JP2005000329A - 芳香器及び吸上揮散部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】脱臭効果に優れた芳香器及び芳香器用吸上揮散部材を提供すること。
【解決手段】芳香器1は、上部に開口部2を有する芳香液容器3と、芳香液容器3内に収容された芳香液4と、吸上部6aと揮散部6bとで構成され、吸上部6bの少なくとも一部が芳香液4に浸漬され、揮散部6bが開口部2から空気中に露出可能に設けられた吸上揮散部材6とを含んで構成され、吸上揮散部材6のうち少なくとも揮散部6bが、その内部に粒状の活性炭を含んでいる。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香器及び芳香器用の吸上揮散部材に関し、特に、脱臭効果に優れた芳香器及び吸上揮散部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
家庭やマイカー等の室内空間の臭気による不快感をなくし、快適な空間を生み出すために、芳香剤を自然に揮散させる小型の芳香器が広く使用されている。
【0003】
この芳香器には、ゲル状、固形状、液状などの芳香剤が用いられている。液状の芳香剤(芳香液)を用いる芳香器は、一般に、芳香液を収納する上部に開口部を有する容器と、一端部が芳香液に浸され、他端部が容器の開口部から室内空間部に露出可能な芳香液の吸上揮散部材を含んで構成されている。吸上揮散部材による吸上揮散には、通常毛細管現象が利用されており、吸上部で芳香液を吸い上げ、揮散部で空気中に芳香液を揮散させるようになっている。そのため、吸上揮散部材には、例えば、フエルトなどの不織布、パルプや合成繊維等の繊維質の材料が軽く固められた吸水性のあるものが利用されている。
【0004】
図5は、従来の芳香器の1例であり、本出願人が提案した「薬剤揮散用容器」を示す図であり、(a)は全体の構造を示す断面図、(b)は(a)に示した保持枠に、帯状の吸上揮散部材を取り付けた状態を示す断面図である(特許文献1)。図5(a)に示したように、この薬剤揮散用容器1は、薬剤収納容器3の上端の開口部2にキャップ7が螺合されている。キャップ7には、その上端部で回転可能に連結された心材(吸上揮散部材)の保持枠8が取り付けられている。また、上端部には、嵌合孔9aが設けられた連結部9が形成されており、キャップ7の頂部内面から突き出して設けられたボス7aに嵌合孔9aを嵌合することによって、回転可能に連結されている。ボス7aは、先端頭部7bが、三つ割り状態の爪形に成形され、各爪の外面には、戻り止めの段部7cが形成されている。したがって、嵌合孔9aを先端頭部7bに圧入すれば、段部7cが、連結部9の下面外周縁と係合して軸方向には抜け出ることなく、回転可能になっている。連結部9の下面両側には、補強板9bが形成され、この補強版9bからは、容器3の内部下方まで延びる外枠8aが形成されている。この外枠8aの下端部には、外枠から外方に突出する係止部8bが形成され、保持枠8を引き上げる際、保持枠8が容器3の首部14に係止し、保持枠8が抜け出ないようになっている。
【0005】
保持枠8への吸上揮散部材5の取り付け方の1例は、図5(b)に示したとおりであり、吸上揮散部材5のうち、符号5aで示す部分が吸上部、符号5bで示す部分が揮散部である。この吸上揮散部材5が取り付けられた保持枠8を、芳香液が収容された薬剤収納容器1に取り付け(図5(a)参照)、保持枠8を引き上げることにより、芳香液が空気中に揮散するようになっている。
【0006】
芳香液の揮散器としては、その他のいくつかのタイプが提案されている(例えば、特許文献2、3)。
【0007】
上記の芳香液の揮散器を用いることによって、芳香液を揮散させることが可能であり、室内空間を芳香剤の臭いで満たすことができる。しかし、悪臭がある場合には、芳香剤で悪臭を消すことは容易ではない。
【0008】
【特許文献1】
登録実用新案第3020459号公報
【0009】
【特許文献2】
実用新案公報昭42−21280号公報
【0010】
【特許文献3】
米国特許第2616759号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の課題を解決するためになされたものであって、液体の芳香液を用いる、脱臭効果に優れた芳香器及び芳香器用吸上揮散部材を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段及び効果】
