JP2004502151A - 磁気抵抗電極式測定装置、および測定方法 - Google Patents

磁気抵抗電極式測定装置、および測定方法 Download PDF

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Abstract

磁気抵抗電極(100)による寸法測定装置のための電子回路(3)であって、該回路は、磁気抵抗電極ネットワーク(100)に給電するための、少なくとも一つの給電電圧(U,Un)を供給する給電回路と、ネットワークに接続された二つの差分入力(C、C’、S、S’)含む測定用回路、とから成る。測定用回路は、本尺目盛にそったセンサの位置を受信した二つの正弦入力信号から決定するために、粗計数器と微補間回路を使用する。給電回路は、磁気抵抗電極(100)におけるエネルギー損失を一時的に減らすように供給された、給電電圧を周期的に削減させる。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗電極式寸法測定装置、およびかかる装置を用いる測定方法に関するものである。
【0002】
例えば、工業環境での長さまたは角度位置の測定用の電子装置は、部分的に相反する複数の制約を一般的に満たさなければならない。該装置は、精度と十分な分解能を提供しなければならず、また、振動あるいは、塵埃、油または湿気などの汚染物質にさらされた環境内で使用可能でなければならない。さらにこれらのセンサには、できるだけ低いコストにするために、体積が小さい機器内への容易な組み込みと、重大な調整や整合のない、速い測定速度、および消費電力の低減が期待される。
【0003】
【従来の技術】
これらの多様な要求条件を満たすために、様々な物理原理に基づく、様々なタイプの測定機械が開発された。とくに、本尺目盛に対するセンサの変位によって発生する、静電容量の変動を利用する測定システムは、ノギスのような携帯可能な装置において多数用いられた。これらの装置は、作動するためにはかなり清潔に維持しなければならず、またそのために、湿潤環境や、例えば潤滑剤や切削油の放出に陥りやすい環境における作動には適していない。磁気抵抗電極の原理に基づく長さ測定装置は、例えば、独国特許出願公開第4233331号明細書(IMO)において提案され、汚れに対するとても優れた耐性を提供している。この文書に記載の装置は、二つのホイートストンブリッジを画定するように接続された、磁気抵抗電極ネットワークを備えたセンサを含んでいる。該センサは、スライダーに取り付けられ、また磁化周期λで磁化された本尺目盛に対面して変位させることができる。本尺目盛に対するセンサの変位によって、センサの多様な磁気抵抗電極に印加された磁界の変化、すなわちその抵抗の変化が引き起こされる。ホイートストンブリッジに電圧をかけることによって、それらの出力に、本尺目盛に沿ったセンサの位置の周期関数電気信号を採取することができる。
【0004】
二つの測定用ブリッジは、λ/2位相をずらした四つの磁気抵抗電極で構成される。それぞれのブリッジに対応する電極は、λ/4位相をずらした位置を占める。二つの測定用ブリッジの電極は混合されている。この文書はさらに、電流Iのベクトルの方向を変えることができるバーバーポール構造の使用を示唆している。磁気抵抗電極の抵抗は、磁化ベクトルと電流ベクトルの間の角度関数になるので、バーバーポール構造は、センサの変位によって引き起こされた、電極の磁気抵抗変化の方向と振幅の制御を可能にする。
【0005】
測定用ブリッジのそれぞれのアームは、単独の磁気抵抗電極によって構成され、その幅は、本尺目盛によって発生した比較的かなり小さな磁界に反応するのに十分なものでなければならない。したがって、ブリッジのアームの抵抗は低下し、測定用ブリッジに大きな電流が流れる。したがって、この装置の消費電力は大きくなる。
【0006】
米国特許第5386642号明細書(Heidenhain)が記載しているセンサにおいては、電極は測定用ブリッジで組織されており、その各アームは、同位相で、かつ直列に接続された複数個の磁気抵抗電極によって構成されている。したがって、ブリッジのアームの抵抗はもっと大きく、それによって消費電力を大幅に減らすことが可能になる。しかしながら、このタイプのセンサの消費電力は、電気的に自立した機器、例えば携帯可能な精密ノギスにおける使用を検討するには大きすぎる。
【0007】
特開平1−212313号公報が記載しているのは、磁気抵抗電極式寸法測定装置において使用するのに適した電子回路であって、該回路において磁気抵抗電極は、直流電源によって給電される。
【0008】
特開昭61−173113号公報は、電力消費を押さえるために、角度寸法測定装置において磁気抵抗電極を接続する新規なやり方を記載している。電力消費の低下は、電極の特有な接続によるものである。
【0009】
ここにその内容を参照として含めた欧州特許出願公開第0924491号明細書に記載されているのは、磁気抵抗型寸法測定装置のための電子回路であって、該回路においては、磁気抵抗電極におけるエネルギー損失を制限するように、測定用ブリッジの給電が周期的に削減または中断される。測定用ブリッジを1/nのデューティサイクルで給電することによって、電極における電力消費をnで割ることが達成できる。
