JP2009067998A - 放熱膜用塗料および放熱膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 熱源の熱エネルギーを遠赤外線に変換して放射・放熱する機能を備えた放熱膜を形成し、かつ、耐熱性、付着性、靭性および熱伝導に優れた放熱膜をえることができる放熱膜用塗料を提供する。
【解決手段】 アルコキシド化合物からなるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた放熱膜用塗料において、前記アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から2対8の割合で配合し、前記アルコキシド化合物の脱水縮合により生じるSi−Oネットワークの形成進行を制御しつつSi−OH基を残存させて塗布する基材との付着力を向上せしめたことを特徴とする。顔料は例えばシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)の少なくとも一つの単体またはそれらの化合物である。
【選択図】 図2
Description
従来技術における遠赤外線放射用塗料は、顔料として遠赤外線放射物質である酸化アルミニウムやチタン、珪素、ジルコニウム、鉄、銅、コバルト、ニッケル、マンガン、クロム等の酸化物をバインダーに混合させたものが多い。バインダーとしては、シリコーン樹脂等の有機バインダーが用いられている。
例えば、特開昭63−207868号公報(特許文献1)には、アルキルシリケート又はアルキルシリケートと金属アルコキシドとの混合物にアルミナ粉末やシリカ粉末を添加した組成物が記載され、この組成物はヒーターの遠赤外線放射物層の形成に役立つことが記載されている。
本発明は、装置の筐体表面などに塗料膜を形成せしめ、そこに蓄積された熱を放出することにより、機器等の温度上昇を抑えようとするものである。
しかし、実用的な放熱膜を形成するためにはいくつかの課題がある。
従来の塗料にはいわゆる一液性のものと二液性のものがある。
特に、アルコキシドバインダーの場合を想定すると、加水分解してシラノール基が生成され、そのままシラノール反応が進んで脱水縮合によりSi−Oネットワークが形成されて行くが、上記第2の課題で述べたように脱水縮合が進みすぎると塗布膜が脆くなったりクラックが入りやすくなったりして基材への付着力が小さくなってしまうという問題が発生する。
以上、2液性の場合、混ぜ合わせてから使用するまでの時間管理がとても難しい。この時間管理を行うことは一般ユーザーにとって極めて困難である。
特開2004−359811号公報(特許文献2)は、アルコシシランバインダーが不安定性であり安定状態で保存することが難しいことを課題とし、その解決手段として使用直前に塗料成分を混ぜ合わせることで塗料を調整することを特徴としており、いわゆる二液性のものである。結局、特開2004−359811号公報は使用直前に混ぜ合わせるなど取り扱いが不便でありかつ混ぜ合わせた後のポットライフは短い。
つまり、放射率を如何に高めるかという工夫が施されていることが好ましい。
上記構成により、放熱膜用塗料として、含有するSi−Oネットワーク素材の形成量とシラノール基の残存量が所定範囲となった時点でシラノール反応の進展を制御でき、取り扱いやすい一液性塗料とすることができる。
前記アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から2対8の割合で配合し、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行うことを特徴とする。
なお、pH調整は、液全体のpHが3.0〜5.5、さらに好ましくは3.8〜4.2となるように調整することが好ましい。
放熱膜全体のpHがこの範囲であればシラノール反応である脱水縮合反応が一気には進展しないことが確認されている。
上記構成により、本発明の放熱膜用塗料は一液性でありながらポットライフが長いものであり、取り扱いが容易な一液性塗料として提供できる。
一液性としてより安定した塗料とすることができる。
また、前記遠赤外線放射性物質の顔料が、前記第1の顔料に加え、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはそれらの化合物のいずれかを含む第2の顔料を備えたものであることが好ましい。
上記放熱膜用塗料により、これら顔料により遠赤外線放射波長領域において高温領域から低温領域まで効率良い変換を得ることができる。
第1の着色の工夫は、前記顔料として、着色顔料となる酸化チタンまたは酸化亜鉛を含有させるとともに、前記酸化チタン粒子または前記酸化亜鉛粒子の周囲に前記遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングせしめるものである。
酸化チタンまたは酸化亜鉛を含有させれば白色に発色するが、放熱膜の表面積に酸化チタンが表出するので表面積に占める遠赤外線放射顔料が表出する割合が減少することとなり、放射率が低下する。しかし、上記構成により酸化チタン粒子の周囲に遠赤外線放射顔料の化合物によりコーティングしておくことにより白色の着色を確保するとともに放射率を低下させることがなくなる。
