JP2004357623A - リンゴ酸高生産性新規清酒酵母及びこれを用いる清酒の製造方法 - Google Patents

リンゴ酸高生産性新規清酒酵母及びこれを用いる清酒の製造方法 Download PDF

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Takahiro Oba
孝宏 大場
Shuji Nomiyama
修治 野見山
Masae Suzuki
正柯 鈴木
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Abstract

【課題】和水タイプの新しい低アルコール清酒の製造法と該製造法を実現させる新規な酵母菌株を提供する。
【解決手段】変異処理することなく清酒もろみ中で自然突然変異した株から分離され、リンゴ酸を多く生成し酢酸の生成能が低くサッカロミセス セレビシエに属する新規な酵母株FERM P−19246、および該酵母株を用いる清酒の製造法による。適度の甘さと酸味があり、従来の和水タイプの欠点を解決し、ワインのようなジュース感覚で飲める清酒が得られる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な酵母株及び該酵母を用いる清酒、特に低アルコール清酒を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
清酒の生産量は毎年減少しており、清酒の消費の拡大を図るためには新しいタイプの清酒の開発が急務とされている。近年若い年代層や女性への消費量の拡大を図るためアルコール度数が低い“ソフトな”清酒の開発が注目され、一部は商品化されている。製造法はいわゆる酒母タイプか原酒を和水するタイプに大別される。
【0003】
酒母タイプは清酒の製造工程における酒母をそのまま圧搾し製品にしたもので、アルコール度5から8%程度であり味のもの足りなさを糖分と乳酸で補っている。現在人気のある酒母タイプの低アルコール清酒は、アルコール度5%程度、グルコース濃度が12%程度、乳酸濃度が1200μg/ml程度である。しかしながら、特殊な製造法によらなければならず、一般的な方法とはいえない。またコスト高が欠点である。
【0004】
一方、原酒を和水するタイプでは水っぽさやもの足りなさなどの指摘を受ける欠点がある。その欠点をカバーするため、さわやかな酸味を有するリンゴ酸を多く生産する酵母の開発が行われている。このようなリンゴ酸の多い清酒の製造法として、現在、ジメチルコハク酸感受性変異株(相川元庸、水津哲義、市川英治、川戸章嗣、安部康久、今安聰:醗工,70,473(1992):非特許文献1)、又はシクロヘキシミド耐性株(吉田清、稲橋正明、中村欽一、野白喜久雄:醸協、88,645(1993):非特許文献2)を用いる方法などが行われている。また、変異処理した清酒酵母から、リンゴ酸脱水素酵素低生産性で炭素源を唯一乳酸とした場合に生育しない清酒酵母株分離し、これを用いてリンゴ酸及び乳酸の多い清酒の製造も提案されている(特許第3010549号:特許文献1)。
このように新しい清酒用酵母を育種する場合、変異処理を行い目的の特性を有する株を分離する方法がとられることが多い。しかし、変異処理を行なうと一般に清酒もろみ中でのアルコール生成能やアルコール耐性という特性を失うことが知られている。
【非特許文献1】相川元庸、水津哲義、市川英治、川戸章嗣、安部康久、今安聰:醗工,70,473(1992)
【非特許文献2】吉田清、稲橋正明、中村欽一、野白喜久雄:醸協、88,645(1993)
【特許文献1】特許第3010549号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は和水タイプの低アルコール清酒において、水っぽさやもの足りなさの欠点を解決した、甘さと酸味のバランスがとれた新しいタイプの清酒の製造法を提供すること、さらに、この製造法を実現させる新規な酵母菌株を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、検討を重ねた結果、これまでのように変異処理することなく清酒もろみ中で自然突然変異した株を分離することにより、清酒製造に従来から多用されていた酵母、例えば、協会9号酵母よりもリンゴ酸を多く生成し、しかも、多いと味の点から好まれない酢酸の生成能の低い酵母菌株を見いだし、そして、この酵母菌株を用いて清酒を製造した場合、前述の課題を解決できることを発見した。
