JP2004533266A - 複製ベクターに基づく色素体内での遺伝子発現 - Google Patents
複製ベクターに基づく色素体内での遺伝子発現 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004533266A JP2004533266A JP2003510816A JP2003510816A JP2004533266A JP 2004533266 A JP2004533266 A JP 2004533266A JP 2003510816 A JP2003510816 A JP 2003510816A JP 2003510816 A JP2003510816 A JP 2003510816A JP 2004533266 A JP2004533266 A JP 2004533266A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- sequence
- dna
- plastome
- plastid
- replication
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
- C12N15/63—Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
- C12N15/79—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
- C12N15/82—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for plant cells, e.g. plant artificial chromosomes (PACs)
- C12N15/8201—Methods for introducing genetic material into plant cells, e.g. DNA, RNA, stable or transient incorporation, tissue culture methods adapted for transformation
- C12N15/8209—Selection, visualisation of transformants, reporter constructs, e.g. antibiotic resistance markers
- C12N15/821—Non-antibiotic resistance markers, e.g. morphogenetic, metabolic markers
- C12N15/8212—Colour markers, e.g. beta-glucoronidase [GUS], green fluorescent protein [GFP], carotenoid
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
- C12N15/63—Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
- C12N15/79—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
- C12N15/82—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for plant cells, e.g. plant artificial chromosomes (PACs)
- C12N15/8201—Methods for introducing genetic material into plant cells, e.g. DNA, RNA, stable or transient incorporation, tissue culture methods adapted for transformation
- C12N15/8209—Selection, visualisation of transformants, reporter constructs, e.g. antibiotic resistance markers
- C12N15/821—Non-antibiotic resistance markers, e.g. morphogenetic, metabolic markers
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
- C12N15/63—Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
- C12N15/79—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
- C12N15/82—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for plant cells, e.g. plant artificial chromosomes (PACs)
- C12N15/8201—Methods for introducing genetic material into plant cells, e.g. DNA, RNA, stable or transient incorporation, tissue culture methods adapted for transformation
- C12N15/8214—Plastid transformation
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
- C12N15/63—Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
- C12N15/79—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
- C12N15/82—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for plant cells, e.g. plant artificial chromosomes (PACs)
- C12N15/8241—Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology
- C12N15/8242—Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with non-agronomic quality (output) traits, e.g. for industrial processing; Value added, non-agronomic traits
- C12N15/8257—Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with non-agronomic quality (output) traits, e.g. for industrial processing; Value added, non-agronomic traits for the production of primary gene products, e.g. pharmaceutical products, interferon
Abstract
Description
【0001】
本発明は、一般に植物のバイオテクノロジーに関し、より詳細には、色素体の形質転換のための新規な方法及びベクターに関する。具体的には、本発明は、植物色素体の遺伝的形質転換方法、その方法のためのベクター、及び本発明の方法によって得られ得る植物又は植物細胞を提供する。また、本発明は、本発明の方法に有用な複製能力、好ましくは自己複製能力をもたらす配列を含むベクターに関する。本発明は、プラストーム(plastome)上で形質転換されており、選択マーカーを欠くトランスジェニック植物又は植物細胞の生成方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
一般に認められている知識によれば、2つのクラスの細胞小器官、すなわち色素体及びミトコンドリアは、初期には独立していたが、別個の内共生現象によって今日の真核細胞の先祖に取り込まれた、原核生物に由来する(Gray、1991)。したがって、これらの小器官は、それら自体のDNAと、メッセンジャーRNA、リボソーム及び遺伝情報の解読に要する少なくともいくつかの必要なtRNAの形のDNA転写物を含んでいる(Marechal−Drouard等、1991)。
【0003】
内共生による取り込み直後は、これらの小器官は、原核生物の生命維持に必要な要素すべてを含むので遺伝的に自律しているが、遺伝情報を細胞核に伝達することによって進化の間にこの自律性が低下した。それでも、それらの遺伝情報は十分複雑であり、現代の細胞小器官を遺伝子工学の魅力的なターゲットにしている。色素体は特にそうであり、それは植物細胞内部でそれらの主要な機能である光合成に必要なタンパク質の約50%を依然としてこれらの小器官がコードしているからである。色素体は、それらのリボソームRNA、それらのtRNAの大部分、及びリボソームタンパク質もコードしている。合計すると、プラストーム中の遺伝子の数は120程度である(Palmer、1991)。しかし、色素体中にあるタンパク質の大部分は、核/サイトゾルの遺伝区画から移入されたものである。
【0004】
色素体は遺伝的に形質転換することができる
分子クローニング技術全般の発達にともない、まもなく形質転換により高等植物を遺伝的に改変することが可能になった。植物の形質転換において主に強調されるのは、以前も今も核の形質転換であり、それは遺伝子(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の場合約26,000であり、その完全な配列が最近発表された(The Arabidopsis Genome Initiative、2000))の大部分が細胞核に存在するからである。核の形質転換は、アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)などの生物学的ベクターが利用可能であり、それを改変して核の効率的な形質転換が可能であるので、容易に実施することができた(Galvin、1998)。また、核では外来の核酸をより直接的に利用することができ、一方、小器官は一般にDNAなどの巨大分子を通さない2つのエンベロープ膜に包囲されている。
【0005】
色素体を形質転換できることは極めて望ましいものである。というのは、導入遺伝子を極めて高いレベルで発現する可能性を有するこれらの小器官において、色素体が大きな遺伝子量を利用できるからである。また、色素体によってコードされた形質が花粉伝播性でなく、したがって、導入遺伝子が不注意によりトランスジェニック植物の近縁野生種に洩れる潜在的リスクが大いに減少するので、色素体の形質転換は魅力的である。色素体形質転換の他の潜在的な利点は、ポリシストロン単位として複数遺伝子の同時発現が可能なこと、位置効果の解消、核の形質転換を次に生じ得る遺伝子のサイレンシングなどである。
【0006】
色素体の安定な形質転換を可能にする方法を、高等植物に対して実際に開発することができた。これまで、異なる2つの方法、すなわち組織、特に葉組織の微粒子銃打込み(Svab等、1990)、及び適切な形質転換ベクターの存在下でのポリエチレングリコール(PEG)によるプロトプラストの処理(Koop等、1996)が利用可能である。どちらの方法も、2つのエンベロープ膜を通って小器官のストロマにプラスミドDNAが移動するのを仲介するものである。
【0007】
従来の色素体形質転換技術はHeifetz、2000及びKoop等、1996に記載されている。
【0008】
従来の色素体形質転換ベクターは、通常、少なくとも2つの目的にかなう必要がある。すなわち、(1)色素体の遺伝機構(genetic machinery)によって発現される1つ又は複数の所望の外来遺伝子の導入、及び(2)阻害剤選択による、かつ/又は検出可能な表現型に対するスクリーニングによる、形質転換されたプラストームを含む細胞の選択である。色素体形質転換ベクターは、通常、4つの作動可能に連結されたエレメント、すなわちプロモーター配列、5’非翻訳領域、コード領域及び3’非翻訳領域からなる完全な遺伝子カセットを含む。
【0009】
しかし、これらのカセットは、単一プロモーターの制御下でオペロン中のいくつかの遺伝子を同時発現する潜在能力を利用できない。
【0010】
選択阻害剤(selection inhibitor)に対する耐性をもたらす突然変異遺伝子で、完全な常在性の色素体遺伝子を置換することによって(米国特許第5451513号)、又は酵素による阻害剤の不活性化をもたらす完全な発現カセットを導入することによって(米国特許第5877402号)、選択が実施される。非形質転換細胞の膨大なバックグラウンドからトランスジェニック植物細胞を選択するのに必要であるこれらのマーカー遺伝子は、抗生物質又は除草剤耐性遺伝子をコードするものである。色素体耐性遺伝子の例は、スペクチノマイシン及びストレプトマイシンに対する耐性を付与するaadA(Svab & Maliga、1993)又はカナマイシンに対する耐性を付与するnptII(Carrer等、1993)である。これらのマーカー遺伝子は、目的の遺伝子(GOI)と共にゲノム中に安定に組み込まれるので、GOIの機能には必要ではないがホモプラストミック(homoplastomic)トランスジェニック植物中に留まることになる。これらの残留マーカー遺伝子は、病原体の抗生物質耐性又は雑草の除草剤耐性を理論的には増加し得るので、植物のバイオテクノロジーに関する批判の主要な問題となっている。したがって、トランスジェニック植物に耐性遺伝子をもたらさない選択システムの構築が大いに望まれる(lamtham及びDay、2000)。
【0011】
2つ以上の遺伝子カセットに加え、形質転換ベクターは、通常、操作した配列を2つの相互的な相同組換え現象によってプラストームに安定に導入するのに必要な挿入部位のフランキング領域を含む。このために、葉緑体形質転換ベクターは、相同なフランクとして役立つ葉緑体ゲノム配列を含む。異種の葉緑体ゲノムはそれらの配列も異なるので、種特異的形質転換ベクターを使用しなければならない。このため、形質転換ベクターをクローニングするときには多大な労力が必要であり、核の形質転換における状況とは対照的である。
【0012】
従来すべての形質転換ベクターにおいて、選択マーカーには、色素体DNAに相同な配列が隣接し、したがって、目的とする配列の所望の機能には必要ではないが、プラストーム中に安定に組み込まれる。これらの残留マーカー遺伝子は、選択有利性が付与されることによって他の生物に理論的には伝播し得る。病原体の抗生物質耐性が強くなると、臨床治療において問題が生じる恐れがある。したがって、選択マーカーを含まないトランスプラストミック(transplastomic)植物を生成する系の開発が大いに望まれている。このような系のさらなる利点は、有効な選択マーカーの数が限定されているために現在では困難である後続の形質転換に対して同じマーカー遺伝子を再利用できる可能性があることである。
【0013】
また、プラストーム分子に安定に組み込まれた任意の導入遺伝子のコピー数が、プラストームのコピー数を決して超えることができないのは明らかであり、したがって、可能な導入遺伝子発現レベルは一定範囲に限定される。したがって、導入遺伝子のコピー数は、染色体外のエレメント上にあるときにはさらに増加し得る。
【0014】
米国特許第5,693,507号には、異種DNAを葉緑体に導入するための方法が開示されており、それによれば異種DNAは作動可能に結合した制御エレメントを含み、葉緑体中で発現することができる。米国特許第5,693,507号による方法は、色素体中に異種DNAを長期的に維持するものではない。また、色素体における異種DNAの発現は、実際に適用するには不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の一目的は、遺伝的に安定なトランスジェニック植物を生産することができる植物色素体の効率的かつ汎用性のある遺伝的形質転換方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、形質転換植物が安定して得られ、導入遺伝子が極めて高いレベルで発現し得る、植物色素体の遺伝的形質転換方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、複数の目的遺伝子の発現(ポリシストロン性発現)が可能な、植物色素体の遺伝的形質転換方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、抗生物質耐性遺伝子などのマーカー遺伝子を含まないトランスジェニック植物を生成する、植物色素体の新規な遺伝的形質転換方法を提供することである。
【0019】
本発明の更に別の目的は、ベクターの複製回数が調節可能であり、植物細胞中、好ましくは色素体中で複製可能なベクターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、細胞中、好ましくは前記細胞の色素体中で複製可能であるDNA又はベクターを用いて植物又は前記植物細胞を形質転換することによって植物又は植物細胞を色素体形質転換する方法を提供する。前記色素体における前記DNAの複製は、前記DNAに複製をもたらすヌクレオチド配列を前記DNAに入れることによって実施可能である。
【0021】
本発明者らは、植物細胞、特に色素体における前記DNAの複製が、以下の2つの機序のうち少なくとも1つの機序によって起こり得ることを見出した。
(i)相同組換えによってプラストームへの前記DNAの可逆的組込みが起こるのに十分な程度に、複製をもたらす前記ヌクレオチド配列を、プラストーム配列に相同にすることができる。したがって、前記DNA又は前記ベクターを、前記プラストームによって間接的又は非自律的に複製することができる(図2参照)。前記組込みは可逆的なので、プラストームから前記DNAを切り出すことができ、それによって間接的に複製されたDNAが作製される。
(ii)複製をもたらす前記ヌクレオチド配列は、プラストーム複製とは無関係に前記DNAの自己複製を起こす複製開始点を含むことができる。
機序(ii)が有効であるとき、複製をもたらす前記ヌクレオチド配列及び/又は前記複製開始点が、機序(i)による可逆的組込みのためのプラストーム配列に十分相同であれば、機序(i)による複製も同時に有効になり得る。
【0022】
上記機序に基づいて、本発明の発明者らは、極めて広範囲な複製回数を有するベクターを作製することが可能であり、すなわち所望の目的に適したレベルになるようにベクターの複製回数を設計できることを見出した。前記範囲の複製回数において、最低複製回数は、複製開始点機能を有する配列を欠いた、複製をもたらすヌクレオチド配列を機序(i)に従って用いることによって達成される。前記DNAの複製は、好ましくは、プラストームへの組込み、前記プラストームによる複製及び前記プラストームからの前記DNAの切り出し(単一の相同フランクを介した組換えによって媒介される可逆的組込み)によって行われる。したがって、機序(i)において、前記DNA(又は前記ベクター)の複製回数は、プラストームの複製回数によって制限される。
【0023】
前記DNAの複製回数は、自己複製をもたらすヌクレオチド配列、たとえば形質転換される細胞、特に色素体において機能する複製開始点を前記DNAに入れることによって増加させることができる。一般に、前記DNA中で機能する複製開始点は、前記プラストームの天然の複製開始点と相同性を有し、それによってプラストームへの前記DNAの可逆的な組込みを媒介することが可能である。したがって、前記DNAの自己複製と非自律的な複製の両方が同時に活性となり得る。自己複製回数は、所望の活性を有する複製開始点を選択することによって調節することができる。最高自己複製回数は、前記細胞中で有効な最も活性な既知の複製開始点によって得られる。あるいは、複製をもたらす前記ヌクレオチド配列は、プラストームと相同性を持たない複製開始点を有することができる。このような複製開始点によって、機序(i)が有効でなく、機序(ii)に従う自己複製が可能になる。
【0024】
本発明は、極めて多い複製回数が望ましい実施形態を開示する。また、複製回数が少ない、たとえばもっぱら非自律的な複製が起こる実施形態も開示する。これら両極端の範囲内で、前記DNAの複製回数を具体的な例の諸要件に合わせることができる。
【0025】
本発明は、
(a)DNAを含む植物色素体を用意するステップであって、このDNAが
(i)植物細胞中で前記DNAの自己複製をもたらすヌクレオチド配列を含み、
(ii)少なくとも1つの目的とする配列を含み、
(iii)
(α)前記少なくとも1つの目的配列に作動可能に結合する転写開始及び/又は停止制御エレメントを欠くか、又は
(β)前記少なくとも1つの目的配列に作動可能に結合する転写停止制御エレメントを欠くが、前記少なくとも1つの目的配列に作動可能に結合する転写開始制御エレメントを含む、
転写用DNAである上記ステップと、
(b)前記DNAの複製を可能にするステップと、
(c)遺伝的に形質転換された色素体を有する細胞及び/又は植物を回収するステップとを含む、植物色素体の遺伝的形質転換方法を提供する。
【0026】
本発明の方法は、少なくとも1つの目的配列を例外的に高いレベルで発現することができる。同時に、本発明の方法によって、複数の目的配列の発現が可能になる(ポリシストロン性発現)。
【0027】
本発明によれば、このDNAは、植物細胞中の前記DNAに好ましくは自己複製をもたらし前記DNAの多数のコピーを生成するヌクレオチド配列を含む。複製をもたらす前記ヌクレオチド配列は、植物細胞中、好ましくは色素体中の前記DNAの複製を可能にする任意の配列とすることができる。このような配列の例は、色素体複製開始点oriA及びoriBである。別の例は、色素体中での複製をもたらす配列番号1及び配列番号2の新規ヌクレオチド配列である。前記DNAの自己複製とは、前記細胞中の他のDNAの複製とは無関係に植物細胞内部で、特にプラストームに組み込まれずに、前記DNAを複製できることを意味する。
【0028】
本発明の方法は、目的配列のプラストームへの組込みが望ましい場合(ケースα)に使用することができ、前記組込みは安定なものであることが好ましい。このためには、(ベクターの)DNAが、前記少なくとも1つの目的配列に作動可能に結合する転写開始及び/又は停止制御エレメントを欠いていることが好ましい。この場合、前記目的配列の転写は、プラストーム中にすでに存在する(開始及び停止用)制御エレメントに完全に依拠することができる(プラストーマル(plastomal))。あるいは、転写開始用制御エレメントのみをプラストーマルとし、一方、停止用制御エレメントを(ベクターの)DNA中に設けることができる。あるいは、転写停止用制御エレメントのみをプラストーマルとし、一方、開始用制御エレメントを(ベクターの)DNA中に設けることもできる。いずれにしても、(ベクターの)DNAは、転写制御エレメントの少なくとも1つを欠く。これによって、ケース(α)の形質転換がより効率的で安定になる。
【0029】
本発明の方法は、目的配列のプラストームへの組込みが望ましくない場合(ケースβ)にも使用することができる。このためには、(ベクターの)DNAが、前記少なくとも1つの目的配列に作動可能に結合する転写停止制御エレメントを欠くが、前記少なくとも1つの目的配列に作動可能に結合する転写開始制御エレメントを含むことが好ましい。この場合、転写は自律的なDNAを用いて、組込みを行わずに進行する。したがって、転写開始エレメントをDNA中に設け、目的配列に作動可能に結合させる。しかし、前記目的配列に作動可能に結合する転写停止エレメントは前記DNA中には設けない。これは、転写が「ローリングサークル」形式で起こり、停止が停止制御エレメントではなく、統計ベースで起こることを意味する。
【0030】
好ましい一実施形態において、前記少なくとも1つの目的配列は、作動可能に結合する転写停止用制御エレメントを持たない。前記DNA又はその一部は、プラストームに組み込まれていないことが好ましい。前記DNA又は目的配列の転写が始まると、停止しないか、停止がほとんど起こらない。これによって、前記DNAに対応するRNAの複数の単位、又は好ましくは転写された目的配列の複数の単位を含む極めて長い転写物がもたらされる。その結果、前記目的配列の転写物の量は、作動可能に結合した転写ターミネーターを目的配列が有する従来の例よりも増加する。したがって、翻訳も同様に促進される。
【0031】
特徴(i)、(ii)及び(iii)の存在は相乗的(multiplicative)であり、それによって前記目的配列の発現レベルが増す。また、複数の目的配列が同一プロモーターによって前記DNAから発現される。
【0032】
少なくとも1つの目的配列は、植物細胞の任意の成分、好ましくは色素体ゲノムや色素体ゲノムの発現産物などの色素体成分と相互作用して所望の機能を発揮することができる。あるいは、前記少なくとも1つの目的配列の発現産物は、上記相互作用によって所望の機能を発揮することができる。このような相互作用を用いて、2成分のトランスジェニック植物発現系を構築することができる。これらは、トランスジェニック植物の生物学的安全性に多大な寄与をする。というのは、2つの人工成分が同一植物に存在する場合にのみ発現が起こるからである。
【0033】
発現は少なくとも転写を含み、これはたとえばRNAが所望の産物である場合(たとえば、アンチセンス技術)である。発現は、転写及び翻訳を含み、ポリペプチド又はタンパク質を産生することが好ましい。ポリペプチドの発現の場合、「目的配列」は好ましくはポリペプチドのコード部分に関係する。
【0034】
前記DNAは環状であることが好ましい。好ましくは、自己複製できるべきである。複製は、色素体中及び/又は色素体外で起こり得る。発現すべき目的配列が1つの場合、この配列は、作動可能に結合する転写開始エレメントを含むが、転写停止エレメントを含まないことが好ましい(ケースβ)。一般に、目的配列がいくつかある場合、わずか1つ、好ましくは最初の目的配列が転写開始エレメントを含み、停止エレメントは存在しないことが好ましい。あるいは、いくつか又はすべての目的配列は、開始エレメントを含むことができるが、転写停止エレメントを含まない。したがって、開始エレメントが存在し、停止エレメントが存在しないことが好ましい。
【0035】
翻訳を効率的にするために、各目的配列は、好ましくはリボソーム結合部位を有する。翻訳エンハンサーなど翻訳を促進する他の配列を、1つ又は複数の目的配列に作動可能に結合させることができる。
【0036】
本発明によれば、植物色素体は、前記DNAを含む色素体を用意することによって、DNA(ベクター)により遺伝的に形質転換される。前記DNAを含む色素体を用意することは、間接的でも直接的でもよい。前記DNAを間接的に用意する例は、前記DNAが色素体の外部で(たとえば、細胞核中で)自己複製され、したがって前記DNAの複数のコピーが産生する場合である。これらのコピーを、その後色素体に移すことができる。前記DNAを含む色素体を用意することが直接的であり、前記DNAが色素体中で自己複製されることが好ましい。前記DNAの複製をもたらすために使用するヌクレオチド配列のタイプは、前記DNAの自己複製が起こると考えられる区画に合わせることが好ましい。たとえば、色素体中での自己複製の場合、複製をもたらす前記ヌクレオチド配列は色素体中で機能しなければならない。
【0037】
前記DNAの自己複製をもたらす前記ヌクレオチド配列は、任意の既知の複製開始点又は自己複製をもたらす機能を有する他の任意のヌクレオチド配列とすることができる。具体的な実施形態に応じて、前記ヌクレオチド配列の複製をもたらす能力を調節することが有利であろう。たとえば、(複製回数が多い)極めて活性な複製開始点によって、前記DNAを維持するために選択を行うことなく植物細胞中の前記DNAを維持することが可能になり得る。複製をもたらす能力が不十分な複製開始点では、選択圧を解除すると、植物細胞から前記DNAを取り出すことができる。前記能力又は前記回数の調節は、このようなヌクレオチド配列を適切な植物種から選択することによって実施することができる。あるいは、所与の実施形態又は目的に適した複製をもたらす能力を達成するために、たとえば、突然変異、切断、結合、複数の複製開始点の混合及び組換えなどによって所与の複製開始点を改変することができる。
【0038】
前記DNAは、形質転換された植物、植物細胞又は色素体の選択を可能にする1つ又は複数の配列(選択マーカー)をさらに含むことができる。このような選択マーカーは、抗生物質又は阻害剤耐性遺伝子であってもよい。あるいは、特定条件下での増殖に必要とされる色素体遺伝子を機能しなくする、又は先行するステップで除去することもできる。前記形質転換のポジティブ選択が可能になるように機能する形で前記DNAに前記色素体遺伝子を入れて選択マーカーとして使用することができる。このような遺伝子の例は、光合成に直接又は間接的に関係するrpoA、petAなどの遺伝子である。後者の手順は、抗生物質耐性遺伝子を植物に導入することなく本発明の方法を実施することができるという大きな利点を有する。
