JP2004359811A - 放熱性、遮熱性に優れた組成物及び皮膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルコキシシランをバインダーとして安定に使用し、熱を蓄積しやすい物体等に塗布し皮膜を形成せしめ、放熱を促進し、熱を遮蔽し以て物体の温度上昇を抑制する組成物及び皮膜を提供する。
【解決手段】アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物からなる放熱性、遮熱性に優れた組成物及びその組成物から形成せしめた皮膜である。アルコキシシランは、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの少なくとも一種を含有することができる。また、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを含有することができる。アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末は、使用直前に混合する。
【選択図】無し
【解決手段】アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物からなる放熱性、遮熱性に優れた組成物及びその組成物から形成せしめた皮膜である。アルコキシシランは、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの少なくとも一種を含有することができる。また、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを含有することができる。アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末は、使用直前に混合する。
【選択図】無し
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放熱性、遮熱性に優れた組成物及び皮膜に関する。より詳しくは、熱を蓄積しやすい物体に塗布し皮膜を形成し、その蓄積した熱を放出することにより又は熱の遮蔽により物体の温度上昇を抑える作用をもつ放熱性、遮熱性に優れた組成物及び皮膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
遠赤外線放射用塗料ないし遠赤外線放射用組成物は、古くから知られている。遠赤外線放射用塗料ないし遠赤外線放射用組成物は、例えば遠赤外線ヒーターのような加熱体の熱効率を高めるための塗料ないし組成物である。これらの遠赤外線放射用塗料ないし組成物は、酸化アルミニウムやチタン、珪素、ジルコニウム、鉄、銅、コバルト、ニッケル、マンガン、クロム等の酸化物をバインダーに混合させたものが多い。バインダーとしては、シリコーン樹脂、リン酸塩、珪酸塩等が用いられる。このような遠赤外線放射性組成物ないし塗料は、加熱体に使用され、加熱体の加熱効果を高めるために利用されている。
【0003】
バインダーとしてアルコキシシラン(有機シリケート)を使用する遠赤外線放射用組成物が知られている。例えば、特開昭63−207868号公報(特許文献1参照)には、アルキルシリケート又はアルキルシリケートと金属アルコキシドとの混合物にアルミナ粉末やシリカ粉末を添加した組成物が記載され、この組成物はヒーターの遠赤外線放射物層の形成に役立つことが記載されている。特開平3−47883号公報(特許文献2参照)には、オルガノアルコキシシランと二酸化マンガン及び三酸化クロムからなる、耐久性の高い電気絶縁膜を形成するコーティング用組成物が記載されている。特開平1−259073号公報(特許文献3参照)には、珪素アルコキシド又は金属アルコキシド及びこれらの混合物と遠赤外線放射顔料とからなる組成物が記載され、この組成物をヒーター用保護基材表面に塗布することが記載されている。特開平1−223191号公報(特許文献4参照)には、アルコール系溶剤中にアルコキシシランと遠赤外線放射特性に優れたセラミックス粉末を分散させた組成物が記載され、その組成物は乾燥機の内壁に塗布し乾燥効果を高めることが記載されている。
【0004】
アルコキシシランは、水分の作用を受けて加水分解・縮合して最終的には重合体を形成する。この作用をバインダーとして利用し、溶剤中でアルコキシシランと各種粉末を混合したものを物体に塗布して皮膜を形成せしめることができる。
しかしながら、水が共存した状態で長時間保存すると、アルコキシシランは次第に加水分解が進行し、ついには重合体になる。重合体になってしまうと、流動性が無く最早物体に塗布することはできなくなる。即ち、アルコキシシランは、バインダーとして安定に利用できないという問題がある。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−207868号公報
【特許文献2】
特開平3−47883号公報
【特許文献3】
特開平1−259073号公報
【特許文献4】
特開平1−223191号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アルコキシシランをバインダーとして安定に使用し、かつ、物体等に塗布し皮膜を形成せしめ、物体に蓄積した熱の放出を促進し、また、周囲の発熱体から放出される熱を遮蔽し以て物体の温度上昇を抑制しようとするものである。電気・電子機器は使用中に熱を発生するものが多い。例えば、モータやモータを利用する各種機器、ランプ等を使用する各種機器、半導体を使用する各種機器等々である。機器は種々の部品から構成される。各種機器、部品には、自ら熱を発生し温度が上昇するものもあれば、自らは熱は発生しないが周囲の熱を発生する発熱体から熱を受けて温度が上昇するものもある。
【0007】
各種機器のうち、特に電子機器は、小型化に対する要望が強い。機器の小型化を実現するためには、発生する熱の除去が大きな問題となっている。本発明は、機器やその部品類に塗布し皮膜を形成せしめ、機器やその部品に蓄積された熱を放出することにより、また、周囲の発熱体から受ける熱を遮蔽することにより、機器等の温度上昇を抑えようとするものである。機器、部品等の温度上昇を抑えることにより、機器の小型化を容易にすることができる。
【0008】
先に述べたように、セラミックスのような遠赤外線放射性物質の粉末をバインダーと混合し、ヒーターのような加熱体に皮膜を形成せしめることにより、加熱体の加熱効果を高めることは広く行われている。しかしながら、遠赤外線放射性物質の粉末をバインダーと混合し皮膜を形成せしめることにより、発熱体に蓄積される熱を放出し、又は、発熱体から熱を遮蔽し、以て物体の温度上昇を抑制しようとすることは全く知られていない。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物からなる放熱性、遮熱性に優れた組成物である。そして、アルコキシシランが、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの少なくとも一種を含有することができ、コロイダルシリカ(固形分)は、前記アルコキシシラン1に対して重量で、0.01〜1で使用することが好ましい。
【0010】