本発明に係る芳香器(1)は、上部に開口部を有する芳香液容器と、該芳香液容器内に収容された芳香液と、吸上部と揮散部とを備え、前記吸上部の少なくとも一部が前記芳香液に浸漬され、前記揮散部が前記開口部から空気中に露出可能に設けられた吸上揮散部材とを含んで構成され、該吸上揮散部材のうち少なくとも前記揮散部が、粒状の活性炭を含んでいることを特徴としている。なお、揮散部と吸上部は、繊維層が連続した構造でもよく、吸上部を備えた部分と揮散部を備えた部分とがつなぎ合わされたものでもよい。
【0013】
上記の芳香器(1)によれば、吸上揮散部材のうち少なくとも揮散部に活性炭を含んでいるので、芳香効果に加え、優れた脱臭効果が得られる。したがって、室内空間などに悪臭がある場合でも、悪臭を除去することができるとともに芳香を漂わせることが可能であり、快適な室内空間を生み出すことができる。
【0014】
また、本発明に係る芳香器(2)は、上記の芳香器(1)において、前記揮散部が、表面及び裏面の被覆層と、これらの被覆層に挟まれた繊維層とで構成された帯状であり、該繊維層に前記粒状の活性炭が分散していることを特徴としている。なお、活性炭の一部が、帯状の繊維層の側断面、又は被覆層の一部から露出することがある。
【0015】
上記の芳香器(2)によれば、活性炭を含む繊維層の両面が被覆材によって保護されているので、繊維層の繊維や活性炭の脱落が防止される。したがって、吸上揮散部材のハンドリングが容易であるとともに、活性炭が脱落する恐れが少ないので、活性炭の脱臭効果を有効に発揮させることができる。
【0016】
また、本発明に係る芳香器(3)は、上記の芳香器(2)において、前記繊維層が熱融着性繊維を含み、該熱融着性繊維の熱融着により、前記繊維質材料が接着され、かつ前記被覆層と前記繊維層とが接着されていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る芳香器(4)は、上記の芳香器(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記粒状の活性炭の表面の一部が、前記熱融着性繊維の熱融着により繊維層に固定されていることを特徴としている。
【0018】
上記の芳香器(3)又は(4)によれば、熱融着性繊維を利用して繊維質材料又は活性炭の一部と繊維質材料とを接着し繊維層の形成が行われているので、繊維層の形成が容易であるとともに、繊維層の膨潤率の調整が容易である。したがって、活性炭が脱落しにくい条件の選定等が容易である。
【0019】
また、本発明に係る芳香器(5)は、上記の芳香器(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記活性炭の径が、150〜850μmの範囲であることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る芳香器(6)は、上記の芳香器(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記活性炭の細孔径が、8〜30Åの範囲であることを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係る芳香器(7)は、上記の芳香器(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記繊維層に含まれる活性炭の量が、繊維層の質量当たり50%以下の範囲であることを特徴としている。
【0022】
上記の芳香器(5)〜(7)によれば、活性炭の脱臭効率が最適な条件が選ばれているので、芳香器の脱臭効率をさらに向上させることができる。
【0023】
また、本発明に係る芳香器(8)は、上記の芳香器(1)〜(7)のいずれかにおいて、前記吸上部に、可撓性を高める弱部が設けられていることを特徴としている。
【0024】
上記の芳香器(8)によれば、吸上部の可撓性が高いので、吸上部が芳香液容器の中でフレキシブルに伸縮する。したがって、使用時に揮散部を引き上げるタイプの芳香器にもっとも適している。
【0025】
本発明に係る帯状の芳香器用吸上揮散部材は、揮散部と吸上部とを含んで構成され、少なくとも前記揮散部が、表面及び裏面の被覆層と、これらの被覆層に挟まれた繊維層とで構成され、該繊維層が、その内部に分散した粒状の活性炭を含んでいることを特徴としている。
【0026】