【0039】
本発明の一般的な一実施形態において、前記DNAは色素体中で自己複製する。すなわち、前記DNAは色素体中の染色体外又はエピソームエレメントである。前記DNAは、好ましくは、目的配列に作動可能に結合する転写停止エレメントを含まず、したがって、複数の目的遺伝子のポリシストロン性発現が可能である。自己複製プラスミドのコピー数がプラストーム分子のコピー数を大きく超え、前記少なくとも1つの目的配列の遺伝子量が増えるので、この方法は、従来の色素体形質転換戦略に比べ、極めて高い発現レベルになり得る。この実施形態において、プラストームとの組換えのために相同フランクを使用する必要がないので、種特異的ではないベクターを構築することができる。したがって、ベクターのクローニングのための労力が大いに軽減され、本方法の大きな利点となっている。また、プラストーム配列に相同な配列がほとんどないため、得られるトランスジェニック植物は遺伝的に極めて安定である。
【0040】
ベクター又は複製開始部位(replication initiation start sites)として役立つ前記DNA含有プラストーム配列エレメントは、適切な選択がなされる場合、又は染色体外DNAの複製回数がそれぞれのプラストーム分子の複製回数を超える場合、色素体中に維持される。
【0041】
プラスミドの複製回数がプラストームの複製回数よりも少なければ、自己複製エレメントは選択なしに消失することは明らかである。その複製回数がプラストームの複製回数よりも少なくても、自己複製DNAの存在を維持するために、選択可能なマーカーを前記DNAと共に入れることができる。上述したように、形質転換の第1のステップで、光合成に関係する遺伝子(たとえばpetA)をプラストームから除去することができ、又は機能しないようにすることができる。第2のステップにおいて、本発明の方法に従い自己複製エレメントを用いて欠損遺伝子を補うことができる。この手順を用いて、土壌で成長する植物に「強制的に」導入したエレメントを維持させる。前記第2のステップの効率は、前記DNA上の選択可能なマーカー及び適切な選択圧を用いて改善することができる。それにより前記マーカーは、相同フランクの外側に位置し、以下に詳細に記述するように消失させることができる。この手順によって、抗生物質耐性又は除草剤耐性マーカー遺伝子を持たないトランスプラストミック高等植物を生成することが可能になる。
【0042】
本発明の第2の一般的な実施形態において、前記DNAは、相同組換えにより前記DNAの少なくとも一部をプラストームへ安定に組み込むことを可能にする配列をさらに含む。前記DNAをシャトルとして用いて、前記DNAの配列部分、好ましくは目的配列をプラストームに導入することができる。現在、色素体形質転換は、選択マーカーとして抗生物質耐性遺伝子を使用することに依存しており、抗生物質耐性遺伝子は、望ましくなく議論の多い副作用物として最終産物に保持されている。この問題を解決するために、プラストーム組込みカセット、すなわち安定な組込みを可能にする配列(プラストームの一部に相同な配列)が隣接しているプラストームに組み込むべき配列を、前記DNAに入れることができる。前記DNAの選択マーカー遺伝子は、この組込みカセットの外側に位置することが好ましい。選択は、好ましくは、組み込むべき配列(好ましくは目的配列)が十分な数のプラストームコピーに安定に組み込まれるまで継続される。次いで、選択を解き、選択マーカーを含む自己複製DNAを消失させ、それによってマーカーのないトランスプラストミック植物の生成が可能になる。自己複製染色体外プラスミドを確実に消失させるために、プラスミド(DNA)は、妥当な回数、すなわち前記DNAの消失が妨害されないようにあまり多くない回数で自己複製をもたらす配列を含むことが好ましい。複製をもたらすこのような配列を、本明細書に記載する、多数の自己複製をもたらす配列(配列番号1及び配列番号2)の明確に定義された部分を用いて容易に作製することができる。
【0043】
マーカーのない形質転換体を得る別の方法は、本明細書に記載されており、組込み不可能なマーカー遺伝子に隣接しているプラスミドベクター配列のダイレクトリピートによって媒介される相同組換えを用いて、シャトルプラスミドから選択マーカーを除去するものである。
【0044】
本発明は、さらに、上述の方法のためのベクターを提供する。特に、植物色素体中で自己複製する能力をもたらすヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。前記ヌクレオチド配列は、以下の群、すなわち
(a)配列番号1の配列又は機能が保存された変異体又はそれらの一部と、
(b)配列番号2の配列又は機能が保存された変異体又はそれらの一部と、
(c)ストリンジェントな条件下で配列(a)又は(b)に相補的である配列とハイブリッド形成する配列と、
(d)前記DNAに自己複製をもたらす前記能力を低下又は増大させるために選択した突然変異を含む(a)又は(b)の配列と、
(e)配列番号1又は配列番号2と少なくとも80%が同一である配列と、
(f)配列番号1又は配列番号2又はそれらの一部の配列にオーソロガスな配列と、から選択される。
【0045】
驚くべきことに、配列番号1又は配列番号2の配列は、植物色素体においてDNAの効率的な複製を可能にすることが見出された。最も驚くべきことに、前記配列は、既知の色素体複製開始点を含まない。配列番号1又は配列番号2の配列又はそれらの変異体は、たとえば、DNAに自己複製能力を付与するプロセスに使用することができる。これらの配列が自己複製をもたらす回数は、上述のように調節することができる。特に、他の生物からの相同配列又はオーソロガスな配列をこのような方法に使用することができる。
【0046】
本発明は、さらに、プラストーム上で形質転換されており、選択マーカーを欠くトランスジェニック植物又は植物細胞を生成する方法を提供する。この方法は以下のステップ、すなわち、
(a)DNAを用いて植物又は植物細胞の色素体を形質転換するステップであって、前記DNAが、
(i)植物細胞中で前記DNAの複製をもたらすヌクレオチド配列と、
(ii)少なくとも1つの目的配列と、
(iii)前記少なくとも1つの目的配列を色素体ゲノムに安定に組み込むのに必要な前記少なくとも1つの目的配列に隣接する配列と、
(iv)前記目的配列に隣接する前記配列の外側にある選択マーカーとを含むものである上記ステップと、
(b)前記少なくとも1つの目的配列を選択圧の存在下でプラストームに組み込むステップと、
(c)選択圧を解除することによって前記選択マーカー配列を消失させるステップと、
(d)プラストーム上で遺伝的に形質転換されており、前記選択マーカーを欠く細胞及び/又は植物を回収するステップ
とを含む。
【0047】
この方法によって、選択マーカーを欠くトランスジェニック植物の生成が可能になる。このような方法は、生物学的安全性の理由から、また、抗生物質耐性遺伝子を封じ込めるために極めて望ましいものである。適用可能であり、かつ以下で別段の指定のない限り、上で与えた情報がこの方法に適用される。トランスジェニック植物を生成する前記方法には、相同組換えにより前記少なくとも1つの目的配列をプラストームへ安定に組み込むのに必要な配列に隣接している少なくとも1つの目的配列を含む色素体組込みカセットを有するDNAによる色素体の形質転換が必要である。前記DNAは、選択マーカー、たとえば好ましくは前記DNAを色素体中で確実に維持するために使用される抗生物質耐性遺伝子をさらに含む。前記選択マーカーは、前記組込みカセットの外側に位置する。したがって、前記選択マーカーはプラストームに組み込まれておらず、特に安定には組み込まれていない。組込み後、選択圧を解除することによって安定に組み込まれていないDNAが消失する。前記DNAは、前記DNAの複製をもたらし前記DNAの増殖を可能にするヌクレオチド配列をさらに含むことができる。
【0048】
前記DNAの複製をもたらす前記ヌクレオチド配列によって、植物色素体の外部(たとえば、核内又は細胞質内)で前記DNAを複製し、その後色素体に移入することができる。しかし、前記ヌクレオチド配列は、色素体中で前記DNAを複製することが好ましい。
【0049】
前記複製、特に色素体中での複製は、プラストームへの前記DNAの可逆的な(又は一過性の)組込みによって非自律的にすることができる。この場合、前記DNAの複製をもたらす前記ヌクレオチド配列によって、プラストームへの前記DNAの可逆的な組込みが可能になる。前記可逆的な組込みは、好ましくはプラストームへの完全なベクター(前記DNA)の組込みをもたらす相同組換えにおいてプラストームの配列に十分相同である前記DNAの組込み配列によって提供することができる。プラストームへ組み込むと、前記DNAをプラストームと共に複製することができる。組換えの逆(図2の2a参照)を行うとベクターを切り出すことができる。前記組込み配列の機能は、前記目的配列(iii)に隣接する前記配列の1つ又は両方によって、あるいは前記フランキング配列以外の別の配列によって付与することができる。組込み配列として機能し得る別の配列は、好ましくは、前記目的配列に隣接する前記配列の外側に位置する。したがって、前記DNAは、複製をもたらす前記ヌクレオチド配列の機能を潜在的に発揮することができる少なくとも2つの配列を含む。また、前記DNAは、前記機能を有する1つ又は複数の別の配列を含むことができる。
【0050】
また、前記複製は、自律的にすることができる。この場合、前記DNAの複製をもたらす前記ヌクレオチド配列は、前記色素体中に複製開始点を有する。前記複製開始点は、前記目的配列に隣接する前記配列の1つ又は両方に含ませることができる。前記DNAは、前記DNAの複製をもたらし、かつ複製開始点を含む1つ又は複数の別のヌクレオチド配列を含むことが好ましい。前記1つ又は複数の別のヌクレオチド配列は、前記目的配列に隣接する前記配列の外側に好ましくは位置する。
【0051】
選択マーカーを欠くトランスジェニック植物又は植物細胞を生成する方法は、多種多様な目的に使用することができる。この方法は、1つ又は複数の導入遺伝子を植物色素体に導入するために、たとえば、植物に有用な形質を付与するために使用することができる。この場合、前記目的配列は、ポリペプチドをコードする配列を、場合によっては前記コード配列の発現に必要になり得る調節エレメントと共に含むことができる。
【0052】
前記方法を用いて、1つ又は複数の突然変異を色素体ゲノムに導入し、たとえば、色素体によってコードされたタンパク質若しくはRNAの諸特性を変え、又は色素体遺伝子の制御配列を変えることもできる。このような突然変異は、前記DNAを用いて導入することができ、前記目的配列は、前記目的配列に隣接する前記配列が隣接するプラストームにおいて変化する塩基からなる。前記方法を用いて、前記目的配列が単一の塩基からなり得る標的プラストーム中の単一の塩基を変えることができる。好ましくは、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの塩基が突然変異し、前記目的配列はそれぞれこれら少なくとも2つ又は3つの塩基からなることができる。
【0053】
また、前記方法を用いてプラストームの所望の配列を欠失させることができる。これは、目的配列の同時挿入(配列置換)により、又は同時配列挿入なしで実施することができる。後者の場合、前記DNAは、目的配列を含まなくてもよく、前記フランキング配列は、欠失させるプラストームの前記ヌクレオチド配列に隣接するプラストーム配列に相同である。
【0054】
前記目的配列は、形質転換されたプラストームを含む細胞の視覚識別を可能にする配列、たとえばGFPをさらに含むことができる。前記方法のステップ(d)は、それぞれ特定のタイプのプラストームを含む葉領域を分離させることを含むことができる。視覚的に識別された葉領域を用いて選択することができ、これによってホモプラストミック状態に到達するプロセス及びトランスジェニック植物を再生するプロセスが加速される。
【0055】
本発明は、このような植物に由来する産物を含めて、本発明の方法によって得られる又は得られ得る色素体を含む植物又は植物細胞にも関する。目的配列、色素体ゲノムに前記目的配列を安定に組み込むために必要な前記目的配列に隣接する配列、及び前記目的配列に隣接する前記配列の外側にある選択マーカーを含むさらなるベクターを提供する。
【0056】
定義
3’−UTR: (→)コード領域下流の(→)遺伝子の転写されたが翻訳されていない領域;
5’−UTR: (→)コード領域上流の(→)遺伝子の転写されたが翻訳されていない領域;(→)色素体(→)遺伝子において、5’−UTRはその3’末端に近い翻訳開始のための配列情報(リボソーム結合部位、(→)RBS)を含む;
aadA: 抗生物質(→)選択阻害剤スペクチノマイシン及び/又はストレプトマイシンを解毒する、頻繁に使用されるタンパク質である細菌アミノグリコシドアデニルトランスフェラーゼの(→)コード領域;
aphA−6: 抗生物質(→)選択阻害剤カナマイシンを解毒するタンパク質である、細菌アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼA−6の(→)コード領域;
葉緑体: クロロフィルを含有する(→)色素体;
コード領域: a)ポリペプチドのアミノ酸配列又はb)機能性RNAのヌクレオチドに対する情報を含むヌクレオチド配列;コード領域は、場合によっては、1つ又は複数の(→)イントロンで中断される;
所望の遺伝子(配列): 改変又は新しく導入した配列:(→)形質転換を試行する目的;
フランク、フランキング領域:(→)色素体(→)形質転換(→)ベクター中の挿入断片の5’末端及び3’末端のDNA配列であり、二重相互(double reciprocal)(→)相同組換えによってフランク間にある配列を標的(→)プラストームへ組み込むのを媒介する。同じ機序によって、配列を改変し、又は標的(→)プラストームから取り出すことができる。したがって、(→)色素体(→)形質転換(→)ベクターのフランクによって、標的(→)プラストーム中の変化が(→)形質転換によりどの場所で発生するかが決定される。
遺伝子発現: 配列情報を機能に変えるプロセス;ポリペプチドをコードする(→)遺伝子において、遺伝子発現には、RNAポリメラーゼの活動を開始し誘導する(→)プロモーターの作用が必要であり、それによってメッセンジャーRNAが形成され、続いてポリペプチドに翻訳される;RNAをコードする(→)遺伝子においては、(→)プロモーターによって媒介されるRNAポリメラーゼの活動によって、コードされたRNAが生成する;
遺伝子: 機能、たとえば発現を独立して確実にするのに必要なエレメントのすべてをコードするヌクレオチド配列;遺伝子は、少なくとも1つの完全な(→)コード領域を含む(→)オペロン中に構成される;ポリペプチドをコードする(→)遺伝子において、これらのエレメントは、(1)(→)プロモーター、(2)5’非翻訳領域((→)5’−UTR)、(3)完全な(→)コード領域、(4)3’非翻訳領域((→)3’−UTR)である;RNAをコードする(→)遺伝子においては、(→)5’−UTR及び(→)3’−UTRが欠損している;2つ以上の(→)コード領域からなる(→)オペロンにおいて、2つの後続の完全な(→)コード領域は(→)スペーサーによって分離され、(→)プロモーター、(→)5’−UTR及び(→)3’−UTRの各エレメントは、(→)オペロンの(→)コード領域によって共有されている;
ゲノム: 細胞核又は細胞小器官の完全なDNA配列;
GFP: 緑色蛍光タンパク質
相同組換え: (→)ゲノム中の標的部位に十分相同な配列を含む(→)フランクの存在によって配列の交換、挿入又は欠失がもたらされるプロセス;
イントロン: (→)コード領域を中断する配列;
オペロン: プロモーターを共有するいくつかの(→)遺伝子の組織構造;
植物: その細胞中に(→)色素体を含む生物;本発明は特に多細胞(→)植物に関係する;これらには(マツ、エゾマツ、モミなどの)裸子植物及び(単子葉作物トウモロコシ、コムギ、オオムギ、イネ、ライムギ、ライコムギ、モロコシ、サトウキビ、アスパラガス、ニンニク、ヤシなど及び非作物単子葉植物及び双子葉類作物タバコ、ジャガイモ、トマト、アブラナ、テンサイ、カボチャ、キュウリ、メロン、コショウ、柑橘類、ナス、ブドウ、ヒマワリ、ダイズ、アルファルファ、ワタなどの)被子植物及び非作物双子葉類、並びにシダ類、ゼニゴケ類、コケ類及び多細胞緑藻類、紅藻類及び褐藻類のグループが含まれる;
色素体: (→)植物細胞中にそれら自体の遺伝機構(genetic machinery)を有する小器官であり、機能及び形態の異なる様々な形式、たとえばアミロプラスト、(→)葉緑体、有色体、エチオプラスト、ゲロントプラスト(gerontoplasts)、白色体、原色素体などとして存在する;
プラストーム: (→)色素体の完全なDNA配列;
プロモーター: 転写を開始し調節する機能を果たすヌクレオチド配列;
RBS、リボソーム結合部位:リボソーム結合及びそれぞれのRNA転写物からの翻訳開始を媒介する、(→)コード領域の(→)翻訳開始コドンの上流のDNA配列エレメント;RBSエレメントは、(→)5’−UTR又は(→)スペーサーの一部である;
選択阻害剤: 形質転換された細胞又は小器官よりも形質転換されていない細胞又は小器官の増殖及び成長を強く抑制する化合物;
目的配列: 改変した又は新しく導入した任意の長さの配列:(→)形質転換を試行する目的;配列の導入を意図しない場合、目的配列の長さをゼロとすることができ、すなわち目的配列を持たないことを目的とすることができる;
停止: 本発明の記述において、「停止」はDNA配列からのRNAの転写の中断に関係する;
ターミネーター: (→)停止の原因となる配列エレメント;
形質転換ベクター: (→)ゲノムの(→)形質転換を媒介するために作製したクローン化DNA分子;
形質転換: 少なくとも1つの(→)形質転換ベクターの使用を含めた(→)植物又は植物細胞の処置によってDNA配列を導入し、切り出し、又は改変する方法;
導入遺伝子(トランスジーン): 1つの(→)ゲノムに由来し、別のゲノムに導入されるDNA配列;
uidA: 頻繁に使用されるレポータータンパク質である細菌βグルクロニダーゼの(→)コード領域。
【発明を実施するための形態】
【0057】
従来の色素体形質転換ベクターは共通構造を共有する
DNAを色素体に導入する方法の開発に加え、色素体形質転換を実施するにはさらに2つの要件を満たさなければならない。すなわち、遺伝子発現を制御する色素体配列エレメントの使用、及び新規な配列又は相同組換えによって改変した配列の部位特異的な組込みを可能にすることである。従来の色素体形質転換ベクターは、標的挿入部位の上流及び下流のプラストーム配列に由来するフランクを含んでいる(Zoubenko等、1994)。これらの諸要件の結果、高等植物色素体のプラストームに外来遺伝子を導入するために使用する色素体形質転換ベクターは、以下のエレメント、すなわち、(1)5’フランク、(2)プロモーター配列、(3)5’非翻訳領域、(4)タンパク質遺伝子又は(RNA遺伝子などの)非タンパク質遺伝子の完全な配列をコードするコード領域、(5)3’非翻訳領域及び3’フランクを共有する。また(7)色素体複製開始点は、プラストームへの配列の組込みを促進すると推論された(米国特許第5693507号)。
【0058】
この一般的な構造は、これらのベクターの使用にいくつかの制限を課すものである。すなわち、(1)これらのベクターは種特異的である、(2)選択マーカーはトランスプラストミック植物中に残留する、(3)ターミネーターエレメントのため、遺伝子ごとに、別々のプロモーターから転写しなければならない、(4)いくつかの遺伝子を同時に発現させるために必要とされる様々な色素体制御エレメントは、望ましくない相同組換え現象のために、遺伝的不安定性を招く恐れがある、(5)導入遺伝子のコピー数は、プラストームのコピー数を決して超えることができない。
【0059】
本発明は、上述の制限を克服する、色素体形質転換のための新しい方法を記述するものである。
【0060】
本発明の新規ベクターは、複製開始部位「複製開始点」として役立つプラストーム配列エレメントを使用する。
高等植物色素体染色体の複製に関する理解は以下のように要約することができる。すなわち、環状二本鎖分子(約130〜150kbp)は、「大きな単一コピー領域」、「反復A」、「小さな単一コピー領域」及び反復Aと配列は同一であるが向きが逆である「反復B」の4つの領域からなる。複製は、「ori A」及び「ori B」と呼ばれる配列エレメントから開始されると推定される。これらのエレメントは、タバコプラストームにおいて反復領域内に位置するので、エレメント各々の2つのコピーが存在する。初期の複製の特徴は「置換ループ」である。これらは、複製の進行につれ「ローリングサークル」に転化される(Kunnimalaiyaan及びNielsen、1997による総説)。
【0061】
色素体複製開始配列を含むが外来配列が葉緑体ゲノムに安定に組み込まれないベクターは、適切な選択にかけられる場合又は染色体外プラスミドの複製回数がプラストーム分子それぞれの複製回数を超える場合、色素体中に維持することができる。実際、このようなプラスミド様構造が文献に報告されている。Staub及びMaliga(1994)は、葉緑体形質転換実験を実施し、最初に使用した形質転換ベクターよりも極めて小さなプラスミド様分子である「NICE1」の自発的な形成を認めた。適切な細菌複製シグナルと共に供給すれば、大腸菌と高等植物葉緑体のシャトルベクターとして使用することさえできる。選択圧を取り除くと、NICE1エレメントは消失した。シャトルベクター上の配列は、プラストーム中の相同配列と組換えを起こした(Staub及びMaliga 1995)。すなわち、この観察から、これらのエレメントが自己複製するのではなく、組換え現象によって複製され切り出される間プラストームに組み込まれているという説明が支持される。この解釈は、Chlamydomonas reinhardtii葉緑体において、色素体形質転換の予期せぬ結果として見出された高コピー染色体外エレメントの場合にもほぼ当てはまる(Suzuki等 1997)。これらのエレメントは、プラストームの再配列を伴い、シャトルベクターのベースとして使用することができなかった。すなわち、第2の形質転換では、これらのエレメントの出現が不安定になった。
【0062】
「ori」配列エレメントを色素体形質転換に使用することは、別の文献にも記載されている(Daniell等 1990;米国特許第5,693,507号)。そこでは、エンドウマメ「oriA」エレメントを含む配列が、培養タバコ細胞における短期間(最高120時間)の発現試験に使用された。この試験は主にインビトロで実施された。しかし、葉緑体遺伝子技術の考え方は、外来遺伝子のインビボでの長期で安定な発現を必要とする。
【0063】
本発明者らは、今回驚くべきことに、形質転換した組織においてプラスミドが長期間(1年以上、選択圧の存在下で葉の外植片から最高9サイクルの反復再生)維持されることを観察した(実施例7参照)。形質転換組織から抽出したすべてのDNAを用いて細菌を形質転換すると、葉緑体形質転換ベクターと大きさ及び制限パターンが同じプラスミドが得られる。形質転換ベクターは組込みカセットを含んでいたので、プラストームの予想部位に配列が組み込まれたことが、サザン分析並びにプラスミド様分子の存在によって示された。サザン分析から、プラストーム分子のコピー数よりもプラスミドのコピー数が増加したことが明らかになった。
【0064】
染色体外プラスミドの維持に係わる配列を同定することができた。驚くべきことに、長期維持に必須と考えられる配列は、いかなる既知の色素体複製開始配列も含まないことが判明した。本発明者らは、いかなるターミネーター又は3’−UTR構造も持たないベクターを使用し、長いポリシストロン性転写単位を作製した。
【0065】
本発明の新規なベクターによって、ポリシストロン性遺伝子発現が可能になる。
本発明に記載するベクターは、プラスミドによってコードされる遺伝子に対する転写停止及び/又は開始配列を含まない。それらはターミネーター配列を欠くことが好ましい。いくつかの遺伝子を人工オペロンとして1つの機能プロモーターから転写することができる。ポリシストロン性転写物のすべての単一目的配列を確実に効率的に翻訳するために、適切なリボソーム結合部位が、好ましくは、それぞれの目的配列を分離するスペーサーエレメント中に挿入されている。発現カセットを構築するためのクローニングの労力は実質的に軽減される。また、染色体外エレメントは環状であるので、(「ローリングサークル」様の)連続転写を起こすことができ、目的配列の発現レベルがより高くなる。
【0066】
余分な相同配列は遺伝的不安定性をもたらす−本発明の新規ベクターは余分な相同配列がない
導入遺伝子の発現に必要な相同配列は、遺伝的不安定性を引き起こす恐れがあり、特に、形質転換されたプラストームと形質転換されていないプラストームが同じ小器官内に共存する限りそうである(Eibl等、1999)。
【0067】
新規ベクターは、従来の色素体形質転換ベクターよりも少ないエレメントからなる。その結果、より少ない相同配列を使用するために、本発明では、より安定な色素体改変が可能になり、それらを機能的に受け継ぎ、安定な細胞系及び植物に組み込むことができる。
この戦略は、組込みカセットを含有する「脱着可能なシャトル」ベクターにも適用することができる(以下を参照)。
【0068】
本発明の新規ベクターは、コピー数が多い
遺伝子発現は、プロモーター強度、RNA安定性、翻訳効率及びタンパク質ターンオーバーを含めた膨大な数のパラメータの影響を受ける。他の重要なパラメータは、DNAコード配列のコピー数である。コピー数と発現の直線的な依存関係をある程度想定することができる。本発明で使用するプラスミドは、プラストーム分子よりもコピー数がかなり増加する(2〜5倍の増加)。したがって、これらのプラスミドベクターは、色素体における極めて高い導入遺伝子発現レベルの最適な基盤を提供するものである。組換え遺伝子の発現レベルが極めて高いことは、タンパク質ベースの薬剤物質、生分解性原料又は他の任意のタンパク質の色素体コンパートメントにおける製造などいくつかの用途で極めて有用になり得る。強力な調節エレメントと高コピー数の両方を使用して、色素体中の染色体外プラスミドは、従来の植物形質転換方法では達成できない、並外れて高い濃度の外来タンパク質をもたらすことができる。
【0069】
本発明の新規ベクターは種特異的でない
従来の葉緑体形質転換ベクターは、相同組換えを介する導入遺伝子の組込みのための相同フランクとして役立つ、標的植物種から単離された葉緑体ゲノム配列を含む。通常、発現カセットには、所望の組込み部位からの2つのプラストーム配列が隣接する。異なる種のプラストームは、全般的な構造と配列の両方ともかなり変動するので、形質転換ベクターの設計上、種特異的フランクを使用することが必要となる。また、ほとんどの植物種の色素体DNA配列及び遺伝子配列はまだ知られていない。このため、様々な植物種に対するクローニング形質転換ベクターの構築を通じてさらに労力が必要になる。本発明に記載する新規方法では、少なくともいくつかの実施形態において、導入遺伝子を安定に挿入するためにフランクのクローンを作る必要性が回避される。また、色素体DNAへの組込みは、調節エレメントを含むことができるいわゆる遺伝子間配列を標的にする場合でも、色素体遺伝子発現に望ましくない効果を及ぼす結果になる恐れがある。
【0070】
本明細書に記載する新規な色素体形質転換方法は、いくつかの利点の組合せである
いくつかの実施形態において、本発明は、(1)相同組換えのための色素体フランクを本質的に含まない、(2)DNA鋳型のコピー数を増すことによって、かつ、ターミネーターエレメントのない「ローリングサークル様」ポリシストロン性の転写を使用することによって著しく高い発現レベルを可能にし、(3)少なくともいくつかの実施形態において、トランスジェニック植物中のマーカー遺伝子の存在が回避される、ベクターを用いた新しい色素体形質転換方法の使用について記述する。
【0071】
本発明の教示を用いて、安定に又は不安定に形質転換された色素体を含む植物細胞及び植物を生成することができる。多数の異なる植物種の色素体を形質転換することができる。本発明は、単子葉植物でも双子葉植物でも適用可能である。作物植物は特に好ましい。このような作物植物の例は、トウモロコシ、イネ、コムギ、カラスムギ、ライムギ、オオムギ、ダイズ、タバコ、トマト、ジャガイモ、ブドウ、ピーナッツ、サツマイモ、アルファルファ、モロコシ、エンドウマメ及びワタである。
【0072】
選択マーカーを欠くトランスプラストミック植物の生成