【0010】
この回路はまた、該装置を使用していないときの電力消費を削減することを可能にするスタンバイモード回路も記載している。スタンバイモードにおいて、回路の表示装置と制御装置は接続を切断され、したがって測定の読取はできない。これらの構成要素はつぎに、センサの変位が磁気抵抗電極によって検出されたときに復帰するが、該磁気抵抗電極は課電のままにしておかなければならない。
【0011】
したがって、欧州特許出願公開第0924491号明細書に記載のスタンバイモードはあまり有利ではない、なぜならスタンバイモードに入った装置は、測定値を表示するのに使用できないにもかかわらず、磁気抵抗電極に給電するために大きな電流を使用し続けるからである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の一つの目的は、先行技術の装置とは異なる磁気抵抗電極式測定装置であって、その電力消費が先行技術の装置以下であるものを実現することである。
【0013】
とくに、本発明の一つの目的は、電池によって給電されるノギスのような、携帯可能な測定装置を実現することである。
【0014】
本発明によれば、これらの目的は、独立請求項の特徴となる部分の要素を呈する回路によって達成されるが、さらにその変型は従属請求項に記載されている。
【0015】
図面の簡単な説明
本発明は、付属の図面を参照して、例として示された下記の説明を読むことによっていっそう明らかになるだろう。
【0016】
図1は、本発明による携帯可能な電子ノギスの分解図である。
【0017】
図2は、センサのさまざまな電極が、二つの測定用ブリッジを構成するように、接続されていることを示す、電気概念図である。
【0018】
図3は、先行技術の第一の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフを示している。
【0019】
図4は、先行技術の第二の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフを示している。
【0020】
図5は、本発明の第一の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフを示している。
【0021】
図6は、本発明の第二の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフを示している。
【0022】
図7は、本発明の第三の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフを示している。
【0023】
図8は、本発明の第四の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフを示している。
【0024】
図9は、本発明の第五の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフを示している。
【0025】
図10は、本発明の第六の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフを示している。
【0026】
図11は、本発明の第七の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフを示している。
【0027】
図12は、本発明の第八の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフを示している。
【0028】
図1は、本発明による携帯可能な電子ノギスの分解図である。かかるノギスの構造は既知であり、その内容を本書に参照として含めた、本件出願人の名義による欧州特許出願公開第719999号明細書に、例えば記載されている。
【0029】
本発明のノギスは、本尺2および本尺にそって長手方向に変位させるのに適したスライダー1を備えている。スライダーは可動のジョウ10を備える一方で、本尺は固定のジョウ20を備えている。永久磁石材料製の本尺目盛21は、本尺2に固定され、かつ磁化された連続する領域を備えている。本尺目盛21は、印字220を備えた非磁性材料22製の保護層で覆われている。
【0030】
一般的に参照番号11で示した電子手段は、液晶電子表示装置12に、ノギスのジョウ10と20の間の距離に依存する情報を表示することができる。これらの電子手段は、プリント回路基板115に直接組み立てられている。該手段は主として、磁性材の本尺目盛21の正面にプリント回路基板115の下に組み立てられた磁気抵抗センサ5を含んでいる。センサ5は、まとまって組織された多数の磁気抵抗電極で形成されるネットワークを備えており、ネットワークの多様な抵抗値は、本尺2にそったスライダー1の位置の周期関数である。センサは例えば、上述した独国特許出願公開第4233331号明細書、または米国特許第5386642号明細書のいずれか、あるいは好適には、その内容を本書に参照として含めた、本件出願人の名義による欧州特許出願公開第0877228号明細書に記載のようなタイプのものとすることができる。電子手段11はさらに、自立給電手段、表示した例では電池110を含んでいる。電池110は好適には、平坦なリチウム電池で構成され、かつ、数日間、好適には数箇月にもわたる装置における自立作動を確保しなければならない。