上記の芳香器用吸上揮散部材によれば、芳香器にこの吸上揮散部材を適用した場合には、吸上揮散部材のうち少なくとも揮散部に活性炭を含んでいるので、芳香効果に加え、優れた脱臭効果が得られる。したがって、室内空間などに悪臭がある場合でも、悪臭を除去することができるとともに芳香を漂わせることが可能であり、快適な室内空間を生み出すことができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る芳香器及び芳香器用の吸上揮散部材を、添付図面を参照しつつ具体的に説明する。説明に用いる図面においては、同一又は同種の部分に同じ番号を付して説明を省略することがある。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係る芳香器の1例を示す斜視図であり、(a)は透明な容器の内部を示す使用前の状態、(b)は使用時の状態を示す図である。図1に示した芳香器1は、芳香液容器3、支持枠8、キャップ7等の器具の構成は、図5に示した芳香器1とほぼ同様であるので、構成に関する説明を省略する。ただし、吸上揮散部材(図1は符号6、図5は符号5)が相違する。
【0029】
また、図2は、芳香器1に用いられる吸上揮散部材6の1例を示す図であり、(a)は吸上揮散部材6の全体を示す斜視図、(b)は吸上部の構造を示す断面図である。なお、図2(b)は、図2(a)に示した2A−2A’切断線における断面図である。
【0030】
吸上揮散部材6は、芳香液4を吸い上げる吸上部6aと揮散部6bとを含んで構成されている。吸上揮散部材6の全体は、芳香液4の吸上・揮散効果に優れた材料で構成されており、主として植物繊維やパルプなどの天然繊維、人造繊維又はそれらの混合繊維などの繊維質材料で構成されている。また吸上揮散部材6の形状は帯状であり、吸上部6aの方が揮散部6bより幅が狭くなっている。吸上部6aの幅が狭いのは、図1(a)に示したように、非使用時には吸上部6aが折りたたまれた状態、使用時には伸びた状態となるようにするためである。また、揮散部6bの幅が広いのは、芳香液4が揮散しやすいようにするためである。
【0031】
図2(b)に示したように、揮散部6bは、表面(図2(b)における上面及び下面)の薄い被覆層11と内部の繊維層12とで構成されており、繊維層12は粒状の活性炭13を含んでいる。被覆層11は、薄いレーヨンであり、内部の繊維層12を構成する繊維質材料や粒状の活性炭13が、表面から脱落しないように、繊維層12を保持するために設けられている。この繊維層12は、上記の繊維質材料の中に混合され、バインダーとしての働きをする熱融着性の繊維によって、全体の形が不織布状に保持されている。粒状の活性炭13を含む繊維層12の形成方法は、後に詳しく説明する。
【0032】
活性炭13は、繊維層12内に分散してして存在しており、この活性炭13の作用によって、芳香器1の脱臭効果が向上する。すなわち、揮散部6bから、芳香液4に溶けている香料の芳香が空気中に広がっていくとともに、空気中の悪臭の原因となっている悪臭成分が活性炭13に吸着される。したがって、香料による芳香消臭効果に加えて、活性炭13による強力な脱臭効果が発揮される。
【0033】
上記の実施の形態の場合には、芳香器1用の器具として、図5に示した本出願人が既に開示した器具を使用する例を示した。しかし、図2、図3に示した吸上揮散部材6、61、62を適用する器具は、図5に示したタイプに限定されるものではない。例えば、実用新案公報昭42−21280号公報に開示されている器具、すなわち、鋼線等の弾性素材で形成された支持体の頭部に吸上揮散部材の一端を取り付け、支持体と吸上揮散部材を容器内に入れ、吸上揮散部材の他端部が芳香液に浸漬するようにし、支持体を上下させることによって揮散部を容器に対して出し入れできるように構成されている器具など、芳香液4を利用するもので、かつ吸上揮散部材を用いる種々の器具に適用することができる。
【0034】
上記のように構成された実施の形態に係る芳香器1によって、脱臭効果に優れた芳香器を得ることができる。しかし、活性炭13の粒子の大きさ、活性炭13の細孔径の大きさ、繊維層12の膨潤性、繊維層12内の活性炭13の割合など、下記のような適正な値を選択することにより、さらに脱臭効果を向上させることができる。
【0035】
活性炭13の粒子の大きさは、150〜850μm(100〜18.5メッシュ)の範囲が好ましく、210〜620μm(70〜20メッシュ)(ただし、いずれも篩下95質量%以上)の範囲がさらに好ましい。粒子が細かすぎると繊維層内から脱落しやすく、粒子が大きすぎると活性炭の量の割りに表面積が小さいため、十分な脱臭効果が得られない場合があるからである。
【0036】