植物バイオテクノロジーの1つの主要な批判は、形質転換した植物中に(ほとんどが細菌の)抗生物質マーカー遺伝子が存在することである。このような遺伝子は、環境中に制御なしに放出されると、望ましくない異系統交配を通して野生種に出現し、又は土壌細菌が媒介する遺伝子水平転移を介して出現し得る懸念がある。第1のシナリオ(異系統交配)は、大部分が母性遺伝のプラストーム導入遺伝子では起こりそうにないが、後者(遺伝子水平転移)を完全に排除することはできない。したがって、抗生物質マーカーのないトランスジェニック植物を生じる遺伝子導入方法を確立することが大いに望まれている。この目標を達成する1つの可能性は、以前に(lamtham及びDay、2000)によって示された。彼らは、形質転換ベクター上の反復エレメントによって媒介される切り出し現象をスクリーニングすることによって、プラストーム形質転換体から抗生物質マーカーを除去できることを示した。本発明において、抗生物質選択マーカーを含まないトランスプラストームを生成するいくつかの異なる手順を記述する。
【0073】
選択マーカーのないトランスジェニック植物を生成する本方法の好ましい実施形態は、プラストームへの1つ又は複数の目的配列を安定に挿入することを含む。本願で設計される形質転換ベクターは、従来の色素体形質転換ベクターと同様に、色素体DNA配列によって隣接された目的配列を含んでいる。しかし、これに対し、選択マーカー配列は隣接色素体DNA配列の外側に位置する(図2)。両方のフランクにおける二重相互組換えによって、プラストームへの目的配列のみの挿入が可能になる。しかし、このようなプラストームを含む細胞は、選択マーカーを含まないので選択することができない。したがって、トランスジェニック植物を生成する前記方法において、本発明は、選択マーカーの一過性のプラストーム組込みを利用する。完全な形質転換ベクター配列が単一の相同領域を介してプラストーム中に組み込まれると、選択マーカーの組込みが不安定になる。本発明者らは、従来の形質転換ベクターで形質転換されたプラストームを分析することによって、完全な形質転換ベクターの組込みが極めて高頻度で起こることを示すことができた(実施例1)。この知見から、本発明において利用する技術に対するモデルが提供される:選択マーカーは、好ましくは、単一の組換え現象を経て、完全な形質転換ベクター配列を組み込むことによってもっぱら維持されるので(図2)、形質転換ベクターを使用した後、細胞又は組織を選択圧下に維持することによってこの組換え現象を選択する;選択マーカーを含む細胞のみが、細胞系又は植物再生体を増殖させ産生することができる。したがって、組込みを担うベクターの配列によって、特にプラストームへの一過性の組込みを介して、ベクターが複製される。完全な形質転換ベクターが組み込まれたプラストーム分子では、ベクター中の相同フランクとして使用される配列が、近傍で2回出現する(形質転換ベクター及び最初の色素体DNA配列それぞれからの1コピー、図2参照)。これによって、葉緑体の極めて活性な組換え系による反復配列間の相同組換えが起こるので、不安定な状況が生じる;このような組換え現象によって、プラストームから選択マーカー配列が切り出される。したがって、完全な形質転換ベクター配列を含むプラストームを有する第1の形質転換体が樹立された後、第2の組換え現象を示すプラストームの増殖を可能にするために選択圧を取り除く。2通りの組換えが起こる可能性がある(図2):第1の組換え現象の(形質転換ベクターが組み込まれた)部位である色素体配列の2つのコピー間の組換えによって、第1の組換えの逆、すなわち完全な形質転換ベクターの切り出しが起こる。それによって、最初のプラストーム配列が回復し、間接的に複製されたベクターが産生される。しかし、第2のフランクの2つのコピー間の組換えが起こる第2の可能性が存在する。この第2の組換え現象では、選択マーカーを含めたベクター配列が切り出されるのに対し、目的配列はプラストーム内の2つのフランク間にある標的部位に残る。このようなプラストームを含む細胞を再生することによって、プラストームの任意所望の改変を含むが選択マーカー遺伝子を欠く植物を生成することができる。色素体及び細胞の分裂中にプラストームがランダムに分離されて、分子分析によって特定することができ植物の再生に使用できる1タイプのプラストームのみを含むセクター(ホモプラスミック(homoplasmic)セクター)が生じる。本明細書に記載する形質転換ベクターの場合のように、また、一般的に従来の形質転換ベクターの場合のように、2つの色素体DNAフランクがほぼ同じサイズの場合、2つの可能な組換え現象はほぼ同じ確率で起こる。したがって、分析したセクターの約50%が所望のプラストームを含むことになり、効率的な識別が可能になる。効率を上げるために、本発明は、所望のプラストームを含む細胞の視覚識別を可能にする技術をさらに記述する(以下を参照)。
【0074】
本発明の別の実施形態は、選択マーカーの一過性の組込みが目的遺伝子の組込み部位以外の別の部位で起こり得る技術を提供する。このために、形質転換ベクターは、色素体DNAに相同な追加の組込み配列を含み、プラストームを用いて完全な形質転換ベクターを組み込むための組換え用の別の部位が用意される。第2のターゲティング部位に組み込まれる選択マーカーのコピー(前記追加の組込み配列)によって、選択中の耐性を付与することができる。したがって、第1のターゲティング部位(たとえば、前記目的配列に隣接する前記配列)に、マーカーを組み込まずに目的配列を安定に組み込むことができる。また、組み込まれた形質転換ベクターのコピーによって、目的配列の組込みカセットに対する長期ソースが提供され得る。十分な数のプラストームに目的配列が安定に組み込まれるまで選択を継続することができる。選択圧を取り除くと、形質転換ベクターの第2のターゲティング部位における不安定な組込みは消失する。2つの異なるターゲティング部位(第1のターゲティング部位:前記目的配列に隣接する前記配列;第2のターゲティング部位:追加の組込み配列)のために、この切り出しには、安定に組み込まれた目的配列は関係しない。この実施形態の適用例を実施例3及び4に記載する。
【0075】
もはや必要でない配列を除去するために、当初のプラストームの配列を用いた前記DNA配列(形質転換ベクター)の組換えを利用する原理は完全に新規なものである。形質転換ベクター上の選択マーカーに隣接する短い配列の反復を用いてプラストーム組込み後のマーカー切り出しを媒介するlamtham及びDay(2000)(国際公開第0181600号)によって記述された方法とは対照的に、本明細書に記載する原理では、それよりも極めて長い相同領域が許容される。したがって、組換えがそれよりも極めて高い確率で起こり得る(Maliga等、1993;Zoubenko等、1994)。また、第2の相同領域がプラストーム上に位置するので、プラストーム組込みが成功した後、特にプラストーム組込みが成功した後だけ、選択マーカーの消失が起こる。
【0076】
選択マーカーを欠くプラストーム突然変異体の生成
本発明は、プラストームに挿入すべき目的配列がない場合、たとえば選択マーカー遺伝子を欠くプラストーム欠失突然変異体の生成にも適用することができる。この場合、プラストーム中で欠失させるべき配列に隣接する2つの色素体DNA配列は、形質転換ベクター上の直近に位置する。従来の欠失ベクターにおいては欠失させるべき配列は選択マーカーで置換されるが、本発明者らの系においては選択マーカーには色素体DNA配列が隣接しない。マーカーのない突然変異体の生成は、選択マーカーの一過性の組込みを用いる上述したのと同じ原理によって達成することができる:第1の形質転換体は選択圧下で樹立され、したがって隣接色素体DNA配列の1つを介する第1の組換え現象によって完全な形質転換ベクターが組み込まれたプラストームを含む。選択圧を取り除いた後、第2の色素体DNAセグメントの2コピー間での第2の組換え現象によって、選択マーカーを含むベクター配列が切り出される。この技術によって、プラストーム配列を置換するよりも純粋な欠失が可能になる。また、突然変異体植物は選択マーカーを含まないので、同じ選択マーカーを用いてさらに形質転換を行うことができる。また、同じ技術をさらに用いてアミノ酸変化(amino acid changes)や改変調節エレメントなど既存のプラストーム配列の改変を導入することができる。
【0077】
光合成に機能上直接的又は間接的に関与する内在性色素体遺伝子を選択マーカーとして使用することができる。光合成に直接関与する遺伝子の例は、光合成電子伝達に必須なpetAである(光合成に間接的に関与する遺伝子の例は、色素体によってコードされたRNAポリメラーゼをコードするrpoAである。rpoAのノックアウト突然変異体は、光合成に直接関与する遺伝子の転写が遮断されるので、光合成を行うことができない)。第1のステップにおいて、光合成に関連する遺伝子を中断することができる。次いで、この材料を第2の色素体形質転換のためのレシピエント系として用いる。ここで、形質転換ベクターを含む色素体の選択は、回復した光合成機能をマーカーとして用いて実施される。この新規なタイプの「マーカー」は、組込み用のいかなる相同配列も隣接せず、色素体中の好ましくは自己複製するプラスミド上に残る。光合成は土壌での植物の生長に必須であるので、光合成関連機能を有するプラスミドを維持するために常に選択がある。1つ又は複数の目的遺伝子の転写を可能にするため、また、「ローリングサークル様」転写による極めて高い発現レベルを達成するために、それぞれの光合成遺伝子はターミネーターエレメントと融合しない。
【0078】
別の手順(実施例11参照)では、目的遺伝子の組込みを媒介するが、選択マーカーの組込みは媒介しないシャトルベクターとして自己複製プラスミドを使用する。選択マーカーは、相同配列が隣接していないので自己複製プラスミドベクター上に残る。形質転換された植物材料がホモプラストミック状態に到達した後に選択圧を取り除くと、ベクターは消失するが、目的遺伝子はプラストームに安定に組み込まれる。完全なエレメントは望ましくない多数の複製を媒介するので、この手順は自己複製をもたらす改変配列に基づいている。プラストーム複製回数を超える複製回数は、選択圧の非存在下でもプラスミドを安定化する(このような多数の複製は、本明細書に記載する自己複製をもたらすエレメントによって媒介される)。したがって、選択圧の非存在下でのプラスミドの消失は、好ましくは、記述した配列エレメントの欠失突然変異体を用いて、複製速度を低下させることによって実施される。
【0079】
この方法の変形方法によって、極めて多数の複製を媒介するエレメントを使用する場合でも、選択マーカーのない形質転換体を生成することが可能になる:マーカーカセット(たとえば、実施例11のaadA遺伝子)には、プラストームに対して非相同である配列のダイレクトリピートが隣接する。実施例11では、細菌ベクターから生じる配列エレメントによってダイレクトリピートがベクターに含まれる。相同組換えによって、マーカー遺伝子がシャトルプラスミドから切り出される。この手順は、lamtham及びDay(2000)によって記述されたマーカー除去にやや類似している。しかし、これに対し、マーカー遺伝子は組込み現象後プラストームから除去されず、自己複製プラスミドから切り出される。
【0080】
追加配列の挿入による所望のトランスプラストミック材料の視覚的識別
本発明は、さらに、一過性のマーカー組込みの方法によって生成される形質転換体をより効率的に識別するための技術を提供する。1つの考えられる方法は、形質転換体の視覚的識別を可能にする配列を挿入することである。このような配列の例は、実施例6に記載するように、色素体において発現され得る緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする配列である。この配列は、色素体DNAフランク間の形質転換ベクター中に目的配列と共に挿入され、したがってプラストームに安定に組み込まれた状態にすることができる。GFPを発現する色素体は緑色蛍光を示すので(Khan及びMaliga、1999;Sidorov等、1999)、このような色素体を含む細胞又はセクターは容易に識別することができる。第2の組換え現象が完全な形質転換ベクター配列を除去する場合、GFPコード配列も除去され、このようなプラストームを含むセクターはもはや蛍光を示さなくなる。これに対し、所望の第2の組換え現象(選択マーカーを含むベクター配列の切り出し及び目的配列の組込み)を示すプラストームは、依然として蛍光性の表現型を生じる。したがって、選択マーカーのないトランスプラストミック細胞又は組織の識別が極めて簡単になる。この手順は、前記配列を含むセクターの視覚的識別を可能にする任意の配列を用いて実施することができる。GFP遺伝子のような遺伝子は形質転換材料に選択上の優位性を付与しないので、遺伝子水平転移による制御のない伝播のリスクが大いに軽減される。また、このような遺伝子は、万一制御されずに伝播しても、ヒト、他の生物又は環境一般に対してなんら予測し得るリスクを含んでいない。
【0081】
突然変異表現型の回復による所望のトランスプラストミック材料の視覚的識別
さらに、本発明は、トランスプラストミック植物に残留する唯一の外来配列が目的配列である方法も提供する。この方法は、2つの形質転換を要する2段階手順に基づいている。第1のステップでは、容易に識別可能な表現型を示す色素体突然変異体が産生される。この表現型は、改変された着色によって生じることが好ましい。このような突然変異体の例は、rpoA遺伝子機能が欠損して白色表現型を示す植物(実施例5参照)又はpetA遺伝子機能が欠損して強いクロロフィル蛍光(hcf)を伴う淡緑色表現型を示す植物(実施例2参照)である。別の例は、ycf3(実施例3)及びycf9それぞれの不活性化突然変異体である。遺伝子機能の破壊は、たとえば、遺伝子又はその一部の破損又は欠失によって起こり得る。このような突然変異体の生成は、好ましくは、上述した一過性の選択マーカーが組み込まれ、選択マーカーを欠いた植物が生じる方法を用いた色素体形質転換によって実施される。細胞の突然変異表現型によって、分離後選択なしで所望の植物材料を視覚的に識別することができる。このような突然変異体植物から得られる材料を、今度は第2の形質転換のための基質として使用することができ、1つ又は複数の目的配列がプラストームに導入される。この目的のための形質転換ベクターは、本発明において上述したのと同じ構造を有するが、突然変異体の破壊された遺伝子機能を修復する配列をさらに含む。この修復配列は、目的配列と共に色素体DNAフランク間の形質転換ベクターに挿入することができ、一方、選択マーカー配列はこのフランクの外側にある。形質転換されたプラストームを含む細胞は、野生型の表現型を示すので容易に識別することができる。完全な形質転換ベクターが第2の組換え現象によって切り出される場合、突然変異遺伝子型が再度形成され、その結果、このようなプラストームを含むセクターは突然変異表現型を示す。これに対し、所望の第2の組換え現象(選択マーカーを含むベクター配列の切り出し及び目的配列の組込み)を示すプラストームは野生型の表現型を有し、それによって所望のトランスプラストームを含む組織の識別が簡単になる。また、この方法によって産生されるトランスプラストミック植物は、所望の目的配列から離れたいかなる追加の配列も含まない。この方法に適したプラストーム突然変異体が生成されると、それは増殖し、任意所望の目的配列の導入に使用することができる;したがって、この方法は新しい目的配列ごとに2度の形質転換を必要とせず、単一の形質転換ステップで所望のトランスプラストミック植物を生成することができる。
【0082】
高等植物の色素体形質転換用aphA−6を用いる方法
これまでのところ、aadA及びnptIIが高等植物の色素体形質転換のために日常的に使用できる唯一の選択マーカー遺伝子である。したがって、高等植物の色素体形質転換のためのさらなる選択マーカーが求められている。
本発明は、以下のステップ、すなわち、
(a)細菌アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼA−6(aphA−6)をコードする配列を選択マーカーとして含むDNAを用いて前記多細胞植物の細胞又はプロトプラストの色素体を形質転換すること、
(b)前記形質転換された細胞又はプロトプラストの増殖を、前記増殖細胞又はプロトプラストを所定濃度のアミノグリコシド抗生物質に曝す条件下で可能にすること、
(c)所定濃度のアミノグリコシド抗生物質に曝す条件下での反復再生サイクル中に、形質転換されたプラストーム及び形質転換されていないプラストームの分離、並びに形質転換された色素体又は形質転換されていない色素体の分離を可能にすること、及び
(d)それらのプラストームにおいて遺伝的に形質転換された細胞及び/又は植物を回収することにより、プラストーム中で形質転換されたトランスジェニック多細胞多色素体(multi−plastidal)植物又はそれらの細胞を生成する方法を提供することによってこの問題を解決する。この方法を、好ましくは、PEGによって媒介された高等植物のプロトプラストの形質転換と組み合わせて実施する。上記方法は、すべての多細胞多色素体植物又はそれらの細胞に適用可能である。タバコ(Nicotiana)種が最も好ましい。
【0083】
遺伝子aphA−6は、Acinetobacter baumaniiに由来する(Bateman及びPurton、2000;Martin等、1988)。これは、以前、単細胞藻類Chlamydomonas reinhardtiiの色素体形質転換のために使用された(Bateman及びPurton、2000)。今回驚くべきことに、本明細書に開示するように十分に制御された抗生物質濃度を用いる同化選択(elaborate selection)手順を使用する場合、高等植物の色素体形質転換に対してaphA−6が使用できることを見出した。抗生物質として、アミノグリコシド抗生物質を使用する。最も好ましい抗生物質はカナマイシンである。
この方法で使用すべきアミノグリコシド抗生物質濃度、特にカナマイシン濃度は、形質転換方法に応じて20〜500μg/ml、好ましくは25〜250μg/ml、より好ましくは50〜200μg/mlである(実施例12参照)。
【0084】
本明細書では、A.baumaniiの前記ヌクレオチド配列を使用することができる。また、遺伝コードの縮重に従ってA.baumaniiのaphA−6と同じアミノ酸配列をコードする配列を使用することができる。また、A.baumanii aphA−6アミノ酸配列に少なくとも50%、好ましくは75%相同な配列を有するaphA−6変異体をコードするヌクレオチド配列を使用することができる。A.baumanii aphA−6アミノ酸配列に少なくとも50%、好ましくは75%同一な配列を有するaphA−6変異体をコードするヌクレオチド配列を使用することが最も有利である。また、中間の条件下、好ましくは高いストリンジェンシー条件下でA.baumanii aphA−6コード配列とハイブリッド形成する配列を使用することができる。
【0085】
nptII遺伝子(aphA−2)などのaphA−6遺伝子は、異なる原核生物から生じるアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼファミリーに属する酵素をコードする(Shaw等 1993、Wright及びThompson 1999)。どちらの酵素も類似の触媒活性を有するが、aphA−6遺伝子産物は、カナマイシン及び他の普通のアミノグリコシドだけでなく、アミカシンなど他のものも解毒することができる広範な耐性プロファイルを有することによって識別される。
【0086】
本明細書では、本発明者らは、高等植物、特にタバコにおいて、aphA−6が汎用の効率的で再現性のある色素体形質転換用マーカーであることを示す(実施例12)。aphA−6遺伝子を用いた全体の形質転換効率はaadA遺伝子を用いて日常的に得られる値よりも低いものの、トランスジェニック色素体形質転換体を日常的に生成するのには十分高い。葉へのaadA構築物の打ち込み(bombardment)からの公表された結果は、1ショット当たり0.5〜5形質転換体である。グリッド打ち込み(grid bombardment)によるaphA−6遺伝子を用いて、本発明者らは2ショットごとに1形質転換体を得た。PEG形質転換とaadA遺伝子による形質転換効率は、0.5×106処理済みプロトプラスト当たり10〜40形質転換体である(Koop等 1996、De Santis−Maciossek等 1999)のに対し、本発明者らはPEG形質転換ごとに約5形質転換体を得た。これに対し、nptIIでは、25葉の打ち込みごとにわずか1色素体形質転換体しか得られなかった。また、多数の核形質転換体がnptIIを用いて再生された系において見られたのに対し、aphA−6を用いた本明細書では、30PCR試験系のうち29が陽性色素体形質転換体であり、核形質転換体は検出されなかった。この効率の向上は、まったく驚くべきことである。それに寄与する要因としては、よりストリンジェントな選択システム、プロトプラスト誘導標的組織、別のカナマイシン解毒酵素の使用などが挙げられる。
【0087】
本発明者らは、一般に使用されているaadA遺伝子に加えて、有用な抗生物質色素体マーカーを初めて樹立した。本発明者らの研究の別の重要な態様は、タバコプラストーム用の3つの新しい挿入部位の記載である。2つのケースにおいて、キメラaphA−6発現カセットを、遺伝子trnR−trnNと遺伝子petA−orf99の間の遺伝子間領域にそれぞれ中立的に(neutrally)導入した。第3のケースにおいて、両方の遺伝子が最終的にycf3調節エレメントの制御下にあるように人工オペロンを生成するycf3コード配列の前にaphA−6コード領域を導入した。
【0088】
カナマイシン耐性が変動することが、異なる色素体プロモーターの制御下にあるaphA−6遺伝子を含む植物において認められた。耐性の上限は、16S rRNAプロモーター又はycf3調節エレメントの制御下にあるaphA−6遺伝子を含む形質転換体それぞれに対して、500mg/l及び50mg/lカナマイシンであった。これに対し、新しく作製されたaphA−6−ycf3オペロンを有する植物から得られるT1子孫は、200mg/lカナマイシンで正常に出芽することができた。外植片と実生のこの明らかなカナマイシンに対する差異は、カナマイシン取り込みの生理的な違い又はycf3調節エレメントからのaphA−6遺伝子の発現における変動によって説明することが可能である。
【0089】
本明細書において、aphA−6遺伝子が、高等植物における色素体形質転換のための新しいドミナントな選択マーカーとして使用できることが示される。順応性のあるマーカーが追加されることは、色素体工学戦略にとって、特にマーカーの再利用と組み合わせた外来遺伝子の段階的なプラストームへの挿入が必要である場合に有用であることが明らかになるはずである。
実施例
【実施例1】
【0090】
色素体ゲノムへの(1フランクを介する)完全なベクターの組込みのPCR分析
色素体形質転換ベクターpKCZ
pKCZは、相同組換えに使用される2つのフランクの間に選択マーカーがクローン化された従来の色素体形質転換ベクターである。このベクターは、タバコ色素体ゲノムの逆方向反復領域中のtrnRとtrnNの間に中立的に挿入されるように設計されている(Zou、2001)。pKCZは、相同組換えのための(GenBank受託番号Z00044のNicotiana tabacumプラストーム配列31106〜132277及び132278〜133396に対応する)2つのフランキング配列及び16s rRNAプロモーターの制御下にあるaadA色素体発現カセットを含む(Koop等、1996)。図3にプラスミド構築物の概略図を示す。
【0091】
第1の形質転換体の生成及びその後のホモプラストミック系の選択
微粒子銃によって媒介される色素体形質転換及びその後の選択を実施例3のように実施した。形質転換体の選択は、aadA遺伝子産物によって付与される抗生物質スペクチノマイシン/ストレプトマイシン耐性を基にした。形質転換された色素体ゲノムを増幅し野生型ゲノムを除去するために、第1の形質転換体(サイクル0)を、スペクチノマイシンを含有する選択培地上でいくつかの追加の(小さな葉の外植片からの)再生ラウンドに供した(以下、サイクルI、サイクルIIなどと称する)。
【0092】
第1の形質転換体のPCRによる分析
DNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN、Hilden、Germany)を用いて単離したDNAすべてを使用してPCRにより色素体形質転換体(サイクル0)を同定した。aadA遺伝子の有無を決定するために、プライマーoSH81(5’−CTATCAGAGGTAGTTGGCGTC−3’)及びoFCH60(5’−CACTACATTTCGCTCATCGCC−3’)を使用した。PCRプログラムを以下のようにした:94℃3分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃2分、30サイクル;最終伸張72℃10分。その結果、(打ち込んだ6つの葉の)54分析からの48系が504bpの予想増幅産物を与えた。タバコプラストームにaadAカセットが正確に組み込まれたことを証明するために、プライマーoSH58(5’−TATTCCGACTTCCCCAGAGC−3’)及びoFCH60(5’−CACTACATTTCGCTCATCGCC−3’)を使用した。プライマーoSH58は、タバコプラストーム中のpKCZの右フランク外側(下流)に位置し、oFCH60と組み合わせて逆方向反復におけるtrnRとtrnNの間にあるaadA発現カセットの組込みから予想される2106bpの産物のみを生成することができる。PCRプログラムを以下のようにした:94℃5分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃3.5分、35サイクル;最終伸張72℃7分。aadA PCR陽性系のうち全48個が予想された2106bpの右フランクaadA産物を与えた。
サイクル0形質転換体のうち10個(1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、2:4、2:5、2:6及び2:7)を選択してさらに分析を進めた。
【0093】
完全に組み込まれたベクターを含む形質転換体PCR分析
通常、安定な色素体形質転換体の産生は、(図1に示すように)形質転換分子の左右各フランクとプラストームの間で起こる2つの同時組換え現象を経て起こると考えられる。図4に、従来の色素体形質転換ベクターpKCZを用いた別の機序を例として示す。ここで、仮想の不安定中間体を生成する結果となる1つの(左又は右)フランクのみとプラストームの組換えによるpKCZベクターの完全な組込みが始めに起こる。続いて、さらなる組換え現象がこの分子のフランク対間で起こり、野生型の状態(ケースI)又は安定に組み込まれたaadAカセット(ケースII)を生成することができる。図4にpKCZの左フランクを介した組換えから得られる状態のみを示す。ただし、右フランクを完全なベクター組込みに使用した場合も同様な状態が起こり得る。この可能性を試験するためにプライマーoSH3(5’−GGCATCAGAGCAGATTG−3’)及びoSH58(5’−TATTCCGACTTCCCCAGAGC−3’)を用いてPCRを実施した。プライマーoSH3はpKCZ(pUC18)のベクターバックボーン中に存在し、プライマーoSH58はタバコプラストーム中のpKCZの右フランク外側(下流)に位置する。図4に示すように完全なpKCZ組込みが起きたとき、これら2つのプライマーを用いて2638bpの産物のみを得ることができる。oSH3の結合部位がないので、(左及び右フランクを含む)野生型プラストーム断片からは予想サイズのPCR産物が得られないはずである。PCRプログラムは以下のとおりであった:94℃5分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃3.5分、35サイクル;最終伸張72℃7分。分析した10個のサイクル0形質転換体のうち9個が2.6kbのPCR産物を示し、これらの系内の色素体ゲノムへのpKCZの完全な組込みと一致した(図5A)。野生型コントロール又は試料1:1においては正確なサイズの産物は認められなかった。pKCZの完全な組込みは不安定中間体が生成する結果となるので、時間の経過とともにこの分子のフランク対間のさらなる組換え現象によって、野生型の状態(ケースI)又は安定に組み込まれたaadAカセット(ケースII)がもたらされると予想される。そのため、サイクルI及びサイクルII植物材料から調製されるDNA試料を、プライマーoSH3及びoSH58を用いてPCRで分析した。図4に示すモデルが正しい場合、プライマーoSH3及びoSH58が2638bpバンドを増幅できる確率は、選択の各再生サイクルによって減少するはずである。その結果、分析した10個のサイクルI系のうちわずか5個のみが予想サイズの強いPCR産物を与えたことから(図5B)、このことは実際に当てはまることが示唆された。また、サイクルIIでは、予想された2638bpバンドが明確に増幅される系の数はさらに減少した。
図4に示すモデルから、完全なベクター組込みに対して陰性であるサイクルIIの系すべてが、先に記述した分子再配列のために、安定に組み込まれたaadAカセット(ケースII)と一致するPCRシグナルを依然として示すはずであることも予想される。タバコプラストームへのaadAカセットの組込を証明するために、プライマーoSH58(5’−TATTCCGACTTCCCCAGAGC−3’)及びoFCH60(5’−CACTACATTTCGCTCATCGCC−3’)を使用した。PCRプログラムは以下のとおりであった:94℃5分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃3.5分、35サイクル;最終伸張72℃7分。サイクルII形質転換体のうち10個すべてが予想された2106bpの右フランクaadA産物を示し(図5D)、図4に示すケースIIシナリオと一致した。