また、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを混合することができる。チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、単体として使用してもよいし、溶液として使用することもできる。溶液として使用する場合には、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドの有機溶媒の溶液状態で使用してもよいし、アルコキシシランの溶液に更にチタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを混合してもよい。そして、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、アルコキシシランの珪素原子に対してチタン及び/又はアルミニウム原子が0.01〜0.5の割合で添加されることが好ましい。
【0011】
酸化珪素粉末及び酸化アルミニウム粉末の量が、前記アルコキシシラン1に対して重量で、0.5〜70であることが好ましく、カオリンの量が、前記アルコキシシラン1に対して重量で、0.1〜20であることが好ましい。
【0012】
更に、上記放熱性、遮熱性に優れた組成物から形成せしめた皮膜である。この被膜の厚みは10〜100μmが好ましい。
【0013】
本発明でいう放熱性とは、蓄積された熱を放射によって放出させる特性をいう。例えば、半導体のように使用中に発生する熱を大気中に放出することによって半導体の温度上昇を抑える特性をいう。また、遮熱性というのは、自らは発熱しないが、周囲の発熱体から熱を受けて温度が上昇するような場合、周囲からの熱を遮り温度上昇を抑える特性をいう。
【0014】
本発明の基本は、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物からなる放熱性、遮熱性に優れた組成物である。また、その組成物から形成せしめた放熱性、遮熱性に優れた皮膜である。組成物の各成分であるアルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末は、使用する直前に混合する。使用するまでは、特にアルコキシシランは溶液の状態で保存される。このアルコキシシランの溶液には実質的に水は含まない。水を含まない状態に、アルコキシシランを溶液状態に保持し、保存中のアルコキシシランの加水分解・縮合を防止する。
【0015】
アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン(モノ有機基置換アルコキシシラン)、ジアルコキシシラン(ジ有機基置換アルコキシシラン)等を使用することができる。これらアルコキシシランを適宜混合して使用することもできる。アルコキシシラン(アルキルシリケートとも称される)は、使用直前までは、水の存在しない状態、即ち、水を含まない溶液の状態に保持する。溶液に使用する溶媒は、水に溶解する溶媒を使用する。
【0016】
アルコキシシランの具体的な例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、ジチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等であり、更には、珪素置換有機基はエポキシ基、エステル基、カルボキシル基、水酸基等の官能基を有していてもよい。但し、これらに限定されるものではない。
【0017】
アルコキシシラン溶液に使用する溶剤は、アルコキシシランを溶解する水溶性の有機溶剤である。アルコキシシランはコロイダルシリカの水分散液と混合するために、水に溶解する必要があるので、水溶性の溶剤を使用する。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホオキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルフォルムアミド、メチルアセトアミド等の溶媒剤である。なかでも、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルフォルムアミド、メチルアセトアミド等の溶剤が、アルコキシシランの保存、膜形生成及び放熱効果の点から好適に使用できる。上記水溶性の有機溶剤は、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドの溶剤としても使用できることは言うまでもない。
【0018】
コロイダルシリカは、周知技術に基づきテトラアルコキシシラン(テトラアルキルシリケート)を加水分解することにより容易に得ることができる。市販もされている。例えば、テトラエチルシリケートを塩酸、硝酸、アンモニア等の触媒の存在するエチルアルコールと水の混合液中に滴下し加水分解し、加水分解後エチルアルコールと触媒を、例えば、真空下に除去することにより、コロイダルシリカの水分散液を得る。このコロイダルシリカの粒径は、ミクロンオーダーないしそれ以下の小さいものである。コロイダルシリカは表面にシラノール基を有している。コロイダルシリカの水分散液中のコロイダルシリカの量は、10〜60重量%程度である。この量は、加水分解時に使用する水の量で適宜調製することができる。シリケートの加水分解後、水を加えて調製することもできる。
【0019】
アルコキシシラン溶液は、使用直前に、コロイダルシリカの水分散液と金属酸化物粉末等と混合される。アルコキシシラン溶液とコロイダルシリカの水分散液との混合割合は、コロイダルシリカ(固形分)が、アルコキシシラン1に対して重量で、0.01〜1となるように混合することが好ましい。コロイダルシリカ水分散液の水は、アルコキシシランの加水分解に寄与する。同時に、アルコキシシランがその加水分解の過程でコロイダルシリカのシラノール基と反応しコロイダルシリカを抱き込んだ形で皮膜を形成することもできる。コロイダルシリカは、膜形性、膜の保持性及び放熱性、遮熱性に寄与する。
【0020】
更にチタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを含有することができる。チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを添加することにより、アルコキシシランの加水分解・縮合の反応速度を調節することができる。チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドの添加量が多いと加水分解の反応速度が大きくなり、少ないと反応速度が小さくなる。この観点から、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、アルコキシシランの珪素原子に対してチタン及び/又はアルミニウム原子が0.01〜0.5の割合で添加するのが好ましい。
【0021】
チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末とを混合する際に、単体又は溶液の形態で混合使用することができる。アルコキシシランの溶液に前もって加えておいて、アルコキシシランと共に混合使用してもよい。いずれにしても、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、水によりアルコキシシランとともに共加水分解し、チタン及び又はアルミニウムを主鎖に含む重合体を生成し皮膜を形成することができる。
【0022】