活性炭13の細孔径の大きさは、8〜30Åの範囲が好ましい。細孔径が大きすぎると、芳香液4中の処方成分が活性炭によって吸着されるために十分な脱臭効果を得ることができない。一般に、活性炭の微細な孔は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)によって、ミクロ孔(直径20Å以下)、メソ孔(直径20〜500Å)、マクロ孔(直径500Å以上)に分類されている。本明細書でいう活性炭13の細孔径8〜30Åの範囲とは、ミクロ孔が多く、メソ孔やマクロ孔が少ない活性炭を意味する。
【0037】
また、繊維層12の膨潤率は、0〜15%の範囲が好ましく、0〜7%の範囲がさらに好ましい。膨潤率が高すぎると繊維層内の活性炭が脱落しやすい傾向がある。一方、膨潤率が低い場合には、活性炭13が脱落しにくいが、芳香液4の種類によっては揮散効果が低くなる場合もある。
【0038】
なお、本明細書でいう膨潤率は、活性炭13の脱落しやすさを表す1つの指標であり、その測定方法は下記のとおりである。
(1)揮散部(被覆層11を含む)6bの試料3個を準備する。大きさ任意であるが一辺の大きさは50mm程度であることが望ましい。
(2)試料の厚さtをMitutoyo社製定圧厚さ測定機で測定する。荷重は、7.0g/mとする。
(3)試料を蒸留水に30分間浸漬する。
(4)試料を蒸留水から取り出し、上記(2)と同じ条件で、試料の厚さtを測定する。
(5)膨潤率R(%)を、R={(t−t)/t}×100によって求める。
【0039】
膨潤率によって、活性炭13の脱落率が変わる理由は次のとおりである。前述のように、繊維層12は、繊維質の材料がバインダーである熱融着性繊維によって不織布状の形に保持されている。繊維層12内の熱融着性繊維の割合が多い場合には、繊維層12は全体の繊維質材料が密に接着されるため、活性炭13は繊維層12内にしっかりと保持される。そのために脱落しにくい。また、液体に浸漬した場合には、繊維質材料が強く接着されているので膨潤しにくい。膨潤率が低いと、揮散部6bにおける芳香液4の揮散性が低くなること、活性炭13の脱臭効果が小さくなることが考えられる。したがって、適度の膨潤率であることが望ましい。一方、熱融着性繊維が少ない場合にはその逆で、膨潤率が大きくなる代わりに、活性炭13が脱落する傾向も大きくなる。
【0040】
したがって、活性炭13の脱落を抑制し、揮散部6aの揮散性等を確保するためには、適度な膨潤率を選択することが好ましい。ただし、適度な膨潤率は、活性炭の大きさ(粒径)、繊維層12を構成する繊維質材料の種類や特性、バインダーである熱融着性繊維の特性等によって変わるものであるので、それぞれの条件に合わせて選択することが好ましい。1例として、活性炭13が脱落する割合が低い膨潤率は、0〜15%の範囲である。
【0041】
繊維層12内の活性炭13の割合は、繊維層12の質量当たり、10〜50g/100gの範囲が好ましい。活性炭13の割合が多すぎると、脱落する活性炭13が多くなり、少なすぎると脱臭効果が十分に発揮されないので、上記の範囲とするのがよい。ただし、好ましい活性炭13の割合は、膨潤率や活性炭13の大きさなどによって変わるので、それぞれの繊維層12の条件に合わせて選択することが望ましい。
【0042】
図2に示した吸上揮散部材6は、吸上部6aを含む全体に活性炭を含んでいてもよい。すなわち、吸上部6aも、図2(b)に示したものと同様な断面構造でもよい。このタイプの場合には、吸上揮散部材6の全体を同じ材料で構成することができるので、製造が容易である。
【0043】
ただし、吸上部6aは、芳香液4の中に浸漬される部分であり、空気中には露出しない部分である。したがって、脱臭作用を持つ必要がないので、活性炭13を含む必要がない部分である。そのため、吸上部6aは、活性炭を含まない吸上性を有する材料で構成してもよい。例えば、活性炭13を含む揮散部6bと同様な繊維質材料、又は、汎用されている不織布、編織物、発泡ウレタンなどの合成樹脂製のスポンジ材料とし、吸い上げた液が揮散部6bに浸透するように接合すればよい。
【0044】
また、吸上部6aは、図1(a)に示したように、使用前の状態、すなわちキャップ7が芳香液容器3を密封している状態では折りたたまれた形で、キャップ7が引き上げられた状態では、図1(b)に示したように伸びた形になりやすい方がよい。そのために、吸上部6bは、折りたたまれた形から伸びた形、またはその逆に形が変わりやすい性質、すなわち可撓性が大きいことが好ましい。
【0045】
図3は、吸上揮散部材6の別の実施の形態に係る吸上部を示す部分拡大斜視図であり、(a)は吸上部に長さ方向にほぼ直角に弱部を設けた例、(b)は吸上部の長さ方向に弱部を設けた例である。図3(a)に示したように、吸上揮散部材61の場合には、吸上部61aの両側部に、所定の間隔をあけて、長さ方向に対してほぼ直角の向きに、弱部である切り込み61cが設けられている。この弱部61cを設けることにより、吸上部61aの可撓性を著しく向上させることができる。