【0031】
ASIC型の集積電子回路3は、センサ5における磁気抵抗電極の抵抗値から、ジョウ10と20の間の距離に依存する少なくとも一つのパラメータを決定する;電子回路3は、標準マイクロコントローラ6に接続され、該マイクロコントローラは、集積電子回路3を制御し、かつ表示装置12を操作して測定した距離を表示する。電子手段11はさらに、好適には、センサ5に面した、プリント回路115の上面に取り付けられた分極化用磁石114を有する。
【0032】
電子手段11は、ケース13によって保護されており、ボタン132によって、例えばノギスの始動、あるいはリセット、連続する測定値の加算または平均化などの他の機能を操作することができる。オプトエレクロトロニクス・シリアル・コネクタ133がノギス1と、例えばプリンター、パソコン、または情報機器などの外部機器との間のインターフェイスとして備えられている。
【0033】
磁気抵抗センサ5は、多数の磁気抵抗電極を備え、その寸法は大きな抵抗が得られるように、したがってセンサの電力消費を押さえるように選択される。
【0034】
さまざまな磁気抵抗電極は、本尺目盛2によって発生された磁界に対する位相の多様な位置を占めるように、センサ5の上に長手方向に配置されている。本尺目盛2からの十分な距離において、磁界は軸x上のセンサ位置のほぼ正弦関数である。したがって、センサの各磁気抵抗電極上の本尺目盛21によって生じた磁界は、この電極の長手方向位置の正弦関数である;つまり各電極の抵抗は、本尺にそってスライダー1が変位したときに、正弦曲線的に変化する。測定用回路3、6は、磁気抵抗のさまざまな抵抗値によって、スライダーの位置を決定し、この情報を表示装置12に表示する。
【0035】
図2は、磁気抵抗電極の推奨接続態様を概略的に示している。磁気抵抗電極はこの例では、二つの測定用ブリッジ100(ホイートストンブリッジ)を画定するように接続されている。ブリッジの各アームは直列に接続された複数個の電極の組によって構成され、各組の内部の電極の位相は同一または近接している。好適変型実施態様において、各組は電極を備えているが、該電極は180゜の空間の位相の差を伴うだけでなく、バーバーポール構造が反対に、例えば+45゜と−45゜に方向づけられている。各測定用ブリッジが対応する電極は、この例では90゜位相がずれている。各ブリッジは四組の磁気抵抗電極ABCD、それぞれA’B’C’D’を含んでいる。異なる接続態様は、例えば一つまたは三つの測定用ブリッジ、あるいはブリッジのアーム間の異なる位相の差を伴っても、本発明の範囲内で使用することができる。
【0036】
一組当たりの磁気抵抗電極の数は、好適には4を超えるが、集積回路5の寸法によってしか制限されない;本発明の一つの実施態様において、一組当たりの磁気抵抗電極の数は72に等しい。それぞれ4組の72電極で構成された二つのブリッジを備えたこの非制限的な例において、センサ5における磁気抵抗電極100の合計数は、このとき576に等しい。
【0037】
図2に示した例において、電極の組A、それぞれA’は、電極の組C、それぞれC’に対して180゜位相ずれしている。同様に、電極の組B、それぞれB’は、電極の組D、それぞれD’に対して180゜位相ずれしている。組A、A’、B、B’は、それぞれの組C、C’、D、D’と同じ位相位置を占めている。しかしながら、それぞれの対AB、A’B’、CD、C’D’の磁気抵抗電極は反対に、例えば、+45゜と−45゜に方向付けられたバーバーポール構造を備えている。
【0038】
本発明によれば、二つの測定用ブリッジ100は抵抗器101,103,105および107を介して、端子UとUの間で給電される;スイッチ102、104、106および108は、各抵抗器を独立して短絡させることができる。すべてのスイッチが閉じたときに、したがって二つの測定用ブリッジ100は電圧uとuで直接給電される;すべてのスイッチを開くことで、印加される電圧は、それぞれusb、usbになり、それによりブリッジの端子の電圧差が低下し、また電力消費が低下する。本発明の好適変型実施態様において、スイッチ102、104、106および108は、同一の信号sbによって同時にすべて操作される;しかしながら、本発明の枠内においては、これらのスイッチを独立して制御することもできる。同時に、複数の中間消費レベルが有効であれば、独立して短絡可能な直列の複数個の抵抗器の間で、測定用ブリッジを給電することもできる。
【0039】
スライダー1を本尺目盛21に対してずらしたとき、測定用ブリッジはセンサの位置に応じてほぼ正弦波の差分信号c(端子CとC’の間)とs(端子SとS’の間)に戻し、一方の信号は他方の信号に対して90゜位相ずれしている。これらの信号は電子回路3に伝達され、該電子回路は、図5を参照して後で述べるごとく、該信号を増幅し、かつ増幅された信号からセンサの位置を決定する。電子回路3はさらに、キーボード132とのインターフェイス、ならびに外部機器との随意のインターフェイス、例えばシリアルインターフェイスRS232(133)を制御する。
【0040】