チタンアルコキシドの具体的な例としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、アルミニウムアルコキシドの具体的な例としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等を使用することができる。但し、これらに限定されるものではない。チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを含有する溶液又はアルコキシシラン溶液は、水が存在しなければ、安定に保存することができる。
【0023】
アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液及び金属酸化物等との混合物を発熱体等の物体に塗布し皮膜を形成せしめる。物体に塗布する直前に、アルコキシシランの溶液とコロイダルシリカの水分散液を先ず混合し、この混合液に金属酸化物粉末を加えて懸濁液を得る。同時に、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液及び金属酸化物等を混合してもよい。これらの混合物は懸濁液となる。この懸濁液を発熱体等の物体に塗布し皮膜を形成せしめる。
添加する金属酸化物等は、酸化アルミニウム、酸化珪素及びカオリンである。更に、他の金属酸化物を加えることもできる。具体的には、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化錫、酸化銅、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化アンチモン、酸化硼素、酸化バリウム、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム等の金属酸化物の少なくとも1種を含有することができる。金属酸化物以外に、窒化硼素、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化錫、窒化ストロンチウム、窒化チタン、窒化バリウムや窒化珪素等の窒化物を含有することもできる。
【0024】
使用する酸化アルミニウム、酸化珪素、カオリン、更には他の金属酸化物や窒化物は、その粒径を15μm〜100nmとするのがよい。より好ましくは、10μm〜80nmの粒径のものを使用する。この粒径のものを使用することにより、皮膜の表面が滑らかで綺麗になるとともに放熱、熱遮蔽の効率が高まる。
【0025】
酸化珪素粉末及び酸化アルミニウム粉末等の金属酸化物粉末は、アルコキシシラン1に対して酸化物を合わせて重量で、0.5〜70添加することが好ましく、また、カオリンは、アルコキシシラン1に対して重量で、0.1〜20添加することが好ましい。これは、皮膜形成性を維持しながら、高い放熱性能、熱遮蔽性能を保持するためである。
【0026】
皮膜形成時に、アルコキシシラン溶液、コロイダルシリカの水分散液及び金属酸化物等を混合し、懸濁液を得る。懸濁液の粘度が高いようであれば、必要に応じて、溶剤や水を添加して、粘度を調整する。このようにして得た懸濁液を対象物に塗布することにより、皮膜を得ることができる。懸濁液を対象物に筆塗り、スプレー、ローラー、印刷等により塗布し、常温又は加温にて乾燥後、更に、必要に応じて、80℃〜300℃で熱処理することにより、金属表面との密着度の高い皮膜を得ることができる。懸濁液の塗布は、石英ガラスや、金属同士のスポット溶接部にも行うことができる。皮膜を形成する対象物は、熱を蓄積する発熱体である。その対象は、主として電気・電子機器やその部品である。
【0027】
本皮膜の膜厚は、或る程度の厚さがないと放熱効果は十分に発現しない、逆に厚さが大きすぎると皮膜に蓄熱作用が起こり、放熱効果が不十分となる。本発明の実験によると膜厚は100μm以下が好ましく、更に好ましくは10〜100μm、特に好ましくは30〜80μmである。
【0028】
本発明の組成物は、塗装材用、接着材用、結合材用等として、例えば、鉄鋼、弱電、車輌、調理器具、建材等の広い分野に応用される。また、塗布対象の基材としては、鋳鉄、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、モリブデン、インコネル等の金属、樹脂、プラスチック、木材、石材、ガラス、セラミック等が好適に用いられる。
【0029】
本発明の組成物、皮膜は、優れた抗ヒートショック性、耐熱性、放熱性、遮熱性等の特性を有する。また、蓄熱したエネルギーを遠赤外線として空気中に放射する能力が高く(放射率0.95という高い数値を示す)、また、周囲の発熱体から受ける熱を遮蔽する特性を有する。内部に蓄積した熱を遠赤外線という電磁波に変換して効率よく放射し、物体の温度上昇を抑えることができる。また、遠赤外線の放射により熱源から熱を遮蔽することができると考えられる。
【0030】
効率良く遠赤外線を放射するということは、内部に蓄積した熱を遠赤外線という電磁波に変換して効率よく放熱することを意味し、結果として温度上昇を抑える効果をもたらす。これは空気対流という手段を用いずに効率よく放熱するという結果をもたらす。従来遠赤外線の放射能力が高いとされている物質(例えば、ゼオライト、コージェライト、アパタイト、ドロマイト等)の遠赤外線放射特性を見ると、4ミクロン乃至14ミクロンの波長全ての領域にわたって高い遠赤外線の放射特性をもつわけではなく、波長によって放射率に相違がある。多くの場合、9ミクロン波長前後の鎮域で放射率が下がる傾向が見られる。一方、本発明が提供する組成物の放射する遠赤外線は4ミクロンから14ミクロンに至る波長の全ての領域にわたって0.9以上の放射率を維持し、非常に放射効率の高いものとなっている。
【0031】
本発明の組成物においては、例えば、金属に塗布された場合、500℃程度の高温加熱によっても皮膜の破壊(ひび割れ、剥離現象、変色等)が起こらず、優れた耐熱性を有する。また、500℃以上のような高温から冷水に投下急冷しても、ひび割れや剥離等の皮膜の破壊現象が発生せず、優れた抗ヒートショック性を有する。
【0032】
電気・電子機器において、使用されている部品が熱蓄積によって劣化することが知られている。例えば、電球は発光する電線の劣化切断によって寿命をむかえ、蛍光灯においては、放電部が熱によって黒変すると同時に、光量の低下が発生し、寿命をむかえることになる。また、電子部品としての電解コンデンサーは、内部に存在する電解液が加熱によって蒸発し、電解コンデンサーとしての性能を発揮できなくなる。この点、本発明の組成物を部品の周囲に塗布して、放熱性、遮熱性に優れた皮膜を形成すると、部品の発生する内部の熱を逐次遠赤外線として周囲に放射していくので、内部エネルギーの減少をひきおこし、部品にかかる熱履歴を低下することができ、部品の長寿命化につながる。
【0033】
さらに、本発明の組成物は塗布した金属に対して折り曲げ加工やプレス抜き加工といった物理的な外力を加えた場合にも、曲げ曲面や切断断面に対して皮膜の破損や剥離がない。このような性能を利用して、本発明の組成物を金属に塗布し、皮膜を形成した後に、金属の加工を可能にした。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をその実施形態に基づいて説明する。
【0035】
【実施例1】