【0046】
また、図3(b)に示したように、吸上揮散部材62の場合には、吸上部62aの長さ方向に、弱部である切れ目62cが設けられており、吸上部62aが細い紐状になっている。このように、吸上部62aを細い紐状とすることにより、吸上部61aの可撓性を著しく向上させることができる。
【0047】
吸上揮散部材6、61、62の活性炭13を含む繊維層12の製造方法は次のとおりである。繊維層12を構成する主繊維は、前述のように植物繊維やパルプなどの天然繊維、人造繊維又はそれらの混合繊維などであり、はじめに、これらの繊維質材料を砕く。この繊維質材料に熱融着性繊維をできるだけ均一に混合し、さらに活性炭13をできるだけ均一に混合する。この混合物により、例えば、シート状のウエブを形成し、さらにその両面に被覆層11用の薄いレーヨンを重ね合わる。次に、被覆層11でサンドイッチされたウエブを熱融着性繊維の溶融温度より高い温度で、その他の材料が熱による損傷を受けない温度以下に加熱する。この加熱によって、繊維層12の形が保持された吸上揮散部材6、61、62の繊維層12を形成することができる。
【0048】
熱融着性繊維としては、例えば、高密度ポリエチレン繊維(融点約131℃)、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維等を使用することができる。繊維質材料と熱融着性繊維との混合割合は、前述のように、吸上揮散部材6(または揮散部6a)の膨潤率に影響を及ぼすので、膨潤率を基準として混合割合を決定するのがよい。一般的には、繊維質材料約98〜60質量%、熱融着性繊維約2〜40質量%の範囲から選ぶことが好ましい。
【0049】
バインダーには、熱融着性繊維以外の液状のバインダーを利用することもできる。しかし、液状のバインダーを繊維質材料に散布し乾燥接着させる方法では、バインダーが活性炭13の表面を覆い、活性炭の脱臭機能を低下させる可能性がある。したがって、バインダーには常温で固体のバインダーが適している。熱融着性繊維は固体のバインダーの1種であり、同様な接着機能を有するものであれば、熱融着性繊維以外のバインダーを用いてもよい。
【0050】
粒状の活性炭13と繊維質材料との均一な混合方法の1つに次の方法がある。はじめに、繊維質材料をほぐして、できるだけ均一な厚みに広げる。次に、その上に活性炭を散布する。その上に、さらに繊維質材料を薄く重ねる。所定の厚さになるまで、これを繰り返すことにより、活性炭13が全体に均一に分散した繊維層12を形成することができる。
【0051】
【実施例】
本発明に係る芳香器1に用いられる吸上揮散部材6、61、62の脱臭効果を調査した。なお、比較用として、活性炭を含まない従来の吸上揮散部材の脱臭効果も調査した。試験方法は、次のとおりである。
【0052】
試験に用いた悪臭源は、メチルメルカプタン及びアセトアルデヒドの2種類とした。また、芳香液4の組成(配合割合:単位質量%)は、香料:1%、溶剤(クラレソルフィット):1%、界面活性剤(ベネロールSP−18、松本油脂製):1.5%、残部:イオン交換水(96.5%)とした。
【0053】
吸上揮散部材は、図2(b)に示した断面構造を有するもので、厚さ4mm、活性炭13の割合は繊維層12に対して、13.6g/100gとした。また、試験用の吸上揮散部材(試料)の大きさは、縦50mm、横100mmの長方形とした。
【0054】
脱臭効果を測定する際には、初めに試料に芳香液10gを含浸させ、分析用エアバッグ内に入れ、バッグ内の容積が6リットルになるように空気で調整した。その後、バッグ内に、悪臭源としてメチルメルカプタン又はアセトアルデヒドを導入し、メチルメルカプタンは40ppm、アセトアルデヒドは100ppmの濃度に調整した。その状態で、時間経過に伴うメチルメルカプタン又はアセトアルデヒドの濃度の変化をガステック社製検知管により測定した。
【0055】
測定結果を図4に示す。図4(a)はアセトアルデヒドに関する測定結果、図4(b)はメチルメルカプタンに関する測定結果である。なお、図4(a)、(b)における測定値を示すマークは、■が活性炭を含む本発明に係る吸上揮散部材、□が活性炭を含まない従来の吸上揮散部材を用いた場合を示している。
【0056】
図4(a)から明らかなように、アセトアルデヒドの場合には、脱臭率は4時間経過後約42%、24時間経過後約57%に達している。また、図4(b)に示されているように、メチルメルカプタンの場合には、脱臭率は4時間経過後47%、24時間経過後約67%、96時間経過後には89%に達している。このように、本発明に係る吸上揮散部材は、優れた脱臭効果を有することが確認された。