本発明による測定装置がさらに含むのは、好適には、測定単位の選択、回路の状態、現在使用中のブリッジの給電モードなどの、特定のパラメータを記憶するための、図示されていないパラメータ用の小型ランダムアクセスメモリ(PRAMまたはEEPROM)である。これらの記憶区域は、回路3またはマイクロコントローラ6に組み込むこともできる。
【0041】
回路3の可能な変型のもっと詳細な説明は、その内容を参照として本書に含めた、欧州特許出願公開第0924491号明細書に記載されている。
【0042】
つぎに、図3から12を参照して、本発明の回路のさまざまな給電方法を論じることとする。
【0043】
図3に示した先行技術の変型において、直流電圧uの値Umax(例えば3ボルト)が端子Usbに供給される一方で、別の直流電圧uの値Umin(例えば0ボルト)が端子U上の点Usbに供給される。したがって、二つの測定用ブリッジは、直流電圧Umax−Uminを用いて単一モードで給電されるので、電力消費は一定でかつ高い。したがって、この変型は、電力消費が重要課題である、電池によって給電される携帯可能な装置についての使用には適していない。
【0044】
パルス給電モードの測定用ブリッジの給電の変型は、図4に示されている。この変型において、点Usbに印加された電位は、最大電位Umaxと低い電位Usbの間で変動する(例えばVddとVdd/2の間)。点Usbの電位は、Usb=UsbとUminの間で変動する(例えば、Vdd/2とVss=0ボルトの間)。デューティサイクルは、一定で、かつT1/(T1+T2)である。
【0045】
スイッチングロスと順序論理の電力消費を無視すると、この給電モードは、デューティサイクルに等しい率で電極内の電力消費を減らすことを可能にする。各サイクルでの電位の変動は、信号uとuを供給する増幅器があまりに大きな電圧ジャンプを受けるのを防止するために、二つの端子UとUの間に配分されている。したがって、コモンモード除去比(CMRR)がそれほど重要ではない、入力増幅器を用いることが可能である。くわえて、電圧変動のこの配分は、寄生静電容量の充電/放電による電力消費、ならびに給電区間と給電削減区間の間のスイッチング時間を減らすこと、およびUの相補的遷移による信号Uの遷移によって誘発された寄生結合を補うこととが可能になる。
【0046】
信号uとuは、図示されていない発振器のクロック信号から、図示されていない順序論理によって供給される。給電区間と給電削減区間の間のデューティサイクルは、電子回路3における適切なコマンドレジスタによって変えられる。例えば、これらレジスタのうちの一つにおける二ビットは、四つのデューティサイクル操作の選択を可能にする:100%(常時給電)、50%、25%(図示)および0%(完全停止)。
【0047】
図3に示した連続給電に対して、この変型は電極における電力消費の削減を可能にする。削減率T1/(T1+T2)は、しかしながら自由に選ぶことはできない:給電中断の区間T2の間は、センサの変位の検出は全く不可能であり、その結果、この区間に表示された値は、不正確になることがある。他方で、電極の配置とコード化が位置の絶対測定を不可能で、差の測定しかできないというよくあるケースにおいて、絶対位置はセンサが区間T2の間に変位したときに失われ、その後の測定に誤差が引き起こされる。したがって、センサの最小の変位を検出し、かつ位置の基準が失われないことを確保するために、十分に小さなT2の値を選択することが必要である。
【0048】
本発明による測定用ブリッジのもう一つの給電の変型は、図5に示した。この変型によれば、測定用ブリッジは、最大電位Umaxと電位Uminの間の時間T1の給電区間の間、およびUsbとUsbの間の給電削減区間T2の間に給電され、UsbはUsbより大きい。給電区間T1と給電削減区間T2の間のスイッチングは、信号sbによってスイッチ102、104、106および108を作動させて実施される。このように測定用ブリッジは端子の電圧が常に少なくともUsb−Usbに等しい、単一のパルスモードで給電され、これらの値は位置の補間のない粗測定を可能にするように選択される。
【0049】
図4に示した先行技術の変型に対して、この解決法はセンサの変位を検出すること、給電削減区間T2の間であってもセンサの絶対位置を保存することを可能にする。したがって、はるかに小さいデューティサイクルT1/(T1+T2)の選択が可能になり、それによって最大電圧が印加される間の区間T1が制限される。消費電力は、端子UとUの間の電圧差の二乗に比例し、それによって、T1、T2、UsbおよびUsb用に選んだ値にしたがって、図4に示した変型に対して電力消費をさらに減らすことができる。
【0050】
これまでに図示した変型において、測定用ブリッジは連続式またはパルス式の単一のモードによって給電される。したがって、平均電力消費量は、ノギスの使用または不使用にかかわらず、ノギスの作動中に一定となる。しかしながら、本発明において明らかにされたように、有効使用時間は一般的に、ノギスが始動していた時間の一部に過ぎないにもかかわらず、使用者はしばしばノギスを数時間も通電したままにする。
【0051】