メチルトリメトキシシラン300重量部、ジメチルジメトキシシラン170重量部、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン30重量部、テトラブトキシチタン15重量部をN−メチルピロリドン485重量部に溶解した溶液、シリカ固形分として20重量%の酸性コロイダルシリカの水分散液1000重量部とを混合した。この混合液の700重量部をとり、カオリン110重量部、酸化珪素粉末435重量部、酸化アルミニウム粉末190重量部及び酸化ジルコニウム粉末120重量部を加え、攪拌混合して、懸濁液を得た。
【0036】
上記懸濁液を、アルミニウム製のL字状板に塗布し皮膜を形成せしめた。懸濁液の塗布後、大気中で風乾した。皮膜厚は48μmであった。続いて95℃で30分乾燥し、更に、100℃で60分熱処理した。このL字状放熱板をパワーモジュールに装着した。この場合、L字状放熱板が同時にパワーモジュールの支持体となり同時に放熱体となっている。パワーモジュールの稼働中の温度を、パワーモジュール本体の6か所で測定した。その平均値は、55.8℃であった。一方、皮膜を有しない以外は同じL字状放熱板を装着したパワーモジュールについて同様にして稼働中の温度を本体の6か所で測定したところ、その平均値は、62.5℃であった。パワーモジュール本体に蓄積された熱は、熱伝導により放熱板に伝えられ放熱板から放熱され、その結果としてパワーモジュール本体の熱が放出され、パワーモジュール本体の温度上昇が抑えらる。この際、皮膜を形成せしめた放熱板を装着することにより、パワーモジュール本体の温度を低く抑えることができることがわかった。
【0037】
上記組成物から形成せしめた皮膜について、遠赤外線放射率を測定した。測定は、レーザフラッシュ法に基づいて行った。即ち、金属板表面に皮膜を形成せしめ、皮膜が形成していない面をガスバーナを用いて加熱し、皮膜形成面から放射される単位面積当たりの遠赤外線放射量を放射率計で測定するものである。一定の温度で加熱したときに熱エネルギーを遠赤外線として放射する量によって放射率が求められる。一定の熱エネルギーを与えた場合にエネルギーの100%を遠赤外線として放出した場合の単位面積当たりの放射遠赤外線量が決まっているので、実際に放出された単位面積当たりの遠赤外線量を測定することにより、その放射率を求めることができる。
【0038】
本測定においては、厚さ0.8mmのSU4の板(150mm×40mm)に、実施例1で得た組成物から70μmの厚さの皮膜を形成せしめたものを試験片とし、遠赤外線放射計(インフラメトリックス社製600L)を用いて、1.5μ〜25μの波長の範囲に亘って測定した。測定温度は、50℃、100℃及び150℃の3点であった。各温度に於ける遠赤外線放射率曲線を図1〜図3に示した。
【0039】
図1〜3から明らかなように、5μ〜25μの波長の範囲に亘り、平均して95%以上の放射率が測定された。測定温度が高いほど、放射率は高くなる傾向にある。引用文献等に記載されている遠赤外線放射率は5μ付近の放射率は高いが、波長が長くなるに従い、特に9μ以上の波長においては、放射率が低くなる傾向を示している。これに対して本発明の皮膜は、波長が長くなっても依然として高い放射率を維持していることがわかる。
【0040】
【実施例2】
エチルトリエトキシシラン270重量部、ジエチルジエトキシシラン150重量部、テトラエトキシシラン30重量部、チタンテトラブトキシド15重量部をN−メチルピロリドン535重量部に溶解した。この溶液に、シリカ固形分として20重量%の酸性コロイダルシリカの水分散液1000重量部を混合した。混合液のうち550重量部に、カオリン70重量部、酸化珪素粉末310重量部、酸化アルミニウム粉末135重量部及び酸化ジルコニウム粉末85重量部を加え、攪拌混合して、懸濁液を得た。
【0041】
この懸濁液をファンモータのモータ部分に塗布し被膜を形成せしめた。皮膜厚は40μmであった。ファンモータの前面10mmの位置にヒートガンを置き、ファンモータのモータ部分の裏面モータ軸に温度検出端を取り付け、ファンモータを動かすことなく、ヒートガンを点灯しモータ軸の温度上昇を測定した。測定時の室温は25.1℃であった。モータ軸の温度は、約30分で平衡状態になった。平衡状態におけるモータ軸の温度は、64.2℃であった。一方、皮膜を有しないファンモータにおいては、モータ軸の温度は75.4℃であった。このように、本発明の皮膜を形成することにより、ファンモータの特にモータ部分の温度上昇を抑えることができた。これは、皮膜が遮熱効果があることを示す。
【0042】
【実施例3】
エチルトリエトキシシラン270重量部、ジエチルジエトキシシラン200重量部、テトラエトキシシラン30重量部をN−メチルピロリドン500重量部に溶解した。この溶液に、シリカ固形分として15重量%の酸性コロイダルシリカの水分散液500重量部を混合した。混合液のうち500重量部に、カオリン70重量部、酸化珪素粉末305重量部、酸化アルミニウム粉末130重量部及び酸化ジルコニウム粉末80重量部を加え、攪拌混合して、懸濁液を得た。
【0043】
この懸濁液をサーボモータ上に塗布し、大気中で風乾した。皮膜厚は60μmであった。サーボモータを100V電圧で駆動した。駆動状態におけるサーボモータ外壁の温度を測定した。駆動後約60分でサーボモータの温度は定常状態になり75.5℃になった。一方、皮膜を有しないものは、60分後の温度は99.5℃であり、尚温度は上昇傾向にあった。これは、本発明の皮膜が放熱効果があることを示す。
【0044】
【実施例4】
エチルトリエトキシシラン265重量部、ジエチルジエトキシシラン150重量部、テトラエトキシシラン20重量部、アルミニウムトリイソプロポキシド15重量部をN−メチルピロリドン450重量部に溶解した。この溶液に、シリカ固形分として20重量%の酸性コロイダルシリカの水分散液900重量部を混合した。混合液550重量部を取り、カオリン80重量部、酸化珪素粉末335重量部、酸化アルミニウム粉末145重量部及び酸化ジルコニウム粉末80重量部を加え、攪拌混合して、被覆材(懸濁液)を得た。
【0045】
この懸濁液をモータのケーシングに塗布し、大気中で風乾した。皮膜厚は55μmであった。同様に、加熱乾燥後、熱処理した。モータを1時間駆動させ、その間モータケーシングの温度を測定した。温度は5カ所で測定しその平均値を採った。1時間後のモータケーシングの温度は70.5℃であった。一方、皮膜を形成しない場合のモータケーシングの温度は99.5℃であった。これは、本発明の皮膜が、放熱性を有することを示す。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の組成物からなる皮膜は、変形、亀裂、変色、剥離、ひび割れ等がなく、また、急冷ヒートショックにも強く(抗ヒートショック性)、耐熱性にも優れるものである。更に、本発明の組成物からなる皮膜は、優れた遠赤外線放射能を有し、蓄熱した熱を放出し発熱体の温度上昇を抑え、また、周囲の発熱体から受ける熱を遮蔽し以て物体の温度上昇を抑える効果を奏する。皮膜は、本発明の組成物を物体に塗布することに形成せしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】50℃における遠赤外線放射率を示す図である
【図2】100℃における遠赤外線放射率を示す図である
【図3】150℃における遠赤外線放射率を示す図である
【発明の属する技術分野】