【0057】
なお、図4(a)、(b)に示した活性炭を含まない従来の吸上揮散部材の場合にも脱臭効果が認められる。今回の試験の場合には、アセトアルデヒドに対しては最高35%、メチルメルカプタンに対しては最高約65%(96時間経過後)という結果が得られている。本発明に係る吸上揮散部材の脱臭率は、従来の吸上揮散部材に比べると大幅に高く、本発明に係る吸上揮散部材は、優れた脱臭効果を有することが裏付けられた。
【0058】
なお、活性炭を含まない場合にも脱臭効果が認められる理由としては、アセトアルデヒド、メチルメルカプタンが水に溶解する性質を有しており、水による脱臭効果が現れているものと考えられる。悪臭成分には水に溶解しにくいものもあるので、多くの悪臭環境に対して、かつ効果的に脱臭を行うためには、本発明に係る吸上揮散部材が有効であることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る芳香器の1例を示す斜視図であり、(a)は透明な容器の内部を示す使用前の状態、(b)は使用時の状態を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る芳香器に用いられる吸上揮散部材の1例を示す図であり、(a)は吸上揮散部材の全体を示す斜視図、(b)は吸上部の構造を示す断面図である。
【図3】吸上揮散部材の別の実施の形態に係る吸上部を示す部分拡大斜視図であり、(a)は吸上部に長さ方向にほぼ直角に弱部を設けた例、(b)は吸上部の長さ方向に弱部を設けた例である。
【図4】吸上揮散部材の脱臭効果を測定した結果を示すグラフであり、(a)はアセトアルデヒドに関する測定結果、図4(b)はメチルメルカプタンに関する測定結果である。
【図5】従来の芳香器の1例を示す図であり、(a)は全体の構造を示す断面図、(b)は(a)に示した保持枠に、帯状の吸上揮散部材を取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 芳香器
2 開口部
3 芳香液容器
4 芳香液
5、6、61、62 吸上揮散部材
6a、61a、62a 吸上部
6b、61b、62b 揮散部
7 キャップ
8 支持枠
11 被覆層
12 繊維層
13 活性炭

Claims (9)

  1. 開口部を有する芳香液容器と、
    該芳香液容器内に収容された芳香液と、
    吸上部と揮散部とを備え、前記吸上部の少なくとも一部が前記芳香液に浸漬され、前記揮散部が前記開口部から空気中に露出可能に設けられた吸上揮散部材とを含んで構成され、該吸上揮散部材のうち少なくとも前記揮散部が、粒状の活性炭を含むことを特徴とする芳香器。
  2. 前記揮散部が、表面及び裏面の被覆層と、これらの被覆層に挟まれた繊維層とで構成された帯状であり、該繊維層に前記粒状の活性炭が分散していることを特徴とする請求項1に記載の芳香器。
  3. 前記繊維層が熱融着性繊維を含み、該熱融着性繊維の熱融着により、前記繊維質材料が接着され、かつ前記被覆層と前記繊維層とが接着されていることを特徴とする請求項2に記載の芳香器。
  4. 前記粒状の活性炭の表面の一部が、前記熱融着性繊維の熱融着により繊維層に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の芳香器。
  5. 前記活性炭の径が、150〜850μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の芳香器。
  6. 前記活性炭の細孔径が、8〜30Åの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の芳香器。
  7. 前記繊維層に含まれる活性炭の量が、繊維層の質量当たり50%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の芳香器。
  8. 前記吸上部に、可撓性を高める弱部が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の芳香器。
  9. 揮散部と吸上部とを含んで構成された帯状の芳香器用吸上揮散部材であって、
    少なくとも前記揮散部が、表面及び裏面の被覆層と、
    これらの被覆層に挟まれた繊維層とで構成され、
    該繊維層が、その内部に分散した粒状の活性炭を含んでいることを特徴とする芳香器用吸上揮散部材。
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