スタンバイモード回路を備えた磁気抵抗電極式寸測定装置は、上述の欧州特許出願公開第0924491号明細書にすでに記載されている。しかしながら、この文書において、磁気抵抗電極は、装置がスタンバイモードにあるときでも、給電されたままであり;したがって、電力消費は大きいままである。
【0052】
図6はこの観察を考慮に入れて電力消費を減らすことを可能にする本発明による変型を示している。この変型では、測定用ブリッジの二つの給電モードが使用される。第一のモードでは、測定用ブリッジ100の接続が切断され、すなわち上部端子Usbに印加される電圧は下部端子Usbに印加される電圧に等しい。
【0053】
測定用ブリッジの給電は、装置の操作、例えばセンサの変位または操作キーの作動が検出されると、直ちに第二のモードに移行する。この場合、Trig信号が発生し、図示されていない論理回路を介して、端子UsbとUsbに印加される電圧を変化させ、該端子はそれぞれUmaxとUminに移行し、結果として、測定用ブリッジは、測定区間内部での補間による位置の精密測定を可能にするのに十分な電圧で供給される。この給電モードは、所定の時間ΔT1の間維持され、ついでブリッジの給電が切断される。
【0054】
Trig信号は例えば、次のような事象に反応して始動される:それは、ノギスのキー132の一つの操作、シリアル入力133への操作信号、あるいは本尺目盛に対するセンサ5の変位である。この変位は例えば、図示されていない、追加の磁気抵抗電極によって検出されるが、該追加の磁気抵抗電極は、測定用ブリッジの接続が切れたときでも給電が維持され、その電流変動を測定することでTrig信号を発生するものである。
【0055】
時間ΔT1は、好適には十分に長く、例えば10分が選択されるが、それにより大半の情況における測定と結果の読み取りを可能にする。この時間は好適には、スタンバイ開始、またはノギスの他の機能の停止、例えば表示の停止の前の待機期間より短い。したがって実施された測定の読み取りは、電極の給電中断後でも、制限された時間内で依然可能である。
【0056】
位置の絶対的決定ができないセンサの場合、この位置は好適には、給電中断区間の際に、一時レジスタに、例えば位置計数器に記憶される。
【0057】
図6に示した解決は有効であるが、測定用ブリッジの外で、追加の磁気抵抗電極を、および、測定用ブリッジの接続が切れた際には、センサの変位を検出するための移動検出回路を必要とする。これらの要素は、コスト増と追加の消費電力を誘発する。他方で、位置計数電子装置は、測定用ブリッジの給電電圧を再設定するときに、絶対位置を保存するために特定の制約に従わなければならない。
【0058】
図7に示した給電の変型は、これらの問題点の解決を可能にする。この変型によれば、測定用ブリッジは、抵抗器101、103、105および107を介して、給電削減区間の間に給電される。このようにブリッジは、Usb−Usbに等しい電圧で給電され、この差は、少なくとも運動の検出と粗測定(位置の補間なし)を可能にするのに十分になるよう選択される。この粗測定によって変位が検出されると、あるいはその他の活動が検出されるとすぐに、Trig信号が発生し、時間ΔT1の間の信号sbの作動と、抵抗器101、103、105および107の短絡が引き起こされて、ブリッジの端子に完全な電圧Umax−Uminが回復される。
【0059】
図6に示した変型に対して、この解決法は、Trig信号の発生を簡単にし、また測定用ブリッジに給電されていないときの位置基準喪失の問題を解決する。したがって、Trig信号の発生により厳しい条件を適用すること、および十分な振幅および/または長さの変位が検出されたときにだけ、測定用ブリッジの完全給電モードに移行することとが可能になる。しかしながら、ノギスが給電削減モードのときでも、直流電流は磁気抵抗電極100に流れ続ける。
【0060】
図8は、図7について述べたものと同様な変型を示しているが、そこにおいて測定用ブリッジの給電は、ΔT1より長い区間ΔT2の後に、完全に切断される。この変型は、したがって、三つの異なるブリッジの給電モードを使用する:
・停止モード(「オフ」)では、区間ΔT2の間に、何の運動も検出されなかったときに、ブリッジの給電は完全に切断される。
・スタンバイモードでは、区間ΔT1の間に、何の運動も検出されなかったときに、ブリッジの給電は削減されるだけである。
・精密測定モードでは、運動または操作の検出直後の区間ΔT1の間に、正確な測定が可能になる。
【0061】
ノギスは、例えばノギスのキーの一つが操作された後に、停止モードからスタンバイモードに、または直接精密測定モードに移行する。くわえて、ノギスの他の要素、例えば表示装置を、図示されていない、ΔT2を超える区間ΔT3の後に、スタンバイモードまたは停止モードにすることも可能である。
【0062】
図9は、図7について述べたものと同様なもう一つの給電の変型を示しているが、そこにおいて測定用ブリッジの給電は、運動の検出と、最小の電力消費による絶対位置の維持とを可能にするように、給電削減区間の間、デューティサイクルT1/(T1+T2)でパルス化される。ブリッジの完全かつ連続な給電は、時間ΔT1’の間回復されるが、それは区間T1の間に、例えば変位の検出を示すTrig信号を受信したときである。
【0063】