【0007】
かくして、本発明に従えば、リンゴ酸を多く生成し酢酸の生成能が低くサッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属することを特徴とする酵母株FERM P−19246が提供され、さらに、この新規な酵母菌株を用いる清酒の製造法が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、サッカロミセス セレビシエに属する酵母の自然突然変異した株を培地で生育させ、この培養によりリンゴ酸高生産株を選別し、さらに、リンゴ酸を多量に生産し且つ酢酸の生産量が少ない菌株を取得したことに基づくものである。以下に、先ず、本発明の酵母の取得方法を示す。
【0009】
(24−2株の取得)
福岡県内酒蔵の清酒もろみから採取したサンプルを滅菌水により適宜希釈した後、YMプレートに塗布し、30℃で3日間培養を行った。生育した314株を分離した。取得した314株をそれぞれ30mlのYM−10培地に一白金耳接種し、20℃で3日間静置培養後、遠心分離した上清を有機酸分析に供した。リンゴ酸に関して、協会7号酵母(K−7)は101μg/ml、協会9号酵母(K−9)は73μg/mlの生成量がみられたのに対し、リンゴ酸生成量が130μg/ml以上の菌株として、24株が得られた。一次スクリーニングで取得した24株を麹エキス培地(ボーメ7)30mlに一白金耳接種し、20℃で10日間培養後、遠心分離した上清を有機酸分析に供した。結果を表1に示す。リンゴ酸に関して、K−7は212μg/ml、K−9は284μg/mlの生成量がみられたのに対し、リンゴ酸生成量が300μg/ml以上の菌株として、8−1株および24−2株の2株が得られた。特に、24−2株では、K−7に比べ2.2倍、K−9に比べ1.7倍の生成量がみられた。また、酢酸生成量に関しても、8−1および24−2の両株とも200μg/ml以下でありK−7、K−9に比べ明らかな低生産性を示していた。
【0010】
【表1】
Figure 2004357623
【0011】
表1において、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、総酸の単位は(μg/ml)である。
8−1、24−2両株及びK−7、K−9の清酒小仕込試験を行い、醸造特性及びリンゴ酸等の生産性を検討した。小仕込試験の配合は表2に示すとおりである。
【0012】
【表2】
Figure 2004357623
【0013】
この清酒製造では、麹米には徳島精工株式会社製乾燥麹(精米歩合60%)を使用し、掛米には徳島精工株式会社製α化米(精米歩合60%)を用いた。発酵温度は13℃で行った。留添後、21日目に上槽した。小仕込試験における炭酸ガス減量の経過はK−7、K−9に比較して差は認められなかった。このことから、今回新たに取得した株は十分実用性のある酵母であると判断した。製成酒の成分は、表3に示すとおりであった。生成したエタノール濃度に関して、取得した株はK−7、K−9と同等であり、日本酒度のきれも同等であった。24−2株はK−7、K−9に比べアミノ酸度が低い傾向がみられた。
【0014】
【表3】
Figure 2004357623
【0015】
表3において、酸度及びアミノ酸度の単位は(ml)、アルコールの単位は(%)である。
有機酸生成に関しては、表4に示すとおり、24−2株のリンゴ酸はK−7、K−9に比べ、約2.5倍の生成量が認められ、酢酸生成量はK−7、K−9に比べ1/2以下であった。香気成分の生成に関しては、K−7、K−9と遜色なかった。したがって、リンゴ酸を多量に生産し、酢酸の生産量が少ない自然突然変異した株、24−2株を新規な清酒製造用菌株として選択した。
【0016】
【表4】
Figure 2004357623
【0017】
表4において、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸の単位は(μg/ml)である。