本発明は、放熱性、遮熱性に優れた組成物及び皮膜に関する。より詳しくは、熱を蓄積しやすい物体に塗布し皮膜を形成し、その蓄積した熱を放出することにより又は熱の遮蔽により物体の温度上昇を抑える作用をもつ放熱性、遮熱性に優れた組成物及び皮膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
遠赤外線放射用塗料ないし遠赤外線放射用組成物は、古くから知られている。遠赤外線放射用塗料ないし遠赤外線放射用組成物は、例えば遠赤外線ヒーターのような加熱体の熱効率を高めるための塗料ないし組成物である。これらの遠赤外線放射用塗料ないし組成物は、酸化アルミニウムやチタン、珪素、ジルコニウム、鉄、銅、コバルト、ニッケル、マンガン、クロム等の酸化物をバインダーに混合させたものが多い。バインダーとしては、シリコーン樹脂、リン酸塩、珪酸塩等が用いられる。このような遠赤外線放射性組成物ないし塗料は、加熱体に使用され、加熱体の加熱効果を高めるために利用されている。
【0003】
バインダーとしてアルコキシシラン(有機シリケート)を使用する遠赤外線放射用組成物が知られている。例えば、特開昭63−207868号公報(特許文献1参照)には、アルキルシリケート又はアルキルシリケートと金属アルコキシドとの混合物にアルミナ粉末やシリカ粉末を添加した組成物が記載され、この組成物はヒーターの遠赤外線放射物層の形成に役立つことが記載されている。特開平3−47883号公報(特許文献2参照)には、オルガノアルコキシシランと二酸化マンガン及び三酸化クロムからなる、耐久性の高い電気絶縁膜を形成するコーティング用組成物が記載されている。特開平1−259073号公報(特許文献3参照)には、珪素アルコキシド又は金属アルコキシド及びこれらの混合物と遠赤外線放射顔料とからなる組成物が記載され、この組成物をヒーター用保護基材表面に塗布することが記載されている。特開平1−223191号公報(特許文献4参照)には、アルコール系溶剤中にアルコキシシランと遠赤外線放射特性に優れたセラミックス粉末を分散させた組成物が記載され、その組成物は乾燥機の内壁に塗布し乾燥効果を高めることが記載されている。
【0004】
アルコキシシランは、水分の作用を受けて加水分解・縮合して最終的には重合体を形成する。この作用をバインダーとして利用し、溶剤中でアルコキシシランと各種粉末を混合したものを物体に塗布して皮膜を形成せしめることができる。
しかしながら、水が共存した状態で長時間保存すると、アルコキシシランは次第に加水分解が進行し、ついには重合体になる。重合体になってしまうと、流動性が無く最早物体に塗布することはできなくなる。即ち、アルコキシシランは、バインダーとして安定に利用できないという問題がある。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−207868号公報
【特許文献2】
特開平3−47883号公報
【特許文献3】
特開平1−259073号公報
【特許文献4】
特開平1−223191号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アルコキシシランをバインダーとして安定に使用し、かつ、物体等に塗布し皮膜を形成せしめ、物体に蓄積した熱の放出を促進し、また、周囲の発熱体から放出される熱を遮蔽し以て物体の温度上昇を抑制しようとするものである。電気・電子機器は使用中に熱を発生するものが多い。例えば、モータやモータを利用する各種機器、ランプ等を使用する各種機器、半導体を使用する各種機器等々である。機器は種々の部品から構成される。各種機器、部品には、自ら熱を発生し温度が上昇するものもあれば、自らは熱は発生しないが周囲の熱を発生する発熱体から熱を受けて温度が上昇するものもある。
【0007】
各種機器のうち、特に電子機器は、小型化に対する要望が強い。機器の小型化を実現するためには、発生する熱の除去が大きな問題となっている。本発明は、機器やその部品類に塗布し皮膜を形成せしめ、機器やその部品に蓄積された熱を放出することにより、また、周囲の発熱体から受ける熱を遮蔽することにより、機器等の温度上昇を抑えようとするものである。機器、部品等の温度上昇を抑えることにより、機器の小型化を容易にすることができる。
【0008】
先に述べたように、セラミックスのような遠赤外線放射性物質の粉末をバインダーと混合し、ヒーターのような加熱体に皮膜を形成せしめることにより、加熱体の加熱効果を高めることは広く行われている。しかしながら、遠赤外線放射性物質の粉末をバインダーと混合し皮膜を形成せしめることにより、発熱体に蓄積される熱を放出し、又は、発熱体から熱を遮蔽し、以て物体の温度上昇を抑制しようとすることは全く知られていない。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物からなる放熱性、遮熱性に優れた組成物である。そして、アルコキシシランが、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの少なくとも一種を含有することができ、コロイダルシリカ(固形分)は、前記アルコキシシラン1に対して重量で、0.01〜1で使用することが好ましい。
【0010】
また、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを混合することができる。チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、単体として使用してもよいし、溶液として使用することもできる。溶液として使用する場合には、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドの有機溶媒の溶液状態で使用してもよいし、アルコキシシランの溶液に更にチタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを混合してもよい。そして、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、アルコキシシランの珪素原子に対してチタン及び/又はアルミニウム原子が0.01〜0.5の割合で添加されることが好ましい。
【0011】
酸化珪素粉末及び酸化アルミニウム粉末の量が、前記アルコキシシラン1に対して重量で、0.5〜70であることが好ましく、カオリンの量が、前記アルコキシシラン1に対して重量で、0.1〜20であることが好ましい。
【0012】
更に、上記放熱性、遮熱性に優れた組成物から形成せしめた皮膜である。この被膜の厚みは10〜100μmが好ましい。
【0013】
本発明でいう放熱性とは、蓄積された熱を放射によって放出させる特性をいう。例えば、半導体のように使用中に発生する熱を大気中に放出することによって半導体の温度上昇を抑える特性をいう。また、遮熱性というのは、自らは発熱しないが、周囲の発熱体から熱を受けて温度が上昇するような場合、周囲からの熱を遮り温度上昇を抑える特性をいう。
【0014】
本発明の基本は、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物からなる放熱性、遮熱性に優れた組成物である。また、その組成物から形成せしめた放熱性、遮熱性に優れた皮膜である。組成物の各成分であるアルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末は、使用する直前に混合する。使用するまでは、特にアルコキシシランは溶液の状態で保存される。このアルコキシシランの溶液には実質的に水は含まない。水を含まない状態に、アルコキシシランを溶液状態に保持し、保存中のアルコキシシランの加水分解・縮合を防止する。