図9において、測定用ブリッジの端子の電圧は、ノギスが区間T1の間の、給電削減モードにある際に、(Umax−Umin)と0の間で振動する。図示されていない変型において、粗測定を実施するのにちょうど十分な、より低い電圧(Usb−Usb)をこれらの区間の間印加することは明らかに可能であろう。
【0064】
図10は図7について述べたものと同様なもう一つの変型を示しているが、そこにおいて、測定用ブリッジの給電は、時間ΔT1の間ブリッジが精密測定モードにあるときに、デューティサイクルT1/(T1+ΔT2)でパルス化される。この変型は、したがって、変位を検出すること、いつでも粗い精度で位置を測定すること、およびノギスの操作を示すTrig信号の発生の後の時間ΔT1の間だけ、より精密な測定を許可することができる。
【0065】
好適な変型において、時間T1の間隔は、表示装置12の更新表示の区間と同期しているが、それにより、表示装置に表示された測定値の更新表示の周期の間、あるいはその直前の、位置の正確な測定を可能にする。
【0066】
図10に示した変型において、測定用ブリッジは、運動が全く検出されないときでも、電圧Usb−Usbで給電されたままである。当業者には自明のごとく、Trig信号の発生に続く、区間ΔT1またはΔT2の後に、停止モードに移行すること、またこの給電を完全に停止することも可能である。
【0067】
図11は、図10について述べたものと同様な測定用ブリッジの給電のもう一つの変型を示しているが、ここにおいて測定用ブリッジは、パルス電圧で常時給電されている。しかしながら、デューティサイクルは、Trig信号で示される操作の検出に続いて増加し、またT3/(T3+T4)からT1/(T1+T2)に移行する。好適な変型において、区間T1は、表示装置12の更新表示の区間と同期しているが、それにより表示された測定値の更新表示の周期の間、あるいはその直前の、位置の正確な測定を可能にする。したがって、この変型は、Trig信号で示される事象の検出に続く時間ΔT1の間に、回路が精密測定モードにあるときにだけ、表示された測定値の頻繁な更新を可能にする。
【0068】
図11において、ブリッジの端子の電圧は、常に(Umax−Umin)と0の間で振動する。図示されていない変型において、粗測定を実施するのにちょうど十分な、より低い電圧(Usb−Usb)を、測定用ブリッジがスタンバイモードにあるときに、周期T3の間かけることは明らかに可能であろう。くわえて、図12に示したごとく、Trig信号の始動に続いて、給電削減区間T2の間、給電電圧を完全には停止しないことも可能であるが、それにより電圧のジャンプ、したがって正確な測定の際の静電容量の損失および変動を減らすようにする。
【0069】
当業者には理解できるように、図11と12の変型において、Trig信号の発生に続く区間ΔT1またはΔT2の後に、測定用ブリッジの給電を完全に停止することも可能である。
【0070】
一つの変型において、電子回路3はさらに図示されていない周波数計を備え、測定信号の周波数、したがって、センサの変位速度を決定する。本発明の選択的な特徴によれば、測定用ブリッジの給電モードは検出された周波数に依存するが、それにより、センサが高速で変位した際に、デューティサイクルT1/(T1+T2)が増加する。
【0071】
さらにデューティサイクルは、電子回路に給電する電池110の充電状態を検出する図示されていない回路によって操作することもできる:電池が所定の最小値未満の電圧を供給するときには、電力消費を減らすために、デューティサイクルまたはブリッジの端子の電圧は減少する。
【0072】
他方で理解できることは、上述のさまざまな変型は相互に組み合わせが可能であること、および二つまたはそれ以上の別個のモードを用いる磁気抵抗電極の給電の変型を備えることも可能であることであり、各モードは、異なる電圧と、さまざまなデューティサイクルで連続化またはパルス化される給電の使用ができるものである。そのうえ、一つのモードから他のモードに移行するためにさまざまな条件を想定することができるが、それは例えば、一つまたは複数のTrig信号によって示される変位または操作の検出、測定用信号の周波数の変更、電池の荷電状態の変更、さまざまな事象から、例えばTrig信号からの、可変時間ΔT1の始動されるタイマーの計数、あるいは電子回路3における少なくとも一つの適切なコマンドレジスタ内の情報などである。コマンドレジスタは、例えば使用者の所望の測定分解能を示すことができる。
【0073】
したがって、例えばさまざまな給電モードで作動するための、同一の回路をプログラミングすることもできるが、それは例えば、規定の使用に応じて電力消費を最適化するためである。このプログラミングは、プロセッサ6の制御下でソフトウェアによって、あるいはセンサおよび/または測定回路の特定の脚部に特別な電圧をかけて、プリント回路基板115上のセンサ5および/または測定用回路3の組立(ボンディング)によって実施することができる。
【0074】