【実施例2】
【0094】
光合成遺伝子の不活性化及び再構成に基づく選択システムの構築
色素体petA遺伝子の不活性化のための形質転換ベクターplCF558の構築
Ausubel等、1999に記載された標準手順を用いてすべてのクローニング手順を実施した。
ベクターplCF558は、(GenBank受託番号Z00044のNicotiana tabacumプラストーム配列63335〜64334及び65598〜66597に対応する)2つのフランキング配列及びその間のaadAカセット(pUC16SaadA Sma vollst、Koop等、1996)を含む。組換え用相同フランクはpetA遺伝子の各1kbの5’及び3’配列であった。petA遺伝子(962bp)及びpetA 3’領域の300bpをaadAカセットで置換した。
以下のオリゴ対をプライマーとして用いて、PCRにより両方のフランキング断片を増幅した。すなわち、oSK13(5’−GGAATTCCATATGGTATAAAACTCATGTGTGTAAGAAA−3’)とoSK14(5’−TCCCCCGGGGGTCCAATCATTGATCGCGAAA−3’)により断片末端にNdeI及びSmaI部位を形成し、oSK15(5’−TTCCCCGGGTTCTAAATAGAAAGAAAG TCAAATTTG−3’)とoSK16(5’−CATGCATGCGAATGAATAAGATTCTCTTAGCTC−3’)により断片末端にSmaI及びSphI部位を形成した。使用したPCRプログラムは以下のとおりであった:94℃3分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃1.5分、30サイクル;最終伸張72℃10分。消化された断片(左/右フランク)及びSmaI断片としてaadAカセットを1段でクローン化してpUC19ベクターとし、これをNdeI及びSphIで開いてベクターplCF558を作製した。構築物plCF558を制限消化によって分析し、PCR増幅断片の配列を決定してフランキング領域の配列が正確かどうかを試験した。形質転換ベクターplCF558を図6及び8に示す。
【0095】
形質転換ベクターplCF820の構築
petA遺伝子の欠失を修復し同時に新しい目的遺伝子(uidA)を導入する第2の形質転換のために、ベクターplCF820を構築した。すなわち、petAコード配列及び(5’/3’調節エレメントを含む)遺伝子カセットを、(ベクターplCF558の場合に用いたのと同じく)左/右フランキング各配列の間にクローン化した。さらに、aphA−6発現カセットを、一過性の発現のためにベクターバックボーン中にクローン化した。1kb左フランク、petA遺伝子配列(962bp)及びpetA遺伝子3’領域の300bpを含む約2.2kbの断片を、以下のオリゴ対をプライマーとして用いてPCR増幅した。すなわち、oSK13(5’−GGAATTCCATATGGTATAAAACTCATGTGTGTAAGAAA−3’)とoSK71(5’−TCCCCCGGGTAGAAAACTATTGATACGTCTTATGG−3’)により断片末端にNdeI及びSmaI部位を形成した。使用したPCRプログラムは以下のとおりであった:94℃3分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃3分、30サイクル;最終伸張72℃10分。(ベクターplCF558におけると同じく)この断片及び右フランクを一緒にクローン化してNdeI/SphIで開かれたpUC19ベクターとし、ベクターplCF561を得た。このベクターは、Nicotiana tabacumプラストーム配列63335〜66597(GenBank受託番号Z00044)に対応する1kb左フランク、petAコード配列、petA 3’領域の300bp及び1kb右フランクを含む。
【0096】
目的遺伝子(uidA)を、両方のフランキング断片の間、より正確にはpetAコード配列の300bp下流の(5’/3’調節エレメントを含む)遺伝子カセットとして、プライマーによって形成されたSmaI部位に導入した。uidA−カセットをSmaI断片としてベクターplCF562(「pUC16SRBSuidA3’rbcL」、Koop等、1996)から取り出し、ベクターplCF561の単一のSmaI部位にクローン化してベクターplCF597を得た。aphA−6発現カセットをplCF599(uidAコード配列の代わりにaphA−6コード配列を含むベクターplCF597の既存の誘導体)からSmaI断片として得て、ベクターplCF597のバックボーン中の平滑末端化され脱リン酸化されたBglI部位に連結してベクターplCF820を得た。
構築物すべてを制限消化によって分析し、PCR増幅断片の配列を決定してフランキング領域の配列が正確かどうかを試験した。形質転換ベクターplCF820を図7及び9に示す。
【0097】
第1の形質転換及びホモプラストミックΔpetA突然変異体の選択
ベクターplCF558を用いた微粒子銃による色素体形質転換及び選択を実施例3に記載したように実施した。PEGによって媒介される、ベクターplCF558を用いた色素体形質転換及び選択を実施例3に記載したように実施した。形質転換体の選択を、aadA遺伝子産物によって付与されるスペクチノマイシン/ストレプチノマイシン(streptinomycin)耐性に基づいて行った。
【0098】
第2の形質転換及びΔpetA突然変異体からのホモプラストミック再構築野生型植物の選択
ベクターplCF820を用いた微粒子銃による色素体形質転換を実施例3に記載したように実施した。PEGによって媒介される、ベクターplCF820を用いた色素体形質転換を実施例3に記載したように実施した。第2の形質転換体の選択を、形質転換色素体におけるaphA−6遺伝子の一過性発現のため、カナマイシン含有培地(25mg/l)上で実施した(完全なベクター組込みによって、カナマイシンマーカーの短期発現が促進される;図9参照)。aphA−6の発現によって付与されたカナマイシン耐性に加えて、形質転換体は、petA遺伝子の再構成を示す濃緑色野生型様表現型を示す。濃緑色再生体(regenerant)を選択培地から取り出し、第1のシュートをB5培地に移して、発根させ生長させた。再構成系は、B5培地上で正常に生長するのに対し、ΔpetA突然変異体はB5培地上での生長が極めて不十分であり発根しない。
【0099】
第1の形質転換後のPCR及びサザンブロットによる形質転換体の分析
植物DNAを単離するため、PCR分析及びサザンブロッティング標準手順を実施例3に記載したように用いた。aadA遺伝子の有無を決定するために、プライマーoFCH59(5’−TGCTGGCCGTACATTTGTACG−3’)及びoFCH60(5’−CACTACATTTCGCTCATCGCC−3’)を用いた。aadAカセットが正確に挿入されたことを証明するために、プライマーoFCH60及びoSK116(5’−AAAATAGATTCATTAGTCCGATACC−3’)を用いた。プライマーoSK116は、左フランクの上流に位置する。使用したPCRプログラムは以下のとおりであった:94℃3分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃2分、30サイクル;最終伸張72℃10分。PCRの結果から44の再生系が正確にプラストーム挿入されたaadA遺伝子を有することが示された(24打ち込み)。
【0100】
ほとんどのΔpetA系で、完全に組み込まれた形質転換ベクターplCF558の存在を示すことが可能であることがさらに分析して証明された。これは、oSH2(ベクターバックボーン中に位置する5’−CAGGAAAC AGCTATGACC−3’)とoSK116又はoSH3(ベクターバックボーン中に位置する5’−GGCATCAG AGCAGATTG−3’)とoSK253(petAコード領域の3’末端に位置する5’−GACTAGTCTAGAAA TTCATTTCGGCCAATTG−3’)のプライマーの組合せを用いたPCRによっても同様に行われた。使用したPCRプログラムは以下のとおりであった:94℃3分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃2.5分、30サイクル;最終伸張72℃10分。
【0101】
サザンブロッティングによりさらに分析して、aadAカセットの組込みに対して形質転換系がホモプラストミックとヘテロプラストミックのどちらであるかが示された。DNAブロット分析を、実施例3に記載したように実施した:植物DNAすべてをNcoI又はBglIIで消化し、断片をゲルで分離し、メンブレン上にブロットした。プロービングのために、DIG標識断片(形質転換ベクターからの左又は右フランク)を用いて野生型と形質転換プラストームを識別した。
【0102】
第2の形質転換後のPCR及びサザンブロットによる形質転換体の分析
植物DNAを単離するため、PCR分析及びサザンブロッティング標準手順を実施例3に記載したように用いた。uidA遺伝子の有無を決定するために、プライマーoSM61(5’−TCACACCGATACCATCAGCG−3’)及びoSM62(5’−ATTGTTTGCCTCCCTGCTGC−3’)を用いた。uidAカセットが正確に挿入されたことを証明するために、プライマーoSM61及びoSK138(5’−AATCGTACCAGTCTCTACTGG−3’)を用いた。プライマーoSK138は、右フランクの下流に位置する。petA遺伝子の再構成は、プライマーoSK116及びoSM62を用いたPCRにより証明することができ、欠失petA遺伝子/petA 3’UTR及び新しい挿入uidA遺伝子の各配列を含むPCR増幅断片が示された。使用したPCRプログラムは以下のとおりであった:94℃3分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃2〜3分、30サイクル;最終伸張72℃10分。
ほとんどの場合、形質転換ベクターplCF820を完全に組み込むことが可能であることがさらに分析して証明された。これは、oSH2/oSK116又はoSH3/oSK138のプライマー組合せを用いたPCRによっても同様になされた。使用したPCRプログラムは以下のとおりであった:94℃3分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃3分、30サイクル;最終伸張72℃10分。
サザンブロッティングによりさらに分析して、形質転換された系がホモプラストミックとヘテロプラストミックのどちらであるかかが示された。DNAブロット分析を、実施例3に記載したように実施した:植物DNAすべてをNcoI又はBglIIで消化し、断片をゲルで分離し、メンブレン上にブロットした。プロービングのために、DIG標識断片(形質転換ベクターからの左又は右フランク)を用いて野生型と形質転換プラストームを識別した。
【実施例3】
【0103】
ycf3の不活性化/再活性化及び1フランクによって媒介されるaphA−6遺伝子組込みのための一過性選択によるGus遺伝子の安定導入
ycf3は、最近、タバコにおいて光化学系I(PSI)複合体を安定に蓄積するために必要であることが示された(Ruf等、1997)。この遺伝子が破壊されると、明るいところで条件的な色素欠乏表現型になる。ホモプラスミックΔycf3植物は、標準照度条件(3.5〜4W/m2)下、薬物及び植物ホルモンを含まない培地上で再生すると完全な白色表現型を示し、一方、低照度条件(0.4〜0.5W/m2)下では表現型はそれよりもかなり改善(ライトグリーン)される。
【0104】
ycf3遺伝子の標的不活性化のための形質転換ベクターplCF577の構築
ycf3の(プラストームヌクレオチド46042〜46206(GenBank受託番号Z00044.1による位置番号)に対応する)第1のエキソン及びスプライシング部位をaadAコード領域で置換することによってycf3遺伝子を不活性にするように設計された形質転換ベクターを構築した。このベクターは、(aadAマーカー遺伝子用だけでなく、内在性のycf3又はtRNA遺伝子用の)いかなる3’調節エレメントも含まない。また、プロモーターエレメントは導入されず、aadA遺伝子は内在性のycf3上流調節エレメントによって転写及び翻訳されると予想された。
【0105】
このベクターは、以下の2対のプライマー、すなわち、oFCH76(5’−Nco I−GTA GCA ATC CAT TCT AGA AT−3’、プラストームヌクレオチド46269〜46288でアニーリング)とoFCH77(5’−Sma I−CGG AAA GAG AGG GAT TCT AAC−3’、プラストームヌクレオチド47205〜46185でアニーリング);oFCH78(5’−Sph I−GAA GTT TCT TTC TTT GCT ACA−3’、プラストームヌクレオチド45033〜45053でアニーリング)とoFCH79(5’−Pst I−TAC GCT TTT T GA AGG TGA AGT−3’、プラストームヌクレオチド46041〜46021でアニーリング)を用いてPCRによってタバコ葉緑体ゲノムから増幅された5’及び3’相同配列が隣接したaadAコード領域を含む。
【0106】
Pfuポリメラーゼ(Promega)を用いたPCR増幅を以下のように実施した:94℃2分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃2分、30サイクル;最終伸張72℃10分。ycf3開始コドン上流の936ヌクレオチドを含む増幅された5’相同断片(プラストームヌクレオチド46269〜47205に対応)を、Sma I及びNco Iで消化し、次いでEco RIで消化したpUC16SaadAプラスミド(Koop等、1996)に連結し、続いてKlenowポリメラーゼ(Promega)を用いて平滑化(fill−in)反応に供し、次いでNco Iで消化してplCF565を生成した。ycf3遺伝子の1000ヌクレオチドを含む増幅した3’相同断片(プラストームヌクレオチド45033〜46041に対応)をPst I及びSph 1で消化し、次いでPst I及びSph Iで切断したplCF565に連結し、最終的に形質転換ベクターplCF577を得た(図10及び11)。プラスミド挿入断片のアイデンティティーを、配列決定(MWG、Munich)によって確認した。
【0107】
第1の形質転換及びホモプラストミックΔycf3突然変異体の選択
タバコの種子(Nicotiana tabacum cv.petit havanna)の表面を滅菌し(70%エタノール中1分、5%Dimanin C(Bayer、Leverkusen、Germany)中10分)、無菌水中で10分間3回洗浄し、B5培地(調製については下記参照)上に置いた。25℃、16時間明/8時間暗サイクル(0.5〜1W/m2、Osram L85W/25 Universal−White蛍光灯)で植物を生長させた。
【0108】
4週齢無菌生長Nicotiana tabacum cv.petit havanna植物から5枚の葉を切り、RMOP培地(調製については下記参照)上に移した。金懸濁液(0.6ミクロン、Biorad、Munchen;60mg/mlエタノール)35μlを無菌Eppendorfカップ(Treff、Fisher Scientific、Ingolstadt、Germany)に移し、遠心分離により回収し、無菌水1mlで洗浄した。金の沈殿物(pellet)を無菌水230μlに再懸濁し、2.5M CaCl2 250μl及びDNA(形質転換ベクターplCF577)25μgを添加した。混合物を完全に再懸濁した後、0.1Mスペルミジン50μlを添加し、混合し、10分間氷上でインキュベートした。次いで金を遠心分離(1分、10000rpm)により回収し、エタノール(100%、p.A.)600μlで2回洗浄した。金を遠心分離(1分、10000rpm)により回収し最後にエタノール(100%、p.A.)72μlに再懸濁した。マクロキャリア(macrocarrier)をマクロキャリアホルダーに挿入し金懸濁液5.4μlを塗布した。Bio−Rad(Hercules、CA、USA)PDS−1000/He Biolistic粒子送達システムを用いて以下のパラメータで打ち込みを実施した。
− 破裂板900psi(6.2MPa)
− ヘリウム圧力1100psi(7.6MPa)
− 真空度26〜27 inches Hg(88〜91kPa)
− マクロキャリア:トップレベル
− 葉片:第3レベル
6葉片それぞれに金懸濁液5.4μlを打ち込んだ。打ち込み後、葉片をRMOP培地上で2日間25℃でインキュベートした。
【0109】
打ち込みから2日後、葉を小片(約3×3mm)に切り、スペクチノマイシン500μg/mlを含有する固体RMOP培地に移した。2週後、次いで3週ごとにさらなる再生体が出現しなくなるまで、葉片をさらに切って新鮮な培地に移した。第1のΔycf3形質転換体は、スペクチノマイシン耐性を示し、明かりの中で緑色表現型を示したが、依然としてヘテロプラストミックであった。形質転換された色素体DNA分子を増幅し野生型ゲノムを排除するために、第1の形質転換体を選択培地上でさらに3ラウンドの再生に供した。分離によって白色及び緑色の各セクターが出現したので、ホモプラストミック突然変異形質転換体を得るために、白色セクターからの材料を非選択培地上でさらにいくつかの再生ラウンドに供した。ホモプラストミック形質転換系を固体VBW培地(Aviv及びGalun、1985)に根付かせ生長させた。
RMOP(KOHでpH5.8):NH4NO3(1650μg/ml)、KNO3(1900μg/ml)、CaCl2・2H2O 440(μg/ml)、MgSO4・7H2O(370μg/ml)、KH2PO4(170μg/ml)、EDTA−Fe(III)Na(40μg/ml)、KI(0.83μg/ml)、H3BO3(6.2μg/ml)、MnSO4・H2O(22.3μg/ml)、ZnSO4・7H2O(8.6μg/ml)、Na2MoO4・2H2O(0.25μg/ml)、CuSO4・5H2O(0.025μg/ml)、CoCl2・6H2O(0.025μg/ml)、イノシトール(100μg/ml)、チアミンHCl(1μg/ml)、ベンジルアミノプリン(1μg/ml)、ナフタレン酢酸(0.1μg/ml)、スクロース(30000μg/ml)、精製寒天(8000μg/ml)。
B5(KOHでpH5.7):KNO3(2500μg/ml)、CaCl2・2H2O(150μg/ml)、MgSO4・7H2O(250μg/ml)、NaH2PO4・H2O(150μg/ml)、(NH4)2SO4(134μg/ml)、EDTA−Fe(III)Na(40μg/ml)、KI(0.75μg/ml)、H3BO3(3μg/ml)、MnSO4・H2O(10μg/ml)、ZnSO4・7H2O(2μg/ml)、Na2MoO4・2H2O(0.25μg/ml)、CuSO4・5H2O(0.025μg/ml)、CoCl2・6H2O(0.025μg/ml)、イノシトール(100μg/ml)、ピリドキシン−HCl(1μg/ml)、チアミン−HCl(10μg/ml)、ニコチン酸(1μg/ml)、スクロース(20000μg/ml)、精製寒天(7000μg/ml)。
VBW(KOHでpH5.8):NH4NO3(1650μg/ml)、KNO3 1900(μg/ml)、CaCl2・2H2O(440μg/ml)、MgSO4・7H2O(370μg/ml)、KH2PO4(170μg/ml)、EDTA−Fe(III)Na(40μg/ml)、KI(0.83μg/ml)、H3BO3(6.2μg/ml)、MnSO4・H2O(22.3μg/ml)、ZnSO4・7H2O(8.6μg/ml)、Na2MoO4・2H2O(0.25μg/ml)、CuSO4・5H2O(0.025μg/ml)、CoCl2・6H2O(0.025μg/ml)、イノシトール(100μg/ml)、ピリドキシン−HCl(0.5μg/ml)、チアミン−HCl(1μg/ml)、グリシン(2μg/ml)、ニコチン酸(0.5μg/ml)、インドリル酢酸(2μg/ml)、キネチン(0.2μg/ml)、スクロース(30000μg/ml)、カゼイン加水分解物(500μg/ml)、精製寒天(7000μg/ml)。
【0110】
PCR及びサザンブロッティングによる分析
色素体形質転換体をPCR増幅によって同定した。24独立系の第1の再生体から単離したDNAすべてをPCR用の鋳型として用いた。2セットのプライマー(配列は実施例3を参照)、すなわちoFCH59とoFCH60、oFCH52とoFCH53を用いてトランスプラストミック植物を分析した。oFCH52とoFCH53によって、野生型プラストームから900bpの増幅産物が生成し、形質転換プラストームから1476bpの産物が生成するはずであるのに対し、oFCH59とoFCH60では、形質転換植物から480bpの増幅産物が生成し、野生型からは産物は生成しないはずである。その結果、14系の形質転換体が色素体ゲノム中に正確なaadA挿入断片を有していることがわかる。データはそれぞれの系の表現型にも一致し、色素欠乏がycf3の欠失と相関することが示されている。
【0111】
DNAゲルブロット分析によってホモプラスミーを確認した。低照度条件下で生長させたΔycf3突然変異体の若葉から単離したゲノムDNA(第4の再生サイクル)を、DNAゲルブロット分析に使用した。詳細な手順は以下のとおりである。すなわち、分析植物当たり合計4μgの植物DNAを制限酵素Xma JIで消化し、TAE−アガロースゲル(0.8%)上で分離した。Ausubel等(1999)が記述したように、このDNAを変性し、正に帯電したナイロンメンブレン(Hybond−N+、Amersham)に移した。このフィルターを、DIG Easy Hyb Buffer(Roche Diagnostics GmbH、Mannheim、Germany)中のジゴキシゲニン標識プローブとハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーションシグナルをDIG Luminescent Detection Kit(Roche)を用いて検出した。このメンブレンを室温で2時間X−OMAT LSフィルムに曝した。
【0112】
DIG標識プローブを調製するため、タバコゲノムDNAを鋳型として使用し以下のプライマー対、すなわち、oFCH69(タバコプラストーム配列47149〜47169に対応する5’−CAT TGG AAC TGC TAT GTA GGC−3’)とoFCH64(タバコプラストーム配列47667〜47647に対応する5’−GAA TTA CCA AAC CAT TTG ACC C−3’)を用いて520bp断片を増幅した。RocheのPCR DIG Probe Synthesis Kitを使用した。PCRプログラムは以下のとおりであった:94℃2分、1サイクル;94℃30秒、55℃30秒、72℃1分、30サイクル;最終伸張72℃10分。QIAquick Gel Extraction Kit(QIAgen、Hilden、Germany)を用いて増幅断片をゲル精製し、次いでハイブリダイゼーションに使用した。このプローブによって、形質転換されたプラストームから2780bpのシグナルが得られ、野生型プラストームから2198bpのシグナルが得られるはずである。その結果、6つの試験突然変異体系すべてで野生型色素体DNAが検出されないことがわかった。
【0113】
ycf3遺伝子再構成用形質転換ベクターplCF7611の構築
ycf3遺伝子を再構成し、aadA遺伝子を除去し、同時にuidA遺伝子を導入し、1フランク組込みによってカナマイシン耐性を付与するaphA−6遺伝子を一過性に導入する目的で、突然変異Δycf3系を形質転換するように形質転換ベクターplCF7611を設計した。
【0114】
ycf3の上流位置にuidAコード領域を導入するために、断片末端の所望の制限部位(SphI/PstI及びNcoI/SmaI)と、新たに形成された人工オペロンとして再構成ycf3遺伝子を翻訳するシグナルとして役立つ短いリボソーム結合部位(RBS)配列とを付加するPCRにより、2つのフランク(プラストームヌクレオチド45033〜46266及び46269〜47205)を増幅した。uidA遺伝子及びycf3をycf3 5’調節エレメントの制御下で同一方向に転写する。以下の2対のオリゴヌクレオチドプライマーを使用した。すなわち、oFCH139(5’−Pst I−ATC ACT AGT TGT AGG GAG GGA TCC(リボソーム結合部位)−ATG CCT AGA TCA CGG ATA AA−3’、プラストームヌクレオチド46266〜46247でアニーリング)とoFCH78(5’−Sph I−GAA GTT TCT TTC TTT GCT ACA−3’、プラストームヌクレオチド45033〜45053でアニーリング);oFCH76(5’−Nco I−GTA GCA ATC CAT TCT AGA AT−3’、プラストームヌクレオチド46269〜46288でアニーリング)とoFCH77(5’−Sma I−CGG AAA GAG AGG GAT TCT AAC−3’、プラストームヌクレオチド47205〜46185でアニーリング)である。Taqポリメラーゼ(Promega)を用いたPCR増幅を以下のように実施した:94℃2分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃2分、30サイクル;最終伸張72℃10分。2つのフランクを対応する酵素で消化し、(PstI/NcoI断片として調製される)gusコード領域と共にSmaI/SphIで線形化したpUC19に連結してplCF601を得た。
【0115】
色素体ゲノム中に1相同フランクを介してaphA−6発現カセットを一過性に導入するために、ベクターB1(Muhlbauer等、2002)のaadAコード領域及び付属の3’UTRをNcoI/KpnIで消化して除去し、ベクターplCF606(Huang等、2002)のaphA−6コード領域及び隣接する3’UTRで置換してベクターplCF746を得た。ベクターplCF746から左フランク及びaphA−6発現カセットをPmaCI/KpnI断片として取り出し、T4 DNAポリメラーゼ処理により平滑末端化し、(子ウシ腸アルカリホスファターゼ処理によって脱リン酸化した)ベクターplCF601の単一ScaI制限部位に連結して最終的に形質転換ベクターplCF7611を得た(図12及び13)。
【0116】
Δycf3突然変異体系の色素体形質転換及びホモプラストミック系の選択
プロトプラストへのPEG媒介膜貫通DNA導入は、高等植物の色素体形質転換のための再現性のよい方法である(Golds等、1993;O’Neill等、1993)。最近、Dovzhenko等、1998によってプロトプラスト再生が最適化された。
A.プロトプラスト単離:低照度条件下の固体VBW培地で生長させた無菌ホモプラストミックΔycf3突然変異体からの葉を1mm細片に切り、F−PIN培地に溶解した0.25%セルラーゼR10及び0.25%macerozyme R10(Yakult、Honsha Japan)と共に終夜インキュベートした。ろ過、浮遊及び沈降の各標準操作(Koop等、1996)に従って、プロトプラストを形質転換培地に再懸濁し、プロトプラストの総数を決定し、密度を5×106プロトプラスト/mlに調整した。
F−PIN媒体(pH5.8(KOH)、浸透圧モル濃度:550mOsm):KNO3(1012μg/ml)、CaCl2・2H2O(440μg/ml)、MgSO4・7H2O(370μg/ml)、KH2PO4(170μg/ml)、コハク酸アンモニウム(10mlの2M保存溶液)、EDTA−Fe(III)・Na−塩(40μg/ml)、KJ(0.75μg/ml)、H3BO3(3μg/ml)、MnSO4・H2O(10μg/ml)、ZnSO4・7H2O(2μg/ml)、Na2MoO4・2H2O(0.25μg/ml)、CuSO4・5H2O(0.025μg/ml)、CoCl2・6H2O(0.025μg/ml)、イノシトール(200μg/ml)、ピリドキシン−HCl(2μg/ml)、チアミン−HCl(1μg/ml)、ビオチン(0.02μg/ml)、ニコチン酸(2μg/ml)、BAP(1μg/ml)、NAA(0.1μg/ml)、両性バッファー74(10ml)、スクロース(〜130000μg/ml)。
変換媒体(pH5.8(KOH)、浸透圧モル濃度:550mOsm):MgCl2・6H2O(3050μg/ml)、MES(1000μg/ml)、マンニトール(〜80000μg/ml)。
【0117】
