1ではCAB溶液、比較例2ではアクリル樹脂溶液、比較例3ではCAB/アクリル樹脂ブレンド)のMnおよびMwを、実施例1と同様にして測定、評価した。結果を表1〜4に示す。
【0028】
(セラミックグリーンシートの成形)
ついで、このグラフト共重合体溶液(ただし、比較例1ではCAB溶液、比較例2ではアクリル樹脂溶液、比較例3ではCAB/アクリル樹脂ブレンド)を使用し、各成分の配合部数を表5〜8に示したようにした以外は、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートを得た。
そして、得られたシート成形用バインダのスラリー安定性を、実施例1と同様に評価し、得られたセラミックグリーンシートについても実施例1と同様にして各種評価、測定を行った。結果を表5〜8に示す。
【0029】
【表1】
Figure 2005001911
【0030】
【表2】
Figure 2005001911
【0031】
【表3】
Figure 2005001911
【0032】
【表4】
Figure 2005001911
【0033】
【表5】
Figure 2005001911
【0034】
【表6】
Figure 2005001911
【0035】
【表7】
Figure 2005001911
【0036】
【表8】
Figure 2005001911
【0037】
表中の略号は以下の内容を示す。
CAB:セルロースアセテートブチレート
2−IEMA:2−イソシアナトエチルメタクリレート
n−BMA:n−ブチルメタクリレート
i−BMA:イソブチルメタクリレート
EMA:エチルメタクリレート
MA:メチルアクリレート
2−EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
LMA:n−ラウリルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
DMMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート
【0038】
表1〜8より明らかなように、実施例においてはシート成形用バインダのスラリー安定性が良好であり、得られたシートにおけるバインダの熱分解性が良好であり、得られたシートの機械的物性が高く、さらにシートの接着性が優れていた。
一方、CAB溶液をシート成形用バインダとして使用した比較例1は、得られたシートにおける熱分解性が悪く、シート密度が低かった。アクリル樹脂溶液をバインダとして使用した比較例2は、薄膜の剥離性に劣っていた。
CAB溶液と、アクリル樹脂溶液との混合溶液(ブレンド)をバインダとして使用した比較例3では、シートの外観が不良となり、シートの評価が不可能であった。このことは、CABとアクリル樹脂の相溶性が低いためと考えられた。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のシート成形用バインダによれば、セラミック原料粉末の分散性や焼成時における熱分解性が優れ、1〜10μmの薄膜のセラミックグリーンシートとした際に十分な強度を発現するなど機械的物性が高く、さらに、積層体とした際の接着性が良好なセラミックグリーンシート成形用バインダを提供することができる。

Claims (7)

  1. (メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体成分が、セルロース系樹脂にグラフト重合したグラフト共重合体を含むことを特徴とするセラミックグリーンシート成形用バインダ。
  2. 前記セルロース系樹脂は、イソシアネート基含有ビニルモノマーを有することを特徴とする請求項1に記載のセラミックグリーンシート成形用バインダ。
  3. 前記セルロース系樹脂は、セルロースアセテートブチレートおよび/またはセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックグリーンシート成形用バインダ。
  4. 前記イソシアネート基含有ビニルモノマーは、2−イソシアナトエチルメタクリレートであることを特徴とする請求項2または3に記載のセラミックグリーンシート成形用バインダ。
  5. 前記単量体成分は、親水性ビニルモノマーをさらに含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート成形用バインダ。
  6. セルロース系樹脂にイソシアネート基含有ビニルモノマーを反応させてから、(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体成分をグラフト重合させる工程を有することを特徴とするセラミックグリーンシート成形用バインダの製造方法。
  7. 前記セルロース系樹脂と前記イソシアネート基含有ビニルモノマーとの合計量を100質量%とした際に、前記セルロース系樹脂94〜99.9質量%に対して、前記イソシアネート基含有ビニルモノマー0.1〜6質量%を反応させることを特徴とする請求項6に記載のセラミックグリーンシート成形用バインダの製造方法。
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