24−2株の形態は5〜6μmの円形または卵円形であり、出芽により増殖する。TTC染色性を調べたところ、赤色に染まったことから、野生酵母ではなく清酒酵母であると判断した。この24−2株は、FERM P−19246として産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。
【0018】
【実施例】
(実施例1)
以下の実施例により、本発明に従う酵母菌株を用いる清酒の製造法について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
前記変異株(24−2)及び対照株協会9号(K−9)について、表5に示す仕込配合で低アルコール清酒の小仕込試験を行った。なお、上記協会9号酵母は、吟醸酒の製造に広く利用されていることから対照株とした。
【0019】
【表5】
Figure 2004357623
【0020】
この清酒製造では、麹米には徳島精工株式会社製乾燥麹(精米歩合60%)を使用し、掛米には徳島精工株式会社製α化米(精米歩合60%)を用いた。仲添及び留添の酵素剤には留用スピターゼMK(ナガセケムケックス社製)、四段の酵素剤には四段用スピターゼM(ナガセケムケックス社製)を用いた。発酵温度は13℃で行った。留添後、21日目に上槽し、上槽液の分析結果を表6および表7に示す。
【0021】
【表6】
Figure 2004357623
【0022】
【表7】
Figure 2004357623
【0023】
24−2株を用いた清酒は、K−9株の清酒に比べて約2.5倍のリンゴ酸及び1/2倍以下の酢酸量であった。各清酒をアルコール度数が12%になるように仕込水で希釈し、専門パネラー10名により官能検査を行った。評価は、良い方を1とし悪い方を5とする5段階で行った。その結果24−2株の清酒は平均2.3、K−9株の清酒は2.6であり、24−2株の方がやや官能評価で優れていた。
両方の清酒に対するコメントには、以下のようなものがあった:「K−9株の清酒はやや甘さが感じられるが、24−2株の清酒は甘さと酸味のバランスがとれている」、「K−9株の清酒は従来の低アルコール清酒を連想するが、24−2株の清酒はジュース感覚で飲める新しいタイプの清酒である」。
【0024】
(実施例2)
表8に示す仕込配合のとおり、総米15kgの酒母タイプの低アルコール清酒を製造した。この製造では、麹米には60%精白の麗峰を、掛米には70%精白の麗峰を用い、酵母は麹エキス培養の24−2株及びK−9株を用いた。仕込後8日目に四段掛けし、圧搾上槽した。上槽液の分析結果を表8に示す。
【0025】
【表8】
Figure 2004357623
【0026】
【表9】
Figure 2004357623
【0027】
24−2株を用いた清酒は、K−9株の清酒に比べて約2.5倍のリンゴ酸及び約2/3倍の酢酸量であった。24−2株を用いた清酒は、乳酸と甘さが味の中心である従来の低アルコール清酒とは異なり、ワインのようなジュース感覚で飲める清酒となった。
【0028】
【発明の効果】
本発明の清酒酵母FERMP−19246菌株は、リンゴ酸の生産性が高く酢酸の生産量が低いという特性を有し、これを使用して通常の清酒製造をした製成酒を水で希釈した低アルコール清酒(アルコール濃度12%)は適度の甘さと爽やかな酸味があり、従来の和水タイプの欠点を解決できる。また酒母タイプの低アルコール清酒の酸味の主体をリンゴ酸に変えることにより、ワインのようなジュース感覚で飲める清酒となった。

Claims (2)

  1. リンゴ酸を多く生成し酢酸の生成能が低くサッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属することを特徴とする酵母株FERM P−19246。
  2. 請求項1の酵母株FERM−19246を用いて製造することを特徴とする清酒の製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008099627A (ja) * 2006-10-20 2008-05-01 Fukuoka Prefecture 多酸性新規清酒酵母及びこれを用いて製造する清酒の製造法
JP2011206006A (ja) * 2010-03-30 2011-10-20 Yamagata Prefecture Mlf発酵を併用した新味覚の清酒の製造法

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