【0015】
アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン(モノ有機基置換アルコキシシラン)、ジアルコキシシラン(ジ有機基置換アルコキシシラン)等を使用することができる。これらアルコキシシランを適宜混合して使用することもできる。アルコキシシラン(アルキルシリケートとも称される)は、使用直前までは、水の存在しない状態、即ち、水を含まない溶液の状態に保持する。溶液に使用する溶媒は、水に溶解する溶媒を使用する。
【0016】
アルコキシシランの具体的な例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、ジチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等であり、更には、珪素置換有機基はエポキシ基、エステル基、カルボキシル基、水酸基等の官能基を有していてもよい。但し、これらに限定されるものではない。
【0017】
アルコキシシラン溶液に使用する溶剤は、アルコキシシランを溶解する水溶性の有機溶剤である。アルコキシシランはコロイダルシリカの水分散液と混合するために、水に溶解する必要があるので、水溶性の溶剤を使用する。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホオキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルフォルムアミド、メチルアセトアミド等の溶媒剤である。なかでも、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルフォルムアミド、メチルアセトアミド等の溶剤が、アルコキシシランの保存、膜形生成及び放熱効果の点から好適に使用できる。上記水溶性の有機溶剤は、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドの溶剤としても使用できることは言うまでもない。
【0018】
コロイダルシリカは、周知技術に基づきテトラアルコキシシラン(テトラアルキルシリケート)を加水分解することにより容易に得ることができる。市販もされている。例えば、テトラエチルシリケートを塩酸、硝酸、アンモニア等の触媒の存在するエチルアルコールと水の混合液中に滴下し加水分解し、加水分解後エチルアルコールと触媒を、例えば、真空下に除去することにより、コロイダルシリカの水分散液を得る。このコロイダルシリカの粒径は、ミクロンオーダーないしそれ以下の小さいものである。コロイダルシリカは表面にシラノール基を有している。コロイダルシリカの水分散液中のコロイダルシリカの量は、10〜60重量%程度である。この量は、加水分解時に使用する水の量で適宜調製することができる。シリケートの加水分解後、水を加えて調製することもできる。
【0019】
アルコキシシラン溶液は、使用直前に、コロイダルシリカの水分散液と金属酸化物粉末等と混合される。アルコキシシラン溶液とコロイダルシリカの水分散液との混合割合は、コロイダルシリカ(固形分)が、アルコキシシラン1に対して重量で、0.01〜1となるように混合することが好ましい。コロイダルシリカ水分散液の水は、アルコキシシランの加水分解に寄与する。同時に、アルコキシシランがその加水分解の過程でコロイダルシリカのシラノール基と反応しコロイダルシリカを抱き込んだ形で皮膜を形成することもできる。コロイダルシリカは、膜形性、膜の保持性及び放熱性、遮熱性に寄与する。
【0020】
更にチタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを含有することができる。チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを添加することにより、アルコキシシランの加水分解・縮合の反応速度を調節することができる。チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドの添加量が多いと加水分解の反応速度が大きくなり、少ないと反応速度が小さくなる。この観点から、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、アルコキシシランの珪素原子に対してチタン及び/又はアルミニウム原子が0.01〜0.5の割合で添加するのが好ましい。
【0021】
チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末とを混合する際に、単体又は溶液の形態で混合使用することができる。アルコキシシランの溶液に前もって加えておいて、アルコキシシランと共に混合使用してもよい。いずれにしても、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、水によりアルコキシシランとともに共加水分解し、チタン及び又はアルミニウムを主鎖に含む重合体を生成し皮膜を形成することができる。
【0022】
チタンアルコキシドの具体的な例としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、アルミニウムアルコキシドの具体的な例としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等を使用することができる。但し、これらに限定されるものではない。チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを含有する溶液又はアルコキシシラン溶液は、水が存在しなければ、安定に保存することができる。
【0023】
アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液及び金属酸化物等との混合物を発熱体等の物体に塗布し皮膜を形成せしめる。物体に塗布する直前に、アルコキシシランの溶液とコロイダルシリカの水分散液を先ず混合し、この混合液に金属酸化物粉末を加えて懸濁液を得る。同時に、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液及び金属酸化物等を混合してもよい。これらの混合物は懸濁液となる。この懸濁液を発熱体等の物体に塗布し皮膜を形成せしめる。
添加する金属酸化物等は、酸化アルミニウム、酸化珪素及びカオリンである。更に、他の金属酸化物を加えることもできる。具体的には、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化錫、酸化銅、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化アンチモン、酸化硼素、酸化バリウム、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム等の金属酸化物の少なくとも1種を含有することができる。金属酸化物以外に、窒化硼素、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化錫、窒化ストロンチウム、窒化チタン、窒化バリウムや窒化珪素等の窒化物を含有することもできる。