B.色素体形質転換及びプロトプラスト包埋:DNA(形質転換ベクターplCF761)50μg、F−PCN7μl及びプロトプラスト懸濁液100μl(500,000細胞)を40%PEG溶液125μlに添加し、慎重に混合し、7.5分間インキュベートした。さらにF−PCN125μlを添加し、混合し、2分間インキュベートした。(F−PCNで)体積を3mlにし、F−アルギン酸培地3mlを添加した。プロトプラスト−アルギン酸混合物625μlをCa2+培地表面上のプロピレングリッドに塗布することによって薄層アルギン酸包埋を実施する。凝固グリッドを取り除き、平衡用液体F−PCN培地に反転して置いた後(10ml、60分間)、F−PCN2mlを含む新しいペトリ皿に移した。包埋したプロトプラストを暗所でまず20時間、次いで低照度条件に移してインキュベートした(通常の16時間昼/8時間夜サイクル)(Dovzhenko等、1998)。
F−PCN媒体(pH5.8(KOH)、浸透圧モル濃度:550mOsm):KNO3(1012μg/ml)、CaCl2・2H2O(440μg/ml)、MgSO4・7H2O(370μg/ml)、KH2PO4(170μg/ml)、コハク酸アンモニウム(10mlの2M保存溶液)、EDTA−Fe(III)・Na−塩(40μg/ml)、KJ(0.75μg/ml)、H3BO3(3μg/ml)、MnSO4・H2O(10μg/ml)、ZnSO4・7H2O(2μg/ml)、Na2MoO4・2H2O(0.25μg/ml)、CuSO4・5H2O(0.025μg/ml)、CoCl2・6H2O(0.025μg/ml)、イノシトール(200μg/ml)、ピリドキシン−HCl(2μg/ml)、チアミン−HCl(1μg/ml)、ビオチン(0.02μg/ml)、ニコチン酸(2μg/ml)、BAP(1μg/ml)、NAA(0.1μg/ml)、両性バッファー 74(10ml)、スクロース(〜20000μg/ml)、グルコース(65000μg/ml)。
F−アルギン酸媒体(pH5.8(KOH)、浸透圧モル濃度:550mOsm):MES(1370μg/ml)、MgSO4・7H2O(2500μg/ml)、MgCl2・6H2O(2040μg/ml)、マンニトール(77000μg/ml)、アルギン酸(24000μg/ml)。
Ca 2+ −媒体(pH5.8(KOH)、浸透圧モル濃度:550mOsm):MES(1950μg/ml)、CaCl2・2H2O(2940μg/ml)、マンニトール(82000μg/ml)、精製寒天(10000μg/ml)。
【0118】
形質転換から1週後に、包埋したプロトプラストをカナマイシン25μg/mlを含む固体RMOP培地に移し、低照度条件で2週間培養した。その後、さらなる再生体が出現しなくなるまで、2週ごとにグリッドを新鮮な培地に移し、強光条件で培養した。第1の緑色再生体は6週後に出現し、それらを個別にペトリ皿に移した。予想したように、第1のycf3再構成形質転換体はカナマイシン耐性を示し、光の下で分離した表現型を示したが、依然としてヘテロプラストミックであった。ycf3再構成色素体DNA分子を増幅し、ycf3欠失ゲノムを除去し、aphA−6マーカー遺伝子を除去するために、抗生物質を含まないB5培地に形質転換体を移して分離させた。緑色セクターが培養の3週目に出現した。緑色セクターからの材料を非選択培地上でさらに継代培養し、マーカーのないホモプラストミックycf3再構成形質転換体を得るためにさらにいくつかの再生サイクルに供した。得られた緑色表現型を示す系を生長用温室に移した後、固体B5培地に根付かせた。
【0119】
第2のトランスプラストミック植物の分子分析
色素体形質転換体をPCR増幅により同定した。緑色表現型を示し光独立栄養的に生長可能である第1の形質転換体から単離したDNAすべてを、以下のオリゴヌクレオチドプライマー、すなわち、oSM61(uidAコード領域の5’部分由来の5’−TCACACCGATACCATCAGCG−3’)、oSM62(uidAコード領域の3’部分由来の5’−ATTGTTTGCCTCCCTGCTGC−3’)、oFCH27(5’−TGC TCA AGA CTT TAG TGG ATC−3’、プラストームヌクレオチド44799〜44819でアニーリング)、oSM58(5’−TATTCCGACTTCCCCAGAGC−3’、プラストームヌクレオチド109138〜109157でアニーリング)、oFCH168(aphA−6コード領域の5’部分由来の5’−TCA GTC GCC ATC GGA TGT TT−3’)及びoFCH169(aphA−6コード領域の3’部分由来の5’−ACC AAT CTT TCT TCA ACA CG−3’)を用いるPCR分析の鋳型として使用した。再構成植物から500bpの増幅産物を生成し、未変化の第1のラウンドの形質転換体からは産物を生成しないはずであるoSM61及びoSM62を、uidA遺伝子の存在を検出するために用いた。oFCH27とoSM61の組合せは、正確に形質転換されたプラストームからの約3000bpの産物を増幅することによって、第2のラウンドの形質転換体が正確なgus挿入断片を有するか否かを決定することができる。oFCH168及びoFCH169を、aphA−6遺伝子の存在を検出するために用いた。oSM58及びoFCH169を、1相同フランクを介した(aphA−6遺伝子を含む)完全なベクター配列の組込みを検出するために用いた。合計2つの独特なycf3再構成タバコ色素体形質転換体が、1つのPEG形質転換実験から得られた。データから、uidA遺伝子が2つの相同フランクを介する組込みによって色素体ゲノムに組み込まれるのに対し、aphA−6遺伝子が1つのフランクを介する組込みによって導入されることが示されている。
【0120】
正確な組込み及びホモプラストミック遺伝子型の別の証拠は、DNAゲルブロット分析から得られた。無菌生長植物から単離したゲノムDNAをXma JIで消化した。使用したプローブは、Δycf3突然変異体の場合と同じであった(DNAブロッティング及びハイブリダイゼーションの詳細手順は上記を参照されたい)。プローブは、野生型プラストームに対して2219bpのシグナル、第2のラウンドにおいて正確に形質転換されたプラストームに対して4123bpのシグナル、及び未変化の第1のラウンドの形質転換体に対して2793bpのシグナルを生成する。
【0121】
aadAマーカー及びaphA−6マーカーが除去されたことを確認するために、このブロットのさらなるハイブリダイゼーション(以前のプローブは、ストリッピング操作によって除去されている)を、aadA遺伝子の480bp断片及びaphA−6遺伝子の500bp断片をプローブとして用いて実施した。プローブを作製するために、供給元(Roche)の手順に従ってaadA用プライマーoFCH59及びoFCH60、aphA−6用プライマーoFCH168及びoFCH169をPCR DIG標識化反応に用いた。
【実施例4】
【0122】
1フランクによって媒介されるaphA−6遺伝子組込みのための一過性選択によるプラストームへのGus遺伝子の安定導入
形質転換及びカナマイシン耐性形質転換体の選択
形質転換ベクターplCF7611(構築については実施例3を参照)を、PEG媒介方法(詳細は実施例3を参照)によって野生型タバコに形質転換した。
【0123】
形質転換から1週後に、包埋したプロトプラストをカナマイシン25μg/mlを含む固体RMOP培地に移した。さらなる再生体が出現しなくなるまで、2週ごとにグリッドを新鮮な培地に移した。第1の緑色再生体は6週後に出現し、それらをペトリ皿に個別に移した。ホモプラストミック形質転換体を得るために、第1の形質転換体を、カナマイシン25μg/mlを含むRMOP培地上でさらにいくつかの再生サイクルに供した。aphA−6マーカー遺伝子を切り出す場合、マーカーのない形質転換体を得るために、ホモプラストミック形質転換体を非選択培地上でいくつかの追加の再生ラウンドに供した。得られた緑色表現型を示す系を固体B5培地に根付かせ、次いで温室に移して生長させた。
【0124】
PCR及びサザンブロッティングによる分析
色素体形質転換体をPCR増幅によって同定した。緑色表現型及びカナマイシン耐性を示す第1の形質転換体から単離したDNAすべてを、以下のオリゴヌクレオチドプライマー、すなわち、oSM61(uidAコード領域の5’部分由来の5’−TCACACCGATACCATCAGCG−3’)、oSM62(uidAコード領域の3’部分由来の5’−ATTGTTTGCCTCCCTGCTGC−3’)、oFCH27(5’−TGC TCA AGA CTT TAG TGG ATC−3’、プラストームヌクレオチド44799〜44819でアニーリング)、oSM58(5’−TATTCCGACTTCCCCAGAGC−3’、プラストームヌクレオチド109138〜109157でアニーリング)、oFCH168(aphA−6コード領域の5’部分由来の5’−TCA GTC GCC ATC GGA TGT TT−3’)及びoFCH169(aphA−6コード領域の3’部分由来の5’−ACC AAT CTT TCT TCA ACA CG−3’)を用いるPCR分析の鋳型として使用した。形質転換体から500bpの増幅産物を生成し、野生型からは産物を生成しないはずであるoSM61及びoSM62を、uidA遺伝子の存在を検出するために用いた。oFCH27とoSM61の組合せは、正確に形質転換されたプラストームからの約3000bpの産物を増幅することによって、形質転換体が正確なuidA挿入断片を有するか否かを決定することができる。oFCH168及びoFCH169を、aphA−6遺伝子の存在を検出するために用いた。oSM58及びoFCH169を、1相同フランクを介した(aphA−6遺伝子を含む)完全なベクター配列の組込みを検出するために用いた。合計2つのタバコ色素体形質転換体が、1つのPEG形質転換実験から得られた。データから、uidA遺伝子が2つの相同フランクを介する組込みによって色素体ゲノムに安定に組み込まれるのに対し、aphA−6遺伝子が1つのフランクを介する組込みによって導入されることが示されている。
【0125】
正確な組込み及びホモプラストミック遺伝子型の別の証拠は、DNAゲルブロット分析から得られた。無菌生長植物から単離したゲノムDNAをXma JIで消化した。使用したプローブは、Δycf3突然変異体の場合と同じであった(DNAブロッティング及びハイブリダイゼーションの詳細な手順は実施例3を参照されたい)。プローブは、野生型プラストームに対して2219bpのシグナル、正確に形質転換されたプラストームに対して4123bpのシグナルを生成する。aphA−6マーカーが除去されたことを確認するために、このブロットのさらなるハイブリダイゼーション(以前のプローブは、ストリッピング操作によって除去されている)を、aphA−6遺伝子の500bp断片をプローブとして用いて実施した。プローブを作製するために、供給元(Roche)の手順に従ってaphA−6用プライマーoFCH168及びoFCH169をPCR DIG標識化反応に用いた。
【実施例5】
【0126】
rpoAの不活性化/再活性化及び1フランクによって媒介されるaphA−6遺伝子組込みのための一過性選択によるインターフェロン遺伝子の安定導入
色素体染色体は、4つのRNAポリメラーゼ遺伝子、すなわち、真正細菌の3つのRNAポリメラーゼコア遺伝子に類似している設計されたrpoA、B、C1及びC2をコードする。rpoB、C1及びC2の遺伝子は(NEPによって転写された)オペロン中に整列し、一方、rpoAの遺伝子は、リボソームタンパク質を主にコードする大きな遺伝子クラスター中に位置する。PEP(色素体によってコードされるポリメラーゼ)突然変異体においてはrpoA遺伝子のセンス転写物レベルが減少するので(Krause等、2000)、rpoAはPEPによって転写されている可能性がある。
【0127】
色素体ゲノムからのrpoAの欠失は、色素欠乏表現型をもたらす(De Santis−Maciossek等、1999)。色素欠乏ΔrpoA植物(白色植物)は、光独立栄養的に生長することができない。しかし、光合成の欠損を補うためにスクロース含有培地上に維持すると、それらは野生型植物よりも遅いが正常に生長する。
【0128】
rpoA遺伝子の標的不活性化(targeted inactivation)のための形質転換ベクターplCF836の構築
(プラストームヌクレオチド81359〜81468に対応する)rpoAコード領域の第1の110bpをuidAコード領域で置換することによってrpoA遺伝子を不活性化するように設計した形質転換ベクターを構築した。このベクターは、いかなる3’調節エレメントも含まない。また、プロモーターエレメントは導入されず、Gus遺伝子は内在性のrpoA上流調節エレメントによって転写され翻訳されると予想される。
【0129】
このベクターは、以下の2対のプライマー、すなわち、oFCH112(5’−Nco I−TAC TAT TAT TTG ATT AGA TC−3’、プラストームヌクレオチド81471〜81490でアニーリング)とoFCH113(5’−Sma I−TAA TTA CTG AAT CGC TTC CCA−3’、プラストームヌクレオチド82470〜82450でアニーリング);oFCH295(5’−HindIII−TTA AAA CTT ATT TTT TGC TAA−3’、プラストームヌクレオチド80455〜80475でアニーリング)とoFCH296(5’−Pst I−TAT GAA AGG CCA AGC CGA CA−3’、プラストームヌクレオチド81358〜81339でアニーリング)を用いたPCRによってタバコ葉緑体ゲノムから増幅された5’及び3’相同配列が隣接するuidAコード領域を含む。Pfuポリメラーゼ(Promega)を用いたPCR増幅を以下のように実施した:94℃2分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃2分、30サイクル;最終伸張72℃10分。対応する酵素で2つのフランクを消化し、(Pst I/NcoI断片として調製した)uidAコード配列と共に、Sma I/HindIIIで線形化したpUC19に連結してplCF835を得た。
【0130】
aphA−6遺伝子を一過性に導入するために、aphA−6カセットをXma I断片として調製し、Xma Iで線形化したplCF835に連結して最終的に形質転換ベクターplCF836(図14)を得た。aphA−6カセットは、相同フランクの外側に位置する。
【0131】
第1の形質転換及びホモプラストミックΔrpoA突然変異体の選択
形質転換ベクターplCF836を、PEG媒介方法(詳細は実施例3を参照)によって野生型タバコに形質転換した。
【0132】
形質転換から1週後に、包埋したプロトプラストをカナマイシン25μg/mlを含む固体RMOP培地に移した。さらなる再生体が出現しなくなるまで、2週ごとにグリッドを新鮮な培地に移した。第1の緑色再生体は6週後に出現し、それらを個別にペトリ皿に移した。予想されたように、第1のrpoA−形質転換体はカナマイシン耐性を示し、光の下で緑色表現型を示したが、依然としてヘテロプラストミックであった。aphA−6マーカー遺伝子を分離し切り出すため、阻害剤を含まないRMOP培地に形質転換体コロニーを移した。白色セクターが培養の3〜5週目に出現した。白色セクターからの材料を非選択培地上でさらに継代培養し、マーカーのないホモプラストミック突然変異形質転換体を得るためにさらに5サイクルの再生に供した。得られた系は白色表現型を示した。このトランスプラストミック系を固体VBW培地に根付かせ生長させて第2の形質転換用の突然変異体植物材料を得た。
【0133】
PCR及びサザンブロッティングによる分析
色素体形質転換体をPCR増幅によって同定した。カナマイシン耐性を示す第1の形質転換体から単離したDNAすべてを、以下のオリゴヌクレオチドプライマー、すなわち、oSM61(uidAコード領域の5’部分由来の5’−TCA CAC CGA TAC CAT CAG CG−3’)、oSM62(uidAコード領域の3’部分由来の5’−ATT GTT TGC CTC CCT GCT GC−3’)、oFCH121(タバコプラストーム配列80240〜80259に対応する5’−TAA ATC CCT AAC TTT AGG TC−3’)、oFCH168(aphA−6コード領域の5’部分由来の5’−TCA GTC GCC ATC GGA TGT TT−3’)及びoFCH169(aphA−6コード領域の3’部分由来の5’−ACC AAT CTT TCT TCA ACA CG−3’)を用いるPCR分析のための鋳型として使用した。形質転換体から500bpの増幅産物を生成し、野生型からは産物を生成しないはずであるoSM61及びoSM62を、uidA遺伝子の存在を検出するために用いた。oFCH121とoSM61の組合せは、正確に形質転換されたプラストームからの約1620bpの産物を増幅することによって、形質転換体が正確なgus挿入断片を有するか否かを決定することが可能である。oFCH168及びoFCH169を、約500bpの産物を増幅することによってaphA−6遺伝子の存在を検出するために用いた。合計4つのタバコ色素体形質転換体が、1つのPEG形質転換実験から得られた。その結果、uidA遺伝子が2つの相同フランクを介する組込みによって色素体ゲノムに安定に組み込まれるのに対し、aphA−6遺伝子が1つのフランクを介する組込みによって導入されることが示されている。このデータは、それぞれの系の表現型にも一致し、色素欠乏がrpoAの欠失と相関することが示された。
【0134】
正確な組込み及びホモプラストミック遺伝子型の別の証拠は、DNAゲルブロット分析によって得られた。無菌生長植物から単離したゲノムDNAをEco RIで消化した。DIG標識プローブを調製するために、タバコゲノムDNAを鋳型として使用して、以下のプライマー対、すなわち、oFCH206(タバコプラストーム配列81971〜81990に対応する5’−TGA GTC AGA GAT ATA TGG AT−3’)とoFCH113(5’−TAA TTA CTG AAT CGC TTC CCA−3’、プラストームヌクレオチド82470〜82450でアニーリング)を用いて520bp断片を増幅した。RocheのPCR DIG Probe Synthesis Kitを使用した。PCRプログラムは以下のとおりであった:94℃2分、1サイクル;94℃30秒、55℃30秒、72℃1分、30サイクル;最終伸張72℃10分。QIAquick Gel Extraction Kit(QIAgen、Hilden、Germany)を用いて増幅断片をゲル精製し、次いでハイブリダイゼーションに使用した。DNAブロッティング及びハイブリダイゼーションの詳細な手順は実施例3を参照されたい。このプローブによって、形質転換されたプラストームから3133bpのシグナル、野生型プラストームから2384bpのシグナルが生成するはずである。その結果、4つの試験突然変異体系すべてにおいて野生型色素体DNAを検出できないことが示された。aphA−6マーカーが除去されたことを確認するために、このブロットのさらなるハイブリダイゼーション(以前のプローブは、ストリッピング操作によって除去されている)を、aphA−6遺伝子の500bp断片をプローブとして用いて実施した。プローブを作製するために、供給元(Roche)の手順に従ってaphA−6用プライマーoFCH168及びoFCH169をPCR DIG標識化反応に用いた。
【0135】
rpoA遺伝子の再構成及びインターフェロン遺伝子の導入のための形質転換ベクターplCF838の構築
rpoA遺伝子を再構成し、同時にインターフェロン遺伝子を導入し、カナマイシン耐性を付与するaphA−6遺伝子を一過性に導入する目的で、突然変異体ΔrpoA系を形質転換するように形質転換ベクターplCF838を設計した。
【0136】
Prrn16Sプロモーター、T7G10リーダー及びインターフェロンコード領域をrpoAの上流位置に導入するために、断片末端の所望の制限部位と、新たに形成された人工オペロンとして再構成rpoA遺伝子を翻訳するシグナルとして役立つ短いリボソーム結合部位(RBS)配列とを付加するPCRにより、2つのフランク(プラストームヌクレオチド81471〜82470及び80455〜81468)を増幅した。インターフェロン遺伝子及びrpoAをPrrn16Sプロモーターの制御下で同一方向に転写する。以下の2対のオリゴヌクレオチドプライマーを使用した。すなわち、oFCH297(5’−Pst I−GGT ACT ATT ATT TGA TTA GAT−3’、プラストームヌクレオチド81469〜81489でアニーリング)とoFCH298(5’−Hin dIII−TAA TTA CTG AAT CGC TTC CCA−3’、プラストームヌクレオチド82470〜82450でアニーリング);oFCH299(5’−Eco RI−TTA AAA CTT ATT TTT TGC TAA−3’、プラストームヌクレオチド80455〜80475でアニーリング)とoFCH300(5’−Sac I−TC ACT AGT TGT AGG GAG GGA TCC(RBS)ATG GTT CGA GAG AAA GTA AC−3’、プラストームヌクレオチド81468〜81449でアニーリング)である。Taqポリメラーゼ(Promega)を用いたPCR増幅を以下のように実施した:94℃2分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃2分、30サイクル;最終伸張72℃10分。
Prrn16Sプロモーター−インターフェロン断片を、まずPst I/Kpn Iを用いてplCF781−3から切断し、次いでPst I/Kpn Iを用いて線形化したpUC19に連結してplCF834を得た。2つの増幅されたフランクを対応する酵素で消化し、Prrn16Sプロモーター−インターフェロン断片と共にplCF834に逐次連結してplCF837を得た。
【0137】
aphA−6遺伝子を一過性に導入するために、aphA−6カセットをSma I断片として調製し、Sca Iを用いて線形化したplCF837に連結して最終的に形質転換ベクターplCF838(図15)を得た。aphA−6カセットは、相同フランクの外側に位置する。
【0138】
ΔrpoA突然変異体系の色素体形質転換及びホモプラストミック系の選択
形質転換ベクターplCF838を、PEG媒介方法(詳細は実施例3参照)によってΔrpoA突然変異体系に形質転換した。
【0139】
形質転換後、包埋したプロトプラストを暗所で培養した。1週後、包埋したプロトプラストをカナマイシン15μg/mlを含む固体RMOP培地に移し、低照度条件で2週間培養した。その後、さらなる再生体が出現しなくなるまで、2週ごとにグリッドを新鮮な培地に移し正常な生長条件で培養した。第1の緑色再生体は6週後に出現し、それらをペトリ皿に個別に移した。予想したように、第1のrpoA再構成形質転換体はカナマイシン耐性を示し、光の下で分離した表現型を示したが、依然としてヘテロプラストミックであった。rpoA再構成色素体DNA分子を増幅し、rpoA欠失ゲノムを排除し、aphA−6マーカー遺伝子を除去するために、抗生物質を含まないB5培地に形質転換体を移して分離させた。緑色セクターが培養の3週目に出現した。緑色セクターからの材料を非選択培地上でさらに継代培養し、マーカーのないホモプラストミックrpoA再構成形質転換体を得るためにいくつかのさらなる再生サイクルに供した。得られた緑色表現型を示す系を固体B5培地に根付かせ、温室に移して生長させた。
【0140】
第2のトランスプラストミック植物の分子分析
色素体形質転換体をPCR増幅により同定した。緑色表現型を示し光独立栄養的に生長可能である第1の形質転換体から単離したDNAすべてを、以下のオリゴヌクレオチドプライマー、すなわち、oMF228(インターフェロンコード領域の5’部分由来の5’−GGA ATT CCAT ATG TGT GAT CTG CCT CAA ACC CAC AG−3’)、oMF229(インターフェロンコード領域の3’部分由来の5’−CGGGGTACCTCATTCCTTACTTCTTAAACTTTC−3’)、oFCH121(タバコプラストーム配列80240〜80259に対応する5’−TAA ATC CCT AAC TTT AGG TC−3’)、oFCH168(aphA−6コード領域の5’部分由来の5’−TCA GTC GCC ATC GGA TGT TT−3’)及びoFCH169(aphA−6コード領域の3’部分由来の5’−ACC AAT CTT TCT TCA ACA CG−3’)を用いるPCR分析の鋳型として使用した。再構成植物から500bpの増幅産物を生成し、未変化の第1のラウンドの形質転換体からは産物を生成しないはずであるoMF228及びoMF229を、インターフェロン遺伝子の存在を検出するために用いた。oFCH121とoMF228の組合せは、正確に形質転換されたプラストームからの約1730bpの産物を増幅することによって、第2のラウンドの形質転換体が正確なインターフェロン挿入断片を有するか否かを決定することが可能である。oFCH168及びoFCH169を、aphA−6遺伝子の存在を検出するために用いた。合計11個の独特なrpoA再構成タバコ色素体形質転換体が、1つのPEG形質転換手順から得られた。データから、インターフェロン遺伝子が2つの相同フランクを介する組込みによって色素体ゲノムに組み込まれるのに対し、aphA−6遺伝子が1つのフランクを介する組込みによって導入されることが示されている。
【0141】
正確な組込み及びホモプラストミック遺伝子型の別の証拠は、DNAゲルブロット分析から得られた。無菌生長植物から単離したゲノムDNAをEco RI/Pst Iで消化した。使用したプローブは、ΔrpoA突然変異体の場合と同じであった(DNAブロッティング及びハイブリダイゼーションの詳細な手順は実施例3を参照されたい)。このプローブは、野生型プラストームに対して2384bpのシグナル、第2のラウンドにおいて正確に形質転換されたプラストームに対して1247bpのシグナル、及び未変化の第1のラウンドの形質転換体に対して3127bpのシグナルを生成する。
【0142】
aphA−6マーカーが除去されたことを確認するために、このブロットのさらなるハイブリダイゼーション(以前のプローブは、ストリッピング操作によって除去されている)を、aphA−6遺伝子の500bp断片をプローブとして用いて実施した。プローブを作製するために、供給元(Roche)の手順に従ってプライマーoFCH168及びoFCH169をPCR DIG標識化反応に用いた。
【実施例6】
【0143】
1フランクによって媒介されるaphA−6遺伝子の組込みのための一過性選択によるプラストームへのインターフェロン遺伝子の安定導入
本実施例は、分離中の形質転換組織の視覚識別がGFP発現によって補助される、一過性のマーカー組込みを用いた、抗生物質耐性遺伝子を欠くトランスプラストミック植物の生成について記述する。本実施例に記載する形質転換ベクター(plCF846)は、rpoA再構成ベクターplCF838(実施例5参照)を基にしている。すなわち、このベクターは、突然変異体の再構成だけでなく、野生型植物の形質転換にも使用でき、それによってプラストーム中のrpoAの上流に目的配列(この場合、インターフェロンコード配列)が挿入される。形質転換体の視覚識別を可能にするために、GFPをコードする配列を、インターフェロンとrpoAコード配列の間に挿入する。この目的のために、人工リボソーム結合部位(Eibl等、1999)、タバコrbcL遺伝子から下流のボックス及びGFPコード配列からなるカセットをプラスミドplCF837(実施例5参照)のKpnI制限部位に挿入する;その後、上述したように(実施例5)、aphA−6マーカーカセットをフランキング領域外側のScaI部位に挿入する。
【0144】
形質転換ベクターplCF846を、実施例3に記載したPEG媒介方法による野生型タバコの形質転換に使用する。形質転換体の選択は、実施例4に記載したように、カナマイシン25μg/mlを用いて実施する。形質転換体の緑色蛍光は、ハンドランプによって与えられるUV光又は適切なフィルターを備えた蛍光顕微鏡により視覚化することができる。抗生物質耐性マーカーの切り出しを可能にするために、ホモプラストミック形質転換体を、非選択培地上でいくつかの追加の再生ラウンドに供する。目的配列を含めて完全な形質転換ベクターの切り出しは、緑色蛍光の消失によって容易に確認することができる。蛍光を維持する植物材料のaphA−6遺伝子が消失したかどうかを分析する。選択マーカーが完全に消失した材料を増殖させる。
【実施例7】
【0145】
組込みカセットを提供する自己複製色素体形質転換ベクターplCFB1
色素体形質転換ベクターplCFB1の構築
タバコrrn16プロモーターの制御下にあり大腸菌に由来するアミノグリコシド3’−アデニルトランスフェラーゼ(aadA)からなるカセットを、以下のようにクローン化した。すなわち、rrn16プロモーターを含むDNA断片を、プライマー「5−24」(5’−ccgaattcgccgtcgttcaatgag−3’)及び「3−21」(5’−cacgatatcgcccggagttg−3’)を含むタバコ(Nicotiana tabacum cv.Petite Havana)DNAからPCRによって増幅した。増幅断片をEcoRI及びEcoRVで切断した。