他方で、図示したすべての変型は、簡略化のため、長方形の電源信号uとuを示している。しかしながら容易に理解できるように、本発明は、任意の形、例えば正弦波、三角形などの電源信号を用いるノギスにも適用できる。また、本発明の範囲を逸脱することなしに、ノギスがおかれたモードによって電源信号の形状を変えること、例えば長方形インパルス列を用いてスタンバイモードでの変位を検出すること、および変位または操作が検出されるとすぐに正弦波形の電源信号を用いることもできる。
【0075】
使用されるセンサに応じて、磁気抵抗電極100の他の給電モードを考えることもできるが、それは例えば、電流給電、非差動給電などである。他方で、複数の測定用ブリッジを含む回路の場合、本発明の範囲を逸脱することなしに、異なるモードでこれらの異なるブリッジに給電することもできる。
【0076】
上述のごとく、測定用回路3は二つの測定用ブリッジ100から来る差分信号s−s’とc−c’を増幅するために、図示されていない差分入力の増幅器を含んでいる。本発明の好適な変型において、これらの増幅器は、二つのモードで作動するために制御することができるが、該モードは電力消費と異なるノイズレベルによって区別されるものである。したがって好適には、Trig信号の発生に続く区間ΔT1の間だけ、低ノイズおよび高消費モードで作動するように、増幅器を制御することになる。
【0077】
該回路は、例えばノギスまたはマイクロメーターなどの、携帯可能な大きさの測定装置においてとくに有利であることを明らかにしてきたが、当然その使用は、長手方向または角度方向の寸法測定の固定または可動式のいっさいのタイプの装置においても可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による携帯可能な電子ノギスの分解図
【図2】センサのさまざまな電極が、二つの測定用ブリッジを構成するように、接続されていることを示す電気概念図
【図3】先行技術の第一の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフ
【図4】先行技術の第二の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフ
【図5】本発明の第一の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフ
【図6】本発明の第二の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフ
【図7】本発明の第三の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフ
【図8】本発明の第四の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフ
【図9】本発明の第五の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフ
【図10】本発明の第六の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフ
【図11】本発明の第七の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフ
【図12】発発明の第八の変型による、測定用ブリッジの電源信号の時系列グラフ
【符号の説明】
2 本尺
3 電子回路
5 センサ
6 マイクロコントローラ
10 ジョウ
11 電子手段
12 表示装置
13 ケース
20 ジョウ
21 本尺目盛
22 非磁性材料
100 磁気抵抗電極
114 分極用磁石
115 プリント回路
132 ボタン
133 オプトエレクロトロニクス・シリアル・コネクタ

Claims (21)

  1. 寸法測定装置において、
    一連の磁化された領域(23,24)を備えた本尺目盛(21)と、
    本尺目盛(21)に対面して平行に変位するのに適し、かつ少なくとも一つの測定用ブリッジを構成するように接続された磁気抵抗電極ネットワーク(100)を備えたセンサ(5)と、
    前記少なくとも一つの測定用ブリッジに給電するため、および前記少なくとも一つの測定用ブリッジの少なくとも一つの出力信号に依存する少なくとも一つの量を供給するための回路、とから成り、
    前記少なくとも一つの測定用ブリッジが、前記磁気抵抗電極を介した低い電力消費で前記本尺目盛に対する前記センサの変位の検出を可能にする第一モードと、前記装置の操作の検出に応じて、より高い電力消費でより精密な測定を可能にする少なくとも一つの第二モード、とによって給電されることを特徴とする装置。
  2. 該装置において、前記第一モードが、前記センサの位置の粗い決定を可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
  3. 該装置において、前記第一モードで給電される際に、前記少なくとも一つの測定用ブリッジに電流が全く流れないが、このとき前記装置はブリッジの一部を構成せず、かつ前記第一モードで給電されたままの少なくとも一つの磁気抵抗電極を備え、前記第二モードは、前記少なくとも一つの追加の磁気抵抗電極によって、センサの変位が検出されるとすぐに作動することを特徴とする、請求項1または2のいずれか一つに記載の装置。
  4. 前記第二モードが、前記本尺目盛に対する前記センサの変位の検出に応じて作動されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の装置。