【0024】
使用する酸化アルミニウム、酸化珪素、カオリン、更には他の金属酸化物や窒化物は、その粒径を15μm〜100nmとするのがよい。より好ましくは、10μm〜80nmの粒径のものを使用する。この粒径のものを使用することにより、皮膜の表面が滑らかで綺麗になるとともに放熱、熱遮蔽の効率が高まる。
【0025】
酸化珪素粉末及び酸化アルミニウム粉末等の金属酸化物粉末は、アルコキシシラン1に対して酸化物を合わせて重量で、0.5〜70添加することが好ましく、また、カオリンは、アルコキシシラン1に対して重量で、0.1〜20添加することが好ましい。これは、皮膜形成性を維持しながら、高い放熱性能、熱遮蔽性能を保持するためである。
【0026】
皮膜形成時に、アルコキシシラン溶液、コロイダルシリカの水分散液及び金属酸化物等を混合し、懸濁液を得る。懸濁液の粘度が高いようであれば、必要に応じて、溶剤や水を添加して、粘度を調整する。このようにして得た懸濁液を対象物に塗布することにより、皮膜を得ることができる。懸濁液を対象物に筆塗り、スプレー、ローラー、印刷等により塗布し、常温又は加温にて乾燥後、更に、必要に応じて、80℃〜300℃で熱処理することにより、金属表面との密着度の高い皮膜を得ることができる。懸濁液の塗布は、石英ガラスや、金属同士のスポット溶接部にも行うことができる。皮膜を形成する対象物は、熱を蓄積する発熱体である。その対象は、主として電気・電子機器やその部品である。
【0027】
本皮膜の膜厚は、或る程度の厚さがないと放熱効果は十分に発現しない、逆に厚さが大きすぎると皮膜に蓄熱作用が起こり、放熱効果が不十分となる。本発明の実験によると膜厚は100μm以下が好ましく、更に好ましくは10〜100μm、特に好ましくは30〜80μmである。
【0028】
本発明の組成物は、塗装材用、接着材用、結合材用等として、例えば、鉄鋼、弱電、車輌、調理器具、建材等の広い分野に応用される。また、塗布対象の基材としては、鋳鉄、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、モリブデン、インコネル等の金属、樹脂、プラスチック、木材、石材、ガラス、セラミック等が好適に用いられる。
【0029】
本発明の組成物、皮膜は、優れた抗ヒートショック性、耐熱性、放熱性、遮熱性等の特性を有する。また、蓄熱したエネルギーを遠赤外線として空気中に放射する能力が高く(放射率0.95という高い数値を示す)、また、周囲の発熱体から受ける熱を遮蔽する特性を有する。内部に蓄積した熱を遠赤外線という電磁波に変換して効率よく放射し、物体の温度上昇を抑えることができる。また、遠赤外線の放射により熱源から熱を遮蔽することができると考えられる。
【0030】
効率良く遠赤外線を放射するということは、内部に蓄積した熱を遠赤外線という電磁波に変換して効率よく放熱することを意味し、結果として温度上昇を抑える効果をもたらす。これは空気対流という手段を用いずに効率よく放熱するという結果をもたらす。従来遠赤外線の放射能力が高いとされている物質(例えば、ゼオライト、コージェライト、アパタイト、ドロマイト等)の遠赤外線放射特性を見ると、4ミクロン乃至14ミクロンの波長全ての領域にわたって高い遠赤外線の放射特性をもつわけではなく、波長によって放射率に相違がある。多くの場合、9ミクロン波長前後の鎮域で放射率が下がる傾向が見られる。一方、本発明が提供する組成物の放射する遠赤外線は4ミクロンから14ミクロンに至る波長の全ての領域にわたって0.9以上の放射率を維持し、非常に放射効率の高いものとなっている。
【0031】
本発明の組成物においては、例えば、金属に塗布された場合、500℃程度の高温加熱によっても皮膜の破壊(ひび割れ、剥離現象、変色等)が起こらず、優れた耐熱性を有する。また、500℃以上のような高温から冷水に投下急冷しても、ひび割れや剥離等の皮膜の破壊現象が発生せず、優れた抗ヒートショック性を有する。
【0032】
電気・電子機器において、使用されている部品が熱蓄積によって劣化することが知られている。例えば、電球は発光する電線の劣化切断によって寿命をむかえ、蛍光灯においては、放電部が熱によって黒変すると同時に、光量の低下が発生し、寿命をむかえることになる。また、電子部品としての電解コンデンサーは、内部に存在する電解液が加熱によって蒸発し、電解コンデンサーとしての性能を発揮できなくなる。この点、本発明の組成物を部品の周囲に塗布して、放熱性、遮熱性に優れた皮膜を形成すると、部品の発生する内部の熱を逐次遠赤外線として周囲に放射していくので、内部エネルギーの減少をひきおこし、部品にかかる熱履歴を低下することができ、部品の長寿命化につながる。
【0033】
さらに、本発明の組成物は塗布した金属に対して折り曲げ加工やプレス抜き加工といった物理的な外力を加えた場合にも、曲げ曲面や切断断面に対して皮膜の破損や剥離がない。このような性能を利用して、本発明の組成物を金属に塗布し、皮膜を形成した後に、金属の加工を可能にした。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をその実施形態に基づいて説明する。
【0035】
【実施例1】
メチルトリメトキシシラン300重量部、ジメチルジメトキシシラン170重量部、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン30重量部、テトラブトキシチタン15重量部をN−メチルピロリドン485重量部に溶解した溶液、シリカ固形分として20重量%の酸性コロイダルシリカの水分散液1000重量部とを混合した。この混合液の700重量部をとり、カオリン110重量部、酸化珪素粉末435重量部、酸化アルミニウム粉末190重量部及び酸化ジルコニウム粉末120重量部を加え、攪拌混合して、懸濁液を得た。
【0036】
上記懸濁液を、アルミニウム製のL字状板に塗布し皮膜を形成せしめた。懸濁液の塗布後、大気中で風乾した。皮膜厚は48μmであった。続いて95℃で30分乾燥し、更に、100℃で60分熱処理した。このL字状放熱板をパワーモジュールに装着した。この場合、L字状放熱板が同時にパワーモジュールの支持体となり同時に放熱体となっている。パワーモジュールの稼働中の温度を、パワーモジュール本体の6か所で測定した。その平均値は、55.8℃であった。一方、皮膜を有しない以外は同じL字状放熱板を装着したパワーモジュールについて同様にして稼働中の温度を本体の6か所で測定したところ、その平均値は、62.5℃であった。パワーモジュール本体に蓄積された熱は、熱伝導により放熱板に伝えられ放熱板から放熱され、その結果としてパワーモジュール本体の熱が放出され、パワーモジュール本体の温度上昇が抑えらる。この際、皮膜を形成せしめた放熱板を装着することにより、パワーモジュール本体の温度を低く抑えることができることがわかった。
【0037】
上記組成物から形成せしめた皮膜について、遠赤外線放射率を測定した。測定は、レーザフラッシュ法に基づいて行った。即ち、金属板表面に皮膜を形成せしめ、皮膜が形成していない面をガスバーナを用いて加熱し、皮膜形成面から放射される単位面積当たりの遠赤外線放射量を放射率計で測定するものである。一定の温度で加熱したときに熱エネルギーを遠赤外線として放射する量によって放射率が求められる。一定の熱エネルギーを与えた場合にエネルギーの100%を遠赤外線として放出した場合の単位面積当たりの放射遠赤外線量が決まっているので、実際に放出された単位面積当たりの遠赤外線量を測定することにより、その放射率を求めることができる。