上記構成により、塗布乾燥により形成される膜が透明となる。透明性の放熱膜を得ることにより、例えば、熱反射率の高い金属基体と組み合わせることにより直射日光を反射・散乱することで温度上昇を抑制することができる。
上記のように膜中にポーラス構造を作り込むことにより膜全体としてさらに優れた靭性を得ることができる。
上記構成により、Si−Oネットワークが膜全体を全通しているので熱伝導率が向上する。さらに、無機鉱物である無機顔料が含まれて固化されているので熱伝導率が落ちることはない。
放熱膜全体のpHがこの範囲であればシラノール反応である脱水縮合反応が一気には進展しないことが確認されている。
例えば、前記ポットライフ延長成分が、前記遠赤外線放射性物質の顔料を前記ナノ粒子を含む無機顔料として作製し、前記ポットライフ延長成分として前記バインダーの脱水縮合を遅延せしめたものである。
また、本発明の放熱膜用塗料によれば、これら顔料により遠赤外線放射波長領域において高温領域から低温領域まで効率良い変換を得ることができる。
また、本発明の放熱膜用塗料によれば、膜中にポーラス構造を作り込むことにより膜全体としてさらに優れた靭性を得ることができる。
また、本発明の放熱膜用塗料によれば、一液性でありながらポットライフが長いものであり、取り扱いが容易な一液性塗料として提供できる。
また、本発明の放熱膜用塗料によれば、Si−Oネットワークが膜全体を全通しているので熱伝導率が向上する。さらに、無機鉱物である無機顔料が含まれて固化されているので熱伝導率が落ちることはない。
また、本発明の放熱膜用塗料によれば、遠赤外線放射性物質を100nm以下の粒径を有する顔料のみとすることにより、塗布乾燥により形成される膜が透明となる。
また、本発明の放熱膜用塗料によれば、バインダーにアミノ基、エポキシ基、アクリル基などを備えた反応性変性オルガノシロキサンを加えることにより常温乾燥が可能となる。
本発明の放熱膜用塗料は、アルコキシド化合物からなるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備え、バインダーのアルコキシド化合物による加水分解後のシラノール反応の進展を制御することにより、塗料の全成分を混合液としてまとめた1液性塗料の状態において保存可能に調整せしめている。
アルコキシドの加水分解は速やかに促進された方が良いが、その後にシラノールの脱水縮合が進みすぎるおそれに注意する必要がある。従来課題で述べたように、塗料の状態でシラノールの脱水縮合が進みすぎるとSi−Oネットワークが多数形成され、固化してしまったり、塗布した塗布膜が脆くなったりクラックが入りやすくなったりして基材への付着力が小さくなってしまうという問題が発生する。
第1の工夫は、アルコキシドバインダーの組成の工夫である。
第2の工夫は、アルコキシドバインダーの加水分解後のシラノール反応が適切量進んだ状態でバインダーの脱水縮合を遅延させるようにpHを調整する工夫である。
第3の工夫は、アルコキシドバインダーの加水分解後のシラノール反応が適切量進んだ状態でバインダーの脱水縮合を遅延させる性質を備えたポットライフ延長成分を含有せしる工夫である。
ポットライフ延長成分の一例が溶媒である。つまり、アルコキシドバインダーの加水分解後のシラノール反応が適切量進んだ状態で溶媒リッチの状態に調整する工夫である。
ポットライフ延長成分の他の例が無機顔料である。つまり、アルコキシドバインダーの加水分解後のシラノール反応が適切量進んだ状態で無機顔料を阻害要素として機能させる工夫である。
図1は、本発明の放熱膜用塗料におけるシラノール脱水縮合反応は適切量進めた後に脱水縮合反応を抑止する工夫の効果を分かりやすく示す図である。
縦軸はシラノール官能基の消費割合、横軸は経過時間である。範囲Dは、塗料中に含有されるSi−Oネットワーク素材の形成量とシラノール基の残存量のバランスが良く、塗布基材に対する付着力の強さが強く発揮される範囲である。塗料がこの範囲にある状態が塗料のポットライフとなる。
このように本発明の放熱膜用塗料は、塗料中に含有されるSi−Oネットワーク素材の形成量とシラノール基の残存量を制御し、ポットライフを長くしつつ基材への付着力を強くする。
第1の放熱膜用塗料のバインダー組成は、アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランを所定割合で混合したものとなっている。その混合割合は、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から2対8の割合が好ましい。
第2の放熱膜用塗料のバインダー組成は、アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとジアルコキシシランを所定割合で混合したものとなっている。その混合割合は、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合が好ましい。
Si−OH官能基を3つ備えたトリアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリエチルプロポキシシランなどが挙げられる。
Si−OH官能基を2つ備えたジアルコキシシランとしては、ジチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランなどが挙げられる。