タバコrbcL遺伝子のリボソーム結合部位(RBS)を含むリンカーDNA断片を、プライマー「5−rbs」(5’−ctcgatatcactagttgtagggaggga−3’)及びプライマー「3−rbs」(5’−gtgccatggatccctcct−3’)をアニールすることによって構築した。KlenowDNAポリメラーゼでオーバーハングを平滑末端化し、断片をEcoRV及びNcoIで切断した。
Chlamydomonas reinhardtii rbcL下流領域の440bp断片に融合した細菌aadAコード配列を含む(Dr.M.Goldschmidt−Clermont、Department of Plant Biology and Molecular Biology、University of Geneva、Switzerland;Goldschmidt−Clermont、1991によって提供された)プラスミドpUC−atpX−AADを、EcoRI及びNcoIで切断して本来のプロモーター断片を除去した。EcoRV及びNcoIで処理したRBS断片並びにEcoRI及びEcoRVで処理したrrn16プロモーター断片を、プロモーターのないpUC−atpX−AADベクターに同時に挿入して、プラスミドpUC16SaadAを得た。リンカーオリゴヌクレオチド(gaattcccgggaattc)をEcoRI部位(pUC16SaadA−Sma)に挿入することによって、rrn16プロモーター上流にさらにSmaI/XmaI部位を作製した。
【0146】
タバコ(Nicotiana tabacum cv.Petite Havana)色素体DNA配列112061〜113058(受託番号Z00044)を、単離したタバコDNAから、プライマーb1−1(5’−ggggtaccgaatttgattcacaaagttg−3’)及びb1−2(5’−gctctagatgtggtattccacctcttgc−3’)を用いてPCRにより増幅した。得られた断片をKpnI及びXbaIで切断し、プラスミドpUC16SaadA−Smaの(aadA遺伝子下流の)対応部位に挿入した。第2のタバコ色素体DNA断片(109986〜111112)をプライマーb1−3(5’−tccccccgggctcagaggattagagcacg−3’)及びb1−4(5’−tccccccgggagtccgaccacaacgacc−3’)を用いて増幅し、XmaIで切断し、rrn16プロモーターに隣接する断片のb1−4末端と共に上記プラスミドのキメラaadA遺伝子上流の対応部位に挿入した。得られた形質転換ベクターplCFB1(図1)において、aadAカセットには、キメラ遺伝子をプラストームへ組み込み、プラストーム配列111113〜112060の置換を可能にする色素体配列が隣接している。また、このベクターを、形質転換された葉緑体中で完全なプラスミドとして維持することができる。
【0147】
微粒子銃送達によるN.tabacum色素体の形質転換
タバコの種子(Nicotiana tabacum cv.petite Havana)の表面を滅菌し(70%エタノール中1分、5%Dimanin C(Bayer、Leverkusen、Germany)中10分)、無菌水中で10分間3回洗浄し、B5培地(下記参照)上に置いた。25℃、16時間明/8時間暗サイクル(0.5〜1W/m2、Osram L85W/25 Universal−White蛍光灯)で植物を生長させた。
【0148】
4週齢無菌生長Nicotiana tabacum植物から6枚の葉を切り、固体RMOP培地(調製については下記参照)上に移した。金懸濁液(0.6ミクロン、Biorad、Hercules、CA、USA;60mg/mlエタノール)35μlを無菌反応管(Treff、Fisher Scientific、Ingolstadt、Germany)に移し、遠心分離により回収し、無菌水1mlで洗浄した。金の沈殿物を無菌水230μlと2.5M CaCl2 250μlに再懸濁し、プラスミドDNA(形質転換ベクターplCFB1)25μgを添加した。混合物を完全に再懸濁した後、0.1Mスペルミジン50μlを添加し、混合し、10分間氷上でインキュベートした。被覆された金粒子を遠心分離(1分、10000rpm)により回収し、エタノール600μlで2回洗浄し、最後にエタノール72μlに再懸濁した。打ち込みをする葉1枚当たり5.4μlの金懸濁液をマクロキャリアに塗布した。Bio−Rad(Hercules、CA、USA)PDS−1000/He Biolistic粒子送達システムを用いて以下のパラメータで打ち込みを実施した。
破裂板900psi(6.2MPa);ヘリウム圧力1100psi(7.6MPa);真空度26〜27 inches Hg(88〜91kPa);マクロキャリア トップレベル;葉片 第3レベル
【0149】
打ち込みから2日後、葉を小片(約3×3mm)に切り、スペクチノマイシン500μg/mlを含有するRMOP培地に移した。2週後、次いで3週ごとにさらなる再生体が出現しなくなるまで、葉片をさらに切って新鮮な培地に移した。緑色再生体を回収して個別のプレートに移した。スペクチノマイシン500μg/mlを含むRMOP培地上で新しい再生体を形成する小さな葉片を切断することによって、この系を繰り返しのシュート生成サイクルにかけた。スペクチノマイシン500μg/mlを含むB5培地上で、選択した再生体を発根させた。
【0150】
色素体形質転換体の分子分析
植物DNAの単離
ミキサーミルMM 300(Retsch、Germany)を用い、1個の3mmタングステンカーバイドビーズを含む1.5mlマイクロ遠心管に入れて、AP1緩衝液(DNeasy植物ミニキット、QIAGEN、Hilden、Germany)200μlと試薬DX(発泡抑制、QIAGEN)1μl中で新鮮な葉組織100mgを粉砕した(2×1分25Hz)。次いで、DNeasy植物ミニキットを用いてDNAを精製した。
【0151】
サザン分析
分析植物当たり合計1μgの植物DNAをNcoIで消化し、1%アガロースゲルで分離した。標準手順(Ausubel等、1999:Short protocols in molecular biology、Wiley、第4版、ユニット2.9A)に従い、DNAを変性させ、正に帯電したナイロンメンブレン(Hybond−N+、Amersham Pharmacia Biotech、UK)に移した。メンブレンを250mMリン酸ナトリウム、7%SDS中65°でα32P標識プローブとハイブリダイズし、同じ温度で0.5×SSC、0.1%SDSで洗浄した。ハイブリダイゼーションシグナルをPhosphoimager(Fujifilm BAS 1500)を用いて検出した。
【0152】
タバコプラストーム配列109986〜111112(及び131514〜132640)に対応する、プラスミドplCFB1由来の1131bp SmaI断片を、野生型プラストーム、形質転換プラストーム及び染色体外形質転換ベクターを検出するためのプローブとして用いた。この断片を、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAgen、Hilden、Germany)を用いてゲル精製し、KlenowDNAポリメラーゼ及びランダムプライマーで標識した。逆方向反復A又はB中の配列の2つのコピーにそれぞれ対応する野生型色素体DNA中の17836bp及び7055bpの各NcoI断片に、このプローブをハイブリダイズする(図17、レーン1)。相同組換えにより標的遺伝子座にaadAカセットが組み込まれたプラストーム分子では、新しいNcoI部位のため、7055bp断片の代わりに4761bp断片が検出される(図17、レーン2及び3)。染色体外形質転換ベクターがその線形化された形で検出される(6211bp NcoI断片、図17、レーン2及び3)。このバンドの標識が強いことは、染色体外エレメントがプラストームよりも多いコピー数で存在することを示す。染色体外エレメントは、5サイクルの繰り返しシュート再生後も消失しなかった(図17、レーン3)。
【0153】
トランスプラストミック植物からのplCFB1の回収
植物中での増殖後における形質転換ベクターの完全性を試験するために、トランスプラストミック植物系239−2(3サイクルの繰り返しシュート再生)から単離した植物DNAを用いて大腸菌の形質転換を行った(標準CaCl2法)。この形質転換によって、アンピシリン耐性細菌コロニーが生成し、これを用いて標準アルカリ溶解法に従ってプラスミドを調製した。これらのコロニーから単離したプラスミドの制限分析から、最初の色素体形質転換ベクターplCFB1と同じ制限パターンが得られ(図18)、プラスミドが組換え再配列(recombinatory rearrangements)なしにトランスプラストミック植物中で増殖し、当初の形質転換ベクターとして回収できることが実証された。
【実施例8】
【0154】
自己複製色素体形質転換ベクターplCF652、plCF653、plCF654、plCF655
フランキング相同組換え現象によってプラストーム中にそれらの一部が組み込まれるのを防止する自己複製色素体形質転換ベクターを構築するために、プラスミドplCFB1を1本の色素体配列のみを含むように改変した。また、キメラaadA遺伝子のターミネーター配列を除去して環状プラスミドを廻る連続転写を可能にした。
プラスミドplCFB1(実施例7参照)をPstIで切断し、続いて再連結することによって、ターミネーターのないaadA配列と共にplCFB1の左色素体DNAフランク(図19)のみを含む形質転換ベクターplCF652を作製した。
plCFB1から右フランクをSacI及びXbaIを用いて切り出し、T4DNAポリメラーゼで処理した1.1kb断片をプラスミドpUC16SaadA−Smaに挿入し(実施例7参照)、PstI及びHindIIIで切断し、T4DNAポリメラーゼで処理してターミネーター配列を除去することによって、ターミネーターのないaadA配列と共にplCFB1の右フランク(図20)のみを含む形質転換ベクターplCF653を作製した。連結によって2つの向きに挿入断片を有する2つの異なるプラスミド、すなわちplCF6531及びplCF6532が生じ、これら両方を植物形質転換に使用した。
ターミネーターのないaadA配列と共にplCFB1の右フランクの部分のみを含む形質転換ベクターplCF654及びplCF655(図21及び22)を、plCFB1からの0.3kb ScaI−XbaI断片(plCF654の場合)又は0.8kb SacI−ScaI断片(plCF655の場合)を使用する以外はplCF653と同様にして構築した。
色素体における自己複製に必須のエレメントを規定するために、得られたプラスミドを用いて、実施例7に記載したようにタバコの形質転換を行った。
形質転換された植物系の色素体における自己複製色素体形質転換ベクターの有無及び相対的なコピー数を、実施例7に記載したように、3サイクルの繰り返しシュート再生後に検討する。
【実施例9】
【0155】
自己複製色素体発現ベクター
実施例8に従って同定した、色素体において自己複製をもたらす断片を選択して導入遺伝子発現カセットを構築する。これらの発現カセットにおいて、翻訳をもたらす5’上流配列を含む目的遺伝子を、ターミネーターのないaadAカセットの下流に挿入する。この目的のために、タバコrps19/rpl22遺伝子間領域(ctgcagataaaaaaaatctacatgcttatgattcagtagtaggaggcaaacc)の非コード配列からの52bp断片と組み合わせたuidAコード配列を、プラスミドplC582(実施例11参照)からPstI及びKpnIを用いて切り出し、T4DNAポリメラーゼを用いて平滑末端化する。この断片を、plCF652のT4DNAポリメラーゼで処理したPstI部位に挿入して、色素体発現ベクターplCF652−GUSを得る。同様に、この断片を、plCF653及びplCF655のT4DNAポリメラーゼ処理KpnI部位にも挿入して、それぞれ色素体発現ベクターplCF653−GUS及びplCF655−GUSを作製する。色素体発現ベクターplCF654−GUSを構築するため、実施例8に記載したように、前記断片を0.3kb ScaI−XbaI断片と共にPstI/HindIIIで切断したプラスミドpUC16SaadA−Smaに連結する。発現カセットの正確な向きを制限分析によって決定する。得られたプラスミドを用いて、実施例7に記載したように、タバコを形質転換する。
【実施例10】
【0156】
光独立栄養に基づく選択を用いた自己複製色素体形質転換ベクターpetAOri1、petAOri2、petAOri3及びpetAOri4
プラスミドpetAOri1−4は、選択マーカーとしてpetA遺伝子が用いられる以外は、実施例8の実験で定義したのと同じ複製エレメントを含む。これらのベクターは、petA欠乏植物を形質転換して、光独立栄養生長能力を回復するように設計されている。aadAカセットによりpetAコード配列が欠失するplC558の形質転換によって、PetA欠乏タバコ植物を作製した。ベクターpetAOri0は、5’調節エレメント、petAコード配列、スペーサー(RBS)及び目的遺伝子のコード配列(uidA)で構成されるジシストロン(dicistronic)オペロンを含む。このベクターから、自己複製をもたらす追加のDNA断片を含む4つの誘導体が構築される(petAOri1、petAOri2、petAOri3、petAOri4)。
【0157】
色素体によってコードされるpetA遺伝子を不活性化するための形質転換ベクターplC558の構築
すべてのクローニング手順を、実施例7及びAusubel等、1999に記載された標準手順を用いて実施した。
ベクターplC558は、aadAカセット(pUC16SaadA−Sma、Koop等、1996、実施例7参照)に隣接するタバコプラストームから誘導される2つのフランキング配列を含む。相同配列は、petA遺伝子の各1kbの5’領域及び3’領域である。aadAカセットによって、petA遺伝子(962bp)及びpetA3’領域の300bpが置換される。
プライマーとして以下のオリゴヌクレオチド対、すなわち、末端にNdeI及びSmaI部位を生じるoSK13(5’−GGAATTCCATATGGTATAAAACTCATGTGTGTAAGAAA−3’)とoSK14(5’−TCCCCCGGGGGTCCAATCATTGATCGCGAAA−3’)、及び断片末端にSmaI及びSphI部位を生じるoSK15(5’−TTCCCCGGGTTCTAAATAGAAAGA AAGTCAAATTTG−3’)とoSK16(5’−CATGCATGCGAATGAATAAGATTCTCTTAGCTC−3’)を用いてPCRによって両方のフランキング断片を増幅した。使用したPCRプログラムは以下のとおりであった:94℃3分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃1.5分、30サイクル;最終伸張72℃10分。消化した断片(左/右フランク)及びSmaI断片としてaadAカセットを、NdeI及びSphIで消化したpUC19ベクターに1段でクローン化した。構築物plC558を制限実験により分析した。PCR増幅断片の配列を決定し、フランキング領域の配列が正確なことを証明した。
【0158】
第1の形質転換及びホモプラストミックΔpetA突然変異体の選択
ベクターplC558を用いた微粒子銃による色素体形質転換及び選択を実施例7に記載したように実施した。ホモプラストミックpetA欠乏植物を、ベクターpetAOri1、petAOri2、petAOri3、petAOri4を用いた色素体形質転換の標的として使用することができる。
形質転換体候補の分析を実施例7に記載したように実施した。
【0159】
色素体形質転換ベクターpetAOri1、petAOri2、petAOri3、petAOri4の構築
ベクターpetAOri1、petAOri1、petAOri2、petAOri3、petAOri4の構築を以下のように実施した。すなわち、5’末端にBamHI制限部位を生じるプライマー「petAfor」(5’aaaaggarccatgcaaactagaaatgctttttcttg3’)及び「petArev」(5’ctagaaattcatttcggccaattgaa3’)を用いてPCRによってpetAコード配列を増幅した。使用したPCRプログラムは以下のとおりであった:94℃3分、1サイクル;94℃45秒、55℃45秒、72℃1.5分、30サイクル;最終伸張72℃10分。ベクターpUC16SaadA−Sma(Koop等、1996、実施例7参照)の5’調節エレメントをEcoRI/BamHI消化によって切り出した。増幅したpetA遺伝子断片及び5’調節エレメントを、EcoRI及びSmaiで消化したベクターpUC19に1段でクローン化した。
petA遺伝子に対して下流にあるRBS及びuidA遺伝子をクローン化するために、RBS及びuidA遺伝子を含むDNA断片をベクターpUC16SRBSuidA(Koop等、1996)からKpnI及び部分的なEcoRV消化によって切り出した。単離した断片を平滑末端化し、petAコード配列及び5’調節エレメントを含むベクターに連結した。この連結のためのクローニング部位として、同様に平滑末端化したXbaI部位を用いた。
この構築物を制限実験によって分析し、PCR増幅petAコード配列の配列を決定して、配列が正確であることを証明した。
このベクターpetAOri0を使用してベクターpetAOri1、petAOri2、petAOri3、petAOri4を構築した。すなわち、petAOri0をHindIIIで切断し、その付着末端をT4DNAポリメラーゼで処理して平滑末端化した。ベクターpetAOri1を構築するために、ベクターplCFB1(実施例7参照)の左フランクをSmaIで消化して切り出し、ベクターpetAOri0の平滑末端化したHindIII部位に連結した。ベクターpetAOri2を構築するために、ベクターplCFB1の右フランクをSacI/XbaIで消化して切り出し、平滑末端化し、平滑末端化したHindIII部位に連結した。ベクターpetAOri3を構築するために、ベクターplCFB1の右フランクの0.3kb断片をScaI/XbaIで消化して切り出し、平滑末端化し、平滑末端化したHindIII部位に連結した。ベクターpetAOri4を構築するために、ベクターplCFB1の右フランクの0.8kb断片をSacI/ScaIで消化して切り出し、平滑末端化し、平滑末端化したHindIII部位に連結した。
これらの構築物を制限実験で分析して、クローニングが正確であることを証明した。色素体形質転換ベクターpetAOri0を図23に示す。
【0160】
第2の形質転換及び再構成ホモプラストミックΔpetA突然変異体の選択
ベクターpetAOri1、petAOri2、petAOri3、petAOri4を用いた色素体形質転換のための標的としてホモプラストミックpetA欠乏植物を使用することができる。これらのベクターを用いた微粒子銃による色素体形質転換を実施例7に記載したように実施する。形質転換体の選択を、RMOP培地上でスクロース含量を削減して(0.3%)実施する。petAが再構成された形質転換体は、生長のために光合成エネルギーを利用することができる。再生サイクルの増加中に形質転換体はhcf(高いクロロフィル蛍光)の減少も示すはずである。形質転換体候補の分析を実施例7に記載したように実施する。
【実施例11】
【0161】
自己複製シャトルベクターplCMFl1
1つ又は複数の目的遺伝子をプラストームに安定に組み込むシャトルベクターを構築するために、色素体において(実施例8に従って同定された)自己複製を媒介する断片を選択した。
【0162】
拡張マルチクローニング部位を有するクローニングベクタープラスミドplCF567の構築
EcoRI及びSphI各認識部位間にあるプラスミドpUC19のマルチクローニング部位を、合成オリゴヌクレオチド5’−AATTCGGGCCCGTCGACCCTGCAGGCCCGGGGATCCATATGCCATGGTCTAGATGATCATCATCACCATCATCACTAATCTAGAGAGCTCCTCGAGGCGGCCGCGCATGCATG−3’で置換し、プラスミドplCF567を得た。
【0163】
プロモーターのない色素体形質転換ベクタープラスミドplCF582の構築
プラスミドplCF567をBsp120I及びHindIIIで消化した。2641bpのベクター断片をアガロースゲル電気泳動により精製し、断片plCF567−B/Hを得た。bp357〜1335のN.tabacumプラストームpsbA 3’領域をプライマー5’−TATAGGGCCCAGCTATAGGTTTACATTTTTACCC−3’及び5’−CATGCTGCAGCAAGAAAATAACCTCTCCTTC−3’を用いNicotiana tabacum cv.Petite Havanaから単離したDNAを鋳型としてPCRにより増幅した。bp155394〜353のN.tabacumプラストームrpl2 3’領域をプライマー5’−TTTCCTGCAGTTATTCATGATTGAGTATTC−3’及び5’−CCAGAAAGAAGTATGCTTTGG−3’を用いNicotiana tabacum cv.Petite Havanaから単離したDNAを鋳型としてPCRにより増幅した。増幅されたpsbA 3’領域をBsp120I及びPstIで消化し、Qiagen(Hilden、Germany)のPCR精製キットを用いて精製し、左フランクB/Pを得た。増幅されたrpl2 3’領域をHindIII及びPstIで消化し、Qiagen(Hilden、Germany)のPCR精製キットを用いて精製し、右フランクP/Hを得た。3つの断片plCF567−B/H、左フランクB/P及び右フランクP/HをT4リガーゼにより同時に連結してプラスミドplCF569を得た。
大腸菌aadA遺伝子を、プライマー5’−TGAATTCCCATGGCTCGTGAAGCGG−3’及び5’−TATGGATCCTTGCCAACTACCTTAGTGATCTC−3’を用いてプラスミドpFaadA II(Koop等、1996)を鋳型としてPCRにより増幅した。PCR産物をNcoI及びBamHIで消化し、同じ制限酵素で予め消化したplC567に連結して、plCF506を得た。N.tabacum rpl32 3’−UTRを、プライマー5’−ACAAGAGCTCATAAGTAATAAAACGTTCGAATAATT−3’及び5’−AATTCCTCGAGTAGGTCGATGGGGAAAATG−3’を用いて、N.tabacumDNAを鋳型としてPCRにより増幅した。N.tabacum rpl32 3’−UTRをSacI及びXhoIで消化し、同じ制限酵素で予め消化したplCF506に連結して、plCF519を得た。
大腸菌aadA配列及びN.tabacum rpl32−3’−UTRを、プライマー5’−GGATCCATGCGTGAAGCGGTTATCGCCG−3’及び5’−AATTCCTCGAGTAGGTCGATGGGGAAAATG−3’を用いてPCRにより増幅した。大腸菌uidA配列を、プライマー5’−CTGGGTACCTTATTGTTTGCCTCCCTGCTGCG−3’及び5’−CATGCCATGGTCCGTCCTGTAGAA−3’を用いて、プラスミドpRAJ275(Mike Bevan、GenBank受託番号U02456.1)を鋳型としてPCRにより増幅した。各PCR産物をQiagenのPCR精製キットで精製してそれぞれaadA+Trpl32及びuidAを得た。6pmolのaadA+Trpl32及び50pmolのオリゴヌクレオチド5’−GGGGTACCAGTTGTAGGGAGGGATCCATGCGTGAAGC−3’をTaqポリメラーゼと0.2mM dNTPを含有する1×Taq緩衝液(MBI)中、72℃で20分間インキュベートした。得られた断片は5’RBS領域を含み、RBS+aadA+Trpl32が得られた。これをKpnI及びXhoIで消化してRBS+aadA+Trpl32−K/Xを得た。PCR産物uidAをKpnI及びNcoIで消化してuidA−N/Kを得た。プラスミドplCF567をPstI及びXbaIで消化し、0.8%アガロースゲル上で精製した。2690bpにおけるベクター断片を精製し、plCF567−P/Xを得た。plCF567−P/X 0.6pmol及び300pmolの合成オリゴヌクレオチドSrps19/rpl22(5’−CTATACCATGGTTTGCCTCCTACTACTGAATCATAAGCATGTAGATTTTTTTTATCTGCA−3’)をT4リガーゼと共にインキュベートし、続いて第2の鎖をTaqポリメラーゼを用いて72℃で平滑化した。得られた産物をNcoI及びXhoIで消化してplCF567−N/Xを得た。plCF567−N/X 25fmol、uidA−N/K 25fmol及びRBS+aadA+Trpl32−K/X 25fmolをT4リガーゼを用いて連結して、ベクターplCF576を得た。
プラスミドplCF576をPstI及びMph1103Iで消化した。SpsaA/B+uidA+RBS+aadA+Trpl32を含む断片をアガロースゲル上で精製し、PstIを用いて予め線形化したplCF569に連結して、プラスミドplCF582を得た。
【0164】
マーカーのない組込み用ベクターplCMFl1の構築
plCF582からのaadA遺伝子をKpnI及びSacIで消化して除去した。Klenow断片を用いて突出末端を除去し、T4リガーゼを用いてベクターを移して(relegate)、plCF582Aを得た。異種uidA遺伝子を含めたpsbA−rpl2各フランクをplCF582AからBsp120I及びHindIIIを用いて除去した。psbA−uidA−rpl2断片末端をKlenow断片で平滑化し、予めNdeIで線形化しKlenow断片で平滑末端化したプラスミドplCF6521に連結し(実施例8参照)、plCMF1を得た。
【0165】
マーカーのない組込み用ベクターplCMFl2の構築
plCF6521の代わりにplCF6531(実施例8参照)を用いた以外はplCMFl1に対して記述したのと同様に構築を実施した。
【0166】
組換えによるマーカー除去用ベクターplCMFRの構築
aadAに先行するベクター領域を、プライマー5’−gatcggtaccatgttctttcctgcgttat−3’及び5’−gatcggtaccaaagtgtaaagcctggggtg−3’を用いてPCRによりplCMF2から増幅した。PCR産物をKpnIで消化し、KpnIを用いて予め線形化したplCMFl2に連結した。得られたプラスミドの配列を決定し、aadAの組み込まれたPCR産物3’の向きがaadAの鋳型領域5’の場合と同じであるプラスミド(plCMFR)を選択して、aadA配列をダイレクトリピートに隣接させる。したがって、これら2つの配列エレメント間の相同組換えによってaadAカセットを切り出すことができる。
【実施例12】
【0167】
高等植物の色素体形質転換用選択マーカーとしてのaphA−6
ベクタークローニング
a)形質転換ベクターplCF6061及びplCF6062の構築
逆方向反復領域中のtrnNとtrnRの遺伝子間に外来配列を導入するためのベクターは、相同組換え用タバコフランク(GenBank受託番号Z00044によるプラストームヌクレオチド131106〜132277及び132278〜133396)を含むベクターpKCZ(Zou、2001)に基づく。これらのフランク間のaadA発現カセット(Koop等、1996)をNotI消化により除去し、中間体構築物(plCF603)からBsp120I/NotI断片として得られるaphA−6発現カセットで置換する。Bsp120IとNotIは互換性があるので、2つのクローン、すなわちplCF6061(右フランクの近位にある16S rRNAプロモーター)及びplCF6062(左フランクの近位にある16S rRNAプロモーター)が得られる。発現カセットを、PCR増幅色素体調節エレメントの16S rRNAプロモーター(プラストームヌクレオチド102571〜102659)、psbA 5’UTR(1598〜1680)、rpl32 3’UTR(115221〜115511)及びaphA−6コード配列(pSK.KmR、Bateman及びPurton 2000)から構築する。
【0168】
b)形質転換ベクターplCF599の構築
大きな単一コピー領域中のpetAとorf99の遺伝子間にaphA−6発現カセットを導入するため、2つのフランク(プラストームヌクレオチド63335〜65597及び65598〜66597)をPCRにより増幅して、断片末端(NdeI/SmaI及びSmaI/SphI)に所望の制限部位を付加した。両方のフランクを対応する酵素で消化し、(SmaIl断片として調製した)aphA−6カセットと共に、NdeI/SphIを用いて線形化したpUC19に連結してplCF599を得た。このプラスミド中の発現ユニットは、タバコ色素体16S rRNAプロモーター、合成リボソーム結合部位(RBS、atcactagttgtagggagggatcc、Koop等 1996)、aphA−6コード配列、及びpetA遺伝子と同じ読み取り方向のrpl32 3’−UTRを含んでいる。aphA−6カセットは、pUC16S−aadA−SmaI(完全なカセット切り出しのための追加のSmaI部位を含む改変pUC16S−aadA、Koop等 1996)に基づく中間体構築物から、NcoI/NotI消化及び再連結後にC.reinhardtiiに由来するaadAコード配列及びrbcL−3’−UTRをベクターplCF606に由来するaphA−6コード配列及びrpl32 3’−UTRで置換して得られた。