【0038】
本測定においては、厚さ0.8mmのSU4の板(150mm×40mm)に、実施例1で得た組成物から70μmの厚さの皮膜を形成せしめたものを試験片とし、遠赤外線放射計(インフラメトリックス社製600L)を用いて、1.5μ〜25μの波長の範囲に亘って測定した。測定温度は、50℃、100℃及び150℃の3点であった。各温度に於ける遠赤外線放射率曲線を図1〜図3に示した。
【0039】
図1〜3から明らかなように、5μ〜25μの波長の範囲に亘り、平均して95%以上の放射率が測定された。測定温度が高いほど、放射率は高くなる傾向にある。引用文献等に記載されている遠赤外線放射率は5μ付近の放射率は高いが、波長が長くなるに従い、特に9μ以上の波長においては、放射率が低くなる傾向を示している。これに対して本発明の皮膜は、波長が長くなっても依然として高い放射率を維持していることがわかる。
【0040】
【実施例2】
エチルトリエトキシシラン270重量部、ジエチルジエトキシシラン150重量部、テトラエトキシシラン30重量部、チタンテトラブトキシド15重量部をN−メチルピロリドン535重量部に溶解した。この溶液に、シリカ固形分として20重量%の酸性コロイダルシリカの水分散液1000重量部を混合した。混合液のうち550重量部に、カオリン70重量部、酸化珪素粉末310重量部、酸化アルミニウム粉末135重量部及び酸化ジルコニウム粉末85重量部を加え、攪拌混合して、懸濁液を得た。
【0041】
この懸濁液をファンモータのモータ部分に塗布し被膜を形成せしめた。皮膜厚は40μmであった。ファンモータの前面10mmの位置にヒートガンを置き、ファンモータのモータ部分の裏面モータ軸に温度検出端を取り付け、ファンモータを動かすことなく、ヒートガンを点灯しモータ軸の温度上昇を測定した。測定時の室温は25.1℃であった。モータ軸の温度は、約30分で平衡状態になった。平衡状態におけるモータ軸の温度は、64.2℃であった。一方、皮膜を有しないファンモータにおいては、モータ軸の温度は75.4℃であった。このように、本発明の皮膜を形成することにより、ファンモータの特にモータ部分の温度上昇を抑えることができた。これは、皮膜が遮熱効果があることを示す。
【0042】
【実施例3】
エチルトリエトキシシラン270重量部、ジエチルジエトキシシラン200重量部、テトラエトキシシラン30重量部をN−メチルピロリドン500重量部に溶解した。この溶液に、シリカ固形分として15重量%の酸性コロイダルシリカの水分散液500重量部を混合した。混合液のうち500重量部に、カオリン70重量部、酸化珪素粉末305重量部、酸化アルミニウム粉末130重量部及び酸化ジルコニウム粉末80重量部を加え、攪拌混合して、懸濁液を得た。
【0043】
この懸濁液をサーボモータ上に塗布し、大気中で風乾した。皮膜厚は60μmであった。サーボモータを100V電圧で駆動した。駆動状態におけるサーボモータ外壁の温度を測定した。駆動後約60分でサーボモータの温度は定常状態になり75.5℃になった。一方、皮膜を有しないものは、60分後の温度は99.5℃であり、尚温度は上昇傾向にあった。これは、本発明の皮膜が放熱効果があることを示す。
【0044】
【実施例4】
エチルトリエトキシシラン265重量部、ジエチルジエトキシシラン150重量部、テトラエトキシシラン20重量部、アルミニウムトリイソプロポキシド15重量部をN−メチルピロリドン450重量部に溶解した。この溶液に、シリカ固形分として20重量%の酸性コロイダルシリカの水分散液900重量部を混合した。混合液550重量部を取り、カオリン80重量部、酸化珪素粉末335重量部、酸化アルミニウム粉末145重量部及び酸化ジルコニウム粉末80重量部を加え、攪拌混合して、被覆材(懸濁液)を得た。
【0045】
この懸濁液をモータのケーシングに塗布し、大気中で風乾した。皮膜厚は55μmであった。同様に、加熱乾燥後、熱処理した。モータを1時間駆動させ、その間モータケーシングの温度を測定した。温度は5カ所で測定しその平均値を採った。1時間後のモータケーシングの温度は70.5℃であった。一方、皮膜を形成しない場合のモータケーシングの温度は99.5℃であった。これは、本発明の皮膜が、放熱性を有することを示す。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の組成物からなる皮膜は、変形、亀裂、変色、剥離、ひび割れ等がなく、また、急冷ヒートショックにも強く(抗ヒートショック性)、耐熱性にも優れるものである。更に、本発明の組成物からなる皮膜は、優れた遠赤外線放射能を有し、蓄熱した熱を放出し発熱体の温度上昇を抑え、また、周囲の発熱体から受ける熱を遮蔽し以て物体の温度上昇を抑える効果を奏する。皮膜は、本発明の組成物を物体に塗布することに形成せしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】50℃における遠赤外線放射率を示す図である
【図2】100℃における遠赤外線放射率を示す図である
【図3】150℃における遠赤外線放射率を示す図である
Claims (9)
- アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物からなる放熱性、遮熱性に優れた組成物。
- 前記アルコキシシランが、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載の放熱性、遮熱性に優れた組成物。
- 前記コロイダルシリカ(固形分)の量が、前記アルコキシシラン1に対して重量で、0.01〜1であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放熱性、遮熱性に優れた組成物。
- 前記チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを更に混合することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の放熱性、遮熱性に優れた組成物。
- 前記チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドの量が、アルコキシシランの珪素原子に対してチタン及び/又はアルミニウム原子が0.01〜0.5の割合であることを特徴とする請求項4に記載の放熱性、遮熱性に優れた組成物。
- 前記酸化珪素粉末及び酸化アルミニウム粉末の量が、前記アルコキシシラン1に対して重量で、0.5〜70であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の放熱性、遮熱性に優れた組成物。
- 前記カオリンの量が、前記アルコキシシラン1に対して重量で、0.1〜20であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の放熱性、遮熱性に優れた組成物。
- 請求項1から請求項7のいずれかに記載の放熱性、遮熱性に優れた組成物から形成せしめた皮膜。
- 前記皮膜の厚みが、10〜100μmであることを特徴とする請求項8に記載の放熱性、遮熱性に優れた組成物から形成せしめた皮膜。
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