アルコキシド化合物同士は加水分解によりシラノール基(Si−OH官能基)が生成され、Si−OH官能基の脱水縮合によりSi−Oネットワークの形成が進行してゆく。Si−OH官能基を4つ持つテトラアルコキシシランはSi−OH官能基を多く持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成進行が速く、早期にゲル化する。テトラアルコキシシランのみでバインダーを形成するとほぼ完全にSi−OH官能基が消費され、Si−Oネットワークが形成される。Si−OH官能基を3つ持つトリアルコキシシランもSi−OH官能基を持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成が進行し、ゲル化する。トリアルコキシシランのみでバインダーを形成すると粒子間のSi−OH官能基の存在が均等になるので、ほぼ完全にSi−OH官能基が消費された状態でSi−Oネットワークが形成される。
つまり、Si−OH官能基を2つ持つアルコキシド化合物、Si−OH官能基を3つ持つアルコキシド化合物、Si−OH官能基を4つ持つアルコキシド化合物を、所定割合で混ぜ合わせると、アルコキシド分子間でSi−OH官能基の数に不均衡があるため、反応する相手となるSi−OH官能基がなく、いわば浮いてしまうSi−OH官能基が多数出てくるので脱水縮合が一気には進まなくなる。
なお、本発明では、アルコキシド化合物の配合を調整し、このシラノール脱水縮合にブレーキがかかる状態におけるSi−Oネットワーク素材の形成量とシラノール基の残存量のバランスが、塗布する基材に対する付着力の強さが強くなる範囲となるよう制御する。
実験を重ねて2官能のアルコキシド化合物、3官能のアルコキシド化合物、4官能のアルコキシド化合物の配合割合を見出した。
付着性実験に用いた放熱膜用塗料のバインダー組成
実験に用いた放熱膜用塗料のバインダー組成は、4官能基を備えたテトラアルコキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のテトラメトキシシランを用いた。また、3官能基を備えたバインダーのトリアルコキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のトリメチルメトキシシランを用いた。また、2官能基を備えたジメトキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のジメチルメトキシシランを用いた。テトラメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルメトキシシランの配合を変えてそれぞれ製作した。
サンプルのそれぞれに含まれるジメチルメトキシシラン(2官能)、トリメチルメトキシシラン(3官能)、テトラメトキシシラン(4官能)の配合を[表1]に示す。
アルミブラスト処理を行ったアルミプレートと、ステンレスブラスト処理を行ったステンレスプレートを用いた。
−付着性実験の手法
付着性実験は、JIS−K5600−5−6の手法により碁盤目テストを行った。実験は3回行った。アルミブラスト処理を行ったアルミプレートに対する付着実験結果を[表2]に示す。ステンレスブラスト処理を行ったステンレスプレートに対する付着実験結果を[表3]に示す。
注2:反応はアルコキシド1モルに対して水2.5〜4.5モル、望ましくは3.3モル、酸の量を十分入れ、顔料比率70%とし、膜厚を25μ±3μにして実施。
注3:分散溶媒はエタノール、イソプロピルアルコールを配合した物を使用した。
注4:分散は0.7mmのガラスビーズを使用した。分散後粒度はD50で0.35ミクロン。
注5:焼成条件は180℃で20分。基板はアルコール脱脂のみのアルミ板を使用した。試験片は7.5mmw×15.0mml×1.0mmtを各3枚。(評価は全数クリアー)
注6:塗布方法はスプレーコート。
注7:膜厚は15μ〜20μ、測定方法はマイクロメーター。
ここで、第1の反応である加水分解反応は速やかに進めた方が製造工程を短縮できる。そこで、触媒を用いて促進させる。例えば、酸触媒を用いて加水分解反応を促進させる。例えば、溶液のpHを1.5から3.0に調整してアルコキシド化合物の加水分解反応を促進せしめる。
本発明者はシラノール反応がpH3.0から5.5程度であれば抑制されることを実験により確認した。この実験結果については後述する。
なお、溶媒は放熱塗料膜が形成される過程で蒸発する必要があるので、沸点が常温より高い温度のアルコール類であることが好ましい。例えば、イソプロピルアルコールなどである。
無機顔料として、顔料の粒子を20μm以下のナノ粒子として加水分解の阻害要因とする。顔料の粒子が細かくなればアルコキシド系バインダーが脱水縮合反応によりSi−Oネットワークを形成して行く際には阻害要因となるため、Si−OH官能基の割合の不均衡により脱水縮合反応が抑制され始めた後では、さらにシラノール反応が進展してゆくことを抑制する効果を発揮する。