【0169】
c)形質転換ベクターplCF637の構築
大きな単一コピー領域中のycf3コード領域の上流位置にaphA−6コード配列を導入するために、2つのフランク(プラストームヌクレオチド45033〜46266及び46269〜47205)をPCRにより増幅して断片末端に所望の制限部位を付加した(SphI/PstI及びNcoI/SmaI)。また、合成RBS(atcactagttgtagggagggatcc、Koop等 1996)をPstI部位とycf3遺伝子用翻訳シグナルとして働くycf3コード領域の間にPCRにより導入した。両方のフランク断片を対応する酵素で消化し、(pSK.KmRからのPstI/NcoI断片として調製した)aphA−6コード配列と共に、SmaI/SphIにより線形化したpUC19に連結してplCF637を得た。したがって、aphA−6及びycf3遺伝子の各コード配列は、内在性ycf3上流調節エレメントの制御下に同じ方向に転写されて、形質転換されたプラストーム中に新しい人工オペロンが形成される。
【0170】
植物材料
Nicotiana tabacum L.cv.Petit Havanaの表面を滅菌した種子を、2%スクロース及び0.6%寒天を含むB5培地(Gamborg等 1968)上で出芽させた。B5培地100mlを含む700mlガラス瓶に実生を移した。蓋に作製した発泡栓インサート(foam plug insert)により追加の空気を供給した。培養条件は、27±1℃で日長16時間(約0.5〜1.0W/m−1、Sylvania標準F58W/125−T8 Universal−Whiteランプ)であった。
【0171】
プロトプラスト単離及びグリッド包埋
プロトプラスト単離及びアルギン酸包埋を、基本的にDovzhenko等(1998)及びKoop等(1996)に記載されたものにわずかな改変を加えて行った。包埋の前にプロトプラストをF−PCNに密度1.7×105プロトプラスト/mlで再懸濁し、次いで等体積のアルギン酸と混合して最終プレーティング密度5.5×104/グリッドとした。
【0172】
選択条件
グリッド打ち込み及びPEG形質転換後にカナマイシン耐性再生体を選択するための諸条件を、アルギン酸包埋した8日齢のミクロコロニーを含むグリッドをRMOP培地上に置き様々な濃度のカナマイシン(0、10、25、50、75、100mg/l)で選択試験を行い決定した。培養室で4週間インキュベーションした後に、適切な選択条件を評価した。
【0173】
形質転換及び選択
a)葉打ち込み:3〜4週齢のタバコ葉(約45×55mm)をRMOP培地上で1日前培養し、次いでDuPont粒子銃を用いてMuhlbauer等(2002)に記載されたDNA被覆金粒子を打ち込んだ。打ち込みから2日後、葉を小片(2×2mm)に切断し、選択培地(RMOP+25〜50mg/lカナマイシン)に移した。新鮮な培地への移動を、3〜4週ごとに定期的に実施した。
b)グリッド打ち込み:アルギン酸包埋プロトプラストを32〜64細胞期に到達するまで液体培地(F−PCN)中で6〜7日間培養した。グリッドを排液した後、それらを固体培地(RMOP)に移し、1日前培養してから打ち込みに使用した。金の充填、打ち込み及び選択を上述のとおり実施した。
c)PEG形質転換:ポリエチレングリコールによって媒介される葉緑体へのDNA移動をKoop等(1996)及びKofer等(1998)に記載されたとおりに実施した。形質転換から7日後に、アルギン酸包埋プロトプラストを25〜50mg/lカナマイシンを含み寒天で凝固したRMOP培地に移すことによって、形質転換された細胞の選択を開始した。新鮮な培地への移動を、最長12週の選択全期間にわたり3週ごとに実施した。
【0174】
形質転換したプラストームを増幅し、野生型プラストームを除去するために、第1の形質転換体(サイクル0)を、サイクル1、サイクル2などと称する選択培地上でのいくつかの追加の再生ラウンド(小葉外植片、2×2mm)に供した。
【0175】
DNA単離
プラスミド調製キット(Qiagen、Hilden、Germany)を用い、製造者の手順に従ってベクターDNAを単離した。さらに、PEG形質転換用に調製したDNAを、酢酸Na/エタノールで沈殿させ、TE緩衝液pH5.6に溶解した。全植物DNAを植物DNA単離キット(Qiagen DNeasy)を用いて単離した。カルス又は葉組織(100〜200mg)を1.5ml Eppendorf管にMixer Mill MM 300(Retsch、Haan、Germany)及びタングステンカーバイドビーズ(3mm)を用いて製造者の手順書に記載されたとおりに浸軟した。100μl溶出緩衝液でDNAを溶出させ、蛍光光度計(VersaFluor、Biorad、Munchen、Germany)及び蛍光DNA定量化キット(Biorad)を用いて濃度を測定した。
【0176】
形質転換体及び子孫におけるカナマイシン耐性濃度の決定
無菌コルクボーラー(直径5mm)を用いて葉を円板状に切り、様々な濃度のカナマイシン(0〜200mg/l)を含むRMOP培地にそれらを置くことによって、様々な形質転換体のカナマイシン耐性濃度を決定した。培養の4週後に外植片の生長を評価した。
ガラス温室内で生長した野生型及び自家受粉の形質転換体から採取した種子を用いて子孫の分析(T1)を実施した。複数のさやからの種子を、表面を滅菌し、寒天凝固B5培地又はカナマイシン200mg/lを含むB5培地上で出芽させた。標準培養条件下での培養2週後に実生が出現するかどうか評価した。
【0177】
結果
大腸菌中でのaphA−6遺伝子の発現
植物形質転換前に、すべてのベクターの機能性を大腸菌において試験した。プラスミドplCF599、plCF6061/2(16S rRNAプロモーターの制御下にあるaphA−6遺伝子)は少なくとも50mg/lのカナマイシンに対する耐性をもたらし、一方、plCF637はわずか25mg/lのカナマイシン耐性しかもたらさなかった(ycf3プロモーターによって制御されるaphA−6遺伝子)。
【0178】
カナマイシン選択条件の決定
アルギン酸包埋プロトプラスト由来のミクロコロニーに対して適切なカナマイシン選択濃度を決定するために、様々な濃度のカナマイシン(0〜100mg/l)を含むRMOP培地上にグリッドを置いた。25mg/l未満のカナマイシン濃度は生長を抑えるには不十分であるのに対し、50mg/lを超える濃度は過酷過ぎて、広範な褐変をもたらし、コロニー増殖を抑制した。したがって、グリッドの打ち込み後に、まず25mg/l濃度のカナマイシンを用いて形質転換体を選択した。16S rRNAプロモーターによって制御されるaphA−6遺伝子が最高200〜500mg/lカナマイシンの耐性をもたらし得ることが証明された後、選択濃度を50mg/lカナマイシンに増加した。類似のカナマイシン濃度でPEG処理プロトプラストを選択した。
【0179】
カナマイシン耐性再生体の回収
a)グリッド打ち込み
カナマイシン選択と組み合わせたaphA−6遺伝子を用いて、プロトプラストに由来するミクロコロニーの打ち込みを実施した。この技術を成功させるために極めて重要なことは、グリッドが正確な発生段階(32〜64細胞)のミクロコロニーを含むこと、及びプレーティング効率が高いことである。表2に、aphA−6遺伝子を選択マーカーとして用いたすべての形質転換実験から得られた結果を要約する。カナマイシン耐性再生体は、打ち込み後12週の選択期間にわたって得られた。わずか培養24日後に早期の現象が見られることもあった。
b)PEG形質転換
PEGによって媒介されるDNA送達後にカナマイシン耐性形質転換体を回収するためにaphA−6遺伝子を使用した。plCF599を用いてなされた2つの実験から、いくつかの再生体が、カナマイシン25mg/lでのグリッドの選択後に得られた(表2参照)。耐性再生体が出現するのに要する期間は、グリッド打ち込みに対して記載した期間にほぼ類似する。
【0180】
カナマイシン25mg/lを用いた初期のグリッド選択実験で直面する1つの問題は、いくつかの形質転換されていない逸脱物(escape)の再生であった。形質転換されていない系を分析する問題を回避するために、緑色再生体すべてをグリッドから取り出し、新鮮な選択培地上で培養することによって前もって選択した。形質転換された系は緑色のまま正常に生長し、一方、逸脱物は急速に退色した。より高いカナマイシン濃度50mg/lでは、著しく少ない再生体が一般に観察された。
【0181】
PCR分析
グリッド打ち込み及びPEG形質転換からの材料を用いて、PCR分析による緑色再生体の第1の分析を実施した(プライマー配列は表1を参照されたい)。aphA−6遺伝子の有無を示すために、プライマーoFCH168及びoFCH169を用いて最初の分析を行った。20の試験系のうち19が予想された480bpの断片を与えた。aphA−6遺伝子が様々なプラストーム挿入部位に正確に組み込まれたことを証明するために、1つの内部aphA−6プライマー及び相同組換えに使用したフランクの1つの外側に位置する第2のプライマーを用いてPCRを実施した。plCF6061及びplCF6062は、フランキング配列に対して異なる向きにクローン化されている同じaphA−6発現カセットを含む。このため、2つの異なるプライマーの組合せ(oSH58とoFCH169、oSH58とoFCH168)が、タバコプラストーム中のtrnNとtrnRの間の組込みを示すのに必要であった。再生体T101−1及びT177−1(plCF6061形質転換体)の分析の場合、oSH58とoFCH169のプライマー組合せを用いて、両方の例で1978bpの予想されたバンドが得られた。逆向きの場合、再生体T349−1(plCF6062形質転換体)をプライマーoSH58及びoFCH168を用いて分析し、2297bpの正確な産物が得られた。petAとorf99の間にaphA−6遺伝子が導入されたことが、再生体T330−2及びT330−4(plCF599形質転換体)で示されている。これを分析するために、プライマーoSK116及びoFCH169を用い、2961bpの断片を得た。第3の挿入部位に関して、プラストーム組込みが正確であると、ycf3調節エレメントの制御下にあるaphAコード領域を含む人工オペロンが形成される。oFCH27とoFCH168のプライマーの組合せを用いて再生体T109−1、T109−2及びT109−3(plCF637形質転換体)を分析し、予想された2239bpの断片を得た。野生型植物から調製したDNAを用いた上述のプライマー組合せの各々を用いて、コントロール反応を実施した。
【0182】
7回の形質転換実験において、35個の打ち込みグリッドから合計18個の独立した形質転換体、すなわち、2グリッドごとに平均1形質転換体が回収された。2つのPEG形質転換実験において、18個のグリッドから合計9個の形質転換体、すなわち、平均して2グリッドごとに1形質転換体が得られた。重要なことは、本明細書に記載した新しいプラストーム挿入部位のうち3つすべてが、本発明者らがすべての例で形質転換体を得ることができるように機能することである。4つのベクターの各々を用いた一般的な形質転換効率は、形質転換ベクターではなくプラストーム中に存在する調節エレメントによってaphA−6コード領域の発現が制御されるplCF637が関与する実験を含めても、同等であった。
【0183】
サザン分析
全3つの挿入部位のPCR陽性系をサザンハイブリダイゼーションによりさらに分析して予想されたプラストーム組込みを確認した。これらの系における非形質転換プラストームと形質転換プラストームの比を推定するために、形質転換プラストームと野生型プラストームの両方にハイブリダイズするプローブを選択した。plCF6061形質転換体及び形質転換されていないコントロールからの全DNAをBamHIで消化し、左フランク(1117bp)を覆うプローブP1とハイブリダイズした。コントロールが7076bpの断片を示したのに対し、両方の形質転換体(T101−1、T177−1)では、追加のBamHI部位を有するaphA−6発現カセットのために、予想された2753bpの断片が得られた。plCF599形質転換体を分析するために、全DNAをBglIIで切断し、左フランクの300bp断片であるプローブP2にハイブリダイズした。野生型コントロールは、7661bpの断片を示したのに対し、aphA−6発現カセットにおけるBglII部位の存在のために4426bpのシグナル(T330−2及びT330−4系)がトランスジェニックプラストームから生成された。第3の例では、plCF637形質転換体及び形質転換されていないコントロールからの各DNAをXmaJIで消化し、右フランクの外側に位置する518bp断片であるP3でプローブすることによって分析した。野生型コントロールが2198bpのバンドを示したのに対し、3つの形質転換された系T109−1、T109−2及びT109−3すべてにおいて、aphA−6コード配列が挿入されたために、3028bpのより大きな断片が認められた。
【0184】
選択による再生サイクル数に応じて、形質転換プラストームと非形質転換プラストームの比に違いが見られる。plCF599形質転換体である形質転換系T330−4の場合、サイクル0からの植物組織をサザンブロットで分析すると、それ自体としては野生型プラストーム含量に関して明らかにヘテロプラストミックであるのに対し、系T330−2(サイクルI)においては野生型プラストームがほとんど検出されない。6ヶ月以上培養状態にあるその後のサイクル(サイクルIV、plCF637形質転換体及びサイクルV、plCF6061形質転換体)から分析される形質転換体も、野生型に匹敵するサイズのかすかなシグナルを依然として示した。この期間は、ホモプラストミック系を産生するのには十分である。
【0185】
aphA−6発現試験
各系におけるトランスジェニックプラストーム含量がサザン分析に基づいて同等であるように選択により再生された植物を用いて、葉外植片におけるaphA−6発現試験を実施した。ycf3調節エレメントの制御下にあるaphA−6を有する形質転換体(plCF637形質転換体)に比べて、16S rRNAプロモーターによって制御されたaphA−6遺伝子を含む形質転換体(plCF6061形質転換体)はカナマイシン耐性に関して変動が認められた。カナマイシン0、25及び200mg/lを含むRMOP培地上に葉外植片を置き、4週後に評価した。plCF6061からの形質転換体は、すべての試験濃度で同等に生長した。これとは対照的に、plCF637形質転換体は、最高濃度のカナマイシンでは生長できなかったが、25mg/lでは生長した。16S rRNAプロモーターは、現在まで記述された最も強力な色素体プロモーターであるのに対し、ycf3発現を制御するプロモーターの強度は未知である。野生型葉からのコントロール外植片は、選択したカナマイシン濃度のいずれでも生長することができなかった。追加の実験において、カナマイシン耐性の上限が決定され、16S rRNAプロモーター制御aphA−6遺伝子を有する植物の場合は耐性濃度が500mg/lであり、ycf3調節エレメントの制御下にあるaphA−6マーカーを有する植物の場合50mg/lであった。
【0186】
子孫の分析
複数サイクルのカナマイシン選択後インビトロで選択したトランスプラストミック植物を、ガラス温室に移して自家受粉させた後種子を回収した。野生型種子はB5培地上で正常に出芽したが、カナマイシン200mg/lを含むB5培地上では発芽後退色した。これとは対照的に、plCF599及びplCF637の各形質転換体からの種子は出芽し、カナマイシン200mg/lでも緑色のままであったが、非選択培地に蒔いたトランスジェニック種子よりはわずかに育ちが悪かった。形質転換された系のいずれもカナマイシン耐性に関して偏りを示さず、いずれもホモプラストミックであることが示された。
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【0189】
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】従来の色素体形質転換における組換え現象、すなわち相同な2つのフランキング領域における二重組換えを示す図である。ベクター配列のない選択マーカー及び目的配列の組込み。下部:図1及び図2で使用するパターンの定義。
【図2】一過性のマーカーを組み込むための組換え現象:相同フランク外側の選択マーカー、両フランクの間の目的配列を示す図である。 1)第1の組換え:1相同領域による完全なベクター配列の組込み 2)ダイレクトリピートによる第2の組換え:a)ベクター配列の切り出し(第1の組換えの逆)。b)選択マーカー及びベクターバックボーンの切り出し;目的配列はプラストーム中に残る。
【図3】色素体形質転換ベクターpKCZの地図である
【図4】色素体ゲノムへの完全なpKCZベクターの組込みを示す概略図である。不安定な中間体は、重複したフランクから得られる2つの組換え産物候補、野生型(ケースI)又は安定に組み込まれた選択カセット(ケースII)を生じることがある。PCR分析に使用されるプライマーの位置を黒の三角で示す。
【図5】pKCZを含むタバコ形質転換体のPCR分析を示す図である。ゲルA(サイクル0)、ゲルB(サイクルI)及びゲルC(サイクルII)は、完全なpKCZ組込みを特異的に検出するプライマーoSH3及びoSH58を用いて得られる産物を示す。ゲルDは、プライマーoFCH60及びoSH58の組合せによって、サイクルIIの系のすべてが完全なベクター挿入現象を有さずとも、そのすべてが依然としてaadA選択カセットを含むことを示している。
【図6】色素体形質転換ベクターplCF558の地図である。
【図7】色素体形質転換ベクターplCF820の地図である。
【図8】ベクターplCF558を用いた色素体形質転換を説明する概略図である。
【図9】ベクターplCF820を用いた色素体形質転換を説明する概略図である。
【図10】色素体形質転換ベクターplCF577の地図である。
【図11】ベクターplCF577の概略図である。
【図12】色素体形質転換ベクターplCF7611の地図である。
【図13】ベクターplCF7611の概略図である。
【図14】色素体形質転換ベクターplCF836の地図である。
【図15】色素体形質転換ベクターplCF838の地図である。
【図16】色素体形質転換ベクターplCFB1の地図である。
【図17】plCFB1を用いて形質転換された植物のサザン分析を示す図である。NcoI制限全スプラント(splant)DNAを、1%アガロースゲル上で分離し、タバコプラストーム配列109986〜111112に対応する標識プローブとハイブリダイズした。レーン1:形質転換されていない植物(タバコ(Nicotiana tabacum cv.Petite Havana))由来のDNA;レーン2:1サイクルのシュート再生後のトランスプラストミック系239−1由来のDNA;レーン3:5サイクルのシュート再生後のトランスプラストミック系239−1由来のDNA。
【図18】トランスプラストミック植物から回収したplCFB1の制限分析を示す図である。レーン1:956、1268、1489、1882、2205、2419、2690、3472、4254、5090、6223、7743、9824、19329及び26287bpの断片を示すDNA標準ラムダDNA/Eco130I−Mlul(MBI Fermentas、Vilnius、Lithuania);レーン2:1276、1507及び3428bpの断片を示す色素体形質転換ベクターplCFB1、Hind III制限;レーン3〜5:トランスプラストミック植物系239−2から単離したDNAを用いて大腸菌を形質転換した後に得られた3つの個別のコロニーからのHind III制限プラスミドDNA。
【図19】色素体形質転換ベクターplCF652の地図である。
【図20】色素体形質転換ベクターplCF653の地図である。
【図21】色素体形質転換ベクターplCF654の地図である。
【図22】色素体形質転換ベクターplCF655の地図である。
【図23】色素体形質転換ベクターpetAOri0を示す図である。 Hind III部位は、4つの誘導体petAOri1、petAOri2、petAOri3及びpetAOri4のクローニング部位である。
【図24】色素体形質転換ベクターplCMFl1を示す図である。
【図25】配列番号1及び配列番号2を示す図である。
Claims (36)
- プラストーム上で形質転換されており、かつ選択マーカーを欠くトランスジェニック植物又は植物細胞を生成する方法であって、
(a)DNAを用いて植物又は植物細胞の色素体を形質転換するステップであって、前記DNAが、
(i)植物細胞中で前記DNAの複製をもたらすヌクレオチド配列と、
(ii)少なくとも1つの目的配列と、
(iii)前記少なくとも1つの目的配列を色素体ゲノムに安定に組み込むのに必要な前記少なくとも1つの目的配列に隣接する配列と、
(iv)前記目的配列に隣接する前記配列の外側にある選択マーカーとを含むものである上記ステップと、
(b)前記少なくとも1つの目的配列を選択圧の存在下でプラストームに組み込むステップと、
(c)選択圧を解除することによって前記選択マーカー配列を消失させるステップと、
(d)プラストーム上で遺伝的に形質転換されており、かつ前記選択マーカーを欠く細胞及び/又は植物を回収するステップとを含む上記方法。 - 前記DNAの複製をもたらす前記ヌクレオチド配列が、色素体において前記DNAの複製をもたらす、請求項1に記載の方法。
- 前記複製が、前記DNAをプラストームに可逆的に組み込むことによって非自律的にもたらされる、請求項2に記載の方法。
- 可逆的な組込みが、相同組換えのためのプラストームの配列に十分相同である前記DNAの組込み配列によってもたらされる、請求項3に記載の方法。
- 組込み配列が、前記少なくとも1つの目的配列に隣接する配列(iii)及び/又は前記フランキング配列以外の1つ又は複数の別の配列に含まれている、請求項4に記載の方法。
- 前記DNAの複製をもたらす前記ヌクレオチド配列が、前記色素体において複製開始点として機能し、したがって前記DNAに自己複製をもたらす配列を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
- 前記色素体において複製開始点として機能する別の配列を含むヌクレオチド配列であり、複製をもたらすヌクレオチド配列を前記DNAがさらに含む、請求項6に記載の方法。
- 前記DNAの複製をもたらす前記ヌクレオチド配列が、植物色素体の外側にある前記DNAの自己複製を起こし、それによってその後色素体に移動する前記DNAの複数のコピーを生成する、請求項1に記載の方法。
- 前記目的配列が、形質転換されたプラストームを含む細胞の視覚識別を可能にする配列を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
- 形質転換すべき植物又は植物細胞が、容易に識別可能な表現型をもたらす突然変異をプラストーム中に含み、前記方法が前記容易に識別可能な突然変異表現型を修復し、それによって形質転換された細胞の識別が可能になる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
- 先行する1ステップにおいて、光合成関連遺伝子が機能不全になる又は除去される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
- 前記光合成関連遺伝子が、以下の群、すなわちrpoA、petA、ycf3、ycf9及びrpoBから選択される、請求項11に記載の方法。
- 前記DNAが、前記形質転換のポジティブ選択を可能にするために機能する前記光合成関連遺伝子を含む、請求項11から請求項12までのいずれか一項に記載の方法。
- 選択マーカーが、細菌のアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼA−6である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
- プラストームのヌクレオチド配列が欠失している、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の方法。
- 前記DNAが目的配列を含まず、プラストームの欠失させるべき前記ヌクレオチド配列に隣接するプラストーム配列に前記フランキング配列(iii)が相同である、請求項15に記載の方法。
- 点突然変異がプラストームにおいて生じる、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の方法。
- ステップ(c)及び/又は(d)が、各々特定のタイプのプラストームを含む葉セクターの分離を可能にすることを含む、請求項1から請求項17までのいずれか一項に記載の方法。
- 植物色素体の遺伝的形質転換方法、特に前記請求項のいずれか一項に記載の植物色素体の遺伝的形質転換方法であって、
(a)DNAを含む植物色素体を用意するステップであって、前記DNAが
(i)植物細胞中で前記DNAの自己複製をもたらすヌクレオチド配列を含み、
(ii)少なくとも1つの目的配列を含み、
(iii)
(α)前記少なくとも1つの目的配列に作動可能に結合する転写開始及び/又は停止制御エレメントを欠くか、又は
(β)前記少なくとも1つの目的配列に作動可能に結合する転写停止制御エレメントを欠くが、前記少なくとも1つの目的配列に作動可能に結合する転写開始制御エレメントを含む、
転写用DNAである上記ステップと、
(b)前記DNAの複製を可能にするステップと、
(c)遺伝的に形質転換された色素体を有する細胞及び/又は植物を回収するステップとを含む上記方法。 - 前記DNAの複製をもたらす前記ヌクレオチド配列が、植物色素体において前記DNAの自己複製を起こす、請求項19に記載の方法。
- 前記目的配列の転写が停止しない、請求項20に記載の方法
- 前記転写によって、転写された目的配列の複数の単位を含むmRNAが生成する、請求項21に記載の方法。
- 前記DNAの複製をもたらす前記ヌクレオチド配列が、植物色素体の外側にある前記DNAの自己複製を起こし、それによってその後色素体に移動する前記DNAの複数のコピーを生成する、請求項19に記載の方法。
- 前記DNAが、形質転換された植物、細胞又は色素体の選択を可能にする1つ又は複数の配列をさらに含む、請求項19から請求項23までのいずれか一項に記載の方法。
- 先行する1ステップにおいて、光合成関連遺伝子が機能不全になる又は除去される、請求項19から請求項24までのいずれか一項に記載の方法。
- 前記光合成関連遺伝子が、以下の群、すなわちrpoA、petA、ycf3、ycf9及びrpoBから選択される、請求項25に記載の方法。
- 前記DNAが、前記形質転換のポジティブ選択を可能にするために機能する前記光合成関連遺伝子を含む、請求項25から請求項26までのいずれか一項に記載の方法。
- 前記DNAが、前記DNAの少なくとも一部を色素体ゲノムに安定に組み込むことを可能にする配列をさらに含む、請求項19から請求項27までのいずれか一項に記載の方法。
- 前記DNAの少なくとも一部を色素体ゲノムに導入した後、組換えによって望ましくない配列をそれが含まなくなる、請求項28に記載の方法。
- 前記DNAの前記少なくとも一部が、前記少なくとも1つの目的配列を含む、請求項28に記載の方法。
- 前記DNAの前記少なくとも一部の色素体ゲノムへの組込みによって、色素体ゲノムに組み込まれない前記DNAの別の部分に対する選択を可能にする配列が残る、請求項30に記載の方法。
- 前記DNAの前記少なくとも一部を色素体ゲノムへ導入した後、選択圧を解除して、選択を可能にする前記配列を消失させる、請求項31に記載の方法。
- 前記植物色素体中に前記DNAを維持するのに選択圧を必要とするように前記DNAを設計する、請求項19から請求項27までのいずれか一項に記載の方法。
- 前記少なくとも1つの目的配列又はその発現産物と色素体ゲノム又は色素体ゲノムの発現産物との相互作用によって、所望の機能が発揮される、請求項19から請求項33までのいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1の(a)項に定義される形質転換ベクター、及び任意選択で請求項4から請求項9までのいずれか一項にさらに定義される形質転換ベクター。
- 請求項1から請求項34までのいずれか一項に記載の方法によって生成されるトランスプラストミック植物細胞又は植物及びそれらの子孫。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
DE10132780A DE10132780A1 (de) | 2001-07-06 | 2001-07-06 | Plastidäre Genexpression über autonom replizierende Vektoren |