  5. 少なくとも一つの操作キーを備え、前記第二モードが、前記少なくとも一つの操作キーのどれか一つの操作に応じて作動されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の装置。
  6. 少なくとも一つのシリアルインターフェイスを備え、前記第二モードが、前記シリアルインターフェイスについての操作信号に応じて作動されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載の装置。
  7. 該装置において、前記少なくとも一つの測定用ブリッジの給電電圧が、前記第一モードにおいてよりも、前記第二モードにおいての方が高いことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載の装置。
  8. 該装置において、前記第一モードがパルス式であり、前記第二モードが連続式であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一つに記載の装置。
  9. 該装置において、前記第一モードが連続式であり、前記第二モードがパルス式であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一つに記載の装置。
  10. 該装置において、前記第一モードが、第一デューティサイクルでパルス化され、前記第二モードが、前記第一デューティサイクルと異なる第二デューティサイクルでパルス化されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一つに記載の装置。
  11. 給電区間と給電削減区間の間の動作デューティサイクルが、入力信号の周波数に依存することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一つに記載の装置。
  12. 前記測定の表示装置を備え、前記表示装置が周期的に更新表示され、該装置において、前記第二モードの間の前記測定用ブリッジの給電区間が、表示された測定値の更新表示周期の間または直前に、位置の正確な測定を可能にするように、表示装置の更新表示区間と同期されていることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一つに記載の装置。
  13. 該装置において、前記第一と前記第二のモードにおける前記測定用ブリッジの電源信号の形状が異なることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一つに記載の装置。
  14. 所定の区間(ΔT1)の後に、前記第一モードに復帰することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一つに記載の装置。
  15. 該装置において、前記測定用ブリッジの給電が、前記本尺目盛に対する前記センサの変位の前記検出に続く所定の区間(ΔT2)の後に、完全に切断されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一つに記載の装置。
  16. 該装置において、採用された給電モードが、前記センサの変位速度に依存することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一つに記載の装置。
  17. 自立して装置に給電するための電池(110)と、前記電池(110)の充電状態を検出する回路(46)とを備え、採用された給電モードが,前記充電状態に依存することを特徴とする、請求項1から16のいずれか一つに記載の装置。
  18. 少なくとも一つのコマンドレジスタを備え、かつ該装置において、採用された給電モードが、前記コマンドレジスタの少なくとも一つの状態に依存することを特徴とする、請求項1から17のいずれか一つに記載の装置。
  19. 該装置において、前記コマンドレジスタの一つが、使用者の所望の分解能を示すことを特徴とする、請求項18に記載の装置。
  20. 該装置において、給電電圧が、前記少なくとも一つの測定用ブリッジの二つの外部端子(Up,Un)の間に供給され、
    前記少なくとも一つの測定用ブリッジに給電されたときに、一方の端子(Up)が最大電位(Upmax)で、他方の端子(Un)が最小電位で給電され、
    印加される電圧が下がったときに、二つの端子が中間電位で給電されることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一つに記載の装置。
  21. 該装置において、前記測定用ブリッジが、少なくとも一つの抵抗器(101,103,105,107)を介して前記外部端子に接続され、少なくとも一つのスイッチ(102,104,106,108)が、前記測定用ブリッジに最大電位をかけなければならないときに、前記抵抗器の少なくとも一つを短絡することができることを特徴とする、請求項20に記載の装置。
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