たとえば、反応性変性オルガノシロキサンの例として、アミノ基(アミノエチル-アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルメチルメトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルメチルエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン)、エポキシ基(グリドキシプロピルトリメトキシシラン、グリドキシプロピルトリエトキシシラン、グリドキシプロピルメチルメトキシシラン、グリドキシプロピルメチルエトキシシラン)、アクリル基(メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルエトキシシラン)などがある。
上記した第1から第3の工夫を盛り込んだ、[表4]の成分を備えた放熱膜用塗料1を試作して放置実験を行った。結果は[表5]に示すようになった。
次に、放熱膜としての機能、つまり、発熱体から受けた熱エネルギーの遠赤外線エネルギーへの変換効率について検証する。本発明の放熱膜用塗料において、含有されている顔料は形成した膜において遠赤外線放射機能を与えるものである。それゆえに顔料の配合が重要である。
高い熱放射率を実現するためには、熱線波長領域の全範囲にわたって、放射率が100%に近く、さらに放射輝度が当該温度における黒体輻射に近い放射スペクトルを持つこと必要がある。
アルコキシドと顔料の割合は、15〜45体積%が妥当である。15%以下では膜の靭性が低下し堅牢さが失われる。45%を超えると、脱水縮合による乾燥収縮量が多く、高温下でクラックが発生しやすく、所望の放熱性が得がたい。
焼成条件は180℃で20分間焼き付けた。
膜厚はマイクロメーターの測定により20μ〜26μのものが焼成できた。
測定は遠赤外線応用研究会によった。
測定温度は60℃とした。
測定機種はJIR−E500を用いた。
測定条件は、分解能16cm−1、積算回数200回
検知器はMCTである。
図2は放熱膜試料2の放射率である。
図3は放熱膜試料2の放射輝度スペクトルである。
放射輝度は、540.06kcal/m2・hrであった。
図3に見るように、低温の波長領域から高温の波長領域まで良好な放射輝度スペクトルが得られており、放熱性は、4μ〜24μの波長域での放射率は85%以上の放射率を有することが分かった。高い遠赤外線変換効率が得られていることが実証できた。
本発明の放熱膜の耐摩耗性を調べるために放熱膜試料2を用いて表面硬度テストも行った。
硬度テストの方法は、JIS−K−5−4に準じた。
実験にはアルミプレートに焼成したものを用いた。
表面硬度テストの結果を[表7]に示す。
注2:各反応条件、分散条件、縮合脱水条件、膜厚、基材は前記テストに準じる。
注3:使用顔料は平均1次粒子径0.15μのアルミナ(Al2O3)、平均1次粒子径0.5μのカオリン、10〜20nのシリカ(SiO2)をそれぞれ30体積%、65体積%、5体積%配合したものを使用した。
注4:分散溶媒はエタノール、イソプロピルアルコールを配合した物を使用した。
注5:分散は0.7ミリ径のガラスビーズを用いたビーズミルで1時間実施した。その時の平均粒皮は0.35μであった。
注6:○は硬度7H以上、曲げ20R可、碁盤目テスト問題なし、△は硬度7Hまで、碁盤目テスト間題なし、Xは、膜が脆くクラック発生。
以上、アルコキシド化合物と顔料の割合は15〜45体積%が妥当であると実証できた。
本発明の放熱膜の耐腐食性も調べるために放熱膜試料2を用いて塩水噴霧試験と水浸試験も行った。
塩水噴霧試験の方法は、JIS−K5600−7−1に準じた。
測定はステンレスプレートのものを用いた。
塩水噴霧の放置時間は500時間とした。
塩水噴霧試験の結果を[表9]に示す。
測定はアルミプレートのものを用いた。
水浸の放置時間は500時間とした。
水浸試験の結果を[表10]に示す。
放熱膜試料2を800℃に熱し、水で急冷却するという処理を繰り返して、クラックが入るか否かを試験した。
加熱はバーナーで800℃まで加熱した。冷却は冷水にて急速に冷却した。この加熱・冷却を5回繰り返した。
結果を[表11]に示す。
本発明の放熱膜用塗料において、高い熱伝導率を達成していることを確認した。
本発明の放熱膜用塗料では、Si−Oネットワークが膜全体を全通しているので熱伝導率が高く、ポーラス構造にかかわらずコージライト、アルミナ、シリカ、ジルコニアという無機鉱物である無機顔料が含まれて固化されているので熱伝導率が高い。実際に放熱膜用塗料2の試料片を用いて熱伝導率を計測したところ、2W/mK以上の熱伝導率が得られていた。
第1の工夫は、放熱率を低下させることなく着色を白色とするもので、着色顔料として酸化チタンを含有させるとともに、酸化チタン粒子の周囲に遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングせしめたことを特徴とするものである。
サンプルとして顔料を[表12]のように配合した放熱膜用塗料3を作製し、遠赤外線放射実験を行った。
着色用顔料としては、表面に粒度の細かいシリカがコーティングされている酸化チタン(石原産業製 R−95)を用いている。
バインダーは3官能基を備えたトリメチルメトキシシランと4官能基を備えたテトラメトキシシランを配合した。
図6は放熱膜試料3を用いた放射線測定結果である。
図7は放熱膜試料3が発する放射スペクトルである。
図2、図3と、図6、図7を比べるとあきらかに、高温領域(5〜8μm)においてスペクトルが改善されている部分が見られる。
第2の着色の工夫は、顔料を遠赤外線放射性物質を100nm以下の粒径を有する顔料のみとする工夫である。
バインダーは実施例1に示したものと同様で良い。ここで顔料が100nm以下の粒径を有する顔料のみとなれば、バインダー、顔料とも光を遮ったり散乱したりする要素をなくすことができ、塗布乾燥により形成される膜が透明となる。
発明者は、実際に、顔料を100nm以下の粒径を有する遠赤外線放射顔料のみとする塗料を製作し、塗布乾燥することにより実際に透明性の放熱膜を得ることに成功している。
透明性の放熱膜を得ることにより、例えば、熱反射率の高い金属基体と組み合わせることにより直射日光を反射・散乱することで温度上昇を抑制することができる。
第2の顔料が、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)の少なくとも一つの単体またはそれらの化合物を含む顔料である。
本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
Claims (24)
- アルコキシド化合物からなるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた放熱膜用塗料において、
前記バインダーのアルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合の進展を、前記シラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成量と前記シラノール基の残存量が所定範囲になった状態で抑制し、塗料の全成分を混合液としてまとめた状態におけるポットライフを調整せしめたことを特徴とする放熱膜用塗料。 - アルコキシド化合物からなるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた放熱膜用塗料において、
前記アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から2対8の割合で配合することにより、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行うことを特徴とする放熱膜用塗料。 - アルコキシド化合物からなるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた放熱膜用塗料において、
前記アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランとジアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合で配合し、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行うことを特徴とする放熱膜用塗料。 - 酸触媒を用いて前記バインダーのアルコキシド化合物の前記加水分解を促進せしめ、
前記加水分解反応後の前記シラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成量と前記シラノール基の残存量が所定範囲になった状態にて、液全体のpHを中性側に調整して前記酸触媒を減らし、前記シラノール脱水縮合の進展速度を遅延せしめたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の放熱膜用塗料。 - 前記pHの中性側への調整が液全体のpHを3.0〜5.5とする調整であることを特徴する請求項4に記載の放熱膜用塗料。
- 前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合を遅延させる性質を備えたポットライフ延長成分を含有せしめたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の放熱膜用塗料。
- 前記ポットライフ延長成分は沸点が常温より高い温度のアルコール類であり、前記アルコール類を前記溶媒として加え、溶媒リッチの状態として前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合を遅延せしめたことを特徴とする請求項6に記載の放熱膜用塗料。
- 前記遠赤外線放射性物質の顔料を前記ナノ粒子を含む無機顔料として作製し、前記ポットライフ延長成分として前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合を遅延せしめたことを特徴とする請求項6に記載の放熱膜用塗料。
- 前記バインダーにおいて塗布前に液中で十分に分子成長を熟成せしめることにより、塗布環境に対して安定でかつ作業性の高いものとした請求項1から7のいずれか1項に記載の放熱膜用塗料。
- 前記バインダーにアミノ基、エポキシ基、アクリル基などを備えた反応性変性オルガノシロキサンを加えることにより常温乾燥を可能とせしめた請求項1から8のいずれか1項に記載の放熱膜用塗料。
- 前記遠赤外線放射性物質の顔料が、シリカ(SiO2)、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含む第1の顔料を備えた請求項1から10のいずれか1項に記載の放熱膜用塗料。
- 前記遠赤外線放射性物質の顔料が、前記第1の顔料に加え、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはそれらの化合物のいずれかを含む第2の顔料を備えた請求項11に記載の放熱膜用塗料。
- 前記顔料として、着色顔料となる酸化チタンまたは酸化亜鉛を含有させるとともに、
前記酸化チタン粒子または前記酸化亜鉛粒子の周囲に前記遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングせしめたことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の放熱膜用塗料。 - 前記遠赤外線放射性物質を100nm以下の粒径を有する顔料のみとし、塗布乾燥により形成される膜を透明としたことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の放熱膜用塗料。
- 前記溶媒が、沸点が常温より高い温度のアルコール類であり、
前記放熱膜形成の際に前記溶媒を揮発させることによりポーラス構造を形成せしめることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の放熱膜用塗料。 - 前記一液性塗料の状態において、前記遠赤外線放射性物質の顔料が無機顔料であり、塗布・乾燥により形成される塗料膜を無機成分が主成分となる放熱膜とし、熱伝導率を向上せしめた請求項1から15のいずれか1項に記載の放熱膜用塗料。
- アルコキシド化合物からなるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた放熱膜用塗料を塗布して放熱膜を形成する方法であって、
前記放熱膜用塗料において、前記バインダーのアルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合の進展を、前記シラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成量と前記シラノール基の残存量が所定範囲になった状態で抑制し、塗料の全成分を混合液としてまとめた状態におけるポットライフを調整せしめた放熱膜用塗料を用いた放熱膜の形成方法。 - アルコキシド化合物からなるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた放熱膜用塗料を塗布して放熱膜を形成する方法であって、
前記アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から2対8の割合で配合し、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行った放熱膜用塗料を用いた放熱膜の形成方法。 - アルコキシド化合物からなるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた放熱膜用塗料を塗布して放熱膜を形成する方法であって、
前記アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランとジアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合で配合し、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行った放熱膜用塗料を用いた放熱膜の形成方法。 - 前記ポットライフの調整方法が、前記放熱膜用塗料において、酸触媒を用いて前記バインダーのアルコキシド化合物による前記加水分解を促進せしめ、前記加水分解反応後の前記シラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成量と前記シラノール基の残存量が所定範囲になった状態にて、液全体のpHを中性側に調整して前記酸触媒を減らし、前記シラノール脱水縮合の進展速度を遅延せしめる調整方法であることを特徴とする請求項17から19のいずれか1項に記載の放熱膜の形成方法。
- 前記pHの中性側への調整が液全体のpHを3.0〜5.5とする調整であることを特徴する請求項20に記載の放熱膜の形成方法。
- 前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合を遅延させる性質を備えたポットライフ延長成分を含有せしめ、前記放熱膜用塗料のポットライフの期間内において放熱膜を塗布形成することを特徴とする請求項17から19のいずれか1項に記載の放熱膜の形成方法。
- 前記ポットライフ延長成分が沸点が常温より高い温度のアルコール類であり、前記アルコール類を前記溶媒として加え、溶媒リッチの状態として前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合を遅延せしめたことを特徴とする請求項22に記載の放熱膜の形成方法。
- 前記遠赤外線放射性物質の顔料を前記ナノ粒子を含む無機顔料として作製し、前記ポットライフ延長成分として前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合を遅延せしめたことを特徴とする請求項22に記載の放熱膜の形成方法。
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