PCT/EP2002/004777 WO2003004658A2 (en) | 2001-07-06 | 2002-04-30 | Gene expression in plastids based on replicating vectors |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004533266A true JP2004533266A (ja) | 2004-11-04 |
JP4340148B2 JP4340148B2 (ja) | 2009-10-07 |
Family
ID=7690826
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003510816A Expired - Fee Related JP4340148B2 (ja) | 2001-07-06 | 2002-04-30 | 複製ベクターに基づく色素体内での遺伝子発現 |
Country Status (9)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US7371923B2 (ja) |
EP (1) | EP1404848B1 (ja) |
JP (1) | JP4340148B2 (ja) |
AT (1) | ATE502111T1 (ja) |
AU (1) | AU2002304711B2 (ja) |
CA (1) | CA2453023C (ja) |
DE (2) | DE10132780A1 (ja) |
MX (1) | MXPA03011874A (ja) |
WO (1) | WO2003004658A2 (ja) |
Families Citing this family (11)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE10049587A1 (de) | 2000-10-06 | 2002-05-02 | Icon Genetics Ag | Vektorsystem für Pflanzen |
DE10061150A1 (de) | 2000-12-08 | 2002-06-13 | Icon Genetics Ag | Verfahren und Vektoren zur Erzeugung von transgenen Pflanzen |
DE10102389A1 (de) | 2001-01-19 | 2002-08-01 | Icon Genetics Ag | Verfahren und Vektoren zur Plastidentransformation höherer Pflanzen |
DE10114209A1 (de) | 2001-03-23 | 2002-12-05 | Icon Genetics Ag | Ortsgerichtete Transformation durch Verwendung von Amplifikationsvektoren |
DE10115507A1 (de) | 2001-03-29 | 2002-10-10 | Icon Genetics Ag | Verfahren zur Kodierung von Information in Nukleinsäuren eines genetisch veränderten Organismus |
DE10121283B4 (de) | 2001-04-30 | 2011-08-11 | Icon Genetics GmbH, 80333 | Verfahren und Vektoren zur Amplifikation oder Expression von gewünschten Nucleinsäuresequenzen in Pflanzen |
DE10132780A1 (de) | 2001-07-06 | 2003-01-16 | Icon Genetics Ag | Plastidäre Genexpression über autonom replizierende Vektoren |
DE10143237A1 (de) | 2001-09-04 | 2003-03-20 | Icon Genetics Ag | Herstellung künstlicher interner ribosomaler Eingangsstellenelemente (Ires-Elemente) |
DE10143205A1 (de) * | 2001-09-04 | 2003-03-20 | Icon Genetics Ag | Verfahren zur Proteinproduktion in Pflanzen |
DE10143238A1 (de) | 2001-09-04 | 2003-03-20 | Icon Genetics Ag | Identifizierung eukaryotischer interner Ribosomen-Eingangsstellen (IRES)-Elemente |
KR20200127152A (ko) | 2017-12-15 | 2020-11-10 | 플래그쉽 파이어니어링 이노베이션스 브이아이, 엘엘씨 | 원형 폴리리보뉴클레오티드를 포함하는 조성물 및 그의 용도 |
Family Cites Families (50)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0229174A1 (en) | 1985-07-16 | 1987-07-22 | The Salk Institute For Biological Studies | Genetic alteration of plants with retroviruses |
US6147278A (en) | 1985-10-25 | 2000-11-14 | Monsanto Company | Plant vectors |
GB8626878D0 (en) | 1986-11-11 | 1986-12-10 | Ici Plc | Dna |
US5922602A (en) | 1988-02-26 | 1999-07-13 | Biosource Technologies, Inc. | Cytoplasmic inhibition of gene expression |
US6174700B1 (en) | 1988-07-08 | 2001-01-16 | University Of British Columbia | Purification of a polypeptide compound having a polysaccharide binding domain by affinity phase separation |
FR2649518B1 (fr) | 1989-07-07 | 1991-10-18 | Bioprobe Systems Sa | Procede et dispositif de marquage crypte de haute securite pour la protection d'objets de valeur |
US5464764A (en) | 1989-08-22 | 1995-11-07 | University Of Utah Research Foundation | Positive-negative selection methods and vectors |
US5877402A (en) | 1990-05-01 | 1999-03-02 | Rutgers, The State University Of New Jersey | DNA constructs and methods for stably transforming plastids of multicellular plants and expressing recombinant proteins therein |
US5474925A (en) | 1991-12-19 | 1995-12-12 | Agracetus, Inc. | Immobilized proteins in cotton fiber |
JPH08505289A (ja) | 1992-12-30 | 1996-06-11 | バイオソース ジェネティクス コーポレイション | 遺伝子導入植における組換メッセンジャーrnaのウィルス増幅関連出願のクロスリファレンス |
US5496934A (en) | 1993-04-14 | 1996-03-05 | Yissum Research Development Company Of The Hebrew University Of Jerusalem | Nucleic acids encoding a cellulose binding domain |
US5576198A (en) | 1993-12-14 | 1996-11-19 | Calgene, Inc. | Controlled expression of transgenic constructs in plant plastids |
US5723765A (en) | 1994-08-01 | 1998-03-03 | Delta And Pine Land Co. | Control of plant gene expression |
NZ296197A (en) | 1994-12-08 | 1999-11-29 | Pabio | Chemical labelling of objects or material; at least two chemical tags added, first not divulged to public, second indicates presence of first |
US6037525A (en) | 1996-08-01 | 2000-03-14 | North Carolina State University | Method for reducing expression variability of transgenes in plant cells |
JP2001500009A (ja) | 1996-09-09 | 2001-01-09 | ロヨラ ユニバーシティ オブ シカゴ | 植物レトロウイルスポリヌクレオチドおよびその使用のための方法 |
US5939541A (en) | 1997-03-28 | 1999-08-17 | University Of South Carolina | Method for enhancing expression of a foreign or endogenous gene product in plants |
FI972293A (fi) | 1997-05-30 | 1998-12-01 | Joseph Atabekov | Useamman kuin yhden geenin yhteisekspressiomenetelmät |
WO1999025855A1 (en) | 1997-11-18 | 1999-05-27 | Pioneer Hi-Bred International, Inc. | Mobilization of viral genomes from t-dna using site-specific recombination systems |
EP1034262B1 (en) | 1997-11-18 | 2005-08-17 | Pioneer Hi-Bred International, Inc. | Compositions and methods for genetic modification of plants |
CA2318662A1 (en) | 1998-01-16 | 1999-07-22 | Biosource Technologies, Inc. | Method of determining the function of nucleotide sequences and the proteins they encode by transfecting the same into a host |
HUP0104697A3 (en) | 1998-09-23 | 2003-12-29 | Du Pont | Binary viral expression system in plants |
GB9821303D0 (en) | 1998-10-01 | 1998-11-25 | Novartis Ag | Organic compounds |
WO2000068391A1 (en) | 1998-10-23 | 2000-11-16 | University Of British Columbia | Expression of a mannan binding domain to alter plant morphology |
WO2000032799A1 (en) | 1998-11-25 | 2000-06-08 | Calgene Llc | Methods for transforming plastids |
EP1045037A1 (en) | 1999-04-12 | 2000-10-18 | Discovery Biotech., Inc. | Plant cell identification system |
ATE347617T1 (de) | 1999-05-06 | 2006-12-15 | Sinai School Medicine | Steganographie auf dna basis |
MXPA01011541A (es) | 1999-05-17 | 2002-06-04 | Icon Genetics Inc | Proceso para una rapida transformacion de plantas independientemente de la variedad. |
US6331416B1 (en) | 1999-06-10 | 2001-12-18 | Cbd Technologies Ltd. | Process of expressing and isolating recombinant proteins and recombinant protein products from plants, plant derived tissues or cultured plant cells |
JP2003503033A (ja) | 1999-06-24 | 2003-01-28 | メタボリックス,インコーポレイテッド | 植物多重遺伝子発現構築物 |
EP1200557B1 (en) | 1999-08-05 | 2006-04-26 | Icon Genetics, Inc. | Method of making plant artificial chromosomes |
EP1261728A2 (en) | 2000-02-10 | 2002-12-04 | Vlaams Interuniversitair Instituut voor Biotechnologie vzw. | Plant internal ribosome entry segment |
AU2001248604A1 (en) * | 2000-04-20 | 2001-11-07 | Btg International Limited | Transgenic plants |
US6781033B2 (en) * | 2000-04-26 | 2004-08-24 | Monsanto Technology Llc | Method for the transformation of plant cell plastids |
GB0019745D0 (en) | 2000-08-10 | 2000-09-27 | Univ Surrey | Gene expression element |
DE10049587A1 (de) | 2000-10-06 | 2002-05-02 | Icon Genetics Ag | Vektorsystem für Pflanzen |
DE10061150A1 (de) | 2000-12-08 | 2002-06-13 | Icon Genetics Ag | Verfahren und Vektoren zur Erzeugung von transgenen Pflanzen |
DE10101276A1 (de) | 2001-01-12 | 2002-07-18 | Icon Genetics Ag | Verfahren und Vektoren zur Transformation von Plastiden |
DE10102389A1 (de) | 2001-01-19 | 2002-08-01 | Icon Genetics Ag | Verfahren und Vektoren zur Plastidentransformation höherer Pflanzen |
DE10109354A1 (de) | 2001-02-27 | 2002-09-05 | Icon Genetics Ag | Rekombinante virale Schaltersysteme |
DE10114209A1 (de) | 2001-03-23 | 2002-12-05 | Icon Genetics Ag | Ortsgerichtete Transformation durch Verwendung von Amplifikationsvektoren |
DE10115507A1 (de) | 2001-03-29 | 2002-10-10 | Icon Genetics Ag | Verfahren zur Kodierung von Information in Nukleinsäuren eines genetisch veränderten Organismus |
DE10121283B4 (de) | 2001-04-30 | 2011-08-11 | Icon Genetics GmbH, 80333 | Verfahren und Vektoren zur Amplifikation oder Expression von gewünschten Nucleinsäuresequenzen in Pflanzen |
DE10129010A1 (de) | 2001-06-13 | 2002-12-19 | Icon Genetics Ag | Verfahren und Vektoren zur Erzeugung von transgenen Pflanzen |
DE10131680A1 (de) | 2001-06-29 | 2003-01-23 | Voith Paper Patent Gmbh | Auftragsvorrichtung |
DE10131690A1 (de) | 2001-06-29 | 2003-01-16 | Icon Genetics Ag | Verfahren zum kontrollierten Umordnen von Chromosomenfragmenten für die Pflanzenzucht |
DE10132780A1 (de) | 2001-07-06 | 2003-01-16 | Icon Genetics Ag | Plastidäre Genexpression über autonom replizierende Vektoren |
DE10143237A1 (de) | 2001-09-04 | 2003-03-20 | Icon Genetics Ag | Herstellung künstlicher interner ribosomaler Eingangsstellenelemente (Ires-Elemente) |
DE10143205A1 (de) | 2001-09-04 | 2003-03-20 | Icon Genetics Ag | Verfahren zur Proteinproduktion in Pflanzen |
DE10143238A1 (de) | 2001-09-04 | 2003-03-20 | Icon Genetics Ag | Identifizierung eukaryotischer interner Ribosomen-Eingangsstellen (IRES)-Elemente |
-
2001
- 2001-07-06 DE DE10132780A patent/DE10132780A1/de not_active Withdrawn
-
2002
- 2002-04-30 AT AT02732689T patent/ATE502111T1/de not_active IP Right Cessation
- 2002-04-30 MX MXPA03011874A patent/MXPA03011874A/es active IP Right Grant
- 2002-04-30 JP JP2003510816A patent/JP4340148B2/ja not_active Expired - Fee Related
- 2002-04-30 US US10/482,549 patent/US7371923B2/en not_active Expired - Fee Related
- 2002-04-30 WO PCT/EP2002/004777 patent/WO2003004658A2/en active IP Right Grant
- 2002-04-30 DE DE60239462T patent/DE60239462D1/de not_active Expired - Lifetime
- 2002-04-30 AU AU2002304711A patent/AU2002304711B2/en not_active Ceased
- 2002-04-30 EP EP02732689A patent/EP1404848B1/en not_active Expired - Lifetime
- 2002-04-30 CA CA2453023A patent/CA2453023C/en not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
US7371923B2 (en) | 2008-05-13 |
CA2453023C (en) | 2011-09-20 |
US20050015829A1 (en) | 2005-01-20 |
DE60239462D1 (de) | 2011-04-28 |
EP1404848B1 (en) | 2011-03-16 |
AU2002304711B2 (en) | 2007-04-05 |
MXPA03011874A (es) | 2004-06-03 |
EP1404848A2 (en) | 2004-04-07 |
JP4340148B2 (ja) | 2009-10-07 |
WO2003004658A2 (en) | 2003-01-16 |
CA2453023A1 (en) | 2003-01-16 |
ATE502111T1 (de) | 2011-04-15 |
DE10132780A1 (de) | 2003-01-16 |
WO2003004658A3 (en) | 2004-01-08 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
AU732479B2 (en) | Plastid transformation in arabidopsis thaliana | |
Kilby et al. | FLP recombinase in transgenic plants: constitutive activity in stably transformed tobacco and generation of marked cell clones in Arabidopsis | |
JP4217482B2 (ja) | 高等植物のプラスチド形質転換の方法及びベクター | |
JP2004520032A (ja) | 色素体形質転換方法及びそのためのベクター | |
JP4340148B2 (ja) | 複製ベクターに基づく色素体内での遺伝子発現 | |
AU2002237279A1 (en) | Processes and Vectors for Plastid Transformation of Higher Plants | |
US20030188337A1 (en) | Transgenic plants | |
EP1554387B1 (en) | Plastid transformation | |
AU2002304711A1 (en) | Gene expression in plastids based on replicating vectors | |
Shinoyama et al. | An Efficient Transformation System in Chrysanthemum [Dendranthema× grandiflorum (Ramat.) Kitamura] for Stable and Non-chimeric Expression of Foreign Genes. | |
AU2010202818A1 (en) | Removal of plastid sequences by transiently expressed site-specific recombinases | |
US7285700B2 (en) | Plastid directed DNA constructs comprising chimeric plastid targeting regions, vectors containing same and methods of use thereof | |
US7888562B2 (en) | Plastid transformation system to prevent the intramolecular recombination of transgene | |
US20130347144A1 (en) | Promoters and methods for transforming tubers and transformed tubers | |
JP2005192551A (ja) | 新規ベクター |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20041213 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070803 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20071031 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20071107 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20071130 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20071207 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20080104 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20080111 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080130 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080808 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20080902 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20081110 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20081208 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20081217 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20090107 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090123 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20090202 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20090619 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20090703 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120710 Year of fee payment: 3 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |